説明

保冷容器

【課題】少なくともガラス製の内容器を採用する場合に比べて、軽量化を可能とし、口部の熱伝導性を向上する保冷容器を提供すること。
【解決手段】コップ状の外容器5と、外容器の内側に収容するコップ状の内容器4とを備え、内容器の上部と外容器の上部を着脱可能に連結することによって容器本体2を形成し、容器本体の口部41を内容器によって形成し、外容器をコップ状の内壁とその外側に設けるコップ状の外壁とで二重壁構造とし、外容器の内壁の内周面と内容器の外周面との間に筒状の内側空間8を備えてある保冷容器1において、内容器を金属製にし、外容器を合成樹脂製にしてあることを特徴とする保冷容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビールに代表される飲料を冷えた状態に保てるようにしたコップ状の保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料(ビール、ワイン、ジュース、コーラ等)を入れるコップ状の保冷容器としては、
コップ状の外容器と、外容器の内側に収容するコップ状の内容器とを備え、内容器の上部と外容器の上部を着脱可能に連結することにより容器本体を形成し、容器本体の上端部である口部を内容器によって形成するものが知られている(特許文献1)。
この容器本体の外容器は、何れもコップ状の内壁と外壁とを備え、内壁と外壁の間に断面U字状の断熱空間を有する二重壁構造である。そして、これは、外容器内壁の内周面と内容器の外周面との間に筒状の内側空間を備えるものである。
【0003】
上述の保冷容器は、ガラス製内容器と、二重壁構造の合成樹脂製外容器によって、全体が三重壁構造に形成されている。しかし、内容器に採用されているガラスは、通常の使用で割れない程度の強度を出すには一定幅以上の厚みが必要となり、結果的に保冷容器が重くならざるを得ない。そこで、ガラスよりも軽量化を図れる材料を、内容器に採用することが望ましい。
【0004】
また、上述の保冷容器は、その口部もガラス製の内容器によって形成されていることから、飲料を飲む際に唇がガラス口部に触れることになる。そうすると、飲料の温度がガラスによって緩和されて唇に伝わるので、唇の体感温度と実際の液温に差ができることになる。したがって、飲料の温度をできるだけそのまま伝えられる熱伝導性の良い材料を口部に採用することが望ましい。
【0005】
また、上述の保冷容器の保冷効果をより高めたい場合、つまり保冷容器内の飲料をより冷やしたい場合には、蓄冷剤を断熱空間に収容しておけば良い。しかし、軽量化及び熱伝導性の向上を図れる材料を内容器に採用した場合、その熱伝導率の良さから、内容器の内周側付近において、保冷容器内に注がれた飲料が部分的に凍るおそれがある。
飲料の一部が凍る場合、飲料に含まれている水分のみが凍り、水分とそれ以外の成分に分離するため、水以外の成分の濃度が高くなり、本来の味とは異なることになる。従って、飲料に含まれている水分をできるだけ凍らせることなく、本来の味を維持したまま低温に冷却できることが望ましい。
【0006】
さらに、保冷容器はビール等の飲料を保冷するものであるが、上述した保冷容器は、保冷効果を調整できないものである。同じ温度の飲料であっても、ちょうど良い又は冷たすぎる等、人によって感じ方は様々である。従って、保冷効果を調整できる対策が施してあれば、より望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−194304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その解決課題は、少なくともガラス製の内容器を採用する場合に比べて軽量化を可能とし、しかも熱伝導性を向上した保冷容器を提供することである。また、望ましくは、飲料をできるだけ凍らせることなく低温に冷却できること、保冷効果の調整の対策を施してあることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コップ状の外容器と、外容器の内側に収容するコップ状の内容器とを備え、内容器の上部と外容器の上部を着脱可能に連結することにより容器本体を形成し、容器本体の上端部である口部を内容器によって形成し、外容器は、何れもコップ状の内壁と外壁とを備える二重壁構造であると共に、内壁と外壁の間に沿って断面U字状の断熱空間を形成してあり、外容器の内壁の内周面と内容器の外周面との間に沿って内側空間を備える保冷容器を前提とする。
【0010】
そして、請求項1の発明は、外容器を合成樹脂製にすると共に、内容器を金属製にしてあることを特徴とする。
【0011】
断熱空間に蓄冷剤を収容するか否かは問わない。凍結可能な蓄冷剤を収容した場合には、凍結から派生する膨張によって、外容器内壁が内側空間に向かって変形し、内容器に対して広範囲に亘って面接触するおそれがある。それをできる限り防ぐには、次のようにすることが望ましい。
即ち、請求項2の発明のように、断熱空間に凍結可能な蓄冷剤を収容し、外容器内壁の内周面と内容器の外周面との少なくとも一方に、他方に向かって突出する凸部を備え、蓄冷剤の凍結によって内壁が内側に変形する場合に、凸部によって内側空間の隙間を確保することを特徴とするものである。
【0012】
また、凸部の個数及び形状は問わない。但し、外容器の全体をその内周方向全長に亘って変形するのをできる限り防ぐには、次のようにすることが望ましい。
即ち、請求項3の発明のように、凸部を外容器内壁の上下方向に延長し、且つ周方向に沿って間隔をあけて設けるものである。
【0013】
また、内側空間の隙間についても寸法は問わない。しかし、飲料をできるだけ凍らせることなく低温に冷却するには、次のようにすることが望ましい。
請求項4の発明のように、外容器内壁と内容器の上部に、捩じ込み式に連結する傾斜突条部をそれぞれ設け、傾斜突条部及び凸部によって内側空間の隙間を0.1〜1.0mmに維持しているものである。
【0014】
断熱空間に収容される蓄冷剤の量は、問わない。例えば、保冷効果を調整できるようにするには、次のようにすることが望ましい。即ち、請求項5の発明のように、蓄冷剤は、非凍結状態において、保冷容器の上下を反転した場合、断熱空間の底部が空洞になる量を収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、内容器を金属製としたので、従来のようなガラス製に比べれば軽量化を図ることができる。また、ガラスに比べて金属は熱伝導性が良いので、金属製内容器の口部には保冷容器中の飲料の温度が従来よりも忠実に反映されて伝わる。
【0016】
請求項2の発明は、外容器内壁の内周面と内容器の外周面との少なくとも一方に、他方に向かって突出する凸部を備え、蓄冷剤の凍結によって内壁が内側に変形する場合に、凸部によって内側空間の隙間を確保するので、金属製内容器の全体が蓄冷剤によって直に冷やされることがない。その結果、蓄冷剤の冷却熱によって飲料の水分が凍るのをできるだけ防止しながらも、蓄冷剤の熱を内容器に伝えることができる。したがって、内容器が熱伝導の良い金属製であっても、その近傍において飲料の水分が凍り難くなり、飲料の成分を分離することなくより冷たい温度で保冷することも可能となる。
【0017】
請求項3の発明は、凸部を外容器内壁の周方向に沿って間隔をあけて設け、各凸部を上下方向に延長するものとしてあるので、内壁の強度が向上し、外容器の全体がその内周方向全長に亘って変形するのをできる限り防止でき、金属製内容器が蓄冷剤によって直に冷やされることを一段と防止できる。
【0018】
請求項4の発明は、外容器内壁と内容器に設けた傾斜突条部と凸部によって内側空間の隙間を0.1〜1.0mmという非常に狭い間隔に維持しているので、蓄冷剤の冷却熱によって飲料の水分が凍るのを一段と防止しながらも、蓄冷剤の熱を内容器に一段と効率よく伝えることができる。
【0019】
請求項5の発明は、蓄冷剤が非凍結状態のままで保冷容器を上下反転して冷凍室に入れると、入れた直後では蓄冷剤の収容量の関係で断熱空間の底部が空洞になっている。そして、所定時間経過後に蓄冷剤が凍ると、断熱空間の周囲が凍結した蓄冷剤で覆われることになり、冷凍室から取出した保冷容器中に飲料を入れることで、その周囲からしっかり冷却できる。
一方、保冷容器を上下反転しない場合、そのままの状態で冷凍室に入れて蓄冷剤を凍らせたときには、断面U字状の断熱空間の周囲だけでなく底側にも蓄冷剤が配置しているので、保冷容器中の飲料をその周囲だけでなく底側からもしっかりと冷却できる。このように、簡単に保冷効果を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(イ)(ロ)図は、蓄冷剤凍結時の本発明の保冷容器を示す平面図、A−A線断面図である。
【図2】図1のB−B線断面図と、その一部拡大断面図である。
【図3】蓄冷剤解凍時の本発明保冷容器の分解状態における一部欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に基づき本発明の保冷容器1の実施形態を説明する。保冷容器1はジョッキ形態で、容器本体2と、容器本体2に一体化しているコ字状の持ち手3とから構成される。以下、容器本体2について詳述する。
【0022】
容器本体2は、コップ状の内容器4と、内容器4の外周側及び底部下側を覆う外容器5と、外容器5に内蔵される蓄冷剤6を備えている。そして、内容器4は金属製で、外容器5は二重壁構造の合成樹脂製であり、容器本体2の全体が三重壁構造をなしている。
また、容器本体2は、内容器4と外容器5の双方を上部で着脱可能に連結し、内容器4と外容器5の間に断面U字状の内側空間8を備え、外容器5は単独で断面U字状の断熱空間7を有する。
以下、内容器4、外容器5及び蓄冷剤6について順に詳述し、その所々で内容器4と外容器5の連結構造、断熱空間7及び内側空間8の構造について触れる。
【0023】
内容器4は金属製で、その一例として、アルミニウム、ステンレス、銅、鉄を主成分とするものが挙げられる。内容器4はコップ状(有底円筒形)を成し、その上端部を屈曲して容器本体2の口部41を形成する。
内容器4の構造を詳しく言えば、コップ状の内容器本体4aと、内容器本体4aの上端全周の外側に亘って垂下する環状の折返し片4bとを備えている。
【0024】
内容器本体4aは、全体的に下方に向かうにつれてその内径及び外径を狭くするテーパー形状を成してあり、特に、その上部は、下部より傾斜角の大きい急激なテーパー形状を成している。
一方、折返し片4bは、内容器本体4aの上部よりも緩やかなテーパー形状であり、口部41の外周面を形成する。
【0025】
外容器5は硬質合成樹脂製であって、いずれもコップ状を成す内壁5aと外壁5bとの上部を連続し、内壁5aと外壁5bとで内容器4の外側を二重に覆うと共に、内壁5aと外壁5bとの間に断面U字状の断熱空間7を有し、断熱空間7に蓄冷剤6を収容する構造である。
外壁5bは、円筒状の外周壁12、外周壁12の底を塞ぐ底蓋21、底蓋21のキャップ孔22aを塞ぐキャップ31とから構成されている。
また、外容器5は、外周壁12及びコップ状の内壁5aを備える外容器本体11と、底蓋21と、キャップ31とを組立部品として備えている。
【0026】
外容器本体11は、上述したコップ状の内壁5aと、その外周側を覆う円筒形の外周壁12を備えている。半径方向の厚みは、例えば、内壁5a:2mm、外周壁12:3mmである。内壁外周壁12の下端部は内壁5aの底部よりも下方に延長しており、この延長部分には底蓋21が取り付けられる。
また、外周壁12の上部の内周方向に亘って内壁5aの上端部が連続している。この上端部である連続壁5dには、嵌合片5eが上方に突出している。嵌合片5eが内容器4の内側、より詳しくは折返し片4bの下端部の内側に嵌り合うことによって、内容器4の口部41と外容器5の上端部において、これらの外周面がほぼ面一に形成される。
【0027】
底蓋21は、円盤状の蓋板22と、蓋板22の外周部の全周に亘って起立するリング状の起立片23と、蓋板22の外周部の全周に亘って垂下するリング状の底上げ片24とから構成される。起立片23の上部は上述した外周壁12の下端部への取り付け箇所である。ここでは、起立片23の外周面に外周壁12の下端部の内周面を合わせるようにして、起立片23の上部と外周壁12の下端部を嵌め合わせ、断熱空間7を形成してある。
なお、嵌め合わせ箇所を全周に亘って超音波溶着して、外容器本体11と底蓋21とを非常に軽い力では外れないように一体化する。
また、底蓋21は、底上げ片24によって、蓋板22の下側に上げ底空間25を形成する。蓋板22は、キャップ31を嵌め込むキャップ孔22aを備えている。
【0028】
キャップ31は、蓋板22よりも軟質の合成樹脂製品であって、キャップ孔22aに嵌り込むキャップ本体32と、キャップ本体32の外周部に亘って外向きに突出するフランジ部33とから構成される。
キャップ31は、その弾力性によってキャップ孔22aに嵌め込まれ、フランジ部33を全周に亘って蓋板22の底面に超音波溶着される。これによって、断熱空間7に収容された蓄冷剤6が漏れ出ないようになる。
【0029】
内容器4と外容器5の連結構造は、着脱可能なものであれば特に限定されず、具体的には、捩じ込み式及び嵌合式等が挙げられる。図の例では捩じ込み式(バヨネット式)が採用されている。つまり、図1、図3に示すように、内容器4の上部外周面と外容器5(内壁5a)の上端部内周面であってそれらの円周方向に間隔をおいて傾斜突条部4c、5cが別々に形成されている。また、これら傾斜突条部4c、5cは、円周方向に延長しながらも水平を基準にして僅かに傾斜する状態となっている。
内容器4と外容器5を連結する際には、外容器5の隣り合う一対の傾斜突条部5c、5cの間に内容器4の傾斜突条部4cがくるように位置合わせをしてから、外容器5の内側に内容器4を嵌め込み、外容器5に対して内容器4を相対的に回すことによって、外容器5の傾斜突条部5cの下に内容器4の傾斜突条部4cが捩じ込まれ、内容器4と外容器5との連結が確保される。
つまり、各傾斜突条部4c、5cがネジの役割を果たす。これら傾斜突条部4c、5cは、内側空間8の半径方向の隙間Gを形成することに、役立っている。
【0030】
内側空間8は、内容器4と外容器5の内壁5aとの間に形成されるもので、内容器4の外周側及び底部下側を断面U字状に覆う空間である。
内側空間8の円筒状部における半径方向の間隔(隙間G)は、断熱空間7のそれに比べて極端に狭く、好ましくは1/10以下である。また、隙間Gの数値を具体的に例示すると、採用可能な範囲は0.1〜1.0mm、好ましい範囲は、0.2〜0.7mm、最適な範囲は0.3〜0.5mmである。
【0031】
この隙間Gを確保するために図2、図3に示すように、内壁5aには、その円筒状の内周面下部に複数の凸部5fが円周方向に間隔をあけて形成されている。より詳しく言えば8個の凸部5fが円周方向に等間隔をあけて形成されている。各凸部5fの突出寸法は、隙間Gの数値と同じか、それよりも僅かに短くしてあり、最適な範囲は、0.3〜0.5mmである。また、各凸部5fは、内容器4の外周面に向かって突出するだけでなく、上下方向に延長するリブであって、内壁5aの底部にも達している。
保冷容器1を冷却して蓄冷剤6を凍結させた場合には、内壁5aは、保冷容器1の中心方向に向かって変形し、内容器4の外周面に面接触する可能性もある。しかし、凸部5fを設けてあることによって、内壁5aの強度が向上し、変形し難くなると共に、凸部5fが内容器4に当接(線接触)する状態になり、隙間Gが確保される。複数の凸5fが内容器5に対して円周方向に亘って当接しているので、厳密に言うと、内側空間8は、その円周方向に沿って間隔をあけて設けられていることになる。なお、このような凸部5fの構造と、内壁5a及び外周壁12をそれぞれ上方向及び下方向に半径が広がるテーパー形状としてあるので、外容器本体11を射出成型する場合に、上下方向の型開きに支障を生じない。
【0032】
一方、断熱空間7は、外容器5の内壁5aと外壁5bとの間に形成されるもので、内壁5aの外周側及び底部下側を断面U字状に覆う空間である。従って、内壁5aを境界壁としてその内外に内側空間8と断熱空間7とが形成される。断熱空間7は、内壁5aと外壁5bの半径方向の間に形成される円筒状の第1断熱空間部7aと、底蓋21の上に形成される円盤状の第2断熱空間部7bと、から構成される。
断熱空間7に収容される蓄冷剤6の収容量は、非凍結状態(解凍状態)において第1断熱空間部7aの容積以下にしてある。これは、後述するが、金属製の内容器4の底側からは、積極的に冷却しないことを可能にするためである。
【0033】
蓄冷剤6は半透明で、例えば塩分含有量が全体の重量比で15%程度の配合割合のものを用い、その塩分含有量により、−20℃〜−5℃の範囲で凍結又は解凍する性質を有するものを用いる。また、塩分となる材料として、塩化カリウムを用い、全体の重量比で10〜20%の配合割合とすることにより、ほぼ確実に蓄冷剤6全体が凍結するものと推測される。また、C.M.C(カルボキシメチルセルロース)は、白色〜類白色の粉末であり、その性状は温水だけでなく冷水にも溶解し、溶解時には増粘性を呈するものである。このC.M.Cを蓄冷剤6の成分として全体の重量比で1.0〜2.0%で配合することにより、蓄冷剤6が粘結性を呈する。
【0034】
持ち手3は合成樹脂製で、把握部の上下端部より一方向に取付部を突設する略コ字状である。また、持ち手3は、容器本体2とは別個に作られた成形品であって、上下の取付部を外容器5の外周壁12に各々溶着等して容器本体2に一体化される。
【0035】
上述した保冷容器1は、次のようにして使用する。
第1の使用態様としては、まず、蓄冷剤6が非凍結状態の場合に、保冷容器1の上下を反転して冷凍庫に収容しておく。蓄冷剤6は、保冷容器1の上下反転により第1断熱空間部7aに移動し、第2断熱空間部7bが空洞になる。
冷凍庫によって保冷容器1を十分に冷却し、蓄冷剤6を凍結させると、蓄冷剤6は凍結により体積が増大し、そのことにより第2断熱空間部7bに向かって膨張する。
その後、冷凍庫から保冷容器1を取り出して、上下を元に戻すと、図1に示すように、第2断熱空間部7bに空洞ができる状態になり、その状態の内容器4内に飲料を注いで使用する。使用中に蓄冷剤6が溶け始めると、溶けた蓄冷剤6が第2断熱空間部7bに溜まっていく。蓄熱剤6が全て解凍すると、図3に示すように、蓄冷剤6が断熱空間7の下側に移動して、その上側には空洞が出来る。
第2の使用態様としては、保冷容器1をそのまま(上下反転させずに)冷凍庫に収容する。この場合、蓄冷剤6は図3に示すように、第2断熱空間部7bから第1断熱空間部7aの全高の途中まで達するので、蓄冷剤6が断面U字状(有底筒状)に凍る。その後、冷凍庫から保冷容器1を取り出して、内容器4内に飲料を注いで使用する。
上述の保冷容器1は、内容器4と二重壁構造の外容器5により三重壁構造になっており、しかも、内容器4と外容器5の間に内側空間8を備えているので、保冷効果が高い。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば図示しないが、保冷容器1は、断熱空間7に蓄冷剤6を収容しない構造であっても良い。
一方、冷却効果を向上するために、凍結時における蓄冷剤6の膨張を考慮した上で、できる限り多量の蓄冷剤6を断熱空間7に収容しても良い。この場合、蓄冷剤6は、保冷容器1の上下を反転した場合、円筒状部(第1断熱空間部7a)だけでなく、断熱空間7の底部(第2断熱空間部7b)にも、ある程度収容された状態になる。
【0037】
凸部5fは、上下方向に延長するリブに限らず、単なる突起であっても良い。突起状の凸部5fは外容器本体11の成型時の型抜きを考慮すれば、アンダーカットになるので、できるだけ内壁5aの下部に設けることが好ましい。なお、凸部5fは、内容器4の外周面に設けても良い。
【0038】
また、内側空間8は、図示の例では、断面U字状であり、外容器5に対して内容器4の半径方向の外側及び下側に連続して間隔が形成されている構造であったが、内容器4の下側には間隔の無い構造、つまり、内容器4の半径方向の外側にのみ隙間Gが形成された円筒状の空間からなる構造であってもよい。さらに、持ち手3は、付いていない構造であっても良い。なお、内容器4をガラス製として製品化することも技術的には可能であり、この場合でも飲料に含まれている成分をできるだけ凍らせることなく、本来の味を維持したまま低温に冷却できる。
【符号の説明】
【0039】
1保冷容器 2容器本体
3持ち手
4内容器 41口部
4a内容器本体 4b折返し片
4c傾斜突条部
5外容器 5a内壁
5b外壁 5c傾斜突条部
5d連続壁 5e嵌合片
5f凸部
6蓄冷剤
7断熱空間 7a第1断熱空間部
7b第2断熱空間部
8内側空間 G隙間
11外容器本体 12外周壁
21底蓋
22蓋板 22aキャップ孔
23起立片 24底上げ片
25上げ底空間
31キャップ
32キャップ本体 33フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コップ状の外容器と、外容器の内側に収容するコップ状の内容器とを備え、内容器の上部と外容器の上部を着脱可能に連結することにより容器本体を形成し、容器本体の上端部である口部を内容器によって形成し、
外容器は、何れもコップ状の内壁と外壁とを備える二重壁構造であると共に、内壁と外壁の間に沿って断面U字状の断熱空間を形成してあり、
外容器内壁の内周面と内容器の外周面との間に沿って内側空間を備える保冷容器において、
外容器を合成樹脂製にすると共に、内容器を金属製にしてあることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
断熱空間に凍結可能な蓄冷剤を収容し、外容器内壁の内周面と内容器の外周面との少なくとも一方に、他方に向かって突出する凸部を備え、
蓄冷剤の凍結によって内壁が内側に変形する場合に、凸部によって内側空間の隙間を確保することを特徴とする請求項1記載の保冷容器。
【請求項3】
凸部は外容器内壁の上下方向に延長し、且つ周方向に沿って間隔を保って設けてあることを特徴とする請求項2記載の保冷容器。
【請求項4】
外容器内壁と内容器の上部に、捩じ込み式に連結する傾斜突条部をそれぞれ設け、傾斜突条部及び凸部によって内側空間の隙間を0.1〜1.0mmに維持していることを特徴とする請求項2又は3記載の保冷容器。
【請求項5】
蓄冷剤は、非凍結状態において、保冷容器の上下を反転した場合、断熱空間の底部が空洞になる量を収容されていることを特徴とする請求項2、3又は4記載の保冷容器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−85907(P2012−85907A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236502(P2010−236502)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(591135875)
【Fターム(参考)】