説明

保持具

【課題】吸着したワークを落下し難くした保持具を提供することを課題とする。
【解決手段】吸着パッド10は、油を収容しているシリンダ12と、シリンダ12内を下室30と上室32とに分けるピストン16と、を備えている。下室30はワーク吸着側である。また、吸着パッド10は、ピストン16が取付られるとともにシリンダ12を貫通するピストンロッド18と、下室30を狭める方向にピストン16を付勢するコイルバネ22と、を備えている。また、ピストン16とシリンダ内壁面12Sとによって、上室32と下室30とに連通しオーリング34が収容される中間室38が形成されている。ピストン16には、上室32と中間室38とに連通し中間室38から上室32へ流れる際の油の流動がオーリング34によって妨げられる上室側環流孔42と、上室32と中間室38とに連通するオリフィス50と、形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンロッドの先端側に吸着部を備えた保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを吸着、搬送する吸着パッドが広く用いられている。この吸着パッドは、ロボットアームに保持されていることが多い。これは、吸着パッドにワーク(被吸着体)を吸着させ、ロボットアームで吸着パッドを移動させることによりワークを搬送させる形態をとることが多いためである(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、従来、ワークを吸着パッドで吸着しても、このワークが吸着パッドから外れ易いという問題があった。
【特許文献1】特開2003−165081号公報
【特許文献2】特開平10−29182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、吸着したワークを落下し難くした保持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、吸着パッドで吸着したワークが吸着パッドから外れ易い原因について検討した。そして、以下のことを突き止めた。
【0006】
ワークを吸着、保持する吸着部がワークに当接したときのワークへの衝撃を和らげるために、従来、スプリングによるバッファ機構を吸着パッドに設けている。
【0007】
ところで、このスプリングによるバッファ機構を設けた場合、吸着部をワークに当接させた際には、ロボットアームに保持されている被保持部に向けて、吸着部が近づくように移動する。しかし、その後、ワークを吸着した吸着部を吸着パッドごと搬送する際、吸着部が被保持部から離れていく速度が速い場合、ワークに吸着部から離れる方向への衝撃を与えてしまい、この衝撃によってワークが吸着部から脱落してしまう。
【0008】
そこで、本発明者は、ワークを吸着した吸着パッドをロボットアーム等で搬送する際、この衝撃をワークに伝達しない構成にすることを鋭意検討し、試験を行い、更に検討を加え、本発明を完成するに至った。
【0009】
請求項1に記載の発明は、粘性せん断抵抗体を収容しているシリンダと、
前記シリンダ内を、ワーク吸着側である下室と、ワーク吸着側とは反対側である上室と、に分けるピストンと、前記ピストンが取付られるとともに前記シリンダの少なくとも下端部を貫通し、ワークを吸着する吸着部を下端側に有するピストンロッドと、前記下室を狭める方向に前記ピストンまたは前記シリンダの少なくとも一方を付勢する付勢手段と、前記上室と前記下室とを連通させるとともに、前記下室を狭める方向に前記ピストンが前記シリンダに対して相対移動するときには、前記下室を広げる方向に前記ピストンが前記シリンダに対して相対移動するときに比べ、前記粘性せん断抵抗体の流動を制限することにより相対移動速度を遅くする連通機構と、が設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明では、ワークを吸着した後にロボットアーム等により保持具が搬送される際、上記の付勢手段によって、シリンダに対してピストンが下室を狭める方向に向けて(すなわち上室に向けて)相対移動する。このとき、下室から上室への粘性せん断抵抗体の移動が連通機構によって制限されるので、シリンダに対してピストンが下室を広げる方向に相対移動する場合に比べてピストンの相対移動速度が遅くなる。これにより、ワークを吸着保持した保持具が搬送される際、このワークに伝わる衝撃を小さくすることができる。従って、搬送中にワークが吸着部から外れ難くなり、このワークが吸着部から落下し難い。
【0011】
連通機構はピストンに設けられていてもシリンダに設けられていてもよい。連通機構は、下室を狭める方向にピストンがシリンダに対して相対移動するときには粘性せん断抵抗体の流動が制限されるものであれば、特に限定しない。上室と下室とを連通させる連通孔をピストンあるいはシリンダに形成し、下室から上室への油の流入を制限するような弁機能を有するものを連通孔に設けたものであってもよい。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記連通機構は、前記上室と前記下室とに連通する中間室と、前記中間室に収容され、前記中間室から前記上室へ流れる際の前記粘性せん断抵抗体の流動速度を調整する調整部材と、前記上室と前記中間室とに連通し、前記中間室から前記上室へ流れる際の前記粘性せん断抵抗体の流動が前記調整部材によって妨げられる上室側環流孔と、前記上室と前記中間室とに連通するオリフィスと、前記下室と前記中間室とに連通し、前記中間室から前記下室へ流れる際の前記粘性せん断抵抗体の流動が前記調整部材では妨げられない下室側環流孔と、で構成される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明では、下室側環流孔での粘性せん断抵抗体の流動を調整部材で妨げずに、上室側環流孔での粘性せん断抵抗体の流動を調整部材でこのように制御する。従って、調整部材の形態によってピストンの移動速度を調整することが可能になる。調整部材は、複数の玉状の部材であっても、リング状の部材であっても良く、その形状、形態については特に限定しない。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記中間室が、前記ピストンの外周側に形成されたリング状凹部とシリンダ内壁面とによって形成され、前記調整部材が、前記シリンダ内壁面に外周側で接触するシールリングであり、前記上室側環流孔は、前記シールリングと同じ径の円周上に配置された少なくとも1つの孔で形成され、前記下室側環流孔は、前記シールリングよりも小さい径の円周上に配置された少なくとも1つの孔で形成されている、ことを特徴とする。
【0015】
これにより、調整部材に、ピストン外周とシリンダ内壁面との間のシール部材や緩衝材としての役割を果たさせることができ、部品点数を削減することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記リング状凹部内の内周側上部には、前記シールリングの位置を規制するリング状の膨れ部が形成されている、ことを特徴とする。
【0017】
これにより、中間室から上室へ粘性せん断抵抗体が流れる際に上室側環流孔での粘性せん断抵抗体の流動をシールリングで確実に制御することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記膨れ部の下側に前記オリフィスの下端側の開口が形成されている、ことを特徴とする。
【0019】
これにより、オリフィス内を中間室から上室へ粘性せん断抵抗体が流れる際にオリフィスでの粘性せん断抵抗体の流動をシールリングが妨げることがない。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記上室側環流孔は、隣り合う孔同士の間隔が均等であるように複数形成されていることを特徴とする。
【0021】
これにより、シリンダに対してピストンが下室を狭める方向に向けて相対移動する際(すなわちピストンが下室に向けて移動する際)、ピストンがピストンロッド長手方向に向けて均等な力を受け易くすることができ、ピストン移動をスムーズにすることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、前記下室側環流孔は、隣り合う孔同士の間隔が均等であるように複数形成されていることを特徴とする。
【0023】
これにより、ピストンが移動する際、ピストンがピストンロッド長手方向に向けて均等な力を受け易くすることができ、ピストン移動をスムーズにすることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記粘性せん断抵抗体が油であることを特徴とする。
これにより、ワークに伝わる衝撃を効率的に小さくすることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、前記保持具が吸着パッドであることを特徴とする。
これにより、ワークの落下を効率的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、吸着したワークを落下し難くした保持具とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。図1〜図4に示すように、本発明の一実施形態に係る吸着パッド10は、粘性せん断抵抗体である油を収容しているシリンダ12と、シリンダ12内のピストン16と、シリンダ12をシリンダ長手方向に貫通しているピストンロッド18と、ピストン16をワーク吸着側(図1(A)及び図2では紙面下方向)に向けて付勢するコイルバネ22と、を備えている。ピストンロッド18には、ピストン16が止め輪20によって固定されている。また、ピストンロッド18は、ワークを吸着する吸着部24を下端側に有する。吸着部24には吸着するための空気吸引孔(図示せず)が貫通しており、この空気吸引孔はピストンロッド18を貫通するパイプ孔19に連通している。
なお、粘性せん断抵抗体としては、油に代えて、他の高分子材料や液体、気体を用いることができる。しかし、油を用いると、粘性せん断抵抗性を効果的に発揮させることができるため、後記するようにワークに伝わる衝撃を効率的に小さくすることができるとともに、低廉に製造することができるため、好ましい。
【0028】
ピストン16は、シリンダ12内を、ワーク吸着側である下室30(図6〜図9参照)と、ワーク吸着側とは反対側である上室32と、に分けている。従って、コイルバネ22は、下室30を狭める方向にピストン16を付勢している。
【0029】
そして、このピストン16の外周側には、本発明を構成するシールリングの一形態であるオーリング34を収容するためのリング状凹部36が形成されている。リング状凹部36内には、シリンダ内壁面12Sにオーリング外周34Eで接触するオーリング34が配置されており、リング状凹部36とシリンダ内壁面12Sとによって、オーリング34を収容する中間室38が形成されている。この構成により、ピストン16の移動に伴って、リング状凹部36を形成している上壁部36Uまたは下壁部36Lに押圧されてオーリング34が移動するようになっている。また、オーリング外周34Eがシリンダ内壁面12Sに当接しており、オーリング34はピストン16とシリンダ12との間をシールする部材としての役割を果たしている。
【0030】
また、上壁部36Uには、上室32と中間室38とに連通する複数(図4では8つ)の上室側還流孔42が形成され、下壁部36Lには、下室30と中間室38とに連通する複数の下室側還流孔40(図4では4つ)が形成されている。
【0031】
上室側還流孔42は、オーリング34の真上位置で、オーリング34と同じ径の円周上の位置に等間隔で配置されている。また、下室側還流孔40は、オーリング34よりも内側でオーリング34よりも小さい径の円周上に等間隔で配置されている。
【0032】
更に、リング状凹部36内の内周側上部には、上壁部36Uに連続するリング状の膨れ部48が形成されている。膨れ部48の下端と下壁部36Lとの間隔はオーリング34の径よりも小さくされており、オーリング34は、この膨れ部48よりも外周側に位置するように規制されている。
【0033】
膨れ部48には、上下方向に貫通して上室32と中間室38とに連通するオリフィス50が形成されている。本実施形態では、オリフィス50は断面円孔状とされている。また、オーリング34が上壁部36Uに当接して上室側還流孔42での油の流動を妨げているときにおけるオリフィス50内の油の流動速度(流量)が適度となるように、オリフィス50の孔径が予め設定されている。
【0034】
また、シリンダ12の外側の側壁には、ロボットアーム(図示せず)で保持するための被保持部13(図1参照)が形成されている。
【0035】
(作用、効果)
以下、本実施形態の吸着パッド10の作用、効果について、図5〜図9を用いて説明する。図5は図2の要部を示しており、ワークを吸着する前の吸着パッド10の状態を示す側面断面図である。図6は、吸着部24をワークW(何れも図1参照)に当接させロボットアームでシリンダ12を下降させていることを示す側面断面図である。図7はシリンダ12をピストンロッド18に対して下端位置にまで移動させた状態を示す側面断面図である。図8、図9は、図7に示した状態からロボットアームで吸着パッド10を搬送する途中の状態を示しており、コイルバネ22の付勢力によって、ピストンロッド18がシリンダ12に対して下方向へ相対移動していること、すなわちシリンダ12がピストンロッド18に対して上方向へ相対移動していることを示す側面断面図である。
【0036】
図5に示すように、吸着パッド10が待機状態のときでは、吸着パッド10がワークを吸着しておらず、この状態では、コイルバネ22によって、シリンダ12はピストンロッド18に対する上端位置に位置している。
【0037】
ロボットアームで吸着パッド10を搬送し、ワーク台(図示せず)に載置されているワークWに吸着パッド10の吸着部24を当接させた状態では、ピストンロッド18の上下方向位置は一定であるため、図6に示すように、シリンダ12はピストンロッド18に対して下方向に相対的に移動する。このとき、下室30を広げる方向にピストン16がシリンダ12に対して相対移動することになる(以下、下室を広げる方向へのピストンのシリンダに対するこの相対移動を相対移動VBという)。従って、シリンダ12内の油は上室32から上室側還流孔42を通過して中間室38に流入し、更に、下室側還流孔40を通過して下室30に流入する。このため、オーリング34は、中間室38内での油圧及び油の流動により下壁部36Lに当接している。このとき、オーリング34は下室側還流孔40を塞ぐことはない。
【0038】
ロボットアームがシリンダ12を移動可能下限位置である下端位置にまで移動させると、図7に示すように、シリンダ12の移動が停止する。
【0039】
そして、ロボットアームで吸着パッド10を搬送することにより、吸着パッド10に吸着保持されたワークWを搬送する。その際、図8、図9に示すように、コイルバネ22によって、シリンダ12に対してピストン16が下室を狭める方向に相対移動する(以下、下室を狭める方向へのピストンのシリンダに対するこの相対移動を相対移動VSという)。従って、シリンダ12内の油は下室30から下室側還流孔40を通過して中間室38に流入する。このため、オーリング34は、油圧及び油の流動によって、中間室38内で上壁部36Uに当接する。
【0040】
オーリング34が上壁部36Uに当接した状態では、油圧によってオーリング34が潰され、上室側還流孔42を塞ぐ状態となる。このため、中間室38内の油がオリフィス50を通過して上室32に流入する。このとき、油の粘性せん断抵抗(せん断応力)により、シリンダ12に対するピストンロッド18の相対移動速度が適度に緩やかであるように、オリフィス50の孔径が予め設定されている。なお、このときのピストン16のシリンダ12に対する相対移動速度、すなわちピストンロッド18のシリンダ12に対する相対移動速度は、下室30を広げる方向にピストン16がシリンダ12に対して移動するとき(図6参照)に比べ、すなわち相対移動VBに比べ、大幅に遅くなっている。
【0041】
このように、下室30から上室32へ油が流動するときには、上室側還流孔42ではなくオリフィス50を油が通過するので、油によるショックアブゾーバやダンパとしての効果が発生する。このため、図8、図9に示したワーク搬送中の状態では、ワークWに大きな衝撃が作用しない。従って、ワークWの搬送中にワークWが吸着部24から外れ難いので、ワークWが吸着パッド10から落下し難い。
【0042】
また、ピストン16にリング状凹部36を形成して中間室38にオーリング34を収容し、このオーリング34に、中間室38から上室32へ流れる油の流動速度(流量)の調整のみならず、ピストン16とシリンダ内壁面12Sとの間をシールする部材としての役割を果たさせており、このシールによって、中間室38から上室32へ流入する油はオリフィス50を通過する油のみとなっている。従って、部品点数を削減することができている。
【0043】
また、リング状凹部36内の内周側上部に、リング状の膨れ部48が形成されており、オーリング34は、この膨れ部48よりも外周側に位置するように規制されている。これにより、上室側還流孔42での油の流動をオーリング34で確実に制御することができる。また、オリフィス50内を中間室38から上室32へ油が流れる際にオリフィス50での油の流動をオーリング34が妨げることがない。
【0044】
また、上室側還流孔42は、隣り合う孔同士の間隔が等間隔であるように配置されているので、これにより、下室30に向けてピストン16が移動する際、すなわち、相対移動VSの際、ピストン16が均等な力を受け易くすることができ、ピストン16の移動をスムーズにすることができる。
【0045】
更に、下室側還流孔40は、隣り合う孔同士の間隔が等間隔であるように配置されているので、これにより、相対移動VS、VBの何れであっても、ピストン16が均等な力を受け易くすることができ、ピストン16の移動をスムーズにすることができる。
【0046】
<試験例>
本発明者は、上記実施形態に係る吸着パッドの一例(以下、実施例の吸着パッドという)、及び、従来の吸着パッドの一例(以下、従来例の吸着パッドという)を用い、ワークW(図1参照)を吸着保持して搬送させる際のワークWの落下し難さを比較する試験を行った。
【0047】
図10〜図13に示すように、従来例の吸着パッド110は、ワークWに当接して吸着する吸着部112と、この吸着部112が先端部に取付けられているパイプ部116と、パイプ部116を長手方向に摺動可能なように保持する保持部118と、を備えている。保持部118は、ロボットアーム(図示せず)に外側から挟持される構成になっている。従来例の吸着パッド110では、吸着部112が吸着部24と同じ構成、寸法にされているが、その他の部分の構成が実施例の吸着パッドに比べて異なっている。
【0048】
保持部118の中心軸上には、パイプ部116が挿通する挿通孔135が形成されている。保持部118の上部には、パイプ部116の外壁面に沿って摺動するベアリング部142が挿通孔135へ張り出すように設けられ、ベアリング部142の下端には、後述の圧縮コイルバネ144が当接している。
【0049】
パイプ部116は、円筒状でステンレス製であることが多い。パイプ部116の外径は、中央部から上部では、中央部から下部に比べて若干小さい。これにより、保持部118の挿通孔壁との間で圧縮コイルバネ144を収容する収容ゾーン156が形成され、この収容ゾーン156に圧縮コイルバネ144が収容されている。
【0050】
このような構造により、保持部118は、パイプ部116を長手方向に摺動可能なように保持している。
【0051】
従来例の吸着パッド110を用いてワークを吸着して搬送するには、まず、ロボットアームにより吸着パッド110をワークWのやや上方位置にまで移動させる。
【0052】
そして、ロボットアームを下降させることにより、吸着部112のスカート部126をワークWの被吸着部位に当接させる(図11参照)。
【0053】
更にロボットアームを下降させると、吸着部112のスカート部126がワークWに当接し押圧されて吸着面側が若干広がると共に、保持部118がパイプ部116に沿って摺動しながら下がり、圧縮コイルバネ144が圧縮される。この結果、圧縮コイルバネ144の付勢力が増大する(図12参照)。
【0054】
そして、ロボットアームを上げてワークWを載置台160から浮かせ、搬送する(図13参照)。
【0055】
本試験例では、ワークWとして鉄板(寸法は250×360×1mm、質量は約0.7kg)を用いた。また、ロボットアームを上方向へ移動させる動作をエアシリンダにより行った。その際のピストン上昇速度は500mm/sであった。また、吸着真空圧力は−50kPaであった。
【0056】
試験結果を表1に示す。表1では、搬送中に落下がなかった場合を○、搬送中に落下があった場合を×で示している。
【表1】

【0057】
従来例の吸着パッド110では、図13に示したワーク搬送中の状態では、保持部118に対するパイプ部116の相対移動速度が実施例の吸着パッドに比べて大幅に速いので、ワークWに大きな衝撃が作用し易い。このため、ワークWの搬送中にワークWが吸着部112から外れ易いので、ワークWが吸着パッドから落下し易いという試験結果となった。
【0058】
一方、実施例の吸着パッドでは、上記実施形態で説明したように、ワークWの搬送中では、ピストンロッド18がシリンダ12に対して緩やかに相対移動するので、ワークWの搬送中にワークWが吸着部24から外れ難かった。
【0059】
また、実施例の吸着パッドでは、従来例の吸着パッドに比べ、ワークWに吸着部24を当接させた際にピストンロッド18に対するシリンダ12の相対移動速度(下降速度)が速いので、吸着させる際にかかる時間が短かかった。なお、ワークWがワーク台に載置されているため、シリンダ12の下降速度が速くてもワークWに作用する衝撃力はさほど大きくない。
【0060】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1(A)及び(B)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る吸着パッドの側面図及び下面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る吸着パッドの内部構造を示す側面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る吸着パッドを構成するピストン及びピストンロッドを示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る吸着パッドを構成するピストン及びピストンロッドを示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る吸着パッドの要部構造を示す側面断面図である(ワーク吸着前の状態)。
【図6】本発明の一実施形態に係る吸着パッドの要部構造を示す側面断面図である(吸着部がワークに当接してシリンダが下降中の状態)。
【図7】本発明の一実施形態に係る吸着パッドの要部構造を示す側面断面図である(吸着部がワークに当接してシリンダが下端位置まで移動した状態)。
【図8】本発明の一実施形態に係る吸着パッドの要部構造を示す側面断面図である(ワークを吸着して搬送中の状態)。
【図9】本発明の一実施形態に係る吸着パッドの要部構造を示す側面断面図である(ワークを吸着して搬送中の状態)。
【図10】従来例の吸着パッドの内部構造を示す側面断面図である。
【図11】従来例の吸着パッドを下げて吸着部をワークに当接させた状態を示す側面断面図(左半分)及び側面図(右半分)である。
【図12】図11に示した状態から、ロボットアームが挟持している保持部が更に下降し、圧縮コイルバネの付勢力によってこの下降が停止されたことを示す側面断面図(左半分)及び側面図(右半分)である。
【図13】従来例の吸着パッドで、ワークを吸着して搬送中の状態を示す側面断面図(左半分)及び側面図(右半分)である。
【符号の説明】
【0062】
10 吸着パッド
12 シリンダ
12S シリンダ内壁面
16 ピストン
18 ピストンロッド
22 コイルバネ(付勢手段)
24 吸着部
30 下室
32 上室
34 オーリング
36 リング状凹部
38 中間室
40 下室側還流孔
42 上室側還流孔
48 膨れ部
50 オリフィス
110 吸着パッド
112 吸着部
VB 相対移動
VS 相対移動
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性せん断抵抗体を収容しているシリンダと、
前記シリンダ内を、ワーク吸着側である下室と、ワーク吸着側とは反対側である上室と、に分けるピストンと、
前記ピストンが取付られるとともに前記シリンダの少なくとも下端部を貫通し、ワークを吸着する吸着部を下端側に有するピストンロッドと、
前記下室を狭める方向に前記ピストンまたは前記シリンダの少なくとも一方を付勢する付勢手段と、
前記上室と前記下室とを連通させるとともに、前記下室を狭める方向に前記ピストンが前記シリンダに対して相対移動するときには、前記下室を広げる方向に前記ピストンが前記シリンダに対して相対移動するときに比べ、前記粘性せん断抵抗体の流動を制限することにより相対移動速度を遅くする連通機構と、
が設けられている、ことを特徴とする保持具。
【請求項2】
前記連通機構は、
前記上室と前記下室とに連通する中間室と、
前記中間室に収容され、前記中間室から前記上室へ流れる際の前記粘性せん断抵抗体の流動速度を調整する調整部材と、
前記上室と前記中間室とに連通し、前記中間室から前記上室へ流れる際の前記粘性せん断抵抗体の流動が前記調整部材によって妨げられる上室側環流孔と、
前記上室と前記中間室とに連通するオリフィスと、
前記下室と前記中間室とに連通し、前記中間室から前記下室へ流れる際の前記粘性せん断抵抗体の流動が前記調整部材では妨げられない下室側環流孔と、
で構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記中間室が、前記ピストンの外周側に形成されたリング状凹部とシリンダ内壁面とによって形成され、
前記調整部材が、前記シリンダ内壁面に外周側で接触するシールリングであり、
前記上室側環流孔は、前記シールリングと同じ径の円周上に配置された少なくとも1つの孔で形成され、
前記下室側環流孔は、前記シールリングよりも小さい径の円周上に配置された少なくとも1つの孔で形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
前記リング状凹部内の内周側上部には、前記シールリングの位置を規制するリング状の膨れ部が形成されている、ことを特徴とする請求項3に記載の保持具。
【請求項5】
前記膨れ部の下側に前記オリフィスの下端側の開口が形成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の保持具。
【請求項6】
前記上室側環流孔は、隣り合う孔同士の間隔が均等であるように複数形成されている、ことを特徴とする請求項3〜5のうち何れか1項に記載の保持具。
【請求項7】
前記下室側環流孔は、隣り合う孔同士の間隔が均等であるように複数形成されている、ことを特徴とする請求項3〜6のうち何れか1項に記載の保持具。
【請求項8】
前記粘性せん断抵抗体が油であることを特徴とする請求項1〜7のうち何れか1項に記載の保持具。
【請求項9】
前記保持具が吸着パッドであることを特徴とする請求項1〜8のうち何れか1項に記載の保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−764(P2009−764A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162621(P2007−162621)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(590000558)株式会社妙徳 (37)
【出願人】(000236665)不二ラテックス株式会社 (82)
【Fターム(参考)】