説明

便蓋装置

【課題】倒伏した便蓋が便座ボックス等のケースの上面の略全体を覆い、便蓋とケースとの間隙に塵やゴミが入ることが防止されると共に、人体検知センサも一体的に組み込むことができる便蓋装置を提供する。
【解決手段】洋風便器20の後部上面に便座ボックス21が設置され、この便座ボックス21の前部に支軸22を介して便座23が起倒回動可能に取り付けられている。便座ボックス21の後部上縁に便蓋24が支軸25を介して起倒回動可能に取り付けられている。支軸25が垂下片24aの開口24bに挿通されている。この支軸25の先端にセンサユニット26が取り付けられている。便蓋24は便座ボックス21の上面の全体を覆うものであり、便蓋24を閉めたときには埃やゴミが入り込む隙間が無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋風便器に設置される便蓋装置に関するものであり、特に便蓋がケース上面の略全体を覆う便蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洋風便器の後部上面に便座ボックスが設置され、この便座ボックスに便座及び便蓋を起倒方向回動可能に取り付けた洋風便器設備が広く用いられている。
【0003】
図6は便座ボックスを備えた洋風便器の一例を示しており、洋風便器1の後部上面にロータンク2が設置され、このロータンク2の前側に便座ボックス3が設置されている。この便座ボックス3に対し便座4と便蓋5とが起倒方向(上下方向)回動可能に連結されている。この便座ボックス3内には、便座着座者の臀部を温水で洗浄するための温水洗浄装置等が設置されている。この便座ボックス3の上面の前部に人体検知センサが設置されている。この人体検知センサの検知信号に基づいて、便蓋が自動的に開閉したり、あるいは便器の自動洗浄が行われる。
【0004】
この便蓋5と便座ボックス3との間には便蓋5の起倒回動を許容するように所定の間隙があいている。なお、この間隙を過度に狭くすると、便蓋5を起立させるときに便蓋5の後縁が便座ボックス3に当ってしまう。
【0005】
このように便蓋5と便座ボックス3との隙間があいていると、この隙間に塵やゴミが入ることがある。
【0006】
このような便蓋と便座ボックスとの隙間が全く生じないタイプの便蓋装置として、特開2001−115526号の図33,34には、添付の図7(a),(b)に示すように、便蓋10を便座ボックス12の後縁上部に支軸11によって枢支したものが記載されている。なお、図7において、符号13はロータンク、符号14は手洗用鉢部を示す。
【特許文献1】特開2001−115526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特開2001−115526号公報では、便座ボックス上面に人体検知センサを配置できないという不便がある。即ち、図7において便座ボックス12の上面に人体検知センサを配置したのでは、便蓋10の倒伏時に人体検知センサが便蓋10で覆われてしまう。
【0008】
本発明は、倒伏した便蓋が便座ボックス等のケースの上面の略全体を覆い、便蓋とケースとの間隙に塵やゴミが入ることが防止されると共に、人体検知センサも一体的に組み込むことができる便蓋装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(請求項1)の便蓋装置は、洋風便器の後部上面に設置されたケースと、該ケースに対し起倒回動可能に連結された便蓋とを有し、該便蓋は倒伏時に該ケース上面の略全体を覆う便蓋装置において、該便蓋の側面部分に人体検知センサが配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
かかる便蓋装置にあっては、便蓋の側面部分に人体検知センサを設けているので、便蓋を倒伏させても人体検知センサによって人体を検知することができる。
【0011】
この場合、ケースから便蓋の支軸が突設され、該支軸が便蓋の側面部分を貫通しており、該支軸は固定設置されており、該支軸の先端部に前記人体検知センサが設けられている構成(請求項2)とすることが好ましい。このようにすれば、便蓋を回動させても人体検知センサの指向方向は不変であり、人体を確実に検知することができる。
【0012】
本発明(請求項3)の便蓋装置は、洋風便器の後部上面に設置されたケースと、該ケースに対し起倒回動可能に連結された便蓋とを有し、該便蓋は倒伏時に該ケース上面の略全体を覆う便蓋装置において、該便蓋の後縁の中央部に切欠部が設けられ、該ケース上面の後部に人体検知センサが設けられており、便蓋が倒伏したときに該人体検知センサが該切欠部に臨むことを特徴とするものである。
【0013】
かかる便蓋装置においても、便蓋の状態にかかわりなく人体検知センサによって人体を検知することができる。
【0014】
この場合、切欠部は、該便蓋前方側に向って左右幅が徐々に小さくなる形状としてもよい(請求項4)。このようにすれば、切欠部の角縁部が目立たず、見栄えが良くなると共に、角縁部の欠け等の損傷が防止される。
【0015】
また、このケース上面の後部に、該切欠部と略同一大きさ又はそれよりも大きい、便蓋とは異色の信号光透過部が設けられ、この信号光透過部の裏側に人体検知センサが配置されている構成としてもよい(請求項5)。このようにすれば、便蓋が倒伏したときに切欠部が明瞭な模様として視覚されるようになり、外観上の見栄えが良好となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、倒伏した便蓋が便座ボックス等のケースの上面の略全体を覆い、便蓋とケースとの間隙に塵やゴミが入ることが防止されると共に、人体検知センサも一体的に組み込むことができる便蓋装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0018】
図1は実施の形態に係る便蓋装置の斜視図であり、(a)図は便蓋が倒伏した状態を示し、(b)図は便蓋が起立した状態を示している。図2はこの便蓋装置を備えた洋風便器の側面図である。
【0019】
洋風便器20の後部上面に便座ボックス21が設置され、この便座ボックス21の前部に支軸22を介して便座23が起倒回動可能に取り付けられている。便座ボックス21の後部上縁に便蓋24が支軸25を介して起倒回動可能に取り付けられている。
【0020】
便座ボックス21の前面は、前方ほど下位となる下り斜面となっている。この斜面の左右方向の中央部には、膨出部21aが突設されている。
【0021】
便座23は、左右の後部から後方に延出した延出部23a,23aを有しており、この延出部23a,23aが膨出部21aの左右両側に配置されている。
【0022】
この便蓋24は、左右の両サイドに沿って垂下片24a,24aが延設されており、便蓋24の後部の該延出部24a,24aが便座ボックス21の上部の左右外方に配置されている。
【0023】
便座ボックス21の正面向って右側の側面の最上方且つ最後方から前記支軸25が突設されている。この支軸25が垂下片24aの開口24bに挿通されている。この支軸25の先端にセンサユニット26が取り付けられている。このセンサユニット26は、円筒形のケーシングと、このケーシング内に配置された赤外線発光素子及び受光素子を有する人体検知センサと、該ケーシングに設けられた赤外線透過部26aとを備えている。支軸25は円筒形であり、その内部に人体検知センサへの接続用のハーネス(図示略)が挿通されている。
【0024】
図示はしないが、便座ボックス21の正面向って左側の側面からは、便蓋24を起倒回動させるための駆動軸が突設されている。この駆動軸は支軸25と同軸配置されている。駆動軸は、便蓋24の左側の垂下片24aに連結されている。便座ボックス21内に配置されたモータにより該駆動軸が回転され、これにより便蓋24が起倒回動する。このモータは、人体検知センサの検知信号に基づいて制御される。
【0025】
このように構成された便蓋装置は、便蓋24が便座ボックス21の上面の全体を覆うものであり、便蓋24を閉めたときには埃やゴミが入り込む隙間が無く、見栄えもきわめて良い。また、支軸25の先端にセンサユニット26が固定状に設けられており、便蓋24及び便座23の姿勢が如何なるものであっても人体を確実に検知することができる。
【0026】
図4,5を参照して別の実施の形態について説明する。
【0027】
この実施の形態にあっては、便蓋24Aの後縁の左右方向の中央に切欠部30が設けられている。この切欠部30は、便蓋24Aの前方に向って幅が徐々に小さくなる形状であり、特にこの実施の形態では略円弧形となっている。
【0028】
便座ボックス21Aの上面の後縁には、この切欠部30と重なる位置に赤外線透過部31が設けられており、この赤外線透過部31の裏側に赤外線による人体検知センサが設けられている。この赤外線透過部31は略円弧形であり、切欠部30と略同一大きさとなっている。この赤外線透過部31は略黒色の合成樹脂よりなる。便座ボックス21は、アイボリー、グレー、ピンク等の淡色の合成樹脂製である。
【0029】
この実施の形態では、便蓋24Aの支軸25(図4〜6では図示略)は便蓋24Aの垂下片24aを貫通していない。図4〜6のその他の構成は図1〜3と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0030】
この便蓋装置にあっても、便蓋24Aが倒伏したときには便座ボックス21Aの赤外線透過部31以外のすべての上面が便蓋24Aによって覆われる。この実施の形態では、便蓋24Aが倒伏したときには切欠部30に対し赤外線透過部31が重なる。この赤外線透過部31は濃色であり、切欠部30を際立たせ、該切欠部30を模様として視覚させるので、便蓋装置の美観が良好である。
【0031】
この実施の形態では、図4(a)のように便蓋24Aを倒伏させているときには切欠部30を通して人体を検知できる。また、図4(b)のように便蓋24Aを起立させ便座23を倒伏させているときにも人体を検知でき、図5のように便座23を起立させたときにも便座23の孔23bを通して人体を検知することができる。
【0032】
なお、上記実施の形態は、いずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態に係る便蓋装置の斜視図である。
【図2】図1の便蓋装置の側面図である。
【図3】図1の便蓋装置の支軸部分の分解斜視図である。
【図4】別の実施の形態に係る便蓋装置の斜視図である。
【図5】図4の便蓋装置の側面図である。
【図6】従来例の斜視図である。
【図7】別の従来例の側面図である。
【符号の説明】
【0034】
20 洋風便器
21,21A 便座ボックス
23 便座
24,24A 便蓋
25 支軸
26 センサユニット
30 切欠部
31 赤外線透過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋風便器の後部上面に設置されたケースと、該ケースに対し起倒回動可能に連結された便蓋とを有し、該便蓋は倒伏時に該ケース上面の略全体を覆う便蓋装置において、
該便蓋の側面部分に人体検知センサが配置されていることを特徴とする便蓋装置。
【請求項2】
請求項1において、該ケースから便蓋の支軸が突設され、該支軸が便蓋の側面部分を貫通しており、
該支軸は固定設置されており、
該支軸の先端部に前記人体検知センサが設けられていることを特徴とする便蓋装置。
【請求項3】
洋風便器の後部上面に設置されたケースと、該ケースに対し起倒回動可能に連結された便蓋とを有し、該便蓋は倒伏時に該ケース上面の略全体を覆う便蓋装置において、
該便蓋の後縁の中央部に切欠部が設けられ、該ケース上面の後部に人体検知センサが設けられており、便蓋が倒伏したときに該人体検知センサが該切欠部に臨むことを特徴とする便蓋装置。
【請求項4】
請求項3において、該切欠部は、該便蓋前方側に向って左右幅が徐々に小さくなる形状であることを特徴とする便蓋装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、該ケース上面の後部に、該切欠部と略同一大きさ又はそれよりも大きい、便蓋とは異色の信号光透過部が設けられ、この信号光透過部の裏側に人体検知センサが配置されていることを特徴とする便蓋装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−173519(P2008−173519A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104812(P2008−104812)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【分割の表示】特願2003−60132(P2003−60132)の分割
【原出願日】平成15年3月6日(2003.3.6)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】