説明

保水性ブロック及びその製造方法

【課題】保水ブロック及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の成形性を改善するための成形助材であって、洗砂スラッジ又は硅砂水簸を活性主体として含有することを特徴とする成形助材、石炭灰50wt%以下、洗砂スラッジ又は硅砂水簸の成形助材10〜40wt%、セメント15〜25wt%を含有する、上記保水性基盤、該保水性基盤の表面にゴム材料層を形成して成る保水性ブロック、該保水性ブロックを敷設して、耐ヒートアイランド性及びバリアーフリー機能を同時に付与した敷設構造物、及びそれらの製造方法。
【効果】路面温度の上昇を抑制するために好適に用いられる保水ブロック等に関する新技術・新製品を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の成形性を改善するための成形助材、該成形助材を利用して作製した保水性基盤、保水性ブロック及びその製造技術に関するものであり、更に詳しくは、洗砂スラッジ又は硅砂水簸を活性主体として含有する成形助材、該成形助材を利用して成形性の向上と、耐ヒートアイランド性の機能を付与した保水性基盤、該基盤の表面にゴムチップ等のゴム材料層を形成した保水性ブロック、該保水性ブロックを敷設して耐ヒートアイランド性を付与した敷設構造物及びそれらの製造技術に関するものである。本発明は、例えば、歩道、広場、公園、施設、ビルの屋上等の歩行地域で使用される舗装ブロックとして好適に使用される保水性ブロックを提供するものであり、特に、路面温度の上昇を抑制するために好適に用いられる保水性ブロックに関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市において、空調や輸送機器からの廃熱、あるいは道路や建物の日中の吸熱と蓄熱により、生活空間温度、特に、夜間温度が低下しない、いわゆるヒートアイランド現象が問題となっている。その対策として、例えば、都市緑化など、いくつかの対策が提案されているが、その中で、保水舗装は、最も効果的で、安価な方法と期待されている。歩道、広場、公園などの歩行地域における保水舗装工法には、現場施工と、予め保水ブロックを工場で製作し、施工現場で並べる方法がある(特許文献1、2参照)。
【0003】
それらのうち、施工現場で保水ブロックを並べる工法は、インターロッキングを並べる工法と類似しており、現場施工に比べて、下地施工が簡易であるという利点を有する。現状の保水ブロックの製造方法は、大別すると二通りあり、一つは珪藻土や水砕スラグなどの微細多孔質基材を骨材とし、これをセメント及び水と共に混練し、その泥漿を型に流し込んで成形し、多孔質なコンクリートを得る方法(泥漿成形)を基本としており、殆どのブロックが、本方法で制作されている。もちろん、骨材やその粒度の選定、配合割合、添加物などの改良によって多くの技術が提案されている(特許文献3)。
【0004】
もう一つの方法は、上記泥漿を使う方法に対し、上記に類する骨材をセメント及び水と混練するが、セメントや水の添加量を抑えた湿体の混合物を、型に充填した後、負荷することによって成形して成形体を作製する方法(負荷成形)である。成形後は、乾燥して、製品を強化すること等が行われている(特許文献4、5参照)。
【0005】
泥漿成形は、型や成形装置も簡素で、生産性も高く、低コストであることが特徴となるが、泥漿を作製する時に、骨材の微細孔がセメントでふさがれたり、閉気孔と成り、また、粒子間の隙間や気孔生成量も少なく、骨材の空隙率に比べて成形後の空隙率が大幅に低下し、保水量も小さくなる。更に、一般的に、ブロックの寸法精度や表面性状なども、後述の負荷成形に比べて劣ることが欠点である。
【0006】
一方、負荷成形は、負荷を加えて粒子間をより強固に結合させるため、バインダーとしてのセメント量も少なく、骨材の気孔をふさぐことも少ない。また、気孔も連通した気孔となるため、粒子間に新たにできた気孔にも保水効果がある。従って、全体の保水効果は、泥漿成形に比べて多くなる。更に、成形後の寸法精度も高く、表面性状もいわゆるザラついた感じが少なく、綺麗であり、例えば、この上にゴムチップ層を接合する場合には、表面粒子の安定性が高いため、極めて強固な接合が期待できる。
【0007】
しかしながら、この成形では、型や装置が高価となると同時に、成形時の強度が低く、離型時の型くずれや半製品搬送時の“欠け”、“割れ”等が問題となる。更に、骨材として多孔質材料を使うため、成形負荷を除去して型より取り出すとき、スプリングバックが生じ、“割れ”が生じやすい。また、添加水分が、多孔質骨材に吸収され、セメントの十分な水和反応が進行せず、硬化不足となって、十分な強度が発揮できない場合もある。また、この成形では、肉厚が不均一の複雑形状体の成形は、ほとんど不可能である。
【0008】
このように、負荷成形法は、保水性や成形後の寸法や表面性状は優れているが、成形加工に問題点が多い。このようなことから、当技術分野においては、上述のような諸問題を確実に解決し得る新しい負荷成形技術及びその成形製品の開発が強く要請されていた。
【0009】
【特許文献1】特開2005−120762号公報
【特許文献2】特開2005−120761号公報
【特許文献3】特開2005−126964号公報
【特許文献4】特開2004−285608号公報
【特許文献5】特開2002−180410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上述の問題点を確実に解決することが可能な新しい技術を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、洗砂スラッジ又は硅砂水簸を成形助材として使用することにより、成形性の改善、スプリングバック量の緩和、及び離型後の成形体の形の維持を実現できる等の新規知見を見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば、歩道、広場、公園、ビルの屋上等の歩行域で使用される舗装ブロックとして用いられる保水性ブロックの成形性を改善するための成形助材、該成形助材を利用して作製した保水性基盤、保水性ブロック、該保水ブロックを敷設した敷設構造物、及びそれらの製造技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の成形性を改善するための成形助材であって、洗砂スラッジ又は硅砂水簸を活性主体として含有することを特徴とする成形助材。
(2)上記前記(1)に記載の成形助材により成形性を向上させた成形体であって、少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の固化成形体から成ることを特徴とする成形体。
(3)上記前記(2)に記載の成形体から成り、保水性骨材による保水性機能を有することを特徴とする保水性基盤。
(4)保水性骨材として、クリンカーアッシュ及び/又はフライアッシュの石炭灰を含む、前記(3)に記載の保水性基盤。
(5)石炭灰50wt%以下、成形助材10〜40wt%、セメント15〜25wt%を含有する、前記(3)に記載の保水性基盤。
(6)前記(3)から(5)のいずれかに記載の保水性基盤の表面にゴム材料層を形成したことを特徴とする保水性ブロック。
(7)前記(6)に記載の保水性ブロックを敷設して耐ヒートアイランド性を付与したことを特徴とする敷設構造物。
(8)少なくとも骨材、セメントと前記(1)に記載の成形助材を配合し、更に水を配合した原料を混練して原料混合物を調製し、これを成形型で成形して成形性を向上させた成形体を製造することを特徴とする成形体の製造方法。
(9)骨材として、保水性を有するクリンカーアッシュ及び/又はフライアッシュの石炭灰を使用して原料混合物を調製し、これを成形型で成形して成形性を向上させた保水性基盤を製造する、前記(8)に記載の成形体の製造方法。
(10)10〜25wt%水分を含む成形助材を配合し、更に、水を10〜15wt%配合した原料を混練して原料混合物を調製し、成形圧力150〜250kg/cm、負荷時間5秒以上の負荷条件にて、金型内で成形する、前記(8)又は(9)に記載の方法。
【0012】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、特に、少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の成形性を改善するための成形助材であって、洗砂スラッジ又は硅砂水簸を活性主体として含有することを特徴とする成形助材の点、上記の成形助材により成形性を向上させた成形体であって、少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の固化成形体から成ることを特徴とする成形体の点、及び、少なくとも骨材、セメントと上記の成形助材を配合し、更に水を配合した原料を混練して原料混合物を調製し、これを成形型で成形して成形性を向上させた成形体を製造することを特徴とする成形体の製造方法の点、に特徴を有するものである。
【0013】
本発明では、保水性能を確保できる原料構成と共に、併せて、成形性に優れた原料構成と成形方法が提供される。原料は、セメント以外はリサイクル材を使用することができる。更に、得られた保水性ブロックは、歩道や公園、広場、施設、ビルの屋上等に敷設して、その保水効果により耐ヒートアイランド性を発揮すると共に、その表面には、ゴムチップ等のゴム材料から成るゴム材料層を張り付け、歩行感覚のソフト化を行い、必要により、バリアーフリー化を行うことができる。従って、成形体の表面は、ゴムチップ等のゴム材料層との高い接着性も要求される。
【0014】
本発明では、上述の目的を達成するために、以下のような手段が取られる。すなわち、本発明では、少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の成形性、あるいは複雑形状体成形のための可塑性を改善するために、洗砂スラッジ又は硅砂水簸を活性主体として含有する成形助材が用いられる。上記骨材等の原料構成は、保水性を確保できるものであれば、特に制限されるものではなく、適宜の骨材が用いられるが、好適には、例えば、クリンカーアッシュ、フライアッシュの石炭灰、都市ゴミ焼却灰、高炉スラグ、珪藻土、バーミュキュライト、シラスバルーンなどの多孔性材料、又はそれらと同等もしくは類似の特性を有するものが用いられる。
【0015】
すなわち、本発明では、基本原料構成は、好適には、例えば、火力発電用から排出されるクリンカーアッシュやフライアッシュ、砂利・砂を製造する際に発生する洗砂スラッジ又は硅砂水簸とセメントであり、これらは、セメント以外はいずれも廃棄物である。セメントとしては、ポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント等が用いられる。更に、これらに、必要に応じて、碍子屑、陶磁器屑、砕石などの粒子状無機廃棄物、あるいは顔料等の適宜の副材料等を添加することができる。
【0016】
フライアッシュやクリンカーアッシュは、極めて保水性が大きく、単独ではほぼそれ自身と同体積の水分を含有できる。フライアッシュは、粒径20μm以下の微粉であるが、粉体自体に弾力性があり、水と混練して、単に型内で負荷するだけでは、離型時に粉体のスプリングバックにより、成形体にひびや割れが生じ、成形は不可能である。もちろん、フライアッシュにセメントと水を適量加え、泥漿として型に流し込む方法で、負荷をかけないで、成形できるが、その方法では、充填が密となるため、大幅に保水量を犠牲にすることになる。クリンカーアッシュは、それ自体多孔質であり吸水能を持つ。しかしながら、泥漿成形では、その孔が塞がれてしまう。
【0017】
そこで、本発明では、クリンカーアッシュやフライアッシュの石炭灰に粘結性を持たせるために、石炭灰を洗砂スラッジ又は硅砂水簸を活性主体として含有する成形助材と良く混練する。更に、セメント及び水を混ぜ、混練した後、型内に充填する。この場合の水添加量は、好適には、粉体を湿体状態にする程度である。この混練工程は重要であり、十分な混練によって成形性の改善や可塑性が発現できる。上記原料を型内に充填後、負荷成形し、除荷後、成形された固化体を型より取り出す。もちろん、この状態では、成形体は、型くずれ等は生ぜず、移動に差し支えないほど固化している。この固化体を、約4週間程度養生すれば、十分な強度となり、使用に供することが可能となる。
【0018】
ところで、原料のクリンカーアッシュやフライアッシュの石炭灰、成形助材及びセメントの配合割合については、石炭灰の配合量に比例して保水量は増加するが、石炭灰の配合割合を多くすると、除荷及び離型時のスプリングバックが大きくなり、ひびや割れが生じ、また、成形体の離型後の強度が弱くなり、取り扱いも困難となる。従って、石炭灰の配合割合は、50wt%以下に抑えるべきである。
【0019】
洗砂スラッジ又は硅砂水簸は、混合体の粘結性と可塑性を増加させ、成形作業を容易にするが、保水性や養生後の強度を低下させるので、成形助材の配合割合は、必要最小限に抑えるべきである。成形助材の配合割合の下限は10wt%であり、また、成形に必要な限度は、30wt%であり、それ以上これを多く添加しても、保水性への影響は比較的少ないが、40wt%以上ではセメント量を多くしても、養生後の強度が大幅に低下するので、成形助材の配合割合は、40wt%以下としなければならない。セメントは、多いほど強度は高くなるが、保水量低下への影響が大きく、セメントの配合割合は、好適には15から25wt%である。
【0020】
すなわち、保水量と強度を同時に確保でき、かつ成形に問題のない原料の配合割合の範囲は、石炭灰20−50wt%、洗砂スラッジ又は硅砂水簸10−40wt%、セメント15−25wt%の範囲であることが好ましい。また、成形圧力は、面圧150〜250kg/cmの範囲であり、大きすぎると、スプリングバック量が増大し、離型後に、割れや亀裂、欠けを生ずる。
【0021】
添加水分は、混練粉体の可塑性に影響を及ぼす。水分は、好適には、例えば、全重量に対し5〜14wt%の泥漿状とならない範囲で、一般コンクリート製品よりは、かなり低めに添加して、混練する。残りの必要水分は、洗砂スラッジ又は硅砂水簸に含まれる水分より補給する。
【0022】
一般に、セメントと石炭灰だけの骨材の組み合わせでは、石炭灰をセメントと混練するとき、添加した水分が石炭灰に吸収されるので、セメントの水和反応を行わせるためには、水和反応の理論値よりもはるかに多量の水添加を必要とする。この過剰水分が、セメントと泥漿を構成し、石炭灰の微細気孔を塞いだり、閉気孔生成の要因となって、成形体の保水量を低下させる。
【0023】
しかしながら、成形助材中に含まれる水分は、石炭灰に吸収されることなく、セメントと効果的に水和反応がゆっくり進行するので、過剰水分の添加を必要とせず、石炭灰の気孔閉塞も最小限となるため、成形体の保水量を確保することができる。また、もちろん、洗砂スラッジ又は硅砂水簸は、可塑性を有しているので、成形工程における負荷時の成形性の改善、石炭灰のスプリングバック量の緩和、及び離型後の成形体の形の維持にも有効に作用する。
【0024】
洗砂スラッジは、砂利、砂の採取、製造過程において、砂利、砂に付随する泥分として産出され、通常、砂利、砂の泥分を取り除くための洗浄(水洗)処理の後、泥分をフィルタープレス機で脱水処理して得られるが、従来、洗砂スラッジは、埋め立て処分が行われており、有効な利用方法がなかった。また、硅砂水簸も硅砂採掘の際の洗浄汚泥であり、廃棄が問題となりつつある物質である。
【0025】
これに対して、本発明では、本発明者らが、上記洗砂スラッジあるいは硅砂水簸の再資源化を目標として、物性、物理化学的な側面から多角的に検討した結果、該洗砂スラッジあるいは硅砂水簸の成形助材が、少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の成形性と可塑性を改善するための成形助材を利用することによって成形性を向上させた保水性基盤、保水性ブロック等を作製できること、及び、上記成形助材が、上記のような方法で、保水ブロックの成形に利用できることが明らかとなった。本発明では、少なくともフライアッシュやクリンカーアッシュ、洗砂スラッジや硅砂水簸、セメント及び水を含む混合物が基本原料構成として用いられるが、これらと実質的に同等ないし類似のものも同様に使用できることは云うまでもない。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、以下のような効果が奏される。
(1)保水ブロックの成形性の改善に有効な洗砂スラッジ又は硅砂水簸を活性主体として含有する保水ブロック用成形助材を提供できる。
(2)各種骨材、及びセメントに、上記成形助材及び水を含む原料混合物の成形体からなる保水ブロックを製造し、提供できる。
(3)例えば、クリンカーアッシュやフライアッシュの石炭灰及びセメントに、上記成形助材及び水を含む原料混合物の成形体からなる高保水性基盤を提供できる。
(4)上記高保水性基盤の表面にゴムチップ層を形成して歩行感覚のソフト化機能を付与した高保水性ブロックを提供できる。
(5)本発明の保水性基盤は、例えば、歩道、公園、広場、施設、ビルの屋上等の歩行地域に敷設して、耐ヒートアイランド性を発揮する高保水性ブロックとして好適に使用できる。
(6)本発明は、従来、利用方法がなく、埋めたて処理が行われていた洗砂スラッジを成形助材として利用することで、成形性を向上させた保水ブロックとして製品化することを可能にするものであり、洗砂スラッジの新しい再資源化技術を提供するものとして有用である。
(7)本発明の成形助材を利用することにより、負荷成形性が悪く、離型時のスプリングバックが大きい性質を持つ原料骨材の成形性及び離型性を改善することができ、そのような原料骨材の保水ブロックへの利用が可能となる。
(8)本発明により、例えば、クリンカーアッシュ、フライアッシュの石炭灰、洗砂スラッジ又は硅砂水簸の成形助材、セメント及び水を基本構成とする原料配合により、過剰水分の添加を必要とせず、高い保水量の確保、負荷時の成形性の改善、石炭灰のスプリングバック量の緩和、及び離型後の成形体の形の良好な維持を実現した高保水性基盤を作製することができる。
(9)洗砂スラッジ又は硅砂水簸の添加により可塑性が現出するので、複雑形状体も容易に成形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の実施例について記述する。本実施例では、300×300×厚さ50mmの平板を作製した。各原料配合を表1に示す、a、b、c、dの4種類になるように配合した。a種では、洗砂スラッジ量が多く、複雑形状でも容易に成形できる。b種では、骨材としてフライアッシュの他に、碍子屑を加えた。碍子屑は、碍子製造過程で排出される廃棄物で、これを粒径3mm以下に粉砕したものであり、成形品の圧縮強度を改善できる効果がある。a、b種は、洗砂スラッジが既に20%程度の水分を含んでいるため、混練中の添加水分は5及び7%と低い値となっている。c種は、骨材としてクリンカーアッシュ及び洗砂スラッジの代わりに硅石水簸を使用するものであり、更に、d種は、c種にフライアッシュを添加したものである。d種は、硅石水簸量は少ないが、簡単形状であれば成形可能である。
【0029】
以上の4種の配合で示すように、骨材としてのフライアッシュ、クリンカーアッシュの他に、成形助材として洗砂スラッジあるいは硅石水簸が基本構成であり、これにセメントを加えた。まず、骨材と成形助材をミックスマラータイプのミキサーにて約10分間良く混練した。更に、セメント及び水を加えて混練した後、矩形状の金型に充填し、250kg/cmの負荷をかけて成形した。負荷時間は約10秒であった。除荷後、成形体を取り出した。もちろん離型直後の成形体は堅固で、d材のように硅石水簸の少ないものでも、型くずれや、ひび、あるいは割れ等は発生せず、吸引型マジックハンドにて成形装置からの移動も可能であった。
【0030】
その後、4週間の養生の後、曲げ強度及び保水量を調べた。その結果を表1中に示す。表から明らかなように、曲げ強度は、4.5〜6MPaを示し、インターロッキング協会の基準値4MPaをクリアーしていた。更に、乾燥後の製品を水中に1時間浸漬することによって保水量を調べた。保水率(吸水重量/乾燥重量)は、14〜18%程度の保水量であり、ヒートアイランド用保水ブロックとして使用に耐えることが分かった。
【0031】
上記成形体の表面に、ウレタンを7%及び20%バインダーとして添加したゴムチップ層の張り付けを行い、建研式引き剥がし試験機を用いて接着強度を測定した。ゴムチップ層の厚さは10mmであった。いずれの試験片でも、バインダー7%添加では0.22〜0.28N/mm、バインダー20%添加では0.64〜0.71N/mmであり、バインダー20%添加では高い接着強度が得られ、歩道等に敷設しても高い信頼性が得られることが実証できた。この高い接着強度は、成形体の表面のザラツキが少なく、表面性状が安定していることに起因するものである。
【0032】
以上で示されるように、本発明の配合では、負荷成形性に極めて優れ、離型後のスプリングバック量が小さく、型くずれもない成形体が得られた。更に、この成形体は、その後のハンドリングも容易であり、また、インターロッキングとしても十分な強度を有しており、更に、保水量も十分高いことが分かった。また、成形体は、表面粒子の安定性があるため、ゴムチップ層等との接着も確保できることが分かった。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
以上詳述したように、本発明は、保水性ブロック及びその製造方法に係るものであり、本発明により、保水性ブロックの成形性を改善する機能を持つ洗砂スラッジを活性主体として含有する成形助材、該成形助材を利用して成形性を向上させた成形体及び保水性基盤、該保水性基盤の表面にゴムチップ層等を形成した保水ブロック、該保水ブロックを敷設して耐ヒートアイランド性の機能を付与した敷設構造物、及びそれらの製造技術を提供することができる。
【0035】
本発明は、例えば、歩道、広場、公園、施設、屋上などの歩行地域で使用される舗装ブロックとして好適に使用される、耐ヒートアイランド性及びバリアーフリー機能を同時に発揮する保水ブロック及びその敷設構造物に関する新技術・新製品を提供するものとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の成形性を改善するための成形助材であって、洗砂スラッジ又は硅砂水簸を活性主体として含有することを特徴とする成形助材。
【請求項2】
上記請求項1に記載の成形助材により成形性を向上させた成形体であって、少なくとも骨材、セメント及び水を含む混合物の固化成形体から成ることを特徴とする成形体。
【請求項3】
上記請求項2に記載の成形体から成り、保水性骨材による保水性機能を有することを特徴とする保水性基盤。
【請求項4】
保水性骨材として、クリンカーアッシュ及び/又はフライアッシュの石炭灰を含む、請求項3に記載の保水性基盤。
【請求項5】
石炭灰50wt%以下、成形助材10〜40wt%、セメント15〜25wt%を含有する、請求項3に記載の保水性基盤。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の保水性基盤の表面にゴム材料層を形成したことを特徴とする保水性ブロック。
【請求項7】
請求項6に記載の保水性ブロックを敷設して耐ヒートアイランド性を付与したことを特徴とする敷設構造物。
【請求項8】
少なくとも骨材、セメントと請求項1に記載の成形助材を配合し、更に水を配合した原料を混練して原料混合物を調製し、これを成形型で成形して成形性を向上させた成形体を製造することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項9】
骨材として、保水性を有するクリンカーアッシュ及び/又はフライアッシュの石炭灰を使用して原料混合物を調製し、これを成形型で成形して成形性を向上させた保水性基盤を製造する、請求項8に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
10〜25wt%水分を含む成形助材を配合し、更に、水を10〜15wt%配合した原料を混練して原料混合物を調製し、成形圧力150〜250kg/cm、負荷時間5秒以上の負荷条件にて、金型内で成形する、請求項8又は9に記載の方法。

【公開番号】特開2007−161503(P2007−161503A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356931(P2005−356931)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000159021)株式会社キクテック (42)
【Fターム(参考)】