説明

保湿紙およびその製造方法

【課題】柔らかさや肌触りが向上し、かつ、消臭抗菌作用を有する保湿紙およびその製造方法を提供する。
【解決手段】茶ポリフェノール及び保湿剤を衛生用基紙に塗布又は含浸することで、保湿剤を単独で塗布又は含浸するよりも柔らかさや肌触りが向上し、かつ、消臭抗菌作用を有する保湿紙。保湿剤はグリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、界面活性剤、変性シリコーン及び流動パラフィンのうち1種以上からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔らかさと消臭抗菌作用のある保湿紙およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉症等のアレルギー対策として、ローションティッシュに代表される柔らかさのある紙製品が上市されている。また、生活のあらゆる場に抗菌ブームが及んでおり、製紙業界でも銀イオンをはじめとした無機系抗菌剤が使用されている。そこで、消臭及び抗菌の両機能を併せ持った茶葉もしくは茶ポリフェノールを使用した紙製品が考えられたが、柔らかさと消臭及び抗菌の両機能を併せ持った紙製品などは存在しなかった。
【0003】
例えば、特許文献1には、含水性のティッシュ用基紙に、茶葉から抽出した茶葉抽出物を含浸したウェットティッシュの記載がある。しかし、保湿剤を使用しないため柔らかさと茶ポリフェノールの抗菌性が乏しいウェットティッシュになるという問題点があった。
【0004】
また、特許文献2には、緑茶製造工程の揉機による揉み工程において発生する皮状物質を使用した脱臭紙が記載されている。しかし、揉機工程にて発生する皮状物質は粒径1mm以上の茶葉や茶葉同士が接合された塊であり、粒径や性状、水分率にバラツキがあった。そのため、紙に配合しやすくするために皮状物質の乾燥・粉砕もしくはペースト化処理が必要となり、コスト的にも問題があった。また、粒径の細かい茶葉由来の皮状物質が乾燥工程にて熱劣化を起こす可能性があるという問題点もあった。
【0005】
また、特許文献3には、従来ある乾式家庭紙、湿式家庭紙に腐敗臭・悪臭だけを完全消臭する無害、無臭の有機化合物の消臭液を含漬させた乾式家庭紙、湿式家庭紙が記載されている。しかし、無害、無臭の有機化合物は茶ポリフェノールを含むものではなく、柔らかさと消臭及び抗菌の両機能を併せ持つものでもなかった。
【0006】
同様に、特許文献4には、吸湿性を有する塩類、多価アルコール及び糖類のうちの少なくとも一種、または、これらのうちの一種及び保水性を有する糊料を繊維ウェブに含有させた高水分含有繊維ウェブが記載されている。しかし、茶ポリフェノールを含むものではなく、柔らかさと消臭及び抗菌の両機能を併せ持つものでもなかった。
【0007】
また、特許文献5には、天然パルプ主体の紙の表面に茶抽出物を塗工した食品用抗菌紙が記載されている。しかし、茶抽出物の塗工後に乾燥工程があり、乾燥温度によっては茶抽出物が変色して柔らかさに欠ける食品用抗菌紙になるという問題点があった。
【0008】
同様に、特許文献6にも乾燥工程があり、茶抽出物が変色して柔らかさに欠ける紙製品になるという問題点があった。
【0009】
また、特許文献7には、常法により得られた水解紙のウェブ形成時又は後に、水溶性高分子と二個以上の水酸基が置換されたベンゼン核を含有する化合物(緑茶抽出物)を塗布して乾燥させ、その後、水解紙を湿潤させる溶液(水)に含浸させるなどした水解性ウェットティッシュが記載されている。しかし、十分な湿潤引張強度を持った水解紙ではあるが、湿潤させる溶液が水であるため、柔らかさと消臭及び抗菌の両機能を併せ持つものではなかった。
【0010】
また、特許文献8には、茶葉を抄紙機のワイヤーパート手前の段階で混入し、棒茶、粉茶等の外観形態と混合比率に応じて紙繊維中に散在した茶葉が、やゝ立体状に形成された脱臭・芳香機能を有する紙シートが記載されている。しかし、ワイヤーパート手前の段階で混入した茶葉をプレス工程にて脱水しても紙繊維と茶葉の保持する水分率の違いにより次工程の乾燥が難しくなり、また、茶葉繊維と紙繊維の弾力性の違いにより茶葉の剥離が起こる可能性があるという問題点があった。
【0011】
同様に、特許文献9には、破片状に調製した茶殻と繊維状パルプとを絡み合わせて抄紙した茶殻配合紙が記載されている。しかし、乾燥工程が難しく、また、茶殻繊維と繊維状パルプとの弾力性の違いにより茶殻の剥離が起こる可能性があるという問題点があった。
【0012】
【特許文献1】特開平3−29623号公報
【特許文献2】特開平9−122216号公報
【特許文献3】特開平10−280292号公報
【特許文献4】特開平5−156596号公報
【特許文献5】特開2000−110099号公報
【特許文献6】特開2002−17828号公報
【特許文献7】特開2001−3297号公報
【特許文献8】特開2002−242095号公報
【特許文献9】特開2004−143640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、柔らかさと消臭抗菌作用のある保湿紙を提供することにある。より具体的には、衛生用基紙に、茶ポリフェノール及び保湿剤を塗布又は含浸させることで、柔らかさや肌触りが向上し、かつ、消臭抗菌作用を有する保湿紙およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題解決のために鋭意研究を行った結果、衛生用基紙に、茶ポリフェノール及び保湿剤を塗布又は含浸させることにより、柔らかさや肌触りが向上し、かつ、消臭抗菌作用を有する保湿紙を見出した。また、前記衛生用基紙に、前記茶ポリフェノールを0.2〜1.8重量%含有させることで消臭抗菌作用を有し、さらに、前記保湿剤を5〜30重量%含有させることで柔らかさがあり、他の紙などにローション溶液や保湿剤が移行しない保湿紙を見出した。
【0015】
また、茶ポリフェノールを溶媒に添加して茶ポリフェノール溶液を作製する工程と、前記茶ポリフェノール溶液を保湿剤に添加してローション溶液を作製する工程と、前記ローション溶液を衛生用基紙に塗布又は含浸することで、保湿剤を単独で塗布するよりも柔らかさや肌触りが向上し、かつ、消臭抗菌作用を有する保湿紙の製造方法を見出した。すなわち、本発明は、以下に記載の手段を採用する。
【0016】
(1)衛生用基紙に、茶ポリフェノール及び保湿剤を塗布又は含浸させてなる保湿紙。
(2)前記衛生用基紙が、前記茶ポリフェノールを0.2〜1.8重量%含有する(1)に記載の保湿紙。
(3)前記衛生用基紙が、前記保湿剤を5〜30重量%含有する(1)〜(2)のいずれかに記載の保湿紙。
(4)前記保湿剤が、グリセリン及びポリエチレングリコールを含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の保湿紙。
(5)前記保湿剤が、ソルビトール、界面活性剤、変性シリコーン及び流動パラフィンのうち1種以上をさらに含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の保湿紙。
(6)柔らかさが1.71mN/100mm以下である(1)〜(5)のいずれかに記載の保湿紙。
(7)茶ポリフェノールを溶媒に添加して茶ポリフェノール溶液を作製する工程と、前記茶ポリフェノール溶液を保湿剤に添加してローション溶液を作製する工程と、前記ローション溶液を衛生用基紙に塗布又は含浸して柔らかさを1.71mN/100mm以下に調整する工程とを含むことを特徴とする保湿紙の製造方法。
(8)前記ローション溶液の水分量を11〜18重量%に調整することを特徴とする(7)に記載の保湿紙の製造方法。
(9)茶ポリフェノール溶液及び保湿剤を別個に衛生用基紙に塗布又は含浸して柔らかさを1.71mN/100mm以下に調整することを特徴とする保湿紙の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、茶ポリフェノール及び保湿剤を衛生用基紙に塗布又は含浸することで、平均粒径が約2μm、粒度分布が0.2μm〜6.7μmの茶ポリフェノールによるベアリング効果で、衛生用基紙表面上の保湿剤と接触物との間の摩擦力が減少することにより、保湿剤を単独で塗布又は含浸するよりも柔らかさや肌触りが向上し、かつ、茶ポリフェノール由来の消臭抗菌作用を有する保湿紙およびその製造方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における衛生用基紙は、保湿紙の原料となるペーパーであれば特に問題ないが、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、紙ナプキン又は紙タオル等の衛生用基紙、さらには、前記衛生用基紙を2次加工した便座シート、紙製マスク、紙製の生理用品又は紙おむつ等が挙げられる。
【0019】
なお、衛生用基紙として使用できる紙の坪量は10〜40g/m、さらに好ましくは10〜20g/mの紙を使用することができる。
【0020】
本発明における茶ポリフェノールは、茶生葉、プアール茶等の後発酵茶、紅茶等の発酵茶、ウーロン茶や包種茶等の半発酵茶、緑茶や釜煎り緑茶、ほうじ茶等の不発酵茶のいずれか単独で、若しくはこれらのうち任意のものを2種類以上で抽出して得られるもの、又はそれぞれを抽出して得られたものの混合物を用いることができる。茶の抽出は、茶を水、温水又は熱水、好ましくは40℃から100℃の温熱水、中でも90℃から100℃の熱水、或いは人体に無害なエタノール水溶液、又はエタノールなどの有機溶媒で抽出して茶ポリフェノールを得れば良い。更にこの茶ポリフェノールを溶媒抽出法、樹脂吸着法、限外濾過・逆浸透濾過等の濾過などの精製手段によって茶ポリフェノール、中でもカテキンの含有量を高める方向に精製して茶ポリフェノールを得ることもできる。また、市販の茶ポリフェノール製剤を用いることもできる。例えば、テアフラン30A((株)伊藤園製)は、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物を乾燥させてカテキン濃度を約30%とした茶ポリフェノール製剤であり、テアフラン90S((株)伊藤園製)は、緑茶を熱水抽出処理して得た抽出物を、水と低・高濃度アルコールを使って吸着カラムにて分離し乾燥させ、茶ポリフェノール濃度を約85から99.5%とした茶ポリフェノール製剤である。その他、市販の茶ポリフェノール製剤として、三井農林(株)製「ポリフェノン」、太陽化学(株)製「サンフェノン」、サントリー(株)製「サンウーロン」等が挙げられるが、前記製剤の平均粒径が約2.0μm、粒度分布が0.2μm〜6.7μmの茶ポリフェノールであればいずれの製剤も使用することができる。
【0021】
本発明に用いる保湿剤は、グリセリンと、ポリエチレングリコール及び/又はソルビトールとを含有する溶媒を使用することができ、グリセリン及びポリエチレングリコールの混合物、グリセリン、ポリエチレングリコール及びソルビトールの混合物を好ましくは使用することができる。前記混合物には、さらに、界面活性剤、変性シリコーン及び流動パラフィン等を適宜混合することもできる。例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール及び水を70〜80:10〜20:5〜15の割合で混合した混合物が使用でき、中でも75:15:10の割合で混合した混合物を好ましくは使用することができる。
【0022】
なお、本発明に用いられる界面活性剤は、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤のいずれでも良いが、人体に影響のない食品添加物であるショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンエステルを用いるのが好ましい。
【0023】
本発明は、衛生用基紙に、茶ポリフェノール及び保湿剤を塗布又は含浸させることにより、柔らかさや肌触りが向上し、かつ、消臭抗菌作用を有する保湿紙を得ることができる。
その際、前記衛生用基紙が、前記茶ポリフェノールを0.2〜1.8重量%含有するようにし、好ましくは0.3〜1.8重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%含有するようにする。茶ポリフェノールが0.1重量%以上で消臭抗菌作用が表れ、0.2重量%以上で大腸菌への抗菌作用及び、アンモニアガスの消臭作用が表れる。茶ポリフェノールの含有量は、最終製品である保湿紙に起こる茶ポリフェノールの析出が生じないような量とし、消臭抗菌作用とコストの兼ね合いにより適宜調整する。上限は1.8重量%が目安と考えられる。
【0024】
また、前記衛生用基紙が、前記保湿剤を5〜30重量%含有するようにし、好ましくは10〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%含有するようにする。保湿剤が5重量%以上で保湿紙に柔らかさが出てくる。保湿座剤を多く含有させすぎると他の紙などに保湿剤が移行してしまうので適宜調整する。上限は30重量%が目安と考えられる。
【0025】
また、本発明は、茶ポリフェノールを溶媒に添加して茶ポリフェノール溶液を作製する工程と、前記茶ポリフェノール溶液を保湿剤に添加してローション溶液を作製する工程と、前記ローション溶液を衛生用基紙に塗布又は含浸して柔らかさを1.71mN/100mm以下に調整する工程とを含むことで保湿紙を製造することができる。
【0026】
その際、粉末状の茶ポリフェノールを保湿剤に直接添加して溶解しようとすると茶ポリフェノールが不溶解物として残りやすいことを見出したため、予め少量の水などの溶媒で茶ポリフェノールを溶解し、茶ポリフェノール溶液としてから保湿剤に添加してローション溶液を作製する。なお、ローション溶液中の水分量は、11〜18重量%、好ましくは11〜15重量%に調製する。ローション溶液の水分量が11%以上にすると茶ポリフェノールがダマになりにくい。水分が多すぎるとすぐに保湿剤と茶ポリフェノール溶液が分離してしまうので適宜調整する。上限は18%が目安と考えられる。保湿剤に予め定量の水を添加した後、茶ポリフェノールを添加して溶解することも可能であるし、茶抽出液をそのまま添加してローション溶液を調製しても良い。
【0027】
本発明において塗布又は含浸するとは、衛生用基紙に常法にて均一に塗布又は含浸することをいう。例えば、衛生用基紙にロールコーター(ローション塗布機;川之江造機(株)製))を用いて衛生用基紙表面に均一に塗布することもできるし、衛生用基紙をローション溶液等に均一に浸るようにして含浸することもできる。その後、塗布又は含浸された衛生用基紙を常温にて1時間以上、好ましくは12時間以上、さらに好ましくは24時間以上静置して保湿紙を得る。
【0028】
また、本発明における柔らかさとは、試験片(保湿紙)を一定の隙間に押し込むときに受ける抵抗力を指し、曲げと滑りの複合値を表す。本発明では、JAPAN
TAPPI紙パルプ試験方法( No.34:2000 ; 紙―柔らかさ試験方法)に従って、試験片を10cm×10cmに切り取り、ハンドルオーメーター(Handle-O-Meter)No.226スタンダード((株)安田精機製作所製)にて測定することができる。
【0029】
その際、本発明の保湿紙の柔らかさは保湿紙としての形状が保持可能であれば良く、1.71mN/100mm以下、好ましくは1. 71mN/100mm〜0.8mN/100mm、さらに好ましくは0.8mN/100mm〜0.2mN/100mmの範囲である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0031】
茶ポリフェノールとしては、表1に示すような成分を有する緑茶抽出ポリフェノール(商品名:テアフラン30A(粉末);伊藤園社製)を準備した。また、保湿剤としては、グリセリン(商品名:RG;日本油脂社製)、ポリエチレングリコール(商品名:PEG200;日本油脂社製)及び水(純水)を75:15:10の割合で混合した溶液(以下、保湿剤A)を準備した。
【0032】
【表1】

【0033】
(ローション溶液の調製)
前記保湿剤Aに、前記緑茶抽出ポリフェノール(総ポリフェノール;粉末)が1.5重量%含有するように添加した後、10分間攪拌してローション溶液を調製した(比較例)。
また、前記緑茶抽出ポリフェノールを予め純水にて溶解して茶ポリフェノール溶液を調製し、表2に示すような配合となるようにローション溶液を調製した。その後、ローション溶液の分離状態の有無を観察した。
【0034】
【表2】

【0035】
保湿剤Aに、緑茶抽出ポリフェノール(粉末)を直接添加したローション溶液(比較例)の場合、緑茶抽出ポリフェノールは溶解せずダマになってしまうが、予め純水にて溶解した緑茶抽出ポリフェノールを添加することでその問題は解消され、さらに、保湿剤Aと茶ポリフェノール溶液は分離しない。しかし、ローション溶液中の水分量が18%だと24時間後には分離してしまい、水分量が20%だと5分後には分離してしまった。
【0036】
(カビ発生試験)
前記保湿剤Aに表1記載の緑茶抽出ポリフェノールを添加して表3に示すような配合となるようにローション溶液を衛生用基紙(坪量27.5g/m)にロールコーターを用いて均一に塗布した後、常温にて1時間静置した。その後、ポリエチレン製の密封容器に入れ、37℃にて10日間保存試験に供した後、保湿紙の状態を確認した。
【0037】
【表3】

【0038】
ローション溶液の塗布量が40重量%になると保湿紙にカビの発生が若干見られ、45重量%ともなると保湿紙全体にカビの発生が見られた。このことから、ローション溶液の塗布量が多くなると、保湿紙中に含まれる茶ポリフェノール量は多くなるが、その分、保湿紙に占める保湿剤由来の水分量が多くなり、カビが発生したものと思われた。
【0039】
(ローション溶液の移行試験)
前記保湿剤Aに表1記載の緑茶抽出ポリフェノールを添加して表4に示すような配合となるようにローション溶液を衛生用基紙(坪量27.5g/m)にロールコーターを用いて均一に塗布した後、常温にて1時間静置した。その後、市販のA4普通紙2枚を挟んで両側から5kg/cmの圧力をかけ、保湿紙に含まれるローション溶液がA4普通紙に移行しないかどうかを確認した。
【0040】
【表4】

【0041】
ローション溶液の塗布量が35重量%になると本発明で得た保湿紙を中心にして挟み込んだ市販のA4普通紙(上、下2枚)にローション溶液が移行した。
このことから、ローション溶液の塗布量が多くなると、保湿紙に含まれるローション溶液が移行することが分かった。
【0042】
<比較例及び実施例>
表1記載の緑茶抽出ポリフェノールを表5に示すような配合となるように緑茶ポリフェノール水溶液を調製し、衛生用基紙(坪量11g/m)であるティッシュペーパーにロールコーターを用いて均一に塗布した後、105℃にて1時間乾燥後、緑茶ポリフェノール含有紙を得た。
また、表1記載の緑茶抽出ポリフェノールを表6に示すような配合となるようにローション溶液を調製し、衛生用基紙(坪量11g/m)であるティッシュペーパーにロールコーターを用いて均一に塗布した後、常温にて1時間静置して本発明の保湿紙を得た。
その後、緑茶ポリフェノール含有紙及び本発明の保湿紙の表面状態を実態顕微鏡にて観察した。
【0043】
<表面性状の観察方法>
前記緑茶ポリフェノール含有紙及び本発明の保湿紙を3cm×3cmに切り取り、紙の表面状態を実体顕微鏡(BS-D8000 Ver.6.14(ソニック社製))を用いて観察した(倍率200倍)。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
緑茶ポリフェノール含有紙の場合、衛生用基紙(坪量11g/m)であるティッシュペーパーに塗布する水分量が多いと衛生用基紙の最大吸水量を超え、また、水分量を少なくすると緑茶ポリフェノール水溶液がペースト状になり塗布不可能となった。
なお、紙の表面性状は、顕微鏡観察にて塗布ムラが確認された。
一方、本発明の保湿紙の場合、衛生用基紙(坪量11g/m)であるティッシュペーパーに塗布する水分量が一定であるため、衛生用基紙の最大吸水量を超えることなく、また、緑茶ポリフェノール水溶液がペースト状にならないため問題なく塗布可能であった。なお、保湿紙の表面性状は、顕微鏡観察にて塗布ムラは確認されなかった。
【0047】
<保湿紙の性能評価>
表1記載の緑茶抽出ポリフェノールを表7に示すような配合となるようにローション溶液を調製し、衛生用基紙(坪量13g/m)であるティッシュペーパーにロールコーターを用いて均一に塗布した後、常温にて1時間静置してコントロール及び本発明1〜3の保湿紙を得、その性能を評価した。比較例として表1記載の緑茶抽出ポリフェノールを表7に示すような配合となるように緑茶ポリフェノール水溶液を調製し、衛生用基紙(坪量13g/m)であるティッシュペーパーにロールコーターを用いて均一に塗布した後、105℃にて5時間乾燥させた比較例1、2の緑茶ポリフェノール含有紙を得、その性能を評価した。
【0048】
【表7】

【0049】
<柔らかさ試験>
JAPAN
TAPPI紙パルプ試験方法( No.34:2000 ; 紙―柔らかさ試験方法)に従って、表7記載のサンプルA1〜A7をそれぞれ10cm×10cmに切り取り、ハンドルオーメーター(Handle-O-Meter)No.226スタンダード((株)安田精機製作所製)にて柔らかさ(mN/100mm)を測定した。
【0050】
評価基準
柔らかさ

○ : 1.65mN/100mm以下
△ : 1.71mN/100mm以下1.65mN/100mm未満
× : 1.71mN/100mm超
合否判定 ○、△が合格
【0051】
<肌触り試験>
表7記載のサンプルA1〜A7をそれぞれ20cm×20cmに切り取ったサンプルを被験者10名に接触させ、感触の良いサンプルを順に選び出し、一番感触の良いものから順に7点、6点、5点、4点、3点、2点、1点、一番感触の悪いものを0点として10名の平均値を算出して、肌触りの基準とした。
【0052】
評価基準
肌触り
○ : 5点以上
△ : 3点以上5点未満
× : 3点未満
合否判定 ○、△が合格
【0053】
<抗菌性試験>
フィルム密着法
「JIS L1902:2002: 菌液吸収法」に従ってサンプルA1〜A7各0.4gをオートクレーブで滅菌後、約104CFU/mlになるように1/20ニュートリエント培地で調製した菌液0.2mlを接種し、37℃、18時間で保存後、それぞれの生菌数(CFU/枚)を測定した(使用菌:黄色ブドウ球菌、大腸菌)。
【0054】
評価基準
黄色ブドウ球菌、大腸菌の数
○:18時間後の生菌数(CFU/枚)が<8.3×10
△:18時間後の生菌数(CFU/枚)が8.3×10〜8.3×10
×:18時間後の生菌数(CFU/枚)が>8.3×10
合否判定 △、○が合格
【0055】
<消臭性試験>
表7記載のサンプルA1〜A7をそれぞれ10cm×10cmに切り取り、消臭試験に供する3Lのガスとともにテドラーバックに封入し、常温にて2時間静置後、ガステック社製のガス検知管によりテドラーバック中のガス濃度を測定した。測定前後のガス濃度を用い、式1により消臭性(悪臭減少率(%))を求め、評価した。
【0056】
悪臭減少率(%)=(C-Aa)/C×100・・・式1
Aa :
2時間後にテドラーバック中に残存するガス濃度
C : コントロールガス濃度
使用ガス:アンモニア、酢酸、イソ吉草酸
【0057】
評価基準
アンモニアガスの場合
悪臭減少率
○ : 30%以上
× : 30%未満
酢酸ガスの場合
悪臭減少率
○ : 72%以上
× : 72%未満
イソ吉草酸ガスの場合
悪臭減少率
○ : 79%以上
× : 79%未満
それぞれ、合否判定 ○が合格
総合評価基準
合否判定 △、○が合格
【0058】
【表8】

【0059】
表8より、茶ポリフェノールを含んだローション溶液を衛生用基紙に塗布することにより柔らかさ、肌触りならびに消臭・抗菌効果が向上することが明らかとなった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生用基紙に、茶ポリフェノール及び保湿剤を塗布又は含浸させてなる保湿紙。
【請求項2】
前記衛生用基紙が、前記茶ポリフェノールを0.2〜1.8重量%含有する請求項1に記載の保湿紙。
【請求項3】
前記衛生用基紙が、前記保湿剤を5〜30重量%含有する請求項1〜2のいずれかに記載の保湿紙。
【請求項4】
前記保湿剤が、グリセリン及びポリエチレングリコールを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の保湿紙。
【請求項5】
前記保湿剤が、ソルビトール、界面活性剤、変性シリコーン及び流動パラフィンのうち1種以上をさらに含有する請求項1〜4のいずれかに記載の保湿紙。
【請求項6】
柔らかさが1.71mN/100mm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の保湿紙。
【請求項7】
茶ポリフェノールを溶媒に添加して茶ポリフェノール溶液を作製する工程と、前記茶ポリフェノール溶液を保湿剤に添加してローション溶液を作製する工程と、前記ローション溶液を衛生用基紙に塗布又は含浸して柔らかさを1.71mN/100mm以下に調整する工程とを含むことを特徴とする保湿紙の製造方法。
【請求項8】
前記ローション溶液の水分量を11〜18重量%に調整することを特徴とする請求項7に記載の保湿紙の製造方法。
【請求項9】
茶ポリフェノール溶液及び保湿剤を別個に衛生用基紙に塗布又は含浸して柔らかさを1.71mN/100mm以下に調整することを特徴とする保湿紙の製造方法。

【公開番号】特開2007−303028(P2007−303028A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133130(P2006−133130)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【出願人】(506160444)愛弘商事 株式会社 (1)
【Fターム(参考)】