説明

保温具

【課題】 安全性の高い保温具を提供する。
【解決手段】 電子レンジにより蓄熱材に蓄積した熱の放散により、保温対象を温める保温具1であって、蓄熱材6と、蓄熱材6を包容し可撓性を有する材質からなる扁平な袋体7とを備え、袋体7は気体の連通部4を備え、連通部4は透湿防水膜5を備え、透湿防水膜5は、略水平面に置かれた際に、袋体7内の気体と袋体7外の気体とが連通する位置に配される保温具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジにより蓄熱材に蓄積した熱の放散により、保温対象を温める保温具に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジを用いて、内部に含む蓄熱材を誘電加熱することにより温めて使用する保温具は広く知られている。誘電加熱は短時間で蓄熱材を加熱する有効な方法であるが、蓄熱材自体が過度に加熱されることにより、蓄熱材を含む容器が破裂し、蓄熱材が飛散する場合があり、安全上問題となっていた。これらの問題を解決するために、以下の先行技術が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、取扱が簡単で、長時間の保温を可能とすることを目的として、電子レンジで安全に加熱可能な蓄熱材を、耐熱性樹脂からなる容器に封入し、さらに容器を袋に収納して、使用に際しては、袋に収納した容器を家庭用の電子レンジに入れ数分程度加熱する湯たんぽが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、耐熱袋体で被包された蓄熱機能を有する蓄熱機能材料を、中央部に安全弁を取り付けたキャップにより密閉される注入口を有する上容器片と下容器片とで構成される容器の内部に設けたリブによって囲まれた収納部に収納後、上下容器片を接着固定するとともに、容器内に液体を満たして蓄熱機能材料を液体中に浸した湯たんぽが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3084415号公報
【特許文献2】実公平6−3569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の先行技術では、蓄熱材を加熱しすぎれば、袋に収納することにより蓄熱材自体の飛散は免れるが、容器が破裂する可能性が残っている。また、特許文献2の先行技術では、キャップに取り付けられた安全弁により、容器内の液体が気化して内圧が上がっても安全に空気が抜けるので破裂することはないが、機構上大型になり、表面が硬く、手軽に取り扱える保温具としては好ましくない。また、仮に、安全弁が取り付けられたキャップの方を下に向けて置いた状態で加熱した場合には、安全弁から気体が抜けないので、内圧の上昇により容器が破裂したり、容器から蓄熱材が漏出あるいは飛散することになる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、安全性の高い保温具を提供することである。すなわち、電子レンジの設定に関係なく、過度のマイクロ波を照射し、蓄熱材が過剰に加熱されても、容器内の内圧の増加により、容器が破裂したり、容器から蓄熱材が漏出あるいは飛散することのない保温具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、電子レンジにより蓄熱材に蓄積した熱の放散により、保温対象を温める保温具であって、蓄熱材と、その蓄熱材を包容し、可撓性を有する材質からなる扁平な袋体と、を備え、その袋体は、気体の連通部を備え、その連通部は、透湿防水膜を備え、その透湿防水膜は、略水平面に置かれた際に、その袋体内の気体と、その袋体外の気体とが連通する位置に配される保温具が提供される。
これによれば、蓄熱材が過剰に加熱されても、容器内の内圧の増加により、容器が破裂したり、容器から蓄熱材が漏出あるいは飛散することのない保温具を提供できる。
【0009】
さらに、その連通部の外径を形成する外縁の一部は、略水平面に置かれた際に、扁平な袋体の一方又は他方の面の一部と共に、略水平面に接触するように構成され、その透湿防水膜は、その水平面に接触しないように構成されたことを特徴としてもよい。
これによれば、容器の確実な破裂防止、蓄熱材の確実な漏出/飛散防止を行うことができる。
【0010】
さらに、その連通部は、その袋体の厚みより大きな外径を有し、その袋体の端部に取り付けられたことを特徴としてもよい。
これによれば、蓄熱材の種類や保温具の置き方によらず、より確実な容器の破裂防止、蓄熱材の確実な漏出/飛散防止を行うことができる。
【0011】
さらに、その連通部は、開口部とキャップからなり、キャップの着脱により開閉可能となっており、その透湿防水膜は、そのキャップの天面に位置することを特徴としてもよい。
これによれば、上記保温具を容易に製造することができ、また、使用者に使いやすい保温具を提供できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、電子レンジの設定に関係なく、過度のマイクロ波を照射し、蓄熱材が過剰に加熱されても、容器内の内圧の増加により、容器が破裂したり、容器から蓄熱材が漏出あるいは飛散することのない、安全性の高い保温具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る保温具の全体を示す斜視図。
【図2】本発明に係る第一実施例の保温具を示す正面図。
【図3】本発明に係る第二実施例の保温具を示す正面図。
【図4】本発明に係る実施例のキャップを製造する過程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1は、本発明に係る保温具の全体を示す斜視図である。保温具1は、扁平な袋体7と、袋体7の扁平でない端部に連通部4を備える。連通部4は、開口部(図示せず)とキャップ3からなり、キャップ3の天面に透湿防水膜5を備える。
【0015】
図2は、本発明に係る第一実施例における保温具1を示す正面図である。本図では、袋体7や内袋9が透明であり、内部が透けて見えるものとして描かれている。なお、保温具1は、電子レンジにより蓄熱材に蓄積した熱の放散により、保温対象を温める保温具である。この保温具1は、一般的に、一旦蓄熱材に顕熱や潜熱により蓄熱し、その蓄熱した顕熱や潜熱を伝導熱や放射熱の形で放散することにより、人や物等の保温対象を温めるものである。但し、本発明に係る保温具は、容器にお湯を注入したり、湯煎により加熱して使用する湯たんぽの類ではなく、電子レンジ等が発生させるマイクロ波等の電磁波を使用して蓄熱材に熱を蓄積させる保温具の一種である。
【0016】
保温具1は、蓄熱材6と、蓄熱材6を包容し可撓性を有する材質からなる扁平な袋体7とを備える。本実施例における蓄熱材6は、主成分が無極性分子からなる。しかし、本発明に係る蓄熱材は、顕熱や潜熱を蓄える物質であればよく、特に限定されない。また、常温で固体・液体等の物質の状態等においても、特に限定されない。例えば、常温液体では、典型的には水であり、常温固体では無極性分子からなるパラフィンである。また、パラフィンと乳化剤を混合し、ゲル化してもよい。なお、本願における「常温」とは、日常生活において、熱したり冷やしたりしない自然な温度のことである。
【0017】
無極性分子とは、分子内の結合に電気的な偏りがなく電気双極子をもたない分子のことであり、極性分子はその逆を意味する分子のことである。即ち、極性分子では、プラス・マイナスの極を持っていて、マイクロ波等の電磁波がこの分子を振動させることにより、摩擦熱が生じ、極性分子が構成する素材自体が発熱する(これを、誘電加熱と言う)。また、プラス・マイナスの電荷を帯びていない無極性分子は、電磁波の影響が少なく、加熱されにくい。
【0018】
主成分が無極性分子からなる蓄熱材は、例えば、脂肪族炭化水素化合物やシリコン等が挙げられる。脂肪族炭化水素化合物の中でも、パラフィンは、化学的安定性が高くまた熱容量及び比熱が大きくて一旦加熱されると冷め難い性質を有しているので、好適である。なお、蓄熱材は、単一の材料で構成しても、複数の材料を組み合わせて構成してもよい。例えば、蓄熱材としてパラフィンを用いる場合、分子量の異なる複数のパラフィンを組み合わせて構成してもよい。
【0019】
袋体7は、蓄熱材6を包容し可撓性を有する材質からなる扁平な袋状物である。より具体的には、脂肪族炭化水素化合物やシリコン等の材料から作製される、全体として凹凸がなく平べったい袋状物である。この材料は、脂肪族炭化水素化合物の中でもポリエチレン(誘電率2.2〜2.4)やポリプロピレン(誘電率:2.0〜2.3)等のオレフィン系合成樹脂のフィルムが好適である。
【0020】
また、この材料の融点又はガラス転移点は、蓄熱材6の融点及び後述の液体保持部材8に保持される液体の沸点より高く、誘電加熱による液体の沸点までの昇温によって溶融、変形しない耐熱性を有する必要がある。例えば、蓄熱材6に融点が55°Cのパラフィン、液体に水を用いた場合、袋体7の材料の融点又はガラス転移点は、100°Cより大きいものが選択され、より好ましくは耐熱性能を120°C以上にするとよい。そうすると、蓄熱材の潜熱を利用することができるので、一定範囲の保温時間を長くすることができる。
【0021】
さらに、袋体7が収容する液体保持部材8が含む液体に対してマイクロ波等の電磁波が到達するように、袋体7の構成材は、電磁波特にマイクロ波を反射せず、透過するものが好ましい。また、袋体7は、柔軟性を有しており、蓄熱材が液体である場合に曲げたり捻じったり等、ある程度の変形が可能であることが好ましい。
【0022】
本実施例では、無極性分子からなる蓄熱材6を使用するので、溶融状態時の蓄熱材6を包容するための、蓄熱材6を包装する内袋9と、この蓄熱材6を加熱させるための、内袋9を包む液体保持部材8をさらに備える。
【0023】
内袋9は、脂肪族炭化水素化合物やシリコン等の材料から作製される、全体として凹凸がなく平べったい、袋体7より一回り小さい袋状物であり、蓄熱材6が溶解しても漏れないように蓄熱材6を密封包装する。この材料は、脂肪族炭化水素化合物の中でもポリエチレン(誘電率2.2〜2.4)やポリプロピレン(誘電率:2.0〜2.3)等のオレフィン系合成樹脂のフィルムが好適である。
【0024】
また、この材料の融点又はガラス転移点は、蓄熱材6の融点及び液体保持部材8に保持される液体の沸点より高く、誘電加熱による液体の沸点までの昇温によって溶融、変形しない耐熱性を有する必要がある。例えば、蓄熱材6に融点が55°Cのパラフィン、液体に水を用いた場合、内袋の材料の融点又はガラス転移点は、100°Cより大きいものが選択され、より好ましくは耐熱性能を120°C以上にするとよい。
【0025】
内袋9は、蓄熱材6を密封包装するので、気密性・水密性を可能とする強度を備えた、超音波溶着可能な素材であり、例えばポリエチレンを素材とする場合は、少なくとも約0.7mm以上の肉厚を有する。また、内袋9は、柔軟性を有しており、蓄熱材6が液体である場合に曲げたり捻じったり等、ある程度の変形が可能であることが好ましい。
【0026】
液体保持部材8は、主成分が極性分子からなる液体の表面張力により繊維の間に液体を吸収して保持することができ、また、誘電加熱により気化した液体を繊維の間から放散することができる。液体保持部材8は、柔軟性、可撓性を有する素材からなり、例えば、スポンジ、フォームラバー、発泡体等の多孔質材料や、不織布、織布、紙等の繊維材料である。液体保持部材8は、液体の保持量を調節し易いので、不織布が好ましい。不織布は、繊維の種類、繊維の径や目付量を調節することにより、保持する液体の量を簡単に調節できる。
【0027】
袋体7は、誘電加熱前に液体を液体保持部材8に供給するために開放し、保温具1の使用時には閉鎖する開口部2とキャップ3からなる連通部4を備える。本実施例では、袋体7の扁平でない端部に開口部2と、開口部2に着脱可能なキャップ3を備える。開口部2に雄ネジ、キャップ3に雌ネジを設けて、開閉可能となっている。但し、これに限定されず、開口部2の位置は、端部ではなく袋体7の扁平な面の片面に設けられてもよい。また、本実施例では、開口部2は1つだが、複数設けられてもよい。
【0028】
キャップ3が袋体7の開口部2から取り外された際、開口部2から供給され液体保持部材8に保持される液体は、主成分が極性分子からなる誘電率の高いものであり、マイクロ波の照射によって効率良く誘電加熱可能な常温で液状にあるものである。液体の誘電率は、ポリエチレングリコールと同等以上(誘電率:35)の誘電率を有しているものが好ましく、保温具の使用者の便宜を考慮すると、入手及び取り扱いが容易な水(誘電率:80)がより好ましい。
【0029】
連通部4は、キャップ3の天面に透湿防水膜5を備え、透湿防水膜5は、略水平面Hに保温具1が置かれた際に、袋体7内の気体と、袋体7外の気体とが連通する位置に配される。従って、連通部4は、透湿防水膜5により、気体を連通させるものであり、液体を通過させない。ここで、略水平面とは、蓄熱材6を加温するために電子レンジ内のターンテーブルに保温具1を置いた場合を想定しており、厳密な意味での水平ではなく、電子レンジが設置される場所や状況において通常使用され得る環境での水平を意味する。なお、キャップ3の材料は、脂肪族炭化水素化合物の中でもポリエチレン(誘電率2.2〜2.4)やポリプロピレン(誘電率:2.0〜2.3)等のオレフィン系合成樹脂が好適である。
【0030】
透湿防水膜5は、液体を通さないが、気体(水蒸気)は通す性質を有するフィルム状の素材である。より具体的には、3M社製のポーラスフィルム、ジャパンゴアテックス社製のゴアテックス(登録商標)である。これにより、袋体7内に含まれる水などの液体を袋体7外へ通すことなく、袋体7内に含まれる水蒸気などの気体のみを袋体7外へ通すことができる。なお、本実施例では、開口部2と透湿防水膜5を備えるキャップ3により連通部4が開閉可能となっているが、これに限定されず、例えば、キャップを有さず、開口部2から液体注入後、透湿防水膜5を開口部2の周りに接着剤等で直接貼り付け、開口部2を透湿防水膜5によりシールしてもよい。但し、キャップの方が使用者にとって使いやすい。
【0031】
また、透湿防水膜5は、電子レンジ内のターンテーブルなどにほぼ水平に保温具1を置いた場合、袋体7内の気体と袋体7外の気体とが連通する位置に配される。例えば、本実施例では、液体保持部材8が液体を吸収、保持しているので、開口部2付近には液体が存在せず、透湿防水膜5の袋体7内側は気体と接している。通常、透湿防水膜5の袋体7外側は気体(空気)と接しているので、ほぼ水平に保温具1を置いた場合、袋体7内の気体と袋体7外の気体とが連通する位置に配されることとなる。むろん、本実施例の場合は、ほぼ水平に保温具1を置かなくても、袋体7内の気体と袋体7外の気体とが連通する位置に配される構成である。これにより、液体保持部材8が保持する液体が気化したり、又は仮に蓄熱材6が気化しても、透湿防水膜5を通して気体のみが袋体7の外へ放出されることにより、袋体7内の内圧が増加することがなく、袋体7が破裂したり、袋体7から液体や蓄熱材6が漏出あるいは飛散することのなくなる。
【0032】
また、開口部2の外径を形成する外縁Eの一部は、水平面Hに置かれた際に、扁平な袋体7の片面(一方又は他方の面)の一部又は全部と共に、その水平面Hに接触するように構成され、透湿防水膜5は、その水平面Hに接触しないように構成されてもよい。本実施例では、連通部4はキャップ3の着脱により開閉可能となっており、連通部4の外径を形成する外縁Eの一部、即ちキャップ3の一部は、図2に示すように、保温具1がほぼ水平面に置かれた際に、その水平面Hからわずかに離れており、その水平面Hに接触するようには構成されていない。
【0033】
しかし、この場合、キャップの重みにより、透湿防水膜5が下向きに(水平面側に)傾くことがあり、液体を大量に袋体7内に注入することにより袋体7内において開口部2付近に液体が存在する場合は、その液体の量によっては、袋体7内の気体と袋体7外の気体とが連通しなくなる場合があり得る。そこで、キャップ3の一部が、扁平な袋体7の片面(一方又は他方の面)の一部又は全部と共に、その水平面Hに接触するように構成されると、キャップの重みにより透湿防水膜5が下向きに(水平面側に)傾くことがなくなる。
【0034】
さらに、キャップ3の一部がたとえその水平面Hに接触したとしても、透湿防水膜5がその水平面に接触しないように構成される。これにより、袋体7内の気体と袋体7外の気体との連通が水平面との接触により阻害されることはない。即ち、本実施例の場合、液体保持部材8が液体を吸収、保持しているので、開口部2付近には液体を存在しないはずだが、保温具1の使用者が液体保持部材8が吸収できないほど多量の液体を袋体7内に注入した場合には、液体保持部材8が保持しきれずあふれた液体が、開口部2付近に存在する場合がある。このような場合、透湿防水膜5は、液体の存在により気体(水蒸気)を通さなくなるので、袋体7内の気体と袋体7外の気体との連通を妨げることとなる。しかし、かかる構成にすれば、このような場合であっても、より確実な袋体7の破裂を防止し、より確実な蓄熱材6の漏出/飛散を防止することができる。
【0035】
<第二実施例>
図3は、本発明に係る第二実施例における保温具1Aを示す正面図である。第一実施例と同様、保温具1Aは、電子レンジにより蓄熱材に蓄積した熱の放散により、保温対象を温める保温具である。以下においては、第一実施例と異なる点を中心に述べる。
【0036】
蓄熱材6Aは、常温で液体、典型的には水である。液体は、主成分が極性分子からなる誘電率の高いものであり、マイクロ波の照射によって効率良く誘電加熱可能な常温で液状にあるものである。液体の誘電率は、ポリエチレングリコールと同等以上(誘電率:35)の誘電率を有しているものが好ましく、保温具の使用者の便宜を考慮すると、入手及び取り扱いが容易な水(誘電率:80)がより好ましい。
【0037】
保温具1Aは、第一実施例が有していた蓄熱材を包装する内袋と、内袋を包む液体保持部材を有しない。従って、蓄熱材6Aは、可撓性を有する材質からなる扁平な袋体7Aにより包容される。なお、蓄熱材6Aとして水を用いる場合、熱容量が高く、保温具1Aの保温時間を長くできる。
【0038】
連通部4Aは、開口部2Aとキャップ3Aからなり、キャップ3Aの着脱により開閉可能となっている。即ち、袋体7Aは、開口部2Aに雄ネジ、キャップ3Aに雌ネジを設けて、開閉可能となっている。また、連通部4Aは、キャップ3Aの天面に透湿防水膜5Aを備え、透湿防水膜5Aは、ほぼ水平面に保温具1Aが置かれた際に、袋体7A内の気体と、袋体7A外の気体とが連通する位置に配される。
【0039】
具体的には、キャップ3Aは、袋体7Aの厚みより大きな外径を有し、袋体7Aの端部に取り付けられる。そうすると、キャップ3Aの外径を形成する外縁EAの下端(一部)が、水平面Hに置かれた際に、扁平な袋体7Aの片面(一方又は他方の面)の一部と共に、その水平面Hに接触する(図中の点P)。
【0040】
本図に示されるように、キャップ3Aは袋体7Aの厚みより大きな外径を有し、袋体7Aは扁平で可撓性を有しているので、キャップ3Aの外縁EAの下端(P)が水平面と接することにより、開口部2A付近が持ち上げられると共に、開口部2A全体が上向き(水平面とは反対側)に傾く。また、透湿防水膜5Aも上向き、水平面Hに接触することはない。
【0041】
そうすると、保温具1Aを電子時レンジにより加熱し、加熱により袋体7A内部に気体が発生した場合であっても、気体は、図中の矢印Fが示すように、液体である蓄熱材6Aの中を気泡としてまず袋体7A内の上方に溜まり始めるが、開口部2A付近は持ちあげられているので、その気泡は開口部2A付近に移動し、最終的には最も高い位置にあるキャップ3Aの透湿防水膜5Aの内側まで到達する。
【0042】
このように、仮に、袋体7A内に液体が充満していたとしても、袋体7A内で発生した気泡は必ず透湿防水膜5Aまで到達する。従って、透湿防水膜5Aは、ほぼ水平面に置かれた際に、袋体7A内の気体(気泡)と、袋体7A外の気体とが連通することとなる。これによれば、蓄熱材の種類や保温具の置き方によらず、より確実に袋体の破裂を防止し、蓄熱材の漏出/飛散の防止を行うことができる。
【0043】
<製造方法>
図4は、本発明に係る実施例における、透湿防水膜を備えたキャップを製造する過程を示す図である。一般的に、本発明に係るキャップは、金型内に樹脂を注入して樹脂を成形する、所謂インサート成形方法により作成されるが、これに限定されないことは言うまでもない。例えば、別部材として成形した透湿防水膜をキャップに溶着してもよいし、インテグラルヒンジとして取り付けてもよい。
【0044】
まず、キャビティーCAとコアCOの間の、キャップの天面に当たる部分に透湿防水膜5Bを配置する。次に、透湿防水膜5BをキャビティーCAと挟み込む位置になるまで、コアCOを押し下げる。押し下げたら、キャビティーCAとコアCOの間にできた空間に樹脂を射出する。そうすると、樹脂と透湿防水膜5Bとが一体成型される。次に、コアCOをキャビティーCAから離すと、水密性のあるキャップが作成される。
【0045】
雌ネジがついたキャップである場合も同様に作成でき、例えば、キャップを突き上げ無理抜きしてもよい。この場合は、比較的柔らかい素材であるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどが好適である。
【0046】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 保温具
2 開口部
3 キャップ
4 連通部
5 透湿防水膜
6 蓄熱材
7 袋体
8 液体保持部材
9 内袋
H 水平面
F 気泡の流れ
CA キャビティー
CO コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジにより蓄熱材に蓄積した熱の放散により、保温対象を温める保温具であって、
前記蓄熱材と、
前記蓄熱材を包容し、可撓性を有する材質からなる扁平な袋体と、
を備え、
前記袋体は、気体の連通部を備え、
前記連通部は、透湿防水膜を備え、
前記透湿防水膜は、略水平面に置かれた際に、前記袋体内の気体と、前記袋体外の気体とが連通する位置に配される保温具。
【請求項2】
前記連通部の外径を形成する外縁の一部は、略水平面に置かれた際に、扁平な前記袋体の一方又は他方の面の一部と共に、前記略水平面に接触するように構成され、
前記透湿防水膜は、前記水平面に接触しないように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の保温具。
【請求項3】
前記連通部は、前記袋体の厚みより大きな外径を有し、前記袋体の端部に取り付けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の保温具。
【請求項4】
前記連通部は、開口部とキャップからなり、キャップの着脱により開閉可能となっており、前記透湿防水膜は、前記キャップの天面に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の保温具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−39205(P2013−39205A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177195(P2011−177195)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】