説明

便器

【課題】便器自体が清掃機能を有する新しい便器を提供すること。
【解決手段】便器本体1に床のゴミを吸引する吸引手段9、10、11、12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃機能を有する便器に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレルームは、トイレットペーパーを使用することもあり、埃、ゴミの多い部屋の一つであるが、トイレルームには便器が設置されており、スペースにゆとりがなく、掃除がしにくくなっている。特に便器後方の奥は人の手が届きにくい場所であり、掃除が困難になっている。また、雑巾などによる拭き取りは、顔が便蓋などに接近するため、敬遠されがちであり、ほうきや掃除機などの掃除道具を使用する場合には、他の部屋との共用はなるべくなら避けたく、これらのことがトイレルームの掃除を一層困難にしている。
【0003】
そこで、本出願人は、トイレ清掃装置を提案している(特許文献1)。
【0004】
トイレ清掃装置は、水洗便器に取り付けられる局部洗浄装置に備えた乾燥手段または脱臭装置を利用し、その吸込口または吹出口にフレキシブルホースの一端部を接続し、ファンを作動させることにより、フレキシブルホースの他端部から塵、埃を吸引するというものである。
【特許文献1】特開2004−27623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のトイレ清掃装置についての技術コンセプトを発展させ、便器自体が清掃機能を有する新しい便器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の便器は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0007】
第1に、便器本体に床のゴミを吸引する吸引手段が設けられている。
【0008】
第2に、上記において、吸引手段は、便器本体下部のスカート部の下端に設けられた吸引口と、便器本体の内部に設けられたファンと、吸引口とファンの吸気口とを連通接続する便器本体内部に設けられた吸気路とを備えている。
【0009】
第3に、上記において、吸引手段は、さらに、ファンの排気口に連通接続され、末端にボウルに臨む排出口を有する、便器本体の内部に設けられた排気路を備えている。
【0010】
第4に、上記において、床のゴミを集める回収手段が吸引口の周辺に設けられている。
【0011】
第5に、上記において、回収手段は、床のゴミを掃き集めるほうき部と、ほうき部を便器本体外と吸引口との間に移動させる機構部とを備えている。
【0012】
第6に、上記において、ほうき部は便器本体の外郭の一部を形成する。
【0013】
第7に、上記において、便器は、ボウル面の洗浄を自動的に行わせる制御部を備えた水洗便器であり、制御部は、ゴミがボウルに排出された後にボウル面の洗浄を自動的に行わせる。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明によれば、便器本体に吸引手段が設けられているので、床のゴミを便器が吸引し、除去することができる。
【0015】
上記第2の発明によれば、ファンの作動によって吸引口および吸気路を通じて床のゴミを吸引することができる。
【0016】
上記第3の発明によれば、排気路の末端の排出口がボウルに臨んでいるので、吸引したゴミをボウルに排出することができる。
【0017】
上記第4の発明によれば、回収手段によって床のゴミを吸引口の周辺に集めることができ、床のゴミを効率よく吸引し、除去することができる。
【0018】
上記第5の発明によれば、機構部によってほうき部を便器本体外と吸引口の間を往復移動させることにより床のゴミを吸引口の周辺に掃き集めることができる。
【0019】
上記第6の発明によれば、ほうき部は収納時に便器本体の外郭の一部となり、便器の外観が良好となる。
【0020】
上記第7の発明によれば、ボウルに排出した床のゴミを排出後に自動的に便器外に排出することができ、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の便器の第1の実施形態を示した斜視図である。
【0022】
図1に示した便器は、ロータンクのない水道管直結式の水洗便器である。すなわち、便器本体1の後部上端部に取り付けられた給水洗浄部2が、トイレルームの内壁に一端が固定された給水管3に止水栓4を介し、供給管5を通じて連通接続され、水道管と直結している。給水洗浄部2に備えた制御部6により、汚物排出時に洗浄水が水道管より直接ボウル7に供給され、ボウル面7aの洗浄が行われる。
【0023】
なお、図1は、便座および便蓋を省略して図示しているが、図1に示した水洗便器にも従来と同様に便座および便蓋が取り付けられる。
【0024】
便器本体1の下部のスカート部1aには、後方の側部下端に横長形状の凹部8が形成され、凹部8に便器本体1外に開口する横長形状の吸引口9が設けられている。便器本体1の後部下部には内部にファン10が設けられ、ファン10の吸気口10aは、便器本体1の内部に設けられた吸気路11を通じて吸引口9と連通接続されている。ファン10の排気口10bは、便器本体1の内部に設けられた排気路12の一端に連通接続している。排気路12の末端には排出口13が設けられ、排出口13はボウル7に臨んでいる。図1に示した水洗便器では、吸引口9、ファン10、吸気路11および排気路12によって吸引手段を構成している。
【0025】
ファン10を作動させると、負圧が生じ、吸引口9の周辺の床のゴミが吸引口9を通じて便器本体1の内部の吸気路11に吸い込まれる。吸い込まれたゴミは、ファン10の吸気口10aおよび排気口10bを通り、排気路12に送り出される。そして、気流にともなわれてゴミは排出口13からボウル7に排出される。このように、図1に示した水洗便器では、便器本体1に吸引手段が設けられているので、水洗便器自体が清掃機能を有しており、水洗便器が床の掃除をすることができ、床のゴミを吸い込むことができる。特に図1に示した水洗便器では、吸引口9が便器本体1の後方の側部下端に設けられているので、手の届きにくい便器後方の奥側の床を掃除することができる。吸い取ったゴミはボウル7に排出される。したがって、ゴミの捕集の手間が省ける。また、排出されたゴミは、給水洗浄部2を作動させることにより、排水とともに水洗便器外に排出することができる。ゴミの後始末の手間も省ける。このゴミの排出は、ゴミがボウル7に排出されたのを居住者が確認した後、リモコン操作などによって行う他に、制御部6によって制御することもできる。たとえば、ファン10の動作を制御部6によって制御し、制御部6に、ファン10の停止後に給水洗浄部2を作動させ、ボウル面7aの洗浄を行わせるように設定する。この設定により、ゴミがボウル7に排出された後のボウル面7aの洗浄によってゴミを自動的に水洗便器外に排出することができる。利便性が向上する。
【0026】
なお、本発明の便器では、排気路12は、末端に排出口13を有するものでなく、末端を便器本体1外に開口する排気口としたものとすることもできる。排気口は、便器本体1の後部側面などに形成することができる。この場合、吸い取ったゴミの捕集部を便器本体1の内部に設け、紙製、布製などのゴミパックにゴミを捕集するようにすることができる。便器本体1の側面などにゴミの捕集部に連通する開口を設け、ある程度の量のゴミが溜まった後にゴミパックを取り出し、掃除または交換を行うようにする。開口にはカバーを着脱自在に設け、ゴミパックの掃除または交換の際にカバーを取り外せるようにし、装着時にはカバーが便器本体1の外郭の一部を形成し、外観が良好に保てるようにする。
【0027】
また、図1に示した水洗便器には、床のゴミを集める回収手段が吸引口9の周辺に設られている。すなわち、吸引口9に対向し、下端部の便器本体1側にブラシ、へらなどの掃き取り手段14を有する横長形状のほうき部15が、便器本体1外と吸引口9との間を図1図中に示した矢印方向に移動可能に設けられている。ほうき部15は、左右両端部においてアーム16に支持されている。アーム16は便器本体1の内外を進退自在とされており、アーム16の進退にともなわれてほうき部15が図1図中に示した矢印方向に往復移動するようにしている。アーム16は、ほうき部15を便器本体1外と吸引口9との間に移動させる機構部の一部として設けられている。機構部は、アーム16の他、適宜なリンク、カムなどを含み、レバー操作などによってほうき部15を移動させることができる。また、機構部にはモータを設けることもでき、この場合、制御部6によってモータの動作を制御することができ、リモコン操作、設定されたタイミングなどによりほうき部15を移動させることができる。このようなほうき部15および機構部によって回収手段が構成されている。
【0028】
ほうき部15が便器本体1外と吸引口9との間を往復移動することによって、床に接触する掃き取り手段14が床のゴミを吸引口9の周辺に集める。吸引口9よりやや離れたところにあるゴミも吸引口9の周辺に集めることができ、床のゴミを効率よく吸引し、除去することができる。ほうき部15の動作を制御部6によって制御する場合には、ファン10の動作制御と合わせることにより、たとえば、リモコンに掃除スイッチを設け、掃除スイッチをONにしたときに、ファン10の作動開始の前にほうき部15を便器本体1外と吸引口9との間を数回往復移動させ、その後、ファン10を作動させて掃き取り集めた吸引口9周辺のゴミを吸い取り、ボウル7に排出し、そして、給水洗浄部2を作動させてボウル面7aの自動洗浄を行い、ゴミを水洗便器外に排出することができる。水洗便器周辺の掃除作業を自動化することができ、トイレルームの掃除の煩わしさが解消される。また、数時間、1日おきの所定時刻などにほうき部15によるゴミの自動回収を行わせるように制御部6に設定することにより、全自動式の掃除が可能ともなる。
【0029】
ほうき部15は、また、便器本体1の下部のスカート部1aに形成された凹部8の蓋を兼用している。使用しない場合には、ほうき部15は凹部8に納められ、凹部8を蓋するとともに、便器本体1の外郭の一部を形成する。したがって、ほうき部15の収納時にはほうき部15の表面が便器本体1の側部表面と面一となり、便器の外観が良好となる。
【0030】
なお、図1に示した水洗便器は水道管直結式の水洗便器であるが、本発明の水洗便器は、ロータンクを備えた水洗便器にも等しく適用可能である。
【0031】
図2は、本発明の便器の第2の実施形態を示した斜視図である。
【0032】
本実施形態において第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
本実施形態では、便器本体1の下部のスカート部1aの前方下端に凹部8が形成され、凹部8に吸引口9が設けられ、吸引口9の周辺にほうき部15およびアーム16を備えた床のゴミを集める回収手段が設けられている。また、吸気路11が、便器本体1の後部下部の内部に設けられたファン10の吸気口10aと吸引口9とを連通接続するように、前方から後方にかけて便器本体1の内部に設けられている。
【0034】
図2に示した水洗便器においても、ほうき部15による床のゴミの掃き集め、集めたゴミの吸い込み、ゴミのボウル7への排出およびゴミの水洗便器外への排出を図1に示した水洗便器と同様に行うことができる。つまり、本発明の便器では、吸引口9は、便器本体1の下部のスカート部1aの下端であれば、前方、後方を問わずに設けることができ、異なる位置にそれぞれ吸引口9を設けることもできる。また、吸引口9の形状も凹部8の形状に合わせた横長形状とする以外に丸、角などの穴状とすることもできる。この場合、一つの凹部8につき複数の穴状の吸引口9を設けることも可能である。吸気路11は、各吸引口9とファン10の吸気口10aを連通接続するように分枝状にすることができる。さらに、凹部8は、回収手段を必ずしも必要としない場合には省略することができ、この場合、吸引口9は、便器本体1の下部のスカート部1aに便器本体1外に開口するように設けることができる。
【0035】
なお、本発明の便器は、吸引口9が設けられたものとして便器本体1を成形するために、少なくとも便器本体1は樹脂製とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の便器の第1の実施形態を示した斜視図である。
【図2】本発明の便器の第2の実施形態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 便器本体
1a スカート部
6 制御部
9 吸引口
10 ファン
10a 吸気口
10b 排気口
11 吸気路
12 排気路
13 排出口
15 ほうき部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体に床のゴミを吸引する吸引手段が設けられていることを特徴とする便器。
【請求項2】
吸引手段は、便器本体下部のスカート部の下端に設けられた吸引口と、便器本体の内部に設けられたファンと、吸引口とファンの吸気口とを連通接続する便器本体内部に設けられた吸気路とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項3】
吸引手段は、さらに、ファンの排気口に連通接続され、末端にボウルに臨む排出口を有する、便器本体の内部に設けられた排気路を備えていることを特徴とする請求項2に記載の便器。
【請求項4】
床のゴミを集める回収手段が吸引口の周辺に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の便器。
【請求項5】
回収手段は、床のゴミを掃き集めるほうき部と、ほうき部を便器本体外と吸引口との間に移動させる機構部とを備えていることを特徴とする請求項4に記載の便器。
【請求項6】
ほうき部は便器本体の外郭の一部を形成することを特徴とする請求項5に記載の便器。
【請求項7】
便器は、ボウル面の洗浄を自動的に行わせる制御部を備えた水洗便器であり、制御部は、ゴミがボウルに排出された後にボウル面の洗浄を自動的に行わせることを特徴とする請求項3ないし6いずれか一項に記載の便器。

【図1】
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【図2】
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