説明

保護モジュール及び該保護モジュールにおける状態情報管理方法

【課題】二次電池の状態情報の信頼性を向上させ高精度な状態情報管理を実現する。
【解決手段】充放電可能な二次電池(200)と負荷(300)との間に接続された保護モジュール(100)において、前記二次電池(200)と前記負荷(300)との間に接続されたスイッチ素子のオン/オフを制御して前記二次電池を過充電、過放電から保護する保護手段(118)と、前記二次電池(200)の状態情報と、前記二次電池(200)の状態を検出するための閾値情報とが記録された記録手段(122)と、前記二次電池(200)の状態を監視する状態監視手段(117)とを有し、前記状態監視手段(117)は、前記記録手段(122)に前記二次電池(200)の状態情報を格納する複数の領域を設定し、前記状態情報と、最新の状態情報であることを示すフラグ情報とを、前記複数の領域の何れか1つに格納することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護モジュール及び該保護モジュールにおける状態情報管理方法に係り、特に二次電池の状態情報の信頼性を向上させ、高精度な状態情報管理を実現するための保護モジュール及び該保護モジュールにおける状態情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯機器や充電回路等に対して電力を供給するために、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等に代表される二次電池が知られている。このような二次電池は、例えば、現在貯蓄されている充電量とその二次電池の容量(バッテリ容量)との比であるSOC(残存容量(State Of Charge))を随時算出し、算出されたSOC値に基づいて、二次電池の充放電の制御を行っている。
【0003】
また、従来では、携帯機器や充電回路等の使用上の安全性を向上させるために、二次電池の状態を把握することが求められている。もし、二次電池の状態を正確に把握できれば、例えば使用者に対して適切なタイミングで二次電池の充電等を促す通知や、二次電池の異常を知らせる通知等を行うことができる。そのため、二次電池の充放電時における状態情報(ログ情報)としてメモリ等の記録手段に蓄積しておくことが望まれている。
【0004】
ここで、上述したログ情報をメモリ等に書込む場合には、書き換え可能なメモリに対して所定のデータを記録している最中に電源供給が断たれると、現在処理中のデータが破壊されてしまったり、消去されてしまう可能性がある。そこで、従来では、書込み中に電源遮断が発生しても管理情報を保持し、データ本体については書込み開始直前の状態を保持することができるファイルシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
上述した特許文献1に示す手法では、第1のファイル及び第1のファイルをコピーした第2のファイルのデータ本体を格納するデータ領域と、記憶装置内におけるデータ本体の配置を管理する管理領域と、第1のファイル及び第2のファイルのうち、最新の書込みが行われたのはどちらのファイルであるかを示すフラグ情報を格納する領域とを備え、ファイルを新規作成する場合には、管理領域に第1のファイル及び第2のファイルの配置に関する情報を作成し、データ領域に第1のファイル及び第2のファイルを生成すると共に、フラグ情報には、最新の書込みが行われたのはどちらのファイルであるかを記憶しておく仕組みが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−133535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、二次電池の充放電時におけるログ情報の種類としては、例えば容量保持率や再充電回数、充放電時間、サイクル数、SOC等、多種にわたる。また、近年では、過去数回分の複数のログ情報を用いて二次電池の劣化度等を解析する必要性も生じている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に示される手法では、第1のファイル及び第2のファイルの何れかのファイルのみに直前のデータが記録されているだけである。そのため、特許文献1に示すような従来手法では、過去数回の履歴情報を用いた解析等ができない。
【0009】
また、二次電池の充放電時におけるログ情報は、複数のログ情報同士が関連しているものもあり、その場合には複数のログ情報を同時に復旧させる必要もあるが、特許文献1に示すような従来手法では、複数のログ情報を関連付けて適切に復旧させる手法等については開示されていない。
【0010】
したがって、本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、二次電池の状態情報の信頼性を向上させ高精度な状態情報管理を実現するための保護モジュール及び該保護モジュールにおける状態情報管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0012】
本発明は、充放電可能な二次電池(200)と負荷(300)との間に接続された保護モジュール(100)において、前記二次電池(200)と前記負荷(300)との間に接続されたスイッチ素子のオン/オフを制御して前記二次電池を過充電、過放電から保護する保護手段(118)と、前記二次電池(200)の状態情報と、前記二次電池(200)の状態を検出するための閾値情報とが記録された記録手段(122)と、前記二次電池(200)の状態を監視する状態監視手段(117)とを有し、前記状態監視手段(117)は、前記記録手段(122)に前記二次電池(200)の状態情報を格納する複数の領域を設定し、前記状態情報と、最新の状態情報であることを示すフラグ情報とを、前記複数の領域の何れか1つに格納することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上述した保護モジュール(100)における状態情報管理方法において、前記二次電池(200)の状態を監視する状態監視ステップと、前記二次電池(200)における状態情報を前記記録手段(122)に記録する状態情報記録ステップとを有し、前記状態監視ステップは、前記記録手段(122)に前記二次電池の状態情報を格納する複数の領域を設定し、前記状態情報記録ステップに対し、前記状態情報と、最新の状態情報であることを示すフラグ情報とを、前記複数の領域の何れか1つに格納させることを特徴とする。
【0014】
なお、上記参照符号は、あくまでも参考であり、これによって、本願発明が図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二次電池の状態情報の信頼性を向上させ、高精度な状態情報管理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における監視機能付き保護モジュールの一構成例を示す図である。
【図2】本実施形態における監視機能付き保護モジュールの有するCPUの機能構成を説明する図である。
【図3】書き換え可能不揮発性メモリに格納される情報の一例を示す図である。
【図4】本実施形態におけるログ情報の一例を示す図である。
【図5】正常更新ログマップ一覧の一例を示す図である。
【図6】本実施形態におけるログ記録フォーマットの一例について説明するための図である。
【図7】メモリにログ情報を格納する場合における状態遷移の一例を示す図である。
【図8】本実施形態における状態情報管理処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本発明について>
本発明は、例えば充放電可能な二次電池と、携帯機器や充電回路等の負荷との間に接続された監視機能付き保護モジュール等において、二次電池に対する状態情報(ログ情報)を書き換え可能メモリ等の記録手段に記録する際、電源供給が断たれる等の理由により書き換え可能メモリに記録中のデータ等が破壊されたり消去された場合等に、そのデータを所定の手段により復旧することで、二次電池に対する状態を高精度に管理する。
【0018】
具体的には、まず、記録すべき1つのデータに対して複数箇所の記録場所(例えば、領域A及び領域B等)を用意する。そして、データを記録(更新)する場合には、領域Aと領域Bとを交互に利用する。つまり、1回目のデータ記録の際には領域Aにのみ記録し、2回目のデータ記録の際には領域Bにのみ記録する。また、3回目は領域Aに記録、4回目は領域Bに記録、といったように交互に最新データで記録(更新)していく。なお、記録する際には、例えば二次電池の充放電時や負荷開放時等におけるログ情報の種類(例えば、容量保持率や再充電回数、充放電時間、サイクル数、SOC、温度値等)毎に記録する。
【0019】
上述したように、記録すべき1つのデータに対して記録場所を2箇所用意して、データを記録する場合には、領域Aと領域Bとを交互に利用するため、1つのデータに対する書き換え可能回数を見た目上、メモリの物理的制限回数の2倍に増やすことが可能となる。
【0020】
また本発明では、領域A,領域Bの何れか一方のデータが、例えば破壊された等の理由により異常であると判断された場合に、もう一方の正常なデータを用いてデータを復旧させる。なお、データを復旧させる場合には、上述したログ情報の種類毎又は予め設定された複数種類のログ情報からなるロググループ毎に復旧を行うこともできる。
【0021】
また本発明では、3つ以上の記録場所(例えば領域A,領域B,領域C等)を設け、それぞれの領域を所定の基準に基づいて巡回させて記録することで、過去数回分のログ情報を蓄積することができ、その蓄積されたログ情報に基づいて二次電池の劣化等の解析を高精度に行うことができる。
【0022】
以下に、上述した特徴を実現するための本発明における保護モジュール及び該保護モジュールにおける状態情報管理方法を好適に実施した形態について図面等を用いて説明する。なお、以下に示す保護モジュールの一例として、二次電池の充放電を監視し、その二次電池の充放電における履歴情報を管理する監視機能付き保護モジュールを用いて説明するが、本発明においてはこれに限定されるものではない。
【0023】
<保護モジュールの構成例>
まず、本実施形態における監視機能付き保護モジュールについて図を用いて説明する。図1は、本実施形態における監視機能付き保護モジュールの一構成例を示す図である。図1に示す監視機能付き保護モジュール100(以下、「保護モジュール100」という)は、電源としての二次電池200と、負荷としての携帯機器300との間に接続される。なお、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば携帯機器300の代わりに充電回路等であってもよい。
【0024】
保護モジュール100において、端子T1は、二次電池200の正極と接続され、端子T2は、二次電池200の負極と接続される。また、保護モジュール100において、端子P1は、携帯機器300の正極と接続され、端子P2は、携帯機器300の負極と接続される。更に、保護モジュール100において、端子P3は、携帯機器300との各種データの送受信等を行うための通信用の端子である。
【0025】
ここで、本実施形態における保護モジュール100は、トリミング回路110と、基準クロック生成部111と、基準電源生成部112と、温度検出部113と、電圧検出部114と、電流検出部115と、ADC(Analog to Digital Converter)116と、CPU(Central Processing Unit)117と、充放電保護部118と、通信I/F(Interface)119と、ROM(Read Only Memory)120と、RAM(Random Access Memory)121と、書き換え可能不揮発性メモリ122と、タイマ123とを有する。また、保護モジュール100は、端子T2と端子P2との間に接続された抵抗R1、トランジスタM1、M2を有する。
【0026】
トリミング回路110は、CPU117からの制御信号に基づいて、基準クロック生成部111に対してクロック周波数制御信号を出力し、内部クロック信号の周波数を制御する。また、トリミング回路110は、CPU117からの制御信号に基づいて、基準電源生成部112に対して電圧制御信号を出力して、基準電源生成部112から出力される電圧レベルを設定する。
【0027】
基準クロック生成部111は、トリミング回路110からのクロック周波数制御信号により、保護モジュール100内の基準クロック信号を生成し、生成した基準クロック信号をCPU117に出力する。
【0028】
基準電源生成部112は、トリミング回路110からの電圧制御信号により、保護モジュール100内の電圧レベルを設定し、設定されたレベルの電圧をADC116に出力する。
【0029】
温度検出部113は、二次電池200の温度を検出し、検出した温度をADC116に出力する。電圧検出部114は、二次電池200の正極及び負極と接続された電圧検知端子を介して二次電池200の出力電圧を検出し、検出した電圧値をADC116に出力する。電流検出部115は、電流検出用の抵抗R1の両端に接続される電流検知端子を介して、抵抗R1に流れる電流、即ち、二次電池200の充放電電流を検出し、検出した充放電電流値をADC116に出力する。
【0030】
ADC116は、基準電源生成部112により得られる基準電源を用いて、温度検出部113、電圧検出部114、電流検出部115から出力された信号をアナログからデジタルに変換する。また、ADC116は、変換した各種デジタルデータをCPU117に出力する。
【0031】
CPU117は、本実施形態において、二次電池200の状態を監視する状態監視手段としての機能を有する。具体的には、CPU117は、例えば温度検出部113、電圧検出部114、電流検出部115等からの各出力に基づき、二次電池200の電圧算出、二次電池200の充放電電流の算出、二次電池200の残容量の算出、二次電池200の状態の検出、二次電池200の充放電時や負荷開放時等における状態情報(ログ情報)の蓄積、管理、復旧等の制御を行う。なお、CPU117の機能の詳細については、後述する。
【0032】
充放電保護部118は、スイッチ素子としてのトランジスタM1、M2のオン/オフを制御して二次電池200を過充電、過放電から保護する。充放電保護部118は、トランジスタM1、M2のそれぞれのゲートに接続される端子D1,端子C1を有する。充放電保護部118は、二次電池200の過放電或いは過電流を検出したとき端子D1の出力をローレベルとしてトランジスタM1を遮断する。また、充放電保護部118は、図示しない過充電検出手段により二次電池200の過充電が検出されたとき、端子C1の出力をローレベルとしてトランジスタM2を遮断する。なお、本実施形態の充放電保護部118は、CPU117からの指示を受けてトランジスタM1、M2のオン/オフを制御してもよい。
【0033】
通信I/F119は、通信用の端子P3を介して携帯機器300との通信を行う。ROM120は、CPU117が機能を実現させるために実行するプログラムが格納される。RAM121は、CPU117の処理結果のデータ等が一時的に格納される。
【0034】
書き換え可能不揮発性メモリ122は、温度検出部113により検出された温度、電圧検出部114により検出された電圧値、電流検出部115によって検出された電流値等が格納される。また、本実施形態の書き換え可能不揮発性メモリ122は、二次電池200の充放電時や負荷開放時等における状態等を示すログ情報が格納される。更に、書き換え可能不揮発性メモリ122には、二次電池200の状態を判定するための各種の閾値の情報が格納される。なお、書き換え可能メモリ122については、二次電池200からの給電が遮断されても、その既に記録されている内容は保持される。本実施形態の書き換え可能不揮発性メモリ122は、例えばEPROM(Erasable Programmable ROM)等により実現される。
【0035】
また、タイマ123は、保護モジュール100全体の動作に対する時間の管理を行う。タイマ123は、システムクロックをカウントし、そのカウント値はCPU117に参照される。例えば、電圧算出結果や電流算出結果等をメモリ122等に記録する際の時間情報を蓄積したり、充電開始時又は放電開始時からの経過時間等を管理する。
【0036】
また、二次電池200は、上述したように、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタ等の二次電池からなる。二次電池200は、携帯機器300の電源であって保護モジュール100の電源でもある。なお、温度検出部113、電圧検出部114、電流検出部115については、それらの回路構成に応じて、二次電池200からの給電が必要となることがある。温度検出部113、電圧検出部114、電流検出部115、ADC116、及びCPU117は、二次電池200の電池状態を検知する状態検知部として機能する。
【0037】
また、保護モジュール100に接続される携帯機器300は、例えば人が携帯可能な外部電子機器である。具体的には、携帯機器300は、例えば携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)やモバイルパソコン等の情報端末装置、カメラ、ゲーム機、音楽やビデオ等のプレイヤ等が挙げられる。つまり、本実施形態の携帯機器300として、例えば携帯電話、音楽再生装置、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、DVD(Digital Versatile Disc)プレイヤ、ノート型パーソナルコンピュータ、電動工具、POS(Point of sale)端末、無線機等が適用可能である。
【0038】
保護モジュール100は、携帯機器300に内蔵されたり、外付けされたりする。携帯機器300は、通信I/F119から取得した電池状態情報に基づいて、その電池状態情報に応じた所定の動作を行う。更に、携帯機器300は、例えば、電池状態情報をディスプレイ等の表示部に表示させたり(例えば、二次電池200の残量情報、劣化情報、交換時期情報等の表示)、電池状態情報に基づいて自身の動作モードを、例えば「通常消費電力モード」から「低消費電力モード」に変更することもできる。
【0039】
<CPU117の機能について>
次に、上述したCPU117の本実施形態における具体的な機能等について図を用いて説明する。図2は、本実施形態における監視機能付き保護モジュールの有するCPUの機能構成を説明する図である。
【0040】
図2に示すように、CPU117は、電流値取得部131と、電圧値取得部132と、温度値取得部133と、満充電検出部134と、残容量検出部135と、閾値設定部136と、項目設定部137と、演算処理部138と、異常状態検出部139と、記録制御部140と、省電力制御部141と、充放電制御部142と、通信部143と、ログ情報復旧部144と、劣化度管理部145とを有するよう構成されている。
【0041】
電流値取得部131は、電流検出部115が検出した電流値を取得する。電圧値取得部132は、電圧検出部114が検出した電圧値を取得する。温度値取得部133は、温度検出部113が検出した温度値を取得する。
【0042】
満充電検出部134は、電流値取得部131により取得された電流値、電圧値取得部132により取得された電圧値等に基づき二次電池200の満充電を検出する。具体的には、満充電検出部134は、例えば、充電開始直前の電圧値(開放電圧)と充電終了時点から所定時間経過時の電圧値とに基づいて、二次電池200の満充電容量を算出する。すなわち、満充電検出部134は、充電開始直前の電圧値と、予め設定された「開放電圧−充電率」特性とに基づいて、充電開始直前の充電率を算出すると共に、充電終了時点から所定時間経過時の電圧値と「開放電圧−充電率」特性とに基づいて、充電終了時点から所定時間経過時の充電率を算出する。
【0043】
そして、満充電検出部134は、満充電容量をFCC[mAh]、充電開始直前の充電率をSOC1[%]、充電終了時点から所定時間経過時の充電率をSOC2[%]、充電開始時点から充電終了時点までの充電期間において充電された電気量をQ[mAh]とすると、演算式(1)に基づいて、二次電池200の満充電容量FCCを算出することができる。
FCC=Q/{(SOC2−SOC1)/100} ・・・(1)
なお、SOC1やSOC2は、温度補正されたものであれば、より正確な値が算出され得る。また、充電終了時点から所定時間経過時の電池電圧を用いることによって、充電終了時点よりも安定した電池電圧を演算に反映して演算結果の精度を高めることができる。
【0044】
残容量検出部135は、電流値取得部131により取得された電流値、又は電圧値取得部132により取得された電圧値等により、二次電池200の残容量を残量データとして検出する。
【0045】
具体的には、残容量検出部135は、上述のように得られた充電率及び満充電容量に基づいて、「残容量=満充電容量×充電率」により二次電池200の残容量を算出することができる。
【0046】
閾値設定部136は、後述する書き換え可能不揮発性メモリ122に格納された閾値情報500から、異常状態の検出等に用いる閾値を選択して設定する。
【0047】
項目設定部137は、ログ情報として取得する状態項目を設定したり、記録すべき1つのデータに対する記録場所の数、ログ情報のグループ設定等を行う。また、項目設定部137は、書き換え可能不揮発性メモリ122に記録された状態情報(ログ情報等)から二次電池200の状態を把握するために用いる情報の項目を設定する。
【0048】
なお、閾値設定部136、項目設定部137により設定される閾値及び項目は、例えば携帯機器300からの指示により選択することができる。
【0049】
演算処理部138は、例えば電流値取得部131により取得された電流値、電圧値取得部132により取得された電圧値、温度値取得部133により取得された温度値、残容量検出部135で検出された残容量等を用いて、状態情報を得るための各種演算処理等を行う。
【0050】
異常状態検出部139は、上述したログ情報の記録中に電源供給が断たれる等の理由により書き換え可能不揮発性メモリ122に記録したデータが破壊された場合に異常を検出する。なお、記録中に電源が遮断される原因としては、例えば落雷や内部ショート、電源不良、人為的な電源OFF操作等がある。
【0051】
また、異常状態検出部139は、演算処理部138により求められた状態情報と、閾値設定部136により設定され書き換え可能不揮発性メモリ122に記録された閾値とに基づき、劣化等により状態が異常か否かを検出することもできる。この場合には、例えば、二次電池200の充電又は過充電による温度上昇や、高温状態で長時間放置された場合、放電時(携帯機器300の使用時)に温度異常があった場合、充電がタイムアウトとなった場合、更には残容量と充電容量との和が満充電容量よりも大きくなった場合等により異常か否かを検出することもできる。
【0052】
記録制御部140は、上述した各機能構成等により得られるログ情報を、例えば書き換え可能不揮発性メモリ122に設定された複数の記録場所の1つに格納する。ここで、書き換え可能不揮発性メモリ122に記録される情報とは、例えば電流値、電圧値、温度、SOC、各種検出回数、各種検出時間、演算処理部138により算出された各種の状態情報、異常状態検出部139により異常状態が検出された時刻、回数等が含まれる。
【0053】
また、記録制御部140は、正常なログ情報を記録する際、そのログ情報毎又は予め設定された複数種類のログ情報からなるロググループ毎に、最新のログ情報であることを示すフラグをセットする。
【0054】
省電力制御部141は、演算処理部138の演算処理結果や異常状態検出部139による状態の検出結果等に基づき、保護モジュール100を省電力モードとする制御を行う。
【0055】
充放電制御部142は、演算処理部138の演算処理結果や異常状態検出部139による状態の検出結果に基づき、充放電保護部118へ過充電、過放電等の指示を与える。
【0056】
通信部143は、満充電検出部134により満充電が検出された場合や、異常状態検出部139により二次電池200の異常が検出された場合等に携帯機器300側へ通知を行う。
【0057】
ログ情報復旧部144は、異常状態検出部139によりログ情報の記録中に異常があったことを検出した場合に、記録制御部140により記録されていた直前のログ情報に基づいてログ情報を復旧する。具体的には、ログ情報復旧部144は、直前に正常に更新されたログ情報毎やロググループ毎にセットされているフラグ情報に基づいて、正常な最新のログ情報を構築する。
【0058】
劣化度管理部145は、記録制御部140により書き換え可能不揮発性メモリ122に記録された状態情報(ログ情報等)の履歴情報から二次電池200の劣化度を取得する。具体的には、劣化度管理部145は、例えば、充電回数や充放電サイクル数、総充電時間、容量保持率等と予め設定された閾値等を比較し、その比較結果を基準に劣化度を取得する。また、劣化度管理部145は、劣化の度合いが所定の閾値を超えた場合は、携帯機器300側に二次電池200の劣化度を、通信部143を介して通知させる機能を有する。
【0059】
つまり、本実施形態におけるCPU117は、上述した各機能を有することにより、二次電池200の状態を監視する状態監視手段としての機能を有する。具体的には、CPU117は、状態監視手段として、記録手段である書き換え可能不揮発性メモリ122に対し、例えば二次電池200の充放電時における状態情報を格納する複数の領域を設定し、状態情報と、最新の書込みが行われたのはどちらかを示すフラグ情報とを、その複数の領域の何れか1つに格納する。なお、本実施形態では、上述した充放電時に限定されるものではなく、例えば温度異常は負荷開放時でも起こり得るため、異常発生等の条件に応じて負荷開放時等における状態情報等を格納することもできる。
【0060】
また、CPU117は、状態情報に含まれる複数の状態項目から選択された状態項目に対してフラグ情報を設定することもでき、その選択された状態項目は、複数のグループから構成され、それぞれのグループ毎に上述したフラグ情報を設定することもできる。
【0061】
なお、本実施形態では、上述した複数の領域は、3つ以上の領域を有していてもよい。その場合には、CPU117は、その3つ以上の領域から得られる時系列の状態情報(履歴情報)に基づいて、例えば、その時系列の状態情報の差分情報等から誤差を抽出し、更に充放電時の回数等とを用いて、二次電池の劣化度等を取得することができる。
【0062】
上述したように、本実施形態では、保護モジュール100に対する高精度な状態情報管理を実現することができる。
【0063】
<書き換え可能不揮発性メモリ122に格納される情報について>
次に、本実施形態における書き換え可能不揮発性メモリ122に格納される情報の例について、図を用いて説明する。図3は、書き換え可能不揮発性メモリに格納される情報の一例を示す図である。本実施形態の書き換え可能不揮発性メモリ122は、二次電池200の状態に関する情報として、様々な項目の状態情報等が格納され、例えば、図3(A)に示すような状態情報(ログ情報も含む)400や、図3(B)に示すような閾値情報500等が格納される。
【0064】
図3(A)は、二次電池200の状態に関する情報の項目の一例を示している。本実施形態の書き換え可能不揮発性メモリ122には、図3(A)に示すような項目の状態情報400が格納される。ここで、図3(A)に示す本実施形態における状態情報400に含まれる具体的な状態項目としては、例えば、充放電時間、サイクル数、SOC、充電過電流検出回数、充電過電流値、過電圧検出回数、過電圧値、高温充電最高温度、放電過電流検出回数、放電過電流値、過放電検出回数、過放電圧値、高温異常検出回数、高温異常値、高温異常検出時間、高温充電回数、低温異常検出回数、低温異常値、低温異常検出時間、低温充電回数、過放電保護回数、放電過電流保護回数、充電過電流保護回数、過充電保護回数、再起動検出回数、保護履歴、初期エラー発生日時、充電開始回数、充電タイムアウト回数、総充電容量、総放電容量、利用開始日時、接続された端末のID、異常検出(復帰)ログ情報、正常更新ログ情報等が格納される。なお、図3(A)に示す各種項目の種類や順序についてはこれに限定されるものではない。
【0065】
ここで、上述した状態情報400には、二次電池200が装着された端末(携帯機器300)のID(識別情報)が含まれる。本実施形態の監視機能付き保護モジュール100は、通信部143により携帯機器300と通信し、携帯機器300のIDを取得する。そして記録制御部140により、このIDを書き換え可能不揮発性メモリ122に記録する。
【0066】
本実施形態では、携帯機器300のIDを書き換え可能不揮発性メモリ122に記録することで、二次電池200の異常状態が検出されたときに二次電池200が搭載されていた携帯機器300を特定することができる。また、ID毎に状態情報400を記録して管理することができる。
【0067】
また、状態情報400には、例えば充電時の過電流を検出したときの電流値である充電過電流値、充電時の過電流を検出した回数である充電過電流検出回数、過電圧を検出したときの電圧値である過電圧値、過電圧を検出した回数である過電圧回数等、様々な値が含まれる。
【0068】
また、状態情報400に含まれる本実施形態における異常検出(復帰)ログ情報、正常更新ログ情報については後述する。
【0069】
図3(B)は、異常状態検出部139による二次電池200の異常状態の検出に用いられる閾値情報の一例を示している。ここで、図3(B)に示す本実施形態における閾値情報500に含まれる具体的な閾値項目としては、例えば、過電圧検出閾値、過電圧復帰閾値、過放電検出閾値、過放電復帰閾値、電圧異常検出遅延回数、電流異常検出遅延回数、温度異常検出遅延回数、+過電流検出閾値、+過電流復帰閾値、−過電流検出閾値、−過電流復帰閾値、高温異常検出閾値、高温異常復帰閾値、低温異常検出閾値、低温異常復帰閾値、容量劣化閾値、容量劣化閾値幅、内部短絡電流検出閾値、内部短絡電流検査回数、内部短絡充電容量異常検出閾値、充電下限温度、充電上限温度、充電温度復帰幅、予備充電判定閾値、予備充電タイムアウト、急速充電タイムアウト、充電回数カウント用閾値、ログ用充電検出下限、ログ用放電検出下限、抵抗減少差分閾値、抵抗劣化閾値(下限)、抵抗劣化閾値(上限)等が格納される。なお、図3(B)に示す各種項目の種類や順序についてはこれに限定されるものではない。
【0070】
つまり、閾値情報500には、例えば二次電池200の過電圧を検出するための過電圧検出閾値や過放電を検出するための過放電検出閾値、連続した指定回数の異常値検出で電圧値の異常と判定する電圧異常検出遅延回数、同じく連続した指定回数の異常値検出で電流値の異常と判定する電流値異常検出遅延回数等、様々な異常状態を検出するための閾値が含まれる。
【0071】
本実施形態の監視機能付き保護モジュール100では、閾値設定部136により、書き換え可能不揮発性メモリ122に記録された閾値情報500から、異常状態検出部139による異常状態の検出に使用する閾値や演算処理部138による演算処理に使用する閾値等を選択して設定する。
【0072】
すなわち、本実施形態の保護モジュール100では、項目設定部137により異常状態の検出に用いる状態情報400の項目を設定し、閾値設定部136により異常状態の検出に用いる閾値を設定することができる。
【0073】
したがって、本実施形態の保護モジュール100では、検出したい二次電池200の状態に合わせて状態情報400から使用する情報の項目を設定し、閾値情報500から使用する閾値を設定することができる。つまり、本実施形態では、携帯機器300の利用状況に合わせて、検出すべき二次電池200の状態を選択することができ、様々な利用状況における二次電池200の状態を把握することができる。
【0074】
また、閾値情報500は、携帯機器300や、携帯機器300の製造元であるメーカ等によって異なることが多く同一の設定を行うことが難しい。本実施形態では、書き換え可能不揮発性メモリ122に閾値情報500が格納されているため、閾値情報500の書き換えを容易に行うことができる。したがって、保護モジュール100は、携帯機器300やメーカの種類を問わず利用することが可能となる。
【0075】
上述したように、本実施形態の監視機能付き保護モジュール100では、書き換え可能不揮発性メモリ122に二次電池200の使用の状態や劣化の状態等の二次電池200の使用履歴を示す状態情報400を記録することができる。よって本実施形態によれば、二次電池200の利用状況を分析するために必要な二次電池200の使用の履歴に関する情報を携帯機器300から読み出すことができる。
【0076】
また本実施形態では、書き換え可能不揮発性メモリ122には、二次電池200が正常であるか異常であるか等を判断するためのパラメータとして閾値情報500が記録されており、この閾値情報500に含まれる様々な閾値から任意の閾値を選択し、選択された閾値を用いて二次電池200の各種の正常状態・異常状態を検出することができる。
【0077】
更に、本実施形態では、正常状態だけでなく、異常状態が検出されたこと、異常状態が検出されたときの状態、異常状態が検出された回数等も、状態情報400として書き換え可能不揮発性メモリ122に記録することができる。したがって、本実施形態によれば、様々な利用状況における二次電池の状態を把握することができる。
【0078】
<異常検出(復帰)ログ情報、正常更新ログ情報>
次に、本実施形態における異常検出(復帰)ログ情報、正常更新ログ情報の登録内容について、図を用いて説明する。図4は、本実施形態におけるログ情報の一例を示す図である。なお、図4(A)は、異常検出ログ又は異常復帰ログの一例を示し、図4(B)は、正常更新ログ(その他)の一例を示している。また、図5は、正常更新ログマップ一覧の一例を示す図である。
【0079】
図4(A)に示す本実施形態における異常検出(復帰)ログに含まれる具体的な項目としては、例えば、「1.充電過電流警告」、「2.過充電電圧警告」、「3.放電過電流警告」、「4.過放電電圧警告」、「5.高温警告」、「6.低温警告」、「7.高温充電警告」、「8.低温充電警告」、「9.過充電保護」、「10.過放電保護」、「11.充電過電流保護」、「12.放電過電流保護」、「13.ショート保護」、「14.過大充電器接続」、「15.充電器逆接続」、「16.抵抗値警告(3種類)」、「17.充電タイムアウト」、「18.微小短絡警告(4種類)」、「19.WDT(Watch Dog Timer)によるリセット復帰」、「20.POR(Power On Reset)によるリセット復帰」、「21.端末ID登録」、「22.初期充電開始時刻」等が格納される。なお、図4(A)に示す各種項目の種類や順序についてはこれに限定されるものではない。
【0080】
なお、図4(A)に示す1〜15の項目は、異常検出時と異常復帰時とで2種類のデータを有する。また、図4(A)に示す1〜8の項目は、警告グループであり、9〜15の項目は、保護検出グループである。これらのデータは、異常検出時及び異常復帰時に記録される。
【0081】
また、図4(B)に示す本実施形態における正常更新ログ(その他)に含まれる具体的な項目としては、例えば、「1.初期電池容量」、「2.初期電池容量算出回数(学習回数)」、「3.初期内部抵抗値」、「4.抵抗値算出回数(学習回数含む)」、「5.容量保持率」、「6.再充電回数」、「7.充放電サイクル数」、「8.充放電サイクル未満充電量」、「9.総充電時間」、「10.総放電時間」、「11.絶対充電量」、「12.最大抵抗値」、「13.最新抵抗値」、「14.最大差分抵抗値」、「15.充電検出時間」、「16.充電検出回数」、「17.満充電検出回数」等が格納される。なお、図4(B)に示す各種項目の種類や順序についてはこれに限定されるものではない。
【0082】
ここで、図4(B)に示す正常更新ログの2,4,6,7,16,及び17項目は、その項目のログが正常に更新されるとき、1ずつ増加する値である。
【0083】
なお、これらのログ情報は、書き換え可能不揮発性メモリ122のデータフラッシュ(Data−Flash)の1ページあたり1024byteとして、7ページで計7168byteの容量を用いて、上述した異常検出ログ又は正常更新ログを記録する。このとき、本実施形態では、複数の記録場所を設け、設けられた複数の記録場所の何れかに、上記ログ情報を記録する。
【0084】
ここで、本実施形態において、ログの履歴情報としては、例えば異常検出ログであれば過去6回分記録(過去最大値含む)を残し、正常更新ログは最新値のみを残すようにすることもできる。これにより、本実施形態では、これらのログ情報を用いて二次電池200の劣化度等の管理等を行うことができる。
【0085】
また、図5に示すように、本実施形態では、予め設定されたそれぞれの過程の各タイミングに応じて必要なデータを正常更新ログとして蓄積する。なお、正常更新時には、更新種別に応じて複数のログ情報のグループが存在する。
【0086】
具体的には、図5に示すように、状態が「充放電」の場合におけるログ情報グループとしては、例えば絶対充電量、総充電時間、及び総放電時間等が1つのグループとなる。また、状態が「充電直後」の場合におけるログ情報グループとしては、例えば充電検出回数、及び充電検出時間等が1つのグループとなる。
【0087】
また、状態が「充電検出後1」におけるログ情報グループとしては、例えば再充電回数、抵抗値算出回数、初期抵抗値等が1つのグループとなる。また、状態が「充電検出後2」におけるログ情報グループとしては、例えば最大差分抵抗値、最大抵抗値、最新抵抗値等が1つのグループとなる。また、状態が「充電終了」におけるログ情報グループとしては、例えば満充電検出回数、充放電サイクル数、充放電サイクル未満充電量等が1つのグループとなる。
【0088】
更に、状態が「充電後の一定時間後」におけるログ情報グループとしては、例えば容量保存率、初期電池容量、初期電池容量学習回数等が1つのグループとなる。なお、グループの種類は、本発明においてはこれに限定されるものではない。これらの各グループは、データの内容に関連性があるものであるため、本実施形態においてデータを復旧させる場合には、各項目単位でもよいが、上述したグループ毎に復旧させるのが好ましい。なお、本実施形態では、複数のグループを組み合わせたグループにして管理してもよい。
【0089】
また、本実施形態においては、例えば、異常検出ログは16byte、正常更新ログは8byteを1つのブロックとして記録する。また、各ログ情報の先頭の1byteにはヘッダを付け、そのヘッダには例えば「有効ログ」、「無効ログ」、「未書込みログ」、「不良ログ」等の区別を付ける。また、本実施形態では、ヘッダからブロックの種類も判断することができる。また、異常検出ログと正常更新ログとは、ページ毎に区別して記録する。
【0090】
このとき、各ページの先頭16byteは、ページステータスブロックとし、ページのステータスを保持し、「未書込み」、「書込み完了」、「書込み中」の判断や書込まれているログの区別(「異常検出」or「正常更新」or「未書込み」)、有効ログ数(異常検出のみ)、ページの消去回数等を保持する。
【0091】
更に、本実施形態において、新規書込みは、所定のポインタ(例えば、「異常検出ヘッドポインタ」、「正常更新ヘッドポインタ」等)が示すアドレスから書込む。また、本実施形態では、例えばどのログが何回書込まれたのかをチェックしておき、規定数を超えたログは管理外の対象(無効ログ)とすることもできる。
【0092】
<ログ記録フォーマットについて>
次に、本実施形態におけるログ記録フォーマットについて図を用いて説明する。図6は、本実施形態におけるログ記録フォーマットの一例について説明するための図である。本実施形態におけるログ記録フォーマットは、例えば、図6(A)に示すような異常検出ログフォーマットや、図6(B)に示す正常更新ログフォーマット等がある。
【0093】
図6(A)に示す異常検出ログフォーマットの例では、例えば、異常種類(ヘッダ情報含む)(1byte)や回数(1byte)、日時(年月日時分)(4byte)、異常種類の最大異常値(2byte)、電圧(2byte)、電流(2byte)、温度(1byte)、絶対充電率(1byte)、端末情報(1byte)、CRC(Cyclic Redundancy Check)(1byte)等の情報が異常検出時にログ情報として格納される。
【0094】
また、図6(B)に示す正常更新ログフォーマットの例では、3byte、4byte、8byteの3種類のフォーマットのうち、何れかのフォーマットを選択的に使用してログ情報を生成する。第1のフォーマットでは、種類(ヘッダ情報含む)(1byte)と、更新項目(2byte)とからなり、第2のフォーマットでは、種類(ヘッダ情報含む)(1byte)と、更新項目(2byte)と、CRC(1バイト)とからなり、第3のフォーマットでは、第2のフォーマットと比較して更新項目(2byte)が合計3個格納可能となっている。
【0095】
また、図6(C)には、異常種類(異常検出)及び正常種類(その他ログ(正常ログ))におけるフラグ情報が示されている。つまり、異常種類及び正常種類には、現時点での最新の情報がどの領域に入っているかを識別するためのフラグ情報がセットされ、このフラグ情報を参照することで、復旧時において各項目における最新情報を取得することができる。
【0096】
なお、上述した図6(C)の例において、データ値が「0xFF」の場合には消去済みのブロックを示し、識別番号は登録するブロックの種類を示す。また、図6(C)の例において、「ObsoleteFlag」はそのブロックが有効であるか無効であるかを示し、「BadStateFlag」はそのブロックが正常であるか不良(異常)であるかを示す。
【0097】
したがって、上述するようなフラグ情報をログ生成時にセットしておくことで、例えば断線等の影響によりログ更新中のデータが消去してしまった場合においても、そのフラグ情報から直前の最新情報を取得することができるため、高精度な復旧処理を行うことができる。
【0098】
<メモリにログ情報を格納する場合における状態遷移例>
次に、図7は、メモリにログ情報を格納する場合における状態遷移の一例を示す図である。なお、図7の例では、メモリに対する格納処理として、例えば、「(1)Normal Garbage」、「(2)Alert Garbage」、「(3)Erase」、「(4)Alert Update」、「(5)Normal Update」の5種類の処理状態が発生するものとするが、本発明においてはこれに限定されるものではない。
【0099】
まず、初期化処理(INIT)として、異常検出ヘッドポインタと正常更新ヘッドポインタの定義、正常更新ログの読出し、突然のリセット対応処理等を実行する。また、ログサービスタスクは、通常アイドル「IDLE」状態にあり、開始要求があるまで待機する。また、本実施形態では、要求を受け付け(REQ)要求が発生した場合に、その要求に応じて書込み処理(WRITE)、サーチ処理(SEARCH)、後処理(FIX)、消去処理(ERASE)等を実行する。
【0100】
なお、例えば、フラッシュメモリ(書き換え可能不揮発性メモリ122)の消去中は、書込み/読出し不可のため、ログの更新・読み出し処理は待機する。また、ログモジュールの要求は、大きく分けると、例えば「消去処理要求」、「退避処理要求(ガーベジコレクション要求)」、「ログ更新処理要求」等に分けることができる。
【0101】
正常更新ログの更新要求が発生した場合には、更新するメモリのログブロック(ログ情報)のヘッダとCRC−8を更新し、ヘッドポインタからログブロックの書込みを行う。書込み後、前回の記録を無効ログに変更する。ここで、異常検出ログの更新要求が発生した場合、更新する記録値を共有の一時キャッシュに選出する。その後、ヘッドポインタからログブロックの書込みを行う。書込み後、記録したログ数が規定数(例えば、6個)以上の場合、最古のログを(過去最大値を除く)を無効ログに変更する。正常更新ログが新規ページに移った時、別ページに記録している有効な正常更新ログは、再書込み処理(ガーベジコレクション処理)し、現在の書込みページ以外の有効ログをなくす。
【0102】
<ログの使い方/用途について、及びデータの正当性判断について>
ここで、上述したログ情報の使い方/用途について、及びデータの正当性判断について説明する。例えば、本実施形態において、PowerOnReset(POR)時、消去済みブロックのチェック(0xFFであること)、記録済み有効ブロックのチェック(CRC−OKであること)を行い、上記チェックで記録エラー又は消去エラーがあった場合、該当ブロックを無効ブロックに変更する。
【0103】
また、正常更新ログ(例えば、容量保持率や抵抗値等)を更新する際、最新ログが正常に記録されたことを確認後、1つ前の記録ログを無効ログに変更する。したがって、PORにおいては、チェック後に残った有効ログの中で最後に書込みしたものを初期値(最新値)として利用する。異常検出ログ(例えば、高温警告等)は、チェック後に残ったログ情報のみを有効ログとして利用する。
【0104】
また、本実施形態では、例えば、外部端末から通信を介してログ情報の読み取り要求があった場合、ログが記録されているフラッシュメモリ(書き換え可能不揮発性メモリ122)内から該当するものを検索し、CRCチェックを実施した上で有効なログ情報を返すことができる。また、フラッシュメモリの全データを読み出し内容を解析するPC(Personal Computer)上で動作するソフトを用意することで、例えばフライトレコーダとしての機能を果たすこともできる。
【0105】
<状態情報管理処理フローチャート>
次に、本実施形態における履歴情報格納時における状態情報管理処理手順についてフローチャートを用いて説明する。図8は、本実施形態における状態情報管理処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0106】
図8に示す状態情報管理処理手順は、まずログデータフラッシュの自己診断・修復を行い(S01)、初期化処理を行う(S02)。
【0107】
次に、ログ情報に対する要求を検出したか否かを判断し(S03)、要求を検出していない場合(S03において、NO)、要求待ち状態となる。また、S03において要求を検出した場合(S03において、YES)、その要求がログ情報(異常検出ログ又は正常更新ログ)の退避要求であるか否かを判断する(S04)。ここで、退避要求でない場合(S04において、NO)、次にその要求がログ情報の消去要求であるか否かを判断する(S05)。また、消去要求でない場合(S05において、NO)、次にその要求がログ情報の更新要求であるか否かを判断する(S06)。
【0108】
ここで、更新要求である場合(S06において、YES)、その詳細要求を確認し(S07)、書込み情報の検索を行い(S08)、その検索結果で得られた書込み情報をログ情報として書込み(S09)、書込み後のメモリ容量やメモリアドレス、フラグ等の調整・整理を行う(S10)。
【0109】
次に、S09の処理における書込みがページエンド(page end)であるか否かを判断し(S11)、ページエンドである場合(S11において、YES)、メモリ上の新規ページを作成する(S12)。
【0110】
次に、正常更新ログの更新要求であるか否かを判断し(S13)、正常更新ログの更新要求である場合(S13において、YES)、正常更新ログの退避要求をセットする(S14)。また、S14の処理後又はS13の処理において正常更新ログの更新要求でない場合(S13において、NO)、消去済みページが所定ページ(例えば、2ページ)以下か否かを判断する(S15)。ここで、2ページ以下である場合(S15において、YES)、正常書込み完了ページが所定ページ(例えば、1ページ)以上か否かを判断する(S16)。1ページ以上である場合(S16において、YES)、消去要求をセットする(S17)。また、1ページ以上でない場合(S16において、NO)、異常検出ログの退避要求をセットする(S18)。
【0111】
ここで、上述したS04の処理において、その要求が退避要求である場合(S04において、YES)、退避対象の検索を行い(S19)、次に、退避対象があるか否かを判断する(S20)。退避対象がある場合(S20において、YES)、その退避対象を書込み(S21)、書込み後の調整・整理を行う(S22)。また、S20の処理において、退避対象がない場合(S20において、NO)、その退避要求をクリアする(S23)。
【0112】
また、上述したS05の処理において、その要求が消去要求である場合(S05において、YES)、消去を開始する(S24)。また、S24の処理における消去が終了すると、次に、消去後の調整・整理を行い(S25)、その後、消去要求をクリアする(S26)。
【0113】
ここで、S17、S18、S22、S23、又はS26の処理が終了後、全体の処理を終了するか否かを判断し(S27)、処理を終了しない場合(S27において、NO)、S03に戻り、後続の処理を行う。また、S27の処理において、全体の処理を終了する場合(S27において、YES)、上述した状態情報管理処理を終了する。また、上述したS06の処理において、更新要求でない場合(S06において、NO)、S11の処理において、ページエンドの書込みでない場合(S11において、NO)、又は、S15の処理において、消去済みページが2ページ以下でない場合(S15において、NO)、上述の処理と同様にS03の処理に戻り、後続の処理を行う。
【0114】
上述したように、本発明によれば、二次電池の状態情報の信頼性を向上させ高精度な状態情報管理を実現することができる。また、本発明によれば、状態情報管理装置等に含まれる書き換え可能なメモリ(フラッシュメモリ)にデータを記録する場合、そのデータが破壊された場合の復旧手段を備えることで、より信頼性のあるシステムを構築できる。
【0115】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0116】
100 監視機能付き保護モジュール
110 トリミング回路
111 基準クロック生成部
112 基準電源生成部
113 温度検出部
114 電圧検出部
115 電流検出部
116 ADC(Analog to Digital Converter)
117 CPU(Central Processing Unit)
118 充放電保護部
119 通信I/F(Interface)
120 ROM(Read Only Memory)
121 RAM(Random Access Memory)
122 書き換え可能不揮発性メモリ
123 タイマ
131 電流値取得部
132 電圧値取得部
133 温度値取得部
134 満充電検出部
135 残容量検出部
136 閾値設定部
137 項目設定部
138 演算処理部
139 異常状態検出部
140 記録制御部
141 省電力制御部
142 充放電制御部
143 通信部
144 ログ情報復旧部
145 劣化度管理部
200 二次電池
300 携帯機器(負荷)
400 状態情報
500 閾値情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な二次電池と負荷との間に接続された保護モジュールにおいて、
前記二次電池と前記負荷との間に接続されたスイッチ素子のオン/オフを制御して前記二次電池を過充電、過放電から保護する保護手段と、
前記二次電池の状態情報と、前記二次電池の状態を検出するための閾値情報とが記録された記録手段と、
前記二次電池の状態を監視する状態監視手段とを有し、
前記状態監視手段は、
前記記録手段に前記二次電池の状態情報を格納する複数の領域を設定し、前記状態情報と、最新の状態情報であることを示すフラグ情報とを、前記複数の領域の何れか1つに格納することを特徴とする保護モジュール。
【請求項2】
前記状態監視手段は、
前記状態情報に含まれる複数の状態項目から選択された状態項目に対して前記フラグ情報を設定することを特徴とする請求項1に記載の保護モジュール。
【請求項3】
前記選択された状態項目は、複数のグループからなり、
前記状態監視手段は、前記グループ毎に前記フラグ情報を設定することを特徴とする請求項2に記載の保護モジュール。
【請求項4】
前記複数の領域は、3つ以上の領域を有し、
前記状態監視手段は、前記3つ以上の領域から得られる時系列の状態情報に基づいて、前記二次電池の劣化度を取得することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の保護モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載された保護モジュールにおける状態情報管理方法において、
前記二次電池の状態を監視する状態監視ステップと、
前記二次電池における状態情報を前記記録手段に記録する状態情報記録ステップとを有し、
前記状態監視ステップは、
前記記録手段に前記二次電池の状態情報を格納する複数の領域を設定し、前記状態情報記録ステップに対し、前記状態情報と、最新の状態情報であることを示すフラグ情報とを、前記複数の領域の何れか1つに格納させることを特徴とする状態情報管理方法。
【請求項6】
前記状態監視ステップは、
前記状態情報に含まれる複数の状態項目から選択された状態項目に対して前記フラグ情報を設定することを特徴とする請求項5記載の状態情報管理方法。
【請求項7】
前記選択された状態項目は、複数のグループからなり、
前記状態監視手段は、前記グループ毎に前記フラグ情報を設定することを特徴とする請求項6に記載の状態情報管理方法。
【請求項8】
前記複数の領域は、3つ以上の領域を有し、
前記状態監視ステップは、前記3つ以上の領域から得られる時系列の状態情報に基づいて、前記二次電池の劣化度を取得することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の状態情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−168728(P2012−168728A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29139(P2011−29139)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】