説明

便座装置

【課題】フィルターのメンテナンスを容易にすることのできる便座装置を提供する。
【解決手段】便座装置は、洋風便器本体1の後部上面に載置可能なケーシング10と、ケーシング10に回動自在に軸支された便座2とを備えている。ケーシング10は、ファン20及びファン20よりも上流側に配置されたフィルター30を有する吸排気機構を具備した空気清浄装置50を収納している。ケーシング10の上面にフィルター30の差込口が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の便座装置が開示されている。この便座装置は、洋風便器本体の後部上面に載置されるケーシングを備えている。ケーシングには、吸排気機構を具備した脱臭装置が収納されている。吸排気機構は、ファン及びファンより上流側に配置されたフィルターを有している。また、ケーシングには、便座及び便蓋が回動可能に軸支されている。この便座装置は、ケーシングの左右一方の側面にフィルターの差込口が設けられている。このため、フィルターを差込口から引き出し、フィルターに付着したほこりを取り除くことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−265367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の便座装置では、差込口がケーシングの左右一方の側面に設けられているため、その側面の外方向にフィルターを出し入れするための空間が必要となる。ケーシングが後部上面に載置される洋風便器本体は、トイレルームの壁面に近接して設置されることが多い。トイレルームの壁面に近接して設置された洋風便器本体にケーシングを載置すると、差込口が見え難く、フィルターの出し入れがし難い。また、メンテナンスのためにフィルターをケーシングから出し入れする際に、壁面にフィルターやメンテナンス者の手等が干渉してしまうことがある。このような場合には、ケーシングからフィルターを出し入れすることが困難になる。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、フィルターのメンテナンスを容易にすることのできる便座装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の便座装置は、ファン及び該ファンよりも上流側に配置されたフィルターを有する吸排気機構を具備した機能装置を収納し、洋風便器本体の後部上面に載置可能なケーシングと、該ケーシングに回動自在に軸支された便座とを備えた便座装置において、
前記ケーシングの上面に該フィルターの差込口が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この便座装置では、ケーシングの上面に設けられた差込口に対して、ケーシングの上方からフィルターを出し入れすることができる。このため、差込口を目視しながらフィルターを容易に出し入れすることができる。また、ケーシングの上方には、フィルターを出し入れするのに障害となるものはなく、フィルターを容易に出し入れすることができる。
【0008】
したがって、本発明の便座装置は、フィルターのメンテナンスを容易にすることができる。
【0009】
フィルターは、先端部に開口を有する薄板状の枠体と、開口に設けられたメッシュ状のフィルター部材とを有し、差込口は、ケーシングが洋風便器本体の後部上面に載置された際に洋風便器本体の前後方向に伸びたスリット形状であり得る。この場合、差込口が前後方向に伸びたスリット形状であるため、薄板状の枠体を有するフィルターを洋風便器本体の前部側から容易に出し入れすることができる。
【0010】
ファンは、回転軸方向に直交する側面に吸気口が設けられ、ケーシングが洋風便器本体の後部上面に載置された際に回転軸方向が洋風便器本体の左右方向かつ水平方向を向いて配置されたシロッコファンであり、差込口から差し込まれたフィルター部材が吸気口に対向して配置可能であり得る。この場合、フィルター部材を容易かつ確実にファンの上流側に配置させることができる。
【0011】
フィルターの枠体は、上端部に形成され、差込口の上面に係止する把持部を有し、フィルターが差込口に差し込まれた際に把持部より下方に位置する後側面が、下方に向かって前方側に湾曲して形成され得る。この場合、メンテナンス者は把持部を指で摘まんで、差込口の後端開口縁にフィルターの枠体の後側面を沿わせるようにして、フィルターを出し入れする。このようにすると、把持部を上方から徐々に前方に引き出すようにしてフィルターを引き出すことができる。また、把持部を前方から徐々に下方に押し込むようにしてフィルターを差し込むことができる。このため、洋風便器本体の前部側からフィルターの出し入れを容易に行うことができる。
【0012】
フィルターは先端部の外周縁が円弧状に形成され、ケーシング内には、先端部を案内するガイド部材が形成され得る。この場合、フィルターの先端部が円弧状に形成されているため、ガイド部材に案内され易く、フィルターの出し入れを容易に行うことができる。また、フィルターを所定の位置に確実に配置することができる。
【0013】
ファンは、ケーシング内に吊り下げ保持され得る。この場合、差込口とファンとの位置決めが、容易かつ正確に行うことができるため、フィルターをファンの吸気口に対向する位置に確実に配置することができる。
【0014】
ケーシングの上面に着脱自在に設けられ、少なくとも差込口を覆うカバーを備え得る。この場合、差込口及びフィルターがカバーにより隠蔽されるため、便座装置の上面が凹凸のないすっきりとした外観にすることができる。このため、便座装置の上面を容易に清掃することができる。また、フィルター等の盗難やいたずら等を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の便座装置を具体化した実施例1を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1の便座装置は、図1に示すように、洋風便器本体1の後部上面に載置可能なケーシング10を備えている。ケーシング10は、図3及び図4に示すように、便器本体1の上面に取り付けられる後ベース部材14Bと、後ベース部材14Bに対して昇降自在に取り付けられる前ベース部材14Fと、下方に開口し、前ベース部材14Fに取り付けられるケーシング本体15とを有している。ケーシング本体15は、図1及び図2に示すように、上面に凹設され、下面にビス孔を有する取付凹部18を有し、取付凹部18に挿入された、図示しないビスにより、前ベース部材14Fに取り付けられる。ケーシング本体15の前部上面には、回動自在に便座2及び便蓋3が軸支されている。
【0017】
ケーシング10は、図1〜図4に示すように、便器本体1の前方から見て左側の後部に、ファン20及びフィルター30を有する吸排気機構と、ファン20の側面に設けられた除菌イオン発生機構40とを具備した空気清浄装置50を収納している。また、ケーシング10は、図1及び図2に示すように、空気清浄装置50の右側に便器洗浄装置の給水バルブ装置4を収納している。ケーシング本体15の後部上面は、給水バルブ装置4の上方に開口部12が形成され、給水バルブ装置4のメンテナンスを可能としている。
【0018】
ファン20は、図2〜図4に示すように、除菌イオン発生機構40が設けられた側面とは反対側の側面であり、回転軸方向に直交する側面に吸気口21が設けられたシロッコファンである。ファン20は、ケーシング10が洋風便器本体1の後部上面に載置された際に回転軸方向が洋風便器本体1の左右方向かつ水平方向を向くように配置されている。また、ファン20は、ケーシング本体17の後側面に設けられた排気口17に連通する上向きの排気路23を有している。このように吸排気機構は、ファン20、排気路23及び後述するフィルター30を有している。この吸排気機構を備えた空気清浄装置50は、ケーシング10内の空気を吸引し、吸引した空気とともに、空気清浄装置50から発生した除菌イオンを排気口17から洋風便器本体1の後部上方に向けて放出することができる。
【0019】
排気路23を有するファン20は、ケーシング本体15の内部に設けられた固定部15Dの下面に固定片22を介して吊り下げられている。このため、ファン20は、ケーシング本体15に対して所定の位置に固定されるため、後述する差込口11とファン20との位置決めが、容易かつ正確に行うことができる。
【0020】
フィルター30の差込口11は、図1〜図4に示すように、ケーシング本体15の後部上面に設けられている。差込口11は、ケーシング本体15内に収納されたファン20の吸気口21が設けられた側面に沿ってスリット形状に形成されている。つまり、差込口11は、ケーシング10が洋風便器本体1の後部上面に載置された際に洋風便器本体1の前後方向に伸びている。後述するカバー5を取り外した状態では、差込口11を目視しながらフィルター30を容易に出し入れすることができる。また、ケーシング10の上方には、フィルター30を出し入れするのに障害となるものはないため、フィルター30をケーシング10の上方から容易に出し入れすることができる。また、差込口11が前後方向に伸びたスリット形状であるため、薄板上の枠体33を有するフィルター30を洋風便器本体1の前方から容易に出し入れすることができる。
【0021】
したがって、実施例1の便座装置は、フィルターのメンテナンスを容易にすることができる。
【0022】
フィルター30は、外周縁が円弧状に形成された先端部31に開口32を有する薄板状の枠体33と、開口32に設けられたメッシュ状のフィルター部材34とを有している。枠体33の上端部には、差込口11の上面に係止する鍔部35Aを有する把持部35が形成されている。枠体33は、差込口11に差し込まれた際に把持部35より下方に位置する後側面36が下方に向かって前方側に湾曲して形成されている。このため、メンテナンス者は把持部35を指で摘まんで、差込口11の後端開口縁11Bにフィルター30の枠体33の後側面36を沿わせるように、フィルター11を出し入れすると、図3に示すように、把持部35を上方から徐々に前方に引き出すようにしてフィルター11を引き出すことができる。また、把持部35を前方から徐々に下方に押し込むようにしてフィルターを差し込むことができる。このため、洋風便器本体1の前部側からフィルター11の出し入れを容易に行うことができる。
【0023】
ケーシング本体15内には、図3及び図4に示すように、フィルター30が差込口11から差し込まれる際に、フィルター30の先端部31を案内するガイド部16と、フィルター11の枠体33に設けられた係止孔37に係止する係止爪13とが設けられている。このため、差込口11からフィルター30を差し込むと、フィルター部材34をファン20の吸気口21に対向する位置、つまり、ファン20の上流側に容易かつ確実に配置することができる。フィルター30の先端部31が円弧状に形成されているため、ガイド部16に案内され易く、フィルター30の出し入れを容易に行うことができる。
【0024】
便座装置は、図1に示すように、ケーシング本体15の後部上面を覆うカバー5が着脱自在に取り付けられている。カバー5は、常時、ケーシング本体15の後部上面に取り付けられており、差込口11や開口部12等を隠蔽する。カバー5は、フィルター30等をメンテナンスする際等にケーシング本体15の後部上面から取り外される。このように、洋風便器本体が使用される際には、ケーシング本体15の後部上面が凹凸のないすっきりした外観にすることができる。また、便座装置の上面を容易に清掃することができる。さらに、フィルター11等の盗難やいたずら等を防ぐことができる。
【0025】
以上において、本発明を実施例1に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨に逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0026】
例えば、ファン及びフィルターを有する吸排気装置を具備した機能装置は、脱臭装置であってもよい。
フィルターは、脱臭材が収納された立体形状であってもよい。この場合、差込口はフィルターの形状に合わせた形状で開口される。
ケーシング本体15に吸気口を貫設し、吸排気装置は吸気口からケーシング10の外部の空気を吸引するようにしてもよい。
ファンは、プロペラファンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は洋風水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1の便座装置が取り付けられた洋風水洗式便器の斜視図である。
【図2】実施例1の便座装置の要部拡大図である。
【図3】実施例1の便座装置のフィルターの出し入れ状態を示す断面図である。
【図4】実施例1の便座装置のフィルターが差し込まれた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…洋風便器本体
2…便座
5…カバー
10…ケーシング
11…差込口
16…ガイド部材
20…ファン
21…吸気口
30…フィルター
31…先端部
32…開口
33…枠体
34…フィルター部材
35…把持部
36…後側面
50…空気清浄装置(機能装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン及び該ファンよりも上流側に配置されたフィルターを有する吸排気機構を具備した機能装置を収納し、洋風便器本体の後部上面に載置可能なケーシングと、該ケーシングに回動自在に軸支された便座とを備えた便座装置において、
前記ケーシングの上面に該フィルターの差込口が設けられていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記フィルターは、先端部に開口を有する薄板状の枠体と、該開口に設けられたメッシュ状のフィルター部材とを有し、
前記差込口は、前記ケーシングが前記洋風便器本体の後部上面に載置された際に該洋風便器本体の前後方向に伸びたスリット形状である請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記ファンは、回転軸方向に直交する側面に吸気口が設けられ、前記ケーシングが前記洋風便器本体の後部上面に載置された際に回転軸方向が該洋風便器本体の左右方向かつ水平方向を向いて配置されたシロッコファンであり、
前記差込口から差し込まれた前記フィルター部材が該吸気口に対向して配置可能である請求項2記載の便座装置。
【請求項4】
前記フィルターの枠体は、上端部に形成され、前記差込口の上面に係止する把持部を有し、該フィルターが該差込口に差し込まれた際に該把持部より下方に位置する後側面が、下方に向かって前方側に湾曲して形成されている請求項2又は3記載の便座装置。
【請求項5】
前記フィルターは先端部の外周縁が円弧状に形成され、前記ケーシング内には、該先端部を案内するガイド部材が形成されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の便座装置。
【請求項6】
前記ファンは、前記ケーシング内に吊り下げ保持されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の便座装置。
【請求項7】
前記ケーシングの上面に着脱自在に設けられ、少なくとも前記差込口を覆うカバーを備えた請求項1乃至6のいずれか1項記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−279324(P2009−279324A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136680(P2008−136680)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】