説明

保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法および光学素子

【課題】UV照射後の保護フィルムの剥離力の上昇を抑える方法と該方法を用いて得られる積層体および光学素子を提供する。
【解決手段】紫外線(UV)照射工程を経る積層体の製造に使用される保護フィルムが被着された基材からUV照射後に保護フィルムを剥離する際の剥離力の上昇を抑制する方法であって、保護フィルムと前記基材の界面に波長300nm以下の光が照射されない手段を設けることを特徴とする保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線(UV)照射工程を経る積層体の製造に使用される保護フィルムが被着された基材のUV照射後の保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法および該方法で得られる積層体を用いた光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックシート、フィルムや金属板等の材料やそれを用いた各種製品において、キズ、汚染、腐食等を防止する目的で保護フィルムが使用されている。
保護フィルムは貯蔵時や加工時は被着体である材料や製品によく被着し剥離が起こらず、使用時や加工後は容易に剥離でき、しかも剥離後には被着体に糊残りや被着体を汚染しないものが好ましい。
ところが、長期の貯蔵や紫外線、温度上昇などの要因により保護フィルムの剥離が困難になることが多くその対応が検討されている(特許文献1および2)。
また、加工時の環境、例えばUV照射、加熱、応力印加等により保護フィルムと被着体との接着力が上昇して剥離が困難になることも多く、上記と同様に無理に引き剥がそうとすると保護フィルムが破断したり、粘着剤層が用いられていた場合は粘着剤の一部が残存する所謂糊残り等の問題がある。これらへの対策として、例えばUV照射を組み込んだ工程では、UV照射により粘着強度が低下する材料を用いる方法が示されている(特許文献3)。
液晶表示装置等の形成に用いる光学部材、例えば偏光板、位相差板やそれらを積層した楕円偏光板などは、UV照射工程を伴う積層やその後の所定サイズへの打抜き加工、輸送や保管、検査などの取扱の際に光学部材の表面が損傷されないように保護フィルムが設けられる。その保護フィルムは通常、粘着剤を設けた形態であり、表面保護が不要になると光学部材より剥離除去される。
しかし、上述のように保護フィルムの接着力(剥離力)は経時や加工工程を経ることにより上昇し表面の保護が不要になって光学部材から剥離除去する際に剥離の多大の時間や労力が必要になり作業効率が低下し、さらに光学部材の損壊する場合もあった。液晶表示装置サイズの拡大と共にその傾向は顕著になってきており、対策も検討されている(特許文献4)。
また、UV照射時に短波長光をカットした光を照射する方法も知られているが、該方法はUV照射による劣化を防止するものである(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−293210号公報
【特許文献2】特開平06−240215号公報
【特許文献3】特開平11−167091号公報
【特許文献4】特開2000−266933号公報
【特許文献5】特開2004−026898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、紫外線(UV)照射後に保護フィルムの剥離力の上昇を抑制することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題の解決に向けて鋭意研究した結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は次のとおりである
【0006】
〔1〕紫外線(UV)照射工程を経る積層体の製造に使用される保護フィルムが被着された基材からUV照射後に保護フィルムを剥離する際の剥離力の上昇を抑制する方法であって、保護フィルムと前記基材の界面に波長300nm以下の光が照射されない手段を設けることを特徴とする保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法。
〔2〕UV照射時に波長300nm以下の光をカットするフィルターを用いることを特徴とする上記〔1〕に記載の保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法。
〔3〕前記基材が位相差フィルムであることを特徴とする上記〔1〕または〔2〕に記載の保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法。
〔4〕前記位相差フィルムが延伸フィルムであることを特徴とする上記〔3〕に記載の保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法で得られた積層体。
〔6〕上記〔5〕に記載の積層体を用いた光学素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保護フィルムと基材の界面に波長300nm以下の光が照射されない手段を設けることにより、UV照射後も保護フィルムの剥離力の上昇を抑制することができ、加工工程を経た後も保護フィルムの剥離が容易である。またかかる方法を用いて得られる積層体や光学素子から保護フィルムを剥離する際に積層体や光学素子の損壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1で用いたフィルターの紫外線−可視光領域の透過率を示す図である。
【図2】実施例4で用いたPETフィルムの紫外線−可視光領域の透過率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する
本発明は、紫外線(UV)照射工程を経る積層体の製造に使用される保護フィルムが被着された基材からUV照射後に保護フィルムを剥離する際の剥離力の上昇を抑制する方法であって、保護フィルムと前記基材の界面に波長300nm以下の光が照射されない手段を設けることを特徴とする保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法、に関する。
【0010】
本発明に使用される保護フィルムは、通常使用される保護フィルムであれば特に制限はなく、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等のフィルムが挙げられるが、好ましくはポリオレフィン系樹脂を用いたものである。これらの保護フィルムは適度な粘着性を有してもよく、粘着性を発現させるために表面に粘着剤層を形成したものも使用することができる。
【0011】
ポリオレフィン系樹脂としては、炭素数2〜8のオレフィンを主体として重合又は共重合することにより得られる低結晶性ないし高結晶性の樹脂が使用され、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、アタクチックポリプロピレン、ポリブテン−1(PB−1)、エチレン−アクリル酸共重合樹脂等の樹脂が使用できる。
好ましくはフィルムの伸長度の観点から超低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1の中から選ばれた少なくとも1種類以上の樹脂が使用でき、超低密度ポリエチレンあるいは直鎖低密度ポリエチレンを主体とする樹脂がさらに好ましい。上記の樹脂の中で、ポリエチレン系樹脂にはエチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等との共重合物も含まれる。
【0012】
また、保護フィルムの表面に形成されていてもよい粘着剤層の材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合樹脂(EMMA)、アイオノマー樹脂、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合樹脂(EGMA)、エチレン−無水マレイン酸共重合樹脂(不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン)、アモルファスポリオレフィン(APO)等のオレフィン系共重合樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンブロック共重合樹脂、スチレンイソプレンブロック共重合樹脂、ブチルゴム、ポリイソブチレン、シリコンゴム、ポリビニルイソブチルエーテル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等のゴム系樹脂、ガラス転移点(Tg)が−10℃以下のアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂が使用可能であるが、後述する保護フィルムが被着される基材と適度な密着力が得られる点でオレフィン系共重合樹脂が好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン-メチルメタアクリレート共重合樹脂が特に好ましい。
【0013】
上記EVAにおいて樹脂中の酢酸ビニル(VA)成分の含有量は10〜28質量%が好ましく、EEAにおいては樹脂中のアクリル酸エチル(EA)含有量は7〜20質量%が好ましく、EMMAにおいては樹脂中のメタクリル酸メチル(MMA)含有量は9〜20質量%が好ましい。かかる組成では樹脂のビカット軟化点は40℃以上であるため、フィルム成膜、巻取等で良好な特性を持つ。
【0014】
上記粘着剤層には適当な密着力を得る観点から粘着賦与剤が含まれることが好ましく、更に濡れ性を向上させて均一な密着性を得る観点から界面活性剤が含まれることが好ましい。
上記粘着賦与剤としては、天然樹脂系粘着賦与剤として、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類:水素化、不均化、重合、マレイン化及びメチルエステル化、グリセリンエステル化、ペンタエリスリトールエステル化されたロジン誘導体類:テルペン樹脂(α−ピネン、β−ピネン)テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂等のテルペン樹脂類等を挙げることができ、重合合成樹脂系粘着賦与剤として、例えば、C5成分(ペンテン、メチルブテン等)を重合成分とした脂肪族合成樹脂:C9成分(インデン、ビニルトルエン等)を重合成分とした芳香族合成樹脂:上記C5/C9成分の共重合樹脂:例えばジシクロペンタジエン等の脂環族を重合した石油樹脂類:石炭の乾留成分を重合したクマロン、インデン樹脂類:スチレン樹脂類等を、縮合合成樹脂系粘着賦与剤として、アルキルフエノール樹脂類、キシレン樹脂類等を挙げることができる。これらの粘着賦与剤は複数種を混合して使用することができるが、フィルム表面へのブリード性及びブリード物が被着体へ転着した場合の除去しやすさからロジン誘導体類のエマルジョンタイプを樹脂に対して5質量%以下添加するのが好ましい。
【0015】
前記の界面活性剤としては、非イオン界面活性剤類として、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル類、脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー等を挙げることができ、陰イオン界面活性剤類として、例えば、各種の脂肪酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルスルホコハク酸エステル塩及びその誘導体類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;等を、陽イオン界面活性剤類として、例えばアルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等を、また両性界面活性剤類の例として、例えばアルキルベタイン等を挙げることができる。また、これらの界面活性剤のアルキル基の水素の一部をフッ素で置換したものも使用可能である。更に、界面活性剤の分子構造中にラジカル共重合性不飽和結合を有する、いわゆる反応性界面活性剤も使用することができる。
【0016】
上記の界面活性剤のうち、ポリオレフィン系樹脂との相溶性とフィルム上面へのブリード性の双方にバランスが良く、フィルム成型時の耐熱性に優れ、且つ被着体への腐食等の影響が少ないという観点より、非イオン系界面活性剤類が好ましく、更に好ましくはポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であり、特に好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0017】
界面活性剤のHLB(Hydrophilic・Lipophilic・Balance)は5〜15が好ましく、この範囲内であると基材と粘着剤層との界面に界面活性剤がブリードしにくく、またブリードした界面活性剤がフィルム剥離時に基材面に転着した場合にも50℃以下の温水で洗浄する等の方法で、容易にブリード物を除去する事が可能である。
更に界面活性剤を含有させることにより保護フィルムが被着される基材と接する粘着剤層の濡れ指数値を33dyn/cm以上にする事が好ましく、フィルムと保護フィルムが被着される基材との密着を均一化させる事ができ、且つ、初期接着性の発現が早まり、貼りつけ後の短時間内での保護フィルムが被着された基材からのフィルムの剥れが回避される。
上記の観点から界面活性剤の添加量は樹脂に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明に使用される保護フィルムは該フィルムの基材となるフィルム層及び粘着剤層の少なくとも一方に紫外線吸収剤及び必要に応じ他の光安定剤を含有させることが好ましく、これらを添加することにより保護フィルムが被着された基材面及び保護フィルムの変色、光沢低下、フィルム伸長度の変化、フィルム剥離性の変化等が少なくなる。
【0019】
これらに配合し得る紫外線吸収剤としては、該紫外線吸収剤の紫外線吸収能や使用する保護フィルム基材や粘着剤との相容性等を考慮して広範囲の種類の中から適宜選択使用することができる。
使用可能な紫外線吸収剤としては、例えば、ハイドロキノン系(例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンジサリチレ−ト等)、サリチル酸系(例えば、フェニルサリチレ−ト、パラオクチルフェニルサリチレ−ト等)、ベンゾフェノン系(例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等)、ベンゾトリアゾ−ル系(例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−カルボン酸ブチルエステルベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5,6−ジクロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第3ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ステアリルオキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾ−ル等)などが挙げられる。
【0020】
これらの紫外線吸収剤のうち、ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾ−ル系のものが好適であり、紫外線吸収剤は0.5〜5.0質量%添加することが好ましい。
紫外線吸収剤がこの範囲内で添加すれば、紫外線カット率(360nm)は90%以上であり、この範囲より多い場合はフィルムの白化、フィルム表面への吹き出し等が起り悪影響を及ぼす傾向がある。
【0021】
前記の光安定剤としてはビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系光安定剤、有機ニッケル等のクエンチャー等が使用できる。
【0022】
本発明に使用される保護フィルムには被覆部分を明確に識別するために、必要に応じ着色剤をフィルム中に添加しておいても良い。かかる着色剤としては、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、炭酸カルシウム、石膏、沈降性シリカ、カーボンブラック、ベンガラ、アルミ粉、ブロンズ粉、雲母、モリブデン赤、カドミウム黄、黄鉛、チタン黄、酸化クロム緑、群青等の無機顔料:パーマネント・レッド4Rハンザ・イエロー10G、ベンジジイエローGR、パーマネントカーミンFB、フタロシアニン・ブルーB、フタロシアニン・グリーン等の有機顔料などを挙げることができる。
【0023】
本発明に使用される保護フィルムにおいて、ポリオレフィン系樹脂等からなる基材フィルム層に必要により粘着剤層を形成させる場合の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、基材フィルム上に粘着剤組成物の溶液を塗布乾燥する方法、ドライラミネーション法、基材フィルムと粘着剤層とを同時押し出し(多層共押し出し)により成型する方法などが使用できるが、経時による剥離性の変化が少ないため同時押し出しによる成型が好ましい。
【0024】
基材フィルム上に粘着剤組成物の溶液を塗布する場合には前記粘着剤層を形成する組成物をテトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等の溶剤に溶解した溶液を基材フィルムに塗装乾燥する。基材フィルムと粘着剤層とを同時押し出しにより成型する場合には各層の配合組成物を押出機に供給し、環状ダイにてインフレーション成型あるいはTダイにてフィルム成型を行うことにより得られる。押出温度は150℃〜200℃が好適であり、成型性が良好で、樹脂の熱劣化によるヤケ等の発生のトラブルが少ない。
【0025】
これらの中でも、品質を高めることができ、かつ経済的に製造し得るため、Tダイによる共押出法が好ましい。また、溶液塗工法が行われる場合には、基材層と粘着剤層との間の接合強度を高めるために、ポリオレフィン系基材に予めプライマー塗布などし、表面処理を施すことが好ましい。
【0026】
前記の保護フィルムの基材フィルムには、エンボスロール、コロナ放電、電子線照射等による表面処理をしたフィルムをも使用できる。さらに粘着剤層の設けられていない基材フィルム表面に印刷層、離型層を、粘着剤層の表面に離型紙層を設けることも可能である。
【0027】
本発明に使用される保護フィルムが被着される基材として使用される基材は本発明の積層体や光学素子が使用される波長領域で透明なガラス板やプラスチック材料が好ましく、プラスチック材料として、例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、各種のスチレン系ポリマー、ノルボルネン誘導体等のシクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等を主成分とするプラスチックフィルム、シートやこれらを一軸延伸もしくは二軸延伸したり、特定方向に収縮させたりして光学異方性を発現させた位相差フィルムを挙げることができる。これらの中でも前記のプラスチック材料を延伸して得られる位相差フィルムを用いるのが好ましい。
これらの基材の厚みも使用目的により適宜決定されるが、プラスチックフィルムの厚みは5〜300μm、好ましくは10〜200μmである。この範囲外ではフィルム強度が不足したり、用途によっては厚くなりすぎたりして好ましくない。
【0028】
本発明に使用される保護フィルムが被着される基材が位相差フィルムである場合、当該位相差フィルムの位相差は、フィルム面内の最大屈折率方向を示す方向の屈折率をnx、それと直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをdとするとき、550nmにおける(nx−ny)・dで表される正面位相差(Re)は20〜1000nm、より好ましくは50〜700nm、さらに好ましくは70〜300nm程度がよい。
また、{nz−(nx+ny)/2}・dで表される厚み方向の位相差(Rth)は絶対値で5〜700nm、より好ましくは10〜300nm、さらに好ましくは20〜200nm程度がよい。なお、正面位相差と厚み方向の位相差とは上記条件を同時に満たす必要はない。
【0029】
前述した保護フィルムと該フィルムが被着される基材との剥離力の範囲は、保護フィルムおよび基材を構成する材料により変化するため一概には決定できないが、両者の被着直後の180度剥離力が、0.1N/m〜3.5N/mであることが好ましく、より好ましくは0.5N/m〜3N/mである。この範囲外では、取扱い中や不用意な接触により保護フィルムが剥離する恐れがあったり、剥離のために大きな力を要したり、保護フィルムが破断したりして好ましくない。
【0030】
本発明におけるUV照射工程について説明する。
本発明では、前述のように保護フィルムと該フィルムが被着される基材との界面に波長300nm以下の光が照射されない手段を設けることが必要である、
波長300nm以下の光が照射されない手段としては特に制限はなく、例えば波長300nm以下の光をカットするフィルター類を光源と積層体の間に設ける方法や、前記の保護フィルムや該フィルムが被着される基材、さらには本発明の積層体を構成する材料が300nm以下の光をカットする機能を有する場合は該機能を有する面側からUV照射を行う方法等を挙げることができる。
【0031】
UV光源としては、公知の光源、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザーなどを挙げることができ、照射量は積算照射量として通常50〜2000mJ/cm、好ましくは100〜1500mJ/cmの範囲である。
【0032】
本発明の積層体を構成することができる前記の保護フィルムが被着される基材以外の材料について説明する。
かかる材料は、ガラス板、金属板、偏光板や各種の位相差フィルム、それらから得られる楕円偏光板などを挙げることができる。
【0033】
金属板としては、液晶表示装置等の反射板に使用される銀、アルミニウム、クロム等の高反射性の金属箔やこれらを必要に応じてマット処理した透明フィルム基板上に蒸着やメッキしたものなどを挙げることができる
【0034】
前記の偏光板の具体例としては、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分鹸化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルムからなる偏光フィルムなどが挙げられる。また偏光板は、その片面又は両面に透明保護層を有するものなどであってもよい。
さらに、反射型偏光板も例示できる。反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図り易いなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0035】
位相差フィルムとしては、保護フィルムが被着される基材として前述したものや液晶性化合物の配向を固定化したフィルム等を挙げることができる。これらは、1/2波長板や1/4波長板や視角補償などの適宜な目的を有するものであってよい。
位相差フィルムの膜厚や位相差は、保護フィルムが被着される基材として前記した範囲から適宜選定することができる。
【0036】
液晶性化合物の配向を固定化させたフィルムは、例えば、ある温度範囲において液晶性を示すサーモトロピック液晶性化合物やある溶液の特定の濃度範囲で液晶性を示すリオトロピック液晶性化合物が挙げられる。特にサーモトロピック液晶性化合物は広い温度範囲で液晶性を示すことができるようにするために複数の液晶性化合物を混合して用いることが多い。
また、液晶性化合物は低分子量、高分子量およびこれらの混合物であってもよい。
固定化前の液晶性化合物やその組成物の液晶相としては、ネマチック相、ねじれネマチック相、コレステリック相、スメクチック相、ディスコティックネマチック相等が挙げられる。また、配向形態としては、配向基板に水平に配向するホモジニアス配向や垂直に配向するホメオトロピック配向、両者の中間状態と考えられるチルト配向やハイブリッド配向が例示される。
【0037】
低分子量液晶性化合物として、飽和ベンゼンカルボン酸類、不飽和ベンゼンカルボン酸類、ビフェニルカルボン酸類、芳香族オキシカルボン酸類、シッフ塩基型類、ビスアゾメチン化合物類、アゾ化合物類、アゾキシ化合物類、シクロヘキサンエステル化合物類、ステロール化合物類などの末端に反応性官能基を導入した液晶性を示す化合物や前記化合物類のなかで液晶性を示す化合物に架橋性化合物を添加した組成物などが挙げられる。
また、ディスコティック液晶性化合物としては、トリフェニレン系、トルクセン系等が挙げられる。
【0038】
前記の高分子液晶性化合物として、各種の主鎖型高分子液晶性化合物、側鎖型高分子液晶性化合物、またはこれらの混合物(組成物)を用いることができる。
主鎖型高分子液晶性化合物としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系、ポリエステルイミド系等の主鎖型高分子液晶性化合物、またはこれらの混合物等が挙げられる。なかでも合成の容易さ、配向性、ガラス転移点などの面から液晶性ポリエステルが好ましく、前記の反応性官能基を結合していてもよい。
【0039】
前記の側鎖型高分子液晶性化合物としては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系、ポリエステル系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する物質に側鎖としてメソゲン基が結合した高分子液晶性化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
また、ディスコチック液晶性化合物は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))等に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報等に記載がある。
【0041】
これらの液晶性化合物は、配向状態を固定するために、紫外線または熱により重合もしくは架橋するような化合物であることが好ましい。そのような液晶性化合物としては、(メタ)アクリロイル基やエポキシ基、ビニル基、オキセタニル基などの重合性基を有する化合物、もしくはアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアナート基などの反応性官能基を有する化合物であることが好ましく、例えばWO97/44703号やWO98/00475号に記載の化合物などが挙げられる。
【0042】
これらの化合物は、一般的なポリイミド系配向膜をラビング処理した基板上に該化合物層を形成した時に、配向膜側でわずかにチルト角を有する水平(プレーナ)配向をし、空気界面側でほぼ垂直(ホメオトロピック)配向するような液晶性化合物または、垂直配向させるような配向膜を形成した基板上に該化合物層を形成した時や、ガラス基板等の基板上に該化合物層を形成した時に垂直配向するような液晶性化合物である。これらの化合物は重合開始剤または架橋剤の存在下、紫外線や熱などによって配向状態を保持したまま重合または架橋させることにより、得られた光学異方体がその後の温度変化などに対しても一定した配向状態を保つことができる。
【0043】
前記液晶性化合物層(液晶層)を配向膜上に形成する場合、該化合物が単独で塗布することが可能な場合は、直接該化合物を配向膜上に塗布することにより液晶層を形成することができるが、溶液にして塗布することも可能である。塗布する際に用いられる該化合物の溶液の溶媒としては、該化合物の溶解性、塗布時の配向膜上への濡れ性に優れ、乾燥後の液晶層の配向を乱さないものであれば特に制限はない。
【0044】
そのような溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン等のケトン類、n−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、酢酸メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類が挙げられるがこれらに限定されない。また、溶媒は単一でも混合物でもよい。
液晶性化合物を溶解する際の濃度は溶媒への溶解性、配向基板フィルム上への濡れ性、塗布後の厚みなどによって異なるが、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%程度がよい。
【0045】
前記液晶性化合物を、配向膜上に塗布する方法としては特に限定されないが、塗布後の液晶層の厚みが製品として使用時の性能に影響するため、均一の厚さに塗布できる方法が好ましい。
そのような塗布の方法としては、例えばマイクログラビアコート方式、グラビアコート方式、ワイヤーバーコート方式、ディップコート方式、スプレーコート方式、メニスカスコート方式、ダイコート方式などによる方法が挙げられる。
【0046】
液晶層の厚さとしては、所望とする正面位相差と厚み方向の位相差によって異なり、さらに配向した液晶性化合物の複屈折によっても異なるが、好ましくは0.05〜20μm、より好ましくは0.1〜10μm程度である。膜厚がこの範囲外では、目的とする効果が得られない、配向が不十分になる、などして好ましくない。
【0047】
また、液晶層の位相差は、液晶層面内の最大屈折率方向を示す方向の屈折率をnx1、それと直交する方向の屈折率をny1、厚さ方向の屈折率をnz1、液晶層の厚さをd1とするとき、550nmにおける(nx1−ny1)・d1で表される正面位相差(Re1)は20〜1000nm、より好ましくは50〜700nm、さらに好ましくは70〜300nm程度がよい。
また、{nz1−(nx1+ny1)/2}・d1で表される厚み方向の位相差(Rth1)は絶対値で5〜700nm、より好ましくは、10〜300nm、さらに好ましくは20〜200nm程度がよい。なお、正面位相差と厚み方向の位相差とは上記条件を同時に満たす必要はない。
【0048】
前記液晶性化合物は、例えば、溶解性や濡れ性を考慮して調製した液晶性化合物の溶液(必要に応じて、重合開始剤または架橋剤、レベリング剤等を添加する)を配向基板フィルム上に塗布後、加熱により乾燥させた後、配向させ、必要に応じて紫外線や熱などにより重合または架橋させて配向を固定化させることにより形成される。加熱により乾燥させる条件、紫外線や熱による重合または架橋させる条件については、用いる溶媒の種類や、液晶性化合物の温度による配向状態の変化および安定性を考慮して適宜定められる。
【0049】
より具体的には、例えば、配向基板上に形成された液晶層を、熱処理などの方法で液晶を配向させた後、必要により光照射および/または加熱処理で反応性基を反応させ当該配向を固定化する。最初の熱処理では、使用した液晶性組成物の液晶相発現温度範囲内で所望の温度に加熱することで、該液晶性組成物が本来有する自己配向能により液晶を配向させる。熱処理の条件としては、用いる液晶性組成物の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10℃〜300℃、好ましくは30℃〜200℃の範囲であり、該液晶性組成物のガラス転移点(Tg)以上の温度、さらに好ましくはTgより10℃以上高い温度で熱処理するのが好ましい。あまり低温では、液晶配向が充分に進行しないおそれがあり、また高温では液晶性組成物や配向基板に悪影響を与えるおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜30分、好ましくは10秒〜10分の範囲である。3秒より短い熱処理時間では、液晶配向が充分に完成しないおそれがあり、また30分を超える熱処理時間では、生産性が悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。
【0050】
該液晶層を上記の方法により配向を形成したのち、反応性基を含有する液晶性組成物を用いた場合は、当該液晶配向状態を保ったまま液晶性組成物を組成物中に含まれる反応開始剤の機能を発現させ反応性基を反応させて配向を固定化する。
【0051】
反応開始剤が光の照射により開始剤の機能を発現する場合、光照射の方法としては、用いる反応開始剤の吸収波長領域にスペクトルを有するようなメタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザーなどの光源からの光を照射し、反応開始剤を活性化させる。照射量は、積算照射量として通常10〜2000mJ/cm、好ましくは80〜1000mJ/cmの範囲である。ただし、当該反応開始剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、液晶性組成物自身に光源波長光の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、吸収波長の異なる2種以上の反応開始剤を混合して用いるなどの方法を採ることもできる。
光照射時の温度は、該液晶性組成物が液晶配向をとる温度範囲が好ましく、反応の効果を充分にあげるためには、該液晶材料のTg以上の液晶相温度で光照射を行うのが好ましい。
【0052】
かくして得られた液晶の配向を固定化したフィルムから必要により液晶層を、配向基板とは異なる基板(以下、第2の基板という)や仮基板上に転写させることができる。
前記の第2の基板や仮基板としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、アモルファスポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンサルファイド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、あるいはエポキシ樹脂等のフィルムを例示できる。
とりわけ、光学的欠陥の検査性に優れる透明性で光学的に等方性のフィルムとして、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アモルファスポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、あるいはエポキシ樹脂などのプラスチックフィルムが好ましく使用される。
【0053】
また、これらフィルムの厚みとしては、望ましくは10〜100μm、特に望ましくは20〜80μmがよい。厚みが厚すぎると液晶層の転写(剥離)に際して剥離ポイントが安定せず剥離性が悪化する恐れがあり、一方薄すぎるとフィルムの機械強度が保てなくなるため、製造中に引き裂かれるなどのトラブルが生じる恐れがある。
なお、仮基板は該用途として公知のフィルムでも、上記に例示したフィルムから適宜選定してもよく、シリコーン処理等の易剥離性処理が施されていてもよく、また接着力を調整する目的で予めその表面に有機薄膜又は無機薄膜を形成したり、コロナ放電処理等を施しておいても良い。
【0054】
上記の転写に使用される粘着剤や接着剤(以下、粘・接着剤という)は、転写される両界面に適度な接着力を有する光学グレードのものであれば特に制限はなく、例えば、アクリル重合体系、エポキシ樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ゴム系、ウレタン系およびこれらの混合物系や、熱硬化型および/または光硬化型、電子線硬化型等の各種反応性のものを挙げることができるが、光硬化型が処理の容易さなどから好ましい。
【0055】
光硬化型の粘・接着剤には、ラジカル重合系やカチオン重合系が知られているが、本発明ではラジカル重合系である(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主体とする粘・接着剤(以下、アクリル系粘・接着剤という。)からなるものが好ましく、アクリル系粘・接着剤は、通常の市販されている紫外線(UV)硬化型粘・接着剤の性能や液晶層の接着性に応じて適宜変性したものが使用できる。
【0056】
これらの適宜な変性は、東亜合成(株)や大阪有機化学工業(株)などから市販されている各種(メタ)アクリル系の単官能モノマーや多官能モノマー、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート等のオリゴマーに光重合開始剤、粘度調整剤(増粘剤)、表面改質剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止財等の添加剤等を適宜添加して行うことができる。さらに光の拡散や散乱を目的としてアクリル系粘・接着剤とは屈折率の異なる(微)粒子を添加してもよい。前記(微)粒子の材質としては、シリカ、アルミナ、ITO、銀やポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の(架橋)プラスチック等を挙げることができる。これらの添加量は、その種類、構成成分、機能などにより一概には決定できないが、通常は、アクリル系粘・接着剤に対して0.01質量%〜20質量%が好ましい。
【0057】
光拡散性の粘・接着剤は、粘・接着剤中に上記の如き(微)粒子を分散させて、光拡散性を発現させたものである。粘・接着剤層を光拡散性のもので構成する場合、そのヘイズは20%以上であるのが好ましく、さらには40%以上、とりわけ60%以上であるのが一層好ましい。ヘイズは、JIS K 7105 に規定される値であって、(拡散透過率/全光線透過率)×100(%) で表される。
【0058】
前記反応性のものの反応(硬化)条件は、粘・接着剤を構成する成分、粘度や反応温度等の条件により変化するため、それぞれに適した条件を選択して行えばよい。アクリル系粘・接着剤の場合は、例えば前述した液晶層の固定化と同様な光源を使用し、同様な照射量でよい。電子線硬化型の場合の加速電圧は、通常10kV〜200kV、好ましくは25kV〜100kVである。
【0059】
粘・接着剤層の厚みは、0.5〜50μm、望ましくは0.5〜20μm、さらに望ましくは1〜10μmである。厚みがこれ以上薄すぎると、液晶層を転写するときの加工が困難となり、また厚すぎると接着剤層の硬化に時間がかかる、剥離不良が発生しやすいなどして好ましくない。
【0060】
前記の転写方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、特開平4−57017号公報や特開平5−333313号公報に記載されているように液晶フィルム層を粘着剤もしくは接着剤を介して、配向基板とは異なる目的の基板を積層した後に、必要により粘着剤もしくは接着剤の硬化処理(UV架橋等)を施し、該積層体から配向基板を剥離することで液晶フィルムのみを転写する方法等を挙げることができる。
【0061】
本発明の積層体の製造方法について説明する。
積層体は、保護フィルムが被着された基材とそれ以外の前記の材料とをUV反応(硬化)性の粘・接着剤を介して積層し、保護フィルムと前記基材との界面に波長300nm以下の光が照射されない前述の手段を設けてUV照射する方法で製造することができる。
保護フィルムを有する基材以外の材料を複数積層することも何等問題なく行うことができる。
【0062】
本発明の積層体の構成の一例を次に示す。なお。「/」は層界面を表す。
保護フィルム/基材/粘・接着剤層/液晶層/配向基板
保護フィルム/基材/粘・接着剤層/液晶層/粘・接着剤層/第2の基板
保護フィルム/基材/粘・接着剤層/液晶層/粘・接着剤層/仮基板
保護フィルム/基材/粘・接着剤層/位相差フィルム
保護フィルム/基材/粘・接着剤層/偏光板
保護フィルム/基材/粘・接着剤層/液晶層/粘・接着剤層/位相差フィルム
保護フィルム/基材/粘・接着剤/位相差フィルム/粘・接着剤層/液晶層/配向基板
保護フィルム/基材/粘・接着剤/位相差フィルム/粘・接着剤層/液晶層/粘・接着剤層/第2の基板
保護フィルム/基材/粘・接着剤/位相差フィルム/粘・接着剤層/液晶層/粘・接着剤層/仮基板
保護フィルム/基材/粘・接着剤/位相差フィルム/粘・接着剤層/液晶層/配向基板/粘・接着剤層/偏光板
【0063】
本発明の積層体の製造に用いられる粘・接着剤は、前記の液晶層の転写に好ましく使用されるアクリル系粘・接着剤と同様なものでよく、UV照射条件も保護フィルムと前記基材の界面に波長300nm以下の光が透過を防止できる前述の手段を設けてUV照射すればよく、照射量も同一範囲でよい。
【0064】
本発明の光学素子は、前記の積層体の構成と光学パラメーターに応じて、そのままでまたは必要により他の光学部材、例えば位相差フィルムや偏光板をさらに組み合わせて各種液晶表示装置の補償部材や、楕円偏光板、円偏光板として機能させることができる。
例えば、前記の積層体の一例として挙げた保護フィルム/基材/粘・接着剤層/偏光板において、基材が1/4波長板の場合はさらに1/2波長板と組み合わせることにより広帯域の楕円偏光板とすることができる。また、液晶層を積層した場合は、当該液晶層の相構造や配向形態により、STN型、TN型、OCB型、HAN型、ECB型、VA型、IPS型等の透過型または反射型液晶表示装置の補償板や視野角改良部材として使用することができる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例で用いた分析や測定の方法は以下の通りである。
【0066】
(1)剥離力の測定
(株)東洋精機製作所製のストログラフEL−IIを用い、室温下で300mm/minの剥離速度で180度剥離力を測定した。
(2)顕微鏡観察
オリンパス光学社製BH2偏光顕微鏡で液晶相挙動を観察した。
(3)光学パラメーターの測定
液晶層や位相差フィルムの位相差値(Re,Re1,Rth,Rth1等)は、波長550nmの光を用いて王子計測機器(株)製のKOBRA−21ADHで測定した。
(4)対数粘度の測定
ウベローデ型粘度計を用い、フェノール/テトラクロロエタン(60/40質量比)混合溶媒中、30℃で測定した。
(5)紫外線−可視光領域のスペクトルの測定
日本分光(株)製の紫外・可視・近赤外分光光度計V−570を用いて波長200nm〜800nmの範囲のスペクトルを測定した。
【0067】
[参考例1(液晶性組成物溶液の調製)]
テレフタル酸50mmol、2,6−ナフタレンジカルボン酸50mmol、メチルヒドロキノンジアセテート40mmol、カテコールジアセテート60mmol、およびN−メチルイミダゾール60mgを用いて窒素雰囲気下、270℃で12時間重合を行った。次に得られた反応生成物をテトラクロロエタンに溶解したのち、メタノールで再沈殿を行って精製し、液晶性ポリエステル(ポリマー1)14.7gを得た。この液晶性ポリエステルの対数粘度は0.17、液晶相としてネマチック相をもち、等方相−液晶相転移温度は250℃以上、ガラス転移点は115℃であった。
ビフェニルジカルボニルクロリド90mmol、テレフタロイルクロリド10mmol、S−2−メチル−1,4−ブタンジオール105mmolをジクロロメタン中で室温にて20時間反応させ、反応液をメタノール中に投入し再沈殿させることにより液晶性ポリエステル(ポリマー2)12.0gを得た。ポリマー2の対数粘度は0.12であった。
ポリマー1の19.82gとポリマー2の0.18gからなる混合ポリマーを20質量%となるようにN−メチルピロリドンに溶解して液晶性組成物溶液を調製した。
【0068】
[実施例1]
片面に保護フィルムとして東レ(株)製ポリオレフィン系フィルム(トレテック7332)が被着された積水化学工業(株)製エスシーナ(正面位相差:140nm)の保護フィルムが被着されていない面と市販の偏光板とを東亞合成(株)製UV硬化型接着剤UV−3400を介して密着後、保護フィルム側より市販の波長300nm以下の光をカットするフィルターを介して高圧水銀灯より、600mJ/cm、1200mJ/cm照射し、トレテック7332/エスシーナ/UV−3400/偏光板形態の積層体1(600mJ/cm照射)および積層体2(1200mJ/cm照射)を得た。
得られた積層体からの保護フィルムの剥離力を表1に示す。
なお、UV照射前のトレテック7332/エスシーナからトレテック7332を剥離するに必要な力(180度剥離力)は、2.6〜2.7N/mであった。
また、波長300nm以下の光をカットするフィルターの紫外線−可視光領域のスペクトルを図1に示す。
【0069】
[比較例1]
実施例1において接着層の硬化のためのUV照射時に波長300nm以下の光をカットするフィルターを使用しなかったことを除いて、実施例1と同様に行い、積層体3(600mJ/cm照射)および積層体4(1200mJ/cm照射)を得た。
得られた積層体からの保護フィルムの剥離力を表1に示す。
【0070】
[実施例2]
保護フィルムとしてDIC(株)製PP系保護フィルム(DIFAREN K8000)を用いたことを除いて、実施例1と同様に行い、積層体5(600mJ/cm照射)および積層体6(1200mJ/cm照射)を得た。
得られた積層体からの保護フィルムの剥離力を表1に示す。
【0071】
[比較例2]
フィルターを使用しないことを除いては、実施例2と同様に行い、積層体7(600mJ/cm照射)および積層体8(1200mJ/cm照射)を得た。
得られた積層体からの保護フィルムの剥離力を表1に示す。
【0072】
[実施例3]
幅650mm、厚み100μmの長尺のPEEKフィルムを搬送しながら、レーヨン布を巻き付けた150mmφのラビングロールを斜めに設定し、高速で回転させることにより連続的にラビングを行い、ラビング角度45°の配向基板フィルムを得た。
参考例1に記載した液晶性組成物溶液を、前記配向基板フィルム上に、ダイコーターを用いて連続的に塗布・乾燥し、未配向の液晶性組成物層を形成した後、150℃×10分間加熱処理をして液晶性組成物を配向させ、次いで室温に冷却して配向を固定化して液晶層とPEEKフィルムとの積層体Bを得た。この液晶層は、ねじれネマチック配向しており、ねじれ角は90度、正面位相差は140nmであった。
積層体Bの液晶層上に市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を5μmの厚さに接着剤層1として塗布し、この上に保護フィルムとしてトレテック7332が被着されたポリカーボネート製の位相差フィルムである(株)カネカ製エルメック(正面位相差:270nm)をラミネートし、実施例1で使用したフィルターを透過した光を600mJ/cm照射して接着剤層1を硬化させ、PEEKフィルム/液晶層/接着剤層1/エルメック/トレテック7332の積層体を得た。この積層体からPEEKフィルムを剥離することにより液晶層をエルメック上に転写し、トレテック7332/エルメック/接着剤層1/液晶層からなる積層体9を得た。
得られた積層体9からの保護フィルムの剥離力を表1に示す。
【0073】
[比較例3]
接着剤層の硬化にフィルターを使用しなかったことを除いて、実施例3と同様に行い、積層体10を得た。得られた積層体10からの保護フィルムの剥離力を表1に示す。
【0074】
[実施例4]
実施例1で使用した保護フィルム(トレテック7332)に代えて市販のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが被着された積水化学工業(株)製エスシーナ(正面位相差:140nm)を用い、高圧水銀灯光をPET系保護フィルム側から600mJ/cm照射し、積層体11を得た。得られた積層体11からの保護フィルムの剥離力を表1に示す。
保護フィルムであるPETフィルムの紫外線−可視光領域のスペクトルを図2に示す。
【0075】
[実施例5]
正面位相差がそれぞれRe=270nm,Re=140nmである積水化学工業(株)製エスシーナの保護フィルム(トレテック7332)が被着されていない面同士を両者の遅相軸が90°の角度をなすように、市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を介して密着後、実施例1で用いた市販の波長300nm以下の光をカットするフィルターを透過した高圧水銀灯からの光を600mJ/cm照射し、トレテック7332/エスシーナ(Re=270nm)/UV−3400/エスシーナ(Re=140nm)/トレテック7332の形態の積層体を得た。この積層体は、トレテック7332を簡単に剥離することができた(180°剥離力:2.5〜2.6N/m)。
ついで偏光板と所定の角度(偏光板吸収軸とRe=270nmであるエスシーナの遅相軸とが15°,偏光板吸収軸とRe=140nmであるエスシーナの遅相軸とが75°の角度を成すように)で張り合わせて楕円偏光板を得ることができた。
【0076】
表1から明らかなように、波長300nm以下の光が照射されない保護フィルムが被着された基材から、保護フィルムの剥離力はUV照射前と変化が見られなかったが、波長300nm以下の光をカットしない場合は剥離力が上昇してしまった。
【0077】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の方法は、保護フィルムが被着された基材を用いてUV照射工程を経て中間部材や製品を製造した後でも保護フィルムの剥離力の上昇が抑制でき、液晶表示装置の部材のような機械強度の低い部材でも、保護フィルムの剥離時に損壊等を発生させずに剥離することができるため産業上きわめて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線(UV)照射工程を経る積層体の製造に使用される保護フィルムが被着された基材からUV照射後に保護フィルムを剥離する際の剥離力の上昇を抑制する方法であって、保護フィルムと前記基材の界面に波長300nm以下の光が照射されない手段を設けることを特徴とする保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法。
【請求項2】
UV照射時に波長300nm以下の光をカットするフィルターを用いることを特徴とする請求項1に記載の保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法。
【請求項3】
前記基材が位相差フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法。
【請求項4】
前記位相差フィルムが延伸フィルムであることを特徴とする請求項3に記載の保護フィルムの剥離力の上昇を抑制する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法で得られた積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を用いた光学素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−186125(P2010−186125A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31120(P2009−31120)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】