説明

便器洗浄水供給装置

【課題】組立作業が容易で、フロート部がスムーズに上下動可能であり、さらに、給水バルブを吐水から止水に切り替える際に生じるハンチング現象の発生を防止することができる便器洗浄水供給装置を提供する。
【解決手段】本発明は、水洗便器1の洗浄水タンク14に洗浄水を供給する便器洗浄水供給装置20であって、外部の給水源に接続された給水管22と、この給水管から供給される洗浄水の洗浄水タンク内への吐水及び止水を切替えて洗浄水を洗浄水タンク内に供給する給水バルブ24と、洗浄水タンク内の洗浄水の水位の変動に伴って上下動することにより給水バルブの吐水及び止水を切替えるフロート32と、給水管の外面に設けられ且つフロート部の上下動をガイドするフロートガイド30と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄水供給装置に係り、特に、水洗便器の洗浄水タンクに洗浄水を供給する便器洗浄水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水洗便器のボウル部にリム吐水口及びジェット吐水口を形成し、これらの吐水口から洗浄水を供給することにより、サイホン作用により汚物を排出する便器が知られている。このような水洗便器は、洗浄水が給水源(例えば、水道)から直接供給されるタイプと、水洗便器に設けられた洗浄水タンク内に貯水された洗浄水が供給されるタイプに分けられる。
【0003】
この洗浄水タンクを備えた水洗便器の一例として、特許文献1には、外部の給水源(水道)から洗浄水タンク内に洗浄水を供給するために、洗浄水タンク内にパイロット式ダイヤフラム弁を有するボールタップ(給水バルブ)を設けた便器洗浄水供給装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−274540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1の便器に用いられた便器洗浄水供給装置においては、外部の給水源(水道)に接続された給水管の上端にパイロット式ダイヤフラム弁を有するボールタップ(給水バルブ)が形成され、フロートがこの給水管を貫通し且つ上下動可能なように設けられている。
【0006】
このような構造の便器洗浄水供給装置においては、フロートが給水管を貫通して取り付けられているため、装置の組立作業が複雑となり、好ましいものではなかった。また、フロートが洗浄水の水位の上昇に伴って上昇するときもガタツキが大きくスムーズに上昇できるものではなかった。さらに、フロートが上昇して、ダイヤフラム弁のパイロット穴が塞がれて吐水から止水に切り替わるとき、給水圧の水圧変動や洗浄水の水位の変動等により、パイロット穴を塞ぐ押下力(下向き)とフロート部の浮力(上向き)も変動し、これにより、ハンチング現象が起こり、フロートが揺れて振動と異音が発生していた。特に、給水源の水圧が高い場合には、このハンチング現象が発生し易く、問題となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、組立作業が容易で、フロート部がスムーズに上下動可能であり、さらに、給水バルブを吐水から止水に切り替える際に生じるハンチング現象の発生を防止することができる便器洗浄水供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、水洗便器の洗浄水タンクに洗浄水を供給する便器洗浄水供給装置であって、外部の給水源に接続された給水管と、この給水管から供給される洗浄水の洗浄水タンク内への吐水及び止水を切替えて洗浄水を洗浄水タンク内に供給する給水バルブと、洗浄水タンク内の洗浄水の水位の変動に伴って上下動することにより給水バルブの吐水及び止水を切替えるフロート部と、給水管の外面に設けられ且つフロート部の上下動をガイドするフロートガイド部と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、フロートガイド部を給水管の外面に設け、このフロートガイド部により、フロート部の上下動をガイドするようにしたので、フロート部とフロートガイド部とが接触する面を上下動するフロート部に近づけることができ、その接触面に形成される隙間を小さくできるためガタツキを抑えてフロート部の上下動をスムーズにガイドできる。
【0009】
本発明において、好ましくは、フロートガイド部は、給水管の外面に上下方向調整可能に設けられている。
このように構成された本発明においては、フロートガイド部が給水管の外面に上下方向調整可能に設けられているので、フロート部の上下方向位置の設定及び変更等を簡易に行うことができ、洗浄水タンクの貯水水位の調整が容易となる。
【0010】
本発明において、好ましくは、フロートガイド部は、給水管の外面に横方向から着脱自在に設けられている。
このように構成された本発明においては、フロートガイド部が給水管の外面に横方向から着脱自在となっているため、給水管を洗浄水タンクに固定した状態でフロートガイド部を給水管に取り付けることができ、洗浄水供給装置の組立作業が簡易となる。
【0011】
本発明において、好ましくは、フロートガイド部は、給水管を貫通して設けられている。
このように構成した本発明においては、フロートガイド部が給水管を貫通しているので、フロートガイド部が給水管から外れることがなく、フロートガイド部を給水管に確実に固定することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、フロートガイド部のフロート部をガイドする部分及び/又はフロート部のフロートガイド部にガイドされる部分に、その上端から下端まで上下方向に延びる複数のリブが形成されている。
このように構成された本発明においては、複数のリブを設けて、フロート部の上下動をフロートガイド部によりその複数のリブに当接させてガイドするようにしたので、両者の間のガタツキを調整するための金型修正が容易にでき、且つ、摺動抵抗を小さくすることができる。さらに、ガタツキを小さくすることにより、フロート部のハンチング現象を抑えることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、フロート部は、その上部に形成され、給水バルブが吐水状態のとき給水バルブから吐水される洗浄水の少なくとも一部を受け取って貯水すると共に給水バルブが止水状態のとき貯水した洗浄水を排水孔から排水する桶貯水部を備えている。
このように構成された本発明においては、給水バルブが吐水状態のときには、フロート部には浮力以外に桶貯水部に貯水された洗浄水の重量が下向きに作用し、給水バルブが止水状態に変わるときは、この洗浄水の重量が急に作用しなくなり、フロート部に大きな押上力(浮力)が作用するので、ハンチング現象が発生する不安定域を短時間で通過することができ、ハンチング現象の発生を抑制することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、給水バルブは、フロート部の桶貯水部に給水源の水圧の洗浄水を吐水する吐水管を備え、この吐水管が吐水方向に向かって口径が拡がるような形状を有している。
このように構成された本発明においては、給水バルブが吐水状態のときには、フロート部には浮力以外に吐水管から下向きのジェット水圧(給水源の水圧)が比較的広い範囲に作用し、給水バルブが止水状態に変わるときは、このジェット水圧が急に作用しなくなり、フロート部に大きな押上力(浮力)が作用するので、ハンチング現象が発生する不安定域を短時間で通過することができ、ハンチング現象の発生を抑制することができる。さらに、給水源の水圧が高いときは、ハンチング現象がより発生し易いが、この場合には、吐水管から高い圧力の洗浄水が吐水されるので、圧力が高い分だけ押上力も大きくなり、ハンチング現象をより効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、フロート部は、少なくとも桶貯水部の洗浄水が供給される開口部の周辺を覆う蓋部を備えている。
このように構成された本発明においては、フロート部が少なくとも桶貯水部の洗浄水が供給される開口部の周辺を覆う蓋部を備えているので、洗浄水の飛散を防止し、且つ、桶貯水部に供給される洗浄水に起因する騒音も防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の便器洗浄水供給装置によれば、組立作業が容易で、フロート部がスムーズに上下動可能であり、さらに、給水バルブを吐水から止水に切り替える際に生じるハンチング現象の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面により、本発明の実施形態による便器洗浄水供給装置を説明する。
先ず、図1により、本発明の便器洗浄水供給装置が適用される便器の一例を説明する。図1は本発明の便器洗浄水供給装置が適用される水洗便器の断面図である。図1に示すように、符号1は水洗便器を示し、この水洗便器1の上部の前方側には、ボウル部2が形成され、後方側の上部には導水路4が、導水路4の下方にはボウル部2と連通する排水トラップ管路6が、それぞれ形成されている。
【0018】
水洗便器1のボウル部2の上縁部にはオーバーハング形状のリム8が形成され、このリム8に導水路4から洗浄水が供給される1つ又は2つのリム吐水口10が形成され、洗浄水が旋回しながら下降してボウル部2を洗浄できるようになっている。また、ボウル部2の中心下部には、導水路4から洗浄水が供給されるジェット吐水口12が形成され、このジェット吐水口12から洗浄水が排水トラップ管路6に向けて吐水され、サイホンを短時間で発生されるようになっている。
【0019】
水洗便器1の導水路4の上方には、洗浄水を貯水する洗浄水タンク14が設けられている。この洗浄水タンク14の底面14aには、水洗便器1の導水路4と連通する連通口14bが形成されている。この洗浄水タンク14の内部には、後述するように、本発明の便器洗浄水供給装置を含む種々の機器が設けられている。
【0020】
次に、図2及び図3により、洗浄水タンク14内に設けられた種々の機器について説明する。図2は洗浄水タンクの内部を示す断面斜視図であり、図3は洗浄水タンクの内部を示す正面図である。
図2及び図3に示すように、洗浄水タンク14内には、排水弁16、オーバーフロー管18が設けられている。
【0021】
具体的には、排水弁16は、洗浄水タンク14の底面14aの連通口14bの部分に設けられ、弁座16a、弁体16b、弁体16bに接続された鎖16cを備え、鎖16cに接続された操作レバー(図示せず)を操作することにより、弁体16bが上下動し、開閉操作が行われるようになっている。
【0022】
この排水弁16は、閉操作により洗浄水を洗浄水タンク14内に貯水し、開操作により、洗浄水タンク14内の洗浄水を水洗便器1の導水路4を経由して、リム吐水口10及びジェット吐水口12に導くようになっている。
【0023】
また、オーバーフロー管18は、その上端に開口18aが形成されその下端が排水弁16の弁座16aに連通するように設けられている。このオーバーフロー管18により、洗浄水の水位が万一上昇しても、開口18aから、洗浄水がオーバーフローし、排水弁16の弁座16aを経由して、さらに、水洗便器1の導水路4を経て、リム吐水口10とジェット吐水口12から、ボウル部2内に排出されるようになっている。
【0024】
更に、洗浄水タンク14内には、本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置20が設けられている。図2及び図3に示すように、この便器洗浄水供給装置20は、給水管22、給水バルブ24、吐水管26、及び、フロート32等を備えている。
【0025】
次に、図4乃至図12により、本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置を詳細に説明する。
【0026】
先ず、図4乃至図6に示すように、給水管22は、洗浄水タンク14の底面14aに取り付けられ、外部の水道等の給水源(図示せず)に接続され、洗浄水を洗浄水タンク14内に供給するようになっている。この給水管22は、中心部に給水路(1次側)22aが形成され、その外側部に排水路(2次側)22bが形成され、この排水路22bの下端部に形成された排水口22cから、洗浄水が洗浄水タンク14内に排出されるようになっている。
【0027】
次に、図6及び図12に示すように、給水管22の先端部には、給水路22aと排水路(2次側)22bとの間に介在するように、ダイヤフラム式の給水バルブ24が設けられている。この給水バルブ24は、中心軸24aを持つバルブハウジング24bと、このハブルハウジング24bの中心軸24aに取り付けられこの中心軸24aに沿って上下移動可能なダイヤフラム24cとを備えている。このダイヤフラム24cと中心軸24aとの間には、パイロット穴24dが形成され、このパイロット穴24dにより、給水管22の給水路(1次側)22aとダイヤフラム24cの背面側(上側)にある背圧室24eとが連通されている。この背圧室24eの上部には、背圧抜き穴24fが形成されている。
【0028】
また、給水バルブ24のバルブハウジング24bのフロート30側の側面には、ダイヤフラム24cを介して給水管22の給水路22aに連通する吐水管26が一体的に形成されている。この吐水管26は、上端部26aはその断面が絞られ、下端側26bは吐水方向(下方)に向かって口径が拡がるような形状となっている。このように吐水管26が吐水方向(下方)に向かって口径が拡がるような形状となっているのは、吐水管26から吐水されるジェット流を比較的広範囲に作用させて、ジェット水流により大きな下向きの押付力を得るためである。
【0029】
さらに、給水バルブ24のバルブハウジング24bの上面には、アーム28が取り付けられており、このアーム28は、支点28aを中心に揺動運動ができるようになっている。また、このアーム28の左端部には、背圧抜き穴24fを開閉するトップシール28bが取り付けられ、右端部には、後述するフロート32が取り付けられている。
【0030】
次に、図7に示すように、フロートガイド30は、半円筒形状の取付部30aとフロート摺動板30bを備えている。この取付部30aには、給水管22の外面に形成された複数(3個以上)の突起22dと係合する複数(2個以上)の穴30cが形成されている。これらの突起22dと穴30cが係合することにより、フロートガイド30は、給水管22の外面に横方向から着脱自在に取付け(嵌合)できるようになっている。なお、給水管22の複数の突起22dは上下方向に多数形成されており、フロートガイド28を所望の位置に位置決めし易いようになっている。
【0031】
このように、本実施形態では、フロートガイド30が給水管22から横方向に容易に着脱できるようになっているため、フロート32の上下方向位置を調整するとき、従来のように、給水管と給水バルブを洗浄水タンクから取り外す必要がなく、フロート32の上下方向位置を容易に調整することができる。
【0032】
次に、図6、図8及び図9に示すように、フロート32は、その下方部に形成された空間である浮力発生部32aと、その上方部に形成された洗浄水を一時的に溜める桶貯水部32bと、この桶貯水部32bの一部を覆う蓋部34と、フロート32が上下方向にガイドされるように上述したフロートガイド30のフロート摺動板30bを収容する上下方向に延びる凹部32cとから構成されている。
【0033】
また、図6に示すように、フロート32は、ネジ部材36により、上述したアーム28の右端部に連結されている。このアーム28とネジ部材36の連結部には、遊び空間28dが形成されている(図12参照)。またこのネジ部材36はフロート32にジ形成されたネジ部32gと螺合されており、ネジ部材36を回転させることにより、容易に、アーム28とフロート32の距離(即ちフロート32の上下方向位置)を調整することができるようになっている。
【0034】
具体的に説明すると、フロート32とフロートガイド30の接触面となるフロート32の凹部32cとフロート摺動板30bの接触面は、フロート32が上下動する際に基点となるネジ部材36が螺合されるネジ部32gに近く、それゆえ、従来のようにフロート32を給水管22を貫通させる場合の隙間よりも、その凹部32cとフロート摺動板30bとの間に形成する隙間を小さくできるため、ガタツキを抑えてフロート32の上下動をスムーズにガイドすることができる。さらに、フロート32の凹部32cには、図9に示すように、その上端から下端まで上下方向に延びる複数本(5本)の縦リブ32dが形成されており、フロート32が、フロートガイド部30のフロート摺動板30bにガイドされて上下動するとき、その縦リブ32dに当接してスムーズに上下動できるようになっている。この結果、ガタツキ発生を防止するための金型修正が容易にでき、また、摺動抵抗も小さくすることができる。さらに、ガタツキを小さくすることで、後述するハンチングの発生を抑えることもできる。なお、この縦リブ32dは、フロートガイド30のフロート摺動板30bの方に形成しても良いし、フロート32の凹部32c及びフロート摺動板30bの両方に形成するようにしても良い。
【0035】
桶貯水部30bには、図8に示すように、側部側に蓋部34を嵌合して取り付けるための一対のスリット状溝部32eが形成され、次に、先端部(右側端部)の底部には排水穴30fが形成されており、桶貯水部30b内に貯水された洗浄水を洗浄水タンク14内に排出できるようになっている。
【0036】
蓋部34には、図10及び図11に示すように、桶貯水部32bの大部分を覆う平面部34aと、桶貯水部32bからオーバーフローした洗浄水を排出するために後方部(左側部)の一部を切り欠いて形成された周縁スカート34bとが形成されている。また、蓋部34には、その先端部(右側端部)には、下方に延びる柱部34cが形成され、この柱部34cの下端部には、上述したフロート32の排水穴30fと嵌合するための鉤部34d及びフロート32の排水穴32fと連通する溝部34eが形成されている。また、蓋部34には、上述した吐水管26から下方に噴射される洗浄水のジェット流を受け入れるジェット流用穴34fが開口し、されに、このジェット流用穴34fの周囲を取り囲む鍔部34gが上方に突出して形成されている。この鍔部34g及びこの鍔部34gの周辺の平面部34aにより、吐水管26からのジェット流の飛散を防止している。また、蓋部34の平面部34aには、桶内圧逃がし穴34hが形成され、桶貯水部32b内の洗浄水の圧力上昇を防止するために洗浄水を外部に逃がすようになっている。さらに、周縁スカート部34bには、桶貯水部30bのスリット状溝部32eと嵌合する爪34iが形成されている。このように、蓋部34は、スリット状溝部32eと爪34i(二箇所)と、柱部34cの鉤部34d(一箇所)の三箇所で、フロート32(桶貯水部32b)と確実に嵌合されるようになっている。なお、この桶内圧逃がし穴34h内を上述したネジ部材36が貫通するようになっている。
【0037】
次に、図12及び図13等により、本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置の動作を説明する。
先ず、洗浄水タンク14内に洗浄水が十分に貯水されている場合には、洗浄水の水位は満水の水位A(図3参照)となっている。このとき、給水バルブ24等は、以下の状態となっている。
【0038】
即ち、図12に示すように、フロート32は、上方位置まで上昇しており、その浮力により、ネジ部材36を介して、アーム28の右側端を上方に押し上げ、それにより、アーム28は、支点28aを中心にして反時計回り方向に付勢され、アーム28の左側端が下方に押し下げられた状態となる。この結果、アーム28のトップシール28bが給水バルブ24の背圧抜き穴24fを閉じる。このとき、パイロット穴24dにより、背圧室24eと給水管22の給水路(1次側)22aとが連通されているので、背圧室24eと給水路(1次側)22aの圧力が等しくなり、その結果、ダイヤフラム24cを押す面積比(背圧室側面積>1次側面積)により、ダイヤフラム24cは下方に移動し、閉弁した状態となっている。なお、この閉弁常態のときには、吐水管26からジェット流の噴出は行われていない。
【0039】
次に、水洗便器1の使用後には、便器使用者が操作レバー(図示せず)を操作して、排水弁16が開き、洗浄水タンク14内に貯水された洗浄水を水洗便器1へ流して水洗便器1を洗浄する。最後には、洗浄水タンク14内に洗浄水の水位は空状態である水位B(図3参照)となる。
【0040】
その後、排水弁16が閉じられ、この洗浄タンク14の空状態(水位Bの状態)から、洗浄水タンク14内に外部の給水源(水道)から洗浄水が供給される。このとき、給水バルブ24等は、以下の状態となっている。
【0041】
即ち、図13に示すように、フロート32は下方位置まで下降し、洗浄水から露出し、ネジ部材36によりアーム28の右側端に空中からぶら下がった状態となっている。このとき、アーム28は、フロート32の重量により、支点28aを中心にして時計回り方向に付勢され、アーム28の左側端が上方に押し上げられる。このとき、アーム28のトップシール28bが給水バルブ24の背圧抜き穴24fを開放し、背圧室24eは大気開放となる。その結果、ダイヤフラム24cは、給水路(1次側)22aの圧力(水道圧)により押されて上方に移動し、開弁状態となる。
【0042】
給水バルブ24が開弁状態となれば、外部の給水源(水道)から洗浄水が給水管22の給水路(1次側)に供給され、さらに、排水路22bを経て、排水口22cから、洗浄水タンク14内に排出される。これにより、洗浄水タンク14内の水位が次第に上昇する。
【0043】
このとき、洗浄水が、給水管22の給水路(1次側)から吐水管26へも供給され、この吐水管26から、下方にあるフロート32の桶貯水部32bに向けてジェット流が噴出されるようになっている。これにより、フロート32が上昇して洗浄水中に浮いた状態となった場合には、フロート32には、上向きの浮力、桶貯水部32bに貯水された洗浄水の重量(下向き)、及び、吐水管26のジェット流による下向きの押付力が作用している。
【0044】
この後、洗浄水タンク14内の水位が図3に示す満水の水位Aまで上昇すると、上述したように、給水バルブ24は閉じられ、洗浄水タンク14内への洗浄水の供給は停止される。
【0045】
次に、図14乃至図17により、給水バルブ24が開弁状態(給水状態)から閉弁状態(止水状態)に切替わる時に発生するハンチング現象を説明する。
先ず、図14に示すように、給水バルブ24が給水状態から止水状態に切り替わるとき、3つの力、即ち、トップシール28bに作用する押下力、背圧室24eに作用する上向きの背圧、フロート32(アーム28の右端部)に作用する押上力が、発生する。
【0046】
次に、図15に示すように、フロート32が上昇するにつれて、フロート32の位置(水位)は、給水域(背圧力>押下力)、不安定域(背圧力が押下力とほぼ等しい)、止水安定域(背圧力<押下力)に移行する。ここで、不安定域では、以下の示す理由により、ハンチング現象が発生する。即ち、不安定域では、押下力は、アーム28のガタツキや変形、トップシール28bの接触面の傾き等により変動し、背圧力は、給水圧の水圧変動等により変動し、押上力は、洗浄水タンク14の水面の変動等により変動し易いので、その影響で、給水バルブ24の止水域での信頼性が低下する。
【0047】
本実施形態では、押上力にアシスト力を付加することにより、給水域から不安定域を一気にスキップして止水安定域に移行して、このハンチング現象の発生を防止するようにしている。
即ち、図16に示すように、止水直前領域(=不安定域)においては、フロート32には、上向きの「浮力」と、桶貯水部32bに貯水されている「洗浄水の重量(下向き)」と、吐水管26から下向きに吐水されるジェット流による「ジェット水圧(下向き)」とが作用している。この結果、押上力F1は、「浮力」から「洗浄水の重量」と「ジェット水圧」を差し引いた値となる。
【0048】
次に、フロート32の水位が少しだけ上昇して止水直後状態(=不安定域)となると、フロート32には、上向きの「浮力」が作用するが、止水状態であるので、「洗浄水の重量(下向き)」と「ジェット水圧(下向き)」とは、瞬時に作用しなくなる。この結果、押上力F1は、浮力のみが作用するが、「洗浄水の重量」と「ジェット水圧」は作用しない。換言すれば、押上力F1には、「洗浄水の重量」と「ジェット水圧」が作用しない分、上向きのアシスト力が付加されたことになる。
【0049】
このように、本実施形態においては、給水域から止水安定域に移行する際の不安定域において、アーム28の右側端に作用する押上力F1の値が瞬時に増大するので、その分、不安定域の状態を短くでき、給水域から、不安定域を一気にスキップして、止水安定域に移行することにより、このハンチング現象の発生を防止することができる。
【0050】
さらに、給水源の水圧(水道圧)が高いときは、ハンチング現象がより発生し易いが、この場合には、吐水管26から高い圧力の洗浄水が吐水されるので、圧力が高い分だけ押上力F1も大きくなり、ハンチング現象をより効果的に抑制することができる。
【0051】
次に、図18乃至図22により、本発明の第2実施形態による便器洗浄水供給装置を説明する。図18は本発明の第2実施形態による便器洗浄水供給装置を示す斜視図であり、図19は図18のC−C線に沿って見た断面図であり、図20は図19の部分拡大断面図であり、図21は本発明の第2実施形態におけるストッパー部材の固定解除位置におけるフロートガイドを示す部分平面断面図(図21(a))及び部分正面断面図(図21(b))であり、図22は本発明の第2実施形態におけるストッパー部材の固定位置におけるフロートガイドを示す部分平面断面図(図22(a))及び部分正面断面図(図22(b))である。
【0052】
本発明の第2実施形態は、フロートガイドの構造を変更したものであり、他の構造は第1実施形態と同じである。よって、ここでは、主に第1実施形態と異なるフロートガイドの構造について説明する。
【0053】
先ず、図18及び図19に示すように、フロートガイド40は、給水管22を貫通するタイプのものであり、給水管22に貫通して取り付けられた取付部42と、この取付部42と一体的に形成されたフロート摺動板44とを備えている。
このフロートガイド40の取付部42は、給水管22の外周に軸方向に延びるガイド用リブ46にガイドされて、上下方向に移動できるようになっている。
また、給水管22のフロートガイド40が取り付けられる外周の上方にある取付領域Dには、フロートガイド40を給水管22の外面に固定するためのフロートガイド固定用溝部50が所定長さの間隔を隔て多数形成されている。
【0054】
次に、図21及び図22に示されたように、フロートガイド40の取付部42の上述したフロートガイド固定用溝部50に対応する部分には、フロートガイド固定用突起部52が取付部42と一体的に形成されている。
この取付部42のフロートガイド固定用突起部52の外側には、取付部42を給水管22に固定及び解除するためのストッパー部材48が設けられている。このストッパー部材48は、給水管22の長手軸線に垂直な方向Eに沿って移動可能であり、さらに、このストッパー部材48が移動することにより、図21に示す固定解除時には、図21(b)に示されるように、取付部42のフロートガイド固定用突起部52とストッパー部材48との間に空間Sが形成される。
【0055】
次に、この第2実施形態におけるフロートガイド40を給水管22の外面に固定する方法を説明する。
先ず、給水管22を洗浄水タンク14に取り付ける際、フロートガイド40を予め給水管22に貫通させて取り付けておく。
次に、給水管22を洗浄水タンク14に取り付けた後、フロートガイド40を所望の高さ位置に固定する必要があるが、このときには、先ず、ストッパー部材48を図21に示す固定解除位置に移動させる。このとき、図21(b)に示すように、上述したように、取付部42のフロートガイド固定用突起部52とストッパー部材48との間には空間Sが形成され、取付部42のフロートガイド固定用突起部52の背面(外側面)がストッパー部材48により拘束されなくなる。
【0056】
この状態で、ストッパー部材40の取付部42を上下方向に移動させると、給水管22のフロートガイド固定用溝部50と係合していた取付部42のフロートガイド固定用突起部52は、空間S内に向けて変形し、フロートガイド固定用溝部50との係合が解かれ、上下方向に移動可能となる。
フロートガイド40を所望の高さ位置まで移動させてフロートガイド40を給水管22の外面に固定する場合には、ストッパー部材48を固定位置(図22参照)に移動させる。このとき、図22(b)に示されているように、フロートガイド40の取付部42のフロートガイド固定用突起部52は、給水管22のフロートガイド固定用溝部50に係合し、変形不可能な状態となっているので、これにより、フロートガイド40は給水管22の外面の所望の高さ位置に固定される。
【0057】
この第2実施形態による便器洗浄水供給装置のフロートガイド40によれば、取付部42が給水管22に貫通して取り付けられているので、フロートガイド40が給水管22から外れることがなく、確実に固定することができる。
また、給水管22のフロートガイド固定用溝部50が上下方向に延びる取付領域Dにおいて多数形成されているので、フロートガイド40を所望の位置に容易に位置決めすることができる。
【0058】
このように、第2実施形態においては、フロートガイド40を上下方向調整可能に給水管22に取り付けることができるようになっているため、フロート32の上下方向位置を調整するとき、従来のように、給水管と給水バルブを洗浄水タンクから取り外す必要がなく、フロート32の上下方向位置を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の便器洗浄水供給装置が適用される水洗便器の断面図である。
【図2】本発明の便器洗浄水供給装置を含む洗浄水タンクの内部を示す断面斜視図である。
【図3】本発明の便器洗浄水供給装置を含む洗浄水タンクの内部を示す正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置を示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置を示す正面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿って見た断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置のフロートガイドを示す斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置の蓋部を外した状態のフロートを示す斜視図である。
【図9】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置の蓋部を外した状態のフロートを示す平面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置のフロートの蓋部を示す斜視図である。
【図11】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置のフロートの蓋部を反転して示す斜視図である。
【図12】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置の給水バルブの閉弁状態(止水状態)を示す部分断面図である。
【図13】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置の給水バルブの開弁状態(給水状態)を示す部分断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置の給水バルブに作用する力を説明するための概略図である。
【図15】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置におけるハンチング現象を説明するための概略図である。
【図16】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置の給水バルブの止水直前状態を示す部分断面図である。
【図17】本発明の第1実施形態による便器洗浄水供給装置の給水バルブの止水直後状態を示す部分断面図である。
【図18】本発明の第2実施形態による便器洗浄水供給装置を示す斜視図である。
【図19】図18のC−C線に沿って見た断面図である。
【図20】図19の部分拡大断面図である。
【図21】本発明の第2実施形態におけるストッパー部材の固定解除位置におけるフロートガイドを示す部分平面断面図(図21(a))及び部分正面断面図(図21(b))である。
【図22】本発明の第2実施形態におけるストッパー部材の固定位置におけるフロートガイドを示す部分平面断面図(図22(a))及び部分正面断面図(図22(b))である。
【符号の説明】
【0060】
1 水洗便器
20 便器洗浄水供給装置
22 給水管
22a 給水路
22b 排水路
22c 排水口
22d 突起
24 給水バルブ
24c ダイヤフラム
24d パイロット穴
24e 背圧室
24f 背圧抜き穴
26 吐水管
28 アーム
28a 支点
28b トップシール
30 フロートガイド
30a 取付部
30b フロート摺動板
30c 穴
32 フロート
32a 浮力発生部
32b 桶貯水部
32c 凹部
32d 縦リブ
32f 排水穴
34 蓋部
36 ネジ部材
40 フロートガイド
42 取付部
44 フロート摺動板
46 ガイド用リブ
48 ストッパー部材
50 フロートガイド固定用溝部
52 フロートガイド固定用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器の洗浄水タンクに洗浄水を供給する便器洗浄水供給装置であって、
外部の給水源に接続された給水管と、
この給水管から供給される洗浄水の洗浄水タンク内への吐水及び止水を切替えて洗浄水を洗浄水タンク内に供給する給水バルブと、
洗浄水タンク内の洗浄水の水位の変動に伴って上下動することにより上記給水バルブの吐水及び止水を切替えるフロート部と、
上記給水管の外面に設けられ且つ上記フロート部の上下動をガイドするフロートガイド部と、
を有することを特徴とする便器洗浄水供給装置。
【請求項2】
上記フロートガイド部は、上記給水管の外面に上下方向調整可能に設けられている請求項1記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項3】
上記フロートガイド部は、上記給水管の外面に横方向から着脱自在に設けられている請求項1又は請求項2に記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項4】
上記フロートガイド部は、上記給水管を貫通して設けられている請求項1又は請求項2に記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項5】
上記フロートガイド部のフロート部をガイドする部分及び/又は上記フロート部のフロートガイド部にガイドされる部分に、その上端から下端まで上下方向に延びる複数のリブが形成されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項6】
上記フロート部は、その上部に形成され、上記給水バルブが吐水状態のとき給水バルブから吐水される洗浄水の少なくとも一部を受け取って貯水すると共に上記給水バルブが止水状態のとき貯水した洗浄水を排水孔から排水する桶貯水部を備えている請求項1乃至5の何れか1項に記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項7】
上記給水バルブは、上記フロート部の桶貯水部に上記給水源の水圧の洗浄水を吐水する吐水管を備え、この吐水管が吐水方向に向かって口径が拡がるような形状を有している請求項6記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項8】
上記フロート部は、少なくとも上記桶貯水部の洗浄水が供給される開口部の周辺を覆う蓋部を備えている請求項6又は請求項7に記載の便器洗浄水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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