説明

保護スリーブの製造方法

【課題】不規則形状の部品や既に取り付けられた長尺部品に取り付け可能な保護スリーブを優れた生産性にて製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】長さ方向に連続した開口部を有する保護スリーブについて、製紐機により繊維糸を編組して編組スリーブとし、該編組スリーブを長さ方向に切裂いて上記開口部を設け、該開口部を重ね合わせて上記保護スリーブを縮径した形状とし、熱処理を加えて縮径した形状を保持する保護スリーブの製造方法。編組スリーブに収束剤を塗布した後、該収束剤を加熱硬化する工程を含む保護スリーブの製造方法。上記保護スリーブの断面周囲長に対する重ね合わせ部分の長さの割合で表される重ね合わせ率が、10%以上50%以下である保護スリーブの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車、家電機器、重電機器等において、機械的保護スリーブ、収束用スリーブ、電気絶縁スリーブ、耐熱保護スリーブ等として使用される保護スリーブの製造方法に係り、特に、不規則形状の部品や既に取り付けられた長尺部品に取り付け可能な保護スリーブを優れた生産性にて製造することができる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、保護スリーブとして、ガラス繊維や樹脂繊維などの繊維糸を管状に編組してなる編組スリーブに、使用状況等に応じてシリコーンワニス等の収束剤により表面処理を施したものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。これらの保護スリーブは、電線等の保護或いは収束のため、この電線束の外周に配置されることになる。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1〜3のような保護スリーブは、管形状のものであるため、予め電線束に被せておく必要があり、例えば、先に電線にコネクタ等を接続した後では、保護スリーブを後付けで配置させることができなかった。これに対して、管形状でありながらも、長さ方向に連続した開口部を有する保護スリーブが種々開発されている(例えば、特許文献4〜7参照。)。これら特許文献4〜7のような保護スリーブであれば、開口部から電線を保護スリーブ内部に挿入することができるため、例え電線の両端にコネクタを接続したとしても保護スリーブを後付けで配置させることができる。また、電線束の内の一部の電線を分岐させた場合でも、開口部より導出させることができるため、不規則な形状の部品にも対応することができる。また、当該出願人より、本発明に関するものとして、特許文献8が出願されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3376492号公報:クラベ
【特許文献2】特許第2875886号公報:ベントリイハリス
【特許文献3】特公平7−88513号公報:ベントリイハリス
【特許文献4】特許第2718571号公報:D&N PLC、ベントリイ
【特許文献5】特許第4030585号公報:ベントレイ−ハリス
【特許文献6】特表2001−508856号公報:フェデラルモーグル
【特許文献7】特表2007−514068号公報:ソファヌーSA
【特許文献8】特願2008−100858号公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4〜7による保護スリーブは、平面形状の織物等を円筒形状に保持した状態で加熱し、開口部を有する管形状に形成する製造方法である。このような平面形状の織物等であると、円筒形状に保持した状態で加熱する段階で、加熱が不十分であると経時的に元の平面形状に復元してしまう可能性がある。また、加熱が過ぎると保護スリーブを構成する繊維が熱劣化または溶融してしまう。そのため、加熱時の温度管理も厳密に行う必要があり、生産性に影響を及ぼしていた。
【0006】
本発明は、このような従来技術の欠点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、不規則形状の部品や既に取り付けられた長尺部品に取り付け可能な保護スリーブを優れた生産性にて製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明の請求項1による保護スリーブの製造方法は、長さ方向に連続した開口部を有する保護スリーブの製造方法であって、製紐機により繊維糸を編組して編組スリーブとし、該編組スリーブを長さ方向に切裂いて上記開口部を設け、該開口部を重ね合わせて上記保護スリーブを縮径した形状とし、熱処理を加えて縮径した形状を保持するものである。
また、請求項2記載の保護スリーブの製造方法は、長さ方向に連続した開口部を有する保護スリーブの製造方法であって、製紐機により繊維糸を編組して編組スリーブとする工程と、該編組スリーブに収束剤を塗布した後、該収束剤を加熱硬化する工程と、上記編組スリーブを長さ方向に切裂いて上記開口部を設ける工程と、該開口部を重ね合わせて上記保護スリーブを縮径した形状とし、熱処理を加えて縮径した形状を保持する工程と、からなるものである。
また、請求項3記載の保護スリーブの製造方法は、上記開口部の重ね合わせについて、上記保護スリーブの断面周囲長に対する重ね合わせ部分の長さの割合で表される重ね合わせ率が、10%以上50%以下であることを特徴とするものである。
また、請求項4記載の保護スリーブの製造方法は、加熱した刃により上記編組スリーブを長さ方向に切裂いて上記開口部を設けるものである。
また、請求項5記載の保護スリーブの製造方法は、レーザーにより上記編組スリーブを長さ方向に切裂いて上記開口部を設けるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、元々管形状の編組スリーブからなるため、経時的に形状が崩れてしまうようなことはない。また、開口部において充分に重ね合わせが形成されるため、屈曲や加圧などによって開口部が開いて電線がはみ出てしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の保護スリーブの製造方法を実施するための装置の一例を示す説明図である。
【図2】保護スリーブの構成を説明するための斜視図である。
【図3】他の形態の保護スリーブの構成を説明するための斜視図である。
【図4】保護スリーブを実用に供した例を説明する斜視図である。
【図5】柔軟性の試験を説明する概略図である。
【図6】保護スリーブの構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明する。図1は、本発明の保護スリーブの製造方法を実施するための装置の一例を示す説明図である。また、図2は、この装置によって得られた保護スリーブ1の斜視図である。
【0011】
図1において、符号1は保護スリーブ、符号2は編組スリーブ、符号3は製紐機、符号4は繊維糸、符号5は収束剤タンク、符号6は収束剤絞り、符号7は加熱炉、符号8はガイドプーリー、符号9は刃、符号10は成型炉、符号11は巻取装置である。尚、本実施の形態では、繊維糸としては、ポリエステル繊維を使用した。又、収束剤としては、アクリル系エマルションを使用した。
【0012】
製造工程の流れを説明する。まず、製紐機3にてポリエステルマルチフィラメント繊維の繊維糸4を編組密度25、編組厚さ0.50mmの条件で編組し、編組スリーブ2とする。次いで、この編組スリーブ2を、収束剤(溶剤を含まず且つ粘度が50cpのアクリル系エマルションで満たされた収束剤タンク5内に連続的に導入して収束剤を塗布する。このとき、過剰に付着した収束剤は、スポンジ等からなる収束剤絞り6によって除去され、付着量が0.011g・cmとなるように制御される。このようにして所定量の収束剤を塗布した後、145〜165℃の温度に保持された長さ1.0mの加熱炉7内に連続的に導入して収束剤を加熱硬化させた。このようにして収束剤が塗布、加熱硬化された編組スリーブ2は、ガイドプーリー8を経て刃9に当たり、長手方向に切裂かれることになる。この刃9は、通電されることにより加熱しているものである。これにより、編組スリーブ2は、長手方向に連続した開口部1aが形成されて保護スリーブ1となる。更に、内径が編組スリーブ2の径の75%に設計された円筒形の成型炉10中で、保護スリーブ1が縮径された状態で加熱され、重ね合わせ率30%で重ね合わされた形状に保持される。そして、この保護スリーブ1は、巻取装置10に巻き取られる。保護スリーブ1或いは編組スリーブ2の走行速度は約16cm/分である。ここで、重ね合わせ率について、図6を参照に詳しく説明する。保護スリーブ1の長手方向に垂直な断面における、保護スリーブ1の周囲長C、重ね合わさせた部分の長さLの割合であり、
重ね合わせ率(%)=重ね合わさせた部分の長さL/保護スリーブ1の周囲長C×100
で表される。
【0013】
上記の実施の形態では、保護スリーブ2に収束剤を塗布しているが、用途等に応じて、収束剤タンク5、収束剤絞り6及び加熱炉7を省略し、収束剤を塗布しないものとしても良い。また、収束剤を塗布するにしても、上記の実施の形態のように編組と連続して行う必要はなく、一度巻き取った後、別工程で収束剤を塗布しても良い。勿論、編組スリーブ2を長手方向に切裂き保護スリーブ1とした後に、収束剤の塗布・加熱硬化を行っても良い。
【0014】
繊維糸としては、例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカ繊維、カーボン繊維等の無機繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエーテルサルフォン繊維、ポリエーテルケトン繊維、4フッ化エチレン繊維等の合成繊維、銅線、銅合金線、ステンレス線等の金属細線などが挙げられ特に限定されない。これらは使用条件等を考慮して適宜選択すれば良い。勿論、単独で編組しても良いし、複数種を併用して編組しても良い。また、繊維の太さも使用条件等を考慮して適宜選定すれば良い。特に、スリーブの保護機能、配線作業性向上のため、モノフィラメントとマルチフィラメントを混合して使用することが好ましい。この場合、保護スリーブの柔軟性および形状保持性は、モノフィラメントの直径や材料を変えることにより設定することができる。例えば、より柔軟性に優れたものとする場合は、モノフィラメントとして、直径が細いものを使用したり、柔軟なナイロン繊維を使用したりすることが考えられる。また、より確実に形状保持をしたい場合は、モノフィラメントとして、直径が太いものを使用したり、剛性が強いポリフェニレンサルファイド繊維(以下PPS)を使用したりすることが考えられる。モノフィラメントの直径については、上記のように必要とされる特性に応じて設定すればよいが、形状保持性、柔軟性および製紐の容易さのバランスを考慮して、0.10mm〜1.0mm、特に0.10〜0.40mmの範囲にすることが好ましい。
【0015】
本発明では、製紐機を用いて上記の繊維糸を編組するのであるが、この際、編組密度は、好ましくは5〜40の範囲、更に好ましくは20〜40の範囲に設定する。編組密度が5未満では、編組目が粗くなり過ぎてしまい、本発明によって得られる保護スリーブの機械的強度(引張り強さ、伸び、耐磨耗性等)が低下してしまう。一方、編組密度が40を超えてしまうと、ワニスを塗布する場合、ワニスが編組の内部まで充分に含浸せず、収束剤の効果が充分に表れない可能性がある。更に、編組密度が40を超えてしまうと、編組重量が増加したり編組時間が増大したりするなどして生産性が悪化しコストが上昇してしまうとともに、編組糸として例えばガラス繊維糸を使用した場合には、毛羽立ちが発生し外観不良の要因となってしまう恐れがある。尚、本発明でいう「編組密度」とは、1インチ(25mm)間に山、谷に交差している繊維束の山の数をいう。
【0016】
収束剤を使用する場合は、有機溶剤を含まず且つ粘度が10〜50000cpの範囲のものを使用することが好ましい。有機溶剤で希釈したタイプの収束剤を使用すると、蒸発した有機溶剤により作業環境が汚染されるので好ましくない。ここで、収束剤の粘度が10cp未満では、収束剤の塗膜強度が低下してしまい編組にホツレが生じる恐れがある。一方、粘度が50000cpを超えてしまうと、収束剤を塗布する際、収束剤が編組の内部まで充分に含浸せず、収束剤の効果が充分に表れない可能性がある。
【0017】
収束剤の編組への付着量は0.001〜0.050g・cmの範囲となるように制御することが好ましいが、更に好ましくは、0.007〜0.020g・cmの範囲に制御する。収束剤の付着量が0.001g・cm未満では、編組にホツレが生じる恐れがある。一方、付着量が0.050g・cmを超えてしまうと、外観状態が悪化してしまうとともに、コストが上昇してしまう。
【0018】
収束剤としては、例えば、シリコーン系ワニス(液状シリコーンゴム)、ウレタン系ワニス、エポキシ系ワニス、アクリル系ワニス、不飽和ポリエステル系ワニス、アミドイミドエステル系ワニス、ポリブタジエン系ワニス、ポリイミド系ワニス、アクリル系エマルション、ウレタン系エマルション、ポリオレフィン系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、ポリエチレン系エマルション、ポリエステル系エマルション、スチレン系エマルション、シリコーン系エマルション、などが挙げられ特に限定されない。これらは使用条件等を考慮して適宜選択すれば良い。
【0019】
上記の実施の形態では、刃9として、通電されることにより加熱しているものを使用しているが、これは、加熱しながら切裂くことで、切裂いた面の繊維或いは収束剤を溶融させ、開口部1aでの繊維の毛羽立ちやホツレを防止するためである。もちろん、繊維の種類によっては、刃9を加熱する必要がない場合もある。また、刃9を編組スリーブ外周に沿って定速度で回転させれば、図3のように、スパイラル状の開口部1aを有する保護スリーブ1とすることができる。なお、編組スリーブ2を切裂く手段として、刃に限定されるものではなく、例えば、ウォータカッター、丸ノコ、切削砥石、レーザーなどによって編組スリーブ2を切裂いても良い。レーザーによって切裂いた場合も、切裂いた面の繊維或いは収束剤を溶融させることができるため、開口部1aでの繊維の毛羽立ちやホツレを防止することができる。
【0020】
開口部1aの重ね合わせについて、上記した重ね合わせ率が10%以上50%以下であることが好ましい。10%未満であると、強い屈曲や加圧などによって開口部1aが開き、内部に収納していた電線等がはみ出てしまう可能性がある。また、50%を超えると、材料費が無駄になるとともに、電線等を内部に収納する作業が困難となり、更には、柔軟性が低下してしまう傾向にある。
【0021】
このようにして得られた保護スリーブ1であれば、例えば、電線に被せる際も、開口部1aから電線を保護スリーブ内部に挿入することができるため、例え電線の両端にコネクタを接続したとしても保護スリーブを後付けで配置させることができる。また、図4に示すとおり、電線束20の内の一部の電線20´を分岐させた場合でも、開口部1aより導出させることができるように、不規則な形状の部品にも対応することができる。
【0022】
また、本願発明の保護スリーブは、製紐機によって管形状に形成されているため、図1に示すように、保護スリーブ1の繊維糸が、保護スリーブ1長手方向に対して斜めに配置されるよう構成される。このような繊維糸の構成は、保護スリーブ長手方向に沿った縦糸と保護スリーブ長手方向に垂直な横糸から構成されるような、織物を管形状に形成したものと比べると、耐摩耗性に優れるとともに、柔軟性も向上したものとなる。耐摩耗性については、保護スリーブ長手方向に垂直な横糸が引っかかりを生みそこから破壊してしまうため、柔軟性については、保護スリーブ長手方向に沿った縦糸が曲げに対しての抵抗力となってしまうためである。
【0023】
上記実施の形態により得られた保護スリーブを実施例1とし、この実施例1と同様の繊維密度及び寸法になるような条件で、織物を管形状に形成したものを比較例1とし、耐摩耗性と柔軟性について検証を行った。耐摩耗性は、JASO−D608−92ブレード法に準拠し、台上に保護スリーブを固定して、ブレード先端を当てて試料軸方向に10mm以上の長さに往復して摩耗させ、ブレードが導体に接触するまでの往復回数を測定した。この際、おもり510g、エッジR0.125、摩耗速度60回/分の条件で測定した。柔軟性は、試料(保護スリーブ1)を測定距離が250mmとなるように採取し、片側端末を図5のように固定台30に固定して、3分後の固定端からのたわみ距離Lを測定した
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示すように、本実施の形態は、比較の形態と比べて、耐摩耗性及び柔軟性に優れていることが確認された。
【0026】
実施例1の保護スリーブについて、図2に示すように重ね合わせ率を変化させたものとして、実施例2〜5を作成した。また、成型炉10を通過させず、縮径された状態で加熱しなかったものとして、比較例2を作成した。これらについて、配線取り回し性、巻付け開き性、電線挿入性、柔軟性の評価を行った。配線取り回し性は、電線束に保護スリーブを取り付け、配線取り回しを行ったときの作業効率について、作業者の作業時間により評価した。配線作業が容易であったものを○、配線作業に時間を要してしまったものを△、狭い場所への配線には困難であったものを×とした。巻付け開き性は、保護スリーブ内径の20倍径のマンドレルに保護スリーブを巻付け、その際に開口部が開いて内部が見えてしまったものを×、重ね合わせを保持していたものを○とした。電線挿入性は、保護スリーブ内に保護スリーブ内径容積80%となる電線を挿入した際の作業効率について、作業者の作業時間により評価した。容易に電線を挿入できたものを○、電線の挿入に時間を要してしまったものを△、専用治具の必要性を感じるほど挿入が困難であったものを×とした。評価の結果については併せて表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
表2に示すように、実施例1による保護スリーブは、何れも巻付け開き性が○となっており、屈曲をしても開口部が開いてしまうことはなかった。このようなものであれば、内部に電線を挿入した際に屈曲を受けても、内部の電線がはみ出てしまうようなことはない。これに対して、比較例2による保護スリーブは、完全に開口部が開いてしまっていたことから、内部に電線を挿入した際には、軽微な屈曲でも内部の電線がはみ出てしまうおそれがあるものである。また、重ね合わせ率が50%を超える実施例4,5は、実施例1〜3に比べて柔軟性が低くなっており、配線取り回し性が劣るものであった。そのため、作業スペースに余裕がある場所での使用など、使用環境が限定される可能性がある。また、実施例4,5は、実施例1〜3に比べて電線挿入性も劣っており、電線挿入時には治具を使用するなど、作業に工夫が必要となる。
【0029】
上記実施例1について、保護スリーブ1を構成する繊維糸を変更したものとして、実施例6〜9を作成した。実施例6は、繊維糸としてポリエステルマルチフィラメント繊維を32本、ナイロンモノフィラメント繊維(径0.1mm)を16本均等になるように編組した。実施例7は、繊維糸としてポリエステルマルチフィラメント繊維を32本、ナイロンモノフィラメント繊維(径0.3mm)を16本均等になるように編組した。実施例8は、繊維糸としてポリエステルマルチフィラメント繊維を32本、PPSモノフィラメント繊維(径0.1mm)を16本均等になるように編組した。実施例9は、繊維糸としてポリエステルマルチフィラメント繊維を32本、PPSモノフィラメント繊維(径0.3mm)を16本均等になるよう編組した。これら、実施例6〜9について、配線取り回し性、巻き付け開き性、電線挿入性、柔軟性の評価を行った。評価の結果については、実施例1とともに表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
表3に示すように、何れの実施例よる保護スリーブも、配線取り回し性、巻き付け開き性、電線挿入性に優れたものであった。これらの中でも、モノフィラメントとして柔軟なナイロンを使用したもの、モノフィラメントの径を細くしたものは、特に優れた柔軟性を有していた。また、巻付け開き性について、何れの実施例も合格するレベルのものであったが、試験に使用したマンドレルの径を小さくして再評価した場合、実施例9の保護スリーブが最も開口部が開きにくく、次いで、実施例7及び実施例8の保護スリーブ、そして実施例6の保護スリーブ、最後に実施例1の保護スリーブの順で開口部が開き易くなっていくことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の保護スリーブの製造方法によれば、特に、不規則形状の部品や既に取り付けられた長尺部品に取り付け可能な保護スリーブを優れた生産性にて製造することができる。この製造方法による保護スリーブは、例えば、自動車、家電機器、重電機器、産業機器、計測機器、医療機器等において、機械的保護スリーブ、収束用スリーブ、電気絶縁スリーブ、耐熱保護スリーブ等として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 保護スリーブ
2 編組スリーブ
3 製紐機
4 繊維糸
5 収束剤タンク
6 収束剤絞り
7 加熱炉
8 ガイドプーリー
9 刃
10 成型炉
11 巻取装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に連続した開口部を有する保護スリーブの製造方法であって、製紐機により繊維糸を編組して編組スリーブとし、該編組スリーブを長さ方向に切裂いて上記開口部を設け、該開口部を重ね合わせて上記保護スリーブを縮径した形状とし、熱処理を加えて縮径した形状を保持する保護スリーブの製造方法。
【請求項2】
長さ方向に連続した開口部を有する保護スリーブの製造方法であって、製紐機により繊維糸を編組して編組スリーブとする工程と、該編組スリーブに収束剤を塗布した後、該収束剤を加熱硬化する工程と、上記編組スリーブを長さ方向に切裂いて上記開口部を設ける工程と、該開口部を重ね合わせて上記保護スリーブを縮径した形状とし、熱処理を加えて縮径した形状を保持する工程と、からなる保護スリーブの製造方法。
【請求項3】
上記開口部の重ね合わせについて、上記保護スリーブの断面周囲長に対する重ね合わせ部分の長さの割合で表される重ね合わせ率が、10%以上50%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の保護スリーブの製造方法。
【請求項4】
加熱した刃により上記編組スリーブを長さ方向に切裂いて上記開口部を設ける請求項1〜請求項3記載の保護スリーブの製造方法。
【請求項5】
レーザーにより上記編組スリーブを長さ方向に切裂いて上記開口部を設ける請求項1〜請求項3記載の保護スリーブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−74526(P2011−74526A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227012(P2009−227012)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】