説明

保存剤としての賦形剤の使用及びそれを含む医薬組成物

本発明は、その保存活性による、医薬組成物中における賦形剤の組み合わせ、並びに前記組み合わせを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦形剤の保存剤としての活性による、医薬組成物における賦形剤の組み合わせの使用、及び前記賦形剤の組み合わせを含む局所用医薬組成物に関する。したがって、本発明は、良好な保存剤としての活性を有する賦形剤の組み合わせにも関する。
【背景技術】
【0002】
局所用医薬組成物又は化粧品組成物は、多くの場合において、微生物の増殖のための良好な基質となる。
【0003】
2種の主要なファミリーの微生物が存在する。細菌と真菌である。医薬品という特定の分野における通常の技術を有する者は従う義務がある、欧州及び米国の薬局方は全部で、これらのファミリーの5つの代表例、すなわち、3種の細菌及び2種の真菌を選択している。
【0004】
以下の3種の細菌は、汚染した場合に一般的に現れる微生物集団の代表例であり、ヒトにおいて感染症を生じさせ得る。大腸菌(Escherichia Coli)はグラム陰性菌である。当該菌は、低分子が透過可能な薄い壁を有する。また、当該菌は棒状であり、桿菌として知られている。この細菌は糞便に必ず存在する。その存在は、胃腸炎などの各種の疾患を生じさせ得る。黄色ブドウ球菌はグラム陽性菌である。そのため、当該菌は、低分子が透過不可能な厚い壁を有する。また、当該菌は、その名前が示すとおり球状であり、球菌と称される。黄色ブドウ球菌は、ブドウ球菌属の中で最も病原性の高い種である。食中毒及び化膿性局所感染症の原因となる。緑膿菌はシュードモナス属のグラム陰性菌である。前記桿菌は、薄く、真直ぐであり、極鞭毛により非常に移動性である。当該菌は病原性が高く、院内感染において一般的に現れる。
【0005】
真菌は、膜に覆われた核を有し、かつ、染色体を含む、真核生物である。その2種として、酵母とカビが存在する。カンジダアルビカンス(Candida albicans)は、最も重要かつ最もよく知られたカンジダ属の酵母の種である。当該菌は、ヒトの口及び消化管に天然に生存する生物である。人口の80%において認められ、通常は、特定の疾患又は症状を何ら引き起こさない。保菌生物が弱体化した場合に、腐生片利共生生物となる。試験したカビは、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)である。また、当該菌は非常に広範に存在している(カビの生えた果実及び野菜、飼料、乳製品)。各種の酸の生産のための食品加工産業において当該菌は広く用いられている。当該菌種は病原性を有し得る(耳道のアルペルギルス症及びオクトラトキシンの生産)。
【0006】
局所用製品の微生物汚染のあり得る原因は非常に多く存在する。その微生物は、主にヒトに由来するか又は環境に由来し、製品の加工、保存、又は使用の各種の時点で汚染が生じる。
【0007】
そのため、医薬組成物を製剤化する者は、非常に早期に当該問題を局所用組成物の開発に組み込まなければならない。保存剤の添加は多くの場合に適用される解決手段である。
【0008】
抗微生物性の保存剤は、微生物の増殖を妨げるために製剤に意図的に添加される物質又は物質のセットである。これらの保存剤は少量で導入されるべきであり、非常に広範な作用を有するべきであり、毒性を避けるべきであり、かつ、使用する有効成分の効力を相殺するべきでない。
【0009】
保存剤は、上述の全ての微生物を阻害するのに十分に広い活性を常に有しなければならないわけではない。そのため、それらの活性に従って前記保存剤を組み合わせることが、一般的に用いられる手法である。それらの正確に組み合わせることによって、得られた保存剤のシステムは、全ての微生物に対して作用する。
【0010】
局所用製品に使用してよい、非常に広範な抗微生物性を有する保存剤が存在する。しかしながら、それらは化粧用製品には長い間用いられているが、医薬品における使用は制限されている。事実、約10種のみの保存剤が当該環境においては通常使用されている。
【0011】
この差異は、臨床試験の間に、医薬品はヒトに完璧に許容されるか又は完全に無毒であう必要があるという事実に由来する。
【0012】
医薬品の分野で通常使用される保存剤は、例えば、イミダゾリジニルウレア又はジアゾリジニルウレアなどのホルムアルデヒド産生剤、Kathon CGなどのチアジン誘導体、クロルヘキシジンなどの塩素化誘導体、パラベンなどのフェノール誘導体、ブロノポール、フェノキシエタノール、またはクロルキシレノールなどのアルコール誘導体、ソルビン酸又は安息香酸などの酸誘導体、或いは塩化ベンザルコニウムである。
【0013】
医薬組成物において好ましく且つより従来から使用されている保存剤は、単独又は混合物で、パラベン、特に、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、又はブチルパラベン、及びフェノキシエタノールである。
【0014】
最も一般的な保存剤は、フェノキシエタノールと理想的に組み合わせたパラベンである。
【0015】
しかしながら、フェノキシエタノールは、高用量において使用者に毒性である物質となり得る。健康な対象にとっては、毒性に必要な濃度は高い。しかしながら、フェノキシエタノールはアレルゲンであることが認識されている。その使用は、ある対象においては湿疹斑を引き起こし得る。
【0016】
さらに、パラベン自体も、高用量において毒性を表わす。
【0017】
一般的に、当業者は、局所用製剤に通常使用される保存剤は潜在的に感作、刺激、及び/又はアレルゲン性であり得ることに注意する。これら全ての理由のため、それらの使用を制限するか又は製剤からそれらを完全に除去することが重要となる。しかしながら、保存剤システムが添加されないと、抗菌保護が行われない。このため、この機能を提供することが可能な他の手法を決定することが重要である。
【0018】
媒体の温度、pH、又は水分含量などの一定の因子が、微生物によるコロニー形成に影響を与える。当業者は、これらの因子を変更することが可能であるか研究している。媒体の温度は、抗細菌又は抗真菌に対する大きな効果を有しない。細菌は約32.5℃で成長し、真菌は約22.5℃で成長する。製剤が、これらの温度の上又は下で、例えば+4℃の冷蔵庫において保存される場合には、微生物は休止期に入り、成長しないであろう。温度が再び好ましいものとなれば、微生物は再び成長し始めるであろう。高温(>+75℃)又は低温(<+4℃)に維持することによって、製造又は使用の間のいずれかにおいて、多数の制約を受ける。
【0019】
組成物のpHが非常に酸性又は非常に塩基性である場合には、微生物の成長が制限されるであろう。しかしながら、カビは非常に広範なpH範囲に耐性であるため、その成長が依然として可能であろう。高pH又は低pHにおける局所用組成物の使用も制限される。これは、非常に酸性又は塩基性の溶液又はクリームの皮膚への適用が刺激作用を有し得るからである。
【0020】
水分含量も非常に重要な点である。これは、水の存在が微生物の増殖に必須だからである。かくして、媒体が完全に無水である場合には、それらの増殖が阻害されるであろう。しかしながら、医薬品及び化粧品に関する当業者は、多くの場合に、エマルション又はゲル組成物ほど快適でない無水組成物のみを構想することができない。さらに、多数の医薬としての有効成分は水溶性であるため、組成物における水の存在を必要とする。水の除去する必要がなければ、当業者は、組成物中の水分活性を考慮に入れるに違いない。水分活性は、水分量に等しいわけでなく、媒体中の自由水の量に等しい。自由水は、水性媒体に導入された分子を溶媒和するために供されていない水である。
【0021】
そのため、この自由水は完全に微生物に接近可能であり、その増殖を与える。
【0022】
水分活性(aw)は試験媒体に固有の値であり、外部のパラメータに依存するものではない。awは、純粋な水の1.00から完全に無水の媒体の0.00までの範囲である。
【0023】
各微生物の水の必要量は異なる。例えば、細菌は、カビよりも水の存在に感受性である。
【0024】
以下の表1は、各種の微生物が成長し得るために必要とされる水分活性を示す。
【0025】
【表1】

【0026】
かくして、awが0.77よりも小さい場合には、この表に記載の微生物は成長し得ないであろう。
【0027】
そのため、水分活性の低減を誘導する手段に注目することが重要となる。
【0028】
第一手段は、最も明らかなこととして、製剤に導入する水の量を低減することである。
【0029】
第二の手段は、大きな溶媒和能を有する分子を決定することを含む。かくして、これらの分子を溶媒和するために多量の水が動員され、微生物にはより少ない水が利用可能となる。保湿剤、無機塩、及び親水コロイドがこの役割を担う可能性がある。
【0030】
製剤の水分活性の測定を用いることが、極最近、米国薬局方の一般的な方法の1つの章の主題となった(“Application of water activity determination to nonsterile pharmaceutical product <1112>USPC Official 5/1/07−7/31/07,2007”)。
【0031】
前記文献は、自己保存組成物を開示しており、保存剤としての活性を有することが既知の賦形剤を挙げている。かくして、Jon J.Kabara(及びDekker,NewYork,1996によって出版されたD.S.Orthの“Preservative−free and self−preserving Cosmetics and Drugs − Principles and Practice”)は、アルコール、界面活性剤、脂肪エステル若しくは酸、リン脂質、抗酸化剤、又はキレート剤などの、組成物中で保存剤としての活性を有することが可能な各種の賦形剤を挙げている。しかしながら、多数のこれらの成分を単独又は混合物として使用しても、薬局方によって必要とされる基準に見合わず、医薬組成物において許容され得ない濃度で前記基準に見合う。したがって、それらは、医薬組成物において、規制による要求に直面した当業者によって、その様なものとして容易に使用され得ない。
【0032】
最も活性の高い界面活性剤は陽イオン性界面活性剤である。しかしながら、陽イオン性界面活性剤は、原則として、当該分野において主要なものではない医薬形態である、シャンプーの形状で組成物において使用することが可能である。事実、当業者は、とりわけ、エマルション又はゲルを製剤化している。
【0033】
さらに、J.J.Kabaraは、微生物の増殖がエタノールで妨げられ得ることを開示しているが、25%v/vから開始している。しかしながら、一方で、これらの割合は、局所用医薬組成物の良好な許容性という観点からは非常に高いものであり、その一方で、当該文献では、薬局方に従った場合に各微生物における低減が実際に認められるか確認されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】Dekker,NewYork,1996によって出版されたD.S.Orthの“Preservative−free and self−preserving Cosmetics and Drugs − Principles and Practice”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
したがって、本発明により解決される課題は、上述の微生物に対して局所用医薬組成物を効果的に保護するために、従来の保存剤の代替物を見出すことである。
【0036】
用語「既知の保存剤」は、例えば、イミダゾリジニルウレア又はジアゾリジニルウレアなどのホルムアルデヒド産生剤、Kathon CGなどのチアジン誘導体、クロルヘキシジンなどの塩素化誘導体、パラベンなどのフェノール誘導体、ブロノポール、フェノキシエタノール、又はクロロキシレノールなどのアルコール誘導体、ソルビン酸又は安息香酸などの酸誘導体、或いは塩化ベンザルコニウムを意味することが意図される。
【0037】
本発明の組成物において、特に本出願人によって、最も一般的に使用される保存剤は、パラベン、特に、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、又はブチルパラベン、及びフェノキシエタノールの単独又は組み合わせである。
【0038】
したがって、本発明により解決される課題は、局所用医薬組成物における保存剤を限定又は排除まですることである。
【0039】
本発明によって解決しなければならない特定の課題は、局所用医薬組成物を効果的に保護すると同時に、欧州及び米国の薬局方によって必要とされる基準を満たすことである。これは、医薬組成物の目的は販売承認を得た医薬品とすることであるため、本発明による組成物がこれらの基準を満たす義務があるからである。この点を評価し、本発明による各種の賦形剤の混合物の抗微生物作用を測定するために、PET(保存剤有効性試験)として知られている試験プロトコルが存在する。PETは、既知の数の微生物と共に組成物を人工的に接種し、次いで、所定の時間に試験組成物における微生物の低減を測定する。この試験のプロトコルは、欧州及び米国薬局方の推奨を遵守するために設定されている。前記試験並びに欧州及び米国薬局方の推奨は、本願実施例1に開示している。したがって、本発明に開示した保存剤としての賦形剤の混合物は、PETにおいて、これら薬局方の基準を満たすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
したがって、本発明は、保存剤として賦形剤の混合物を含有する局所用医薬組成物であって、他の従来の保存剤を含有しないことを特徴とする、組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】PG濃度に応じた水分活性における低減
【図2】グリセロール濃度に応じた水分活性における低減
【図3】PEG濃度に応じた水分活性における低減
【図4】awとPETとの間の相関関係についての調査
【発明を実施するための形態】
【0042】
用語「局所用医薬組成物」は、当業者が想起し得る任意の組成物、特に、液状又はペースト状、とりわけ、これらに限らないが、エマルション、クリーム、乳液、軟膏、含浸パッド、合成洗剤、ワイプ、ゲル、スプレー、フォーム、ローション、スティック、シャンプー、又は洗浄ベースの形態における組成物を意味することを意図する。
【0043】
好ましくは、水を含有する組成物の保護は最も複雑であるため、本発明は、水を含有する少なくとも1つの水相を含有する組成物、好ましくはエマルション又はローションのいずれかに関する。
【0044】
本発明に係る、保存力のある賦形剤の混合物を含む医薬組成物は、皮膚の治療用であるため、局所的に投与される。用語「局所的」は、皮膚又は粘膜に対する適用を意味することを意図する。
【0045】
用語「保存力のある賦形剤の混合物」は、有効成分が導入される、製剤基剤として従来から使用されている成分の混合物を意味する。賦形剤としては、溶媒、特にエタノールタイプの溶媒、例えば、エタノール、界面活性剤、保湿剤、及びグリコールが挙げられてよい。
【0046】
上述のように、当業者は、組成物中において25%からエタノールが顕著な抗微生物及び抗真菌作用を有すると解している。しかしながら、この濃度を、患者の皮膚に対する局所適用に良好に許容されるようにするのは困難である。
【0047】
本出願人は、驚くべきことに、エタノールを他の賦形剤化合物と組み合わせることによって、組成物中のエタノール濃度を低減させると同時に良好な抗微生物保護を得ることが可能であることを見出した。
【0048】
エタノールと組み合わされる、本発明に好ましい賦形剤は、特に、保湿剤、抗酸化剤、界面活性剤、キレート剤、及び/又は増粘剤である。
【0049】
用語「保湿剤」は、一般的に局所的に使用される保湿剤を意味することが意図される。その作用は、角質中の水分量を保持することを可能にすることである。本発明によって使用されてよい保湿剤は、特に、グリセロール及び誘導体、並びにプロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどのグリコールであるが、これらに限らない。
【0050】
本発明の好ましい保湿剤は、プロピレングリコール、グリセリン、又はグリセロール、或いはポリエチレングリコールである。
【0051】
用語「抗酸化剤」は、本発明によれば、アスコルビン酸化合物、クエン酸化合物、酒石酸化合物、ラクテート、又はトコフェロールなどの天然の抗酸化剤、或いはブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、又は没食子酸プロピルなどの合成抗酸化剤を意味することが意図される。
【0052】
本発明によって使用されてよい界面活性剤として、陰イオン性、陽イオン性、両性、又は非イオン性界面活性剤が言及されてよい。陽イオン性界面活性剤が好ましく、特に、第四級アンモニウム及びアミニミドが好ましい。
【0053】
本発明によって使用されてよいキレート剤は、弱キレート剤又は不安定キレート剤及び強キレート剤、例えば、EDTAが言及されてよい。
【0054】
「本発明によって使用されてよい増粘剤」は、特に、カルボポール(Carbopol)(Ultrez 10 NF)などのアクリル酸誘導体、ナトロソール(Natrosol)及びキサンタンガムなどのセルロース誘導体を意味することが意図される。
【0055】
本発明は、とりわけ、少なくともエタノール及び保湿剤を含有する賦形剤の混合物を含む局所用医薬組成物に関する。
【0056】
本発明の好ましい保湿剤は、例えば、単独又は混合物として使用される、プロピレングリコール、グリセロール、又はポリエチレングリコール、特に、PEG400である。
【0057】
好ましくは、良好な抗微生物活性を有する賦形剤混合物は、医薬組成物内で、少なくとも
− 5%から25%の間のエタノール、
− 1%から50%の間の、プロピレングリコール、グリセリン、又はグリセロール、及びポリエチレングリコールの単独又は混合物から選択される保湿剤、
を含む。
【0058】
より好ましくは、組成物は、保存力のある賦形剤の混合物内に抗酸化剤も含む。
【0059】
好ましくは、抗酸化剤は、組成物の全重量に対して少なくとも0.5重量%の濃度、好ましくは1重量%の濃度のアスコルビルパルミテートである。
【0060】
本発明の他の実施態様によれば、組成物は、保存力のある賦形剤の混合物内に増粘剤も含む。
【0061】
好ましくは、増粘剤は、組成物の全重量に対して、少なくとも0.5重量%の濃度、好ましくは1.5重量%の濃度のナトロソールなどのセルロース誘導体である。
【0062】
本発明は、本発明の賦形剤の混合物をふくむ医薬組成物にも関する。
【0063】
そのため、本発明の1つの好ましい実施態様では、組成物は、
・抗酸化剤、
・保湿剤、
・10%から15%の範囲のエタノール/水相比
を含む、賦形剤の混合物を保存剤として含む。
【0064】
他の実施態様では、本発明に係る組成物は、組成物内の水分活性を考慮に入れてもよい。
【0065】
したがって、本発明の1つの好ましい実施態様では、
・1質量%のアスコルビルパルミテート、
・5%質量%のプロピレングリコール、
・50質量%未満の水の割合、
・10%から15%の範囲のエタノール/水相比
を含む、保存剤として賦形剤の混合物を含む。
【0066】
かくして、本発明の主題は、微生物活性を有する賦形剤の混合物を含む局所用医薬組成物であって、0から1.8質量%の、イミダゾリジニルウレア又はジアゾリジニルウレアなどのホルムアルデヒド産生剤、Kathon CGなどのチアジン誘導体、クロルヘキシジンなどの塩素化誘導体、パラベンなどのフェノール誘導体、ブロノポール、フェノキシエタノール、又はクロルキシレノールなどのアルコール誘導体、ソルビン酸又は安息香酸などの酸誘導体、並びに/或いは塩化ベンザルコニウムから選択される保存剤を含む、組成物でもある。
【0067】
前記組成物は、好ましくは、エマルションの形態である。
【0068】
上述の組成物の前記賦形剤の混合物は、エタノール、保湿剤、抗酸化剤、界面活性剤、キレート剤、及び/又は増粘剤の混合物である。
【0069】
前記賦形剤の混合物は、好ましくは、
− 5%から25%の間のエタノール、
− 1%から50%の間の、プロピレングリコール、グリセリン、若しくはグリセロール、及び/又はポリエチレングリコールから選択される保湿剤、
を含む。
【0070】
好ましくは、保湿剤はプロピレングリコールである。
【0071】
前記賦形剤の混合物は、好ましくはアスコルビルパルミテートである抗酸化剤も含む。
【0072】
前記賦形剤の混合物は、少なくとも0.5質量%の濃度で存在する増粘剤も含んでよい。前記増粘剤は、好ましくは、ナトロソールなどのセルロース誘導体である。
【0073】
上述の組成物は、10%から15%の間のエタノール/水相比を備える。
【0074】
前記賦形剤の混合物は、とりわけ、
− 0.5質量%から1質量%の間の濃度でアスコルビルパルミテート、
− 5質量%のプロピレングリコール、
− 50質量%未満の水の割合、
− 10%から15%の範囲のエタノール/水相比
を備える。
【0075】
とりわけ、前記組成物は、0.8%未満のパラベン、好ましくは0.4%未満のプロピルパラベンを含有する。
【0076】
本発明の医薬組成物は、医薬として使用されてよい。
【0077】
特に、本発明の主題は、皮膚疾患、特に、ヒト皮膚疾患の治療に使用するための医薬の調製のための、本発明の組成物の使用でもある。
【0078】
本発明の組成物の各種の製剤を、例示としてであり、限定的ではない態様で以下に挙げる。
【実施例】
【0079】
実施例1
PET並びに欧州及び米国薬局方の要件
当該試験は、量り取った摂取量の特定の微生物を用いて製剤の一定分量を人工的に汚染させ、それを厳格な温度条件下でインキュベートすることを含む。微生物を計数するために、所定の間隔で、汚染させた一定分量からサンプルを回収する。
【0080】
欧州薬局方は、当該試験の間に従う必要がある要件を記載するものである。
【0081】
欧州薬局方は、以下の微生物:
細菌
緑膿菌(ATCC 9027; NCIMB 8626; CIP 82.118)
黄色ブドウ球菌(ATCC 6538; NCTC 10788; NCIMB 9518; CIP 4.83)
真菌
カンジダアルビカンス(ATCC 10231; NCPF 3179; IP 48.72)
黒色アスペルギルス(ATCC 16404; IMI 149007; IP 1431.83)
を試験することを義務付けている。
【0082】
欧州薬局方は、2つの許容性基準によって、製剤に導入される微生物の集団における低減を試験することも義務付けている。
【0083】
A規準は最も厳格なものであるため、一般的には、それが満たされることは一般的でない。
【0084】
合理的な場合には、例えば、副作用のリスクの増大のために、A規準に従うことはできない際に、より大きなものではないB基準を適用する。
【0085】
【表2】

【0086】
NI(増大なし)は、微生物の数における増大が存在してはならないことを示す。
【0087】
米国薬局方自体も、製剤が保護されるために従わなくてはならない要件を記載する。米国薬局方も、以下の微生物:
細菌
大腸菌(ATCC 8739)
緑膿菌(ATCC 9027)
黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)
真菌
カンジダアルビカンス(ATCC 10231)
黒色アスペルギルス(ATCC 16404)
を試験することを義務付ける。
【0088】
米国薬局方は、欧州薬局方と異なる微生物の集団における対数減少を課する。
【0089】
局所用製品の場合には、条件は下表のものである。
【0090】
【表3】

【0091】
実施例2
エタノール単独の抗微生物作用の試験
本試験は、皮膚科学において非常に一般的な「ローション」の形態に関する。エタノールは、このタイプの製剤に頻繁に使用される賦形剤である。
【0092】
本試験の目的は、保存剤の添加なしで、抗微生物保存を確実にするエタノールの割合の限界を決定することである。追加の賦形剤の効果は、阻害活性を示すエタノール濃度の低減を目的として評価した。
【0093】
施行されている各種の薬局方の基準を満たすエタノール/水の比の調査
1997年にJ.J.Kabaraは、25%(v/v)のエタノールから始めて、微生物の増殖を阻害し得ることを開示した。
【0094】
しかしながら、この参照文献は、PETにおいて試験される各微生物における低減が観察されるとは開示していない。したがって、本発明者は、欧州及び米国薬局方がこの濃度で満たされるか確認することができなかった。
【0095】
したがって、このために単純なエタノール/水の混合物を試験した。
【0096】
エタノール濃度は、5%ずつ増加させながら5%から30%の範囲であった。
【0097】
分析結果
【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
【表8】

【0103】
これらの結果は、水性混合物中15%のエタノール濃度から、その殺細菌作用が、欧州薬局方基準A及び米国薬局方基準を満たすことを示す。しかしながら、この濃度は、真菌を完全に阻害するには不十分である。エタノール濃度を25%まで増大させると、殺真菌作用が、全ての薬局方の要件を満たす。しかしながら、殺真菌作用を示す濃度は、直ちには、患者の皮膚に局所適用するのに良好に許容されうるものになり得ない。
【0104】
実施例2
保湿剤と組み合わせたエタノールの抗微生物作用の試験
出願人は、組成物中のエタノール濃度を低減し、それによって得られる抗微生物保護を評価するために、エタノールと保湿剤との混合物を試験した。
【0105】
保湿剤として使用した3種の賦形剤は、局所適用のために従来から頻繁に使用されている。その作用は、角質層の水分量を保持することを可能にすることである。プロピレングリコール(PG)、グリセロール、及びPEG 400は、このタイプの化合物である。エタノール濃度に対する、過去に開示されている当該賦形剤の効果を試験した。
【0106】
【化1】

【0107】
保湿剤及びエタノールの限られた数の組み合わせを試験した。
【0108】
所定の濃度の保湿剤において、各種の基準を満たす最も低濃度のエタノールを探索した。
【0109】
5%ずつ増加させた0%から30%の範囲の各種の濃度で、3種の保湿剤の各々をエタノールの溶液に含めて、同じ割合で変化させた。かくして、49の溶液を各保湿剤について試験した。
【0110】
保湿剤/エタノール混合物の抗微生物作用に関する結論
プロピレングリコール:
10%のPGは、欧州薬局方基準Aを満たすように、エタノール濃度を25%から15%まで低減させることを可能にした。
【0111】
水溶液中30質量%は、エタノールの追加なしでUSP基準を満たすことを可能にする。
【0112】
さらに、当該濃度において、細菌が阻害され、欧州薬局方基準Aを満たす。
【0113】
したがって、PGは、全ての細菌(グラム陽性及びグラム陰性の組み合わせ)に対する作用を有する。
【0114】
しかしながら、真菌に対しては制限される。事実、PG単独では、これらの微生物、特に、黒色アスペルギルスにおける低減を確実にしない。したがって、真菌の増殖を避けるためには、エタノールの使用が必要である。
【0115】
グリセロール
5質量%のグリセロールは、欧州薬局方基準Aを満たすように、エタノール濃度を25%から15%に低減させることを可能にする。
【0116】
欧州薬局方基準を満たす範囲全体は、PGで得られたものと類似している。
【0117】
10質量%のグリセロールは、米国薬局方基準を満たすように、エタノール濃度を15%から5%に低減させることを可能にする。
【0118】
しかしながら、グリセロールの殺細菌作用は、PGほど大きいものではなかった。具体的には、30質量%のグリセロールを含有する水溶液は、細菌についての欧州薬局方基準Bのみを満たすことを可能にするが、米国薬局方基準を満たさない。真菌、特に黒色アルペルギルスの除去は、相当のエタノールを提供することを必要とさせる障害である。
【0119】
ポリエチレングリコール400:
20質量%のPEG 400は、欧州薬局方基準Aを満たすように、エタノール濃度を25%から10%まで低減させることを可能にする。
【0120】
20質量%のPEG 400は、米国薬局方基準を満たすように、エタノール濃度を15%から5%まで低減させることを可能にする。
【0121】
その殺細菌作用は、PGほど大きいものではないが、グリセロールよりも大きい。
【0122】
試験した保湿剤は、水溶液に導入するエタノールの濃度を低減することを可能にした。
【0123】
薬局方によれば、以下の「ローション」タイプの溶液は、保存剤の添加なしで抗微生物保護を与えることを可能にするものである(表9)。
【0124】
【表9】

【0125】
試験した保湿剤は、組成物中のエタノール濃度を低減することを可能にするとともに、エタノールの抗微生物作用を促進する。しかしながら、それらの作用は類似してはいなかった。それらの殺細菌作用による序列を決定することができる。
【0126】
PG>PEG 400 >グリセロール
【0127】
したがって、細菌に対するそれらの特性のために、PG又はPEGを保湿剤として選択することがより有利である。
【0128】
実施例3
組成物の水分活性の試験
エタノール及び3種の保湿剤の添加により実証した阻害作用は、直接的な殺細菌及び殺真菌作用として解釈することができる。
【0129】
しかしながら、これらの賦形剤は、製剤中の利用可能な自由水の量を変化させる能力も有する。したがって、それらの作用は水分活性に関連付けることができる。
【0130】
加えて、局所用ローションの粘度は、増粘剤(多くの場合には親水コロイド)の添加によって潜在的に増加される。増粘剤は、製剤中に存在する自由水分子を閉じ込めるという特徴を本質的に有する。したがって、それらは、水分活性を低減させ、それによって微生物増殖に影響を与える特性を有する。
【0131】
本試験は、各種の組成物、ローション、及びゲルの作用を測定し、水分活性を各種の薬局方の許容可能な基準に関連付けることを含む。
【0132】
糖−エタノール混合物の水分活性
添付の分析方法を参照のこと
上述のように試験した保湿剤を水分活性でも分析した。
【0133】
プロピレングリコール(PG)の効果
図1:PG濃度に応じた水分活性における低減
【0134】
グリセロールの効果
図2:グリセロール濃度に応じた水分活性における低減
【0135】
PEG 400の効果
図3:PEG濃度に応じた水分活性における低減
【0136】
等しい濃度において、プロピレングリコールは、PEG 400、グリセロール、及びエタノールよりも大きい程度まで水分活性を低減させる。
【0137】
実施例A:10%保湿剤/10%エタノール混合物
PG=0.9036
グリセロール=0.9242
PG 400=0.9380
PG>グリセロール>PEG
実施例B:
30% PG=0.8906
30% エタノール=0.9040
30% グリセロール=0.9070
PG>エタノール>グリセロール
【0138】
したがって、水分活性に対するより大きな作用のために、PGを選択することがより有利である。
【0139】
実施例4
製剤の水分活性と薬局方基準を満たすこととの間の関係
【0140】
【表10】

【0141】
図4:awとPETとの間の相関関係についての調査
【0142】
PETを用いて得られる結果は、製剤の水分活性と直接関連付けられないことに気付くかもしれない。
【0143】
事実、欧州薬局方基準Aは、最も厳格なものであるが、低いaを有する製剤によってのみ満たされるわけではない。
【0144】
さらに、得られるa値は、0.8876より低くあってはならない。この量は、Pseu及びColiの阻害のみを可能にする。事実、幾つかの製剤は全ての微生物を阻害する一方で、欧州薬局方基準A又は米国薬局方基準を満たす。
【0145】
したがって、保存を提供するのは、製剤中に存在する自由水分量ではなく、保湿剤/エタノールのペアの抗微生物作用である。
【0146】
実施例5
エタノール混合物中の増粘剤の効果の試験
製剤業者に従来から用いられている増粘剤は
カルボポール(Ultrez 10 NF) 0.5%
ナトロソール(HHX 250) 1.5%
キサンタンガム(Xantral 180) 2%
である。
【0147】
試験増粘剤の全てが、同一のゲル化能を有してはいない。しかしながら、これらの分析ゲルは、類似の粘度を有するべきである。この理由から、エタノール混合物に導入した増粘剤の濃度は異なる。
【0148】
抗微生物特性に対する効果
これらの各種のゲル化剤の作用は、はじめに、限界濃度である10%及び15%のアルコール濃度を有する水/エタノール混合物に対して試験した。
【0149】
ナトロソールは、エタノール濃度を25%から15%まで低減し、欧州薬局方基準Aを満たすことを可能にする増粘剤である。
【0150】
試験した全ての増粘剤が、エタノール濃度を15%から10%まで低減させて、米国薬局方基準を満たすことを可能にする。
【0151】
キサンタンガムは、Staの良好な低減を与えない。そのため、キサンタンガムと組み合わせた15%のエタノールは、欧州薬局方基準Bのみを満たす。
【0152】
15%のエタノールと組み合わせたカルボポール及びナトロソールは、細菌を低減させ、欧州薬局方基準Aを満たす。
【0153】
主な違いは、黒色アスペルギルスの除去にある。エタノール/ナトロソールの組み合わせのみが、欧州薬局方基準Aに従って、その除去を与える(14日で2.4対数減少)。
【0154】
したがって、それらの作用は類似していない。抗微生物作用の序列を決定することができる。
【0155】
ナトロソール>カルボポール>キサンタンガム
【0156】
したがって、その黒色アスペルギルスに対する作用のために、15%のエタノールと組み合わせてナトロソールを選択することがより有利である。
【0157】
各種のゲルの水分活性を測定した。
【0158】
各増粘剤の存在は、多かれ少なかれ低減された水分活性をもたらした。
【0159】
15%のエタノール中に導入される際には、ナトロソールを用いると最も大きな低減が認められる。
【0160】
実施例6
糖−エタノール混合物における増粘剤の効果の試験
以上で実証したように、増粘剤は水分活性を低減させ、そのため、許容領域を変えることによってより低いエタノール量で保存を提供する能力を有する。
【0161】
さらに、溶液に導入されたエタノール量を低減する観点から、保湿剤及び増粘剤の作用の蓄積が想起されるべきである。
【0162】
選択される増粘剤は、1.5%のナトロソールであり、選択される保湿剤はPG及びPEGである。
【0163】
プロピレングリコール
2種の製剤:
1.5%ナトロソール、30% PG:ゲル1
1.5%ナトロソール、10% エタノール、15% PG:ゲル2
を分析した。
【0164】
製剤(ゲル1)からエタノールを完全に除去することが可能であるか、及び欧州薬局方基準A又はBの許容可能な領域を変化させることが可能であるか決定するために、これらの製剤を試験する。
【0165】
ゲル化剤なしでは、これらの製剤は、当該薬局方の基準A及びBのいずれも満たさない。
【0166】
ゲル1に対して実施した分析は、欧州薬局方基準A及びBを満たさないことを示す。ナトロソールは、これらの濃度に関しては、欧州薬局方基準の許容領域における変化を与えない。
【0167】
ゲル2については、基準Aが、黒色アスペルギルスを除く全ての微生物について満たされる。黒色アスペルギルスについて認められる低減は、1.2対数である。したがって、基準Bのみを満たす。
【0168】
ナトロソールは、この薬局方の基準の満足という観点で一定の改善を提供する。ゲル化した10%エタノール及び15% PGの混合物は欧州薬局方基準Bを満たすため、aにおける変化は、一定の濃度で直接的な結果を有する。
【0169】
PEG400
2つの製剤:
1.5%ナトロソール、30% PEG:ゲル3
1.5%ナトロソール、10% エタノール、10% PEG:ゲル4
を、上述と同じ理由のために分析した。
【0170】
PEGの作用は、同一の条件において、PGほど大きいものではない。試験したPEGゲルは、欧州薬局方及び米国薬局方基準の許容領域を変化させ得ない。
【0171】
エタノール系に関する結論:
グリコール、特にプロピレングリコールとエタノールとの組み合わせは、水分活性を低減させる能力を有するため、有益な選択肢である。PGは、アルコール濃度を低減させることを可能にする顕著な殺細菌作用も有する。保護を提供するエタノール及び水相の比率は、15%まで低減する。
【0172】
同じ比率を、水−エタノールナトロソールゲルの試験を用いて測定した。
【0173】
エマルション又はローションタイプの組成物中において使用してよい糖−エタノール混合物の例は:
15%エタノール、5% PG、及び3.5%グリセロール
である。
【0174】
このグリコールとの組み合わせは、当該エマルションが欧州薬局方基準Aをより良好に満たすため、相乗効果を奏させることを可能にする。
【0175】
実施例7
抗微生物効力を有する他の添加剤
本試験の目的は、特定の化学的機能によって抗微生物作用を有し得る分子のファミリーに対する試験をすることである。
【0176】
キレート剤及び抗酸化剤を、標準的なエマルション製剤において分析する。
【0177】
選択したエマルションは従来から使用されているものであり、典型的な製剤分野のエマルションである。
【0178】
前記製剤の組成は下表のとおりである。
【0179】
【表11】

【0180】
当該製剤は、以下の全ての分析の基礎を為す。かくして、試験する分子が、そこに導入される。
【0181】
製剤が微生物増殖を阻害し得る因子を含有していないことを検証するために、保存効力試験(PET)を使用して、当該製剤を分析した。
【0182】
【表12】

【0183】
微生物の顕著な低減が分析時間中に観察されないため、選択したエマルションが抗微生物作用を有しないことを明確に認めることができる。当該エマルションは、いずれの薬局方のいずれの基準も満たさない。全ての微生物について、対数減少は非常に小さいか又は存在すらしない
【0184】
かくして、以下の分析の経過に亘って観察することが可能である低減は、実際に、試験化合物の抗微生物効果によるものであろう。
【0185】
使用した濃度は、医薬分野において許容される上限の濃度である。かくして、基準が満たされない場合には、潜在的な微生物インヒビターとして、その成分を保持する必要はない。
【0186】
キレート剤、EDTA二ナトリウム二水和物
EDTAを0.15%で水相に導入した。この濃度は、医薬分野において使用されてよい最大濃度である。
【0187】
抗酸化剤
以下に示す抗酸化剤は、製剤中で一般的に使用される抗酸化剤である。
【0188】
【表13】

【0189】
結果
【0190】
【表14】

【0191】
これらの添加剤の各種の作用の試験が、微生物に対するそれらの挙動における大きな多様性を明らかにする。
【0192】
3つの非常に異なる挙動を区別することができる。
− トコフェロール及びBHTは、概して、微生物に対する顕著な効力を有しない。そのため、それらの使用は、抗微生物保存に保持されないであろう。
− EDTA及び没食子酸プロピルは、緑膿菌のみを阻害し、欧州薬局方基準Aを満たす。
アスコルビン酸ナトリウムは、黄色ブドウ球菌に対する非常に良好な作用を有し、欧州薬局方基準Aを満たし、大腸菌に対する良好な作用を有し、米国薬局方基準を満たす。
− クエン酸及びアスコルビルパルミテートは広範な効力を有する。具体的には、双方とも殺細菌性を有する。クエン酸は非常に低いpH(pH=2.04)のために細菌に加え、カンジダアルビカンスを阻害するため、クエン酸の作用がより大きい。
【0193】
結論
結果として、全ての微生物を阻害する完璧な薬効範囲の作用を得ることは不可能であることが示される。
【0194】
黒色アルペルギルスが障壁となっている。いずれの試験した添加剤も最小限の阻害すら不可能であった。
【0195】
カビの除去は、試験した自己保護手法の各々について頻発する問題である。エタノールのみが高濃度において、その発生を阻害することが可能であった。
【0196】
したがって、全ての微生物、特に黒色アスペルギルスを阻害する保存システムを決定することが重要である。
【0197】
実施例8
従来の保存システムの部分的な使用
マトリックスの完全な保存を確実にするために、保存システムが細菌及び真菌を阻害することが重要である。
【0198】
従来、抗微生物保存剤の組み合わせである複数のパラベン及びフェノキシエタノールが使用されている。
【0199】
これらの保存剤の濃度は規制によって管理されており、パラベンの混合物は、製剤の0.8%を超えるべきでなく、フェノキシエタノール濃度は1%までに限られている。
【0200】
したがって、全ての従来の保存システムは、製剤の質量の1.8%を占める。
【0201】
上述の試験は、保存システムを部分的に置換し得る多数の試験手法を提案する。かくして、保存システムの殺細菌作用を提供し得る抗酸化剤又は保湿剤などの添加剤を提案する。
【0202】
したがって、保存剤の使用は、その殺真菌作用に限定される。
【0203】
そのため、殺細菌作用を提供するアスコルビルパルミテートを選択することに決めた。
【0204】
pHの影響は更に大きな試験を構築するパラメータであるため、クエン酸は選択しなかった。pH及び分子自体の作用という2つの基準が含まれるため、得られた結果は有意ではないであろう。
【0205】
殺真菌システムは、メチルパラベン及びエチルパラベンよりも大きな作用を微生物に対して有するプロピルパラベンを用いてのみ得ることが可能である。具体的には、250ppmのプロピルパラベンが、黒色アスペルギルス及びカンジダアルビカンスを阻害することを可能にする一方で、1000ppmのメチルパラベンが同じ結果を得るために必要とされる[9]。
【0206】
可能な限り多く抗微生物保存剤の供給を低減するために、複数の濃度のプロピルパラベンを試験した。
【0207】
0.1%きざみで0.4%(規制によって管理されている最大の割合)から0.1%の範囲の濃度を分析した。
【0208】
【表15】

【0209】
PETの結果
【0210】
【表16A】

【表16B】

【0211】
PETを用いて試験した全ての製剤が、欧州薬局方及び米国薬局方基準の全てを満たした。しかしながら、0.2%及び0.1%のプロピルパラベンを含有する製剤については、観察された黒色アスペルギルス(Asp)における低減が2.0に等しい。幾つかの結果のうち、より高度に安全であるものとして選択される製剤は、0.3%のプロピルパラベン及び1%のアスコルビルパルミテートを含有するものである。
【0212】
当該エマルションに導入した抗微生物保存剤の割合は、従来のエマルションでは1.8%であるのに対し、0.3%である。したがって、パラベン及び保存剤における低減は、一般的に、アスコルビルパルミテートの1%の使用によって得られる。
【0213】
実施例9
上述の実施例において試験した添加剤の組み合わせ
組成物から従来の保存システムを完全に除去するために、以下の混合物を試験した。
【0214】
・抗酸化剤として、1質量%のアスコルビルパルミテート
・保湿剤として、5質量%のプロピレングリコール
・50質量%という、過去よりも低い水の割合
・10%から15%の範囲のエタノール/水相比
【0215】
【表17】

【0216】
PETの結果
【0217】
【表18】

【0218】
全ての薬局方の基準が、十分に満たされている。これは、観察された低減が非常に大きいためである。黒色アスペルギルスの対数減少は14日目の時点で、2種の製剤について3.9を超えている。エマルションNo.2は、最少量のエタノールを含んでいるが、その作用はエマルションNo.1と同程度に良好であるため選択されてよい。
【0219】
当該値では大腸菌(coli)及び緑膿菌(Pseu)のみが阻害されるため、ここでは水分活性は非常に重要な役割を担っているというわけではない。
【0220】
観察された抗微生物作用は、アスコルビルパルミテート、エタノール、及びPGの組み合わせの相乗効果によるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物活性を有する賦形剤の混合物を含む局所用医薬組成物であって、イミダゾリジニルウレア又はジアゾリジニルウレアなどのホルムアルデヒド産生剤、Kathon CGなどのチアジン誘導体、クロルヘキシジンなどの塩素化誘導体、パラベンなどのフェノール誘導体、ブロノポール、フェノキシエタノール、若しくはクロルキシレノールなどのアルコール誘導体、ソルビン酸又は安息香酸などの酸誘導体、及び/又は塩化ベンザルコニウムから選択される、0から1.8質量%の保存剤を含む、組成物。
【請求項2】
エマルションの形態であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記賦形剤の混合物が、エタノール、保湿剤、抗酸化剤、界面活性剤、キレート剤、及び/又は増粘剤の混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記賦形剤の混合物が、
− 5%から25%の間のエタノール、
− プロピレングリコール、グリセリン若しくはグリセロール、及び/又はポリエチレングリコールから選択される、1%から50%の間の保湿剤
を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記賦形剤の混合物が抗酸化剤も含むことを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗酸化剤がアスコルビルパルミテートであることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記賦形剤の混合物が、少なくとも0.5質量%の濃度で存在する増粘剤も含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記エタノール/水相の比が10%から15%の間であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記賦形剤の混合物が、
− 0.5質量%から1質量%の間の濃度のアスコルビルパルミテート、
− 5質量%のプロピレングリコール、
− 50質量%未満の水の割合、
− 10%から15%の範囲のエタノール/水相の比
を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
0.8%未満のパラベンを含有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
0.4%未満のプロピルパラベンを含有することを特徴とする、請求項10に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−539148(P2010−539148A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524557(P2010−524557)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051648
【国際公開番号】WO2009/047434
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】