説明

保護カバー付き注出具

【課題】封止部が注出筒先端に破断可能な薄肉部を介して一体的に形成された開封前の注出具を保護する保護カバー付き注出具を提供する。
【解決手段】保護カバー付き注出具1は、容器への溶着部と該溶着部から上方に延びる注出筒3と該注出筒先端に破断可能な薄肉部4を介して一体に接続される封止部とを有する注出具1と前記注出筒3の外周を覆うように設けられた保護カバー6とからなる保護カバー付き注出具1である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部の保護カバー付き注出具、特に紙パックの注出口部用に適した保護カバー付き注出具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開封後内容液を何回かに分けて注出使用する従来の容器の注出口部は、開封後リシールするためのキャップを備えているのが一般的である。そして、そのキャップは製造コストを削減するため、注出口部と一体に成形されるものが従来から提案されている。特許文献1に示された「シール口栓」は、超音波シール時の薄肉脆弱線のピンホールの発生を防ぎ、口栓の大きさの制約がなく、しかも、キャップと注出口部を一体成形する液体用紙容器用のシール口栓を提供することを目的に提示されたもので、その構成は図8に示されるように、液体用紙容器の天板に突設するシール口栓において、外周に貼着リング111をもつ台座リング110に円筒状の注出口筒120を立設した注出口部100の上端に、縦の薄肉脆弱線213が上端から下端にわたって設けられ、この縦の薄肉脆弱線に隣接する帯状部210の外側端縁に開封用つまみ214をもつリング状の切取り部200の下端をリング状の薄肉脆弱線211を介して接続し、この切取り部の上端に、円筒状の側壁320の上方外周に着脱用リング321をもち、下方外周に密封リング324をもち、且つ下端に挿入ガイドリング323をもつキャップ部300の前記密封リングの下方外周をリング状の薄肉脆弱線212を介して接続するというものである。このシール口栓では、注出口部とキャップ部との間に設けられた帯状部の開封つまみを外側方向に引っ張って薄肉脆弱線を引き裂いて、リング状の切取り部を取り去り、口栓を開封する形態であるため、注出口部の注出口筒内に収容されているプルリングを引っ張り、薄肉脆弱線を引き裂いて口栓を開封する形態のキャップのように、プルリングの使い易さや強度から、口栓の大きさに制約が生じることがなく、開封手段により口栓の大きさに制約が生じない効果がある。また、注出口部100とキャップ部300との間に切取り部200を挟んだ状態で一体成形するものであり、製造費用の点においては、従来のシール口栓に比較し有利となる効果を奏する。
【0003】
しかし、特許文献1に示されたシール口栓に流通時等の開封前の状態で注出口部に衝撃を受けた場合、薄肉脆弱の形態とされているスコアが破断され、液漏れを生じてしまう危険性を否定できない。このような危険を回避するため、従来から注出口部全体をキャップで被い保護することが提示されている。特許文献2の「注出キャップ」は低コストで使い勝手のよい、少量の内容液を注出できる注出キャップを提供することを目的として提案されたものであり、そのための構成として、注出キャップは、図7に示されるように容器の口部に組み付けられるキャップ体Aの頂面Bに、先端に微小な開口孔を有する注出ノズルCと、注出ノズルに隣接して設けられた変形可能な押圧部Dとを設け、更に注出ノズル先端に開口孔を塞ぎ、かつ分離すると開口孔が開口されるように注出ノズルから分離可能に成形した注出ノズルの蓋Eと、蓋Eと注出ノズルCとを連結する屈曲自在の連結片Fとを、キャップ体Aとともに樹脂により一体に成形することを提示している。これにより、製造コストが低く、しかも使用時までは容器内を密封し、しかも開閉自在な蓋を有する、少量の内容液を容器から注出できる注出キャップを提供できるとの効果を奏することを謳ったものであるが、この発明はさらに有底円筒状で、底板Gが側面に対して傾斜し、少なくとも該底板と側面とで囲まれた範囲内に計量目盛りを備えたオーバーキャップHを、前記底板を頂板として着脱自在に組み付けたことを提示し、注出キャップを覆うオーバーキャップにより、注出キャップ全体を保護でき、しかもオーバーキャップの傾斜した底面を用いて少量の内容液を計量できるとしている。たしかに、このオーバーキャップを備えたことで、前述のスコアの破断を防止する効果を備えているといえるが、このオーバーキャップは注出口部とは別体で製造しなければならず、コストを押し上げるという問題を伴うものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−20355号公報 「シール口栓」 平成9年1月21日公開
【特許文献2】特開2005−186966号公報 「注出キャップ」 平成17年7月14日公開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、封止部が注出筒先端に破断可能な薄肉部を介して一体的に形成された開封前の注出具を保護する保護カバー付き注出具を提供すること、また、その保護カバーを注出具と一体成形できる形態を提示すること、更には、保護カバー付き注出具を容器口部開口に取り付け、溶着するまでの間、注出具を容器側に仮止めする機能をその保護カバーに備えさせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の保護カバー付き注出具は、容器への溶着部と該溶着部から上方に延びる注出筒と該注出筒先端に破断可能な薄肉部を介して一体に接続される封止部とを有する注出具と前記注出筒の外周を覆うように設けられた保護カバーとからなる保護カバー付き注出具であって、前記封止部は、筒体と該筒体の上端を閉じるように形成される天板とから形成されており、前記保護カバーは、弱化部を介して前記封止部の天板に固定された状態で成形され、成形後に該保護カバーを下方に押し下げることにより該弱化部を破断して、該保護カバーを該天板から切り離し、前記注出筒に固定して設けられており、保護カバーの上端が少なくとも前記注出筒先端より高くなるように構成した。
また、前記保護カバーは、上方及び下方が開口された円筒状筒部若しくは一部が部分的に切りかかれた円弧状筒部であり、前記保護カバーの内周面下部に形成された係合突起と、前記注出筒の外周面下部に形成された係合部とが係合してなり、前記保護カバーの上端が前記封止部の天板の上面より高くなるようにした。
【0007】
本発明の保護カバー付き注出具は、1つの形態として前記注出筒先端には、破断可能な薄肉部を介して環状の分離片が設けられ、該分離片の上端には、破断可能な薄肉部を介して前記封止部が連結されるように構成した。
本発明の保護カバー付き注出具は、1つの形態として紙製容器の口部開口に保護カバー付き注出具を挿入した時に、前記保護カバーの外周面下端部近傍に、容器口部開口端と係止する突起部を設けるようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の保護カバー付き注出具は、その保護カバーが、弱化部を介して前記封止部の天板に固定された状態で一体的に成形されるものであるから、製造工程において注出筒や封止部とともに成形ができ、しかも成形後に該保護カバーを下方に押し下げるという単純な作業によって該弱化部を破断して、該保護カバーを該天板から切り離し、前記注出筒に固定して設けることができる。また、保護カバーの上端が少なくとも前記注出筒先端より高くなるように構成することにより、開封前の状態において薄肉部が異物との衝突で破断してしまうことを防止する機能が備えられる。
また、前記保護カバーを、上方及び下方が開口された円筒状筒部若しくは一部が部分的に切り欠かれた円弧状筒部である構成とすることにより、開封前の状態における薄肉部の外方を覆い隠す機能が備えられる。
また、前記保護カバーの内周面下部に形成された係合突起と、前記注出筒の外周面下部に形成された係合部とが係合される構成を採用したことにより、該保護カバーの前記注出筒からの抜け止め機能を備えることとなって嵌合固定状態をより確実なものとできる。更に、前記保護カバーの上端を前記封止部の天板の上面より高くなるようにすることによって、開封前の状態において前記封止部が異物との衝突で開封してしまうことをも防止する機能が備えられる。
【0009】
紙製容器の口部に保護カバー付き注出具を挿入した時に、前記保護カバーの外周面下端部近傍に、容器口部開口端と係止する突起部を設けるようにした本発明の保護カバー付き注出具は、容器への溶着時の抜け止機能を有し工程作業の安定化をもたらす。
注出筒先端には、破断可能な薄肉部を介して環状の分離片が設けられ、該分離片の上端には、破断可能な薄肉部を介して前記封止部が連結されるように構成した本発明の保護カバー付き注出具は、封止部の取り外しの作業が容易となり、高齢者や子供でも開封することが出来る。また、紙製容器の口部に保護カバー付き注出具を挿入した時に、前記保護カバーの外周面下端部近傍に、容器口部開口端と係止する突起部を設けるようにした本発明の保護カバー付き注出具は、容器への溶着時の抜け止め機能を有し工程作業の安定化をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の保護カバー付き注出具の成形時における形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の保護カバー付き注出具の成形時における形態を示す部分断面正面図である。
【図3】本発明の保護カバー付き注出具の成形時における形態を示す平面図である。
【図4】容器に取り付けられた本発明の保護カバー付き注出具の形態を示す部分断面正面図である。
【図5】リシール方式を採用した本発明の封止部をリシールした形態を示す全断面正面図である。
【図6】本発明の保護カバー付き注出具が取り付けられた紙パック容器の例を示す斜視図である。
【図7】注出口保護用のオーバーキャップを有する従来の「注出キャップ」の例を示す図である。
【図8】リシール用の蓋がスコアを介して注出口と一体的に成形された従来の「シール口栓」の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の保護カバー付き注出具は図6に示されるような紙パック容器に代表される容器の注出口部用に適した保護カバー付き注出具であるが、その実施の形態を図1、図2、図3を参照して詳細に説明する。1は容器10に取り付けられる注出具であり、該注出具1は容器10への溶着部2と該溶着部2から上方に延びる注出筒3と該注出筒3の先端に破断可能な薄肉部4を介して一体に接続される封止部5とからなり、6がその付属品の前記注出筒3の外周を覆うように設けられた保護カバーである。前記封止部5は、筒体51と該筒体51の上端を閉じるように形成される天板52とから形成されており、前記保護カバー6は、弱化部61を介して前記封止部5の天板に固定された状態で一体的に成形される。本発明の保護カバー付き注出具は、構成部品となるフランジ状の溶着部2と注出筒3と薄肉部4と封止部5、更には保護カバー6までが一体の樹脂射出成形品として1工程で製造できる。
【0012】
この一体の樹脂成形品は、成形後に該保護カバー6のみを下方に押し下げることにより該弱化部61を破断して、該保護カバー6を該天板51から切り離し、図4に示されるようにその底辺を前記溶着部2に当接させて前記注出筒3を抱えるように固定される保護カバー付き注出具を得ることができる。また、該保護カバー6の外周面下端部には、容器口部開口端と係止する複数の突起部62が設けられている。(実施例では90度間隔で3個所)このため、例えば、紙製容器の口部開口に本発明の保護カバー付き注出具を嵌め込んだ際に、該突起部62は溶着部2の上面との間に容器口部開口端を挟持する形態となり容器との溶着が完了するまでの間、抜け止め機能を有し工程作業の安定化が図られる。しかし、この突起部は必ずしも必須ではなく、図6に示されるような本発明の保護カバー付き注出具を容器上面側から貼付ける形態(溶着部2の下面を容器10表面に貼付ける方式)においては、このような突起部は特に設けなくても良い。
【0013】
上に示した形態例では図3からわかるように前記保護カバー6は一部が部分的に切り欠かれた円弧状の筒部とされると共に該弱化部61が5か所等間隔にブリッジ形態で形成されている。また、図2に示すとおり、保護カバー6の筒部は、その内面下部と封止部5の天板51の外面とが弱化部61を介して接続されており、天板51から上方に延びて一体的に形成される。薄肉部4は、封止部5の筒体52の下部と注出筒3の上部に周方向リング状に2つ設けられ、この2つのリング状薄肉部間は分離片7となり、この分離片7にはつまみ部71が形成されている。また、このつまみ部71の近傍には、封止部5を注出筒3に連結する連結片8が設けられている。この連結片8は、一方の基部である封止部5の天板51の外面から外方に延び、そこから下方に垂下し、他方の基部である注出筒3の外面に連結されている。よって、分離片7を取り除き、注出筒先端から取り外した封止部5は、この帯状の連結片7によって、注出筒3に連結され続けるため、落下や紛失のおそれがないのである。このつまみ部71及び連結片8は、注出筒3の外面より外側に突出しているが、前記保護カバー6の切り欠け部の位置は、その上方に対応する位置で一体的に成形されている為、成形後、天板部から保護カバー6を切り離して下方に押し下げる際には、つまみ部71及び連結片8に緩衝することがないのである。
【0014】
また、成形後、保護カバー6を切り離して下方に押し下げ、保護カバー6が注出筒3を抱えるように固定された状態での保護カバー6の筒部上端位置は、ここに示した形態例では前記封止部5の天板51の上面より高くなるように構成されている。これは開封前の状態において前記封止部5が異物との衝突で誤って開封してしまうことを防止する機能を備えるようにするためである。しかし、この高さはなくても少なくとも前記注出筒3の先端より高ければ注出筒先端の位置にある薄肉部4の破断を防止する機能があり、その効果が期待できることとなる。
【0015】
また、封止部5の筒体52の外周面は外方に膨出する膨出部53が形成されており、注出筒3の内周面の内径より、膨出部53の外径が大きいことにより封止部5の筒体52が注出筒3の内部に嵌め込める形態を提供でき、開封後のリシールを可能にしている。すなわち、開封時に保護カバー6を外し、つまみ71を引っ張って、分離片7を周方向側に切り取って上部の封止部5を取り外し、必要量の内溶液を注出して使用に供する。その際、取り外された封止部5は連結片8によって、注出筒3に繋がれているので散逸することはない。使用後は封止部5の筒体52を注出筒3の内部に嵌め込めば注出口はリシールすることができる。図5は封止部5の筒体52を注出筒3の内部に嵌め込んで注出口をリシールした形態を示した全断面正面図である。
しかし、本発明の保護カバー付き注出具においては、上記分離片7が設けられる構成は必ずしも必須ではなく、分離片7を設けずに、注出筒3と封止部5の筒体52とが1つのリング状薄肉部4によって接続されるような、所謂折り取り形態のものであってもよい。また、封止部5に上記のようなリシール機能を設けない形態でもよい。
【0016】
図に示した実施形態では前記保護カバー6の内周面下部には複数の係合突起63(実施例では5個)が形成されており、保護カバー6を該天板51から切り離し、図4に示されるようにその筒部下端を前記溶着部2に当接させて前記注出筒3を抱えるように固定させたとき、該係合突起63が前記注出筒3の外周面下部に形成された係合部31と係合される構成となっている。この構成を採用したことにより、該保護カバーの前記注出筒からの抜け止機能を備えることとなって嵌合固定状態をより確実なものとできる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の保護カバー付き注出具は紙パック容器に代表される容器の注出口部用のものとして説明してきたが、本発明はこれに限定されず、封止部が容器の注出口部にスコアを介して一体的に形成された開封前の容器口部を保護する保護カバー付き注出具として広く適用可能な発明である。
【符号の説明】
【0018】
1 注出具 2 溶着部
3 注出筒 31 係合部
4 薄肉部 5 封止部
51 天板 52 筒体
53 膨出部 6 保護カバー
61 弱化部 62 突起部
63 係合突起 7 分離片
71 つまみ 8 連結片
10 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器への溶着部と該溶着部から上方に延びる注出筒と該注出筒先端に破断可能な薄肉部を介して一体に接続される封止部とを有する注出具と前記注出筒の外周を覆うように設けられた保護カバーとからなる保護カバー付き注出具であって、
前記封止部は、筒体と該筒体の上端を閉じるように形成される天板とから形成されており、前記保護カバーは、弱化部を介して前記封止部の天板に固定された状態で成形され、成形後に該保護カバーを下方に押し下げることにより該弱化部を破断して、該保護カバーを該天板から切り離し、前記注出筒に固定して設けられており、保護カバーの上端が少なくとも前記注出筒先端より高くなることを特徴とする保護カバー付き注出具。
【請求項2】
前記保護カバーは、上方及び下方が開口された円筒状筒部若しくは一部が部分的に切りかかれた円弧状筒部であり、前記保護カバーの内周面下部に形成された係合突起と、前記注出筒の外周面下部に形成された係合部とが係合してなり、前記保護カバーの上端が前記封止部の天板の上面より高くなることを特徴とする請求項1に記載の保護カバー付き注出具。
【請求項3】
前記注出筒先端には、破断可能な薄肉部を介して環状の分離片が設けられ、該分離片の上端には、破断可能な薄肉部を介して前記封止部が連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の保護カバー付き注出具。
【請求項4】
紙製容器の口部に保護カバー付き注出具を挿入した時に、前記保護カバーの外周面下端部近傍に、容器口部開口端と係止する突起部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の保護カバー付き注出具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−201397(P2012−201397A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68272(P2011−68272)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】