説明

保護フィルムおよびその製造方法

本発明は、 中間層、ならびに前記中間層を挟んで両側に存在する第1のスキン層および第2のスキン層からなる積層フィルムを含み、
前記第1のスキン層または第2のスキン層のうち一以上の層にはエチレン系不飽和カルボキシル酸からなる高分子系帯電防止剤が含有されることを特徴とする保護フィルムおよびその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのような各種表示装置、または建築ガラス資材などの製品には、製品の組立て、製造、運送、保管などの過程において発生する静電気による埃や異物、またはスクラッチによる損傷が発生しやすいため、このような損傷を防ぐために保護フィルムが使用される。
【0003】
前記のような保護フィルムとして、たとえば、高分子フィルムに粘着剤が塗布された保護フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにハードコーティングを施した保護フィルムがあり、これらフィルムにスリップ剤や帯電防止剤などの添加剤を使用したものがある。
【0004】
ところが、本発明者らの研究結果によると、従来の保護フィルムは、次のような問題点がある。
【0005】
まず、移送中、保護フィルムと保護しようとする対象である被着材との間にスリップ性がないために表面にスクラッチが発生するいわゆるポル・ダーティー(pol−dirty)現象が起こるようになり、これによって製品不良が発生する。
【0006】
さらに、スリップ剤などのような添加剤を挿入する際には皺が発生し、帯電防止剤が添加された場合に湿度が上昇すると帯電防止剤が移動(migration)する現象が発生してスリップ差を引き起こし、スクラッチを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願第2006-111384号公開公報
【特許文献2】韓国特許出願第1991-0001296号公開公報
【特許文献3】特開平07-290649号公報
【特許文献4】特開2000-355078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、良好な帯電防止性を確保するとともに、埃や異物などによる汚染およびスクラッチ発生によるポル・ダーティー現象の発生を防止することができ、皺の発生を防止することができ、湿度が上昇する場合にも白化現象の発生を防止することができるのみならず、スリップ性も良好な保護フィルムおよびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの具体例によると、中間層、ならびに前記中間層を挟んで両側に存在する第1のスキン層および第2のスキン層からなる共押出フィルムを含み、前記第1のスキン層および第2のスキン層のうち一以上の層にはエチレン系不飽和カルボキシル酸からなる高分子系帯電防止剤が含有されることを特徴とする保護フィルムが提供される。
【0010】
本発明の他の具体例によると、樹脂を共押出して、中間層、ならびに前記中間層を挟んで両側に存在する第1のスキン層および第2のスキン層からなる積層フィルムを形成し、前記第1のスキン層または第2のスキン層のうち一以上の層を共押出する際にエチレン系不飽和カルボキシル酸からなる高分子系帯電防止剤を樹脂に添加して共押出することを特徴とする保護フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保護フィルムによると、良好な帯電防止性を確保するとともに、埃や異物による汚染およびスクラッチ発生によるポル・ダーティー現象の発生を防止することができ、皺の発生を防止することができ、湿度が上昇する場合にも白化現象の発生を防止することができるのみならず、スリップ性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の保護フィルムおよびその製造方法について詳述する。
【0013】
本発明の一つの具体例に係る保護フィルムは、中間層を挟んで両側に第1のスキン層と第2のスキン層が形成されるフィルム層を含むものである。
【0014】
本発明では、前記第1のスキン層または第2のスキン層のうち一以上の層に高分子系帯電防止剤が含有されていてよい。ここで、好ましくは、少なくとも被着材と隣り合うスキン層に高分子系帯電防止剤が形成される。前記第1のスキン層または第2のスキン層のうち一以上の層に高分子系帯電防止剤が含有される場合、前記中間層にさらに前記高分子系帯電防止剤が含有されていてよい。しかし、中間層にのみ高分子系帯電防止剤が添加されることは、スリップ性の側面から好ましくない。
【0015】
前記高分子系帯電防止剤は、基本的に、エチレン系不飽和カルボキシル酸からなるものであり、成形時に樹脂中に分散固定化されて、電荷を捕捉後、樹脂の内部で移動させて静電気の発生を抑制する。したがって、帯電防止性が長く持続し、物性変化が少なく、表面特性の変化も激しくない。また、ポリエチレンまたはポリプロピレンのような高分子とともに成形する場合、商用性に良好である。
【0016】
前記エチレン系不飽和カルボキシル酸の非制限的な例として、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、エチレンクロロアクリル酸コポリマー、エチレンクロトン酸コポリマー、エチレンイタコン酸コポリマー、エチレンマレイン酸コポリマー、エチレンフマル酸コポリマー、エチレンシトコン酸コポリマー、エチレンメサコン酸コポリマーなどが挙げられる。
【0017】
前記高分子系帯電防止剤は、界面活性剤型帯電防止剤と比べ、ブリードアウト(bleed out)現象が起こらず、接触物の汚染が少なく、特に白化現象やベトツキが起こらない。
【0018】
特に、前記高分子系帯電防止剤としては、吸収性のものを使用することが好ましい。吸収性の足りないプラスチックは、電気絶縁性が高く、摩擦などによって静電気を発生させやすい。こうした高分子系帯電防止剤は、前記エチレン系不飽和カルボキシル酸の他に、金属塩や多価アルコール成分をさらに含む。前記金属塩や多価アルコール成分は、吸収性を付与するのみならず、帯電防止性に有用である。
【0019】
前記金属塩は、たとえば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、カリウム塩のものが好ましい。前記多価アルコールは、たとえば、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0020】
前記高分子系帯電防止剤の使用量は、厚さを考慮して、フィルム全体(すなわち、第1のスキン層/中間層/第2のスキン層)に対する前記帯電防止剤の含量を制限することが好ましい。
【0021】
具体的に、第1のスキン層、中間層、第2のスキン層からなる積層フィルムにおいて、各該当層の厚さを考慮したフィルム全体に対する帯電防止剤の含量比(%)は、次の数式1によって計算する。
【0022】
【数1】

【0023】
ここで、Tiは前記積層フィルムのi番目の層(たとえば、第1のスキン層、中間層、第2のスキン層を、それぞれ1番目の層、2番目の層、3番目の層としたり、逆にそれぞれ3番目の層、2番目の層、1番目の層としたりすることができる。)の厚さ、Wiは、前記積層フィルムのi番目の層において前記高分子系帯電防止剤を除いた構成成分の重量部、Aiは前記積層フィルムのi番目の層の前記高分子系帯電防止剤の重量部である。
【0024】
これによって定められる厚さを反映したフィルム全体に対する前記高分子系帯電防止剤の含量比率(%)は、1%以上30%以下で使用することが好ましい。前記帯電防止剤の含量が1重量%未満の場合には、帯電防止性が発揮されにくく、前記含量が30重量%を超過する場合には、コスト上昇の原因となる。
【0025】
一方、本発明の例示的な具体例として、前記高分子系帯電防止剤が被着材と接する第1のスキン層または第2のスキン層に含有される場合、次のように重量部含量が調節されていてよい。
【0026】
共押出フィルムの第1のスキン層:中間層:第2のスキン層の厚さの比が3:4:3である場合、前記高分子系帯電防止剤は、被着材と接する前記第1または第2のスキン層の樹脂100重量部に対して4重量部以上30重量部以下で含有されることが好ましい。前記厚さの比において、前記4重量部未満では帯電防止性が発揮されにくい(以下の表1および表3の実施例および比較例を参照)。
【0027】
また、共押出フィルムの第1のスキン層:中間層:第2のスキン層の厚さの比が1:8:1である場合、前記高分子系帯電防止剤は、被着材と接する前記第1または第2のスキン層の樹脂100重量部に対して10重量部以上30重量部以下で含有されることが好ましい。前記厚さの比において、前記10重量部未満では帯電防止性が発揮されにくい(以下の表2および表4の実施例および比較例を参照)。
【0028】
前記被着材と接する第1または第2のスキン層においては、前記高分子系帯電防止剤が前記被着材と接する第1または第2のスキン層の樹脂100重量部に対して30重量部以下で使用されることが好ましい。このように30重量部以下で使用される場合には、帯電防止剤が被着材と隣り合うスキン層に適用される場合であっても、帯電防止剤の移動(migration)がなく、ブリードアウト(bleed out)の発生もないので、白化現象を防止することができる。また、スクラッチの発生がないのみならず、優れた帯電防止性およびスリップ性を有するようにすることができる。
【0029】
前記中間層またはスキン層(第1のスキン層または第2のスキン層)の樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂またはポリメタクリル酸系樹脂のいずれか一つまたは二つ以上の混合樹脂を使用する。
【0030】
本発明の他の具体例に係る保護フィルムは、先に説明したようなフィルム(第1のスキン層/中間層/第2のスキン層)を、接着剤を用いて両側で積層してなるものである。このように2つの層でフィルムを形成した場合に、高分子系帯電防止剤は、上層のフィルムに形成されていてよく、下層のフィルムに形成されていてもよい。
【0031】
本発明の他の具体例に係る保護フィルムは、樹脂からなる一般樹脂フィルムを挟んで、その両側に接着剤を用いて先に説明したようなフィルム(第1のスキン層/中間層/第2のスキン層)2枚を形成するものである。前記一般樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系、または、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドフィルム、ナイロンフィルムなどのポリエステル系フィルムなどがある。好ましくは、たとえば、前記一般樹脂フィルムは前記積層フィルムの樹脂構成のように、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂またはポリメタクリル酸系樹脂のいずれか一つまたは二つ以上の混合樹脂を使用する。
【0032】
また、本発明の他の具体例に係る保護フィルムとして、前記一般樹脂フィルムの一方側に接着剤を用いて前記フィルム(第1のスキン層/中間層/第2のスキン層)1枚を形成することも可能である。
【0033】
以上のような保護フィルムの製造方法は、次のとおりである。
【0034】
すなわち、本発明においては、前記樹脂を共押出して中間層とその両側の第1のスキン層および第2のスキン層を形成し、3層の共押出フィルムを作る。ここで、共押出の際、前記第1のスキン層または第2のスキン層のうち一以上の層、さらに、前記第1のスキン層または第2のスキン層のうち一以上の層に高分子系帯電防止剤が含まれる場合に前記中間層にさらに、前記高分子系帯電防止剤を前記樹脂のコンパウンドやマスターバッチに入れ、共押出して積層フィルムを形成する。
【0035】
前記共押出されたフィルム2枚をアクリル系、ウレタン系、シリコン系などの接着剤を用いてラミネートする。前記3層の共押出フィルム2枚をラミネートすることにより、スティフネスを高めることができる。
【0036】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明することとするが、これら実施例は、単に説明の目的のためのものであって、本発明の保護範囲を制限するものと解釈されてはならない。また、後述する「比較例」という表現は、単に実施例として設定した一部例に対する比較の意味で使用したものであって、本発明の範疇から除外されるという意味で使用したものではない。
【0037】
[実験1―高分子系帯電防止剤の含量に係る実験]
線形低密度ポリエチレンからなる第1のスキン層、高密度ポリエチレンからなる中間層、線形低密度ポリエチレンからなる第2のスキン層、からなる3層共押出フィルムを構成した。前記第1のスキン層を被着材と接する層とした。
【0038】
3層共押出フィルムを形成する場合、一般的に各層の厚さの比は第1のスキン層:中間層:第2のスキン層が10〜30μm:40〜80μm:10〜30μmと定められる。本実験では、厚さに対する影響を併せて評価するために、第1のスキン層:中間層:第2のスキン層の厚さの比が3:4:3の場合(下表1の場合)および1:8:1の場合(下表2の場合)について実験してみることとした。
【0039】
エチレンメタクリル酸コポリマーの高分子系帯電防止剤(三井・デュポン石油化学社製)を下表1および表2に示すとおり添加した。下表において、たとえば、実施例1−1(または実施例2−1)の4重量部とは、当該スキン層のうち帯電防止剤を除いた残りの成分100重量部に対する相対的な比率であり、帯電防止剤が4重量部入っているということを意味する。
【0040】
参考として、下表において、厚さを考慮したフィルム全体に対する帯電防止剤の含量(%)は、先に説明したように数式1によって計算されたものである。その計算の具体的な一例として、数式1によって下表1の実施例1−1を計算すると、次の数式2のとおりである。
【0041】
【数2】

【0042】
また、他の例として、数式1によって下表2の比較例2−1を計算すると、次の数式3のとおりである。
【0043】
【数3】

【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
上記実施例および比較例に対する帯電防止剤およびスクラッチ発生有無について実験した。
【0047】
帯電防止性を測定するために、ASTM−D257によってWolfgang Warmbier社のSRM−110器で表面抵抗を測定することにより、帯電防止性を測定した。参考として、摩擦による異物および埃が付かず、加工性を向上させる効果を持たせるには、表面抵抗(単位:Ω)を1012以下にして管理する必要がある。
【0048】
スクラッチ発生有無を確認するために、LCDパネルに当該フィルムを付着して製品を包装した後、1.5〜2.0GMS、輸送方向1H、5〜200Hzのランダム振動方式の振動テスト機(IMV Co.社(日本)製、モデル名:CV−700)を用いて、パネルとフィルム間の摩擦をテストした。参考として、振動時の加速度は1.5g/cmであった。LCDパネルのスクラッチ発生有無を肉眼で確認した。スクラッチが発生しなかった場合を「○」で表示し、スクラッチが発生した場合を「×」で表示した。
【0049】
帯電防止性およびスクラッチ発生有無の結果を、次の表3および表4に示した。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
以上から確認できるとおり、前記数式1による高分子系帯電防止剤の含量比率、すなわち、厚さを考慮したフィルム全体に対する高分子系帯電防止剤の含量比率が1%未満の場合(比較例1−1、2−1、2−2)には、帯電防止性が1013Ω以上と低調であり、異物および埃がくっついて加工も困難であった。これに対し、当該含量比率が1%以上の場合には、必要とする帯電防止性(1012Ω以下)を満足した。
【0053】
一方、高分子系帯電防止剤が被着材と接するスキン層に使用された場合に、当該スキン層の樹脂成分100重量部に対して高分子系帯電防止剤が30重量部を超過して使用された場合(比較例1−2および比較例2−3)には、スクラッチが発生することが確認できた。
【0054】
これに対し、高分子系帯電防止剤が被着材と接するスキン層に含有される場合に、当該スキン層の樹脂成分100重量部に対して高分子系帯電防止剤が30重量部以下で含有される場合には、スクラッチが発生しなかった。
【0055】
[実験2―高分子系帯電防止剤の位置に係る実験]
線形低密度ポリエチレンからなる第1のスキン層、高密度ポリエチレンからなる中間層、線形低密度ポリエチレンからなる第2のスキン層、からなる3層共押出フィルムを構成した。高分子系帯電防止剤は、実験1にて使用したものと同じ高分子系帯電防止剤(三井・デュポン石油化学社製)を使用した。
【0056】
本実験2において使用した各フィルムの構成は、次のとおりである。参考として、ここでは、高分子系帯電防止剤の含量を当該層の全体100重量を基準とした比率、すなわち重量%で表示した。また、以下において、「A/B」とは、当該A層の「下部」にB層が構成されているということを意味する。
【0057】
第1のフィルム:第1のスキン層(高分子系帯電防止剤20重量%含有)/中間層/第2のスキン層(高分子系帯電防止剤20重量%含有)
第2のフィルム:第1のスキン層(高分子系帯電防止剤20重量%含有)/中間層/第2のスキン層
第3のフィルム:第1のスキン層/中間層/第2のスキン層(高分子系帯電防止剤20重量%含有)
第4のフィルム:第1のスキン層(塩化アンモニウム帯電防止剤20重量%含有)/中間層/第2のスキン層(塩化アンモニウム帯電防止剤20重量%含有)
前記第1〜第4のフィルムの中から選択したフィルム2枚を、シリコン系接着剤を用いてラミネートして保護フィルムを構成したり、樹脂フィルム(ポリエチレン樹脂フィルム)を間に挟んでその両側に接着剤を用いて前記フィルム1枚をラミネートしたりする方法により、次の各実施例および比較例の保護フィルムを構成した。具体的な実施例および比較例の保護フィルムの構成は、次のとおりである。以下において、「A/B」とは、当該フィルムAまたは接着剤の「下部」にフィルムBまたは接着剤が構成されているということを意味する。
【0058】
実施例1:第1のフィルムのみで構成
実施例2:第2のフィルム/接着剤/第3のフィルム
実施例3:第2のフィルム/接着剤/樹脂フィルム/接着剤/第3のフィルム
実施例4:樹脂フィルム/接着剤/第3のフィルム
比較例1:第3のフィルム/接着剤/第2のフィルム
比較例2:第4のフィルムのみで構成
以上の実施例および比較例による保護フィルムに対し、白化発生、帯電防止性、スクラッチ発生およびスリップ性テストを行った。参考として、帯電防止性およびスクラッチ発生有無は、先の実験1と同一に行った。
【0059】
白化発生有無を確認するために、LCDパネルに保護フィルムを付着して製品を包装してから、高温高湿条件(65℃、85%RH、96時間)で放置した後、ブリードアウトによる白化の発生有無を肉眼で確認した。このテストでは、振動は与えなかった。白化が発生しなかった場合を「○」で表示し、白化が発生した場合を「×」で表示した。
【0060】
スリップ性をテストするために、サンプルをMD方向に120mm×250mmおよび75mm×100mmに切った後、CEAST DIGITAL SLIP TESTER CODE 61196/000機で摩擦係数を測定した。小さい方のサンプルを固定させてから大きい方のサンプルを置いた後、200gのSLEDを軽く載置して測定した。参考として、フィルムとのブロッキング性を防止でき、作業者による作業の際にフィルムどうしの付着現象を防ぎ、便利に使用できるには、動摩擦が0.3μm以下である必要がある。
【0061】
以上の実験結果を、次の表5に示した。
【0062】
【表5】

【0063】
以上から見られるように、高分子系帯電防止剤が保護フィルムの外側方向に位置するように使用された実施例1〜4の場合には、帯電防止性に優れ、白化およびスクラッチも発生しなかった。
【0064】
しかし、高分子系帯電防止剤が保護フィルムの内側方向に位置する比較例1の場合には、帯電防止性が低調であるだけでなく、動摩擦が0.45μmでスリップ性が非常に低調であった。この場合には、フィルムとのブロッキング性を防止することが困難であり、作業者による作業の際、フィルムどうしの付着現象を防ぐことが困難である。一方、このような低調なスリップ性を改善するためにスリップ剤のような添加剤を挿入する場合には、皺が発生するという問題が起こる。したがって、高分子系帯電防止剤を使用する場合には、保護フィルムの内側方向でなく保護フィルムの外側方向を向くスキン層に高分子系帯電防止剤が位置するようにすることが好ましい。
【0065】
一方、高分子系帯電防止剤を使用していない比較例2の場合には、帯電防止性においては問題がなかったものの、白化およびスクラッチが発生し、スリップ性も相対的に低調であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、保護フィルムおよびその製造方法に関し、詳しくは、液晶表示装置(LCD)、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのような電子製品用、または、建築ガラス資材など、各種製品を保護することのできる保護フィルムおよびその製造方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層、ならびに前記中間層を挟んで両側に存在する第1のスキン層および第2のスキン層からなる積層フィルムを含み、
前記第1のスキン層または第2のスキン層のうち一以上の層にはエチレン系不飽和カルボキシル酸からなる高分子系帯電防止剤が含有されることを特徴とする保護フィルム。
【請求項2】
前記中問層に前記高分子系帯電防止剤がさらに含有されることを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
接着剤により接着された前記積層フィルム2枚を含むことを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項4】
樹脂からなるフィルムの両側または一方側において接着剤により前記積層フィルム2枚または1枚が接着されることを特徴とする請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項5】
中間層、ならびに前記中間層を挟んで両側に存在する第1のスキン層および第2のスキン層からなる第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルム2枚が接着剤により接着されてなる保護フィルムであって、
前記第1の積層フィルムは、前記第1のスキン層にのみエチレン系不飽和カルボン酸からなる高分子系帯電防止剤が含有され、
前記第2の積層フィルムは、前記第2のスキン層にのみエチレン系不飽和カルボン酸からなる高分子系帯電防止剤が含有され、
前記第1の積層フィルムの第2のスキン層および前記第2の積層フィルムの第1のスキン層が互いに向かい合うように接着されたことを特徴とする保護フィルム。
【請求項6】
中間層、ならびに前記中間層を挟んで両側に存在する第1のスキン層および第2のスキン層からなる第1の積層フィルムおよび第2の積層フィルム2枚が、樹脂からなるフィルムを挟んでその両側において接着剤により接着されてなる保護フィルムであって、
前記第1の積層フィルムは、前記第1のスキン層にのみエチレン系不飽和カルボン酸からなる高分子系帯電防止剤が含有され、
前記第2の積層フィルムは、前記第2のスキン層にのみエチレン系不飽和カルボン酸からなる高分子系帯電防止剤が含有され、
前記第1の積層フィルムの第2のスキン層および前記第2の積層フィルムの第1のスキン層が互いに向かい合うように接着されたことを特徴とする保護フィルム。
【請求項7】
中間層、ならびに前記中間層を挟んで両側に存在する第1のスキン層および第2のスキン層からなる積層フィルムが、樹脂からなるフィルムの一方側において接着剤により接着されてなる保護フィルムであって、
前記積層フィルムは、前記第1のスキン層または前記第2のスキン層にのみエチレン系不飽和カルボン酸からなる高分子系帯電防止剤が含有され、
前記積層フィルムのうち前記高分子系帯電防止剤が含有されていない第2のスキン層または第1のスキン層が前記接着剤に向かうように接着されたことを特徴とする保護フィルム。
【請求項8】
前記樹脂からなるフィルムは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂またはポリメタクリル酸系樹脂のいずれか一つまたは二つ以上の混合樹脂からなるフィルムであることを特徴とする請求項4、6、また7のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項9】
次の数式1によって得られる高分子系帯電防止剤の含量の割合が1%〜30%であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の保護フィルム。
【数1】

[前記式中、Tiは、前記積層フィルムのi番目の層の厚さ、Wiは、前記積層フィルムのi番目の層において前記高分子系帯電防止剤を除いた構成成分の重量部、Aiは、前記積層フィルムのi番目の層の前記高分子系帯電防止剤の重量部である。]
【請求項10】
前記第1のスキン層、中間層、および第2のスキン層の厚さの比がそれぞれ3:4:3であり、前記高分子系帯電防止剤は、被着材と接するスキン層に含有されるものであり、前記高分子系帯電防止剤は、前記被着材と接するスキン層の構成成分のうち前記高分子系帯電防止剤を除いた成分100重量部に対して4重量部以上30重量部以下で含有されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項11】
前記第1のスキン層、中間層、および第2のスキン層の厚さの比がそれぞれ1:8:1であり、前記高分子系帯電防止剤は、被着材と接するスキン層に含有されるものであり、前記高分子系帯電防止剤は、前記被着材と接するスキン層の構成成分のうち前記高分子系帯電防止剤を除いた成分100重量部に対して10重量部以上30重量部以下で含有されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項12】
前記高分子系帯電防止剤は、吸湿性高分子系帯電防止剤であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項13】
前記高分子系帯電防止剤は、金属塩を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項14】
前記高分子系帯電防止剤は、多価アルコールを含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項15】
前記スキン層をなす樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂またはポリメタクリル酸系樹脂のいずれか一つまたは二つ以上の混合樹脂であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項16】
前記スキン層をなす樹脂は、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項17】
樹脂を共押出して、中間層、ならびに前記中間層を挟んで両側に存在する第1のスキン層および第2のスキン層からなる積層フィルムを形成し、
前記共押出の際、前記第1のスキン層または第2のスキン層のうち一以上の層にエチレン系不飽和カルボキシル酸からなる高分子系帯電防止剤を樹脂とともに添加して共押出する第1のステップを含むことを特徴とする保護フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記第1のスキン層にのみ前記高分子系帯電防止剤を添加して共押出した第1の積層フィルム、および前記第2のスキン層にのみ前記高分子系帯電防止剤を添加して共押出した第2の積層フィルムの2枚のフィルムを用意し、
前記用意されたフィルム2枚を前記第1の積層フィルムの第2のスキン層および前記第2の積層フィルムの第1のスキン層が互いに向かい合うように接着剤を用いてラミネートする第2のステップをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記第1のスキン層にのみ前記高分子系帯電防止剤を添加して共押出した第1の積層フィルム、および前記第2のスキン層にのみ前記高分子系帯電防止剤を添加して共押出した第2の積層フィルムの2枚のフィルムを用意し、
前記用意されたフィルム2枚を樹脂からなるフィルムを挟んでその両側において接着剤を用いてラミネートし、前記第1の積層フィルムの第2のスキン層および前記第2の積層フィルムの第1のスキン層が互いに向かい合うようにラミネートする第2のステップをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の保護フィルムの製造方法。
【請求項20】
前記第1のスキン層または前記第2のスキン層にのみ前記高分子系帯電防止剤を添加して共押出した積層フィルムを用意し、
前記用意された積層フィルムを樹脂からなるフィルムと接着剤を用いてラミネートし、前記積層フィルムのうち前記高分子系帯電防止剤が含有されていない第2のスキン層または第1のスキン層が接着剤に向かうようにする第2のステップをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の保護フィルムの製造方法。

【公表番号】特表2011−517430(P2011−517430A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502873(P2011−502873)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002875
【国際公開番号】WO2009/145586
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(504466616)ヨウル チョン ケミカル カンパニー, リミテッド (16)
【Fターム(参考)】