説明

保冷容器

【課題】内外を連通する排水口及び該排水口を塞ぐ栓体を備えた発泡合成樹脂製の保冷容器において、不必要な開栓や栓体の紛失を防止することができる構成でありながら、形状設計や成形が容易であるとともに栓体を容易に着脱することができる保冷容器を提供する。
【解決手段】排水口9,9が、容器本体2における隣接する両側壁4,7及び5,7が交差する角部C,Cを含んで前記両側壁間に跨り容器内外を連通するように、角部C,Cの下部まわりに形成された開口であり、栓体10を、前記開口を埋めるように、その外形が前記開口まわりの容器本体2の外形に繋がる形状のものとし、容器本体2に対して栓体10を外側から差し込んで取り付けることができるとともに、容器本体2から栓体10を外側へ引き抜いて取り外すことができるように排水口9及び栓体10を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果菜類、魚介類等の被保冷物を収容して保管、運搬又は輸送するための保冷容器に関わり、更に詳しくは、内外を連通する排水口及び該排水口を塞ぐ栓体を備えた発泡合成樹脂製の保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロッコリー等の急速に鮮度を落とす傾向のある果菜類、鮮魚や貝類等の魚介類等の被保冷物を保管、運搬又は輸送する際には、前記被保冷物はクラッシュアイス等の保冷用の氷とともに保冷容器内に収容される。
このような保冷容器として、容器本体(身)の下部に内外を連通する排水口(排水用丸孔)を形成した耐水性段ボール箱を用いるもの(例えば、特許文献1参照。)、容器本体の側壁の下部に内外を連通する排水口(排水用丸孔)を形成した発泡合成樹脂製容器を用いるとともに排水口を塞ぐ栓体を備えたもの(例えば、特許文献2及び3参照。)、容器本体の側壁下部と底板に跨った開口部を設けた発泡合成樹脂製容器を用いるとともに前記開口部を塞ぐ開閉蓋部を備えたもの(例えば、特許文献4参照。)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−86886号公報
【特許文献2】特開2004−115101号公報
【特許文献3】特開2002−225965号公報
【特許文献4】特開2006−240686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の保冷容器では、容器内部が排水口により外気と通じていることから融水等が容器外に随時流出する構造となっているため、融水等が保管場所や輸送車両を濡らしたり汚染する場合がある。
また、特許文献2及び3の保冷容器では、止水用の栓体により排水口を塞いで融水等の容器外への随時流出を防いでいるが、その構造上、栓体には容器の側壁外面から突出している部分が存在するため、作業者の接触又は保冷容器同士の接触等の原因により、栓体が離脱して不必要な開栓が起きる場合があるとともに栓体を紛失してしまう場合もある。
【0005】
これらに対して、特許文献4の保冷容器では、容器本体の側壁下部と底板に跨った開口部を開閉蓋部により塞いでいることから融水等が容器外に随時流出することがなく、前記開口部の形状に倣うように開閉蓋部を形成しており容器外面から突出している部分がないことから、上述の不必要な開栓や栓体(開閉蓋部)の紛失を防止することができるという特徴がある。
特許文献4の保冷容器は、このような特徴を有するものではあるが、容器本体の側壁下部と底板に跨った開口部を塞ぐ開閉蓋部を容器本体に取り付けるための嵌合構造が比較的複雑なものとなっており、すなわち開口部及び開閉蓋部の形状が比較的複雑であることから形状設計及び成形が難しいことや開閉蓋部を着脱しにくい場合があるため、このような観点からは改良の余地がある。
【0006】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、内外を連通する排水口及び該排水口を塞ぐ栓体を備えた発泡合成樹脂製の保冷容器において、不必要な開栓や栓体の紛失を防止することができる構成でありながら、形状設計や成形が容易であるとともに栓体を容易に着脱することができる保冷容器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る保冷容器は、前記課題解決のために、内外を連通する排水口及び該排水口を塞ぐ栓体を備えた、被保冷物を収容する容器本体及び蓋体とからなる発泡合成樹脂製の保冷容器であって、前記排水口が、前記容器本体における隣接する両側壁が交差する角部を含んで前記両側壁間に跨り容器内外を連通するように、前記角部の下部まわりに形成された開口であり、前記栓体が、前記開口を埋めるように、その外形が前記開口まわりの前記容器本体の外形に繋がる形状のものであり、前記容器本体に対して前記栓体を外側から差し込んで取り付けることができるとともに、前記容器本体から前記栓体を外側へ引き抜くことにより又は前記容器本体の内側から前記栓体を外側へ押し出すことにより、前記容器本体から前記栓体を外側へ取り外すことができるように前記排水口及び栓体を形成してなることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、排水口を塞ぐ栓体が、排水口の開口を埋めるように、その外形が前記開口まわりの容器本体の外形に繋がる形状のものであることから、容器本体の側壁外面から突出している部分が存在しないため、作業者の接触又は保冷容器同士の接触等の原因による不必要な開栓や栓体の紛失を防止することができる。
その上、特許文献4のような保冷容器の構成と比較して、排水口が容器本体の底板に跨るものではなく、隣接する両側壁が交差する角部を含んで前記両側壁間に跨るものであることから、排水口に栓体を取り付けた状態で排水口の開口の下側の壁により栓体が受け止められて保持される。
よって、栓体を保持するための比較的複雑な嵌合構造が不要になり、栓体を保持するための嵌合構造をなくすか、あるいは嵌合構造を設ける場合でも簡単な形状のものにすることができ、排水口を塞ぐ栓体を、容器本体の外側から容器本体に差し込んで取り付けることができるとともに、容器本体から引き抜いて又は容器本体の内側から押し出して外側へ取り外すことができることから、排水口及び栓体の形状が簡素になるため、形状設計及び成形が容易であるとともに、栓体の着脱が容易になる。
その上さらに、両側壁間に跨る栓体と容器本体との接触面積が大きいため、容器本体に取り付けた後に栓体が離脱しにくく、排水口の封止状態を保持しやすい。
その上、隣接する両側壁が交差する角部の下部まわりに排水口及び栓体を設けていることから積み重ね強度の低下が少ないため、容器内に重い収容物を収納し、さらに多段に積み重ねる場合においても、強度面の信頼性が高い。
【0009】
ここで、前記容器本体に対して前記栓体を外側から下傾斜方向へ差し込んで取り付けることができるとともに、前記容器本体から前記栓体を外側へ上傾斜方向に引き抜くことにより又は前記容器本体の内側から前記栓体を外側へ上傾斜方向に押し出すことにより、前記容器本体から前記栓体を外側へ取り外すことができるように前記排水口及び栓体を形成してなると好ましい。
このような構成によれば、前記効果に加え、栓体を取り外す方向が上傾斜方向であることから、輸送時等に大きな衝撃や振動があって排水口から栓体がずれても元の状態に復帰しやすく、排水口からの栓体のずれや外れを抑制することができるため、栓体による止水の信頼性が高くなる。
【0010】
また、前記容器本体が矩形箱状であり、この容器本体に対して前記栓体を外側から平面視長辺側の側壁面と略平行に平面視短辺側の側壁に近づく方向へ差し込んで取り付けることができるとともに、前記容器本体から前記栓体を外側へ平面視長辺側の側壁面と略平行に平面視短辺側の側壁から離れる方向に引き抜くことにより又は前記容器本体の内側から前記栓体を外側へ平面視長辺側の側壁面と略平行に平面視短辺側の側壁から離れる方向に押し出すことにより、前記容器本体から前記栓体を外側へ取り外すことができるように前記排水口及び栓体を形成してなると好ましい。
このような構成によれば、前記効果に加え、容器本体が矩形箱状であり、栓体を抜き挿しする方向が平面視長辺側の側壁面と略平行な方向であり、かつ、平面視短辺側の側壁から離れる方向又は前記側壁に近づく方向であるため、矩形箱状の保冷容器の平面視長辺側の側壁面同士を合わせるように並設して積み重ねた状態でも、止水状態とするための栓体の取り付け及び止水状態を解除して排水するための栓体の取り外しを行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係る保冷容器によれば、容器本体における隣接する両側壁が交差する角部を含んで前記両側壁間に跨り容器内外を連通するように前記角部の下部まわりに開口を形成して排水口とし、栓体を、前記開口を埋めるように、その外形が前記開口まわりの容器本体の外形に繋がる形状のものとして、栓体を容器本体の外側から差し込んで取り付け、その逆方向に外側へ取り外すように構成したため、不必要な開栓や栓体の紛失を防止することができる構成でありながら、簡素な構成により、形状設計や成形が容易であるとともに栓体を容易に着脱することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る保冷容器を示す斜視図である。
【図2】容器本体から栓体及び閉止片を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】要部を拡大して示す斜視図であり、(a)は排水口から栓体を取り外した状態を、(b)は(a)よりも視点を下げて見た排水口を示している。
【図4】図1の矢視D−D断面図である。
【図5】排水口及び栓体の別形態について要部を拡大して示す斜視図であり、(a)は排水口から栓体を取り外した状態を、(b)は(a)よりも視点を下げて見た排水口を示している。
【図6】平面視短辺側の側壁側から栓体を着脱可能な構成について排水口から栓体を取り外した状態を示す要部拡大図であり、(a)は斜視図、(b)は平面視長辺側の側壁側から見た図である。
【図7】平面視短辺側の側壁側から栓体を着脱可能な別構成について排水口から栓体を取り外した状態を示す要部拡大図であり、(a)は斜視図、(b)は平面視長辺側の側壁側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る保冷容器1は、上面を開口した矩形箱状の容器本体2及び平板状の蓋体3からなり、図示しない果菜類、魚介類等の被保冷物を容器本体2内に収容し、容器本体2の上端縁2Aに形成された嵌合凸部2Bに蓋体3の下面に形成された嵌合凹部に嵌合させるように、容器本体2の上面開口を蓋体3により塞いだ状態として、前記被保冷物を保管、運搬又は輸送するものである。
ここで、保冷容器1は、軽量であるとともに断熱性に優れた発泡合成樹脂製であり、発泡合成樹脂としては、例えば、発泡ポリスチレン系樹脂、発泡ポリエチレン系樹脂、発泡ポリプロピレン系樹脂等の発泡ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン変性発泡ポリエチレン等のポリスチレン変性発泡ポリオレフィン系樹脂、硬質発泡ウレタン系樹脂等を用いることができる。これらの中でも、主にコスト面から発泡ポリスチレンが好ましく、発泡ポリスチレンを使用した場合においては、その発泡倍率は20倍〜70倍程度が好ましい。
【0014】
図1及び図2に示すように、容器本体2は、その底板8の端縁部に平面視矩形の長辺(平面視長辺)A,A側の側壁4,5及び短辺B,B側の側壁6,7が立設されており、一方の短辺B側の側壁6には、通風予冷又は冷媒の出し入れ等の目的で開口部2Cが適宜設けられ、開口部2Cの役割が終わった後は、閉止片11の凸条11Aを開口部2Cの凹条2Dに係合するようにして開口部2Cは閉止片11により塞がれる。
また、他方の短辺B側の側壁7には、その左右に排水口9,9が形成されており、これらの排水口9,9は、隣接する両側壁4,7及び5,7が交差する角部C,Cを含んで両側壁4,7及び5,7間に跨り容器内外を連通するように、角部C,Cの下部まわりに形成された開口である。
さらに、排水口9,9には、これらの前記形状の開口を塞ぐ栓体10,10が着脱可能に装着されており、これらの栓体10,10は、前記開口を埋めるように、その外形が前記開口まわりの容器本体2の外形に繋がる形状であるため、容器本体2の側壁(両側壁4,7及び5,7)外面から突出している部分が存在しない。
ここで、矩形箱状の保冷容器1において排水口9,9を設ける位置については、平面視矩形の短辺(平面視短辺)B側の側壁7の左右の角部C,Cに設けるのが、栓体10,10の着脱の作業性を考慮すると、より好ましい実施態様である。
なお、排水口9の数は、2個に限定されるものではなく、1個又は3個以上であってもよい。
【0015】
次に、排水口9,9及び栓体10,10の詳細について説明する。なお、両排水口9,9の形状は同一であるため、両側壁4,7が交差する角部Cの下部の排水口9及び該排水口9に装着される栓体10について説明する。
図3(b)に示すように、排水口9は、角部Cの略正面から見て略二等辺三角形状であり、その斜辺に対応する側壁4側の上傾斜面9A及び側壁7側の上傾斜面9B、底辺に対応する側壁4側の下水平面9C及び側壁7側の下水平面9D、並びに、角部Cの略正面から見て略二等辺三角形状に下水平面9C,9Dから上方へ突出し図3(a)に示すように外方へ行くにしたがって高くなる、側壁4側の下傾斜面9E及び側壁7側の下傾斜面9Fにより区画される。
また、栓体10は、排水口を形成する上傾斜面9A,9Bに当接する上傾斜面10A,10B、排水口を形成する下水平面9C,9Dに当接する下水平面10C,10D、並びに、下傾斜面9E,9Fに当接する下傾斜面10E,10Fを有しているため、排水口9の開口を埋める形状であり、図1のように排水口9を塞ぐように装着した状態では、上述のとおり、その外形が前記開口まわりの容器本体2の外形に繋がる形状となっている。
【0016】
そして、図1のように排水口9を塞ぐように栓体10を装着した状態から、図3のように角部Cの正面から見てその手前側に、図1の矢視D−D断面図である図4のように容器本体2から外側斜め上方向(上傾斜方向)Fへ栓体10を引き抜くこと又は容器本体2の内側から上傾斜方向Fへ栓体10を押し出すことにより、栓体10を外側へ取り外すことができるように、排水口9及び栓体10が形成されている。
また、図2に示すように、上記取り外し方向(上傾斜方向F)と逆方向である内側斜め下方向(下傾斜方向)Eへ栓体10を差し込むことにより、容器本体2に取り付けることができ、図1に示す栓体10の取り付けが完了した状態では、図3に示す容器本体2の側壁4,7の上傾斜面9A,9B、下水平面9C,9D及び下傾斜面9E,9Fには、これらに対応する栓体10の上傾斜面10A,10B、下水平面10C,10D及び下傾斜面10E,10Fがそれぞれ当接した状態で位置決めされ、上述のとおり栓体10の外形が排水口9まわりの容器本体2の外形に繋がる形状となっている。
【0017】
排水口9,9を有する容器本体2及び栓体10の成形については、これらを個別の金型を用いて別々に成形してもよいし、排水口9,9を有さない容器本体2を金型で発泡成形させた後に、この成形体から栓体10,10を切り出すことにより、排水口9,9を有する容器本体2及び栓体10,10を形成してもよい。
なお、栓体10,10については、発泡合成樹脂製ではなく、例えばゴム等の異種素材としてもよく、そのようにすればコストは上昇するが水封性が向上するため水漏れ防止効果が高くなる。
また、排水口9,9を角部C,Cの下部で容器本体2の底面になるべく近い低位置に形成することにより、容器本体2内に注入された氷が融けた融水等の排出をより効果的に行うことができる。
【0018】
さらに、容器本体2の上傾斜面9A,9B、下水平面9C,9D及び下傾斜面9E,9Fにおける側壁の厚み方向の中間位置に外側の開口を大きくした段部を形成し、これらに対応する段部を栓体10の上傾斜面10A,10B、下水平面10C,10D及び下傾斜面10E,10Fにも形成することにより、前記段部の側壁に平行な面同士の当接又はラビリンス効果により、栓体10,10による止水効果が高くなる。
さらにまた、排水口9,9からの少量の水分の滲みだしであっても嫌うような用途では、排水口9,9から水分を排出して栓体10,10を装着した後に、容器本体2の外面の栓体10,10との境界線の周囲を粘着テープ等により塞ぐことにより、排水口9,9からの水分の漏れ防止を確実に行うことができる。
【0019】
図5は、排水口9及び栓体10の別形態を示しており、図3の排水口9の形態における側壁4側の下傾斜面9E及び側壁7側の下傾斜面9Fがなく、図3の栓体10の形態における下傾斜面10E,10Fがないものである。
このような排水口9及び栓体10の形態であっても、栓体10が、排水口9の開口を埋めるように、その外形が前記開口まわりの容器本体2の外形に繋がる形状のものであるとともに、容器本体2に対して栓体10を外側から差し込んで取り付けることができるとともに、容器本体2から栓体10を外側へ引き抜くことにより又は容器本体2の内側から栓体10を外側へ押し出すことにより、容器本体2から栓体10を外側へ取り外すことができる。
そして、図5に示す排水口9及び栓体10の形態では、栓体10の取り外し方向が上傾斜方向F(図4参照。)に限定されず、水平方向にも取り外すことができ、同様に、栓体10の取り付けも下傾斜方向Eから水平方向の間で行うことができる。
【0020】
図6は、排水口9及び栓体10の別形態である、平面視短辺B側の側壁7側から栓体10を着脱可能な構成例を示している。
図6の排水口9は、側壁4,5側の上傾斜面9A、下水平面9C及び下傾斜面9E並びに側壁7側の下水平面9D及び下傾斜面9Fは図3の形態と同一であり、側壁7側の上傾斜面9Gは側壁7の外面から垂直に離間する方向へ行くにしたがって上方へ傾斜する傾斜面であり、傾斜面9Gの側壁7の外面との交線は水平となっており、上傾斜面9Gの側壁7の内側端と下水平面9Dの側壁7の内側端とが垂直面9Hに繋がっている。
また、栓体10についても、図3の栓体10と異なる形態として、上傾斜面9Gに当接する上傾斜面10G及び垂直面9Hに当接する垂直面10Hが形成されている。
図7は、図6と同様に平面視短辺B側の側壁7側から栓体10を着脱可能な構成例を示しており、図6の形態とは、排水口9の側壁7の外面から垂直に離間する方向へ行くにしたがって上方へ傾斜する下傾斜面9I及び栓体10の下傾斜面9Iに当接する下傾斜面10Iが異なる。
なお、図6(a)及び図7(a)における左右の栓体10,10は、図2のような同一形状ではなく、左右対称形状となっている。
【0021】
図6及び図7のような排水口9及び栓体10の形態により、容器本体2に対して栓体10,10を外側から平面視長辺A側の側壁4,5面と略平行に平面視短辺B側の側壁7に近づく下傾斜方向G(図6(a)及び図7(a)参照。)へ差し込んで取り付けることができるとともに、容器本体2から栓体10,10を外側へ側壁4,5面と略平行に側壁7から離れる上傾斜方向H(図6(b)及び図7(b)参照。)に引き抜くことにより又は容器本体2の内側から栓体10,10を前記上傾斜方向Hへ押し出すことにより、容器本体2から栓体10,10を外側へ取り外すことができる。
【0022】
以上のような保冷容器1の構成によれば、排水口9を塞ぐ栓体10が、排水口9の開口を埋めるように、その外形が前記開口まわりの容器本体2の外形に繋がる形状のものであることから、容器本体2の側壁4,5,7の外面から突出している部分が存在しないため、作業者の接触又は保冷容器1,1同士の接触等の原因による不必要な開栓や栓体10の紛失を防止することができる。
その上、特許文献4のような保冷容器の構成と比較して、排水口9が容器本体2の底板8に跨るものではなく、隣接する両側壁4,7又は5,7が交差する角部Cを含んで前記両側壁間に跨るものであることから、排水口9に栓体10を取り付けた状態で排水口9の開口の下側の壁(例えば、図5の下水平面9C,9D参照。)により栓体10が受け止められて保持される。
【0023】
よって、栓体10を保持するための比較的複雑な嵌合構造が不要になり、本実施の形態のように栓体10を保持するための嵌合構造をなくすか、あるいは嵌合構造を設ける場合でも簡単な形状のものにすることができ、排水口9を塞ぐ栓体10を、容器本体2の外側から容器本体2に差し込んで取り付けることができるとともに、容器本体2から引き抜いて又は容器本体2の内側から押し出して外側へ取り外すことができることから、排水口9及び栓体10の形状が簡素になるため、形状設計及び成形が容易であるとともに、栓体10の着脱が容易になる。
その上さらに、両側壁4,7又は5,7間に跨る栓体10と容器本体2との接触面積が大きいため、容器本体2に取り付けた後に栓体10が離脱しにくく、排水口9の封止状態を保持しやすい。
その上、隣接する両側壁4,7又は5,7が交差する角部Cの下部まわりに排水口9及び栓体10を設けていることから積み重ね強度の低下が少ないため、容器本体2内に重い収容物を収納し、さらに多段に積み重ねる場合においても、強度面の信頼性が高い。
【0024】
また、図2〜図4のような容器本体2に対して栓体10を外側から下傾斜方向Eへ差し込んで取り付けることができるとともに、容器本体2から栓体10を外側へ上傾斜方向Fに引き抜くことにより又は容器本体2の内側から栓体10を外側へ上傾斜方向Fに押し出すことにより、容器本体2から栓体10を外側へ取り外すことができる構成によれば、栓体10を取り外す方向が上傾斜方向Fであることから、輸送時等に大きな衝撃や振動があって排水口9から栓体10がずれても元の状態に復帰しやすく、排水口9からの栓体10のずれや外れを抑制することができるため、栓体10による止水の信頼性が高くなる。
さらに、図6及び図7のような矩形箱状の容器本体2に対して栓体10を外側から平面視長辺A側の側壁4,5面と略平行に平面視短辺B側の側壁7に近づく方向(例えば下傾斜方向G)へ差し込んで取り付けることができるとともに、容器本体2から栓体10を外側へ平面視長辺A側の側壁4,5面と略平行に平面視短辺B側の側壁7から離れる方向(例えば上傾斜方向H)に引き抜くことにより又は容器本体2の内側から栓体10を前記側壁7から離れる方向に押し出すことにより、容器本体2から前記栓体10を外側へ取り外すことができる構成によれば、矩形箱状の保冷容器1,1の平面視長辺A側の側壁4,5面同士を合わせるように並設して積み重ねた状態でも、止水状態とするための栓体10,10,…の取り付け及び止水状態を解除して排水するための栓体10,10,…の取り外しを行うことができる。
【0025】
以上の説明においては、保冷容器が矩形箱状である場合を示したが、本発明に係る保冷容器はこのような保冷容器の形状に限定されるものではなく、容器本体の形状が、その水平方向に隣接する側壁があり、これらが交差する角部を有するものであればよい。
また、排水口9及び栓体10は、図1〜図7に示した形状に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要件を充足する全ての形状を含むものである。
【符号の説明】
【0026】
A 平面視長辺
B 平面視短辺
C 隣接する両側壁が交差する角部
E 下傾斜方向
F 上傾斜方向
G 平面視長辺側の側壁面と略平行に平面視短辺側の側壁に近づく下傾斜方向
H 平面視長辺側の側壁面と略平行に平面視短辺側の側壁から離れる上傾斜方向
1 保冷容器
2 容器本体
2A 上端縁
2B 嵌合凸部
2C 開口部
2D 凹条
3 蓋体
4,5 平面視長辺側の側壁
6,7 平面視短辺側の側壁
8 底板
9 排水口
9A,9B 上傾斜面
9C,9D 下水平面
9E,9F 下傾斜面
9G 上傾斜面
9H 垂直面
9I 下傾斜面
10 栓体
10A,10B 上傾斜面
10C,10D 下水平面
10E,10F 下傾斜面
10G 上傾斜面
10H 垂直面
10I 下傾斜面
11 閉止片
11A 凸条


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外を連通する排水口及び該排水口を塞ぐ栓体を備えた、被保冷物を収容する容器本体及び蓋体とからなる発泡合成樹脂製の保冷容器であって、
前記排水口が、前記容器本体における隣接する両側壁が交差する角部を含んで前記両側壁間に跨り容器内外を連通するように、前記角部の下部まわりに形成された開口であり、
前記栓体が、前記開口を埋めるように、その外形が前記開口まわりの前記容器本体の外形に繋がる形状のものであり、
前記容器本体に対して前記栓体を外側から差し込んで取り付けることができるとともに、前記容器本体から前記栓体を外側へ引き抜くことにより又は前記容器本体の内側から前記栓体を外側へ押し出すことにより、前記容器本体から前記栓体を外側へ取り外すことができるように前記排水口及び栓体を形成してなることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記容器本体に対して前記栓体を外側から下傾斜方向へ差し込んで取り付けることができるとともに、前記容器本体から前記栓体を外側へ上傾斜方向に引き抜くことにより又は前記容器本体の内側から前記栓体を外側へ上傾斜方向に押し出すことにより、前記容器本体から前記栓体を外側へ取り外すことができるように前記排水口及び栓体を形成してなる請求項1記載の保冷容器。
【請求項3】
前記容器本体が矩形箱状であり、この容器本体に対して前記栓体を外側から平面視長辺側の側壁面と略平行に平面視短辺側の側壁に近づく方向へ差し込んで取り付けることができるとともに、前記容器本体から前記栓体を外側へ平面視長辺側の側壁面と略平行に平面視短辺側の側壁から離れる方向に引き抜くことにより又は前記容器本体の内側から前記栓体を外側へ平面視長辺側の側壁面と略平行に平面視短辺側の側壁から離れる方向に押し出すことにより、前記容器本体から前記栓体を外側へ取り外すことができるように前記排水口及び栓体を形成してなる請求項1又は2記載の保冷容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−12020(P2012−12020A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147297(P2010−147297)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(599036738)北海道カネパール株式会社 (1)
【Fターム(参考)】