説明

保冷車の滅菌消毒方法

【課題】保冷車の冷凍庫内を簡便に滅菌消毒することができる滅菌消毒方法を提供する。
【解決手段】本発明の保冷車の滅菌消毒方法は、冷凍庫2の冷凍運転停止時であって、収納空間S内から被冷凍物bを除去した状態において、収納空間S内に、少なくとも80℃以上に加熱された高温乾燥空気を30分以上連続して送風し、該収納空間S内を滅菌消毒するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱箱体の収納空間内に被冷凍物を収納可能な冷凍庫を備えた保冷車の滅菌消毒方法に係り、特に、冷凍庫の冷凍運転停止時であって、収納空間内から被冷凍物を除去した状態において、収納空間内に、高温乾燥空気を送風して該収納空間内を滅菌消毒するものに関する。
【背景技術】
【0002】
保冷車は被冷凍物を運搬するのがその主目的であり、従来、被冷凍物を収納する冷凍庫内の滅菌消毒については、低温で使用されるという状況もあって、特に配慮がなされておらず、単に冷凍庫内を水洗し、その後自然乾燥させるという簡素なものであった。
【0003】
他方、被冷凍物などの生産設備にあっては、衛生上、高温水蒸気を用いて滅菌消毒を行う蒸気滅菌方法が普及しており(例えば、特許文献1の図1参照)、昨今の食品安全性の向上の気運の高まりを受け、保冷車にあってもこの蒸気滅菌方法を取り入れて冷凍庫の滅菌消毒に用いることが考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−285527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような蒸気滅菌方法にあっては、水蒸気を発生させるためのボイラーや、滅菌消毒をする室内を予熱して結露を防止するための蒸気ジャケット、真空乾燥のための排気設備などが必要となって装置が大掛かりなものになり、しかも、車載の用に供する冷凍庫にあっては、限られたスペースに前述の蒸気ジャケットを設けるのは事実上不可能であった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、断熱箱体の収納空間内に被冷凍物を収納可能な冷凍庫を備えた保冷車の滅菌消毒方法であって、前記冷凍庫の冷凍運転停止時であって、前記収納空間内から前記被冷凍物を除去した状態において、前記収納空間内に、少なくとも80℃以上に加熱された高温乾燥空気を30分以上連続して送風し、該収納空間内を滅菌消毒する保冷車の滅菌消毒方法である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の保冷車の滅菌消毒方法において、収納空間の周壁は、少なくとも発泡ウレタン樹脂を含む断熱層を有しているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の保冷車の滅菌消毒方法によれば、収納空間内に、少なくとも80℃以上に加熱された高温乾燥空気を30分以上連続して送風し、該収納空間内を滅菌消毒するため、ボイラーなどの大掛かりな蒸気発生装置を用いることなく、簡易な方法で滅菌消毒を行うことができ、しかも、水蒸気を含まない分、結露を防いで収納空間内の濡れを防止し、冷凍庫内を衛生的に保つことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の保冷車の滅菌消毒方法の効果に加え、収納空間の周壁は、少なくとも発泡ウレタン樹脂を含む断熱層を有しているため、安価かつ簡易な構成で、冷凍運転時の低温下における耐久性と、80℃以上の高温下における優れた耐熱性とを同時に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の滅菌消毒方法を行う保冷車の一部を破断した概略的斜視図である。
【図2】図1のX―X線で切断した概略図であって、滅菌消毒前の状態を示した図である。
【図3】図1のX―X線で切断した概略図であって、滅菌消毒中の状態を示した図であり、図3(a)は熱風をそのまま排気する図を、図3(b)は熱風を還流させる図をそれぞれ示している。
【図4】図1のX―X線で切断した概略図であって、滅菌消毒後の状態を示した図である。
【図5】図1の滅菌消毒後に、被冷凍物を積載した状態を示した概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施例を、図1〜図5を参照して説明する。図1、図2においてAは本発明の滅菌消毒方法を実施するための保冷車の一例であり、保冷車Aは、断熱箱体の収納空間S内に被冷凍物bを収納可能な冷凍庫2を備えているものであって、概略的に、車本体1と、冷凍庫2と、送風口2aと、排気口2bとにより構成されている。
【0013】
冷凍庫2は、車本体1に搭載可能なものが用いられ、図示していないが冷凍庫2外には、該冷凍庫2内の熱を放熱するための冷凍機が車本体1に取り付けられている。
【0014】
図2において、2aは送風口であり、この送風口2aは、後記する熱風送風機3からの高温乾燥空気を収納空間S内に取り込む開口で、例えば、本図のように、冷凍庫2の側壁に設けられ、冷凍運転時には係止部材51aを用いて蓋体51により閉塞されている。また、2bは排気口であり、この排気口2bは、収納空間S内に取り込まれた高温乾燥空気を排出する開口で、例えば、冷凍庫2の送風口2aと反対側の側壁に設けられ、冷凍運転時には係止部材52aを用いて蓋体52により閉塞されている。これら送風口2aと排気口2bとの位置関係は、冷凍庫2内において高温乾燥空気の循環が万遍なく行えるように適宜配置することができる。
【0015】
なお、収納空間S内には被冷凍物を載置する水平な棚21、21、・・が、上下方向に間隔的に配設されており、各棚21には、高温乾燥空気が収納空間S内を万遍なく循環できるように通孔21a、21a、・・が複数形成されている。
【0016】
図1、図2において、3は熱風送風機であり、熱風送風機3は、冷凍庫2内の滅菌消毒時に用いられ、80℃以上の高温乾燥空気を送出することができるもので、送出する空気の温度を可変可能な公知のものを使用することができる。なお、排気口2bから排気される熱風を有効に利用し熱効率を高めることができるように、例えば、図3(b)に示したように、排気口2bと熱風送風機3とをパイプ42を介して接続し、排気された熱風を還流させて再度、高温乾燥空気を生成するようにしてもよい。
【0017】
この熱風送風機3には、大気中の水蒸気など凝集し易い蒸気(気体)を除去するために、中空糸膜式エアドライヤやその他の除湿装置などの蒸気除去手段(不図示)を連設するようにしてもよく、高温乾燥空気の露点温度は、冷凍運転時の冷凍庫2内の温度よりも低くなるように除湿するのが、冷凍庫2内での結露を防止する点で好ましい。
【0018】
また、収納空間Sの周壁は、少なくとも発泡ウレタン樹脂を含む断熱層を有しているのが好ましい。断熱材として発泡ウレタン樹脂を用いることで、安価かつ簡易な構成で、冷凍運転時の低温下(例えば、冷凍庫2内温度−40℃)における耐久性と、80℃以上の高温下における優れた耐熱性とを同時に確保することができる。
【0019】
次に、上述のように構成される保冷車Aの滅菌消毒方法について、図2〜図4を参照して説明する。滅菌消毒は冷凍庫の冷凍運転を停止した状態で行われるもので、まず、図2に示したように、冷凍庫2の蓋体51、52を取り外し、送風口2aおよび排気口2bを開放させる。
【0020】
そして、熱風送風機3に接続された導入管4の端部を送風口2aに差し込んで固定し、熱風送風機3を作動させる。
【0021】
すると、図3(a)に示したように、少なくとも80℃以上に加熱された高温乾燥空気が導入管4から吹き出し、冷凍庫2の収納空間Sに流れ込む。このとき、収納空間Sに流れ込んだ高温乾燥空気は、棚21に設けられた通孔21a、21a、・・を介して収納空間S内を万遍なく循環し、冷凍庫2の送風口2aと反対側に設けられた排気口2bから収納空間S外に排気される。なお、図3(b)に示したように、排気口2bから排気された熱風を還流させて再利用するようにしてもよい。
【0022】
ここで、収納空間Sを循環する空気の温度は、冷凍庫2内のいずれの場所であっても80℃以上とするのが好ましく、送風は30分以上連続して行うのが好ましい。これは、この温度で30分以上滅菌消毒すれば、食中毒を引き起こすとされるブドウ球菌やサルモネラ菌等の雑菌の大半を死滅させることができるからである。なお、冷凍庫2内の高温乾燥空気の温度は、熱風送風機3の温度調整を可変して行う。
【0023】
そして、滅菌消毒の終了後は、図4に示したように、再び蓋体51、52を取り付けて送風口2aおよび排気口2bを閉塞させるもので、この状態で冷凍機のスイッチ(不図示)をオンにして冷凍庫2の冷凍運転を再開し、庫内の温度が所定の温度以下になったときに冷凍庫2背面の扉を開け、図4に示したように、被冷凍物bを収納空間Sに積載すれば、滅菌消毒がなされた衛生状態の良い環境下で被冷凍物bを運搬することができる。
【符号の説明】
【0024】
A 保冷車
s 収納空間
b 被冷凍物
2 冷凍庫
2a 送風口
2b 排気口
3 熱風送風機
4 導入管
51、52 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱箱体の収納空間内に被冷凍物を収納可能な冷凍庫を備えた保冷車の滅菌消毒方法であって、
前記冷凍庫の冷凍運転停止時であって、前記収納空間内から前記被冷凍物を除去した状態において、前記収納空間内に、少なくとも80℃以上に加熱された高温乾燥空気を30分以上連続して送風し、該収納空間内を滅菌消毒することを特徴とする保冷車の滅菌消毒方法。
【請求項2】
収納空間の周壁は、少なくとも発泡ウレタン樹脂を含む断熱層を有していることを特徴とする請求項1記載の保冷車の滅菌消毒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172400(P2010−172400A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16274(P2009−16274)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(394018661)東西工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】