説明

便座ユニット

【課題】 便座ユニットをジャストフィットさせ、取り付けた後にはぐらつきが生じない状態に取り付けることのできる便座ユニットを提供する。
【解決手段】 便座11と便蓋12とを回動自在に支持する基台部分の底部に便器20の前後方向にスリット3が設けられている。ボルト5の頭板5b’をスリット3幅よりも大きい幅とし、基台部分1のスリット3内に頭板部分5b’を挿入する。ボルト挿入孔21に雄ネジ5aを通し入れた状態において、ボルト挿入孔21付近の裏面から半球パッキン22とナット23を雄ネジ5aに螺合し、ボルト挿入孔21付近の肉厚とスリット3の肉厚とを挟み込むことにより、便器20と基台部分1を挟持して固定せしめる。ボルトの頭板部分5b’がスリット3の前後方向に長く延設されているので、基台部分1の相対的移動が制限されぐらつきが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器の上面に回動自在に取り付ける便座ユニットに関する。特に、便器上面の取り付け位置においてしっかり固定することができ、がたつきや緩みの生じにくい便座ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、洋式便器は陶器製の便器の上面に利用者が腰掛ける便座が取り付けられている。便座はプラスチック製であることが多い。昔は便器と便座が一揃えで便器メーカーにより販売され、施工業者により取り付け設置されていたが、近年、便座が多機能の便座ユニットとして市場に投入され、例えば、電熱ヒータを内蔵した暖房便座ユニットや上面を弾力性のある素材で構成したソフト便座ユニットなどがユニットとして販売・流通するようになっており、便座ユニットは消費者により機能面やデザイン面から選ばれている。このように、便器に対して他メーカーの便座ユニットを取り付けることが要求されるようになってきた。
【0003】
従来の便座ユニットの便器上面への取り付け構造例(特開2001−70199号公報に開示された構造例)を図11から図17に示す。なお、図13から図16は図11におけるスリットの延設方向に沿った断面図である。
【0004】
図11は従来の便座ユニットの基本構成を示す図である。図11に示すように、便座ユニットは、使用者が座るための便座11と、便座11に被せる便蓋12と、便座11および便蓋12が回動自在に支持される支持部を備えた基台部分1とで構成されている。便器20への便座ユニットの取り付けは、基台部分1を便器20の上面に対して固定することで便座ユニットを便器20上面に取り付け、全体を固定する構造となっている。
基台1には洋式便器4の長さ方向(前後方向)にスリット3が形成されている。スリット3にボルト5を取り付けることで基台部分1を便器20の上面に対して固定する。
便器20の下方のボルトの雄ネジ5bにナット22および23を螺合して締め付けることで、便座ユニットを便器20の最適位置において取り付ける構造となっている。
基台部分1の底部プレート2に洋風便器20の前後方向に延在するスリット3が2条平行に設けられている。なお、スリット3は、後端側に挿入口3aを備えている。一方、洋式便器20の後方部には、ボルト5の雄ネジ5bを通すためのボルト挿入孔21が2個設けられている。なお、ボルト挿入孔21は多様なメーカーのものに対応するため雌ネジは設けられておらず、単なる孔となっている。
【0005】
図12はボルト5のスリット3内への装着方法を模式的に説明する図である。まず、図12に示すように、ボルト5の頭部5aをスライド自在にスリット3内に挿入し、ボルト5に図示しないゴム、エラストマ等の軟質材で形成したパッキンを挿通する。その状態でボルト5を便器20のボルト挿入孔21に挿通する。便座ユニットは便器20に対して前後にスライドする状態であり、便座11の前端が洋式便器20の前端から5〜20mm程度突出するように便座ユニットを載せ置く位置を調整する。
【0006】
図13はボルト5をボルト挿入孔に通し入れた状態を示す図である。スリット3の延設方向に沿った断面図となっている。図13に示すようにこの状態において、ボルト5の頭部5aが該拡幅部3aを通って底部プレート2の上側に挿入され、ボルト5の雄ネジ5bが該スリット3を通って下方に延出されている。
【0007】
次に、図14に示すように、平パッキンを介してボルト5をボルト挿入孔21に通し、半球パッキン22及び図示しないスリップワッシャを介してナット23を該ボルト5に装着する。基台部分1の前後位置を調整してから該ナット23を締め込み、基台部分1を洋式便器20に固定し、便座ユニット全体を便器20に固定する。
この基台部分1には、便蓋12も上下方向回動自在に取り付けられている。
なお、多機能型の便座ユニットの場合、この基台部分1の内部に温水噴射ノズル等の機構が設置されている。
なお、従来技術において、基台部分1と便器20をしっかり固定させるために、ナット23の先端に吸盤構造を持たせる技術も知られている(特開2004−350784号公報)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−70199号公報
【特許文献2】特開2004−350784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に洋式便器本体は陶器製であり、焼成によりその大きさや径が若干バラツキを持つものである。つまり、便器20の大きさはそれぞれ若干異なっており、便器20と便座ユニットの大きさが合わない場合もあり、当初からうまく取り付けられなかったり、たとえ取り付けられても、使用をするうちにガタやネジ緩みが生じ易いという問題点があった。
【0010】
まず、取り付けた便座ユニットの前後方向のズレが問題となっていた。従来、便座基台部分1にスリット3を設けているのは、大きさや径にバラツキがある便器20に対して、どのメーカーの便座ユニットでも取り付けられるようにするために調整可能とするためである。つまり、洋式便器20に対する便座ユニットの前後方向位置を調整しうるようにスライドさせるために設けられた構造である。そして前後方向の位置決めをした後、ナット23により固定する構造となっているが、自然とこのナット23の締め込みが甘くなったり、便座ユニットに力が加えられたりしたときには、図15に示すように、ナットが緩んで便座ユニットがスリット方向に容易に位置ズレを起こすことがあった。
【0011】
次に、取り付けた便座ユニットの左右方向のズレまたや回転ズレが問題となっていた。ボルト5の雄ネジ5bの径は多様な便器に対して適合できるように便器のボルト挿入孔21の径よりも小さくなっておりある程度のマージンがあった。つまり、ボルト5の雄ネジ5bと便器20のボルト挿入孔21とがネジ式で螺合して締め合う構造ではなく、ボルト5の雄ネジ5bはボルト挿入孔21に対して単に挿入されているに過ぎず、雄ネジ5bの周囲は空間となっていた。ボルト雄ネジ5bは便器20のボルト挿入孔21の下方からナット23と螺合して締め合うものであり、ボルト5とナット23の螺合によりスリット3の肉厚と便器20の肉厚とを挟み込むことにより便器20と便座ユニットを固定しているに過ぎなかった。そのため、自然とこのナット23の締め込みが甘くなったり、便座ユニットに力が加えられたりしたときには、図16に示すようにナット23が緩んでボルト5の雄ネジ5bが前後に動くので、便座ユニットが前後に移動するという問題があった。また、力が横方向に加わると図17に示すようにボルト5の雄ネジ5bが回動し、便座ユニット全体が回動してしまうという問題があった。
【0012】
ここで、使用者が便座11に座ったときなど荷重を掛けた場合、便器20に対して便座ユニットがスライドして移動したり、ぐらついたりするために使用者に不安を与える等の問題があった。特に使用者が高齢者の場合、便座ユニットがぐらついていると座り込んだときに便座11から落ち、骨折するなどの被害が実際に発生する事案が報告されている。
このように、便座ユニットが便器本体にしっかりと固定されていないと利用者が使用しづらいばかりか思わぬ被害まで与えかねない。
【0013】
上記問題点に鑑み、本発明は、上記従来の問題点に鑑み案出されたものであって、公差がつきものの便器本体に対し、様々なメーカーの便座ユニットをジャストフィットさせ、取り付けた後にはぐらつきが生じない状態に取り付けることのできる便座ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第1の便座ユニットは、
便器の上に載せ置かれ使用者が座るための便座と、
前記便座に被せる便蓋と、
前記便座および前記便蓋が回動自在に支持される支持部と、底部に前記便器の前後方向にスリットが延在し、後面に前記スリットの開口を備えた基台部分と、
前記スリット幅よりも大きい幅の頭板部分と前記スリット幅よりも小さい径の雄ネジとを持ち、前記基台部分のスリット内に前記頭板部分を挿入して前記スリットから下方に前記雄ネジを突出せしめるボルトと、
前記便器に設けられているボルト挿入孔に前記雄ネジを通し入れた状態において、前記便器のボルト挿入孔付近の裏面から前記雄ネジに螺合し、前記便器のボルト挿入孔付近の肉厚と前記スリットの肉厚とを挟み込むことにより、前記便器と前記基台部分を挟持して固定せしめるナットとを備え、
前記ボルトの頭板部分を前記スリットの前後方向に長く延設し、前記スリットと前記ボルトの頭板部分の相対的回転移動を制限し、前記便座ユニットの前記便器に対する相対的移動を制限せしめることを特徴とする。
上記構成のようにボルトの頭板部分を工夫せしめることにより、便座ユニットの便器に対する相対的移動が制限されるので、便座ユニットがぐらつきにくくかつずれにくくなる。
【0015】
次に、上記構成において、前記ボルトの頭板部分において前記雄ネジを設ける位置を前記延設方向の一端付近とし、他端付近に振れ止めピン受入口を設け、
前記ボルトの頭板部分よりも大きな面積を持ち、前記振れ止めピン受入口に対応する位置に振れ止めピン挿通孔を備えたパッキンを前記便器と前記ボルトの頭板部分との間に挟み込み、
振れ止めピンを前記パッキンの触れ止めピン挿通孔を通して前記ボルトの頭板部分の振れ止めピン受入口に固定し、前記ボルトを横振れを防止せしめることが好ましい。
上記構成により、ボルトの横振れが防止され、さらに便座ユニットのぐらつきがなくなる。
【0016】
次に、本発明の第2の便座ユニットは、
便器の上に載せ置かれ使用者が座るための便座と、
前記便座に被せる便蓋と、
前記便座および前記便蓋が回動自在に支持される支持部と、底部に前記便器の前後方向にスリットが延在し、後面に前記スリットの開口を備えた基台部分と、
前記スリット幅よりも大きい幅の頭板部分と前記スリット幅よりも小さい径の雄ネジとを持ち、前記基台部分のスリット内に前記頭板部分を挿入して前記スリットから下方に前記雄ネジ部分を突出せしめるボルトと、
前記便器に設けられているボルト挿入孔に前記雄ネジを通し入れた状態において、前記雄ネジに螺合し、前記スリットの肉厚と前記便器のボルト挿入孔付近の肉厚とを挟み込むことにより、前記便器と前記基台部分を挟持して固定せしめるナットとを備え、
前記ボルト挿入孔の径より小さく、前記雄ネジに被せることにより前記ボルト挿入孔内に入り込むチューブパッキンを設け、前記チューブパッキンの少なくとも一部の径を前記ボルト挿入孔内において膨張可能とし、前記ボルト挿入孔内で前記雄ネジを固定せしめることを特徴とする。
上記構成のように一部の径が調整自在なチューブパッキンを用いれば、当該チューブパッキンの一部をボルト挿入孔内で適度に膨らませることにより、チューブパッキンを介してボルト挿入孔と雄ネジ部分とが密着し合って遊ぶことがなくなり、便座ユニットと便器とがしっかりと固定される。
【0017】
次に、本発明の第3の便座ユニットは、
便器の上に載せ置かれ使用者が座るための便座と、
前記便座に被せる便蓋と、
前記便座および前記便蓋が回動自在に支持される支持部と、底部に前記便器の前後方向にスリットが延在し、後面に前記スリットの開口を備えた基台部分と、
前記スリット幅よりも大きい幅の頭板部分と前記スリット幅よりも小さい径の雄ネジとを持ち、前記基台部分のスリット内に前記頭板部分を挿入して前記スリットから下方に前記雄ネジを突出せしめるボルトと、
前記便器に設けられているボルト挿入孔に前記雄ネジを通し入れた状態において、前記雄ネジに螺合し、前記スリットの肉厚と前記便器のボルト挿入孔付近の肉厚とを挟み込むことにより、前記便器と前記基台部分を挟持して固定せしめるナットとを備え、
前記ボルト挿入孔の径より小さく、前記雄ネジに螺合することにより前記ボルト挿入孔内に入り込む内ナットと前記内ナットに通し入れる可撓性を有するリングを設け、前記内ナットの径が前記基台部分から離れるほど大きくなるように傾斜を持たせたことを特徴とする。
上記構成により、リングを前記内ナットの外表面に沿わせることにより、リングを介してボルト挿入孔と雄ネジ部分とが密着し合って遊ぶことがなくなり、便座ユニットと便器とがしっかりと固定される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の便座ユニットによれば、便座ユニットの装着時において、便器のボルト挿入孔に対して便座ユニットのボルトの雄ネジを差し込むのみで良く、便座ユニットの固定時において、便器のボルト挿入孔と便座ユニットのボルトの雄ネジとの遊びが適切になくなり両者をしっかりと固定することができ、便座ユニットが便器に対して相対的に移動しにくく回転しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の便座ユニットの実施形態を説明する。ただし、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に示した具体的な用途や形状・寸法などには限定されない。
【実施例1】
【0020】
実施例1として本発明の第1の便座ユニットの構成例を示す。
図1は、本発明の第1の便座ユニットの構成を模式的に示す図である。図1に示すように、本発明の便座ユニットは、便器20の上に載せ置かれ使用者が座るための便座11と、便座11に被せる便蓋12と、基台部分1を備えている。基台部分1には、便座11および便蓋12が回動自在に支持される支持部が設けられている。
【0021】
基台部分1は便器20に対して固定される。本発明は基台部分1がしっかりと便器20に固定されるよう工夫されている。なお、図1に示した24はパッキンであり、パッキン24は便器20と基台部分1との間の緩衝材としての役割を持つ。
基台部分1の底部には便器の前後方向にスリット3が延在している。スリット3の後面にはスリット開口3aがあり、基台部分1の後方のスリット開口3からスリット3内にボルト5の頭板5b’を挿入することができるようになっている。なお、この例では振れ止めピン5dを用いる構成例として説明する。後述するように振れ止め防止ピン5dを挿入するために、ボルト5の頭板5aに振れ止めピン受入口5cが設けられ、パッキン24には振れ止めピン挿通孔2が設けられている。
【0022】
本発明の実施例1にかかる便座ユニットはボルト5の頭板5b’の形状と振れ止め防止ピン5dを設ける点に工夫がある。ボルト5は、スリット3の幅よりも大きい幅の頭板5b’とスリット3の幅よりも小さい径の雄ネジ5aとを備えている。また、後述する振れ止め防止ピン5dを受け入れるための振れ止めピン受入口5cが設けられている。なお、ボルト5において雄ネジ5aを設ける位置を頭板5b’の延設方向の一端付近とし、他端付近に振れ止めピン受入口5cが設けられている。この例では頭板5b’の延設方向において基台部分1の背面側に雄ネジ5a、正面側に振れ止めピン受入口5cが設けられている。
【0023】
図3は実施例1の構成例におけるボルト5の基台部分1への取り付け方法を模式的に示す図である。図3は基台部分1のスリット3付近を模式的に取り出して示している。
【0024】
まず、基台部分1の後方のスリット開口3からスリット3内にボルト5の頭板5b’を挿入して前後方向の位置調整を行う。
【0025】
次に、便座20の上にパッキン24を置く。パッキン24はボルトの頭板部分5b’よりも大きな面積を持ち、振れ止めピン受入口5cに対応する位置に振れ止めピン挿通孔2を備えている。このパッキン24を便器とボルトの頭板5b’との間に挟み込む。
なお、図1の構成例ではパッキン24が左右のスリット3の両方にまでまたがるベースプレートとなっているが、ボルトの頭板よりも大きいものであれば図2のように左右に分離した2枚のパッキン24’をそれぞれ左右のボルト5の頭板5b’の下に挟み込む形でも良い。
振れ止めピン5dをパッキン24の振れ止めピン挿通孔2を通してボルトの頭板部分5b’の振れ止めピン受入口5cに固定する。このように振れ止め防止ピン5dを介してパッキン24とボルト5dとスリット3を固定するので横振れを防止することができる。
この図3の状態の基台部分1全体を、便器20の上に載せ、ボルト挿入孔21に雄ネジ5aを通し入れ、さらに、便器20のボルト挿入孔21付近の裏面から半球パッキン22を挟んでナット23を雄ネジ5aに螺合する。
ナット23による締め付けによって便器20のボルト挿入孔21付近の肉厚とスリット3の肉厚とを挟み込むことにより、便器20と基台部分1を挟持して固定せしめる。
【0026】
なお、ボルト5の挿入方向を変えることが可能である。図3に示した挿入方向は、頭板5b’の延設方向において基台部分1の背面側に雄ネジ5a、正面側に振れ止めピン受入口5cが位置する方向であったが、図4に示すようにボルトを逆方向にして挿入することができる。つまり、頭板5b’の延設方向において基台部分1の正面側に雄ネジ5a、背面側に振れ止めピン受入口5cが位置する方向にて挿入することも可能である。様々なメーカーのものが混在するのでスリットの長さ、ボルト挿入孔21の位置、振れ止めピン挿通孔2の位置などに応じて、ボルト5を図3の方向にて挿入するか図4の方向にて挿入するかを選択すれば良い。
【0027】
本発明の実施例1の第1の便座システムでは、以下の効果が得られている。
図5はボルトの頭板部分5b’によりスリット3内での回動が制限される様子を示す図である。図5に示すように、ボルトの頭板部分5b’がスリット3の前後方向に長く延設されているので、スリット3とボルトの頭板部分5b’の相対的回転移動が制限され、基台部分1全体の便器20に対する相対的移動が制限されている。
さらに、振れ止め防止ピン5dによってボルトの頭板部分5b’が横方向に振れ動くことが防止される。
このように便器20と基台部分1がしっかりと固定され、取り付けた後には基台部分全体がぐらつきの少ない状態で取り付けられる。
【実施例2】
【0028】
実施例2として本発明の第2の便座ユニットの構成例を示す。
図6は、本発明の第2の便座ユニットの構成を模式的に示す図である。図6に示すように、本発明の便座ユニットもその基本構成は、実施例1に示した図1と同様であり、便器20の上に載せ置かれ使用者が座るための便座11と、便座11に被せる便蓋12と、スリット3を有する基台部分1、ボルト5、半球パッキン22、ナット23を備えている点は同じである。ここで、本実施例2では、チューブパッキン6を用いている点に特徴がある。
【0029】
図7に示すように、チューブパッキン6は少なくとも一部の径が調整可能となっており、膨張可能な構造を備えている。チューブパッキン6の一部の径を膨張させる構造は特に限定されないが、例えば、膨張させる部分の素材のみ可撓性を高く(つまり延びやすく)しておく構造がある。後述するように半球パッキン22およびナット23によりチューブパッキン6に対して上下方向に圧力を掛けるとチューブパッキン6が歪むがその歪みによる影響が素材の柔らかい部分に大きく現われて当該部分が膨らむこととなる。図7(a)ではチューブパッキン6が2箇所において膨らむ場合を示している。
【0030】
チューブパッキン6は、ボルト挿入孔21の径より小さく、雄ネジ5aに被せることによりボルト挿入孔内21内に入り込み、図7(b)に示したように、チューブパッキン6をボルト雄ネジ5aに被せた上でチューブパッキン6の一部の径を膨張させることにより、ボルト挿入孔21内の内壁に密着固定し、ボルト挿入孔21内でチューブパッキン6およびボルト5が遊ぶことがなくなり、ボルト5を介して基台部分1と便器20がしっかりと固定される。
【0031】
図8はチューブパッキン6の装着の手順を示す図である。
図8(a)の状態は、基台部分1のスリットにボルト5を通し入れ、ボルトの雄ネジ5aを便器20のボルト挿入孔21に通し入れた状態である。便器20の裏側からチューブパッキン6を雄ネジ5aに通し入れる。
図8(b)の状態は、半球パッキン22およびナット23を雄ネジ5aに螺合して上方に締め上げて行き、チューブパッキン6を下方から押し上げた状態である。チューブパッキン6の上端近くとやや下方の2箇所の径が膨らみ、チューブパッキン6とボルト挿入孔21の内壁とが密着し合ってボルト5がボルト挿入孔21内でしっかりと固定される。
【0032】
本発明の実施例2の第2の便座システムでは、このように便器20と基台部分1がしっかりと固定され、取り付けた後には基台部分全体がぐらつきの少ない状態で取り付けられるという効果が得られている。
なお、実施例1に示したように、ボルトの頭板部分5b’の形状の工夫、振れ止め防止ピン5dによる振れ止め防止の工夫を組み合わせることができる。
【実施例3】
【0033】
実施例3として本発明の第3の便座ユニットの構成例を示す。
図9は、本発明の第3の便座ユニットの構成を模式的に示す図である。図9に示すように、本発明の便座ユニットもその基本構成は、実施例1に示した図1と同様であり、便器20の上に載せ置かれ使用者が座るための便座11と、便座11に被せる便蓋12と、スリット3を有する基台部分1、ボルト5、半球パッキン22、ナット23を備えている点は同じである。ここで、本実施例3では、内ナット7aとリング7bを用いている点に特徴がある。
【0034】
図9に示すように、内ナット7aはボルト挿入孔21の径より小さく、雄ネジ5aに螺合することによりボルト挿入孔21内に入り込むサイズとなっている。内ナット7aの径は図示の天地方向において基台部分1から離れるほど大きくなるように傾斜を持っている。
リング7bは内ナット7aに通し入れるものであり、可撓性を有する素材、たとえばゴムで出来ている。内ナット7aの径は図示のように傾斜を持っているので可撓性を有するリングが内ナット7aの外表面に通し入れられると、下方に位置する程その径が膨らむこととなる。
【0035】
図10は内ナット7aおよびリング7bの装着の手順を示す図である。
図10(a)の状態は、基台部分1のスリットにボルト5を通し入れ、ボルトの雄ネジ5aを便器20のボルト挿入孔21に通し入れた状態である。便器20の裏側から内ナット7aとリング7bを雄ネジ5aに通し入れる。
図10(b)の状態は、内ナット7aおよびリング7bを雄ネジ5aに螺合して上方に締め上げて行き、下方から挿入した状態である。取り付け作業員が取り付ける便器のボルト挿入孔21の内径のおおよそを見て、内ナット7aの外表面に取り付けるリングの位置を調整し、リングのおおよその外径がボルト挿入孔21の内径となるように合わせる。
【0036】
リング7bを取り付けたまま内ナット7aを締め上げて上方向に移動していくと、リング7bの外表面がボルト挿入孔21の内壁に触れ、摩擦によってリング7bはさらに内ナット7aの表面を下方に移動し、図10(b)に示すように、ボルト挿入孔21内の内壁に密着固定し、ボルト挿入孔21内でボルト5が遊ぶことがなくなり、ボルト5を介して基台部分1と便器20がしっかりと固定される。
【0037】
本発明の実施例3の第3の便座システムでは、このように便器20と基台部分1がしっかりと固定され、取り付けた後には基台部分全体がぐらつきの少ない状態で取り付けられるという効果が得られている。
なお、実施例1に示したように、ボルトの頭板部分5b’の形状の工夫、振れ止め防止ピン5dによる振れ止め防止の工夫を組み合わせることができる。
【0038】
以上、本発明の便座ユニットにおける好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は多様なメーカーの便座ユニットに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の便座ユニットの構成を模式的に示す図
【図3】実施例1の構成例におけるボルト5の基台部分1への取り付け方法を模式的に示す図
【図4】ボルト5の基台部分1への取り付け方向を図3に示す方向とは逆にして取り付ける様子を模式的に示す図
【図5】ボルトの頭板部分5b’によりスリット3内での回動が制限される様子を示す図
【図6】本発明の第2の便座ユニットの構成を模式的に示す図
【図7】チューブパッキン6の一部の径が調整可能である様子を示す図
【図8】チューブパッキン6の装着の手順を示す図
【図9】本発明の第3の便座ユニットの構成を模式的に示す図
【図10】内ナット7aおよびリング7bの装着の手順を示す図
【図11】従来の便座ユニットの基本構成を示す図
【図12】ボルト5のスリット3内への装着方法を模式的に説明する図
【図13】ボルト5をボルト挿入孔に通し入れた状態を示す図
【図14】半球パッキン22及びナット23を締めた状態を示す図
【図15】ナットが緩んで便座ユニットがスリット方向に容易に位置ズレを起こす様子を示す図
【図16】ナット23が緩んでボルト5の雄ネジ5bが前後に動く様子を示す図
【図17】ナット23が緩んでボルト5の雄ネジ5bが回動してしまう様子を示す図
【符号の説明】
【0041】
1 基台部分
2 ピン穴
3 スリット
5 ボルト
5a 雄ネジ
5b,5b’ 頭板
5c 振れ止めピン受入口
5d 振れ止めピン
6 チューブパッキン
7a 内ナット
7b リング
11 便座
12 便蓋
20 便器
21 ボルト挿入孔
22 半球パッキン
23 ナット
24 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上に載せ置かれ使用者が座るための便座と、
前記便座に被せる便蓋と、
前記便座および前記便蓋が回動自在に支持される支持部と、底部に前記便器の前後方向にスリットが延在し、後面に前記スリットの開口を備えた基台部分と、
前記スリット幅よりも大きい幅の頭板部分と前記スリット幅よりも小さい径の雄ネジとを持ち、前記基台部分のスリット内に前記頭板部分を挿入して前記スリットから下方に前記雄ネジを突出せしめるボルトと、
前記便器に設けられているボルト挿入孔に前記雄ネジを通し入れた状態において、前記便器のボルト挿入孔付近の裏面から前記雄ネジに螺合し、前記便器のボルト挿入孔付近の肉厚と前記スリットの肉厚とを挟み込むことにより、前記便器と前記基台部分を挟持して固定せしめるナットとを備え、
前記ボルトの頭板部分を前記スリットの前後方向に長く延設し、前記スリットと前記ボルトの頭板部分の相対的回転移動を制限し、前記便座ユニットの前記便器に対する相対的移動を制限せしめることを特徴とする便座ユニット。
【請求項2】
前記ボルトの頭板部分において前記雄ネジを設ける位置を前記延設方向の一端付近とし、他端付近に振れ止めピン受入口を設け、
前記ボルトの頭板部分よりも大きな面積を持ち、前記振れ止めピン受入口に対応する位置に振れ止めピン挿通孔を備えたパッキンを前記便器と前記ボルトの頭板部分との間に挟み込み、
振れ止めピンを前記パッキンの触れ止めピン挿通孔を通して前記ボルトの頭板部分の振れ止めピン受入口に固定し、前記ボルトを横振れを防止せしめることを特徴とする請求項1に記載の便座ユニット。
【請求項3】
便器の上に載せ置かれ使用者が座るための便座と、
前記便座に被せる便蓋と、
前記便座および前記便蓋が回動自在に支持される支持部と、底部に前記便器の前後方向にスリットが延在し、後面に前記スリットの開口を備えた基台部分と、
前記スリット幅よりも大きい幅の頭板部分と前記スリット幅よりも小さい径の雄ネジとを持ち、前記基台部分のスリット内に前記頭板部分を挿入して前記スリットから下方に前記雄ネジ部分を突出せしめるボルトと、
前記便器に設けられているボルト挿入孔に前記雄ネジを通し入れた状態において、前記雄ネジに螺合し、前記スリットの肉厚と前記便器のボルト挿入孔付近の肉厚とを挟み込むことにより、前記便器と前記基台部分を挟持して固定せしめるナットとを備え、
前記ボルト挿入孔の径より小さく、前記雄ネジに被せることにより前記ボルト挿入孔内に入り込むチューブパッキンを設け、前記チューブパッキンの少なくとも一部の径を前記ボルト挿入孔内において膨張可能とし、前記ボルト挿入孔内で前記雄ネジを固定せしめることを特徴とする便座ユニット。
【請求項4】
便器の上に載せ置かれ使用者が座るための便座と、
前記便座に被せる便蓋と、
前記便座および前記便蓋が回動自在に支持される支持部と、底部に前記便器の前後方向にスリットが延在し、後面に前記スリットの開口を備えた基台部分と、
前記スリット幅よりも大きい幅の頭板部分と前記スリット幅よりも小さい径の雄ネジとを持ち、前記基台部分のスリット内に前記頭板部分を挿入して前記スリットから下方に前記雄ネジを突出せしめるボルトと、
前記便器に設けられているボルト挿入孔に前記雄ネジを通し入れた状態において、前記雄ネジに螺合し、前記スリットの肉厚と前記便器のボルト挿入孔付近の肉厚とを挟み込むことにより、前記便器と前記基台部分を挟持して固定せしめるナットとを備え、
前記ボルト挿入孔の径より小さく、前記雄ネジに螺合することにより前記ボルト挿入孔内に入り込む内ナットと前記内ナットに通し入れる可撓性を有するリングを設け、前記内ナットの径が前記基台部分から離れるほど大きくなるように傾斜を持たせたことを特徴とする便座ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−160124(P2007−160124A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−10892(P2007−10892)
【出願日】平成19年1月20日(2007.1.20)
【出願人】(503334448)
【出願人】(507022569)
【Fターム(参考)】