説明

保冷庫

【課題】保冷車、トラック、電車、船、航空機等の輸送機関に搭載された保冷庫の庫内温度分布を均一にする。
【解決手段】輸送機関10に搭載され、積荷空間Sの一端に吸込口34と吹出口36をもつ空気冷却器28を備えた保冷庫12において、空気冷却器28に冷風ダクト38を接続し、該冷風ダクトを天井面13に沿って少なくとも積荷空間Sの中央域まで延設すると共に、該延設端の吹出口40から冷風cを吹き出すようにし、冷風cを積荷空間Sの末端域から積荷の最上面に沿って空気冷却器28の吸込口34に向けて戻る上部循環流c1と、積荷空間Sの末端域から下降して積荷fが載置されたパレット20に形成された通風空間s1を通って吸込口34に向けて戻る下部循環流c2と、上部循環流c1及び下部循環流c2を吸込口34まで導く戻入流路s2とを形成させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷車等の輸送機関に搭載された保冷庫に適用されて好適であり、庫内の温度分布を均一にできる保冷庫に関する。
【背景技術】
【0002】
国内外の食品流通分野では低温流通が確立しつつある。低温流通手段として、食品加工工場から店舗への食品の流通には、保冷庫を備えた冷蔵車、冷凍車等の保冷車あるいはトラック等による輸送が必要不可欠となっている。保冷庫を搭載した輸送機関は、保冷車以外にも、トラック、電車、船、航空機等があるが、いずれも積載量が高いほど、大量輸送が可能になり、輸送コストの低減につながることから、大型保冷庫を使う需要が高まっている。
【0003】
保冷車、トラック等の場合は、保冷庫は容量が大きいほど冷却能力の高い冷凍機器と、庫内の温度分布を均一にする装備が必要である。しかしながら、保冷車の場合、車幅方向のスペースに制限があるため、保冷庫の容量を大きくすると、車体前後方向のスペースを大きく取らざるを得ない。また、保冷庫自体に大きさや重量の制限があり、積荷の積載量を優先するため、自ずと装備の規模は限られている。
【0004】
冷凍機器は、冷却能力が高いほど圧縮機動力が高くなり、冷凍機器をエンジンで駆動するため、燃料消費量も多くなる。燃料消費量の増加は、輸送コストの増加のみならず、CO排出量の増加にもつながる。近年の省エネ関係法の改正により、運輸部門の輸送事業者・荷主に省エネの努力義務が求められると共に、保冷庫内の温度管理を厳しくすることが求められている。
【0005】
本出願人は、過去に、保冷車を用いた食品の低温流通システムに関し、いくつかの提案をしている。
例えば、特許文献1(特開2006−242462号公報)では、ブライン又は氷スラリー等の潜熱蓄冷材を貯留するタンクや冷凍機ユニットを地上に備え、保冷車に潜熱蓄冷材の供給管および回収管を着脱可能にして、保冷庫への潜熱蓄冷材の供給や保冷庫からの潜熱蓄熱材の回収を容易にした基地機能システムを提案している。
【0006】
また、特許文献2(特開2006−242487号公報)では、ブライン又は氷スラリー等の潜熱蓄冷材を保冷車に搭載された保冷庫の冷却パネルに充填する場合に、冷却パネル内の氷充填率を高めて冷却能力を増すと共に、搬送ポンプ動力の低減可能な充填手段を提案している。
また、特許文献3(特開2008−164253号公報)では、ブライン又は氷スラリー等の潜熱蓄冷材の貯留タンクと、保冷庫内空気を冷却する熱交換器と、貯留タンク内の潜熱蓄冷材を該熱交換器に供給するポンプ等を車体に搭載し、保冷庫内の冷却速度を増大可能にした保冷システムを提案している。
【0007】
【特許文献1】特開2006−242462号公報
【特許文献2】特開2006−242487号公報
【特許文献3】特開2008−164253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
輸送機関搭載用の大型保冷庫の需要が高まる中で、保冷庫の大型化を志向するとき、保冷車等の輸送機関では、保冷庫の幅方向のスペースには限りがあるため、保冷庫の車体前後方向のスペースを長く取らざるを得ない。そこで、保冷庫内の車体前後方向の温度分布にばらつきが生じる問題が出てきた。即ち、保冷車では、冷凍機器はエンジン駆動であるため、冷凍機器はエンジンに近い車体前方側の側壁近傍に設けられる。そのため、冷凍機器を構成する熱交換部(蒸発器等)や冷風吹出口も該前方側壁の近傍に設けられている。
【0009】
このため、保冷庫の前方から吹き出す冷風が後方まで到達せず、保冷庫の前方領域は冷えるが、後部扉付近の後方領域は冷えず、保冷庫の車体前後方向で温度ムラが生じるという問題が生じてきた。積荷の上面から保冷庫内天井面までの空間が、冷風通路を形成しているが、該冷風通路が同時に冷風の戻り通路にもなり、冷風が保冷庫の中央付近でリターンしているのが現状である。
【0010】
地上に設置されている冷蔵倉庫や冷凍倉庫の場合、その冷却能力と庫内温度分布を考慮して、蒸発器の台数や配置を決定する。しかしながら、前述のように、保冷車の場合、冷凍機器をエンジン駆動する点から、蒸発器を配置する場所が運転席近傍に限定されるため、現状では庫内温度分布を均一にすることは困難である。前記特許文献1〜3にもかかる問題を解決する手段は開示されていない。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、保冷車、トラック、電車、船、航空機等の輸送機関に搭載された保冷庫の庫内温度分布を均一にする手段を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明の保冷庫は、
輸送機関に搭載され、積荷空間の一端に吸込口と吹出口をもつ空気冷却器を備えた保冷庫において、
前記空気冷却器に冷風ダクトを接続し、該冷風ダクトを天井面に沿って少なくとも積荷空間の中央域まで延設すると共に、該延設端の吹出口から冷風を吹き出すようにし、
該吹出口から吹き出す冷風を積荷空間の末端域から積荷の最上面に沿って該空気冷却器の吸込口に向けて戻る上部循環流と、積荷空間の末端域から下降して積荷が載置されたパレットに形成された通風空間を通って該吸込口に向けて戻る下部循環流と、該上部循環流及び下部循環流を該吸込口まで導く戻入流路と、を形成させたものである。
【0013】
本発明では、輸送機関の駆動装置近傍で積荷空間の一端に設けられた空気冷却器に冷風ダクトを接続し、該冷風ダクトを天井面に沿って積荷空間の中央域から積荷空間を横断して積荷空間の末端に至る領域に延設し、その延設端から冷風を吹き出すようにする。
そして、吹き出した冷風の一部を、積荷の最上面に沿って冷却器の吸込口に戻る上部循環流と、積荷空間の末端域から下降して該パレットに形成された通気空間を通って該吸込口に戻る下部循環流とに分割形成させ、さらに戻入流路を介して空気冷却器の吸込口に戻すようにしたものである。
【0014】
最近、保冷車、トラック等の保冷庫への積荷の積み方は、効率化されており、積荷が隙間なくぎっしり積み込まれるようになってきており、積荷の最上面が略同じ高さをもつようになってきている。本発明では、この積載方法に合わせて、積荷の最上面に沿う前記上部循環流を形成させるようにしている。
このように、積荷の上面と下面を挟むように積荷空間の末端付近から空気冷却器に戻る冷風の循環流を形成させることによって、積荷空間の温度分布を均一にすることができる。
【0015】
本発明において、パレットの上面に通風孔を設け、上部循環流から分かれて積荷間に形成された隙間を上方から下方に通る冷風の分流を形成させるようにするとよい。これによって、積荷間の隙間にも冷風を通すことができるので、積荷の保冷効果を増大できると共に、積荷空間の温度分布の均一化をさらに向上できる。
【0016】
また、本発明において、冷風ダクトを積荷空間を横断して積荷空間の末端域まで延設し、少なくとも中央域から末端域までの冷風ダクトの下面に冷風吹出孔を設けるようにするとよい。冷風ダクトを積荷空間の末端域まで延設し、該延設端に吹出口を設けると、冷風の吹き出し流が末端の壁面に衝突するので、上部循環流が形成されにくくなり、積荷の上面が冷えにくくなる懸念がある。
そのため、冷風ダクトの中央域から末端域までの領域に冷風吹出孔を設けて、下方に冷風を吹き出すようにすれば、上部循環流の形成が容易になる。さらに、該冷風吹出孔の数や孔径を調節することにより、上部循環流の流量調節が可能になる。
【0017】
また、本発明において、冷風ダクト内部の通風空間に冷媒又は潜熱蓄冷材を流す冷却管を配設し、該冷風ダクト内に冷風を形成するファンを空気冷却器に設けるようにするとよい。
冷風ダクトを設けると、冷風ダクト内での冷風の圧力損失が発生し、冷風量が低下する。そのため、ファン能力を高くする必要があるが、空気冷却器の設置スペースには制限がある。前記構成とすることにより、空気冷却器に冷却管を設ける必要がなくなり、その分ファン設置のためのスペースを大きく取ることができるので、既存の保冷庫のスペースで空気冷却器に高能力のファンを設置できる。
【0018】
また、本発明において、空気冷却器が設けられた付近の庫内側壁との間に隙間をもたせてバルクヘッドを立設し、最高積荷高さより上方の該バルクヘッドに前記上部循環流を流通させるスリット状の上部開口を設けると共に、該バルクヘッドに前記パレットの通気空間との対向面に前記下部循環流を流通させるスリット状の下部開口を設けるとよい。
【0019】
バルクヘッドは、庫内側壁に積荷を直接当てないため、また通風空間を形成させるために設けられる。前記構成とすることによって、空気冷却器の吸込口と積荷の最上面上方に設けられた通風空間及びパレットに設けられた通風空間とを直接連通する戻入流路を容易に形成できるため、上部循環流及び下部循環流の形成が容易になる。
また、バルクヘッドを設けることにより、保冷庫の側壁に設けられた断熱層に積荷が直接当らないため、断熱層の損傷を防止できると共に、積荷の荷崩れを防止できる。
【0020】
また、本発明において、前記構成に加えて、前記下部開口の開口面積をパレットの通気空間の開口と同等以上とすると共に、前記上部開口の開口面積を下部開口の開口面積の0.1〜0.5倍とするとよい。
これによって、上部循環流及び下部循環流を形成できるように冷風流量を分配することが可能になり、これによって、積荷空間の前方、中央及び後方に亘って通風空間を均一に保冷することができる。
【0021】
また、本発明において、輸送機関が保冷車であり、空気冷却器を運転席近傍の庫内側壁上部に配置し、冷風ダクトを空気冷却器から後部扉側に向けて延設するとよい。
保冷車に搭載された保冷庫は、幅方向のスペースが限られているので、保冷庫を大型化する場合、必然的に車体前後方向のスペースを大きく取る必要がある。また、空気冷却器はエンジン駆動となるため、エンジン駆動力の伝達機構をなるべく簡素化するため、空気冷却器は運転席近傍の庫内に設置される。
【0022】
保冷車に搭載された保冷庫に本発明を適用すれば、車体前後方向の全域に亘って上部循環流及び下部循環流を形成できるため、空気冷却器を配置した保冷庫の前端面から後部扉を有する保冷庫の末端部まで保冷庫内を均一に冷却できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の保冷庫によれば、輸送機関に搭載され、積荷空間の一端に吸込口と吹出口をもつ空気冷却器を備えた保冷庫において、前記空気冷却器に冷風ダクトを接続し、該冷風ダクトを天井面に沿って少なくとも積荷空間の中央域まで延設すると共に、該延設端の吹出口から冷風を吹き出すようにし、該吹出口から吹き出す冷風を積荷空間の末端域から積荷の最上面に沿って該空気冷却器の吸込口に向けて戻る上部循環流と、積荷空間の末端域から下降して積荷が載置されたパレットに形成された通風空間を通って該吸込口に向けて戻る下部循環流と、該上部循環流及び下部循環流を該吸込口まで導く戻入流路と、を形成させたことにより、保冷車、トラック、電車、船、航空機等の輸送機関に搭載された保冷庫の庫内温度分布を簡素な構成で均一にすることができる。従って、該保冷庫内の積荷の温度管理を目標値どおりに精度良く行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0025】
(実施形態1)
本発明を冷蔵車又は冷凍車等の保冷車に搭載された保冷庫に適用した第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1及び図2において、保冷車10には、保冷庫12が搭載されている。保冷車10の運転席14の近傍にある保冷庫内側の前面壁15には、断熱板16が張設されている。また、保冷庫12の他の壁面も断熱構造を有している。保冷庫12には、後部扉18からパレット20に載置された食品等の冷蔵又は冷凍が必要な積荷fが積載される。パレット20は、例えば150〜200mmの高さを有する。
積荷fは、図示のように、通常パレット20に乗る大きさのプラスチックケース又は段ボール箱などに収納される。積荷fが載置される領域は、パレット上面の面積より小さいので、パレット間隔を詰めて配置したとしても、積荷f間には隙間s3が形成される。
【0026】
パレット20の上面21は、多数の通気孔がメッシュ状に配置され、四方の側面は、フォークリフト等の搬送爪が挿入可能なように開口した構造となっている。パレット20の内部は空気の流通が自在な通風空間s1を形成している。前面壁15と積荷fとの間には、積荷fが直接断熱板16に当らないように、隙間s2を有してバルクヘッド22が立設されている。バルクヘッド22には、上部開口24及び下部開口26が設けられている。上部開口24及び下部開口26は水平方向に配置されてスリット状をなし、下部開口26は上部開口24より開口面積が大きく形成されている。
【0027】
図3に示すように、上部開口24は、積荷fの最上面より上方に設けられ、下部開口26は、パレット20に形成された通風空間s1の開口に対向する面に設けられている。そして、本実施形態では、上部開口24の開口面積は、保冷庫12の全横断面積の1.5%であり、下部開口26の開口面積は保冷庫12の全横断面積の10%になるように形成されている。
【0028】
保冷庫12の内側上部に空気冷却器28が設けられている。図4に示すように、空気冷却器28のケーシング30内には、熱交換部(蒸発器又は冷却管で構成されている。)33とファン32を内蔵している。ファン32で吸込口34から保冷庫内の空気を吸入し、吸入した空気を熱交換部33で冷却して、吹出口36から吹き出すようにしている。吹出口36には冷風ダクト38が一体に接続されている。
【0029】
図2に示すように、冷風ダクト38は、扁平形状をなして内部に扁平状の通風空間を形成している。冷風ダクト38は保冷庫12の天井面13に付設され、天井面13の幅方向全面に配設され、保冷庫12の中央域まで延設されている。冷風ダクト38の先端は冷風の吹出口40を形成している。吹出口40は後部扉18側に向けて配置されている。
【0030】
熱交換部33を構成する冷却管には、冷媒又は潜熱蓄冷材が流れる。潜熱蓄冷材の場合、ブライン又は氷スラリー等が流れ、吸込口34から吸入された庫内空気を冷却する。熱交換部33に潜熱蓄冷材を流す手段として、保冷車10に潜熱蓄冷材を貯留したタンクを搭載し、このタンク内の潜熱蓄冷材を小型ポンプで熱交換部33に流すようにする。該タンクには地上に設置された供給センタから潜熱蓄冷材を補給するようにする。
別な潜熱蓄冷材の補給手段として、保冷車10に冷凍サイクルを構成する冷凍機を搭載し、この冷凍機で潜熱蓄冷材を製造し、製造した潜熱蓄冷材を車体に搭載したタンクに貯留するようにしてもよい。
【0031】
かかる構成において、保冷庫12に積荷fを積載した状態で、空気冷却器28を稼動させ、冷風ダクト38の吹出口40から天井面13と積荷最上面との間の積荷空間Sに冷風を吹き出し、庫内を冷却する。吹出口40から吹き出された冷風cは、図4に示すような通風流路を形成する。即ち、一部が保冷庫12の前方側に折り返し、積荷fの最上面に沿う上部循環流c1を形成する。上部循環流c1の一部は積荷f間に形成された隙間s3を通る分流c3を形成して積荷fの下部に達する。また、冷風cの一部は、後部扉18まで達し、後部扉18と積荷f間の隙間s4を通り、積荷fの下部に達する。
【0032】
隙間s3を通った分流c3及びs4を通って積荷fの下部に達した冷風cは、パレット20に設けられた通風空間s1を通って保冷庫12の前方に向う下部循環流c2を形成する。
上部開口24が上部循環流c1が空気冷却器28の吸込口34に戻る戻り流路を形成し、下部開口26及び隙間s2が下部循環流c2が吸込口34に戻る戻り流路を形成する。
【0033】
そのため、上部循環流c1は、バルクヘッド22に設けられた上部開口24からなる戻り流路を通って吸込口34に達し、下部循環流c2は、下部開口26及び隙間s2からなる戻り流路を通って空気冷却器28の吸込口34に達する。
このような冷風cの循環流を形成することにより、保冷庫12の長手方向に亘って均一な温度分布を形成できる。
【0034】
図5に示す表1中の試験No.1は、本実施形態に係る試験結果であり、図6は、この試験結果の温度分布をプロットしたものである。なお、表1に示す試験は、すべて設定温度を3℃として試験条件を設定したものである。設定温度用の温度計は、空気冷却器28の吸込口34に設置されており、設定温度が3℃の場合は、吸込口温度が3℃で冷却機器が自動停止(冷却オフ)し、吸込口温度が5℃で冷却機器が自動運転(冷却オン)する。
【0035】
試験No.1では、冷却オフ時の庫内温度分布は、前部9点で1.5℃、中部9点で3.3℃、後部9点で−1.0℃であり、略設定温度以内に到達している。冷風ダクト38の設置により、空気冷却器28の吹出し冷風cが後部まで到達し、バルクヘッド22の上部開口24及び下部開口26の開口面積を前記の通りとしたので、保冷庫12の長手方向全域に亘り、隙間s3及びs4に冷風cの分流が形成されると共に、前方に向う上部循環流c1及び下部循環流c2が形成され、冷風cが空気冷却器28の吸込口34にショートサーキットしない、最良の状態であると言える。
【0036】
(実施形態2)
次に、本発明の第2実施形態を図7に基づいて説明する。図7に示す保冷庫12の構成は、上部開口24をなくしたもので、下部開口26の開口率は前記第1実施形態と同一である。また、冷風ダクト38等、その他の構成は第1実施形態と同一である。本実施形態の試験条件及び試験結果を表1(図5)中の試験No.2に示す。
この試験条件での冷風cの流れ状況を図7に示す。図7に示すように、この場合も、積荷fの上面に沿う上部循環流c1と積荷fの下方を通る下部循環流c2が形成され、庫内温度分布をおおむね均一にすることができた。
【0037】
この場合、冷却オフ時の庫内温度分布は、前部9点で−0.8℃、中部9点で5.1℃、後部9点で−2.0℃であり、庫内中部付近が設定温度3℃に到達していない。
これは、冷風ダクト38から出た冷風cが、積荷fの最上面から保冷庫内天井面13までの積荷空間Sを通過して後部に達し、前部及び後部の積荷fの隙間s3及び隙間s4に分流してパレット上面の流通孔を通過し、バルクヘッド22の下部開口26に至る下部循環流c2と、すぐに前部の積荷fの隙間s3に分流してパレット上面の流通孔を通過し、バルクヘッド22の下部開口26に至る上部循環流c1とに別れ、中部域に冷風cがあまり行き渡らなかったためと考えられる。
【0038】
(実施形態3)
次に、本発明の第3実施形態を図8に基づいて説明する。図8に示す保冷庫12の構成は、上部開口24を大きくし、その開口面積を保冷庫12の全横断面積の5%(下部開口26の0.5倍)としたものである。下部開口26の開口率は前記第1実施形態と同一であり、冷風ダクト38等、その他の構成は第1実施形態と同一である。本実施形態の試験条件及び試験結果を表1中の試験No.3に示す。この試験条件での冷風cの流れ状況を図8に示す。
【0039】
この場合も、保冷庫12の長手方向に上部循環流c1と下部循環流c2を形成でき、庫内の温度分布を均一にすることができた。冷却オフ時の庫内温度分布は、前部9点で3.7℃、中部9点で4.3℃、後部9点で2.7℃であった。
これは、図8に示すように、冷風ダクト38の吹出口40から出た冷風cが、積荷空間Sを通過して後部まで到達し、後部の隙間s3及びs4に分流してパレット上面の流通孔を通過しバルクヘッド22の下部開口26に至るものと、すぐにリターンして積荷fの上面に沿いバルクヘッド22の上部開口24に至るものに別れ、前部及び中部にあまり冷風cが行き渡らなかったためと考えられる。
【0040】
従って、上部開口24の開口面積をこれ以上大きくすると、吹出口40から出た冷風cのうちすぐにバルクヘッド22側にリターンする冷風量が多くなるので、保冷庫12の長手方向で温度分布の不均一が生じる虞がある。従って、上部開口24の下部開口26に対する開口面積の比率を0.1〜0.5倍にするとよい。
【0041】
(実施形態4)
次に、本発明の第4実施形態を図9及び図10に基づいて説明する。図9及び図10に示す保冷庫12の構成は、冷風ダクト38の幅を保冷庫12の幅より小さくし、その長さを後部扉18の近傍まで延設したものである。その他の構成は、上部開口24及び下部開口26の開口面積を含めて前記第1実施形態と同一である。本実施形態の試験条件及び試験結果を表1中の試験No.4に示す。この試験条件での冷風cの流れ状況を図9に示す。
【0042】
本実施形態では、保冷庫内設定温度3℃に対し、冷却オフ時の庫内温度分布は、前部9点で−1.2℃、中部9点で0.4℃、後部9点で−4.3℃となった。
この場合、保冷庫12内の全域に亘り、隙間s3及びs4に冷風cが流れると共に、積荷fの上面に沿う上部循環流c1と積荷下部のパレット20内を流れる下部循環流c2を形成でき、保冷庫内全域に渡り温度分布を略均一にすることができた。
【0043】
ただし、冷風ダクト38を長くしたために、冷風ダクト38の圧力損失が大きくなり、吹出口40からの吹出風量が低下した。それに伴い空気冷却器28から吹き出す冷風の温度も低下した。また、後部末端付近に吹出口40が位置するため、冷風cが後部に集中した。そのため、後部温度が設定温度より大分低下する結果となった。
このように、設定温度には達しているが、冷蔵温度帯仕様の保冷庫では、庫内温度が氷点下以下では、積荷(食品)が凍結し、冷凍機の稼動率の増加で、エンジン駆動の圧縮機の運転時間が長くなり、燃料消費量が多くなる懸念が残る。
【0044】
(実施形態5)
次に、本発明の第5実施形態を図11により説明する。前記第4実施形態での懸念を払拭するため、保冷庫の後部末端付近に達する長い冷風ダクトを用いる場合は、図11に示す構成とするのがよい。図11において、冷風ダクト38の構成は、次の点を除いて前記第4実施形態と同一である。即ち、保冷庫12の後部末端付近まで延設された冷風ダクト38の中央域から末端部までの領域に、冷風ダクト38の下面にルーバ形式の多数の吹出口42を設けている。各羽板の角度は適宜調節して、保冷庫12の長手方向全域に亘り上部循環流c1と下部循環流c2とを形成できるようにする。
【0045】
かかる構成により、中央域から後部に至る領域で冷風cを均一に吹き出すことができるため、特に後部の温度を低下させることがない。また、ルーバ形式の吹出口42を設けたことにより、冷風ダクト38の中央域から末端域での圧力損失を低下でき、冷凍機の圧縮機を駆動するエンジンの燃料消費量の増加を招くことがない。
【0046】
(実施形態6)
次に、本発明の第6実施形態を図12及び図13に基づいて説明する。前記第1〜第5実施形態では、空気冷却器28の冷風吹出口36に冷風ダクト38を接続するため、冷風ダクト38内での圧力損失により風量が低下する。そのため、冷風ダクト38の圧力損失を考慮して、ファンの能力を高くする必要がある。本発明者等の試験結果では、前記第1〜第5実施形態の構成で、風量及び熱交換部33の静圧は、冷風ダクト38を設置しない場合で3261m/h及び44Paであり、冷風ダクトを設置する場合で2876m/h及び58Paであった。
【0047】
しかし、冷蔵車、冷凍車等の保冷車では、保冷庫のスペースには制限があるため、ファンの大きさにも制限がある。そのため、本実施形態では、空気冷却器50のケーシング52の内部にはファン54のみを設置し、熱交換部を構成する冷却管58を冷風ダクト56内に配置するようにしている。ケーシング52には、ファン54の吸込み側に吸込口60が形成され、ファン54の吹出し側に吹出口62が形成されている。
かかる構成により、ファン54を設置するスペースを広く取ることができる。従って、ファン54の大型化が可能になり、ファン54の能力アップが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、簡単な装備で、保冷車等の輸送機関に搭載された保冷庫内の全域に亘って温度分布を均一にすることができ、食品等の積荷の保冷温度をばらつきなく所望の温度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る保冷車の全体構成図である。
【図2】前記第1実施形態に係る保冷車の保冷庫内部の平面図である。
【図3】図1中のA−A線に沿う断面図である。
【図4】前記第1実施形態に係る保冷庫内の冷風の流れを示す縦断面図である。
【図5】本発明の第1〜第4実施形態の試験結果を示す図表である。
【図6】前記第1実施形態に係る保冷庫内の温度分布を示す線図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る保冷庫内の冷風の流れを示す縦断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る保冷庫内の冷風の流れを示す縦断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る保冷庫内の冷風の流れを示す縦断面図である。
【図10】前記第4実施形態に係る保冷車の保冷庫内部の平面図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る保冷庫内の冷風の流れを示す縦断面図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る保冷庫内の冷風の流れを示す縦断面図である。
【図13】前記第6実施形態に係る保冷車の保冷庫内部の平面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 保冷車(輸送機関)
12 保冷庫
13 天井面
14 運転席
15 庫内前面壁
18 後部扉
20 パレット
21 パレット上面
22 バルクヘッド
24 上部開口
26 下部開口
28,50 空気冷却器
34,60 吸込口
36,40,62 吹出口
38,56 冷風ダクト
42 ルーバ式吹出口
32,54 ファン
58 冷却管
S 積荷空間
f 積荷
c1 上部循環流
c2 下部循環流
c3 冷風分流
s1 通風空間
s2 隙間(戻入流路)
s3、s4 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機関に搭載され、積荷空間の一端に吸込口と吹出口をもつ空気冷却器を備えた保冷庫において、
前記空気冷却器に冷風ダクトを接続し、該冷風ダクトを天井面に沿って少なくとも積荷空間の中央域まで延設すると共に、該延設端の吹出口から冷風を吹き出すようにし、
該吹出口から吹き出す冷風を積荷空間の末端域から積荷の最上面に沿って該空気冷却器の吸込口に向けて戻る上部循環流と、積荷空間の末端域から下降して積荷が載置されたパレットに形成された通風空間を通って該吸込口に向けて戻る下部循環流と、該上部循環流及び下部循環流を該吸込口まで導く戻入流路と、を形成させたことを特徴とする保冷庫。
【請求項2】
前記パレットの上面に通風孔を設け、前記上部循環流から分かれて積荷間に形成された隙間を上方から下方に通る冷風の分流を形成させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の保冷庫。
【請求項3】
前記冷風ダクトを積荷空間を横断して積荷空間の末端域まで延設し、少なくとも中央域から末端域までの冷風ダクトの下面に冷風吹出孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載の保冷庫。
【請求項4】
前記冷風ダクト内部の通風空間に冷媒又は潜熱蓄冷材を流す冷却管を配設し、該冷風ダクト内に冷風を形成するファンを前記空気冷却器に設けたことを特徴とする請求項1に記載の保冷庫。
【請求項5】
前記空気冷却器が設けられた付近の庫内側壁との間に隙間をもたせてバルクヘッドを立設し、最高積荷高さより上方の該バルクヘッドに前記上部循環流を流通させるスリット状の上部開口を設けると共に、該バルクヘッドに前記パレットの通風空間との対向面に前記下部循環流を流通させるスリット状の下部開口を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の保冷庫。
【請求項6】
前記下部開口の開口面積を前記パレットの通風空間の開口と同等以上とすると共に、前記上部開口の開口面積を下部開口の0.1〜0.5倍としたことを特徴とする請求項5に記載の保冷庫。
【請求項7】
前記輸送機関が保冷車であり、前記空気冷却器を運転席近傍の庫内側壁上部に配置し、前記冷風ダクトを該空気冷却器から後部扉側に向けて延設したことを特徴とする請求項1に記載の保冷庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate