説明

便蓋および便蓋用脚ゴム

【課題】便座との接触を繰り返しても脚ゴムが外れにくい便蓋および便蓋用脚ゴムを提供する。
【解決手段】便蓋2は便蓋本体2の便座3と対向する内面側に、脚ゴム固定部10を便蓋回動部4側に傾斜突出させて、その脚ゴム固定部10に脚ゴム20を取り付ける構造としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋風便器に使用される脚ゴムを取り付けた便蓋および便蓋用脚ゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の洋風便器に使用される便蓋は、その内面の適所に複数の脚ゴムを設けて、便蓋が起立状態から閉じたときに便座との衝突による衝撃を吸収し、倒伏状態にあるとき便座に当接し便蓋を支持するようにしている。この脚ゴムは便蓋に対し、接着剤を用いて接着させるか、あるいは便蓋側に設けた脚ゴム固定部に嵌着させて固定した構造となっている。次の特許文献には、脚ゴムを嵌着により便蓋に取り付けた脚ゴム固定構造が開示されている。
【特許文献1】特開平08−071018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、接着剤を用いた固定では接着剤の経時変化により容易に外れてしまい、一方、便座に対して垂直に突出させた突起状の脚ゴム固定部に脚ゴムを嵌着固定するものでは、その脚ゴム固定部の高さが脚ゴムの厚さに律せられるため、脚ゴムを薄厚にするほど、当然に脚ゴムと脚ゴム固定部との接合面積は小さくなり、便蓋に取り付けた脚ゴムが便座表面との衝突や接触を繰り返すうちに外れてしまう可能性は高い。
【0004】
特に、便蓋の回動軸が便座の回動軸より後方にある場合、便蓋と便座を同時に閉じる回動動作中には、便座表面が脚ゴムに対してボウル部前方に向けて擦れるため、脚ゴムはよけいに外れやすくなる。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために提案されたもので、その目的は、便座との接触を繰り返しても脚ゴムが外れにくい便蓋および便蓋用脚ゴムを提供することにある。また、金型成形しやすく、かつスカートと組み合わせたときに美観にすぐれた便蓋を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の便蓋は、便蓋本体の便座と対向する内面側に、脚ゴム固定部を傾斜突出させていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の便蓋は、脚ゴム固定部がボウル後方に向けて傾斜形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の便蓋は、便蓋本体が閉したときに便座を全体を隠蔽する周壁を備え、周壁の前端部が脚ゴム固定部と略同一の傾斜角度に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の便蓋用脚ゴムは、請求項1〜3のいずれかに記載の脚ゴム固定部に嵌着させる取付部を有している。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜4に記載の本発明によれば、便蓋本体の内面側に突出形成させた脚ゴム固定部が傾斜しているので、脚ゴムと垂直に接合するものに比べて接合面積を大きくすることができ、そのため開閉操作を繰り返しても脚ゴムは外れにくい。
【0011】
請求項3に記載の便蓋によれば、周壁の前端部が脚ゴム固定部と略同一の傾斜角度に形成されているため、便蓋の金型成形を容易に行える。また、周壁前端部には下方に向いた傾斜面が形成されるので、開操作のときにはその傾斜面を手で捕捉すれば便蓋を持ち上げやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0013】
図2は、本発明の一例である便蓋を使用した洋風便器の便蓋開状態を示す斜視図である。
【0014】
この洋風便器1は、便蓋2、便座3、ボウル部6、スカート部7を有している。また、便蓋2、便座3の開閉用に共通または個別の回動部を有している。本例では、便蓋2用、便座3用に個別の便蓋回動部4、便座回動部5を備えている。なお、8は人体検知センサーである。
【0015】
また、スカート部7は、取付固定されたボウル部6を包囲するように取り付けられるが、容易に取り付けられるように、前方スカート7aと後方スカート7bに分離形成されている。
【0016】
この洋風便器1は、便蓋2、便座3、ボウル部6がABS、アクリルなどの樹脂で製されているが、ボウル部6は経年劣化を考慮して陶器より製されたものであってもよい。
【0017】
便蓋2は、倒伏状態に閉じたときにボウル部6、便座3を上方より覆い隠す板部2aと、倒伏状態のときに便座3を側方より包囲、隠蔽する周壁2bとを備えている。なお、周壁2bは便蓋回動部4側を除く全周に形成されている。また、図中の2cは周壁2bの前端部を示している。
【0018】
なお以下では、便蓋2、便座3の回動部4、5側をボウル部6後方、先端側をボウル部前方という。
【0019】
図2に示すように、便蓋2の便座3と対向する内面側には、複数の脚ゴム20、20・・・が配設されており、これら脚ゴム20は、便蓋2を起立状態から倒伏状態に回動したときに、便座3との衝突による衝撃を吸収し、衝突音を小さくし、かつ便蓋2、便座3双方が傷付くことを防止するとともに、倒伏状態にあるときに便蓋2そのものを支える機能を有する。また、脚ゴム20を設けることによって、便蓋2の周壁2bが便器本体(リム上面)と直接接触しないように調節でき、接触による便蓋2の損傷、汚れの付着を防止できる。
【0020】
この脚ゴム20は、ゴムまたはエラストマーなどの柔軟な弾性体で製されており、かりに便蓋2を倒伏した状態で便蓋2に人が腰をかけても、脚ゴム20の取付位置を中心として割れたり変形したりしないように、厚さ数〜10ミリ程度のものが、複数箇所にバランスよく配設されている。
【0021】
図1は、本発明の便蓋2の脚ゴム固定構造を説明するための図で、(a)は脚ゴム20の取付時の斜視図、(b)は同縦断面図である。また、図3(a)は便蓋2と便座3の回動動作を示した縦断面図、(b)は便蓋2と便座3の閉回動時の接触状態を示した拡大断面図であり、図4(a)は洋風便器1の便蓋2開状態の左側面図、(b)は便蓋2閉状態の左側面図である。
【0022】
便蓋2は、便蓋2を閉じたとき便座3に対向する面の数箇所に、脚ゴム20を取り付けるための先端を開口させた円筒状の脚ゴム固定部10が、ボウル部6後方に向けて傾斜させて突出形成されており、各脚ゴム固定部10の外周を取り囲むように、長丸状の環状リブ11が突出形成されている。
【0023】
一方、脚ゴム20は脚ゴム固定部10を受容する取付部(取付凹部)21を備え、その取付凹部21には、そのくぼみの底部より中空部21cを有した嵌合突起21aが突出形成され、さらにその嵌合突起21aの外周には抜け止め防止のために環状小突起21bを一定間隔で複数条、突出形成している。また、脚ゴム20の上方周縁には周溝22を形成しており、便蓋2側に形成した環状リブ11に嵌入させることによって、脚ゴム20の取付後の回転ずれを防止している。
【0024】
脚ゴム20を便蓋2に取り付ける際には、脚ゴム20を図1(a)の矢印の方向に押し込んで、脚ゴム固定部10を脚ゴム20の取付凹部21に挿入する。そうすると、脚ゴム固定部10が取付凹部21に嵌着されると同時に、脚ゴム20側の嵌合突起21aが脚ゴム固定部10の中空部10aに嵌入され、このとき環状小突起21bが弾性変形して脚ゴム固定部10の中空部10a内面に圧着されるので、脚ゴム20と脚ゴム固定部10とは密接に接合される。
【0025】
このように、傾斜形成された脚ゴム固定部10が脚ゴム20の取付凹部21に嵌着されるので、脚ゴムの厚みを同一にして脚ゴム固定部を垂直に突出形成したものより、脚ゴム固定部10と脚ゴム20との接合面積を大きくすることができ、そのため両者の接合をより強固にできる。
【0026】
また、脚ゴム固定部10を中空にして、脚ゴム20側の嵌合突起21aをその中空部10aに嵌め入れる構造としているため、接合面積はさらに大きくなり、そのためさらに強固に接合できる。
【0027】
この脚ゴム固定部10は、脚ゴム20の抜け止めを防止するためにボウル部6の前方や側方に向けて傾斜されていてもよいが、本例で示した洋風便器1に採用する場合には、ボウル部6後方に向けて傾斜させることが望ましい。その理由について図3を参照しながら説明する。なお本例では、図3に示すように、脚ゴム固定部10は便蓋2の周壁前端部2cとほぼ同じ角度に傾斜形成されているが、これについても後述する。
【0028】
上述したように、本例で示した洋風便器1は、便蓋2、便座3用にそれぞれの回動部(回動軸)4、5を備えている。そのため、図3に示すように、起立状態にある便蓋2、便座3を、便蓋2を押し倒すことによって同時に閉じようとすると、便蓋2と便座3とは、便蓋2の内面と便座3の表面が擦れ合うように同時に回動する。
【0029】
より具体的には、図3(b)の閉回動中の拡大図に示すように、脚ゴム20と便座3とは接触した状態で、便蓋2(脚ゴム20)は便座3に対しA方向に摺動し、便座3は便蓋2に対しB方向に摺動する。つまり、脚ゴム20にB方向へ便座3が擦れながら、便蓋2と便座3の前端が近づくように回動する。なお、このような脚ゴム20と便座3とが擦れるように動作するのは回動軸がずれているからであるが、特に水平方向にずれている関係上、摩擦力は、便蓋2、便座3が起立状態に近い閉じ始めの段階に最も強く作用する。
【0030】
したがって、かりに脚ゴム固定部10がボウル部6の前方に向けて傾斜を形成していれば、閉じ始めのときには回動により便座3はボウル部6の前方にずれ動き、摩擦力が強く作用して脚ゴム20が外れるおそれがあるが、本例では脚ゴム固定部10がボウル部6の後方側に傾斜されているため、摩擦力は接合を強化する方向に作用する。そのため、便座3との接触により脚ゴム20が外れるおそれはほとんどない。
【0031】
また、便蓋2、便座3を同時に開く回動動作でも、閉じるときとは逆向きの摩擦力が作用するはずであるが、そもそも便蓋2と便座3とを同時に開けることは同時に閉じることよりはるかに少なく、逆向きの摩擦力は発生しにくく、摩擦力よって脚ゴム20が外れやすくなることは少ない。
【0032】
さらに、便蓋2の周壁前端部2cは、図4(c)に示すように、側面視したときに前方スカート7aの前端の延長上に略同一角度の傾斜面を形成しており、それにより、便蓋2を閉じたときスカート部7と便蓋2が一体的な形状になり、便器全体を直線的かつシンプルなシルエットにすることができる。また、周壁前端部2cが床面に向けた傾斜面を形成しているので、手操作で便蓋2を開くときには、手をその傾斜面にあてがえば、滑ることなく少ない力で便蓋2を持ち上げることができる。
【0033】
また、この周壁前端部2cの傾斜角度と、脚ゴム固定部10の傾斜角度を略同一にすれば、金型による便蓋2の成形がいちだんとしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の便蓋の脚ゴム固定構造の説明図で、(a)は脚ゴムの取付時の斜視図、(b)は同縦断面図である。
【図2】本発明の一例である便蓋を使用した洋風便器の便蓋開状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の便蓋の動作説明図である。
【図4】(a)は洋風便器の便蓋開状態の左側面図、(b)は便蓋閉状態の左側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 洋風便器
2 便蓋、便蓋本体
2a 板部
2b 周壁
2c 周壁前端部
3 便座
4 便蓋回動部
5 便座回動部
6 ボウル部
10 脚ゴム固定部
11 環状リブ
20 脚ゴム
21 取付部
21a 嵌合突起
21b 環状小突起
22 周溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便蓋本体の便座と対向する内面側に、脚ゴム固定部を傾斜突出させていることを特徴とする便蓋。
【請求項2】
請求項1において、
上記脚ゴム固定部は、ボウル部後方に向けて傾斜形成されていることを特徴とする便蓋。
【請求項3】
請求項2において、
上記便蓋本体は、閉したときに便座全体を隠蔽する周壁を備え、該周壁の前端部は上記脚ゴム固定部と略同一の傾斜角度に形成されていることを特徴とする便蓋。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の脚ゴム固定部に嵌着させる取付部を有した便蓋用脚ゴム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−93185(P2008−93185A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278451(P2006−278451)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】