説明

保管倉庫

【課題】保管倉庫において、正確で、かつ、作業性の良い在庫管理システムを実現する。
【解決手段】パージストッカ1は、複数のポッド載置部3aと、IDリーダ16と、複数の在庫センサ20と、制御部24とを備えている。複数のポッド載置部3aは、ID17が付されたポッド2を保管するための部材である。IDリーダ16は、ポッド2のID17を読み取り可能である。複数の在庫センサ20は、各ポッド載置部3aに設けられている。制御部24は、IDリーダ16からのID情報と在庫センサ20からの在庫情報とを受け取り可能であり、ポッド2の在庫情報を管理する。制御部24は、IDリーダ16からポッド2のID情報を受け取った後に在庫センサ20が在庫を検出したポッド載置部3aと読み取られたID情報とを関連づけて記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管倉庫に関し、特に、人手によって複数の物品が保管される保管倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の荷物を人手によって入庫・出庫する保管倉庫が知られている。そのような保管倉庫では、在庫管理システムは以下のように運用されている。第1の場合は、作業者が物品を保管倉庫に持ってくると、管理装置が入庫棚を作業者に指定する。第2の場合は、作業者が、入庫の前後に手動で在庫情報を管理装置に入力する。いずれの場合も、入庫された物品の情報と入庫先の棚情報とが関連づけられて、管理装置の在庫管理システムに保存される。
【0003】
また、別の管理システムでは、荷物を保管倉庫に入庫する際に、入庫口においてIDリーダによって荷物のIDを読み込ませ、さらに作業者が保管先の棚番号を入力する。これにより、保管倉庫のコンピュータが荷物のID情報と保管先の棚番号を結びつけて記憶する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
保管倉庫の一例としては、ポッド内を不活性ガスで置換するためのパージストッカが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/059675
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の第1の場合において事前に指定された棚に荷物を入庫する場合は、保管倉庫が広くて棚数が多い場合は、作業者が指定された棚を探すことが困難である。また、作業者が指定された棚以外の棚に誤って荷物を入庫すると、その後に正確な在庫管理ができなくなる。
前述の第2の場合において作業者が手動で在庫情報を入力する場合は、入力作業が必要になり、煩雑である。また、入力ミスによって、誤った情報が記録されることがある。
【0007】
本発明の課題は、保管倉庫において、正確で、かつ、作業性の良い在庫管理システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る保管倉庫は、複数の載置部と、IDリーダと、複数の在庫センサと、制御部とを備えている。複数の載置部は、IDが付された物品を保管するための部材である。IDリーダは、物品のIDを読み取り可能である。複数の在庫センサは、各載置部に設けられている。制御部は、IDリーダからのID情報と在庫センサからの在庫情報とを受け取り可能であり、物品の在庫情報を管理する。制御部は、IDリーダから物品のID情報を受け取った後に、在庫センサが在庫を検出した載置部と読み取られたID情報とを関連づけて記憶する。
この倉庫では、制御部が、各載置部に設けられた在庫センサから物品が置かれた場所を特定し、さらに読み取ったID情報と関連づけて記憶することで、在庫情報を更新できる。この場合、作業者は空いた載置部であれば自由に選択することができるので、入庫時の作業性が向上する。しかも情報の入力等の作業が無いため、正確な在庫管理が実現される。
【0009】
制御部は、在庫センサからの在庫情報によって物品が存在しないと判断すると、在庫センサが設けられている載置部に関連づけられているID情報を削除してもよい。
この倉庫では、制御部は、在庫センサが物品を検出しなくなることで、物品の取り出しを把握して、次に在庫情報から当該物品に関する情報を削除する。
【0010】
制御部は、IDリーダから物品のID情報を受け取った後に、在庫センサからの在庫情報を受け取る前に他のID情報を受け取ると、エラー処理を実行するようにしてもよい。
この倉庫では、例えば、最初の作業者がIDリーダに他の物品のIDを読み込ませて次にその物品を載置部に置く前に、次の作業者がIDリーダに別の物品のIDを読み込ませたとする。この場合、制御部はエラー処理を実行する。したがって、後の物品のID情報が有効にはならない。この結果、正確な在庫管理が実現される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る保管倉庫では、正確で、かつ、作業性の良い在庫管理システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】パージストッカの概略模式図。
【図2】パージストッカの制御構成を示すブロック構成図。
【図3】パージストッカの制御部の入庫時制御動作を示すフローチャート。
【図4】パージストッカの制御部の出庫時制御動作を示すフローチャート。
【図5】パージストッカの制御部の在庫管理情報の一部を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)パージストッカの構造
図1を用いて、パージストッカ1について説明する。図1は、パージストッカ1の概略模式図である。
【0014】
パージストッカ1は、複数のポッド2を収納するともに、ポッド2内を所定のエア(例えば、クリーンドライエアやN等の不活性ガス)でパージするための装置である。パージストッカ1は、複数の棚3を有している。棚3には、ポッド2が載置可能である。この実施例では、1つの棚3は2つのポッド載置部3aを有しており、そのような棚3が5段で1つの区画4を構成している。区画4ごとに開閉扉(図示せず)が設けられている。
【0015】
パージストッカ1は、さらに、パージ装置6を有している。パージ装置6は、棚3に置かれたポッド2内にエアを供給・排出するための装置である。パージ装置6は、エア供給タンク8と、複数のエア供給管9と、複数のエア排出管10とを有している。エア供給タンク8は、例えば、Nガスを内部に有している。複数のエア供給管9は、エア供給タンク8から各棚3のポッド載置部3aに延びる(最下段のみ図示)。複数のエア排出管10は、各棚3のポッド載置部3aから延びている(最下段のみ図示)。
さらに、エア供給管9の途中には、流量調整バルブ11と、開閉バルブ12が設けられている。
【0016】
パージストッカ1は、さらに、複数の棚3の横に、ポッド載置台15を有している。ポッド載置台15はIDリーダ16を有している。IDリーダ16は、入庫前のポッド2がポッド載置台15に置かれると、ポッド2のID17を読み取るための装置であるIDリーダ16を有している。ID17の種類は、特に限定されず、バーコードやRFIDであってもよい。パージストッカ1は、さらに、複数の棚3の横に、ディスプレイ18と、キーボード19を有している。
【0017】
棚3の上部には、警報装置21が設けられている。警報装置21は、ランプおよびスピーカまたはいずれか一方を有している。また、棚3においてポッド載置部3aごとに、在庫ランプ22が設けられている。
【0018】
棚3においてポッド載置部3aごとに、在庫センサ20が設置されている(最上段の棚3にのみ図示)。在庫センサ20は、ポッド載置部3aにポッド2が置かれているか否かを検出する。在庫センサ20は、この実施形態では光電センサである。ただし、在庫センサ20は、近接センサ、リミットスイッチ等の他のセンサであってもよい。
【0019】
(2)制御部の構成
図2を用いて、パージストッカ1の制御構成について説明する。制御部24は、CPU、RAM、ROMを有するコンピュータであり、所定のプログラムを実行することで制御動作を行う。制御部24は、メモリ26を含んでいる。
【0020】
さらに、制御部24には、IDリーダ16、キーボード19、複数の在庫センサ20が接続されており、それらからの検出信号が制御部24に送信される。
【0021】
制御部24には、さらにディスプレイ18,警報装置21、複数の在庫ランプ22が接続されており、それらに対して制御部24から制御信号が送信される。
【0022】
(3)入庫時の制御動作
図3を用いて、入庫時の制御動作について説明する。図3は、パージストッカ1の制御部24の入庫時制御動作を示すフローチャートである。
【0023】
ステップS1では、IDリーダ16によってID17が読み取られるのを待ち、ID17が読み取られると、ステップS2に移行する。作業者がポッド2をポッド載置台15に置くと、IDリーダ16がポッド2のID17を読み取る。制御部24は、IDリーダ16からの検出信号を受信すると、ID情報をメモリ26に記憶する。
【0024】
ステップS2では、制御部24が、ID17が読み込まれてから所定の時間が経過したか否かを判断する。所定の時間が経過していない場合は、ステップS3に移行する。所定時間が経過していると、ステップS7に移行して第1エラー処理を行う。具体的には、所定時間が経過しても作業者がポッド2を棚3に置いていないので、制御部24は、読み取ったID情報を削除する。さらに、制御部24は、その後にポッド2がポッド載置部3aに置かれても、例えば警報装置21によって異常警告を報告する。
なお、第1エラー処理を行わずに、所定の時間が経過していると読み取ったID情報を削除して初期状態に戻るように制御されてもよい。
【0025】
ステップS3では、制御部24は、IDリーダ16によってID17が再び読み取られるか否かを判断する。ID17がまだ読み取られていないとステップS4に移行する。ID17が読み取られるとステップS8に移行して、第2エラー処理を行う。具体的には作業者がポッド2をポッド載置台15に置くと、制御部24は、当該ポッド2のID情報は記憶せず、また警報装置21によって、ポッド2をポッド載置台15から取り外して再度置くように作業者に指示する。
【0026】
以上に述べたように、このパージストッカ1では、例えば、最初の作業者がIDリーダ16にポッド2のID17を読み込ませて次にそのポッド2をポッド載置部3aに置く前に、次の作業者がIDリーダ16に別のポッド2のID17を読み込ませたとする。この場合、制御部24はエラー処理を実行する。したがって、後のポッド2のID情報が有効にはならない。この結果、正確な在庫管理が実現される。
【0027】
ステップS4では、制御部24は、在庫センサ20からの検出信号が送信されているか否かを判断する。検出信号が入力されていなければ、ステップS2に戻る。検出信号が入力されていれば、ステップS5に移行する。
【0028】
ステップS5では、制御部24は、ポッド2のID情報とポッド2が置かれた棚情報とを関連づけて、メモリ26に記憶する。図5に、メモリ26に保存された表を示す。表は、関連づけられた、載置部番号、在庫の有無、IDコードを有している。ステップS5が終了すると、ステップS1に戻る。
【0029】
以上に述べたように、このパージストッカ1では、制御部24が、各ポッド載置部3aに設けられた在庫センサ20からポッド2が置かれたポッド載置部3aを特定し、さらに読み取ったID情報と関連づけて記憶することで、在庫情報を更新できる。この場合、作業者は空いたポッド載置部3aであれば自由に選択することができるので、入庫時の作業性が向上する。しかも情報の入力等の作業が無いため、正確な在庫管理が実現される。
そして、この在庫情報を用いて、保管されている物品の種類、数量、データなどを管理する。
【0030】
(4)出庫時の制御動作
図4を用いて、入庫時の制御動作について説明する。図4は、パージストッカ1の制御部24の出庫時制御動作を示すフローチャートである。
【0031】
ステップS11では、ポッド2のID情報が入力されるのを待って、ステップS12に移行する。作業者がキーボード19およびディスプレイ18を利用してID情報を入力すると、キーボード19からID情報が制御部24に送信される。
【0032】
ステップS12では、制御部24は、メモリ26を参照することで、当該ID情報に関連づけられたポッド載置部3aの番号を探し出す。そして、制御部24は、当該ポッド載置部3aの在庫ランプ22を点灯させる制御信号を送信する。これにより、目的とするポッド2が置かれたポッド載置部3aの在庫ランプ22が点灯する。したがって、作業者は、在庫ランプ22に従って、目的のポッド載置部3aに向かうことができる。
【0033】
ステップS13では、制御部24は、在庫センサ20からの検出信号が送信されなくなるのを待って、ステップS14に移行する。具体的には、作業者が目的のポッド2をポッド載置部3aから取り出すと、在庫センサ20から制御部24に検出信号が送信されなくなる。
【0034】
ステップS14では、制御部24は、メモリ26内の当該ポッド2に関するデータを削除する。
【0035】
ステップS15では、制御部24は、在庫センサ20に対して消灯させる制御信号を送信する。これにより、目的とするポッド2が取り除かれたポッド載置部3aの在庫ランプ22が消灯する。
【0036】
以上に述べたように、制御部24は、在庫センサ20からの在庫情報によってポッド2が存在しないと判断すると、在庫センサ20が設けられているポッド載置部3aに関連づけられているID情報を削除する。
このパージストッカ1では、制御部24は、在庫センサ20がポッド2を検出しなくなることで、ポッド2の取り出しを把握して、次に在庫情報から当該ポッド2に関する情報を削除する。この場合、作業者は出庫に関する情報を入力する必要がない。
【0037】
(5)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
倉庫の種類はパージストッカに限定されない。また、倉庫の種類は半導体を取り扱う倉庫に限定されない。
【0039】
前記実施形態では出庫時制御動作において最初に作業者が目的とするポッド2のID情報を入力する作業によってポッド2の在庫を調べていたが、本発明はこれに限定されない。作業者が任意にポッドを取り出すことを許可すれば、以下のように出庫時制御が可能である。
制御部24は、在庫センサ20からの検出信号が送信されなくなるのを待つ(ステップS13)。作業者が目的のポッド2をポッド載置部3aから取り出すと、検出信号が送信されなくなる。制御部24は、メモリ26内の当該ポッド2に関するデータを削除する(ステップS14)。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、人手によって複数の物品が保管される保管倉庫に広く適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 パージストッカ(保管倉庫)
2 ポッド(物品)
3 棚
3a ポッド載置部
4 区画
6 パージ装置
8 エア供給タンク
9 エア供給管
10 エア排出管
11 流量調整バルブ
12 開閉バルブ
15 ポッド載置台
16 IDリーダ
17 ID
18 ディスプレイ
19 キーボード
20 在庫センサ
21 警報装置
22 在庫ランプ
24 制御部
26 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IDが付された物品を保管するための複数の載置部と、
前記物品のIDを読み取り可能なIDリーダと、
各載置部に設けられた在庫センサと、
前記IDリーダからのID情報と前記在庫センサからの在庫情報とを受け取り可能であり、前記物品の在庫情報を管理するための制御部とを備え、
前記制御部は、前記IDリーダから前記物品のID情報を受け取った後に、前記在庫センサが在庫を検出した載置部と前記読み取られたID情報とを関連づけて記憶する、保管倉庫。
【請求項2】
前記制御部は、前記在庫センサからの在庫情報によって物品が存在しないと判断すると、前記在庫センサが設けられている載置部に関連づけられているID情報を削除する、請求項1に記載の保管倉庫。
【請求項3】
前記制御部は、前記IDリーダから前記物品のID情報を受け取った後に、前記在庫センサからの在庫情報を受け取る前に他の物品のID情報を受け取ると、エラー処理を実行する、請求項1または2に記載の保管倉庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate