説明

保冷箱

【課題】引手による運搬をしても液漏れし難い保冷箱を提供する。
【解決手段】容器本体10と蓋20とを具備する直方体形状の保冷箱であって、容器本体の対向する一方の側壁S1には引手40が設けられており、引手から遠い側の側壁S2近くの蓋裏面には位置決め突条部20Tを具備し、容器本体の上部に載置できて前記位置決め突条部の傍の定位置に位置しているか、又は前記引手を引いた際の保冷箱の傾きによって前記位置決め突条部の傍にまで移動することができる閉塞体TRFを具備し、該閉塞体の前記位置決め突条部の側の周縁ラインTFFは該位置決め突条部の内側面20TFに沿った形状をしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りやレジャーに使用できるクーラーボックス等の保冷箱(保温箱を含む)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、保冷箱の保冷効果を保持すべく、容器本体と蓋との境界部に、内外の空気流通を防止するパッキンが周設されている。一方、保冷箱の中には川の水や海水が入れられ、この中に釣った獲物が入れられる。従って、保冷箱内の液は獲物のヌメリや血が混ざって汚液となる。
保冷箱の運搬構造としては、下記特許文献2には図1に図示されているように、その運搬のために手提げハンドルが設けられている。また、下記特許文献3の図2等に開示のように、保冷箱がある程度以上大きくなると、手提げハンドルでは持ち運びすることが困難となり、そうした場合に、直方体状の保冷箱の所定側壁部に引手を設け、この引手を持って保冷箱下部の車輪を地面上に転動させて保冷箱を引きながら運搬することが行われる。こうした場合、一時的に保冷箱が傾斜する程度ならば、通常設けられている上記のパッキンの作用によって、内部の液の外部への染み出しが防止され得る。
【特許文献1】特許第3090595号公報
【特許文献2】特開2007−195494号公報
【特許文献3】特開平10−250778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、引手を引きながら運搬する場合は、保冷箱は一時的に単に傾斜するだけではなく、所定時間傾斜状態が維持され、更には地面の凹凸によってガタガタと揺れる。従って、上記通常のパッキンだけでは、一時的とはいえない運搬中の傾斜による液漏れを防止できるとは限らず、また、揺れながらの運搬であるため、内部の汚液が大きく強く上下に揺れ、その波の力で内部の汚液が容器本体と蓋との境界部から染み出ようとする。染み出た液は非常に汚く、釣人の衣服に付着したり、また、乾燥後には保冷箱表面に汚れ跡が残る。
依って解決しようとする課題は、引手による運搬をしても液漏れし難い保冷箱の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題解決のために第1の発明は、容器本体と蓋とを具備する直方体形状の保冷箱であって、容器本体の所定対向側壁の一方の側壁には、他方の側壁寄りに装着した転動体が地面上を転動しつつ該保冷箱を運搬するための引手が設けられており、前記引手から遠い側である前記他方の側壁近くの蓋裏面には、該他方の側壁の内面と、該他方の側壁に隣接する一方の隣接側壁の内面とに亘って沿い、下方に向かって突出し、容器本体の側壁内側に侵入する位置決め突条部を具備し、容器本体の上部に載置できて前記位置決め突条部の傍の定位置に位置しているか、又は前記引手を引いた際の保冷箱の傾きによって前記位置決め突条部の傍にまで移動することができる閉塞体を具備し、該閉塞体の前記位置決め突条部の側の周縁ラインは該位置決め突条部の内側面に沿った形状を成していることを特徴とする保冷箱を提供する。
閉塞体の周縁ラインとは、閉塞体が箱状の場合は、閉塞体の側壁や側壁等に設けられたフランジの形状であってもよく、その他、その底壁や、蓋付きの場合にその蓋の周縁ラインであってもよい。
【発明の効果】
【0005】
第1の発明では、蓋には、容器本体に蓋を閉める際の位置決め用に位置決め突条部が下方に突設されており、この位置決め突条部は引手から遠い側(対向反対側)の側壁内面と、これに隣接する(少なくとも)一方の側壁内面とに亘って沿っているため、蓋の2次元方向(平面内方向)の位置決めができる。一方、閉塞体は、位置決め突条部の傍定位置にあるか或いはここまで移動することができ、位置決め突条部の側の閉塞体の周縁ラインは該位置決め突条部の内側面に沿った形状を成しているため、この閉塞体自体の閉構造と共に、特定周縁ラインを有するトレーと位置決め突条部との協働作用によって、容器内部の液の波を押さえて、引手とは反対側に集まった液が外部に漏れ出ることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を添付図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る保冷箱の正面図、図2は引手によって保冷箱を運搬中の正面図、図3は図1の縦断面図、図4は図3の矢視線D−Dによる部分断面の平面図、図5は図3の矢視線E−Eによる横断面図である。保冷箱の各部はネジを除いて合成樹脂材で成形できる。容器本体10と蓋20とを有する直方体形状の保冷箱には、容器本体の、この例では長手方向に対向する所定対向側壁S1,S2の間に亘って、ブリッジ状の手提げハンドル30が装着されている。前記所定対向側壁の一方の側壁S1の外側に設けた引手収納カバー50に対し、引手40が上方に出し入れ可能に構成されている。また、他方の側壁S2の上部外側にはハンドル装着部60が装着されている。更には、側壁S2の下部位置には、転動体としての車輪Rが設けられている。
【0007】
蓋20の下面部には、容器本体10と当接する全周に、パッキン20Pが周設されている。また蓋と他の対向側壁の一方(正面側側壁)S3との間で、解放可能に蓋縁部を保持できる係止機構20K1が設けられている。また、本実施形態例では、他方側壁S4と蓋との間でも同様な係止機構20K2が設けられている。従って、本形態例では図5に2点鎖線で示すように、蓋20は、係止機構20K1を操作して側壁S4側の蓋縁部が軸支された状態で開放できたり、また、他の係止機構20K2を操作して側壁S3側の蓋縁部が軸支された状態で開放できたり、或いは両方の係止機構を操作して蓋を容器本体から完全に取り外すこともできる。しかし、一方の係止機構のみであってもよい。
【0008】
本願の保冷箱は、引手収納カバー50から上方に引き出して幾分回転させた引手40を引っ張って車輪Rを地面上に転がしつつ運搬できる。このような必要性も考えられる大きさの保冷箱であるため、蓋の閉鎖をより確実化させるため、少なくとも一方のサイド部(側壁S1又はS2)にも、ロック部材70を有して、係止機構としてのロック機構を設けている。この場合は、側壁S1側には引手40を設けているため、その対向側である側壁S2側に設けている。このロック機構の存在により、後述の引手使用時の内部からの液漏れ防止に寄与する。
【0009】
蓋20の裏面側には2か所に位置決め突条部20T,20T’を突設している。蓋を閉じた状態で、一方20Tは側壁S2の上部内面に沿っており、他方20T’は対向する側壁S1の上部内面に沿っている。もう少し正確に言えば、位置決め突条部20Tは側壁S2に隣接する側壁S3にも連続して沿った突条が形成されており(実態は、側壁S2に沿った長い突条と、側壁S3のコーナー部分だけの短い突条とが連続している)、この形態例では、側壁S2に隣接する他の側壁S4にも沿った同様に短い突条が連続形成されている。他方20T’についても同様である。
【0010】
容器本体10の対向する側壁S3とS4の各上端部、即ち、容器本体10の上部開口Jを区画形成する(一部の)側壁の上部には、該各側壁に沿った段差部10D,10D’が形成されている。一方、この形態例の閉塞体は、箱状のトレーであり、蓋付きで、概ね直方体形状の2個のトレーTR1,TR2が、各トレー容器本体TRH,TRH’の上部フランジ部TFを介してこの段差部上にスライド可能に載置され、容器本体10の上部開口Jの一部又は略全体を覆うようになっている。夫々のトレー容器本体には蓋TRF,TRF’が装着される。各トレー容器本体は、底壁も側壁も平面状であって、上部開口以外には隙間は無い。各トレー容器本体TRH,TRH’は容器本体10の中の液が下方からは侵入しない閉構造である。また、この例の両トレーは同一寸法形状である。トレーに代えて、本願の閉塞体は、後述の容器本体の開口Jの全体又は一部を覆う保冷箱の内蓋といえる部材でもよく、概ね平面状の板状部材でもよい。
【0011】
トレーTR1の、位置決め突条部20Tの側の周縁ラインTFFは、この位置決め突条部20Tの内側面20TFに沿った形状に形成されている。この例での周縁ラインTFFは、トレー容器本体のフランジ部TFの周縁ラインであると共に蓋TRFの周縁ラインでもある。しかし、一方だけの周縁ラインでもよい。このため、少なくとも図2のようにして運搬する際には、トレーTR1は、他のトレーTR2の存在の有無に拘わらず、位置決め突条部20Tに対し実質的に当接し、位置決め突条部の内側面20TFとトレーTR1の周縁ラインTFFとの間は実質塞がっているが、僅かな隙間が存在しても、引手40を引いて運搬する際の、保冷箱内部の液の波(おどり)を通す程の大きさではなく、その波を実質的に防止できて、側壁S2と蓋20との境界部から液が漏れ出ることが防止できればよい。
【0012】
この例では、他のトレーTR2と他の位置決め突条部20T’との関係においても同様に構成されており、トレーTR1の存在を前提に、位置決め突条部20T’の内側面20TF’とトレーTR2の位置決め突条部20T’の側の周縁ラインTFF’との間は実質的に塞がっている。従って、仮に保冷箱内部の液の波がこちらに押し寄せても液漏れを防止できる。しかし、本願では、側壁S1側のトレーTR2に関しては、突条部20T’と周縁ラインTFF’との間に大きな隙間があってもよく、また、トレーTR2の存在の有無もどちらでもよい。
【0013】
更には、本実施形態例では、トレーTR1のトレーTR2への対面縁TFfは、トレーTR2のトレーTR1への対面縁TFf’と実質的に当接するように構成している。従って、両トレーによって容器本体10の開口部を実質的に塞いでいるため、引手40で引いて運搬する際の液の波をより効果的に抑えることができ、液漏れが効果的に防止可能となる。しかし、本願はこれに限らず、上記対面縁TFfと対面縁TFf’との間に大きな隙間が存在し得て、その分、各トレーが移動自在であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、魚釣りやレジャーに使用するクーラーボックス等の保冷箱(や保温箱)に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明に係る保冷箱の正面図である。
【図2】図2は引手によって保冷箱を運搬中の正面図である。
【図3】図3は図1の縦断面図である。
【図4】図4は図3の矢視線D−Dによる部分断面の平面図である。
【図5】図5は図3の矢視線E−Eによる横断面図である。
【符号の説明】
【0016】
10 容器本体
20 蓋
20T 位置決め突条部
20TF 位置決め突条部の内側面
40 引手
R 転動体(車輪)
TR1 トレー
TFF トレーの周縁ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体(10)と蓋(20)とを具備する直方体形状の保冷箱であって、容器本体の所定対向側壁の一方の側壁(S1)には、他方の側壁(S2)寄りに装着した転動体(R)が地面上を転動しつつ該保冷箱を運搬するための引手(40)が設けられており、
前記引手から遠い側である前記他方の側壁(S2)近くの蓋裏面には、該他方の側壁の内面と、該他方の側壁に隣接する一方の隣接側壁(S3又はS4)の内面とに亘って沿い、下方に向かって突出し、容器本体の側壁内側に侵入する位置決め突条部(20T)を具備し、
容器本体の上部に載置できて前記位置決め突条部の傍の定位置に位置しているか、又は前記引手を引いた際の保冷箱の傾きによって前記位置決め突条部の傍にまで移動することができる閉塞体(TR1)を具備し、
該閉塞体の前記位置決め突条部の側の周縁ライン(TFF)は該位置決め突条部の内側面(20TF)に沿った形状を成している
ことを特徴とする保冷箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−173661(P2010−173661A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15989(P2009−15989)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【出願人】(591025082)日泉化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】