保存後も安定なアトルバスタチンカルシウムの結晶形
本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型を提供する。このアトルバスタチンヘミカルシウムは、アトルバスタチンカルシウムエポキシジヒドロキシ(AED)の形成に対して安定である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウム(Atorvastatin hemi-calcium)の結晶多型体、アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形を調製するための新規な方法、及び、粒子サイズ分布の小さな結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムに関する。
【背景技術】
【0002】
アトルバスタチン(Atorvastatin)([R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸)(式(I)にラクトン形態で示す)及びそのカルシウム塩三水和物(式(II))は、本技術分野では周知であり、特に米国特許第4,681,893号及び第5,273,995号、並びに同時係属出願であるUSSN第60/166,153号(2000年11月17日)に記載されている。これらは何れも援用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
【化1】
【0004】
アトルバスタチンは、スタチン(statins)と呼ばれる薬物群の一員である。スタチン薬は現在のところ、心臓血管疾患の危険がある患者の血流中の低密度リポプロテイン(low density lipoprotein:LDL)粒子濃度を低減するのに利用可能な、最も治療効果のある薬である。血流中における高レベルのLDLは、冠動脈病変の形成との関連が指摘されている。冠動脈病変は血液の流れを妨げ、破裂して血栓症を促進する可能性がある。Goodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics 879 (9th ed. 1996)。心臓血管疾患の患者や、心臓血管疾患ではないが高コレステロール血症である患者では、血漿LDLレベルを低減することで、臨床的事象の危険性も低減されることが示されている。Scandinavian Simvastatin Survival Study Group, 1994;Lipid Research Clinics Program, 1984a, 1984b。
【0005】
スタチン薬の作用機序はある程度詳しく解明されている。これらは、S−ヒドロキシ−S−メチル−グルタリル−補酵素A還元酵素(「HMG−CoA還元酵素」)を競合的に阻害することにより、肝臓におけるコレステロールや他のステロール類の合成に干渉する。HMG−CoA還元酵素はHMGのメバロン酸塩への変換を触媒するが、これはコレステロール生合成の律速段階である。よって、本酵素の阻害によって肝臓のコレステロール濃度が低減する。超低密度リポプロテイン(VLDL)は、コレステロール及びトリグリセリドを肝臓から末梢細胞に運搬するための生物学的ビヒクルである。末梢細胞はVLDLを異化して脂肪酸を放出させる。脂肪酸は脂肪細胞に蓄積されたり、或いは筋肉で酸化されたりする。VLDLは中間密度リポプロテイン(intermediate density lipoprotein:IDL)に変換され、LDL受容体によって除去されるか、或いはLDLへと変換される。コレステロールの産生が減少するとLDL受容体数が増加し、それに伴ってIDLの代謝によるLDL粒子の産生も減少する。
【0006】
アトルバスタチンヘミカルシウム塩三水和物は、商品名LIPITOR(登録商標)としてPfizer, Inc.社から市販されている。アトルバスタチンを最初に一般に開示するとともに特許請求したのは、米国特許第4,681,893号である。式(II)に示すそのヘミカルシウム塩は、米国特許第5,273,995号に開示されている。第’995号特許には、ナトリウム塩をCaCl2で置換し、ブライン溶液から結晶化してヘミカルシウム塩を生成させ、更に酢酸エチル及びヘキサンの5:3混合液から再結晶化することが記載されている。
【0007】
本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムの新たな結晶形を、溶媒和の状態及び水和の状態の双方で提供するものである。異なる結晶形の生成(多型)は、一部の分子や分子複合体(molecular complexes)が有する特性の1つである。式(I)に示すアトルバスタチンや式(II)や塩複合体(salt complex)等の単一分子は、融点、X線回折パターン、赤外線吸収フィンガープリント、及びNMRスペクトル等の物理特性が異なる、種々の固体を生じる。多型体の物理特性の違いは、バルク固体中における、隣接する分子(複合体)の向きや分子間相互作用に起因するものである。従って、多型体は、同一の分子式で表わされるにもかかわらず、多型体ファミリーにおける他の形態と比較した場合に、有利な及び/又は不利な物理特性が異なる、区別される固体を示す。医薬多型体における最も重要な物理特性の1つは、水溶液に対するその溶解性、特に患者の胃液に対するその溶解性である。例えば、胃腸管からの吸収が緩やかである場合、薬剤としては、有害な環境内に蓄積することがないように、患者の胃や腸の内部の条件に対して不安定であり、緩やかに溶解するものが好ましい場合が多い。一方、薬剤の有効性とそのピーク血流レベルとの間に相関がある場合(これはスタチン薬に共通する特性である)、薬剤が胃腸系によって迅速に吸収されるのであれば、より速く溶解する形態の方が、より遅く溶解する形態と比べて、同程度の量であってもより優れた有効性を示す可能性が高い。
【0008】
アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形I型、II型、III型及びIV型は、Warner-Lambert社に譲渡された米国特許第5,959,156号及び第6,121,461号の主題であり、結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムV型は、共願に係るPCT出願番号第PCT/US00/31555号に開示されている。第’156号特許には、公知の非晶形のアトルバスタチンヘミカルシウムに比べて、I型がより好ましい濾過及び乾燥特性を有する旨の記載がある。I型は製造可能性の面で、非晶質材料が有する欠点の一部を解消するものではあるが、こうした特性のより一層の改善に加えて、流動性、気体不透過性及び溶解性等の他の特性の改善も、依然として求められている。更に、薬剤の新たな結晶多型体の発見は、製剤科学者が目的とする放出プロファイルや他の好ましい特性を有する薬剤の医薬調剤形態を設計する上で、使用可能な材料の範囲を拡大することになる。
【0009】
あらゆる合成化合物と同様、アトルバスタチンヘミカルシウム塩も、様々な出所に起因する外来性の化合物や不純物を含有し得る。、未反応の出発原料、反応の副生成物、副反応の生成物、又は分解生成物が挙げられる。アトルバスタチンヘミカルシウム塩や、あらゆる活性医薬成分(active pharmaceutical ingredient:API)において、不純物は好ましくないばかりか、極端な場合には、APIを含有する調剤形態による治療を受ける患者にとって有害な場合さえある。
【0010】
本技術分野では、API中の不純物がAPI自体の分解によって生じ得ること、これが保存時における純粋なAPIの安定性と関連していることが知られている。アトルバスタチンヘミカルシウムに特有の分解生成物の1つが、アトルバスタチンカルシウムエポキシジヒドロキシ(Atorvastatin calcium epoxy dihydroxy:AED)という、下記式の物質である。
【0011】
【化2】
【0012】
AEDを特徴付けるデータとしては、米国特許出願番号第11/236,647号及び国際特許出願番号第PCT/US05/35159号に開示のように、:水素の化学シフト値を約1.20、1.21、2.37、4.310、6.032、7.00、7.06〜7.29、7.30、7.39、7.41、7.56ppmに有する1H NMRスペクトル;炭素の化学シフト値を約16.97、34.66、103.49、106.66、114.72、120.59、125.79、128.21、128.55、128.74、129.06、129.57、132.38、132.51、135.15、161.61、163.23ppmに有する13C NMRスペクトル;HPLC分析における約32分の保持時間及び約1.88の相対保持時間で、m/z=約472(MNa)+、454(MNa−H2O)+、432(MH−H2O)+、344(FPhCOC(Ph)=C−CONHPh)+のピークを有するMS(ESI+)スペクトル;から選択されるデータが挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は新たなアトルバスタチンヘミカルシウムの溶媒和物及び水和物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、VI型と命名された、アトルバスタチンヘミカルシウムの新規な結晶形と、その新規な調製法を提供するものである。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、VIII型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、VIII型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形であって、不純物AEDの形成に対して安定なものを提供する。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、IX型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、X型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、XI型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、XII型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムI型の新規な調製法を提供する。
【0022】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムII型の新規な調製法を提供する。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムIV型の新規な調製法を提供する。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムV型の新規な調製法を提供する。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムの新規な調製法を提供する。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムVI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びそれらの混合物を含んでなる、組成物及び調剤形態を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形の一部は、溶媒和の状態及び水和の状態で存在する。水和物の分析はカール・フィッシャー(Karl-Fisher)法及び熱重量分析で行なった。
【0028】
従来のCuKα放射線を用いた粉末X線回折(powder X-ray diffraction:「PXRD」)分析は、固体検出器を備えたSCINTAG粉末X線回折計モデルX'TRAを用いて、本技術分野で公知の手法により行なった。λ=1.5418Åの銅放射線を用いた。測定範囲:2〜40°2θ。サンプルの導入には、円形のゼロバックグラウンド・クオーツプレートを底部に有する、円形の標準的なアルミニウムサンプルホルダーを用いた。粉末化サンプルは穏やかに粉砕した後、ガラスプレートで圧密することにより、サンプルホルダーの円形凹部に充填した。
【0029】
シンクロトロンX線源を用いたPXRD分析は、Brookhaven National LaboratoryのNational Synchroton Light Source(diffractometer station X3B1)で行なった。サンプルは薄壁ガラスキャピラリー内に軽く充填した。放射X線は凡そ1.15Åであった。入射光の波長は従来のPXRD分析で最も一般に使用される波長に対応しているので、シンクロトロン源から得られた回折パターンにおけるX線ピーク位置は面間隔d(d-spacings)で表わされる。これは、パターンの生成に使用されるX放射線の波長の変化によらず一定である。走査幅は1から20°2θである。スペクトルの分解能は、半値全幅が0.01から0.03度の範囲内である。良分解ピークの位置の精度は0.003から0.01度の範囲内である。
【0030】
CP/MAS 13C NMR測定は125.76MHzで、Bruker DMX-500デジタルFT NMRスペクトロメータを用いて行なった。本スペクトロメータにはBL-4 CP/MASプローブヘッド及び固体用高分解能/高性能1H前置増幅器が備えられ:スピン速度5.0kHz、パルスシーケンスSELTICS、サンプルホルダー:ジルコニアローター4mm径であった。
【0031】
アトルバスタチンヘミカルシウムVI型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図1)は、3.5、5.1、7.7、8.2、8.7、10.0、12.5、13.8、16.2、17.2、17.9 18.3、19.5、20.4、20.9、21.7、22.4、23.2、24.3、25.5±0.2度2θにピークを有する。最も特徴的なピークは19.5±0.2度2θに観察される。VI型のPXRDパターンは上述のSCINTAG装置法と同様のPhylips 回折計を用いて取得された。
【0032】
アトルバスタチンヘミカルシウムVI型は、他の任意の形態(好ましくはI型)のアトルバスタチンヘミカルシウムをアセトンに溶解させ、続いて貧溶媒(好ましくは水)を加えてVI型を沈殿させることによって、得ることができる。
【0033】
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図2)は、2本のブロードなピークを、一方は18.5〜21.8の範囲に、他方は21.8〜25.0°2θの範囲に有するとともに、更に別のブロードなピークを、4.7、7.8、9.3、12.0、17.1、18.2±0.2°2θに有する。VII型サンプルは最大で12%の水を含有していてもよい。
【0034】
VII型は、既知の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムから、7.8及び9.3±0.2°2θに存在するブロードなピークによって、容易に識別することができる。例えば、米国特許第5,969,156号記載の情報によれば、I型は9.2、9.5、10.3、10.6、11.0及び12.2°2θにピークを有する。この領域において、II型は2本のシャープなピークを8.5及び9.0°2θに有し、IV型は1本の強いピークを8.0°2θに有する。15〜25°2θの領域に存在する他のブロードなピークによって、VII型は他の全ての形態から識別できる。I型、III型及びIV型は、何れもこの領域にシャープなピークを有する。
【0035】
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型の調製は、例えば、アトルバスタチンカルシウムI型又はV型をエタノール(好ましくは無水エタノール)で、室温から還流温度で、約1hから約24h、好ましくは2.5〜16hに亘って処理することにより、行なうことができる。処理を還流EtOH中で行なえば、変換は約2.5hで完了する。処理を室温で行なう場合には、より長い時間が必要である。
【0036】
従来のCuKα放射線を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図3)は、4.8、5.2、5.9、7.0、8.0、9.3、9.6、10.4、11.9、16.3、17.1(ブロード)、17.9、18.6、19.2、20.0、20.8、21.1、21.6、22.4、22.8、23.9、24.7、25.6、26.5、29.0±0.2度2θにピークを有する。最も特徴的なピークは、6.9、9.3、9.6、16.3、17.1、19.2、20.0、21.6、22.4、23.9、24.7、25.6、及び26.5±0.2°2θに存在する。カール・フィッシャー法によれば、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型のサンプルは、最大7%の水を含有することが分かった。
【0037】
VIII型は、特徴的なシャープなピークが9.3及び9.6°2θに存在することによって、I〜IV型と容易に識別可能である。米国特許第5,969,156号に記載の情報によれば、I型は1本の中程度のピークを6.9に有し、シャープなピークを9.2、9.5、10.3、10.6、11.0及び12.2±0.2°2θに有する。IV型は2本のピークを8.0及び9.7°2θに有すると言われている。II型はこの領域内に、2本のシャープなピークを8.5及び9.0°2θに有すると言われている。米国特許第6,121,461号に記載の情報によれば、III型はこの領域内に、1本の強いシャープなピークを8.7°2θに有する。この特徴は、VIII型のPXRDパターンには見受けられない。更に、VIII型のPXRDパターンには、1本のシャープな、中程度の強度のピークが7.0に存在し、これはこの領域内の他のピークと容易に識別し得る。VIII型のPXRDパターンをI〜IV型のパターンと比較すると、VIII型のパターンが有するこの特徴は、独特のものである。
【0038】
VIII型のパターンにおける他のピークのうち、この形態に特有のものとしては、19.2及び20.0°2θに存在する2本の強いシャープなピークが挙げられる。上記’156特許記載の情報によれば、I型はこの領域内で、シャープなピークを21.6、22.7、23.3及び23.7°2θに有する。IV型はピークを18.4及び19.6°2θに有すると言われているのに対し、II型は2本の主ピークを17.0及び20.5に有し、III型はピークを17.7、18.2、18.9、20.0及び20.3±0.2°2θに有する。
【0039】
VIII型についてシンクロトロンX線粉末回折分析を行ない、その結晶系及び単位格子寸法を決定した。VIII型は単斜晶単位格子を有し、その格子寸法は:a=18.55〜18.7Å、b=5.52〜5.53Å、c=31.0〜31.2Å、a軸とc軸との角βは97.5〜99.5°であった。単位格子パラメーターはLe Bail法を用いて決定した。
【0040】
シンクロトロンX線源を用いて得られた図4のディフラクトグラムは、シャープな良分解性のピークを多数有している。特に顕著なピークの一部について、その面間隔dを表1に示すとともに、1.5418ÅのCuKα放射線を用いた、ピークが有する2θ単位における位置を合わせて示す。
【0041】
【表1】
【0042】
互いに独立のサンプル及び測定値の自然変動のために、ピーク位置はその報告された位置から逸脱する可能性があり、その差は最大でd値0.5%になる。材料に微粒子化等のサイズ低減を施した場合には、より大きなシフトが生じる場合もある。
【0043】
スペクトルアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の固体13C NMRを図5に示す。VIII型を特徴付ける固体13C核磁気共鳴化学シフト(単位ppm)は以下の通りである:17.8、20.0、24.8、25.2、26.1、40.3、40.8、41.5、43.4、44.1、46.1、70.8、73.3、114.1、116.0、119.5、120.1、121.8、122.8、126.6、128.8、129.2、134.2 、135.1、137.0、138.3、139.8、159.8、166.4、178.8、186.5。VIII型を特徴付ける固体13C核磁気共鳴では、最低ppm共鳴と他の共鳴との間に、以下の化学シフトの差が存在する:2.2、7.0、7.4、8.3、22.5、23.0、23.7、25.6、26.3、28.3、53.0、55.5、96.3、98.2、101.7、102.3、104.0、105.0、108.8、111.0、111.4、116.4、117.3、119.2、120.5、122.0、142.0、148.6、161.0及び168.7。VIII型について報告された化学シフトは、4つのVIII型のサンプルから得られたスペクトルを平均したものである。パターンの特徴部分は、24〜26ppm(脂肪族域)、119〜140ppm(芳香族域)及び他の領域に見受けられる。シフト値の精度は±0.1ppm以内であったが、178.8ppmに存在するカルボニルピークの変動は±0.4ppmであった。
【0044】
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型は、最大で約3重量%のエタノールを含有するエタノール溶媒和物として存在していてもよい。
【0045】
VIII型の生成には、以下の方法が適していることが見出された。但し、この形態は、実験的開発や、これらの手法に一般的な修正を加えることによっても得ることができる。
【0046】
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型は、アトルバスタチンヘミカルシウムをエタノールと水との混合物中、昇温下(好ましくは約78〜80℃)でスラリー化することによって得ることができる。スラリー化手順は、アトルバスタチンヘミカルシウムの調製手順の最終工程に組込んでもよい。この工程は通常、アトルバスタチン遊離酸又はラクトンをカルシウムイオン源で処理することにより、ヘミカルシウム塩を生成する工程である。このような組み合わせ法の場合、エタノール及び水を含んでなる溶媒系内に、塩が生成する。便宜上は、水の添加によってアトルバスタチンヘミカルシウム塩の沈殿が生じた後、この塩を反応混合物中で、数時間、好ましくは約6から約16時間に亘ってスラリー化することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型を取得してもよい。
【0047】
また、VIII型は、V型から出発して、V型をEtOH:H2Oの混合物(好ましくは約5:1の比率)によって、還流しない程度の昇温下(好ましくは78〜80℃)で処理することによっても調製できる。特に好ましいEtOH:H2O混合物は、エタノール中に約4体積%の水を含むものである。加熱の際に、アトルバスタチンV型は徐々に溶解し、種晶の有無によらず、78〜80℃の時点で濁りが観察される。この時点で懸濁液を室温まで急冷する。
【0048】
VIII型は、アトルバスタチンヘミカルシウムをEtOH(好ましくは無水EtOH)中、昇温下(好ましくはEtOHの沸騰下)で処理することによって得ることができる。これらの条件下で、アトルバスタチンは溶解し、再沈殿する。還流時にMeOHを加えてもよい。MeOHの添加によって、収率には悪影響が生じるかもしれないが、生成物の化学純度は向上する場合がある。この方法でVIII型を調製するための出発原料としては、アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形、好ましくはI型及びV型、並びにこれらの混合物、又は非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムが挙げられる。
【0049】
EtOH又はその水との混合物の量は、約10から約100ml・g-1の範囲が好ましく、約20から約80ml・g-1の範囲がより好ましい。
【0050】
本発明者等は、0.1%を超えるdes−フルオロアトルバスタチンヘミカルシウム、及び/又は、1%を超えるトランスアトルバスタチンヘミカルシウムを含有するアトルバスタチンヘミカルシウムを、約96%のエタノールと約4%の水との溶液中に、昇温下(好ましくは還流温度下)で懸濁させることによって、精製できることを見出した。通常は、回収されたアトルバスタチンヘミカルシウムにおける、des−フルオロアトルバスタチンヘミカルシウムの混入量は0.07%未満、トランスアトルバスタチンヘミカルシウムの混入量は0.6%未満である。
【0051】
また、VIII型は、アトルバスタチンヘミカルシウムを、特定の1−ブタノール/水及びエタノール/水の混合物中で、アトルバスタチンヘミカルシウムからVIII型への変換が生じるのに十分な時間に亘って懸濁することによっても、調製することができる。1−ブタノール/水混合物は、昇温下(好ましくは還流温度下)において、約20体積%の1−ブタノールを含んでいる必要がある。
【0052】
アトルバスタチンカルシウムエポキシジヒドロキシ(AED)の形成に対して安定であるアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型が提供される。
【0053】
本明細書において「安定(stable)」という語は、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型に関して言えば、最低約0.01%(w/w)の不純物AEDの形成に関連している。VIII型の安定性は、VIII型を、約40℃の温度及び約75%の相対湿度で約1ヶ月以上、又は、約25℃の温度及び約60%の相対湿度で約6ヶ月以上、保持することによって測定される。安定なアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型とは、上に詳述した条件下に保持した場合に、約0.01%(w/w)以下のAED不純物が形成されるVIII型である。
【0054】
アトルバスタチンヘミカルシウムIX型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図5)は、4.7、5.2、5.7、7.0、7.9、9.4、10.2、12.0、17.0、17.4、18.2、19.1、19.9、21.4、22.5、23.5、24.8(ブロード)、26.1、28.7、30.0±0.2度2θにピークを有する。IX型の最も特徴的なピークは、6.9、17.0、17.4、18.2、18.6、19.1、19.9、21.4、22.5及び23.5±0.2度2θに存在する。IX型は最大7%の水を含有していてもよい。また、IX型は最大約5%のブタノールを含有する、ブタノール溶媒和物として存在していてもよい。
【0055】
IX型は、18.6、19.1、19.9、21.4、22.5、23.5°2θに存在する特徴的なシャープなピークによって、容易に識別し得る。比較のために述べると、第’156号特許に記載の情報によれば、I型はシャープなピークを21.6、22.7、23.3及び23.7°2θに有するのに対し、IV型はこの領域内で、シャープなピークを18.4及び19.6°2θに有し、II型は2本の主ピークを17.0及び20.5°2θに有する。III型はこの領域内で、ピークを17.7、18.3、18.9、20.0及び20.3°2θに有する。また、IX型のPXRDパターンには、VIII型のパターンと同様、シャープで容易に識別し得る中程度の強度のピークが、7.0°2θに存在する。
【0056】
IX型の結晶系及び単位格子寸法は、シンクロトロンX線粉末回折分析を用いて決定された。IX型は単斜晶格子を有し、その格子寸法は:a=18.75〜18.85Å、b=5.525〜5.54Å、c=30.9〜31.15Å、a軸とc軸との角βは96.5〜97.5°であった。
【0057】
図7のシンクロトロンX線粉末ディフラクトグラムにおける、特に顕著なピークの一部について、その面間隔dを表2に示すとともに、CuKα放射線を用いた、ピークが有する2θ単位における位置を合わせて示す。
【0058】
【表2】
【0059】
互いに独立のサンプル及び測定値の自然変動のために、ピーク位置はその報告された位置から逸脱する可能性があり、その差は最大でd値0.5%になる。材料に微粒子化等のサイズ低減を施した場合には、より大きなシフトが生じる場合もある。
【0060】
アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の固体13C NMRスペクトルを図8に示す。IX型を特徴付ける固体13C核共鳴化学シフト(単位ppm)は以下の通りである:18.0、20.4、24.9、26.1、40.4、46.4、71.0、73.4、114.3、116.0、119.5、120.2、121.7、122.8、126.7、128.6、129.4、134.3、135.1、136.8、138.3、139.4、159.9、166.3、178.4、186.6。IX型を特徴付ける固体13C核磁気共鳴では、最低ppm共鳴と他の共鳴との間に、以下の化学シフトの差が存在する:2.4、6.9、8.1、22.4、28.4、53.0、55.4、96.3、98.0、101.5、102.2、103.7、104.8、108.7、110.6、111.4、116.3、117.1、118.8、120.3、121.4、141.9、148.3、160.4、168.6。パターンの特徴部分は、24〜26ppm(脂肪族域)、119〜140ppm(芳香族域)、及び他の領域に見受けられた。IX型の化学シフトは、2つのIX型のサンプルから得られたスペクトルを平均したものである。シフト値の精度は±0.1ppmであった。
【0061】
IX型の生成には、以下の方法が適していることが見出された。但し、この形態は、実験的開発や、これらの手法に一般的な修正を加えることによっても得ることができる。
【0062】
アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の調製は、アトルバスタチンヘミカルシウムをブタノール中でスラリー化し、IX型を例えば濾過やブタノールデカンテーションで、好ましくは濾過で単離することにより、行なうことができる。スラリー化に好ましい温度範囲は、78℃から溶媒の還流温度までの範囲である。アトルバスタチンヘミカルシウム塩のスラリーからの回収は、IX型の単離前に貧溶媒をスラリーに加えることによって、促進することができる。好ましい貧溶媒としてはイソプロパノール及びn−ヘキサンが挙げられる。この方法でIX型を調製する場合、その出発原料は、結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムでも非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムでもよいが、I型及びV型、並びにこれらの混合物が好ましい。
【0063】
IX型の調製は、VIII型を、エタノール(好ましくは無水エタノール)に室温で懸濁させることによっても行なうことができる。懸濁時間は、VIII型からIX型への転換が生じるのに十分な時間であり、数時間から24時間までの範囲を取り得るが、通常は約16時間必要である。その後、IX型を懸濁液から回収する。また、VIII型を湿潤雰囲気下で維持することによっても、IX型を調製することができる。
【0064】
また、IX型の調製は、アトルバスタチンヘミカルシウムV型を、1−ブタノールとエタノール又は水の何れかとの混合物中に、還流温度において、V型からIX型への変換が生じるのに十分な時間に亘って懸濁させた後、IX型をその懸濁液から回収することによっても行なうことができる。この混合物は各成分を約50体積%含有する。
【0065】
アトルバスタチンヘミカルシウムX型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図7)は、4.8、5.3、5.9、9.6、10.3、11.5、12.0、16.1及び16.3(二重ピーク)、16.9、17.4、18.2、19.2、19.4、20.0、20.8、21.6、22.0、22.8、23.6、24.6、25.0、25.5、26.2、26.8、27.4、28.0、30.3±0.2°2θにピークを有する。最も特徴的なピークは、20.0及び20.8±0.2°2θに存在する2本のピークと、19.1、19.4、22.8、23.6、25.0、28.0、30.3±0.2°2θに存在する他のピークである。X型は、最高で2%のエタノールと、最高で4%の水を含んでいてもよい。
【0066】
X型は、7.0、19.9、20.7、24.1、25.0、28.0及び30.3±0.2°2θに存在する特徴的なピークによって、IV型から容易に識別することができる。これらの特徴は、先に記載されたI型〜IV型のPXRDパターンの対応する領域に現れるピークから、明確に識別することが可能である。
【0067】
X型の結晶系及び単位格子寸法は、シンクロトロンX線粉末回折分析を用いて決定された。X型は単斜晶格子を有し、その格子寸法は:a=18.55〜18.65Å、b=5.52〜5.53Å、c=30.7〜30.85Å、a軸とc軸との角βは95.7〜96.7°である。
【0068】
図10のシンクロトロンX線粉末ディフラクトグラムにおける、特に顕著なピークの一部について、その面間隔dを表3に示すとともに、CuKα放射線を用いた、ピークが有する2θ単位における位置を合わせて示す。
【0069】
【表3】
【0070】
互いに独立のサンプル及び測定値の自然変動のために、ピーク位置はその報告された位置から逸脱する可能性があり、その差は最大でd値0.5%になる。材料に微粒子化等のサイズ低減を施した場合には、より大きなシフトが生じる場合もある。
【0071】
アトルバスタチンヘミカルシウムX型の固体13C NMRスペクトルを図11に示す。X型を特徴付ける固体13C核共鳴化学シフト(単位ppm)は次の通りである:17.7、18.7、19.6、20.6、24.9、43.4、63.1、66.2、67.5、71.1、115.9、119.5、122.4、126.7、128.9、134.5、138.0、159.4、166.2、179.3、181.1、184.3、186.1。X型を特徴付ける固体13C核磁気共鳴では、最低ppm共鳴と他の共鳴との間に、以下の化学シフトの差が存在する:1.0、1.9、2.9、7.2、25.7、45.4、48.5、49.8、53.4、98.2、101.8、104.7、109.0、111.2、116.8、120.3、141.7、148.5、161.6、163.4、166.6、168.4。パターンの特徴部分は、24〜26ppm(aliphatic range)、119〜140ppm(aromatic range)及び他の領域に見受けられる。X型の化学シフトは、3つのX型のサンプルから得られたスペクトルを平均したものである。報告値は±0.1ppmの範囲内であったが、179.3ppmに存在するカルボニルピークだけは、±0.4ppmの精度であった。
【0072】
アトルバスタチンヘミカルシウムX型の調製は、結晶性アトルバスタチンヘミカルシウム(好ましくはV型若しくはI型、又はこれらの混合物)又は非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムを、エタノールと水との混合物(好ましくは約5:1の比率)と、昇温下(好ましくは還流温度下)で、約30分から数時間(好ましくは約1h)に亘って処理することにより、行なうことができる。出発物質をEtOH:水の混合物に室温で加え、その後にこの懸濁液を徐々に加熱して還流させてもよい。或いは、アトルバスタチンヘミカルシウムの出発形態を、還流している溶媒混合液に加えてもよい。何れの場合でも、アトルバスタチンヘミカルシウムが混合液に溶解し、その後にX型が沈殿するのが観察されるはずである。アトルバスタチンヘミカルシウムのEtOH:水混合液に対する比率は、約1:16から約1:25(g:ml)の範囲が好ましく、約1:16から約1:21(g:ml)の範囲がより好ましく、約1:16(g:ml)が最も好ましい。室温に冷却した直後に、X型を濾過によって採取してもよいが、懸濁液を更に約1から約20時間、より好ましくは約3から約16時間に亘って攪拌してから、X型を採取することが好ましい。
【0073】
アトルバスタチンヘミカルシウムXI型を特徴づける粉末X線回折パターン(図9)は、3.2、3.7、5.1、6.3、7.8、8.6、9.8、11.2、11.8、12.4、15.4、18.7、19.9、20.5、24.0±0.2度2θにピークを有する。
【0074】
XI型は、アトルバスタチンヘミカルシウムV型をメチルエチルケトン(「MEK」)に室温で、V型からXI型への変換を生じさせるのに十分な時間に亘って懸濁させることにより、得ることができる。
【0075】
また、XI型は、アトルバスタチンヘミカルシウムをイソプロピルアルコール中に含むゲルを調製し、このゲルを乾燥させることによっても得ることができる。ゲルの調製は、イソプロピルアルコールを還流温度でアトルバスタチンヘミカルシウムにより飽和させ、その後に室温に冷却することにより行なうのが最適である。ゲルを形成するためには、場合によっては更に室温で、20h超に亘って攪拌する必要がある。ゲルの状態になると、溶液の攪拌時に抵抗の上昇が検出され、流動性も低下する。但し、十分な力を加えると攪拌可能であり、且つそうした力によって分裂しないという意味では、依然として流動性を保持している。
【0076】
アトルバスタチンヘミカルシウムXII型を特徴付ける粉末X線回折パターンは、2.7、8.0、8.4、11.8、18.2、19.0、19.8、20.7 ±0.2度2θにピークを有するとともに、非晶質材料の存在を示すハローを有する。アトルバスタチンヘミカルシウムXII型の代表的なX線粉末回折パターンを図10に示す。
【0077】
XII型は、以下の化合物から直接調製することができる。
【0078】
【化3】
【0079】
本化合物の体系的な化学名は、[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタン酸エステルであるが、以下の記載ではピロールアセトニドエステル(pyrrole acetonide ester)又はPAEという。XII型を調製するには、まずPAEを、セトニドとtert−ブチルエステル基とに開裂する条件下に供する。この条件としては希塩酸を用いることが好ましく、約1.5%の希塩酸を用いることがより好ましい。続いて、アトルバスタチン(遊離酸でもラクトン形態でもよく、これらの混合物でもよい)の溶液を、水酸化カルシウム(PAEに対して、好ましくは僅かに過剰な量、より好ましくは約1.5当量)で処理する。加えた水酸化物塩に由来する溶解カルシウムにアトルバスタチンを会合させた後、過剰な水酸化カルシウムがあれば濾過によって除去する。本方法の重要な特徴の一つは、ここからの濾液の処理である。若干の昇温下(好ましくは約65℃)で、水を反応混合物にゆっくりと加え、アトルバスタチンヘミカルシウムを沈殿させる。この時点で、溶液が再び清明となるまで昇温する。その後、混合物を放冷することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムの沈殿が生じる。沈殿を単離すればアトルバスタチンヘミカルシウムXII型が得られる。
【0080】
また、本発明は、既知の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを調製するための、新規な方法を提供する。
【0081】
I型は、任意の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを、室温から100℃で、数時間から約25時間、好ましくは約16時間に亘って、水で処理することによって得ることができる。出発原料としては、アトルバスタチンヘミカルシウムのV型、VII型、VIII型、IX型及びX型が好ましい。
【0082】
また、I型は、アトルバスタチンヘミカルシウムのエタノール(好ましくは無水エタノール)中又は水中懸濁液を、室温から溶媒の還流温度の範囲において、数分間、好ましくは1から3分間に亘って超音波処理することにより、調製することができる。出発物質としては、アトルバスタチンヘミカルシウムVII型が好ましいが、他の形態も同様に使用することができる。
【0083】
II型は、[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステル(PAE)から、実施例31に従って直接調製することができる。
【0084】
アトルバスタチンヘミカルシウムIV型は、I型又はV型を1−ブタノール中に、I型又はV型からIV型への変換が完了するのに十分な時間に亘って懸濁した後、IV型を混合物から単離することにより調製することができる。この変換に必要な時間は、温度や他の条件によってことなるが、室温で通常約24〜72時間である。
【0085】
また、IV型は、V型をEtOH/H2O中に、50℃で、V型からIV型への変換を生じさせるのに十分な時間に亘って懸濁させ、その後、懸濁液からIV型を単離することによって調製することもできる。EtOH/H2O混合物は約15%のH2Oを含有することが好ましい。
【0086】
また、IV型は、アトルバスタチンヘミカルシウムV型をメタノール中に、V型からIV型への変換を生じさせるのに十分な時間に亘って懸濁させることによっても、得ることができる。変換速度は温度による影響を受けるが、通常の実験室の条件であれば約1から約25時間の範囲から選択される。変換には室温で約16時間が必要である。変換は昇温下で行なってもよく、最高で溶媒の還流温度で行なうことができる。
【0087】
V型を調製するには、先に説明した方法により、PAEからアトルバスタチンヘミカルシウムXII型を調製すればよい。XII型を約65℃で約24時間に亘って乾燥することにより、V型を調製することができる。こうして得られたアトルバスタチンヘミカルシウムV型は高純度であるが、約10%の水と約90%のエタノールとの混合液に懸濁させた上で回収することにより、更に精製することも可能である。
【0088】
非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムは、他の任意の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを、室温から還流温度の範囲で、数時間から25時間の範囲、好ましくは約16時間に亘って、アセトンで処理することにより調製される。出発物質としてはV型が好ましい。
【0089】
また、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムは、任意の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムをアセトニトリル中で、室温からアセトニトリルの還流温度までの範囲の任意の温度で、超音波処理することにより調製できる。超音波処理を数分間、好ましくは1から3分に亘って行なえば、出発物質を非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムへと変換することが可能である。アトルバスタチンヘミカルシウムの出発形態としては、VII型及びI型が好ましい。
【0090】
また、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムは、任意の結晶形のアトルバスタチンヘミカルシウムをボールミル粉砕することによっても、調製することができる。
【0091】
本発明の更なる態様は、新規な形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを含有する、医薬組成物及び調剤形態である。
【0092】
本発明の組成物としては、新規なVI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びXII型のアトルバスタチンヘミカルシウムを含んでなる、粉末、顆粒、凝集体、及び他の固体組成物が挙げられる。更に、本発明で意図されるVI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びXII型の固体組成物は、更に、希釈剤を含んでいてもよい。希釈剤としては、セルロース系材料、例えば粉末セルロース、微結晶性セルロース、超微粒セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、及び他の置換又は無置換のセルロース;デンプン;アルファ化デンプン;無機希釈剤、例えば炭酸カルシウム及び二リン酸カルシウム、並びに、医薬業界で公知のその他の任意の希釈剤が挙げられる。更に他の適切な希釈剤としては、蝋、糖及び糖アルコール、例えばマンニトール及びソルビトール、アクリレート系ポリマー及びコポリマー、並びにペクチン、デキストリン及びゼラチンが挙げられる。
【0093】
本発明の意図する範囲に含まれる更なる賦形剤としては、結着剤、例えばアカシアゴム、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、グルコース、及び、湿式及び乾式造粒法や直接圧縮成形錠剤化法において用いられる他の結着剤が挙げられる。VI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びXII型のアトルバスタチンヘミカルシウムの固体組成物中に存在していてもよい更なる賦形剤としては、崩壊剤、例えばデンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。加えて、賦形剤としては、錠剤化用滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム及びカルシウム、並びにステアリルフマル酸ナトリウム;香味料;甘味料;保存料;医薬的に許容し得る染料及び流動促進剤、例えば二酸化ケイ素が挙げられる。
【0094】
調剤としては、経口、口腔内、直腸内、非経口(例えば皮下、筋肉内、及び静脈内)、吸入及び眼内投与に適した調剤が挙げられる。所与の場合において最も好ましい経路は、治療対象となる症状の性質や重症度によって異なるが、本発明において最も好ましい経路は経口である。調剤は便宜上、単位調剤形態として提供してもよく、また、製薬の分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
【0095】
調剤形態としては、固体調剤形態、例えば錠剤、粉末、カプセル、座薬、サシェ(sachets)、トローチ及びドロップ、並びに液体懸濁液及びエリキシル剤が挙げられる。本記載は限定することを意図するものではないが、本発明は、固体形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを識別し得る特性が失われた、アトルバスタチンヘミカルシウムの真溶液をも含むものではない。しかしながら、こうした溶液の調製に新規な形態を使用することは、本発明の意図する範囲内であると解される(例えば、アトルバスタチンに加えて溶媒和物を、溶媒和物が特定の比率となるように、前記溶液に導入する目的等)。
【0096】
カプセル調剤は、言うまでもなく、固体組成物をカプセル内に包有するものである。カプセルの材料としては、ゼラチンや、他の従来のカプセル化材料が挙げられる。錠剤及び粉末は被覆されていてもよい。また、錠剤及び粉末は腸溶性被膜を有していてもよい。腸溶性被膜を有する粉末形態の場合、その被膜としては、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ポリビニルアルコール、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンとマレイン酸とのコポリマー、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとのコポリマー、及び同様の材料を含むものが挙げられる。更に所望により、適切な可塑剤及び/又は増量剤を用いてもよい。被覆錠剤は、錠剤の表面に被膜を有するものでもよく、腸溶性被膜を有する粉末又は顆粒を含んでなる錠剤であってもよい。
【0097】
本発明の医薬組成物の好ましい単位調剤は、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムVI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びXII型、又は、これら相互間の混合物又は他の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムとの混合物を、通常は0.5から100mg含有する。より一般的には、単位調剤におけるアトルバスタチンヘミカルシウム形態の合算重量は、2.5mgから80mgである。
【0098】
以上、本発明の様々な態様について説明してきたが、以下の記載では実施例を提供して、本発明の具体的な実施形態について説明する。これらは如何なる意味でも限定的なものではない。
【実施例】
【0099】
一般的事項
含水量が0.2%未満の無水エタノールをBiolab(登録商標)から購入した。他の試薬は試薬グレードであり、そのままの状態で使用した。
【0100】
ボールミル粉砕は、250mlのステンレス鋼粉砕チャンバーと、粉砕メディアである10mm径のステンレス鋼ボール27個とを備えた、Retsch 遠心ボールミルS-100を用いて行なった。
【0101】
(アトルバスタチンヘミカルシウムVI型の調製)
【0102】
実施例1
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)をアセトン(9ml)に室温で溶解させ、2.5時間に亘って攪拌した。続いて、水(8.5ml)を加えて沈殿を生じさせた後、混合物を更に2.5時間に亘って攪拌した。続いて、白色固体を濾過し、50℃で5時間乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVI型を得た(0.88g、88%)。
【0103】
(アトルバスタチンヘミカルシウムVII型の調製)
【0104】
実施例2
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(1.00g)を無水EtOH(400ml)中、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって採取し、65℃で24h乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVII型を得た(40mg、40%)。
【0105】
実施例3
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(75mg)を無水EtOH(30ml)中、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって採取し、65℃で24hに亘り乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVII型を得た(0.60g、80%)。
【0106】
(アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の調製)
【0107】
実施例4
マグネチック・スターラーを備えたフラスコ内に、1.0g(1.59×10-3モル)の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステルを、90%酢酸水溶液(10ml)中の懸濁液として用意した。この反応混合物を50℃で3時間加熱した後、反応の完了をHPLCで確認するまで、室温で攪拌した。溶媒を蒸散させ、痕跡量の酢酸をトルエン(3×100ml)との共沸蒸留で除去することにより、若干のトルエンを含むオイルを得た。このオイルをEtOH(10ml)及び水(2ml)に溶解させた。続いて、5.5倍当量(8.4×10-3モル、622mg)のCa(OH)2及び臭化テトラブチルアンモニウム(5%、0.05g)を加えた。この反応混合物を50℃で5時間加熱したところで、反応の完了をHPLCで確認した。その後、真空下で熱濾過を行ない、過剰のCa(OH)2を除去した。続いて、反応混合物を室温まで冷却した。この溶液に対して、水(50ml)を攪拌下で加えた。白色沈殿をRTで一晩攪拌し、真空下で濾過し、65℃で18時間乾燥することにより、145mg(16%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩VIII型を得た。
【0108】
実施例5
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、無水EtOH(80ml)中、還流下で24hrsかけてスラリー化した。その後、白色固体を濾過し、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型を得た(0.85g、85%)。
【0109】
実施例6
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、沸騰状態の無水EtOH(40ml)に注ぎ入れた。化合物は、最初は溶解し始めたが、その後再び沈殿した。この混合物に、MeOH(20ml)を加えた。その後、白色固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(188mg、19%)を得た。
【0110】
実施例7
1.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を1−ブタノール(4ml)及びH2O(16ml)中に含む懸濁液を、還流温度に1hr加熱した。その後、混合物を室温に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で16hrsに亘って乾燥することにより、0.9g(91%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩VIII型を得た。
【0111】
実施例8
5.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、沸騰状態の96%エタノール溶液(150ml)に加えた。混合物を2.5hrsに亘って還流した。その後、1.5hrsかけて20℃に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。固体を濾過し、96%エタノール(2×25ml)で洗浄し、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、4.4g(88%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩VIII型を得た。この方法の間に化学的浄化が生じるので、この方法は精製法としても優れている。
【0112】
実施例9
Des−フルオロアトルバスタチンのレベルが0.12%のアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型5.0gを、沸騰状態の96%エタノール溶液(150ml)に加えた。混合物を2.5hrsに亘って還流させた。その後、1.5hrsかけて20℃に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。固体を濾過し、96%エタノールで洗浄し(2×25ml)、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、Des−フルオロアトルバスタチンのレベルが0.06%の、4.4g(88%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩を得た。この手法によって得られたアトルバスタチンはVIII型であった。
【0113】
実施例10
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(5g)を、無水EtOH(35ml)中で2.5hに亘って還流させた。その後、反応混合物を室温に冷却し、更に16hに亘って攪拌した。続いて、無水エタノール(15ml)を加え、懸濁液を濾過し、収集した固体を65℃で20hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(4.7g、94%)を得た。
【0114】
(アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の調製)
【0115】
実施例11
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、1−ブタノール(20ml)中で30分間に亘って還流しながらスラリー化した。その後、混合物を室温に冷却した。その後、白色固体を濾過し、真空下、50℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(0.94g、94%)を得た。KF=0.9。
【0116】
実施例12
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、1−ブタノール(20ml)中で30分間に亘って還流させてスラリー化した。その後、n−ヘキサン(40ml)を加えて沈殿を生じさせ、反応混合物を室温で2時間に亘って攪拌した。続いて、白色固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンIX型(0.96g,96%)を得た。
【0117】
実施例13
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、1−ブタノール(20ml)中で30分間に亘って還流しながらスラリー化した。その後、IPA(40ml)を加えて更に沈殿を生じさせ、反応混合物を室温で2時間に亘って攪拌した。続いて、白色固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(0.94g、94%)を得た。カール・フィッシャー分析によれば、これは0.9%の水を含有していた。
【0118】
実施例14
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(800mg)を、無水EtOH(320ml)中、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24時間に亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(630mg、79%)を得た。
【0119】
実施例15
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(2.00g)及び1−ブタノール(40ml)の混合物を、118℃で30分に亘って還流した。その後、混合物を室温に冷却し、更に3時間に亘って攪拌した。続いて、固体を濾過によって収集し、65℃で24時間に亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(1.83g、92%)を得た。
【0120】
実施例16
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型を相対湿度100%、室温下で9日間に亘って保存した。その結果得られた固体は、粉末X線回折分析によって、IX型であると同定された。
【0121】
実施例17
1gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、1−BuOH(10ml)及びH2O(10ml)中、加熱して1hに亘って還流させた。その後、混合物を室温に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。濾過後、65℃で24hrsに亘って乾燥することにより、0.79g(79%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IX型を得た。
【0122】
実施例18
1gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、1−BuOH(10ml)及びEtOH(10ml)中、加熱して1hに亘って還流させた。その後、混合物を室温に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。濾過後、65℃で24hrsに亘って乾燥することにより、0.98g(98%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IX型を得た。
【0123】
(アトルバスタチンヘミカルシウムX型の調製)
【0124】
実施例19
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(10.00g)を、EtOH(135ml)及び水(24ml)の混合物に溶解させ、加熱して1hに亘って還流させた。その後、混合物を室温に冷却し、更に16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムX型(8.26g、83%)を得た。
【0125】
実施例20
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(1.00g)を、EtOH(9ml)及び水(1.6ml)の混合液中で、1hに亘って還流させた。混合物を室温に冷却してから、更に3hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムX型(0.80g、80%)を得た。
【0126】
(アトルバスタチンヘミカルシウムXI型の調製)
【0127】
実施例21
1.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、メチルエチルケトン(「MEK」)(5ml)中、室温で24hrsに亘って攪拌した。その後、固体を濾過し、MEK(2ml)で洗浄し、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、0.5g(50%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩XI型を得た。
【0128】
実施例22
1.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型をイソプロピルアルコール(「IPA」)(7ml)中に含む懸濁液を、還流温度で1hr加熱した。その後、混合物を室温に冷却し、この温度で更に20hrsに亘って攪拌した。ゼラチン状の生成物が得られた。IPA(3ml)を加えた後、ゲルを濾過し、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、0.8g(80%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩XI型を得た。
【0129】
(アトルバスタチンヘミカルシウムXII型の調製)
【0130】
実施例23
蒸留装置とメカニカルスターラーとを備えた円筒型反応器内に、20g(30.6mモル)の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステル(=ピロールアセトニドエステル=PAE)を、250mlの無水エタノール及び50mlの1.5%希塩酸中の懸濁液として用意した。この反応混合物を40℃で9〜11hrsに亘って攪拌しながら、減圧下(500〜600mbar)、エタノール、アセトン及び水の混合物と連続蒸留を実施した。1時間おきに無水エタノールを補充した(35〜40ml)。9〜11時間後、PAEのレベルが0.1%未満に低下した(HPLCによる)。更なる処理を加えることなく、Ca(OH)2(1.5eq.、3.4g)を加えた。反応混合物を70℃で4〜5hrs加熱した。その後、過剰のCa(OH)2を濾過により除去した。この熱濾液(65℃)に、350mlの水を、3/4〜1時間かけて、65℃で(投薬ポンプを用いて)ゆっくりと加えた。水の添加中、アトルバスタチンヘミカルシウム塩が沈殿した。水の添加の後、反応混合物を還流温度(84℃)に加熱すると、清明な溶液が得られた。続いて、混合物を20℃に3hrsかけて冷却し、この温度で更に12〜16hrsに亘って攪拌した。その後、固体を濾過することにより、45.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩XII型結晶の湿ケーキを得た。
【0131】
(既知のアトルバスタチンヘミカルシウムI型の調製)
【0132】
実施例24
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(1.00g)を水(400ml)中で、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24時間に亘って攪拌することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(0.7g、70%)を得た。
【0133】
実施例25
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型(10.00g)の水(100ml)中混合物を2hに亘って還流した。混合物を室温に冷却し、更に1時間に亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(9.64g、96%)を得た。
【0134】
実施例26
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(800mg)を水(320ml)中、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って攪拌することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(350mg、44%)を得た。
【0135】
実施例27
アトルバスタチンヘミカルシウムX型(1.0g)を水(400ml)中で、室温で24hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(720mg、72%)を得た。
【0136】
実施例28
アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(750mg)を水(300ml)中、室温で24hに亘って攪拌した。固体を収集し、65℃で20hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンカルシウムI型(420mg、56%)を得た。
【0137】
実施例29
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型(1.00g)を無水EtOH(20ml)中、室温で攪拌した。その後、このスラリーを超音波装置で1.5minに亘って処理する(エネルギー=235kJ、Amp.=50%)ことにより、清明な溶液を得た。水(14ml)を添加すると、沈殿が生成した。このスラリーを超音波装置で、更に2minに亘って処理する(エネルギー=3.16kJ、Amp.=50%)ことにより、スラリーをゲル化させた。このゲルを65℃で20hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(0.50g、50%)を得た。
【0138】
実施例30
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型(1.00g)を、水(200ml)中、室温で攪拌した。その後、スラリーを超音波装置で2minに亘って処理する(エネルギー=3.0kJ、Amp.=50%)ことにより、スラリーをゲル化させた。このゲルを65℃で20hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(0.92g、92%)を得た。
【0139】
(既知のアトルバスタチンヘミカルシウムII型の調製)
【0140】
実施例31
蒸留装置及びメカニカルスターラーを備えた円筒型反応器内に、20g(30.6mモル)の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステル(=ピロールアセトニドエステル=PAE)を、135mlのメタノール及び7.6mlの10%希塩酸中の懸濁液として用意した。この反応混合物を35℃で3hrs加熱しながら、減圧下(820mbar)で、メタノール、アセトン及び水の混合物の連続蒸留を行なった。1/2時間おきにメタノールを補充した(35ml)。3hrs後、PAEのレベルは0.1%未満に低下した(HPLCによる)。更なる処理を行なうことなく、Ca(OH)2(1.5eq.、3.4g)、水(5ml)及びメタノール(45ml)を加えた。反応混合物を70℃に2hrs加熱した。その後、過剰のCa(OH)2を濾過によって収集し、Ca(OH)2ケーキをメタノール(2×10ml)で洗浄した。この濾液に、300mlの水を(投薬ポンプを用いて)3/4時間かけて65℃でゆっくりと加えた。水の添加中に、アトルバスタチンヘミカルシウム塩の沈殿が生じた。水の添加後に、反応混合物を還流温度(78℃)に1/2時間に亘って加熱した。その後、混合物を3hrsかけて20℃に冷却し、この温度で更に20hrsに亘って攪拌した。続いて、固体を濾過し、65℃で48hrsに亘って乾燥することにより、16.9g(96%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩II型結晶を得た。KF=3.2%。
【0141】
(既知のアトルバスタチンヘミカルシウムIV型の調製)
【0142】
実施例32
アトルバスタチンヘミカルシウム塩I型(1.0g)を9mlの1−ブタノール中、室温で24時間に亘って攪拌した。その後、白色固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で16時間に亘って攪拌することにとり、0.83g(83%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IV型を得た。
【0143】
実施例33
アトルバスタチンヘミカルシウム塩V型(1.0g)を、20mlの1−ブタノール中、室温で72時間に亘って攪拌した。その後、白色固体を濾過し、オーブン内で65℃で20時間に亘って乾燥することにより、0.82g(82%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IV型を得た。
【0144】
実施例34
アトルバスタチンヘミカルシウム塩V型(2.0g)を、EtOH(18ml)及び水(3.2ml)の混合液中、50℃で1時間に亘って攪拌した。その後、沈殿物を濾過し、65℃で20時間に亘って乾燥することにより、1.60g(80%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IV型を得た。
【0145】
実施例35
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(2.00g)及びメタノール(20ml)の混合物を1時間に亘って還流した。混合物を室温に冷却し、更に16時間に亘って乾燥した。固体を濾過によって収集し、65℃で24に亘って乾燥することにとり、アトルバスタチンカルシウムIV型(1.37g、56%)を得た。
【0146】
実施例36
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(1.00g)のメタノール(10ml)中混合物を、室温で20時間に亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24時間に亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIV型(0.25g、25%)を得た。
【0147】
(アトルバスタチンヘミカルシウムV型の調製)
【0148】
実施例37
蒸留装置及びメカニカルスターラーを備えた円筒型反応器に、20g(30.6mモル)の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステル(ピロールアセトニドエステル=PAE)を、250mlの無水エタノール及び50mlの1.5%希塩酸中の懸濁液として用意した。この反応混合物を40℃に9〜11hrs加熱しながら、減圧下(500〜600mbar)で、エタノール、アセトン及び水の混合物との連続蒸留を行なった。1時間おきに無水エタノールを補充した(35〜40mL)。9〜11時間後、PAEのレベルは0.1%未満に低下していた(HPLCによる)。更に処理を加えることなく、Ca(OH)2(1.5eq.、3.4g)を加えた。反応混合物を70℃に4〜5hrs加熱した。その後、過剰のCa(OH)2を濾過によって収集した。この熱濾液(65℃)に、350mlの水を(投薬ポンプを用いて)3/4〜1時間かけて65℃でゆっくりと加えた。水の添加中にアトルバスタチンヘミカルシウム塩の沈殿が生じた。水の添加後に反応混合物を還流温度(84℃)に加熱したところ、清明な溶液が得られた。続いて、混合物を3hrsで20℃に冷却し、その温度で更に20hrs攪拌した。その後、固体を濾過することにより、45.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩XII型結晶の湿ケーキが得られた。固体を65℃で24hrs乾燥することにより、16.7g(95%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型結晶が得られた。KF=2.8%〜6.6%。
【0149】
(アトルバスタチンヘミカルシウムV型を精製するための方法)
【0150】
実施例38
5.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、沸騰状態の90%エタノール水溶液(150ml)に加えた。混合物を2.5hrsに亘って還流した。その後、1.5hrsで20℃に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。続いて固体を濾過し、90%エタノールで洗浄し(2×25ml)、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、3.4g(68%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を得た。
【0151】
(既知の非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムの調製)
【0152】
実施例39
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(2.00g)を密閉フラスコ内で、アセトン(14ml)中、室温で16h攪拌した。2時間後、混合物は清明になった。室温で攪拌を続けたところ、固体の沈殿が生じた。アセトンをデカントし、固体をスパチュラで収集して乾燥オーブンに移送し、65℃で20h乾燥させることにより、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウム(1.85g、93%)を得た。
【0153】
実施例40
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型(1.00g)をアセトニトリル(20ml)中、室温で攪拌した。その後、スラリーを2minに亘って超音波処理した(エネルギー=2.5kJ、Amp.=50%)。アセトニトリルのデカンテーション後、固体を65℃で20h乾燥させることにより、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウム(0.71g、71%)を得た。
【0154】
実施例41
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1.00g)をアセトニトリル(20ml)中、室温で攪拌した。その後、スラリーを超音波装置で2min処理した(エネルギー=2.5kJ、Amp.=50%)。アセトニトリルをデカントした後、固体を65℃で20h乾燥することにより、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウム(0.71g、71%)を得た。
【0155】
実施例42
アトルバスタチンヘミカルシウム(108g)と、10mm径のステンレス鋼粉砕ボール27個とを、ボールミルの粉砕チャンバーに入れた。チャンバーを秤量し、その重さに応じてミルのバランスを調整した。ミルのリバーシングシステムを用いて、ミルを500rpmで0.5hr動作させた。チャンバー壁に付着した材料を剥がしてバルクに加えた。ミルを再び4hr動作させた。その際、付着物の除去を15minおきに繰りかえした。最後に、300Φmのスクリーンで篩い分けすることにより、ボールから材料を分離した。得られた材料をPXRDで分析したところ、非晶質であることが分かった。この手法を、アトルバスタチンI型、V型及びVIII型についても行なったところ、何れの場合にも、非晶質のアトルバスタチンヘミカルシウムが得られた。
【0156】
実施例43
【0157】
アトルバスタチンヘミカルシウム湿潤粗製物
処理水(155kg)、32%HCl(9kg)、無水エタノール(650kg)及びピロールアセトニドエステル(PAE)(65kg)を反応器(2500L)に導入した。反応混合物を約40℃に加温し、79rpmで9hr攪拌した。無水エタノール(260kg)の添加後、混合物を約15℃に冷却し、無水エタノール(260kg)の余分量を除去するために3hr蒸留した。蒸留の際にジャケットを45℃に加熱したところ、反応物は19℃に達した。また、約61mmHgに真空化した。反応混合物を再度、約40℃に加熱し、水酸化カルシウム(11.25kg)を加え、この混合物を約70℃で5hr維持した。その後、塩を濾別し、反応生成物を無水エタノールで洗浄した(37.5kg)。
【0158】
約64℃の処理水を34minかけて加えた。その後、混合物を82℃に加熱し、この温度で15minに亘って維持した。混合物を22minかけて70℃に冷却した後、5hrかけて21℃に冷却した。3hrの攪拌後、混合物を4サイクルに亘って遠心分離し、サイクル毎に二度ずつ、処理水(18.1kg)で洗浄した。139.6kgの湿潤物質が得られた。
【0159】
結晶性湿潤アトルバスタチンヘミカルシウム
無水エタノール(1091.1kg)を反応器(2500L)に導入し、74℃に過熱した。上で得られた湿潤粗製アトルバスタチンヘミカルシウム(139.6kg)を加え、混合物を還流温度である約76℃に加熱した。混合物に種晶として、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型結晶(0.175g)を加え、混合物を還流条件に3hr維持したところ、沈殿が生じた。混合物を攪拌しながら3hrかけて22℃に冷却した後、混合物を4サイクルに亘って遠心分離した。各サイクル毎に96%のエタノールで洗浄した(28.9kg)。111.7kgの湿潤生成物が得られた。
【0160】
結晶性乾燥アトルバスタチンヘミカルシウム
上で調製した結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムを、二段階の工程によって乾燥した:約40℃の真空乾燥機内で3サイクルに亘って行ない、LOD<5%に達したら、約50℃の流動床乾燥機内で乾燥を継続した。乾燥物質を粉砕して微粒子化した。
【0161】
安定性試験
乾燥及び粉砕した結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムについて、可能性のある二種の不純物:アトルバスタチン−エポキシ−ジヒドロキシ(AED)及びエポキシジケトンの形成に対する安定性の試験を行なった。結果を以下の表4に示す。
【0162】
【表4】
表4
【0163】
AED及びアトルバスタチン−エポキシ−ジケトンは溶液中で相互に転換される。
【0164】
本発明について、特定の好ましい実施形態に言及しながら説明し、実施例を用いて例証してきたが、当業者であれば明らかなように、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨及び範囲を逸脱しない限りにおいて、上に説明及び例証した本発明に対して変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】図1(FIG.1)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVI型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図2】図2(FIG.2)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVII型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図3】図3(FIG.3)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図4】図4(FIG.4)は、シンクロトロンX線源を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図5】図5(FIG.5)は、アトルバスタチンVIII型の特徴的な固体13C NMRスペクトルである。
【図6】図6(FIG.6)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図7】図7(FIG.7)は、シンクロトロンX線源を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図8】図8(FIG.8)は、アトルバスタチンIX型の特徴的な固体13C NMRスペクトルである。
【図9】図9(FIG.9)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムX型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図10】図10(FIG.10)は、シンクロトロンX線源を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムX型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図11】図11(FIG.11)は、アトルバスタチンヘミカルシウムX型の特徴的な固体13C NMRスペクトルである。
【図12】図12(FIG.12)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムXI型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図13】図13(FIG.13)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムXII型の代表的な粉末X線回折パターンを重畳して示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウム(Atorvastatin hemi-calcium)の結晶多型体、アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形を調製するための新規な方法、及び、粒子サイズ分布の小さな結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムに関する。
【背景技術】
【0002】
アトルバスタチン(Atorvastatin)([R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸)(式(I)にラクトン形態で示す)及びそのカルシウム塩三水和物(式(II))は、本技術分野では周知であり、特に米国特許第4,681,893号及び第5,273,995号、並びに同時係属出願であるUSSN第60/166,153号(2000年11月17日)に記載されている。これらは何れも援用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
【化1】
【0004】
アトルバスタチンは、スタチン(statins)と呼ばれる薬物群の一員である。スタチン薬は現在のところ、心臓血管疾患の危険がある患者の血流中の低密度リポプロテイン(low density lipoprotein:LDL)粒子濃度を低減するのに利用可能な、最も治療効果のある薬である。血流中における高レベルのLDLは、冠動脈病変の形成との関連が指摘されている。冠動脈病変は血液の流れを妨げ、破裂して血栓症を促進する可能性がある。Goodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics 879 (9th ed. 1996)。心臓血管疾患の患者や、心臓血管疾患ではないが高コレステロール血症である患者では、血漿LDLレベルを低減することで、臨床的事象の危険性も低減されることが示されている。Scandinavian Simvastatin Survival Study Group, 1994;Lipid Research Clinics Program, 1984a, 1984b。
【0005】
スタチン薬の作用機序はある程度詳しく解明されている。これらは、S−ヒドロキシ−S−メチル−グルタリル−補酵素A還元酵素(「HMG−CoA還元酵素」)を競合的に阻害することにより、肝臓におけるコレステロールや他のステロール類の合成に干渉する。HMG−CoA還元酵素はHMGのメバロン酸塩への変換を触媒するが、これはコレステロール生合成の律速段階である。よって、本酵素の阻害によって肝臓のコレステロール濃度が低減する。超低密度リポプロテイン(VLDL)は、コレステロール及びトリグリセリドを肝臓から末梢細胞に運搬するための生物学的ビヒクルである。末梢細胞はVLDLを異化して脂肪酸を放出させる。脂肪酸は脂肪細胞に蓄積されたり、或いは筋肉で酸化されたりする。VLDLは中間密度リポプロテイン(intermediate density lipoprotein:IDL)に変換され、LDL受容体によって除去されるか、或いはLDLへと変換される。コレステロールの産生が減少するとLDL受容体数が増加し、それに伴ってIDLの代謝によるLDL粒子の産生も減少する。
【0006】
アトルバスタチンヘミカルシウム塩三水和物は、商品名LIPITOR(登録商標)としてPfizer, Inc.社から市販されている。アトルバスタチンを最初に一般に開示するとともに特許請求したのは、米国特許第4,681,893号である。式(II)に示すそのヘミカルシウム塩は、米国特許第5,273,995号に開示されている。第’995号特許には、ナトリウム塩をCaCl2で置換し、ブライン溶液から結晶化してヘミカルシウム塩を生成させ、更に酢酸エチル及びヘキサンの5:3混合液から再結晶化することが記載されている。
【0007】
本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムの新たな結晶形を、溶媒和の状態及び水和の状態の双方で提供するものである。異なる結晶形の生成(多型)は、一部の分子や分子複合体(molecular complexes)が有する特性の1つである。式(I)に示すアトルバスタチンや式(II)や塩複合体(salt complex)等の単一分子は、融点、X線回折パターン、赤外線吸収フィンガープリント、及びNMRスペクトル等の物理特性が異なる、種々の固体を生じる。多型体の物理特性の違いは、バルク固体中における、隣接する分子(複合体)の向きや分子間相互作用に起因するものである。従って、多型体は、同一の分子式で表わされるにもかかわらず、多型体ファミリーにおける他の形態と比較した場合に、有利な及び/又は不利な物理特性が異なる、区別される固体を示す。医薬多型体における最も重要な物理特性の1つは、水溶液に対するその溶解性、特に患者の胃液に対するその溶解性である。例えば、胃腸管からの吸収が緩やかである場合、薬剤としては、有害な環境内に蓄積することがないように、患者の胃や腸の内部の条件に対して不安定であり、緩やかに溶解するものが好ましい場合が多い。一方、薬剤の有効性とそのピーク血流レベルとの間に相関がある場合(これはスタチン薬に共通する特性である)、薬剤が胃腸系によって迅速に吸収されるのであれば、より速く溶解する形態の方が、より遅く溶解する形態と比べて、同程度の量であってもより優れた有効性を示す可能性が高い。
【0008】
アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形I型、II型、III型及びIV型は、Warner-Lambert社に譲渡された米国特許第5,959,156号及び第6,121,461号の主題であり、結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムV型は、共願に係るPCT出願番号第PCT/US00/31555号に開示されている。第’156号特許には、公知の非晶形のアトルバスタチンヘミカルシウムに比べて、I型がより好ましい濾過及び乾燥特性を有する旨の記載がある。I型は製造可能性の面で、非晶質材料が有する欠点の一部を解消するものではあるが、こうした特性のより一層の改善に加えて、流動性、気体不透過性及び溶解性等の他の特性の改善も、依然として求められている。更に、薬剤の新たな結晶多型体の発見は、製剤科学者が目的とする放出プロファイルや他の好ましい特性を有する薬剤の医薬調剤形態を設計する上で、使用可能な材料の範囲を拡大することになる。
【0009】
あらゆる合成化合物と同様、アトルバスタチンヘミカルシウム塩も、様々な出所に起因する外来性の化合物や不純物を含有し得る。、未反応の出発原料、反応の副生成物、副反応の生成物、又は分解生成物が挙げられる。アトルバスタチンヘミカルシウム塩や、あらゆる活性医薬成分(active pharmaceutical ingredient:API)において、不純物は好ましくないばかりか、極端な場合には、APIを含有する調剤形態による治療を受ける患者にとって有害な場合さえある。
【0010】
本技術分野では、API中の不純物がAPI自体の分解によって生じ得ること、これが保存時における純粋なAPIの安定性と関連していることが知られている。アトルバスタチンヘミカルシウムに特有の分解生成物の1つが、アトルバスタチンカルシウムエポキシジヒドロキシ(Atorvastatin calcium epoxy dihydroxy:AED)という、下記式の物質である。
【0011】
【化2】
【0012】
AEDを特徴付けるデータとしては、米国特許出願番号第11/236,647号及び国際特許出願番号第PCT/US05/35159号に開示のように、:水素の化学シフト値を約1.20、1.21、2.37、4.310、6.032、7.00、7.06〜7.29、7.30、7.39、7.41、7.56ppmに有する1H NMRスペクトル;炭素の化学シフト値を約16.97、34.66、103.49、106.66、114.72、120.59、125.79、128.21、128.55、128.74、129.06、129.57、132.38、132.51、135.15、161.61、163.23ppmに有する13C NMRスペクトル;HPLC分析における約32分の保持時間及び約1.88の相対保持時間で、m/z=約472(MNa)+、454(MNa−H2O)+、432(MH−H2O)+、344(FPhCOC(Ph)=C−CONHPh)+のピークを有するMS(ESI+)スペクトル;から選択されるデータが挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は新たなアトルバスタチンヘミカルシウムの溶媒和物及び水和物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、VI型と命名された、アトルバスタチンヘミカルシウムの新規な結晶形と、その新規な調製法を提供するものである。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、VIII型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、VIII型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形であって、不純物AEDの形成に対して安定なものを提供する。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、IX型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、X型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、XI型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、XII型と命名された、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形と、その新規な調製法を提供する。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムI型の新規な調製法を提供する。
【0022】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムII型の新規な調製法を提供する。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムIV型の新規な調製法を提供する。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムV型の新規な調製法を提供する。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムの新規な調製法を提供する。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウムVI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びそれらの混合物を含んでなる、組成物及び調剤形態を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形の一部は、溶媒和の状態及び水和の状態で存在する。水和物の分析はカール・フィッシャー(Karl-Fisher)法及び熱重量分析で行なった。
【0028】
従来のCuKα放射線を用いた粉末X線回折(powder X-ray diffraction:「PXRD」)分析は、固体検出器を備えたSCINTAG粉末X線回折計モデルX'TRAを用いて、本技術分野で公知の手法により行なった。λ=1.5418Åの銅放射線を用いた。測定範囲:2〜40°2θ。サンプルの導入には、円形のゼロバックグラウンド・クオーツプレートを底部に有する、円形の標準的なアルミニウムサンプルホルダーを用いた。粉末化サンプルは穏やかに粉砕した後、ガラスプレートで圧密することにより、サンプルホルダーの円形凹部に充填した。
【0029】
シンクロトロンX線源を用いたPXRD分析は、Brookhaven National LaboratoryのNational Synchroton Light Source(diffractometer station X3B1)で行なった。サンプルは薄壁ガラスキャピラリー内に軽く充填した。放射X線は凡そ1.15Åであった。入射光の波長は従来のPXRD分析で最も一般に使用される波長に対応しているので、シンクロトロン源から得られた回折パターンにおけるX線ピーク位置は面間隔d(d-spacings)で表わされる。これは、パターンの生成に使用されるX放射線の波長の変化によらず一定である。走査幅は1から20°2θである。スペクトルの分解能は、半値全幅が0.01から0.03度の範囲内である。良分解ピークの位置の精度は0.003から0.01度の範囲内である。
【0030】
CP/MAS 13C NMR測定は125.76MHzで、Bruker DMX-500デジタルFT NMRスペクトロメータを用いて行なった。本スペクトロメータにはBL-4 CP/MASプローブヘッド及び固体用高分解能/高性能1H前置増幅器が備えられ:スピン速度5.0kHz、パルスシーケンスSELTICS、サンプルホルダー:ジルコニアローター4mm径であった。
【0031】
アトルバスタチンヘミカルシウムVI型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図1)は、3.5、5.1、7.7、8.2、8.7、10.0、12.5、13.8、16.2、17.2、17.9 18.3、19.5、20.4、20.9、21.7、22.4、23.2、24.3、25.5±0.2度2θにピークを有する。最も特徴的なピークは19.5±0.2度2θに観察される。VI型のPXRDパターンは上述のSCINTAG装置法と同様のPhylips 回折計を用いて取得された。
【0032】
アトルバスタチンヘミカルシウムVI型は、他の任意の形態(好ましくはI型)のアトルバスタチンヘミカルシウムをアセトンに溶解させ、続いて貧溶媒(好ましくは水)を加えてVI型を沈殿させることによって、得ることができる。
【0033】
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図2)は、2本のブロードなピークを、一方は18.5〜21.8の範囲に、他方は21.8〜25.0°2θの範囲に有するとともに、更に別のブロードなピークを、4.7、7.8、9.3、12.0、17.1、18.2±0.2°2θに有する。VII型サンプルは最大で12%の水を含有していてもよい。
【0034】
VII型は、既知の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムから、7.8及び9.3±0.2°2θに存在するブロードなピークによって、容易に識別することができる。例えば、米国特許第5,969,156号記載の情報によれば、I型は9.2、9.5、10.3、10.6、11.0及び12.2°2θにピークを有する。この領域において、II型は2本のシャープなピークを8.5及び9.0°2θに有し、IV型は1本の強いピークを8.0°2θに有する。15〜25°2θの領域に存在する他のブロードなピークによって、VII型は他の全ての形態から識別できる。I型、III型及びIV型は、何れもこの領域にシャープなピークを有する。
【0035】
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型の調製は、例えば、アトルバスタチンカルシウムI型又はV型をエタノール(好ましくは無水エタノール)で、室温から還流温度で、約1hから約24h、好ましくは2.5〜16hに亘って処理することにより、行なうことができる。処理を還流EtOH中で行なえば、変換は約2.5hで完了する。処理を室温で行なう場合には、より長い時間が必要である。
【0036】
従来のCuKα放射線を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図3)は、4.8、5.2、5.9、7.0、8.0、9.3、9.6、10.4、11.9、16.3、17.1(ブロード)、17.9、18.6、19.2、20.0、20.8、21.1、21.6、22.4、22.8、23.9、24.7、25.6、26.5、29.0±0.2度2θにピークを有する。最も特徴的なピークは、6.9、9.3、9.6、16.3、17.1、19.2、20.0、21.6、22.4、23.9、24.7、25.6、及び26.5±0.2°2θに存在する。カール・フィッシャー法によれば、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型のサンプルは、最大7%の水を含有することが分かった。
【0037】
VIII型は、特徴的なシャープなピークが9.3及び9.6°2θに存在することによって、I〜IV型と容易に識別可能である。米国特許第5,969,156号に記載の情報によれば、I型は1本の中程度のピークを6.9に有し、シャープなピークを9.2、9.5、10.3、10.6、11.0及び12.2±0.2°2θに有する。IV型は2本のピークを8.0及び9.7°2θに有すると言われている。II型はこの領域内に、2本のシャープなピークを8.5及び9.0°2θに有すると言われている。米国特許第6,121,461号に記載の情報によれば、III型はこの領域内に、1本の強いシャープなピークを8.7°2θに有する。この特徴は、VIII型のPXRDパターンには見受けられない。更に、VIII型のPXRDパターンには、1本のシャープな、中程度の強度のピークが7.0に存在し、これはこの領域内の他のピークと容易に識別し得る。VIII型のPXRDパターンをI〜IV型のパターンと比較すると、VIII型のパターンが有するこの特徴は、独特のものである。
【0038】
VIII型のパターンにおける他のピークのうち、この形態に特有のものとしては、19.2及び20.0°2θに存在する2本の強いシャープなピークが挙げられる。上記’156特許記載の情報によれば、I型はこの領域内で、シャープなピークを21.6、22.7、23.3及び23.7°2θに有する。IV型はピークを18.4及び19.6°2θに有すると言われているのに対し、II型は2本の主ピークを17.0及び20.5に有し、III型はピークを17.7、18.2、18.9、20.0及び20.3±0.2°2θに有する。
【0039】
VIII型についてシンクロトロンX線粉末回折分析を行ない、その結晶系及び単位格子寸法を決定した。VIII型は単斜晶単位格子を有し、その格子寸法は:a=18.55〜18.7Å、b=5.52〜5.53Å、c=31.0〜31.2Å、a軸とc軸との角βは97.5〜99.5°であった。単位格子パラメーターはLe Bail法を用いて決定した。
【0040】
シンクロトロンX線源を用いて得られた図4のディフラクトグラムは、シャープな良分解性のピークを多数有している。特に顕著なピークの一部について、その面間隔dを表1に示すとともに、1.5418ÅのCuKα放射線を用いた、ピークが有する2θ単位における位置を合わせて示す。
【0041】
【表1】
【0042】
互いに独立のサンプル及び測定値の自然変動のために、ピーク位置はその報告された位置から逸脱する可能性があり、その差は最大でd値0.5%になる。材料に微粒子化等のサイズ低減を施した場合には、より大きなシフトが生じる場合もある。
【0043】
スペクトルアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の固体13C NMRを図5に示す。VIII型を特徴付ける固体13C核磁気共鳴化学シフト(単位ppm)は以下の通りである:17.8、20.0、24.8、25.2、26.1、40.3、40.8、41.5、43.4、44.1、46.1、70.8、73.3、114.1、116.0、119.5、120.1、121.8、122.8、126.6、128.8、129.2、134.2 、135.1、137.0、138.3、139.8、159.8、166.4、178.8、186.5。VIII型を特徴付ける固体13C核磁気共鳴では、最低ppm共鳴と他の共鳴との間に、以下の化学シフトの差が存在する:2.2、7.0、7.4、8.3、22.5、23.0、23.7、25.6、26.3、28.3、53.0、55.5、96.3、98.2、101.7、102.3、104.0、105.0、108.8、111.0、111.4、116.4、117.3、119.2、120.5、122.0、142.0、148.6、161.0及び168.7。VIII型について報告された化学シフトは、4つのVIII型のサンプルから得られたスペクトルを平均したものである。パターンの特徴部分は、24〜26ppm(脂肪族域)、119〜140ppm(芳香族域)及び他の領域に見受けられる。シフト値の精度は±0.1ppm以内であったが、178.8ppmに存在するカルボニルピークの変動は±0.4ppmであった。
【0044】
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型は、最大で約3重量%のエタノールを含有するエタノール溶媒和物として存在していてもよい。
【0045】
VIII型の生成には、以下の方法が適していることが見出された。但し、この形態は、実験的開発や、これらの手法に一般的な修正を加えることによっても得ることができる。
【0046】
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型は、アトルバスタチンヘミカルシウムをエタノールと水との混合物中、昇温下(好ましくは約78〜80℃)でスラリー化することによって得ることができる。スラリー化手順は、アトルバスタチンヘミカルシウムの調製手順の最終工程に組込んでもよい。この工程は通常、アトルバスタチン遊離酸又はラクトンをカルシウムイオン源で処理することにより、ヘミカルシウム塩を生成する工程である。このような組み合わせ法の場合、エタノール及び水を含んでなる溶媒系内に、塩が生成する。便宜上は、水の添加によってアトルバスタチンヘミカルシウム塩の沈殿が生じた後、この塩を反応混合物中で、数時間、好ましくは約6から約16時間に亘ってスラリー化することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型を取得してもよい。
【0047】
また、VIII型は、V型から出発して、V型をEtOH:H2Oの混合物(好ましくは約5:1の比率)によって、還流しない程度の昇温下(好ましくは78〜80℃)で処理することによっても調製できる。特に好ましいEtOH:H2O混合物は、エタノール中に約4体積%の水を含むものである。加熱の際に、アトルバスタチンV型は徐々に溶解し、種晶の有無によらず、78〜80℃の時点で濁りが観察される。この時点で懸濁液を室温まで急冷する。
【0048】
VIII型は、アトルバスタチンヘミカルシウムをEtOH(好ましくは無水EtOH)中、昇温下(好ましくはEtOHの沸騰下)で処理することによって得ることができる。これらの条件下で、アトルバスタチンは溶解し、再沈殿する。還流時にMeOHを加えてもよい。MeOHの添加によって、収率には悪影響が生じるかもしれないが、生成物の化学純度は向上する場合がある。この方法でVIII型を調製するための出発原料としては、アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形、好ましくはI型及びV型、並びにこれらの混合物、又は非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムが挙げられる。
【0049】
EtOH又はその水との混合物の量は、約10から約100ml・g-1の範囲が好ましく、約20から約80ml・g-1の範囲がより好ましい。
【0050】
本発明者等は、0.1%を超えるdes−フルオロアトルバスタチンヘミカルシウム、及び/又は、1%を超えるトランスアトルバスタチンヘミカルシウムを含有するアトルバスタチンヘミカルシウムを、約96%のエタノールと約4%の水との溶液中に、昇温下(好ましくは還流温度下)で懸濁させることによって、精製できることを見出した。通常は、回収されたアトルバスタチンヘミカルシウムにおける、des−フルオロアトルバスタチンヘミカルシウムの混入量は0.07%未満、トランスアトルバスタチンヘミカルシウムの混入量は0.6%未満である。
【0051】
また、VIII型は、アトルバスタチンヘミカルシウムを、特定の1−ブタノール/水及びエタノール/水の混合物中で、アトルバスタチンヘミカルシウムからVIII型への変換が生じるのに十分な時間に亘って懸濁することによっても、調製することができる。1−ブタノール/水混合物は、昇温下(好ましくは還流温度下)において、約20体積%の1−ブタノールを含んでいる必要がある。
【0052】
アトルバスタチンカルシウムエポキシジヒドロキシ(AED)の形成に対して安定であるアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型が提供される。
【0053】
本明細書において「安定(stable)」という語は、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型に関して言えば、最低約0.01%(w/w)の不純物AEDの形成に関連している。VIII型の安定性は、VIII型を、約40℃の温度及び約75%の相対湿度で約1ヶ月以上、又は、約25℃の温度及び約60%の相対湿度で約6ヶ月以上、保持することによって測定される。安定なアトルバスタチンヘミカルシウムVIII型とは、上に詳述した条件下に保持した場合に、約0.01%(w/w)以下のAED不純物が形成されるVIII型である。
【0054】
アトルバスタチンヘミカルシウムIX型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図5)は、4.7、5.2、5.7、7.0、7.9、9.4、10.2、12.0、17.0、17.4、18.2、19.1、19.9、21.4、22.5、23.5、24.8(ブロード)、26.1、28.7、30.0±0.2度2θにピークを有する。IX型の最も特徴的なピークは、6.9、17.0、17.4、18.2、18.6、19.1、19.9、21.4、22.5及び23.5±0.2度2θに存在する。IX型は最大7%の水を含有していてもよい。また、IX型は最大約5%のブタノールを含有する、ブタノール溶媒和物として存在していてもよい。
【0055】
IX型は、18.6、19.1、19.9、21.4、22.5、23.5°2θに存在する特徴的なシャープなピークによって、容易に識別し得る。比較のために述べると、第’156号特許に記載の情報によれば、I型はシャープなピークを21.6、22.7、23.3及び23.7°2θに有するのに対し、IV型はこの領域内で、シャープなピークを18.4及び19.6°2θに有し、II型は2本の主ピークを17.0及び20.5°2θに有する。III型はこの領域内で、ピークを17.7、18.3、18.9、20.0及び20.3°2θに有する。また、IX型のPXRDパターンには、VIII型のパターンと同様、シャープで容易に識別し得る中程度の強度のピークが、7.0°2θに存在する。
【0056】
IX型の結晶系及び単位格子寸法は、シンクロトロンX線粉末回折分析を用いて決定された。IX型は単斜晶格子を有し、その格子寸法は:a=18.75〜18.85Å、b=5.525〜5.54Å、c=30.9〜31.15Å、a軸とc軸との角βは96.5〜97.5°であった。
【0057】
図7のシンクロトロンX線粉末ディフラクトグラムにおける、特に顕著なピークの一部について、その面間隔dを表2に示すとともに、CuKα放射線を用いた、ピークが有する2θ単位における位置を合わせて示す。
【0058】
【表2】
【0059】
互いに独立のサンプル及び測定値の自然変動のために、ピーク位置はその報告された位置から逸脱する可能性があり、その差は最大でd値0.5%になる。材料に微粒子化等のサイズ低減を施した場合には、より大きなシフトが生じる場合もある。
【0060】
アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の固体13C NMRスペクトルを図8に示す。IX型を特徴付ける固体13C核共鳴化学シフト(単位ppm)は以下の通りである:18.0、20.4、24.9、26.1、40.4、46.4、71.0、73.4、114.3、116.0、119.5、120.2、121.7、122.8、126.7、128.6、129.4、134.3、135.1、136.8、138.3、139.4、159.9、166.3、178.4、186.6。IX型を特徴付ける固体13C核磁気共鳴では、最低ppm共鳴と他の共鳴との間に、以下の化学シフトの差が存在する:2.4、6.9、8.1、22.4、28.4、53.0、55.4、96.3、98.0、101.5、102.2、103.7、104.8、108.7、110.6、111.4、116.3、117.1、118.8、120.3、121.4、141.9、148.3、160.4、168.6。パターンの特徴部分は、24〜26ppm(脂肪族域)、119〜140ppm(芳香族域)、及び他の領域に見受けられた。IX型の化学シフトは、2つのIX型のサンプルから得られたスペクトルを平均したものである。シフト値の精度は±0.1ppmであった。
【0061】
IX型の生成には、以下の方法が適していることが見出された。但し、この形態は、実験的開発や、これらの手法に一般的な修正を加えることによっても得ることができる。
【0062】
アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の調製は、アトルバスタチンヘミカルシウムをブタノール中でスラリー化し、IX型を例えば濾過やブタノールデカンテーションで、好ましくは濾過で単離することにより、行なうことができる。スラリー化に好ましい温度範囲は、78℃から溶媒の還流温度までの範囲である。アトルバスタチンヘミカルシウム塩のスラリーからの回収は、IX型の単離前に貧溶媒をスラリーに加えることによって、促進することができる。好ましい貧溶媒としてはイソプロパノール及びn−ヘキサンが挙げられる。この方法でIX型を調製する場合、その出発原料は、結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムでも非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムでもよいが、I型及びV型、並びにこれらの混合物が好ましい。
【0063】
IX型の調製は、VIII型を、エタノール(好ましくは無水エタノール)に室温で懸濁させることによっても行なうことができる。懸濁時間は、VIII型からIX型への転換が生じるのに十分な時間であり、数時間から24時間までの範囲を取り得るが、通常は約16時間必要である。その後、IX型を懸濁液から回収する。また、VIII型を湿潤雰囲気下で維持することによっても、IX型を調製することができる。
【0064】
また、IX型の調製は、アトルバスタチンヘミカルシウムV型を、1−ブタノールとエタノール又は水の何れかとの混合物中に、還流温度において、V型からIX型への変換が生じるのに十分な時間に亘って懸濁させた後、IX型をその懸濁液から回収することによっても行なうことができる。この混合物は各成分を約50体積%含有する。
【0065】
アトルバスタチンヘミカルシウムX型を特徴付ける粉末X線回折パターン(図7)は、4.8、5.3、5.9、9.6、10.3、11.5、12.0、16.1及び16.3(二重ピーク)、16.9、17.4、18.2、19.2、19.4、20.0、20.8、21.6、22.0、22.8、23.6、24.6、25.0、25.5、26.2、26.8、27.4、28.0、30.3±0.2°2θにピークを有する。最も特徴的なピークは、20.0及び20.8±0.2°2θに存在する2本のピークと、19.1、19.4、22.8、23.6、25.0、28.0、30.3±0.2°2θに存在する他のピークである。X型は、最高で2%のエタノールと、最高で4%の水を含んでいてもよい。
【0066】
X型は、7.0、19.9、20.7、24.1、25.0、28.0及び30.3±0.2°2θに存在する特徴的なピークによって、IV型から容易に識別することができる。これらの特徴は、先に記載されたI型〜IV型のPXRDパターンの対応する領域に現れるピークから、明確に識別することが可能である。
【0067】
X型の結晶系及び単位格子寸法は、シンクロトロンX線粉末回折分析を用いて決定された。X型は単斜晶格子を有し、その格子寸法は:a=18.55〜18.65Å、b=5.52〜5.53Å、c=30.7〜30.85Å、a軸とc軸との角βは95.7〜96.7°である。
【0068】
図10のシンクロトロンX線粉末ディフラクトグラムにおける、特に顕著なピークの一部について、その面間隔dを表3に示すとともに、CuKα放射線を用いた、ピークが有する2θ単位における位置を合わせて示す。
【0069】
【表3】
【0070】
互いに独立のサンプル及び測定値の自然変動のために、ピーク位置はその報告された位置から逸脱する可能性があり、その差は最大でd値0.5%になる。材料に微粒子化等のサイズ低減を施した場合には、より大きなシフトが生じる場合もある。
【0071】
アトルバスタチンヘミカルシウムX型の固体13C NMRスペクトルを図11に示す。X型を特徴付ける固体13C核共鳴化学シフト(単位ppm)は次の通りである:17.7、18.7、19.6、20.6、24.9、43.4、63.1、66.2、67.5、71.1、115.9、119.5、122.4、126.7、128.9、134.5、138.0、159.4、166.2、179.3、181.1、184.3、186.1。X型を特徴付ける固体13C核磁気共鳴では、最低ppm共鳴と他の共鳴との間に、以下の化学シフトの差が存在する:1.0、1.9、2.9、7.2、25.7、45.4、48.5、49.8、53.4、98.2、101.8、104.7、109.0、111.2、116.8、120.3、141.7、148.5、161.6、163.4、166.6、168.4。パターンの特徴部分は、24〜26ppm(aliphatic range)、119〜140ppm(aromatic range)及び他の領域に見受けられる。X型の化学シフトは、3つのX型のサンプルから得られたスペクトルを平均したものである。報告値は±0.1ppmの範囲内であったが、179.3ppmに存在するカルボニルピークだけは、±0.4ppmの精度であった。
【0072】
アトルバスタチンヘミカルシウムX型の調製は、結晶性アトルバスタチンヘミカルシウム(好ましくはV型若しくはI型、又はこれらの混合物)又は非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムを、エタノールと水との混合物(好ましくは約5:1の比率)と、昇温下(好ましくは還流温度下)で、約30分から数時間(好ましくは約1h)に亘って処理することにより、行なうことができる。出発物質をEtOH:水の混合物に室温で加え、その後にこの懸濁液を徐々に加熱して還流させてもよい。或いは、アトルバスタチンヘミカルシウムの出発形態を、還流している溶媒混合液に加えてもよい。何れの場合でも、アトルバスタチンヘミカルシウムが混合液に溶解し、その後にX型が沈殿するのが観察されるはずである。アトルバスタチンヘミカルシウムのEtOH:水混合液に対する比率は、約1:16から約1:25(g:ml)の範囲が好ましく、約1:16から約1:21(g:ml)の範囲がより好ましく、約1:16(g:ml)が最も好ましい。室温に冷却した直後に、X型を濾過によって採取してもよいが、懸濁液を更に約1から約20時間、より好ましくは約3から約16時間に亘って攪拌してから、X型を採取することが好ましい。
【0073】
アトルバスタチンヘミカルシウムXI型を特徴づける粉末X線回折パターン(図9)は、3.2、3.7、5.1、6.3、7.8、8.6、9.8、11.2、11.8、12.4、15.4、18.7、19.9、20.5、24.0±0.2度2θにピークを有する。
【0074】
XI型は、アトルバスタチンヘミカルシウムV型をメチルエチルケトン(「MEK」)に室温で、V型からXI型への変換を生じさせるのに十分な時間に亘って懸濁させることにより、得ることができる。
【0075】
また、XI型は、アトルバスタチンヘミカルシウムをイソプロピルアルコール中に含むゲルを調製し、このゲルを乾燥させることによっても得ることができる。ゲルの調製は、イソプロピルアルコールを還流温度でアトルバスタチンヘミカルシウムにより飽和させ、その後に室温に冷却することにより行なうのが最適である。ゲルを形成するためには、場合によっては更に室温で、20h超に亘って攪拌する必要がある。ゲルの状態になると、溶液の攪拌時に抵抗の上昇が検出され、流動性も低下する。但し、十分な力を加えると攪拌可能であり、且つそうした力によって分裂しないという意味では、依然として流動性を保持している。
【0076】
アトルバスタチンヘミカルシウムXII型を特徴付ける粉末X線回折パターンは、2.7、8.0、8.4、11.8、18.2、19.0、19.8、20.7 ±0.2度2θにピークを有するとともに、非晶質材料の存在を示すハローを有する。アトルバスタチンヘミカルシウムXII型の代表的なX線粉末回折パターンを図10に示す。
【0077】
XII型は、以下の化合物から直接調製することができる。
【0078】
【化3】
【0079】
本化合物の体系的な化学名は、[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタン酸エステルであるが、以下の記載ではピロールアセトニドエステル(pyrrole acetonide ester)又はPAEという。XII型を調製するには、まずPAEを、セトニドとtert−ブチルエステル基とに開裂する条件下に供する。この条件としては希塩酸を用いることが好ましく、約1.5%の希塩酸を用いることがより好ましい。続いて、アトルバスタチン(遊離酸でもラクトン形態でもよく、これらの混合物でもよい)の溶液を、水酸化カルシウム(PAEに対して、好ましくは僅かに過剰な量、より好ましくは約1.5当量)で処理する。加えた水酸化物塩に由来する溶解カルシウムにアトルバスタチンを会合させた後、過剰な水酸化カルシウムがあれば濾過によって除去する。本方法の重要な特徴の一つは、ここからの濾液の処理である。若干の昇温下(好ましくは約65℃)で、水を反応混合物にゆっくりと加え、アトルバスタチンヘミカルシウムを沈殿させる。この時点で、溶液が再び清明となるまで昇温する。その後、混合物を放冷することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムの沈殿が生じる。沈殿を単離すればアトルバスタチンヘミカルシウムXII型が得られる。
【0080】
また、本発明は、既知の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを調製するための、新規な方法を提供する。
【0081】
I型は、任意の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを、室温から100℃で、数時間から約25時間、好ましくは約16時間に亘って、水で処理することによって得ることができる。出発原料としては、アトルバスタチンヘミカルシウムのV型、VII型、VIII型、IX型及びX型が好ましい。
【0082】
また、I型は、アトルバスタチンヘミカルシウムのエタノール(好ましくは無水エタノール)中又は水中懸濁液を、室温から溶媒の還流温度の範囲において、数分間、好ましくは1から3分間に亘って超音波処理することにより、調製することができる。出発物質としては、アトルバスタチンヘミカルシウムVII型が好ましいが、他の形態も同様に使用することができる。
【0083】
II型は、[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステル(PAE)から、実施例31に従って直接調製することができる。
【0084】
アトルバスタチンヘミカルシウムIV型は、I型又はV型を1−ブタノール中に、I型又はV型からIV型への変換が完了するのに十分な時間に亘って懸濁した後、IV型を混合物から単離することにより調製することができる。この変換に必要な時間は、温度や他の条件によってことなるが、室温で通常約24〜72時間である。
【0085】
また、IV型は、V型をEtOH/H2O中に、50℃で、V型からIV型への変換を生じさせるのに十分な時間に亘って懸濁させ、その後、懸濁液からIV型を単離することによって調製することもできる。EtOH/H2O混合物は約15%のH2Oを含有することが好ましい。
【0086】
また、IV型は、アトルバスタチンヘミカルシウムV型をメタノール中に、V型からIV型への変換を生じさせるのに十分な時間に亘って懸濁させることによっても、得ることができる。変換速度は温度による影響を受けるが、通常の実験室の条件であれば約1から約25時間の範囲から選択される。変換には室温で約16時間が必要である。変換は昇温下で行なってもよく、最高で溶媒の還流温度で行なうことができる。
【0087】
V型を調製するには、先に説明した方法により、PAEからアトルバスタチンヘミカルシウムXII型を調製すればよい。XII型を約65℃で約24時間に亘って乾燥することにより、V型を調製することができる。こうして得られたアトルバスタチンヘミカルシウムV型は高純度であるが、約10%の水と約90%のエタノールとの混合液に懸濁させた上で回収することにより、更に精製することも可能である。
【0088】
非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムは、他の任意の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを、室温から還流温度の範囲で、数時間から25時間の範囲、好ましくは約16時間に亘って、アセトンで処理することにより調製される。出発物質としてはV型が好ましい。
【0089】
また、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムは、任意の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムをアセトニトリル中で、室温からアセトニトリルの還流温度までの範囲の任意の温度で、超音波処理することにより調製できる。超音波処理を数分間、好ましくは1から3分に亘って行なえば、出発物質を非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムへと変換することが可能である。アトルバスタチンヘミカルシウムの出発形態としては、VII型及びI型が好ましい。
【0090】
また、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムは、任意の結晶形のアトルバスタチンヘミカルシウムをボールミル粉砕することによっても、調製することができる。
【0091】
本発明の更なる態様は、新規な形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを含有する、医薬組成物及び調剤形態である。
【0092】
本発明の組成物としては、新規なVI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びXII型のアトルバスタチンヘミカルシウムを含んでなる、粉末、顆粒、凝集体、及び他の固体組成物が挙げられる。更に、本発明で意図されるVI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びXII型の固体組成物は、更に、希釈剤を含んでいてもよい。希釈剤としては、セルロース系材料、例えば粉末セルロース、微結晶性セルロース、超微粒セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、及び他の置換又は無置換のセルロース;デンプン;アルファ化デンプン;無機希釈剤、例えば炭酸カルシウム及び二リン酸カルシウム、並びに、医薬業界で公知のその他の任意の希釈剤が挙げられる。更に他の適切な希釈剤としては、蝋、糖及び糖アルコール、例えばマンニトール及びソルビトール、アクリレート系ポリマー及びコポリマー、並びにペクチン、デキストリン及びゼラチンが挙げられる。
【0093】
本発明の意図する範囲に含まれる更なる賦形剤としては、結着剤、例えばアカシアゴム、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、グルコース、及び、湿式及び乾式造粒法や直接圧縮成形錠剤化法において用いられる他の結着剤が挙げられる。VI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びXII型のアトルバスタチンヘミカルシウムの固体組成物中に存在していてもよい更なる賦形剤としては、崩壊剤、例えばデンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。加えて、賦形剤としては、錠剤化用滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム及びカルシウム、並びにステアリルフマル酸ナトリウム;香味料;甘味料;保存料;医薬的に許容し得る染料及び流動促進剤、例えば二酸化ケイ素が挙げられる。
【0094】
調剤としては、経口、口腔内、直腸内、非経口(例えば皮下、筋肉内、及び静脈内)、吸入及び眼内投与に適した調剤が挙げられる。所与の場合において最も好ましい経路は、治療対象となる症状の性質や重症度によって異なるが、本発明において最も好ましい経路は経口である。調剤は便宜上、単位調剤形態として提供してもよく、また、製薬の分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
【0095】
調剤形態としては、固体調剤形態、例えば錠剤、粉末、カプセル、座薬、サシェ(sachets)、トローチ及びドロップ、並びに液体懸濁液及びエリキシル剤が挙げられる。本記載は限定することを意図するものではないが、本発明は、固体形態のアトルバスタチンヘミカルシウムを識別し得る特性が失われた、アトルバスタチンヘミカルシウムの真溶液をも含むものではない。しかしながら、こうした溶液の調製に新規な形態を使用することは、本発明の意図する範囲内であると解される(例えば、アトルバスタチンに加えて溶媒和物を、溶媒和物が特定の比率となるように、前記溶液に導入する目的等)。
【0096】
カプセル調剤は、言うまでもなく、固体組成物をカプセル内に包有するものである。カプセルの材料としては、ゼラチンや、他の従来のカプセル化材料が挙げられる。錠剤及び粉末は被覆されていてもよい。また、錠剤及び粉末は腸溶性被膜を有していてもよい。腸溶性被膜を有する粉末形態の場合、その被膜としては、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ポリビニルアルコール、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンとマレイン酸とのコポリマー、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとのコポリマー、及び同様の材料を含むものが挙げられる。更に所望により、適切な可塑剤及び/又は増量剤を用いてもよい。被覆錠剤は、錠剤の表面に被膜を有するものでもよく、腸溶性被膜を有する粉末又は顆粒を含んでなる錠剤であってもよい。
【0097】
本発明の医薬組成物の好ましい単位調剤は、新規なアトルバスタチンヘミカルシウムVI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型及びXII型、又は、これら相互間の混合物又は他の形態のアトルバスタチンヘミカルシウムとの混合物を、通常は0.5から100mg含有する。より一般的には、単位調剤におけるアトルバスタチンヘミカルシウム形態の合算重量は、2.5mgから80mgである。
【0098】
以上、本発明の様々な態様について説明してきたが、以下の記載では実施例を提供して、本発明の具体的な実施形態について説明する。これらは如何なる意味でも限定的なものではない。
【実施例】
【0099】
一般的事項
含水量が0.2%未満の無水エタノールをBiolab(登録商標)から購入した。他の試薬は試薬グレードであり、そのままの状態で使用した。
【0100】
ボールミル粉砕は、250mlのステンレス鋼粉砕チャンバーと、粉砕メディアである10mm径のステンレス鋼ボール27個とを備えた、Retsch 遠心ボールミルS-100を用いて行なった。
【0101】
(アトルバスタチンヘミカルシウムVI型の調製)
【0102】
実施例1
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)をアセトン(9ml)に室温で溶解させ、2.5時間に亘って攪拌した。続いて、水(8.5ml)を加えて沈殿を生じさせた後、混合物を更に2.5時間に亘って攪拌した。続いて、白色固体を濾過し、50℃で5時間乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVI型を得た(0.88g、88%)。
【0103】
(アトルバスタチンヘミカルシウムVII型の調製)
【0104】
実施例2
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(1.00g)を無水EtOH(400ml)中、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって採取し、65℃で24h乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVII型を得た(40mg、40%)。
【0105】
実施例3
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(75mg)を無水EtOH(30ml)中、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって採取し、65℃で24hに亘り乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVII型を得た(0.60g、80%)。
【0106】
(アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の調製)
【0107】
実施例4
マグネチック・スターラーを備えたフラスコ内に、1.0g(1.59×10-3モル)の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステルを、90%酢酸水溶液(10ml)中の懸濁液として用意した。この反応混合物を50℃で3時間加熱した後、反応の完了をHPLCで確認するまで、室温で攪拌した。溶媒を蒸散させ、痕跡量の酢酸をトルエン(3×100ml)との共沸蒸留で除去することにより、若干のトルエンを含むオイルを得た。このオイルをEtOH(10ml)及び水(2ml)に溶解させた。続いて、5.5倍当量(8.4×10-3モル、622mg)のCa(OH)2及び臭化テトラブチルアンモニウム(5%、0.05g)を加えた。この反応混合物を50℃で5時間加熱したところで、反応の完了をHPLCで確認した。その後、真空下で熱濾過を行ない、過剰のCa(OH)2を除去した。続いて、反応混合物を室温まで冷却した。この溶液に対して、水(50ml)を攪拌下で加えた。白色沈殿をRTで一晩攪拌し、真空下で濾過し、65℃で18時間乾燥することにより、145mg(16%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩VIII型を得た。
【0108】
実施例5
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、無水EtOH(80ml)中、還流下で24hrsかけてスラリー化した。その後、白色固体を濾過し、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型を得た(0.85g、85%)。
【0109】
実施例6
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、沸騰状態の無水EtOH(40ml)に注ぎ入れた。化合物は、最初は溶解し始めたが、その後再び沈殿した。この混合物に、MeOH(20ml)を加えた。その後、白色固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(188mg、19%)を得た。
【0110】
実施例7
1.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を1−ブタノール(4ml)及びH2O(16ml)中に含む懸濁液を、還流温度に1hr加熱した。その後、混合物を室温に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で16hrsに亘って乾燥することにより、0.9g(91%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩VIII型を得た。
【0111】
実施例8
5.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、沸騰状態の96%エタノール溶液(150ml)に加えた。混合物を2.5hrsに亘って還流した。その後、1.5hrsかけて20℃に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。固体を濾過し、96%エタノール(2×25ml)で洗浄し、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、4.4g(88%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩VIII型を得た。この方法の間に化学的浄化が生じるので、この方法は精製法としても優れている。
【0112】
実施例9
Des−フルオロアトルバスタチンのレベルが0.12%のアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型5.0gを、沸騰状態の96%エタノール溶液(150ml)に加えた。混合物を2.5hrsに亘って還流させた。その後、1.5hrsかけて20℃に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。固体を濾過し、96%エタノールで洗浄し(2×25ml)、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、Des−フルオロアトルバスタチンのレベルが0.06%の、4.4g(88%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩を得た。この手法によって得られたアトルバスタチンはVIII型であった。
【0113】
実施例10
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(5g)を、無水EtOH(35ml)中で2.5hに亘って還流させた。その後、反応混合物を室温に冷却し、更に16hに亘って攪拌した。続いて、無水エタノール(15ml)を加え、懸濁液を濾過し、収集した固体を65℃で20hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(4.7g、94%)を得た。
【0114】
(アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の調製)
【0115】
実施例11
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、1−ブタノール(20ml)中で30分間に亘って還流しながらスラリー化した。その後、混合物を室温に冷却した。その後、白色固体を濾過し、真空下、50℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(0.94g、94%)を得た。KF=0.9。
【0116】
実施例12
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、1−ブタノール(20ml)中で30分間に亘って還流させてスラリー化した。その後、n−ヘキサン(40ml)を加えて沈殿を生じさせ、反応混合物を室温で2時間に亘って攪拌した。続いて、白色固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンIX型(0.96g,96%)を得た。
【0117】
実施例13
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1g)を、1−ブタノール(20ml)中で30分間に亘って還流しながらスラリー化した。その後、IPA(40ml)を加えて更に沈殿を生じさせ、反応混合物を室温で2時間に亘って攪拌した。続いて、白色固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で20hrsに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(0.94g、94%)を得た。カール・フィッシャー分析によれば、これは0.9%の水を含有していた。
【0118】
実施例14
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(800mg)を、無水EtOH(320ml)中、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24時間に亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(630mg、79%)を得た。
【0119】
実施例15
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(2.00g)及び1−ブタノール(40ml)の混合物を、118℃で30分に亘って還流した。その後、混合物を室温に冷却し、更に3時間に亘って攪拌した。続いて、固体を濾過によって収集し、65℃で24時間に亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(1.83g、92%)を得た。
【0120】
実施例16
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型を相対湿度100%、室温下で9日間に亘って保存した。その結果得られた固体は、粉末X線回折分析によって、IX型であると同定された。
【0121】
実施例17
1gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、1−BuOH(10ml)及びH2O(10ml)中、加熱して1hに亘って還流させた。その後、混合物を室温に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。濾過後、65℃で24hrsに亘って乾燥することにより、0.79g(79%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IX型を得た。
【0122】
実施例18
1gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、1−BuOH(10ml)及びEtOH(10ml)中、加熱して1hに亘って還流させた。その後、混合物を室温に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。濾過後、65℃で24hrsに亘って乾燥することにより、0.98g(98%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IX型を得た。
【0123】
(アトルバスタチンヘミカルシウムX型の調製)
【0124】
実施例19
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(10.00g)を、EtOH(135ml)及び水(24ml)の混合物に溶解させ、加熱して1hに亘って還流させた。その後、混合物を室温に冷却し、更に16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムX型(8.26g、83%)を得た。
【0125】
実施例20
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(1.00g)を、EtOH(9ml)及び水(1.6ml)の混合液中で、1hに亘って還流させた。混合物を室温に冷却してから、更に3hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムX型(0.80g、80%)を得た。
【0126】
(アトルバスタチンヘミカルシウムXI型の調製)
【0127】
実施例21
1.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、メチルエチルケトン(「MEK」)(5ml)中、室温で24hrsに亘って攪拌した。その後、固体を濾過し、MEK(2ml)で洗浄し、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、0.5g(50%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩XI型を得た。
【0128】
実施例22
1.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型をイソプロピルアルコール(「IPA」)(7ml)中に含む懸濁液を、還流温度で1hr加熱した。その後、混合物を室温に冷却し、この温度で更に20hrsに亘って攪拌した。ゼラチン状の生成物が得られた。IPA(3ml)を加えた後、ゲルを濾過し、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、0.8g(80%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩XI型を得た。
【0129】
(アトルバスタチンヘミカルシウムXII型の調製)
【0130】
実施例23
蒸留装置とメカニカルスターラーとを備えた円筒型反応器内に、20g(30.6mモル)の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステル(=ピロールアセトニドエステル=PAE)を、250mlの無水エタノール及び50mlの1.5%希塩酸中の懸濁液として用意した。この反応混合物を40℃で9〜11hrsに亘って攪拌しながら、減圧下(500〜600mbar)、エタノール、アセトン及び水の混合物と連続蒸留を実施した。1時間おきに無水エタノールを補充した(35〜40ml)。9〜11時間後、PAEのレベルが0.1%未満に低下した(HPLCによる)。更なる処理を加えることなく、Ca(OH)2(1.5eq.、3.4g)を加えた。反応混合物を70℃で4〜5hrs加熱した。その後、過剰のCa(OH)2を濾過により除去した。この熱濾液(65℃)に、350mlの水を、3/4〜1時間かけて、65℃で(投薬ポンプを用いて)ゆっくりと加えた。水の添加中、アトルバスタチンヘミカルシウム塩が沈殿した。水の添加の後、反応混合物を還流温度(84℃)に加熱すると、清明な溶液が得られた。続いて、混合物を20℃に3hrsかけて冷却し、この温度で更に12〜16hrsに亘って攪拌した。その後、固体を濾過することにより、45.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩XII型結晶の湿ケーキを得た。
【0131】
(既知のアトルバスタチンヘミカルシウムI型の調製)
【0132】
実施例24
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(1.00g)を水(400ml)中で、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24時間に亘って攪拌することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(0.7g、70%)を得た。
【0133】
実施例25
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型(10.00g)の水(100ml)中混合物を2hに亘って還流した。混合物を室温に冷却し、更に1時間に亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(9.64g、96%)を得た。
【0134】
実施例26
アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型(800mg)を水(320ml)中、室温で16hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って攪拌することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(350mg、44%)を得た。
【0135】
実施例27
アトルバスタチンヘミカルシウムX型(1.0g)を水(400ml)中で、室温で24hに亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(720mg、72%)を得た。
【0136】
実施例28
アトルバスタチンヘミカルシウムIX型(750mg)を水(300ml)中、室温で24hに亘って攪拌した。固体を収集し、65℃で20hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンカルシウムI型(420mg、56%)を得た。
【0137】
実施例29
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型(1.00g)を無水EtOH(20ml)中、室温で攪拌した。その後、このスラリーを超音波装置で1.5minに亘って処理する(エネルギー=235kJ、Amp.=50%)ことにより、清明な溶液を得た。水(14ml)を添加すると、沈殿が生成した。このスラリーを超音波装置で、更に2minに亘って処理する(エネルギー=3.16kJ、Amp.=50%)ことにより、スラリーをゲル化させた。このゲルを65℃で20hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(0.50g、50%)を得た。
【0138】
実施例30
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型(1.00g)を、水(200ml)中、室温で攪拌した。その後、スラリーを超音波装置で2minに亘って処理する(エネルギー=3.0kJ、Amp.=50%)ことにより、スラリーをゲル化させた。このゲルを65℃で20hに亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムI型(0.92g、92%)を得た。
【0139】
(既知のアトルバスタチンヘミカルシウムII型の調製)
【0140】
実施例31
蒸留装置及びメカニカルスターラーを備えた円筒型反応器内に、20g(30.6mモル)の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステル(=ピロールアセトニドエステル=PAE)を、135mlのメタノール及び7.6mlの10%希塩酸中の懸濁液として用意した。この反応混合物を35℃で3hrs加熱しながら、減圧下(820mbar)で、メタノール、アセトン及び水の混合物の連続蒸留を行なった。1/2時間おきにメタノールを補充した(35ml)。3hrs後、PAEのレベルは0.1%未満に低下した(HPLCによる)。更なる処理を行なうことなく、Ca(OH)2(1.5eq.、3.4g)、水(5ml)及びメタノール(45ml)を加えた。反応混合物を70℃に2hrs加熱した。その後、過剰のCa(OH)2を濾過によって収集し、Ca(OH)2ケーキをメタノール(2×10ml)で洗浄した。この濾液に、300mlの水を(投薬ポンプを用いて)3/4時間かけて65℃でゆっくりと加えた。水の添加中に、アトルバスタチンヘミカルシウム塩の沈殿が生じた。水の添加後に、反応混合物を還流温度(78℃)に1/2時間に亘って加熱した。その後、混合物を3hrsかけて20℃に冷却し、この温度で更に20hrsに亘って攪拌した。続いて、固体を濾過し、65℃で48hrsに亘って乾燥することにより、16.9g(96%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩II型結晶を得た。KF=3.2%。
【0141】
(既知のアトルバスタチンヘミカルシウムIV型の調製)
【0142】
実施例32
アトルバスタチンヘミカルシウム塩I型(1.0g)を9mlの1−ブタノール中、室温で24時間に亘って攪拌した。その後、白色固体を濾過し、真空オーブン内で50℃で16時間に亘って攪拌することにとり、0.83g(83%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IV型を得た。
【0143】
実施例33
アトルバスタチンヘミカルシウム塩V型(1.0g)を、20mlの1−ブタノール中、室温で72時間に亘って攪拌した。その後、白色固体を濾過し、オーブン内で65℃で20時間に亘って乾燥することにより、0.82g(82%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IV型を得た。
【0144】
実施例34
アトルバスタチンヘミカルシウム塩V型(2.0g)を、EtOH(18ml)及び水(3.2ml)の混合液中、50℃で1時間に亘って攪拌した。その後、沈殿物を濾過し、65℃で20時間に亘って乾燥することにより、1.60g(80%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩IV型を得た。
【0145】
実施例35
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(2.00g)及びメタノール(20ml)の混合物を1時間に亘って還流した。混合物を室温に冷却し、更に16時間に亘って乾燥した。固体を濾過によって収集し、65℃で24に亘って乾燥することにとり、アトルバスタチンカルシウムIV型(1.37g、56%)を得た。
【0146】
実施例36
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(1.00g)のメタノール(10ml)中混合物を、室温で20時間に亘って攪拌した。固体を濾過によって収集し、65℃で24時間に亘って乾燥することにより、アトルバスタチンヘミカルシウムIV型(0.25g、25%)を得た。
【0147】
(アトルバスタチンヘミカルシウムV型の調製)
【0148】
実施例37
蒸留装置及びメカニカルスターラーを備えた円筒型反応器に、20g(30.6mモル)の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジオキサン−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−tert−ブチルヘプタノン酸エステル(ピロールアセトニドエステル=PAE)を、250mlの無水エタノール及び50mlの1.5%希塩酸中の懸濁液として用意した。この反応混合物を40℃に9〜11hrs加熱しながら、減圧下(500〜600mbar)で、エタノール、アセトン及び水の混合物との連続蒸留を行なった。1時間おきに無水エタノールを補充した(35〜40mL)。9〜11時間後、PAEのレベルは0.1%未満に低下していた(HPLCによる)。更に処理を加えることなく、Ca(OH)2(1.5eq.、3.4g)を加えた。反応混合物を70℃に4〜5hrs加熱した。その後、過剰のCa(OH)2を濾過によって収集した。この熱濾液(65℃)に、350mlの水を(投薬ポンプを用いて)3/4〜1時間かけて65℃でゆっくりと加えた。水の添加中にアトルバスタチンヘミカルシウム塩の沈殿が生じた。水の添加後に反応混合物を還流温度(84℃)に加熱したところ、清明な溶液が得られた。続いて、混合物を3hrsで20℃に冷却し、その温度で更に20hrs攪拌した。その後、固体を濾過することにより、45.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩XII型結晶の湿ケーキが得られた。固体を65℃で24hrs乾燥することにより、16.7g(95%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型結晶が得られた。KF=2.8%〜6.6%。
【0149】
(アトルバスタチンヘミカルシウムV型を精製するための方法)
【0150】
実施例38
5.0gのアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を、沸騰状態の90%エタノール水溶液(150ml)に加えた。混合物を2.5hrsに亘って還流した。その後、1.5hrsで20℃に冷却し、この温度で更に16hrsに亘って攪拌した。続いて固体を濾過し、90%エタノールで洗浄し(2×25ml)、65℃で20hrsに亘って乾燥することにより、3.4g(68%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩V型を得た。
【0151】
(既知の非晶質アトルバスタチンヘミカルシウムの調製)
【0152】
実施例39
アトルバスタチンヘミカルシウムV型(2.00g)を密閉フラスコ内で、アセトン(14ml)中、室温で16h攪拌した。2時間後、混合物は清明になった。室温で攪拌を続けたところ、固体の沈殿が生じた。アセトンをデカントし、固体をスパチュラで収集して乾燥オーブンに移送し、65℃で20h乾燥させることにより、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウム(1.85g、93%)を得た。
【0153】
実施例40
アトルバスタチンヘミカルシウムVII型(1.00g)をアセトニトリル(20ml)中、室温で攪拌した。その後、スラリーを2minに亘って超音波処理した(エネルギー=2.5kJ、Amp.=50%)。アセトニトリルのデカンテーション後、固体を65℃で20h乾燥させることにより、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウム(0.71g、71%)を得た。
【0154】
実施例41
アトルバスタチンヘミカルシウムI型(1.00g)をアセトニトリル(20ml)中、室温で攪拌した。その後、スラリーを超音波装置で2min処理した(エネルギー=2.5kJ、Amp.=50%)。アセトニトリルをデカントした後、固体を65℃で20h乾燥することにより、非晶質アトルバスタチンヘミカルシウム(0.71g、71%)を得た。
【0155】
実施例42
アトルバスタチンヘミカルシウム(108g)と、10mm径のステンレス鋼粉砕ボール27個とを、ボールミルの粉砕チャンバーに入れた。チャンバーを秤量し、その重さに応じてミルのバランスを調整した。ミルのリバーシングシステムを用いて、ミルを500rpmで0.5hr動作させた。チャンバー壁に付着した材料を剥がしてバルクに加えた。ミルを再び4hr動作させた。その際、付着物の除去を15minおきに繰りかえした。最後に、300Φmのスクリーンで篩い分けすることにより、ボールから材料を分離した。得られた材料をPXRDで分析したところ、非晶質であることが分かった。この手法を、アトルバスタチンI型、V型及びVIII型についても行なったところ、何れの場合にも、非晶質のアトルバスタチンヘミカルシウムが得られた。
【0156】
実施例43
【0157】
アトルバスタチンヘミカルシウム湿潤粗製物
処理水(155kg)、32%HCl(9kg)、無水エタノール(650kg)及びピロールアセトニドエステル(PAE)(65kg)を反応器(2500L)に導入した。反応混合物を約40℃に加温し、79rpmで9hr攪拌した。無水エタノール(260kg)の添加後、混合物を約15℃に冷却し、無水エタノール(260kg)の余分量を除去するために3hr蒸留した。蒸留の際にジャケットを45℃に加熱したところ、反応物は19℃に達した。また、約61mmHgに真空化した。反応混合物を再度、約40℃に加熱し、水酸化カルシウム(11.25kg)を加え、この混合物を約70℃で5hr維持した。その後、塩を濾別し、反応生成物を無水エタノールで洗浄した(37.5kg)。
【0158】
約64℃の処理水を34minかけて加えた。その後、混合物を82℃に加熱し、この温度で15minに亘って維持した。混合物を22minかけて70℃に冷却した後、5hrかけて21℃に冷却した。3hrの攪拌後、混合物を4サイクルに亘って遠心分離し、サイクル毎に二度ずつ、処理水(18.1kg)で洗浄した。139.6kgの湿潤物質が得られた。
【0159】
結晶性湿潤アトルバスタチンヘミカルシウム
無水エタノール(1091.1kg)を反応器(2500L)に導入し、74℃に過熱した。上で得られた湿潤粗製アトルバスタチンヘミカルシウム(139.6kg)を加え、混合物を還流温度である約76℃に加熱した。混合物に種晶として、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型結晶(0.175g)を加え、混合物を還流条件に3hr維持したところ、沈殿が生じた。混合物を攪拌しながら3hrかけて22℃に冷却した後、混合物を4サイクルに亘って遠心分離した。各サイクル毎に96%のエタノールで洗浄した(28.9kg)。111.7kgの湿潤生成物が得られた。
【0160】
結晶性乾燥アトルバスタチンヘミカルシウム
上で調製した結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムを、二段階の工程によって乾燥した:約40℃の真空乾燥機内で3サイクルに亘って行ない、LOD<5%に達したら、約50℃の流動床乾燥機内で乾燥を継続した。乾燥物質を粉砕して微粒子化した。
【0161】
安定性試験
乾燥及び粉砕した結晶性アトルバスタチンヘミカルシウムについて、可能性のある二種の不純物:アトルバスタチン−エポキシ−ジヒドロキシ(AED)及びエポキシジケトンの形成に対する安定性の試験を行なった。結果を以下の表4に示す。
【0162】
【表4】
表4
【0163】
AED及びアトルバスタチン−エポキシ−ジケトンは溶液中で相互に転換される。
【0164】
本発明について、特定の好ましい実施形態に言及しながら説明し、実施例を用いて例証してきたが、当業者であれば明らかなように、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨及び範囲を逸脱しない限りにおいて、上に説明及び例証した本発明に対して変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】図1(FIG.1)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVI型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図2】図2(FIG.2)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVII型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図3】図3(FIG.3)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図4】図4(FIG.4)は、シンクロトロンX線源を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムVIII型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図5】図5(FIG.5)は、アトルバスタチンVIII型の特徴的な固体13C NMRスペクトルである。
【図6】図6(FIG.6)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図7】図7(FIG.7)は、シンクロトロンX線源を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムIX型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図8】図8(FIG.8)は、アトルバスタチンIX型の特徴的な固体13C NMRスペクトルである。
【図9】図9(FIG.9)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムX型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図10】図10(FIG.10)は、シンクロトロンX線源を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムX型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図11】図11(FIG.11)は、アトルバスタチンヘミカルシウムX型の特徴的な固体13C NMRスペクトルである。
【図12】図12(FIG.12)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムXI型の特徴的な粉末X線回折パターンである。
【図13】図13(FIG.13)は、銅アノードを有する従来のX線発生装置を用いて得られた、アトルバスタチンヘミカルシウムXII型の代表的な粉末X線回折パターンを重畳して示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アトルバスタチンヘミカルシウム(Atorvastatin hemi-calcium)の結晶形であって、6.9、9.3、9.6、16.3、17.1、19.2、20.0、21.6、22.4、23.9、24.7、25.6、及び26.5±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターン(powder X-ray diffraction pattern)によって特徴付けられ、アトルバスタチンカルシウムエポキシジヒドロキシ(Atorvastatin calcium epoxy dihydroxy:AED)の形成に対して安定である、アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形。
【請求項2】
約40℃の温度及び約75%の相対湿度で約1ヶ月以上保存した後に、AEDの含有率が約0.01%(w/w)未満である、請求項1記載のアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形。
【請求項3】
約25℃の温度及び約60%の相対湿度で約6ヶ月以上保存した後に、AEDの含有率が約0.01%(w/w)未満である、請求項1記載のアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形。
【請求項4】
イソプロパノラート(isopropanolate)又はエタノラート(ethanolate)である、請求項1から3の何れか一項に記載のアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形。
【請求項1】
アトルバスタチンヘミカルシウム(Atorvastatin hemi-calcium)の結晶形であって、6.9、9.3、9.6、16.3、17.1、19.2、20.0、21.6、22.4、23.9、24.7、25.6、及び26.5±0.2°2θにピークを有する粉末X線回折パターン(powder X-ray diffraction pattern)によって特徴付けられ、アトルバスタチンカルシウムエポキシジヒドロキシ(Atorvastatin calcium epoxy dihydroxy:AED)の形成に対して安定である、アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形。
【請求項2】
約40℃の温度及び約75%の相対湿度で約1ヶ月以上保存した後に、AEDの含有率が約0.01%(w/w)未満である、請求項1記載のアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形。
【請求項3】
約25℃の温度及び約60%の相対湿度で約6ヶ月以上保存した後に、AEDの含有率が約0.01%(w/w)未満である、請求項1記載のアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形。
【請求項4】
イソプロパノラート(isopropanolate)又はエタノラート(ethanolate)である、請求項1から3の何れか一項に記載のアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−500429(P2009−500429A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520455(P2008−520455)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/011236
【国際公開番号】WO2007/133597
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/011236
【国際公開番号】WO2007/133597
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】
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