説明

保冷容器

【課題】大型魚が前後方向に移動したような場合においても、大型魚の頭部又は尾部による前後の側壁の破損を防止して信頼性の高い保冷容器を提供すること。
【解決手段】発泡合成樹脂よりなる大型魚Zを収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体10を備え、容器本体10は、底壁11と左右の側壁12,12との間の稜部分の少なくとも一部分に前後方向に延びる肉厚補強部14を設けている保冷容器1において、容器本体10の前後の側壁13,13の少なくとも一方における大型魚Zの頭部又は尾部が当たる部分に補強板15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグロ、ブリ等の大型魚を保冷輸送する際に使用する発泡合成樹脂製の保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグロ、ブリ等の大型魚を保冷輸送する際に使用する発泡合成樹脂製の保冷容器として、大型魚の重量より受ける容器の前後方向の大きな曲げモーメントに対応するため、容器本体の底壁と左右の側壁との間の稜部分に前後方向に延びる肉厚補強部を設けたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示された保冷容器においては、容器本体の底壁と左右の側壁との間の稜部分に設けられた肉厚補強部により容器本体の底壁及び左右の側壁の強度が高められるので、大型魚の重量により容器の底壁が抜ける、容器が撓む等の不具合を防止できる。
【0004】
【特許文献1】特開平8―230965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大型魚の頭部や尾部が鋭利であるのに対し発泡合成樹脂は硬度が低いという問題があるため、例えば、輸送時に大型魚が容器の前後方向に移動したような場合において、大型魚の頭部又は尾部が容器の前後の側壁の内面に強く当たると、当該側壁において亀裂が発生する等の不具合があり、前後の側壁が破損する虞があった。
【0006】
本発明の目的は、前述の問題に鑑みてなされたもので、大型魚が前後方向に移動したような場合においても、大型魚の頭部又は尾部による前後の側壁の破損を防止して信頼性の高い保冷容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明の保冷容器は、発泡合成樹脂よりなる大型魚を収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体は、底壁と左右の側壁との間の稜部分の少なくとも一部分に前後方向に延びる肉厚補強部を設けている保冷容器において、前記容器本体の前後の側壁の少なくとも一方における大型魚の頭部又は尾部が当たる部分に補強用硬質部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
前述の構成によれば、容器本体の前後の側壁の少なくとも一方に補強用硬質部が設けられているので、例えば輸送時等に大型魚が前後方向に移動した場合に大型魚の頭部又は尾部は補強用硬質部に当たることになる。
【0009】
また、本発明の保冷容器では、前記補強用硬質部として、前記容器本体とは別体に形成した補強部材が前後の側壁における左右方向の中央領域に設けられ、具体的には、補強部材は、板材で形成した補強板を用いることが望ましく、この補強板は、容器本体に形成した保持部に着脱可能に保持させたものである。
【0010】
前述の構成によれば、補強用硬質部を容器本体とは別体の補強部材としたので、容器本体を簡単な構造にして当該容器本体の製造が容易に行えるとともに、補強部材として補強板を用いたので、補強部材を極めて得ることができ、しかも、補強板を容器本体に着脱自在に保持させたので、輸送後にはいつでも簡単に容器本体から補強板を取外すことができ、分離しての回収が可能で廃棄処分が容易行える。
【0011】
また、本発明の保冷容器では、前記保持部は、補強板を前後方向の内方側から規制する前後規制部を有して当該補強板を上下方向に抜き挿しできるものである。また、前記保持部は、補強板を左右方向の両側から規制する左右規制部を有して当該補強板を上下方向に抜き挿しできるものとしてもよい。
【0012】
前述の構成によれば、補強板を上下方向に抜き挿しできるので、容器本体への補強板の取付けが容易であるとともに、保持部は前後規制部及び左右規制部を有しているので、輸送時等に補強板が前後方向及び左右方向に位置ずれする虞がない。
【0013】
また、本発明の保冷容器では、発泡合成樹脂よりなる大型魚を収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体は、底壁と左右の側壁との間の稜部分の少なくとも一部分に前後方向に延びる肉厚の補強部を設けている保冷容器において、前記容器本体の前後の側壁の少なくとも一方における大型魚の頭部又は尾部が当たる部分に補強板が設けられていることを特徴としている。
【0014】
前述の構成によれば、容器本体の前後の側壁の少なくとも一方に補強板が設けられているので、例えば輸送時等に大型魚が前後方向に移動した場合に大型魚の頭部又は尾部は補強板に当たることになる。
【0015】
更に、本発明の保冷容器は、発泡合成樹脂よりなる大型魚を収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体は、底壁と左右の側壁との間の稜部分の少なくとも一部分に前後方向に延びる肉厚の補強部を設けている保冷容器において、前記容器本体の前後の側壁の少なくとも一方における大型魚の頭部又は尾部が当たる部分に補強板を着脱可能に装着するための保持部が形成されていることを特徴としている。
【0016】
前述の構成によれば、容器本体の前後の側壁の少なくとも一方における大型魚の頭部又は尾部が当たる部分に補強板を着脱可能に装着するための保持部が形成されているので、使用時に容器本体の保持部に補強板を装着することにより、例えば輸送時等に大型魚が前後方向に移動した場合に大型魚の頭部又は尾部は補強板に当たることになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の保冷容器によれば、例えば輸送時等に大型魚の頭部又は尾部が補強用硬質部に当たるので、前後の側壁は大型魚の頭部又は尾部に対して十分に耐えられるようになり、前後の側壁において亀裂が発生する等の不具合が生じることがなく、前後の側壁の破損が防止されて保冷容器の信頼性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の保冷容器を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0019】
図1において、1は発泡合成樹脂よりなる保冷容器であって、収容される大型魚Zの大きさに応じた大きさに形成された上面が開口する箱状の容器本体10と、この容器本体10の上面開口部を開閉するように容器本体10に対して着脱可能に取付けられた上蓋20とによって構成されている。ここで、前記発泡合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の各種発泡合成樹脂が利用される。
【0020】
容器本体10は、図2に示すように、平面方形に形成された底壁11と、この底壁11の両長辺側端部に対向して垂直状に立設された左右の側壁12,12と、前記底壁11の両短辺側端部に対向して垂直状に立設され、左右の側壁12,12と互いに連結された前後の側壁13,13とによって深型の箱状に形成されている。底壁11と左右の側壁12,12との間の稜部分には、凹状に湾曲した円弧状の傾斜面部14,14が前後の側壁13,13に近い両側部分を除く所定の長さに亘って設けられており、この傾斜面部14,14によって底壁11の内面が大型魚Zの胴体形状に対応するように凹面形状に形成されている。傾斜面部14は、中央部分(底壁11の長辺側中央を中心として底壁11の長辺側寸法の約1/2〜1/4程度の部分)14aを大きな径(例えば、R50〜R200)の円弧面とし、その両側部分14b,14bを前後の側壁13,13に向かって次第に径が細くなるテーパー状の円弧面として形成されている。容器本体10は、底壁11の内面を傾斜面部14,14によって大型魚Zの胴体形状に対応するように凹面形状に形成させたことで、大型魚Zを収容すると、大型魚Zが底壁11の内面に沿って大型魚Zの荷重が分散された状態で支持されるので、大型魚Zの荷重が底壁11の1箇所に集中することが回避されるようになる。しかも、傾斜面部14,14が底壁11と左右の側壁12,12との間の稜部分の肉厚補強部として作用するので、底壁11及び左右の側壁12,12の強度が高められるようになる。前後の側壁13,13の内面には、大型魚Zの頭部又は尾部が当たる部分に発泡合成樹脂より硬質の板材で形成した補強板15,15が着脱可能に保持されている。補強板15は、側壁13の底部から途中まで内方へ突出して形成された保持部16によって着脱可能に保持されている。保持部16は、補強板15を前後方向の内方側から規制する前後規制部16aと、補強板15を左右方向の両側から規制する左右規制部16b,16bとを有し、この前後規制部16a及び左右規制部16b,16bにより補強板15を上下方向に抜き挿し可能なポケット状の保持溝17を形成し、この保持溝17に補強板15の下端部分を挿し込むことで、側壁13の内面に補強板15を着脱可能に保持している。補強板15の材質、面積及び厚みは、収容する大型魚Zの重量に応じて任意に選択することができる。補強板15の材質としては、発泡合成樹脂より強度が高い材質、例えば、段ボール、プラスチック段ボール、各種プラスチック、ベニヤ板等が挙げられる。左右の側壁12,12及び前後の側壁13,13の上端面、即ち、容器本体10の上端面には、内縁全周に亘って上向きに嵌合用凸条18が設けられている。
【0021】
一方、上蓋20は、図3に示すように、下面が開口した浅型の箱状に形成されており、下端面の外縁全周に亘って下向きに嵌合用凸条21を設け、この嵌合用凸条21を容器本体10の嵌合用凸条18に嵌合することによって容器本体10に着脱可能に取付けられるようになっている。
【0022】
上述のように構成された保冷容器1は、図1に示すように、容器本体10内にマグロ、ブリ等の大型魚Zをまるごと収容するとともに、その上から保冷剤(図示せず)を詰め、容器本体10を上蓋20で閉じた状態で、消費地まで輸送されるようになっている。この保冷容器1では、例えば輸送時等に保冷容器1内の大型魚Zが前後方向に移動した場合、大型魚Zの鋭利な頭部又は尾部は容器本体10の前後の側壁13,13の内面に設けられた補強板15,15に当たることとなり、大型魚Zの鋭利な頭部又は尾部が左右の側壁13,13に直接当たることはない。このため、前後の側壁13,13において亀裂が発生する等の不具合がなく、前後の側壁13,13の破損が防止されて保冷容器1の信頼性の向上が図れる。
【0023】
また、保冷容器1は、補強板15を容器本体10の保持部16に着脱可能に保持させているので、容器本体10の構造を簡単にして当該容器本体10の製造が容易に行えるとともに、輸送後にはいつでも簡単に容器本体10から補強板15を取外すことができて補強板15の分離回収が簡単であり、廃棄処分が容易に行える。
【0024】
更に、保冷容器1は、補強板15を容器本体10の保持部16に形成した保持溝17に挿し込んで保持させているので、補強板15の容器本体10への取付けを容易に行うことができるとともに、輸送時等に補強板15が前後方向及び左右方向に位置ずれする虞がない。
【0025】
図4は、本発明の他の実施形態の保冷容器に容器本体及び上蓋として兼用で使用される容器部材30を示している。この容器部材30は、前記実施形態の容器本体10より少し浅型の箱状に形成されている点、上端面の各辺の半分ずつ内縁と外縁とが交互に交替するように嵌合用凸条31,32が中心点に対して点対称に形成されている点を除けば前記実施形態の容器本体10と略同じである。
【0026】
前記容器部材30は、これと同一形状の容器部材30を開口部が向き合うように上下反転して突き合わせることで、両容器部材30,30の嵌合用凸条31,32が互いに嵌合して保冷容器が得られる。この容器部材30を用いて得られた保冷容器においても、前記実施形態の保冷容器1と同様の効果を得ることができる。
【0027】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0028】
例えば、補強板15は、前後の側壁13,13の双方に設けるのではなく、場合によっては一方だけに設けるようにしてもよい。また、補強板15は、側壁13における左右方向の中央領域全面に設けるのではなく、側壁13の大型魚Zの頭部又は尾部が当たる部分に部分的に設けるようにしてもよい。また、補強板15を保持する保持部16の保持溝17はポケット状ではなく、スリット状にして補強板15の下端辺又は両側端辺を挿し込んで保持するようにしてもよい。また、保持部16は、前後規制部16aと左右規制部16b,16bとを有するのではなく、前後規制部16a又は左右規制部16b,16bの片方を有するだけでもよい。また、保持部16は、側壁13に形成するのではなく、底壁11又は左右の側壁12,12の前後の側壁13,13の近傍に形成するようにしてもよい。また、補強板15は、保持部16によって容器本体10の側壁13に保持させるのではなく、接着剤等によって容器本体10の側壁13に接着するようにしてもよい。また、補強板15の形状は方形ではなく、円形、楕円形、方形以外の多角形その他形状でもよい。また、前後の側壁13に板材で形成した補強板15を設けるようにしているが、補強板以外、即ち、板材以外のもので形成した補強部材を設けるようにしてもよい。また、側壁13の大型魚Zの頭部又は尾部が当たる部分に容器本体10とは別体の補強部材を設けるようにしているが、側壁13の大型魚Zの頭部又は尾部が当たる部分に補強用硬質部を一体に設けるようにしてもよい。尚、側壁13の大型魚Zの頭部又は尾部が当たる部分に補強用硬質部を一体に設ける場合、例えば側壁13の当該部分を肉厚にしたり、当該部分の表面を硬化処理したりする等して硬度を増大させる。更に、容器本体10の傾斜面部14は円弧面ではなく、平斜面でもよい。尚、傾斜面部14を平斜面にする場合、中央部分のC面取り加工はC50〜C200が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の保冷容器を示した断面図である。
【図2】容器本体を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【図3】上蓋を示すもので、(a)は底面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)のD−D線断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態の保冷容器に容器本体及び上蓋として使用する容器部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線断面図、(c)は(a)のF−F線断面図である。
【符号の説明】
【0030】
Z…大型魚、1…保冷容器、10…容器本体、11…底壁、12,12…左右の側壁、13,13…前後の側壁、14…傾斜面部、15…補強板、16…保持部、16a…前後規制部、16b,16b…左右規制部、17…保持溝、18…嵌合用凸条、20…上蓋、21…嵌合用凸条、30…容器部材、31,32…嵌合用凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂よりなる大型魚を収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体は、底壁と左右の側壁との間の稜部分の少なくとも一部に前後方向に延びる肉厚補強部を設けている保冷容器において、
前記容器本体の前後の側壁の少なくとも一方における大型魚の頭部又は尾部が当たる部分に補強用硬質部が設けられていることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記補強用硬質部として、前記容器本体とは別体に形成した補強部材が前後の側壁における左右方向の中央領域に設けられていることを特徴とする請求項1記載の保冷容器。
【請求項3】
前記補強部材は、板材で形成した補強板であることを特徴とする請求項2に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記補強板は、前記容器本体に形成した保持部に着脱可能に保持されていることを特徴とする請求項3に記載の保冷容器。
【請求項5】
前記保持部は、前記補強板を前後方向の内方側から規制する前後規制部を有して当該補強板を上下方向に抜き挿しできることを特徴とする請求項4に記載の保冷容器。
【請求項6】
前記保持部は、前記補強板を左右方向の両側から規制する左右規制部を有して当該補強板を上下方向に抜き挿しできることを特徴とする請求項4に記載の保冷容器。
【請求項7】
発泡合成樹脂よりなる大型魚を収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体は、底壁と左右の側壁との間の稜部分の少なくとも一部分に前後方向に延びる肉厚の補強部を設けている保冷容器において、
前記容器本体の前後の側壁の少なくとも一方における大型魚の頭部又は尾部が当たる部分に補強板が設けられていることを特徴とする保冷容器。
【請求項8】
発泡合成樹脂よりなる大型魚を収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体は、底壁と左右の側壁との間の稜部分の少なくとも一部分に前後方向に延びる肉厚の補強部を設けている保冷容器において、
前記容器本体の前後の側壁の少なくとも一方における大型魚の頭部又は尾部が当たる部分に補強板を着脱可能に装着するための保持部が形成されていることを特徴とする保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−151421(P2006−151421A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342181(P2004−342181)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(000123251)沖縄樹脂化学工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】