説明

促進酸化処理法

【課題】高濃度のオゾン溶解水を得ることにより、オゾン発生器の大型化を招くことなく、高効率で所望の促進酸化処理を行うことができる促進酸化処理法を実現する。
【解決手段】紫外線照射装置5で処理された処理水の一部を気体溶解膜モジュール2に供給する。一方、オゾン発生器1から発生するオゾンガスを処理水と対向流となるように気体溶解膜モジュール2に供給する。そして、気体溶解膜を気相側から加圧し、オゾンガスを気体溶解膜中に拡散させ、これによりオゾンガスを処理水中に完全溶解させて高濃度のオゾン溶解水を生成する。その後、オゾン溶解水搬送管14により搬送されてきたオゾン溶解水を原水に注入し、紫外線照射装置に供給する。紫外線照射装置5では、オゾン溶解水含有原水に紫外線を照射し、原水に含有される難分解性物質を酸化分解して除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、促進酸化処理法に関し、より詳しくは酸化剤としてオゾンを使用した促進酸化処理法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水処理技術の分野では、オゾン(O)の有する強い酸化力を利用し、井戸水や工場廃水に含有される染料やフミン質の着色成分を酸化分解して脱色したり、臭気成分を酸化分解して脱臭することが行われている。
【0003】
しかしながら、このようなオゾンの酸化力のみを利用したオゾン単独処理では、有機塩素化合物やアンモニア性窒素等の難分解性物質を除去するには、酸化力が未だ不十分である。
【0004】
そこで、近年、特定の酸化剤と紫外線とを併用した促進酸化処理法(AOP;Advanced Oxidation Process)の研究・開発が盛んに行なわれている。
【0005】
この促進酸化処理法では、オゾン(O)、過酸化水素(H)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)等の特定の酸化剤に紫外線を照射することにより、オゾンよりも更に強力な酸化力を有するヒロドキシラジカル(・HO)を生成し、これにより廃水中に含有される難分解性の有害物質を酸化分解し除去することが可能となる。
【0006】
すなわち、オゾンは過酸化水素や次亜塩素酸ナトリウムに比べて標準酸化還元電位が高く、強い酸化力を有することが知られているが、ヒロドキシラジカルの標準酸化還元電位は2.80Vであり、オゾンの標準酸化還元電位(2.07V)よりも高く、したがってオゾンよりも更に酸化力が強い。
【0007】
このようにヒドロキシラジカルは強大な酸化力を有することから、トリクロロエチレンやトリハロメタン等の有機塩素化合物やアンモニア性窒素を強固に結合させている一重結合(C−C、N−H等)の結合子を開裂させることができ、難分解性の有害物質を酸化分解して無害物質に変換することが可能となる。
【0008】
上記特定の酸化剤のうち、過酸化水素や次亜塩素酸ナトリウムは常温常圧で液体であるため取扱いは容易であるが、紫外線を照射した場合にヒドロキシラジカルを生成する量子効率がオゾンに比べて低いという欠点がある。したがって、量子効率を考慮すると、酸化剤としてはオゾンを使用するのが好ましいと考えられる。
【0009】
そこで、近年、酸化剤としてオゾンを使用した促進酸化処理法が種々提案されている。
【0010】
例えば、特許文献1には、本明細書に添付の図6に示すように、254nm波長の紫外線ランプ101と散気装置102とを有する反応塔103と、オゾンを発生するオゾン発生器104とを備え、オゾン発生器104で発生したオゾンを散気装置102を介して被処理水105中に吹き込み可能とし、かつ、被処理水102の循環ライン106を反応塔103に接続し、循環ライン106の途中に185nm波長の紫外線ランプを有する紫外線処理塔107を設けた水処理装置が提案されている。
【0011】
この特許文献1では、散気法と呼称される方法で、反応塔103に供給される被処理水105中にオゾンを吹き込んで促進酸化処理を行っている。さらに、特許文献1では、循環ライン106を通過する被処理水にも紫外線処理塔107の紫外線ランプを照射して溶存酸素をオゾンに変換し、ポンプ108を介して反応塔103にオゾンを供給している。そして、このオゾンによってもヒドロキシラジカルの生成を可能とし、これにより、ヒドロキシラジカルの生成を増量させて促進酸化処理の効率向上を図っている。尚、反応塔103内で紫外線に反応しなかった残留オゾンはオゾンキラー109で分解され、酸素となって大気に放出される。
【0012】
また、特許文献2には、本明細書に添付の図7に示すように、貯留槽111、オゾン発生器112からのオゾンを吸引するエジェクタ113、及び紫外線照射槽114がこの順序で設けられた循環流路115を備え、貯留槽111が、原水供給ライン116からの難分解性有機物を含む被処理水及び貯留槽111から循環流路115に引き出されて再び貯留槽111に戻される処理水を貯留する循環水貯留部117と、循環水貯留部117からの余剰の処理水を貯留する処理水貯留部118とを有する促進酸化処理装置が提案されている。
【0013】
この特許文献2では、エジェクタ法と呼称される方法で、オゾン発生器112からのオゾンガスを被処理水に添加し、オゾン添加水に紫外線を照射して促進酸化処理を行っている。
【0014】
【特許文献1】特開2002−210479号公報(図2)
【特許文献2】特開2003−340472号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1では、オゾン発生器104からのオゾンガスを散気装置102を介して被処理水中にオゾンを散気させているが、このような方法では、オゾンガスを被処理水中に高効率で溶解させることができず、大部分のオゾンは水中で大きな気泡の状態で分散する。したがって、紫外線ランプ101から紫外線を照射しても、紫外線の透過率が低く、このため、ヒドロキシラジカルの生成効率も低い。その結果、所望の促進酸化処理を行うためには大量のオゾンが必要となり、オゾン発生器の大型化を招くおそれがあるという問題点があった。また、特許文献1では、循環ライン106を通過する被処理水にも紫外線ランプを照射して溶存酸素をオゾンに変換しているものの、そもそもオゾン自体の水中での溶解効率が低いため、シンプルで効率的な促進酸化処理を行うことはできない。
【0016】
また、特許文献2は、エジェクタ113によりオゾン発生器112からのオゾンガスを被処理水に添加しているため、特許文献1と同様、オゾンガスを被処理水中に高効率で溶解させることができず、大部分のオゾンは水中で大きな気泡の状態で分散する。すなわち、特許文献1と同様、紫外線ランプ101から紫外線を照射しても、紫外線の透過率が低く、このため所望の促進酸化処理を行うためには大量のオゾンが必要となり、促進酸化処理を効率よく行うことができないという問題点があった。
【0017】
オゾンと水とを混合させる他の方法としては、ポンプを使用してオゾンを水中で撹拌するポンプ撹拌法も知られているが、上記散気法、エジェクタ法と略同様、オゾンガスを被処理水中に高効率で溶解させることができず、所望の促進酸化処理を行うためには大量のオゾンが必要となり、オゾン発生器の大型化を招くおそれがあるという問題点があった。
【0018】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、高濃度のオゾン溶解水を得ることにより、オゾン発生器の大型化を招くことなく、高効率で所望の促進酸化処理を行うことができる促進酸化処理法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明に係る促進酸化処理法は、オゾンガスを水中で気体溶解膜で処理して前記オゾンガスを溶解させ、高濃度のオゾン溶解水を生成し、該オゾン溶解水を被処理水に注入した後、紫外線を照射し、前記被処理水に含有される難分解性物質を酸化分解することを特徴としている。
【0020】
また、本発明の促進酸化処理法は、前記気体溶解膜は、オゾン分子が拡散して透過する非多孔質形状であることを特徴としている。
【0021】
さらに、本発明の促進酸化処理法は、前記気体溶解膜は、微小泡の発生が可能な多孔質形状であることを特徴としている。
【0022】
本発明の促進酸化処理法は、前記オゾン溶解水に加え、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素のうちの少なくともいずれか一方を前記被処理水に注入して紫外線を照射することを特徴としている。
【0023】
また、本発明の促進酸化処理法は、前記気体溶解膜で処理されなかった余剰のオゾンガスを前記紫外線で分解処理することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
上記促進酸化処理法によれば、気体溶解膜が非多孔質形状の場合は、オゾン分子は気体溶解膜を拡散しながら通過することとなるため、大きな気泡の生成が抑止されて完全溶解した高濃度のオゾン溶解水を生成することができる。したがって、このオゾン溶解水を被処理水に注入し、紫外線を照射すると強力な酸化力を有するヒドロキシラジカル(・OH)を高効率で生成することができる。そしてこれにより、大量のオゾンを要することもなく、前記被処理水に含有される難分解性物質の酸化分解を効率良く促進させることが可能となる。
【0025】
また、前記気体溶解膜が多孔質形状である場合は、微小泡(マイクロバブル)は発生する可能性はあるものの、この場合もオゾンガスが水中で大きな気泡の状態で分散することもなく、オゾン分子は気体溶解膜の孔を通過して高濃度のオゾン溶解水を生成することができる。そして、上述と同様、このオゾン溶解水を被処理水に注入し、紫外線を照射すると強力な酸化力を有するヒドロキシラジカル(・OH)を高効率で生成することができる。そしてこれにより、大量のオゾンを要することもなく、前記被処理水に含有される難分解性物質の酸化分解を効率良く促進させることが可能となる。
【0026】
このように本発明の促進酸化処理法によれば、高濃度のオゾン溶解水を得ることができるので、ヒドロキシラジカルの生成効率も高く、比較的小さな処理能力のオゾン発生器であっても所望の促進酸化処理を行うことができる。
【0027】
また、前記オゾン溶解水に加え、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素のうちの少なくともいずれか一方を前記被処理水に注入して紫外線を照射するので、難分解性物質をより効果的に酸化分解して除去することが可能となる。すなわち、オゾン溶解水に加え、次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素を紫外線と共に併用することにより、有機性炭素(TOC)の濃度が高い場合やトリクロロエチレン、アンモニア性窒素等の難分解性物質の濃度が高い場合であっても、装置の大型化を招くことなく促進酸化処理を実行することのできるシステムの構築が可能となる。
【0028】
また、前記気体溶解膜で処理されなかった余剰のオゾンガスを前記紫外線で分解処理するので、別途、排オゾン処理を設ける必要もなく、処理システムの大規模化を招くのを極力回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0030】
図1は、本発明に係る促進酸化処理法を使用した促進酸化処理システムの一実施の形態(第1の実施の形態)を示す概略システム構成図である。
【0031】
この促進酸化処理システムは、無声放電等によりオゾンガスを発生するオゾン発生器1と、オゾンガスを水中で溶解させる気体溶解膜モジュール2が内蔵されたオゾンガス溶解装置3と、紫外線ランプ(吸収波長:253.7nm)4が配設された紫外線照射装置5とを主要部として備えている。
【0032】
オゾン発生器1と気体溶解膜モジュール2とはガス供給管6を介して接続され、オゾン発生器1で生成されたオゾンガスの気体溶解膜モジュール2への供給が可能とされている。
【0033】
紫外線照射装置5には原水供給管7が接続されると共に、該原水供給管7の管路にはインラインミキサ8が介装されている。また、紫外線照射装置5には処理水搬送管9が接続されると共に、該処理水搬送管9は、管路中の点aで、制御弁10の介装された分岐管11と接続され、さらに、該分岐管11は気体溶解膜モジュール2に接続されている。そして、これにより紫外線照射装置5で処理された処理水の一部又は全部が、処理水搬送管9及び分岐管11を介して気体溶解膜モジュール2に供給可能とされている。尚、処理水搬送管9は、前記点aよりも上流側の適所にプレフィルタ12が介装され、紫外線照射装置5からの処理水中に含有されうる浮遊物質(SS)の除去が可能とされている。また、処理水搬送管9の前記分岐点aよりも下流側には制御弁13が介装されると共に、処理水中の残留オゾンを還元する還元剤が処理水に注入可能となるように制御弁13の下流側の適所には還元剤注入装置17が配されている。
【0034】
尚、還元剤注入装置17に収容される還元剤としては、処理水中に含有される残留オゾンを酸素に還元できるものであれば、特に限定されるものではないが、重亜硫酸ナトリウムを好んで使用することができる。
【0035】
また、原水供給管7は、気体溶解膜モジュール2に接続されたオゾン溶解水搬送管14とインラインミキサ8の上流側の点bで接続され、気体溶解膜モジュール2で溶解したオゾン溶解水の紫外線照射装置5への供給が可能とされている。
【0036】
また、紫外線照射装置5と気体溶解膜モジュール2とは排オゾン搬送管15を介して接続され、気体溶解膜モジュール2で溶解されなかった余剰のオゾンガスが紫外線照射装置5に供給可能とされている。
【0037】
尚、原水供給管7の点bよりも上流側には、酸化剤注入装置16が原水に注入可能に配設されている。ここで、酸化剤注入装置16に収容される酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素のうちの少なくとも一方が使用される。このような酸化剤をオゾンと併用することにより、強力な酸化作用を有するヒドロキシラジカルをより大量に生成することができ、廃水中の有機炭素の濃度が特に高い場合や、トリクロロエチレンアンモニア性窒素等の難分解性物質の濃度が特に高い場合であっても、これら難分解性物質を効果的に酸化分解することができ、COD等を低減することが可能となる。
【0038】
図2は気体溶解膜モジュール2の一部破断正面図である。
【0039】
該気体溶解膜モジュール2は、筒状に形成されたベッセル18に気体溶解膜19が内蔵されると共に、その底面部にはオゾンガス導入口20と、該オゾンガス導入口20よりも大径に形成されたオゾン溶解水排出口21が設けられ、さらに、その上面部には、オゾンガス排出口22及び処理水供給口23が、オゾンガス導入口20及びオゾン溶解水排出口21と対向状にそれぞれ設けられている。
【0040】
気体溶解膜19は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂からなり、実質上孔が存在せず、断面が均一層からなる非多孔質形状に形成されている。
【0041】
このように形成された気体溶解膜モジュール2では、紫外線照射装置5からの処理水が処理水搬送管9及び分岐管11を介して処理水供給口23からベッセル18に供給される。一方、オゾン発生器1からのオゾンガスはオゾンガス供給管6を介してオゾンガス導入口20からベッセル18に供給される。尚、気体溶解膜モジュール2としては、例えばポール・コーポレーション社製「インフューザー」等のオゾンガス透過モジュールを使用することができる。
【0042】
図3は図2のX部を拡大した模式図である。
【0043】
すなわち、図3に示すように、処理水の通過する液相側を大気圧とし、オゾンガスの通過する気相側から所定気圧(例えば、0.2MPa)の圧力を負荷すると、気体状のオゾン分子24は気体溶解膜19中を拡散して処理水に完全溶解し、オゾン溶解水25となって、オゾン溶解水排出口21からオゾン溶解水供給管14に排出される。
【0044】
このようにオゾンガスと処理水とが対向流となるようにベッセル18に供給される。そして、オゾン分子24が気体溶解膜19中を拡散して処理水と接触し、オゾン分子24が処理水中に完全溶解し、これにより大きな気泡が発生することもなく、高濃度のオゾン溶解水25が生成される。
【0045】
尚、ベッセル18に供給されたオゾンガスのうち、気体溶解膜19中を拡散しなかった余剰のオゾンガスは、オゾンガス排出口22から排オゾン搬送管15に排出される。
【0046】
次に、図1を参照しながら、促進酸化処理システムの運転方法を述べる。
【0047】
まず、酸化剤注入装置16により適量の酸化剤が注入された原水が、原水供給管7を介して紫外線照射装置5に供給される。ここで、原水としては、予め前処理が施された排水や用水を使用することができる。例えば、膜分離活性汚泥処理や、限外ろ過処理、砂ろ過処理がなされた排水や除鉄除マンガン処理がなされた処理水を原水として使用することができる。
【0048】
尚、酸化剤としては、上述したように紫外線照射装置5の照射によりヒドロキシラジカル(・OH)の生成が可能な次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素水のうちの少なくとも一方が使用される。
【0049】
上記酸化剤を含有した原水が紫外線照射装置5に供給されると、紫外線ランプ4が酸化剤含有原水に照射される。そして、酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムの場合は化学反応式(1)、(2)によりヒドロキシラジカルを生成し、過酸化水素水の場合は化学反応式(3)によりヒドロキシラジカルを生成する。
【0050】
【化1】

【0051】
【化2】

【0052】
そして、該ヒドロキシラジカルの酸化力によって原水中の不純物が酸化分解され、処理水が生成される。
【0053】
次いで、処理水は処理水搬送管9に排出され、プレフィルタ12で浮遊物質が除去される。そして制御弁13を閉弁し、かつ制御弁10を開弁すると、処理水は分岐管11を通過して気体溶解膜モジュール2に供給される。尚、制御弁10は、気体溶解膜モジュール2への処理水の供給量が所定流量(例えば、60L/min)となるように、開度が調整される。
【0054】
一方、無声放電等の手段によってオゾン発生器1では所定濃度(例えば、100g/Nm)のオゾンガスが生成される。そして、オゾン発生器1で生成されたオゾンガスは所定流量(例えば、8.3NL/min)で気体溶解膜モジュール2に供給される。オゾンガスは所定圧力(例えば、0.2MPa)で加圧されて気体溶解膜19を拡散し、処理水中に完全溶解し、高濃度のオゾン溶解水25(例えば、8g/m)となる。そして、所定流量(例えば、3.6m/h)のオゾン溶解水25が、オゾン溶解水供給管14を介して原水供給管7に注入され、インラインミキサ8を介して紫外線照射装置5に供給される。
【0055】
紫外線照射装置5では、オゾン溶解水25は、上記化学反応式(1)〜(3)に加え、反応式(4)に示すように、オゾンの分解反応が生じ、ヒドロキシラジカルが生成される。
【0056】
【化3】

【0057】
一方、気体溶解膜18に拡散しなかった余剰のオゾンガスは、排オゾン搬送管15を介して紫外線照射装置5内に散気され、紫外線ランプ4からの紫外線により酸素に分解される。
【0058】
そしてその後は、制御弁10及び制御弁13の開度を調整し、紫外線照射装置5で酸化分解された処理水のうち、一部が気体溶解膜モジュール2に供給されてオゾン溶解水25の生成に供されると共に、気体溶解膜モジュール2に供給されなかった他の処理水は、還元剤注入装置17からの還元剤が注されて残留オゾンは酸素に還元分解され、その後、外部機器(冷却塔、ボイラ等)に給水される。
【0059】
このように定常的には、紫外線照射装置5から排出される処理水の一部は、気体溶解膜モジュール2及びオゾン溶解水搬送管14を循環し、オゾン溶解水25の生成に供されることとなる。
【0060】
このように本実施の形態では、上述した次亜塩素酸ナトリウム及び/又は過酸化水素に紫外線照射して生成されたヒドロキシラジカルと、オゾンに紫外線照射して生成されたヒドロキシラジカルとを併用することによって強力な酸化作用が促進され、これにより原水、すなわち被処理水に含有された有機塩素化合物やアンモニア性窒素等の難分解性物質が酸化分解される。
【0061】
すなわち、本実施の形態によれば、脱色、脱臭、微生物の不活性化のみならず、アンモニア性窒素や、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−cis−ジクロロエチレン、トリハロメタン等の有機塩素化合物などの難分解性物質の酸化分解を行うことができ、COD等を抑制するこが可能となる。
【0062】
しかも、オゾンガスは、非多孔質形状の気体溶解膜19によって気泡が生じることなく完全溶解させて高濃度のオゾン溶解水25を生成しているので、紫外線の透過率も高く、高効率でヒドロキシラジカルを得ることができ、オゾン発生器1の小型化が可能となる。
【0063】
さらに、水に対するオゾンの溶解度を超えたために気体溶解膜19に拡散しなかった余剰のオゾンガスは排オゾン搬送管15を通過して紫外線照射装置5に回収され、紫外線照射により酸素に分解されるので、別途、排オゾン処理装置を設ける必要もなく、システムの簡素化が可能である。
【0064】
図4は本発明の促進酸化処理法を使用した促進酸化処理システムの第2の実施の形態を示す概略システム構成図であって、この第2の実施の形態では、オゾンガスを原水中に完全溶解させている。
【0065】
すなわち、本第2の実施の形態では、原水供給管7が、点cで原水分岐管26と接続され、該原水分岐管26が気体モジュール2に接続されている。また、原水分岐管26には、制御弁27及びプレフィルタ28が順次介装されている。
【0066】
また、紫外線照射装置5には処理水搬送管30が接続されると共に、第1の実施の形態の還元剤注入装置に代えて、活性炭吸着装置29が設けられている。
【0067】
この第2の実施の形態では、制御弁27が開弁すると、酸化剤注入装置16により適量の酸化剤が注入された原水の一部は、プレフィルタ28で浮遊物質が除去された後、所定流量(例えば、60L/min)で気体溶解膜モジュール2に供給される。ここで、原水としては、第1の実施の形態と同様、予め前処理が施された排水や用水を使用することができ、例えば、膜分離活性汚泥処理や、限外ろ過処理、砂ろ過処理がなされた排水や除鉄除マンガン処理がなされた処理水を原水として使用することができる。
【0068】
気体溶解膜モジュール2では、第1の実施の形態と略同様、オゾン発生器1からのオゾンガスと原水とを対向流としてオゾンガスを気体溶解膜で溶解させてオゾン溶解水25を生成し、点bでオゾン溶解水25を原水に注入する。
【0069】
そして、酸化剤注入装置16からの酸化剤及びオゾン溶解水25が注入された原水はインラインミキサ8を経て紫外線照射装置5に供給される。紫外線照射装置5では原水中に含有される次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン溶解水に紫外線が照射され、上記化学反応式(1)〜(4)に示すようにヒドロキシラジカルを生成する。
【0070】
これにより原水、すなわち被処理水に含有された有機塩素化合物やアンモニア性窒素等の難分解性物質が酸化分解され、処理水が生成される。
【0071】
そして、紫外線照射装置5で処理された処理水は、処理水搬送管30で搬送され、活性炭吸着装置29の活性炭に残留オゾンが吸着されて除去され、冷却塔やボイラ等の外部装置に給水される。
【0072】
尚、気体溶解膜19に拡散しなかった余剰のオゾンガスは、第1の実施の形態と同様、排オゾン搬送管15を介して紫外線照射装置5内に散気され、紫外線ランプ4からの紫外線により酸素に分解される。そしてこれにより、別途、排オゾン処理装置をも設けるのを不要としている。
【0073】
このように本第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様、オゾンガスを非多孔質形状の気体溶解膜19で気泡が生じることなく完全溶解させているので、高濃度のオゾン溶解水25を得ることができ、したがって紫外線の透過率も高く、オゾン発生器1の小型化が可能となる。
【0074】
そして、次亜塩素酸ナトリウム及び/又は過酸化水素に紫外線照射して生成されたヒドロキシラジカルと、オゾンに紫外線照射して生成されたヒドロキシラジカルとを併用することによって、第1の実施の形態と同様、強力な酸化作用が促進され、これにより、脱色、脱臭、微生物の不活性化のみならず、アンモニア性窒素や、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−cis−ジクロロエチレン、トリハロメタン等の有機塩素化合物などの難分解性物質の酸化分解を行うことができ、COD等の抑制が可能となる。
【0075】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記第1及び第2の実施の形態では、気体溶解膜として、図3に示すような非多孔質形状のものを使用したが、図5に示すような多孔質形状の気体溶解膜31を使用してもよい。
【0076】
すなわち、水の通過する液相側を大気圧とし、オゾンガスの通過する気相側から所定圧力(例えば、0.2MPa程度)を加圧することにより、オゾン分子24は、気体溶解膜31の孔を通過し、微小泡(マイクロバブル)の発生を伴いながら水中に溶解してオゾン溶解水32が得られる。
【0077】
このように多孔質形状の気体溶解膜31を使用した場合であっても、気体溶解膜31を介してオゾンガスと水とは接触し、オゾンガスは水中に溶解していくので、従来のエジェクタ法、散気法、或いはポンプ撹拌法のように水中で大きな気泡の状態で分散することはなく、紫外線の照射に高効率で反応する高濃度のオゾン溶解水32を得ることができる。
【0078】
また、上記各実施の形態では、次亜塩素酸ナトリウム又は/及び過酸化水素をオゾン溶解水と併用しているが、原水の水質に応じ、次亜塩素酸ナトリウム又は/及び過酸化水素の注入を省くことも可能である。本発明では、オゾンガスから高効率でヒドロキシラジカルを生成できることから、例えば、有機性炭素の濃度が低い場合やトリクロロエチレン等の特定の塩素化合物濃度が低い場合、アンモニア濃度が低い場合等では、オゾンと紫外線の組み合わせのみで、所望の促進酸化処理を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る促進酸化処理法を使用した促進酸化処理システムの一実施の形態(第1の実施の形態)を示す概略システム構成図である。
【図2】気体溶解膜モジュール2の一部破断正面図である。
【図3】図2のX部を拡大した模式図である。
【図4】本発明に係る促進酸化処理法を使用した促進酸化処理システムの第2の実施の形態を示す概略システム構成図である。
【図5】気体溶解膜の他の実施の形態を模式的に示した拡大断面図である。
【図6】特許文献1に記載された先行技術の模式図である。
【図7】特許文献2に記載された先行技術の模式図である。
【符号の説明】
【0080】
4 紫外線ランプ
19 気体溶解膜
25 オゾン溶解水
31 気体溶解膜
32 オゾン溶解水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンガスを水中で気体溶解膜で処理して前記オゾンガスを溶解させ、高濃度のオゾン溶解水を生成し、該オゾン溶解水を被処理水に注入した後、紫外線を照射し、前記被処理水に含有される難分解性物質を酸化分解することを特徴とする促進酸化処理法。
【請求項2】
前記気体溶解膜は、オゾン分子が拡散して透過する非多孔質形状であることを特徴とする請求項1記載の促進酸化処理法。
【請求項3】
前記気体溶解膜は、微小泡の発生が可能な多孔質形状であることを特徴とする請求項1記載の促進酸化処理法。
【請求項4】
前記オゾン溶解水に加え、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素のうちの少なくともいずれか一方を前記被処理水に注入して紫外線を照射することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の促進酸化処理法。
【請求項5】
前記気体溶解膜で処理されなかった余剰のオゾンガスを前記紫外線で分解処理することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の促進酸化処理法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−101302(P2009−101302A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276122(P2007−276122)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】