保護構造及びこれを作成する方法
衝撃から身体を保護するための保護構造は、比較的柔軟な材料からなる内部層と対応する複数の保護ユニットを備え、内部層は、その両側の面の間に延びる隔置された複数の開口を有する。各保護ユニットは、流体を密封する薄肉で変形可能な筐体を備え、該筐体は該筐体を満たすある容積の流体を含み、該筐体の壁には、該保護構造に対する衝撃に応答して、流体の排出に抵抗しつつも選択された流量で該流体を該筐体から排出する少なくとも1つのオリフィスがある。複数の保護ユニットは、第1の層の一方の面から突き出ている該筐体の対応する第1のセグメントが共に中間層を形成するように該複数の開口に受容される。内部層上の表面と各保護ユニットの表面が協働することによって、該内部層内の対応する開口内に各保護ユニットが保持される。保護ユニットを作製する方法も開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には衝撃エネルギー管理方法及びシステムに関し、より具体的には、衝撃を受けた物体または身体を衝撃によるダメージ(以下、損傷という)から保護するように設計された保護構造であって、広範囲の衝撃エネルギーにわたって最適な衝撃減衰応答をもたらすように簡単にカスタマイズされる特性を有する保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
A.衝突物体の物理学
運動している物体の運動エネルギー(KE)は、質量(m)と速度(v)の関数であって、以下の式で表される。
KE=(1/2)mv2 (1)
【0003】
この物体が別の物体に衝突すると、エネルギーが伝達されて、力(F)が加えられる。加えられる力は、2つの主要な関係の関数である。
【0004】
第一に、物体に加えられる力(F)は、ニュートンの運動の第2法則によって規定されるように、物体の質量(m)と生じる加速度(a)の積に等しい。すなわち、F=maである。加速度(a)は、時間(t)の経過に対する物体の速度の変化(Δv)の測度であり(速度の変化は正または負でありうるので、加速度は正の量または負の量を表しうる)、したがって、ニュートンの法則は次のように書き換えることができる。
F=m((Δv)/t) (2)
【0005】
この式から、一定の質量(m)の物体に加えられる力を小さくする一つの方法は、その物体が速度を変化させる時間(t)を長くし、これによって、その物体の加速度を小さくすることであることが明らかである。
【0006】
第二に、力(F)は、(運動エネルギーの形態である)物体のエネルギー(E)が距離(d)にわたって伝達される結果として生じ、次の式で表される。
F=E/d (3)
【0007】
この式から、所与の量のエネルギー(E)を有する衝突物体の力(F)を小さくする別の方法は、物体のエネルギー(E)が伝達される距離(d)を長くすることであることが明らかである。
【0008】
第三の関係が、加えられた力の効果を規定する。圧力(P)は、力(F)が加えられる面積(A)に対する力(F)の集中度を表し、次の式によって規定される。
P=F/A (4)
【0009】
この式から、衝突物体から与えられる力(F)を小さくすることによって、または、力(F)が加わる面積(A)を大きくすることによって、衝撃の圧力(P)を小さくできることが明らかである。
【0010】
以上の3つの関係から、衝突物体から受ける損傷を小さくする方法は、その物体が加速(または減速)する時間(t)、または、エネルギーが伝達される距離(d)を長くすることによって加えられる力(F)の大きさを小さくすること、または、力(F)が拡散する面積(A)を大きくすることであることが明らかである。一つの理想的なシステムは、衝撃による損傷を低減するためにこれら3つの方法全てを利用するというものだろう。
【0011】
力は、ニュートン(1N=1kg-m/s2)またはポンド(1b)の単位で測定される。すなわち、質量はキログラム(kg)単位またはポンド質量(1b-m)単位で測定され、加速度は、毎秒1メートル毎秒(m/s2)の単位または毎秒1フィート毎秒(ft/s2)の単位で測定される。一般的に知られている力は、物体に作用する重力を測定する重さ(w)である。これは、物体の質量(m)と重力による加速度(g)の積に等しく、9.81m/s2または32ft/s2である。同じかまたは似たような質量(m)の物体に作用する力を比較するときには、力の単位(F=maを想起されたい)ではなく加速度の単位でそれらの力を表すのが一般的である。このような場合には、重力の加速度の倍数、すなわち、「g's」の単位で加速度を表すことが多い。したがって、ある物体は、「80-g」の力、または、重力の力の80倍に等しい力を受けているということができる。一般的に、力が大きいほどより大きな損傷を物体に与えるということを想定することができる。
【0012】
2つの物体が衝突する可能性が高い任意の状況において、衝突のエネルギーを管理し、及び、衝突による衝撃を受けた物体への損傷を最小限にするために設計された保護構造または保護材料を利用することが一般的なやり方である。そのような保護システムの有効性をテストする一般的な方法は、保護構造または保護材料の一方の側に既知の力(F)を加えて、保護システムを介して他方の側に伝達される力を測定することである。しばしば、これは、「落下試験」によって行われる。このタイプの試験では、衝突物体を所与の高さから固定された表面に落下させる(または機械的に加速させる)。この表面は、衝突物体によって該表面に加えられた力を記録するように構成されている。衝撃を受ける表面は通常鋼板であり、この鋼板の下には「フォースリング(force ring)」が取り付けられており、このリングは、鋼板に加わる力を記録して、その力を表す信号を、典型的にはプログラムされたコンピュータであるデータ捕捉システムに送信することができる。鋼板とフォースリングの組み合わせは「フォースプレート(または押型板(force plate)」と呼ばれる。このように、保護システムの有用な比較には、エネルギー管理システムまたはエネルギー管理材料をフォースプレート上に置き、該システムまたは材料上に衝突質量体を落下させ、該システムまたは材料を介してフォースプレートに伝達された力を時間の関数として記録することが含まれる。
【0013】
一定質量の物体を落下させる高さが高くなるほど、衝突前に該物体が達する速度は速くなり、衝突された表面に伝達するために該物体が有する運動エネルギーも大きくなる。時間の経過に対するこの衝突の力は、図1に示す曲線のように、力/時間曲線で表される。
【0014】
同じ質量及び同じ衝突速度を有する全ての物体は、同じ量のエネルギーを有するということに留意することが重要である。保護構造または保護材料によりエネルギーを管理するやり方によって力/時間曲線の形状が決まることになる。所与の物体が所与の速度で衝突する場合は、インパルス(または力積)(I)として知られている、力/時間曲線の下側の面積は、曲線の形状に関係なく同じになる。しかしながら、この曲線の形状は、力のプロファイルを表しており、使用されるエネルギー管理システムに依存して大きく異なりうる。一般的に、衝撃を管理するときには、得られる力のピーク値は、エネルギー管理システムの有効性の最も重要な指標であると考えることができる。
【0015】
B.衝撃吸収材料としての発泡体
物体を衝撃力から保護するために使用される最も一般的な材料(物質)の一つは発泡体(または、発泡樹脂)である。固体の発泡体は、軽量の気泡質(または多孔性)の工業材料の重要な部類を構成しており、運動競技活動(たとえば、保護用のかぶり物)や自動車用途(たとえば、ダッシュボードのカバー)などの通常衝撃を受ける多くの用途で使用されている。発泡体は、最も一般的には、小さな気孔を比較的高い容積百分率で含む物質であって、液体(または流体)または固体の気泡を閉じ込めることによって形成された物質として定義される。これらの気孔により、発泡体は衝撃を受けた際に弾性的に変形することができ、衝撃エネルギーは、材料が圧縮されるのに応じて消散する。一般的に、発泡体は、広い面積にわたって力を拡散することによって、及び、衝撃が生じる距離及び時間を長くすることによって、衝撃圧力を低減し、以て、伝達される力の大きさを小さくする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
発泡体は、数十年にもわたって衝撃保護の主力となっているが、それらは、エネルギー管理能力のために材料の変形にもっぱら頼っている。このため、2つの主な制約を受ける。
【0017】
第一に、材料の特性に依存しているために、発泡体の適応性が大幅に制限される。発泡体は、発泡体の密度または形状(厚み)を変化させることによって、衝撃エネルギーの非常に限定された範囲にのみ最適に応答するようにカスタマイズされることができるが、発泡体は、広範囲の衝撃エネルギーに応答するように適合することはできない。このため、発泡体の機能と衝撃エネルギーとのミスマッチが起こり、発泡体を、衝撃に対して「柔らかすぎる」か「堅すぎる」ものにしてしまう場合がある。衝撃に対して柔らかすぎる(密度が十分でない)発泡体は、あまりに速く圧縮され、すなわち、あまりに速く「底につき」、衝撃を受けた身体(または物体。以下同じ)に過度の力を伝達してしまうことになる。衝撃に対して堅すぎる(密度が高すぎる)発泡体は、十分に圧縮されず、衝撃を受けた身体をあまりに速く減速させることになる。
【0018】
発泡体が衝撃を受けているときに完全に圧縮された状態になると、発泡体は、剛体として機能し、エネルギーを吸収する能力を失う。発泡体が完全に圧縮された後に残っている衝撃エネルギーは、発泡体を介して衝撃を受けた身体に直接伝達される。所与の衝撃に対して柔らかすぎる発泡体はあまりに速く圧縮され、衝撃を受けた身体に大きな力を加えることを可能にし、衝撃が生じている実効的な距離及び時間を実際上低減する。所与の衝撃に対して柔らかすぎる発泡体の力/時間曲線を図2に示す。
【0019】
衝撃の初期段階では、発泡体は物体を十分に減速させないが、これは、図2の力/時間曲線上の初期の0〜0.075秒における少しずつ増加している線分によって表されている。次の、0.075〜0.0125秒の時間期間では、発泡体は、急速に圧縮されて突き固まり、この時点で、図2の曲線にスパイクとして示されているように、短い距離及び時間で減速が行われる。この曲線は、減速の大部分が短い時間期間及び距離で行われ、これによって、衝撃を受けた身体に最も大きな損傷を与える大きなピーク値をとる力が加えられるということを実証している。さらに、柔らかい発泡体は局部的に圧縮される潜在性を有するために、力が伝達されうる面積が小さくなり、したがって、衝撃の圧力及び損傷を大きくする可能性がある。小さな面積内で底を突くという壊滅的な結果を生じる可能性があるために、中程度のエネルギー衝撃または高いエネルギー衝撃を伴うことがある状況では、柔らかい発泡体を使用することはできない。
【0020】
逆に、所与の衝撃に対して発泡体が堅すぎる(密度が高すぎる)場合もありうる。発泡体が堅すぎる場合には、発泡体は、衝突の初期の段階であまりにも大きな抵抗を示し、衝突の距離または時間を長くするのに十分には圧縮されない(十分には「押さえ付け」られない)。したがって、発泡体は物体を急停止させるが、これは、図3に示す力/時間曲線において力の大きなピーク値に向う連続的な急上昇として示されている。これは、図3の「実験1」と表示された曲線において最も明らかである。
【0021】
これらの高密度の発泡体は、本質的に、衝撃を受ける領域を広げ、その領域に対する圧力を小さくするように作用するが、依然として強い力をもたらしうる。高密度の発泡体の別の問題は、大きな「跳ね返り」の可能性があることであり、その場合には。発泡体は、圧縮された状態で一時的に衝撃エネルギーを保存し、跳ね返るときにそのエネルギーを再度伝達する。したがって、高密度の発泡体は、衝撃の圧力を小さくするのには有効であるが、力のピーク値を大幅に小さくする能力は制限されている。
【0022】
発泡体がたまたま衝撃に整合している(これは、偶然に、または、ある極めて特別なエネルギーレベル基準を満たすための発泡体の特定の設計によって起こる場合がある)ときでさえ、依然として固有の制限がある。1つの主な制限は、発泡体は、衝突の距離と時間を長くするのに十分なだけ「押さえ付け」られることができないことである。ほとんどの発泡体は、最大でもそれらの元の高さの60%〜70%までしか押さえ付けられないが、これによって、衝撃が存在する距離及び時間が制限され、力のピーク値はより大きくなる。所与のエネルギーレベルで動作する所与の材料に対して発泡体をカスタマイズする能力が制限されている場合には、力のピーク値をさらに小さくするための選択肢はたった一つしかない。具体的には、力のピーク値をさらに小さくするための唯一の方法は、発泡体の密度を小さくし、その高さまたは厚みを増加させることである。かかる変更により力のピーク値を小さくすることができるが、発泡体の固有の特性−この特性により、圧縮されると発泡体の密度は徐々に高くなる−のために、曲線は、依然として、こぶ状または釣鐘形(または鐘形){しょうけい}となり、力のピーク値を小さくする発泡体の能力は制限される。さらに、厚みが増した発泡体は、いくつかの用途では美容上または実用上許容されない場合があり、また、エネルギー管理システムの大きさと重量を許容できないレベルまで増加させる場合がある。
【0023】
所与の特性を有する発泡体が製造されると、発泡体はそれが「最適に」機能する所定のエネルギーレベルを有するであろう。しかし、その性能は、依然として、大きな改良の余地があり、それの最適な範囲外では、発泡体の機能はかえって悪化し、所与の衝撃に対して堅すぎるか柔らかすぎるものとなる可能性がある。したがって、発泡体には、可能性のある異なるエネルギーレベルの衝撃に適応する能力がない。このため、ある特定の基準で最高に機能するように単純に設計された発泡体を使用するか、または、最も重大な損傷の形態だけを防止するように設計された発泡体を使用することになるが、他の損傷の形態には十分に対処できないままとなる。図4は、所与の発泡体について2つの異なる衝撃エネルギーに応答して生成された2つの力/時間曲線を含んでいる。図4から明らかなように、発泡体の性能は、衝撃エネルギーが増加すると低下する。
【0024】
発泡体の第2の主な制限は、全ての発泡体が、衝撃を繰り返し受けると機能が低下するということである。発泡{はっぽう}ポリスチレン(EPS)などのいくつかの一般的な発泡体は、1つの衝撃用にしか設計されていない。他の発泡体−それらが、「複数の衝撃」用に設計されている場合であっても−もまた、衝撃を繰り返し受けると機能が低下する。かかる耐久性の欠如のために、発泡体の使用に安全上の制限だけでなく実用上の制限が生じうる。図5は、「複数の衝撃」用の発泡体に連続して衝撃を与えた場合の一連の力/時間曲線を含んでおり、該曲線は、衝撃を繰り返し受けると発泡体の性能が低下することを示している。
【0025】
要約すると、衝撃吸収材料としての発泡体に関連する問題には、
(a)適応能力に制限がある。
(b)衝撃エネルギー管理が最適化されていない。
(c)エネルギー吸収能力と使用される材料の量とが両立しない。
(d)耐久性が不十分である。
といったものがある。
【0026】
我々は、特にこれらの発泡体の制限に焦点をあてているが、当業者には、他のエネルギー管理メカニズムを利用できること、及び、それらのメカニズムにも、発泡体と同じかまたは類似の機能上の制限がありうることが理解されよう。
【0027】
したがって、衝撃エネルギー管理の分野において、発泡体及び従来の他のエネルギー管理システムに課されている制限に対処できる新規なシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明によれば、新規な衝撃エネルギー管理方法及びシステムが提供される。これらの方法及びシステムは、上述した発泡体や他の従来のエネルギー管理システムの制限に対処するように設計されている。
【0029】
本発明によれば、衝撃エネルギー管理方法は、身体(または物体。以下では主に身体と記すが、本発明は、身体以外の物体にも同様に適用できる)に与えられた衝撃による損傷から身体を保護するために提供されるものであり、次のステップを含む。
(a)保護すべき身体の一部を覆って(または該一部の上に)保護構造を配置するステップ。この保護構造は、該保護構造を介して身体に伝達される衝撃の力を低減することができる。
(b)衝撃の初期段階(または初期段階の衝撃)に応答して変形(へこみや曲がりなどの変形)に抗し、衝撃の初期段階後は衝撃に屈して変形(へこみや曲がりなどの変形)する第1の衝撃吸収メカニズム(第1の衝撃吸収機構ともいう)を保護構造に提供するステップ。
(c)衝撃の初期段階後は、身体に伝達される衝撃力が、衝撃の残り全部にわたってほぼ一定のままであるように動作する第2の衝撃吸収メカニズム(第2の衝撃吸収機構ともいう)を保護構造に提供するステップ。
【0030】
本発明の例示的な1実施形態によれば、保護構造は、1つ以上の衝撃吸収圧縮可能セル(セルとは気泡や細かく仕切られた空間などを意味する)を含む。この保護構造は、単独の場合もあれば、他の衝撃吸収材料及び/または層と組み合わされる場合もある。各々のセルは、少なくとも1つのオリフィス(開口部)を有する流体で満たされた内部チャンバー(室)を画定する熱可塑性材料の薄肉(薄壁)筐体(または薄肉容器)の形態とされている。各セルは、衝撃の初期段階または早期の段階の間、各セルに加えられる衝撃に抗し、その後、オリフィスを通して流体を排出することによって、セルの内部チャンバー内の流体による衝撃の残りの管理を可能にするために、意図的に(衝撃力に屈して)変形(たとえばへこむなど)するように構成されている。各セルは、さらに、その元の形状に復帰するように構成されており、オリフィスは、セルの内部チャンバーに流体を急速に補給(充填)できるように構成されており、これによって、衝撃を受けた後、セルは、さらなる衝撃を受け入れてそれを減衰させる準備ができる。
【0031】
本発明の好適な実施形態では、セルは、ほぼ円形で対称形をなす円盤形状であり、やや垂直方向に配向した側壁が設けられている。側壁の厚さは、セルに対する衝撃の初期段階または早期の段階における(へこみや折れ曲がりなどの)変形に抵抗できるような厚さであり、かつ、(衝撃の初期段階の)後で、内側及び/または外側に曲がって、セル内の流体がオリフィスを通って流れ出ることによって衝撃の残りを管理できるような厚さである。セルを製作する材料、セルの種々の壁部の厚み、セルの形状、セルに収容される流体内容物または他の物質や材料、排出用オリフィスの大きさ、構成(構造)、配置、及び数などのセルの特性を注意深く選択することによって、広範囲の衝撃エネルギーにわたって衝撃に対する最適な応答を提供するように、セルをカスタマイズすることができる。
【0032】
保護用の圧縮可能なセル構造の種々の代替実施形態が開示される。好適な1実施形態における身体を衝撃から保護するための保護構造は、比較的柔軟な材料からなる内部層を有し、該保護構造の両側の面の間に延在する隔置された複数の開口と、対応する複数の保護ユニット(保護装置)を有する。それぞれの保護ユニットは、薄肉で、(へこみや折れ曲がりなどの)変形が可能な流体密封式の筐体(または密閉箱)を有し、該筐体は、該筐体を満たすある容量の流体を含み、該筐体の壁には、該保護構造に対する衝撃に応答して、流体の排出に抵抗しつつも選択されたレート(流量)で該流体を該筐体から排出する少なくとも1つのオリフィスがある。複数の保護ユニットは、第1の層の一方の面から突き出している該筐体の対応する第1のセグメントが中間層を共に形成するように、複数の開口内に受容(または収容)される。内部層上の表面と各保護ユニット(または各保護ユニット上の表面)が協働することによって、内部層内の対応する開口内に各保護ユニットが保持される。
【0033】
当業者であれば、後述する例示的な実施形態の詳細な説明及び添付の図面から、本発明の上記の及び他の目的、特徴及び利点をより良く理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】衝撃吸収材料について、該材料によって伝達された力を時間の関数として示す、典型的な力/時間曲線である。
【図2】発泡体材料に加えられた衝撃に対して「柔らか」過ぎる該発泡体材料についての力/時間曲線である。
【図3】発泡体材料に加えられた所与の衝撃(すなわち、実験1)に対して「堅」過ぎる該発泡体材料についての一連の力/時間曲線である。
【図4】異なる衝撃エネルギーに対する所与の発泡体の性能の変化を例示する該所与の発泡体についての2つの力/時間曲線を示す。
【図5】ある発泡体材料についての一連の力/時間曲線であり、衝撃が繰り返された結果、該発泡体の性能が低下することを示している。
【図6】本発明に従って具現化された圧縮可能なセルの部分断面側面図である。
【図7】図6のセルの上面図であり、該セルのほぼ円形の対称形状及び構造を示す。
【図8】図6に示すようなセルについての力/時間曲線であり、ほぼ台形で平坦な力応答を生じさせるためにセルをどのようにカスタマイズできるかを例示している。
【図9】図6に示すようなセルについての2つの力/時間曲線を示し、2つの異なる衝撃エネルギーに対するセルの応答を例示している。
【図10】受け皿形状を有し、初期の時点で作動する抵抗メカニズムを有しない圧縮可能なセルについての力/時間曲線を示す。
【図11】ふいご状(または、蛇腹状)の側壁を有し、初期の時点で作動する抵抗メカニズムを有しない圧縮可能なセルについての力/時間曲線を示す。
【図12】本発明に従って具現化された好適なセルの断面及び幾何学(形状)の細部を示す略図である。
【図13】本発明に潜在的に適した他のセル形状の断面を示す略図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の部分断面側面図であり、初期の時点で抵抗するメカニズム(衝撃の初期の段階において衝撃に抗するように動作するメカニズム)が、セル内部に配置された弾性的に(へこみや折れ曲がりなどの)変形が可能なリングから構成されている。
【図15】本発明の第3の実施形態の部分断面側面図であり、図6に示すようなセルが、ショック吸収応答(または緩衝応答)、セルの耐久性、並びに該セルを含む保護構造の快適度を改善するために、発泡体のベースプレートに結合されている。
【図16】本発明の第4の実施形態の側面図であり、図6に示すようなセルが、別の類似の構成のセルと組み合わされている。
【図17】図6、図14、図15、または図16に示すようなセルからなる複数のセルが、外殻(外側シェル)と内部層を有する多層化された保護構造の中間層を形成するように並んで配置されている様子を示す。
【図18】図16に類似するが、2つの変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能な要素を具備する複合保護構造からなる本発明の第5の実施形態を示す。
【図19】図18に示す構造をヘルメットなどの多層構造中に複数個組み込んだ構造を示す。
【図19A】図19のライン19A−19Aに沿って切り取った拡大断面図である。
【図19B】図19のライン19B−19Bに沿って切り取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
例示的な実施形態の詳細な説明
本発明に従って具現化された衝撃を吸収する圧縮可能な保護ユニットすなわち保護セル10を図6及び図7に示す。
【0036】
図6及び図7の例示的な実施形態では、セル10は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)または熱可塑性エラストマー(TPE)などの熱可塑性材料から形成され、上部壁14a、底部壁14b、及び底部壁14bを貫通するオリフィス16を有する薄肉(薄壁)の中空筐体(密閉容器)12として形成される。セル10の側壁18は、やや垂直方向に配向しており、これによって、側壁は、セル10への衝撃に対して初期の時点において抵抗を示すが、その後、戦略的に外側に曲がって、セル10内の流体(この例では空気)が、空気流の矢印20によって示されるように、オリフィス16を通って流れ出ることによって、衝撃の残りを管理(または制御)できるようにする。オリフィス16を通る空気の再充填(再補給)と相まって、セル10が製造される熱可塑性材料の弾性特性により、セル10は、衝撃を受けた後に元の形状に素早く復帰することができる。
【0037】
図7は、セル10の上面図であり、セル10の概ね円形で対称性のある円盤形状と構造を示している。この概ね対称な形状のために、セル10に加えられる衝撃の場所に関係なく、かつ、セル10に対する衝撃の角度に関係なく、セル10は、一貫した応答を行うことができる。
【0038】
セル10の基本的な概念は、特に、従来の発泡体並びに他の類似のエネルギー管理材料及び構造にある制限に対処するものであり、エネルギー管理システムにこれまで利用されていた他の空気冷凍システム(または給気システム)とは異なる。第1に、セル10は、複数のカスタマイズオプションを提供し、このオプションには、セルが製作される熱可塑性材料の特性、セルの壁の厚み、セルの形状、セルの流体内容物、排出用オリフィス(複数の場合がある)の大きさ、構成(構造)、配置(位置)及び数の選択及び変更が含まれる。これらの特性を、他の特性と互いに連携させながら注意深く選択し、調整することによって、セル10の機能をカスタマイズして、従来の発泡体や他のシステムによってこれまで可能であったものより頑強な機能の範囲を確保することができる。これらのいくつかの特性を注意深く較正することによって、当業者は、セル10が適用される特定の用途に基づいて最適な組み合わせを決定することができる。
【0039】
第2に、セル10は、独自の方法で衝撃エネルギーを管理(または制御)するように機能する。所与の速度(v)で移動している所与の質量(m)の物体の場合に、その物体のインパルス(または力積または衝撃)、または、力/時間曲線の下の面積は同じであるということが上記から想起されよう。しかしながら、衝撃吸収セル10がそのインパルスを管理するやり方によって、力/時間曲線のプロファイル(形状)が決まる。最適な発泡体でさえ、釣鐘形またはこぶ状の力/時間曲線を生じることを想起されたい。しかしながら、セル10は、同じインパルスを発泡体とは異なる方法で管理することを可能にする。釣鐘形またはこぶ状の曲線とは対照的に、セル10は、主としてその初期の時点で抵抗するメカニズム(以下、初期抵抗メカニズムともいう)のために、力/時間曲線が、平坦部まで急速に立ち上がるほぼ台形形状になるようにインパルスを管理し、その後、主として流体排出メカニズムのために、力/時間曲線が、インパルスがゼロに戻る前にインパルスの残りの大部分を通じてかなり広い平坦部を示すようにインパルスを管理する。したがって、セル10は、セル10の力/時間曲線が実際に「平坦化」されるようにインパルスを管理することによって、セル10が伝達する力のピーク値を小さくすることができる。本発明のセル10によって生じるタイプの平坦化された力/時間曲線の1例を図8に示す。
【0040】
通常の釣鐘形の力/時間曲線が、ほぼ台形状及び平坦状になるようなやり方でこのインパルスを管理するために、上記のセル10の特性、すなわち、材料、壁厚(肉厚)、セルの形状、流体内容物、オリフィスの大きさ、構成(構造)、位置及び数が、所望の応答を生じるように互いに連携させられながら選択される。具体的には、これらの特性は、衝撃の初期部分において、最初に(すなわち初期の時点で)抵抗するメカニズム、たとえば、セル10の(へこみや曲がりなどの)変形が可能な側壁18が、図8の0〜0.005秒の時間期間である、急勾配で傾斜している力/時間曲線の初期の部分によって表されているように、物体の減速を開始させるように作用する。セル10の側壁18がつぶれて(またはへこみなどの変形をして)外側に曲がり始めると、衝撃は、オリフィス16を通ってセル10から排出される流体によって管理(または制御)される。これは、図8の0.005〜0.02秒の時間期間における曲線の平坦部によって表されている。
【0041】
セル10が衝撃エネルギーをより好適に管理できる主な理由の1つは、流体の排出により、セル10を発泡体よりも最適な距離まで「押さえ付ける」(縮ませる)ことができることにある。すなわち、ほとんどの場合、セル10の特定の壁厚に依存して、セル10の元の高さの90%を超えてセル10を簡単に圧縮することができる。この圧縮能力により、発泡体よりも長い距離及び時間にわたって衝撃を継続させることができる。さらに、セル10内の流体は、圧縮中に実質的に密度が高くならず、これによって、圧縮とともに徐々に密度が高くなってスパイク状の曲線部が生じる発泡体の場合よりも時間の経過及び距離の変化に対して抵抗力を一定にすることができる。セル10がより長い距離押え付けられ、かつ、密度がより一定であることによって、衝突物体への「軟着陸」を示す、より平坦な力/時間曲線が得られる。
【0042】
セル10のもう1つの主な利点は、異なる衝撃エネルギーレベルに適応する能力である。この利点は、一般に、圧縮下にある流体の特性から生じる。この場合、衝撃エネルギーが増大するにつれて、セル10の内部チャンバー12内の流体は、乱れが大きくなり、エネルギー衝撃がより小さいときに比べてオリフィス16中を流れにくくなる。したがって、流体は、実際には、衝撃エネルギーがより小さいときにはより柔らかな挙動を示すのに対して、衝撃エネルギーが高いときにはより堅い(または硬質の)メカニズムとして挙動する。かかる適応性により、異なる衝撃エネルギーレベルに対してより最適なエネルギー管理がもたらされる。セル10のこの適応性の一例を図9に示す。図9は、2つの異なる衝撃エネルギーレベルにおけるセル10などの圧縮可能なセル(圧縮性セル)についての力/時間曲線を示す。これらの曲線から、一方の曲線の方が衝撃エネルギー及びインパルス(力積)が大きいにもかかわらず、2つの衝撃の力のピーク値はほぼ同じであることが明らかである。図9の曲線と図4に示す2つの異なる衝撃エネルギーレベルにおける単一の発泡体についての曲線との比較から明らかなように、この適応性によって、発泡体に対する価値ある利点がもたらされる。
【0043】
最後に、セル10は、発泡体よりもすぐれた耐久性を有する可能性がある。セル10用に選択された材料に依存して、及び、後述の図13、図14、図16の実施形態に関して説明するような、セル10を相補的なエネルギー管理コンポーネントと組み合わせる可能性も含めて、セル10は、衝撃が繰り返された後でさえも機能をほとんどまたは全く低下させることなく一貫した衝撃吸収性能を示すことができる。
【0044】
上述した独自のインパルス管理特性を発揮するために、上述したセル10の重要な特性は、任意の個別の設計において最適化されることに留意することが重要である。セル10の初期抵抗メカニズム、たとえば、変形可能な側壁18が、堅すぎる場合には、セル10は、高密度の発泡体に類似した挙動をするだろう。一方、初期抵抗メカニズム(たとえば、側壁18)が柔らかすぎる場合には、セル10は、低密度の発泡体に類似した挙動をするだろう。流体がオリフィス16から適切に排出されない場合は、セル10は初期の衝撃(衝撃の初期段階)の後において適切に応答しないだろう。たとえば、オリフィス16が大きすぎる場合には、空気は排出(流出)中に抵抗を与えず、セル10は柔らかな発泡体に類似した挙動をする。一方、オリフィス16が小さすぎる場合には、空気は閉じこめられて(または捕捉されて)、バネのように挙動し、したがって、減衰効果とは逆の好ましくない跳ね返り効果をもたらす。
【0045】
流体が充填された中空のキャビティまたは空気チャンバーの全てが、上述した独自のやり方でエネルギーを管理するわけではないことに留意することも重要である。エネルギー管理システムとして空気を使用するというやり方は広く利用されているが、他の形態では制限を受ける。初期に抵抗するメカニズムを持たない2つの他のタイプの空気充填セルについての力/時間曲線を図10及び図11に示す。図10は、初期に抵抗するメカニズムを持たない、薄い円盤状のもの(すなわちディスク)または空飛ぶ円盤の形態及び形状をなす排出(または排気)式の圧縮可能なセルに対応する。図11は、初期に抵抗するメカニズムを持たない、蛇腹状または波形状(すなわち波をうった形状)の側壁を有する排出(または排気)式の圧縮可能セルに対応する。
【0046】
図10及び図11に示された力/時間曲線を有するセルは、曲線が力の高いピーク値に向かって急傾斜するまでの徐々に増加する曲線の初期の部分によって明らかにされているように、初期の段階において衝撃に対して十分な抵抗をもたらすことができない。これらの曲線は、比較的柔らかな発泡体についての曲線と類似しているように見える。空気の圧縮性(または圧縮率)を考慮すると、初期に抵抗するメカニズムがセルに組み込まれていない場合には、セルは、あまりに速く圧縮して、急速に立ち上がる平坦な台形形状の曲線をもたらすことはできないだろう。逆に、セルが密閉されて圧力をかけられると、セルは、あまりに堅くなり、エネルギーを適切に管理するのに十分な変形を生じない場合があり、この場合も、好ましくない跳ね返り効果を生じうる。あるいは、空気が、(比較的制約されたセル10の環境とは異なり)相互接続された圧縮可能なセルからなる広大な空気袋の網状構造に収容されているときには、衝撃を受けたときに、空気は、その空気袋を通って移動し、衝撃に対する抵抗をほとんど生じない場合がある。
【0047】
図6のセル10の好適な材料、壁厚(肉厚)、セルの形状及び大きさ、並びにオリフィスの大きさは、もちろん、セル10が使用される特定の用途、並びに、特定の保護構造で使用されるセルの数、及び、その構造の他の要素及び部品(コンポーネント)に依存することになる。上述したように、TPE材料は、セル10用の材料として特に適している。アーニテル(Arnitel(商標))及びサントプレーン(Santoprene(商標))のTPEは、セル10の所望の形状及び構造に容易に吹込成形することができ、かつ、優れた弾性及び耐久性を呈する2つの市販されているTPEである。セル10用に使用できる他の材料には、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)及び低密度のポリエチレン(LDPE)がある。
【0048】
図12は、本発明に従って具現化された好適な保護ユニットすなわちセル10の断面図であり、幾何学的な細部と寸法の詳細を示す略図である。好適なセルの断面は、図12の太めすなわち厚めの線で表されている。図12のセル10は、中心軸Xに関して対称であるのが好ましく、これによって、軸Xに垂直な平面に沿ったセル10のどの断面も円を形成するようにする。上述したように、これは、セル10の応答が、衝撃の位置及び角度に関係なく同じになるのを確実にするのに役立つ。たとえば、図12に示すように、セル10が任意の直径の側面で断面化されると、セルのエッジ(端部)は特定のパターンをなすように配列した1組の特定のポイントを通る対称形状を形成する。これらのポイントは、図12においてA、A’、B、B’、C、C’で表記されており、セル10のエッジが丸くされている場合には円形とすることができる。このパターンでは、ポイントBは、AとCの間でこれらのポイントから等距離にあり、ポイントB’は、A’とC’との間でこれらのポイントから等距離にある。線ACとABのなす角度は0度より大きく45度より小さい。線CAとCB、線A’C’とA’B’、線C’A’とC’B’がそれぞれなす角度についても同じことがいえる。この要件を満たし、かつ、本発明に従うセル10に使用するのに潜在的に適する他のセル断面形状が、図12において、比較的薄く細い線で表されている。
【0049】
図13は、本発明に従うセル10に使用するのに潜在的に適した他の断面形状を示す。
【0050】
上述したように、セル10の具体的な形状及び寸法は、ある程度、該セルが適用される個々の用途に依存する。保護構造に使用することが意図されている図12のセル10のようなセル(このセルは、複数の同一のセル10とともに、図17に示され、かつ図17に関連して後述するようなセルであって、かつ、保護用ヘッドギア(保護用のかぶり物)として使用するための形状及び構造を有する)は、以下の寸法及びその他の細目を有する場合がある。図12のセル10の高さhは約1.0インチ(1インチは約2.54cm)であり、その上部壁と底部壁の直径d1は約1.75インチであり、その中間部の直径d2は約2.00インチである。セル10の材料はTPUであるが、TPEとすることもできる。セルの筐体(容器)12の壁厚tは、約1.0〜約3.00mmの範囲とすることができ、典型的な厚さ(t)は約2.00mmである。オリフィス16(図6参照)の直径は、約1.0mm〜約5.00mmの範囲とすることができ、典型的なオリフィス直径は約2.5mmである。全ての値は相互に関連しているので、これらの寸法及び/または角度のいずれか1つを変化させると、他の寸法及び/または角度をそれに応じて調整することが必要となる場合があることが理解されよう。所与の用途に対する最適な値の組み合わせは、過度の実験をすることなく、標本試験によって容易に決定することができる。
【0051】
図14は、前述したセル10と構造が似ている圧縮可能な保護ユニットすなわち保護セル50の形態をなす本発明の1代替実施形態を示す。しかしながら、セル50では、初期抵抗メカニズムは、セル50の筐体52から分離されているが、筐体52と協働して所望の初期抵抗をもたらすコンポーネント(部品)によって提供される。この例示的な実施形態では、初期の時点で(衝撃に対して)抵抗するコンポーネントは、セル50の筐体52内に配置された弾性のあるプラスチックリング(または、弾性を有する可塑性リング)62から構成される。セル50は概ね垂直な側壁58を有しており、これらの側壁は、比較的柔軟なものとすることができるので、衝撃に応答する(へこみなどの)変形に対してほとんど抵抗を生じない。しかしながら、内部リング62は、セル10内の側壁18とほとんど同じように、衝撃の初期段階の間(へこみなどの)変形に抵抗し、その後、戦略的に内側に曲がってへこみ、これによって、セル50を少なくとも部分的に満たし、かつ、セル50のオリフィス56を通って排出される流体が、衝撃の残りに対処するためのメカニズムとして機能できるように設計されている。セル10と同様に、セル50及びその内部リング62の特性を、広範囲の衝撃エネルギーに応答して、ほぼ台形形状の(上部が)平坦な力/時間曲線を生成するように設計することができる。
【0052】
リング62を、セル50の筐体52から分離して作製し、かつ、底部壁54を固定する前に、セルの筐体52の内部に挿入することができる。リング62を、それの上部端及び底部端において筐体52の内部表面に接合(または接着)することができる。初期の時点で抵抗するコンポーネントもまた、セル50の周辺のセルの筐体52の外部に配置できることが理解されよう。
【0053】
図15は、図6のセル10などの圧縮可能なセルを、従来の発泡体のベースプレート70と組み合わせた、本発明の別の実施形態を示す。発泡体のベースプレート70を、セル10に、接合(または接着)するか、溶接するか、または、他のやり方で固定することができ、また、ベースプレート70は、流体が、衝撃を受けている間はセル10から自由に流れ出ることができるようにし、かつ、衝撃の終わりにセル10の中に戻ることができるようにする中央開口部72を有することができる。発泡体のベースプレート70は、衝撃を減衰させ、吸収する、組み合わされたセル10の能力を改善し、及び、セル10の耐久性、すなわち、何回もの衝撃に対して最小限の損傷及び性能の低下で持ちこたえる能力を高め、それゆえ、該セルを組み込んでいるヘルメット及び他の保護構造の快適度を高める。
【0054】
図16は、保護ユニットすなわち保護構造100が、図6のセル10または図14のセル50などの圧縮可能なセルが共通のベースプレート102の両側に取り付けられた一対の圧縮可能なセルを含む、本発明のさらに別の実施形態を示す。上部のセル10または50は、衝撃を受けた際に下方に排出する(下向きに排出口(流出口)がくる)ように配向乃至配置されている。下部のセル10または50は、衝撃を受けた際に上方に排出する(上向きに排出口(流出口)がくる)ように配向乃至配置されている。発泡体または他のプラスチック(または可塑性材料)とすることができるベースプレート102には、いくつかの逆方向に延びる放射状の(または半径方向に沿った)通路104が設けられており、この通路は、衝撃を受けたときに流体をセル10または50から横方向に排出できるようにし、及び、衝撃の後に流体がセル10または50へと横方向に戻ることができるようにする。図16のセル10または50は、互いに同じ大きさであるものとして示されているが、空間を節約し、及び、構造をより小さくするために、それらを異なる大きさにする(たとえば、下部のセル10または50を上部のセル10または50よりも小さくする)ことも可能であることが理解されよう。
【0055】
図17は、衝撃による損傷から身体Bを保護するための多層保護シェル構造200の1実施形態の断面図である。この保護構造200は、図6のセル10または図14のセル50などの圧縮可能な保護ユニットすなわち保護セルが、外側シェル(殻)204と内部層206の間の中間層202をなすように並んで(または並列に)配置された複数の圧縮可能な保護ユニットすなわち保護セルを備える。外側シェル204は、衝撃に応答して局部的にかつ放射状(または半径方向)に変形する比較的薄く、比較的堅いプラスチック層とすることができる。内部層206は、従来の発泡体とすることができる。セル10または50を、外側シェル204の内側表面及び/または内部層206の外側表面に接着(または接合)することができ、または、着脱可能な留め具(不図示)によって該内側表面または外側表面に半永久的に固定することができる。図15の実施形態における発泡体のベースプレート70と同様の内部層206に、衝撃を受けている間、セル10または50から排出される流体が、内部層206を通って身体Bまで移動できるようにする複数の開口部208を設けることができる。セル10または50の弾性のために、外側シェル204は、衝撃の半径(または放射)方向成分(この成分は、セル10または50及び内部層206によって効果的に吸収されることになる)に応じて変形するだけでなく、衝撃の接線方向成分に応じて内部層206に対してせん断変形し、これによって該成分もまた吸収されるであろうことが理解されよう。
【0056】
図17の層構造200は、衝撃に関連する激しい振動や他の傷害から保護用のかぶり物(以下、保護用ヘッドギアという)を着用している者の頭を保護するための該保護用ヘッドギアの構成に使用するのに特に適している。層構造200の具体的な構造及び実装例には、安全帽、オートバイ用ヘルメット、自転車用ヘルメット、スキー帽(またはスキー用ヘルメット)、ラクロス用ヘルメット、ホッケー用ヘルメット、フットボール用ヘルメット、バッティング用ヘルメット、ロッククライミングや登山用のかぶり物、ボクサー用のヘッドギアなどがある。他の用途には、建設現場で使用されるヘルメット、国防及び軍事用途で使用されるヘルメット、及び、地下活動のために使用されるヘルメットなどがある。
【0057】
セル10及び50、並びに、層構造200を、他の様々な衝撃吸収用途及びショック減衰用途に使用するために適応させることができることも理解されよう。
【0058】
もちろん、本願出願人の基本的なセル構造を、図15に示すような発泡体以外の衝撃吸収材料、または別の図16のセルに類似のセルと組み合わせて、本発明にしたがって衝撃エネルギー管理を提供する保護ユニットを形成することができる。図18は、背中合わせに接続され、かつ流体が互いを自由に行き来できるように接続されて複合保護ユニットを形成するセル222とふいご状(または蛇腹状)カプセル224からなる保護構造すなわち保護ユニット220を示す。
【0059】
セル222は、上述したセル10及び50と類似の変形可能な特性を有する、端壁すなわち上部壁222a及び背面対向接続式の截頭円錐形側壁222bを備える。下側の側壁222bの下部端は、セルの底部にある大きな開口226を画定する環状の底部壁すなわちフランジ222cに接続されている。
【0060】
セル222は、該セルの上部壁または側壁に少なくとも1つの排出用オリフィス230を有する。図示のセル222は、上部壁222aにバルブ(弁)の形態をなすそのような2つのオリフィスを有する。
【0061】
一方、ふいご状カプセル224は、底部壁224aと従来の回旋状の側壁224bから構成され、該側壁224bの上部エッジは、ふいご状カプセルの上部にある大きな開口232を囲む環状の上部壁すなわちフランジ224cに接続されている。図示のカプセルは2つの回旋部(または湾曲部)のみを有しているが、もちろん、それより多くの回旋部を有することもできる。壁すなわちフランジ224cは、壁すなわちフランジ220cと大きさが同じであり、このため、図18の228に示すように、これら2つの壁すなわちフランジを、向かい合って接触するように配置して、共に高周波溶接または接着をすることができる。もちろん、所与の用途において、セルとふいご状カプセルの両方の対向する壁すなわちフランジをリングの対向する面(両側の面)に固定することができる。いずれの場合でも、セル222及びカプセル224内の空間は、流体が自由に行き来できるように連通しており、したがって、オリフィス230を除き流体密封である単一の比較的大きなチャンバーを画定する。そういう訳で、図18の236における破線で示すように、排出用オリフィス(複数の場合あり)を、セル222の壁ではなく、または、該壁に加えて、ふいご状カプセルの壁に設けることができ、または、同図の237における破線で示すように、フランジ222cと224cの間に放射状の流路(複数の場合あり)として形成することができる。
【0062】
ふいご状カプセル224は、基本的なセル構造にかなりの圧縮可能な容積を追加する。したがって、ふいご状カプセル224は、衝撃を減衰させ及び吸収するための構造全体の能力を高める。具体的には、ふいご状カプセル224は、たとえば、図8に関して上述した力/時間曲線の平坦な部分の持続期間を長くする。いくつかの用途では、この曲線をさらに整形し、保護構造全体の快適性能を改善するために、たとえば、図15の発泡体プレート70に類似の発泡体の圧縮可能な弾性のボディ(本体または筐体)を、図18の239において破線で示すようにふいご状カプセル224内に設けることができる。ボディ239を、ボディ239の1つの面に固定された薄い網状組織(たとえば、メッシュ(網)や薄膜)239aによって支持することができる。この薄い網状組織239aは、フランジ222cと224cが高周波溶接されるときに、または、他の方法で互いに固定されるときに、それらのフランジの間に捕捉される張り出した縁部を有する。
【0063】
個々の用途に依存して、排出用オリフィス(複数の場合あり)230(及び/または236)は種々の特性を有することができる。たとえば、1つのケースでは、そのような2つのオリフィスを、保護ユニット220が、異なる流量で吸い込み(流入)と排出(流出)をすることができるようにする、異なる流量制限器を組み込んだ2つの対向する逆止め弁として実施することができる。したがって、それらのオリフィスは、該構造が衝撃を受けたときの力/時間曲線の平坦部の持続時間と、そのような衝撃後の回復速度を制御することができる。別の用途では、該構造内の圧力が選択された大きさ(量)を超えたときに開くバルブ(弁)の形態で排出用オリフィスを設けるのが望ましい場合がある。このように、ユニット220は、空気圧が該構造内で上がっている間、空気を一時的に閉じ込め、その後、バルブが開いたときにその空気を放出する。各々が各々自体の圧力レベル設定値を有するそのようなバルブを複数使用することによって、該構造からの排出量(または排出速度)を、複数の衝撃エネルギーレベルにおいて最適化することができる。
【0064】
また、図18のセル222とふいご状カプセル224は、ほぼ同じ断面積または直径を有するものとして示されているが、ある特定の用途に対して所望の力/時間曲線形状を得るために、該カプセルを該セルよりも大きくまたは小さくすること、及び/または、該セルとは異なる材料または壁厚のカプセルを作製することが望ましい場合があり、及び/または、選択されたバネ定数をカプセルに与えるのが望ましい場合があり、最終的な目的は、該所与の用途に可能なかぎり適合した保護ユニット全体すなわち保護構造全体220を作り上げることである。
【0065】
図18のユニット220が特に適している1つの特定の用途は、人体を衝撃に関連する傷害から保護するための多層保護シェル(殻)構造の一部として使用することである。図19には、そのような多層構造の部分断面図が240で全体的に示されており、該多層構造は、たとえば運動選手または労働者などの着用者の頭部Hを保護するために使用することができる。
【0066】
図19に示すように、構造240は、衝撃に応答して局部的にかつ半径方向に変形する比較的堅いプラスチック層とすることができる外側シェル242と、それより柔らかく剛性が低い材料とすることができる内部層244から構成され、これらはすべて、本出願人の上記出願に詳しく記載されている。構造240はまた、246で全体的に示されている第3の中間の層を含み、この層は、図18に示す複数の圧縮可能な保護ユニット220のセル222を備える。構造220は、すべての構造のふいご状カプセル224が、内部層244の下に選択された距離だけ突き出して、整合的な(または整合している)内部ライナー250を共に形成するように、内部層244内に形成された穴248に並んで(または隣り合って)配置されている。換言すれば、各保護ユニット220の1つのセグメントは、セル222から構成され、内部層244の一方の面から外側層242の方へ突き出し、各保護ユニットの別のセグメントは、層244の反対側の他方の面から突き出して内部ライナー250の一部を形成している。
【0067】
様々な手段を用いて、構造220を多層構造240内の層224と取り外し可能に相互接続できるようにして、構造220が使用中に損傷を受けた場合に構造220を簡単に交換できるようにし、または、異なる特性を有する構造220による代用を容易にすることが好ましい。たとえば、層244内の各開口248のエッジに放射状の切り欠きまたはスリット(切り込み)248aを形成して、開口の縁が幾分柔軟で弾力を有するようにすることができる。複合保護ユニット220は各開口248に下から挿入される。各ユニットのフランジ222c、224cは、該ユニットの上部が外側シェル242に接触するときに、図19A及び19Bに示すように層244の上にはめ込まれ、これによって、層244は、図19Bに最もよく示すように、該ユニットのフランジとふいご状カプセルの第1の回旋状部(または最初の回旋状部)の間に捕捉される。代替的には、切り欠きを保護ユニットのフランジ222c、224cに設けて同じ効果を達成することができる。同じ手段を用いて、保護ユニット10、50、及び100を支持層244に取り外し可能に接続して、該ユニットの対応するセグメントを層244から外側層242の方へと突き出させ、これによって、該構造の中間層246を形成するようにすることができる。保護ユニット100及び220の場合には、これらのユニットの対向する端部セグメントが支持層の反対側の面から突き出してライナー250に類似の内部ライナーを形成する。
【0068】
構造220のオリフィス(複数の場合がある)230をセル222の上部壁222aに形成された溝256に配置して、空気が、自由にオリフィス230へと流れ、及びオリフィス230から構造240の開放端部へと流れ、または、穴を通って内部層244に流れるようするのが好ましい。たとえば、いくつかの用途では、スリットまたは切り欠き248aをフランジ222c、224cのエッジ(または端部)を越えて延在させて、図19Aに248bで示すような穴を設け、間にある層246内の空気を、たとえば、着用者の頭部Hを冷やすために、内部層244の下側に排出できるようにするのが望ましい場合がある。
【0069】
セル222が図示のように配置されて中間層246が形成されると、ふいご状カプセル224の底部壁224aはすべて、着用者の頭部Hに係合する位置にくる。事実上、ふいご状カプセルは、着用者の頭部Hの輪郭にぴったりと合う、多層構造240の動的な内部ライナーを形成する。
【0070】
換言すれば、多層構造240が着用者の頭部で静止しているときは、各保護構造220内の圧力は比較的小さく、各ふいご状カプセルは、必要に応じて、着用者の頭部の下側の領域にぴったりと合うように曲がることができる。したがって、ふいご状カプセルは、全体として、着用者の頭部に隣接する比較的柔らかく快適な内部ライナーを提供する。一方、構造全体240が衝撃を受けると、各構造220内の圧力が、外側シェル242に対する衝撃の場所及び激しさに依存する量だけ増加する。こうして、該カプセルは、衝撃を和らげるように作用し、したがって、着用者の頭部を傷害から保護する。
【0071】
要するに、ふいご状カプセル224は、該構造240のための動的な内部ライナーを効果的に形成する。これらのカプセルは、着用者の頭部に合うように広い範囲にわたって自己調整可能であるので、非常に広範囲の頭部のサイズに対して適合性及び快適性をもたらす。そして、衝撃を受けている間は、上述したように、該カプセルは、圧力を受け(または加圧され)て、衝撃エネルギーの管理を支援するために動的に機能する。
【0072】
上述したように、1つずつ保護ユニットを交換する代わりに、保護ユニット220がすでに設置されている内部層244を、完全なサブシステムとして外側シェル242内に挿入し、並びに、層242及び244の対向する外側エッジにおいて、たとえば、スナップファスナー、マジックテープ(または面ファスナー)などの適切な固定手段によって外側シェルに取り外し可能に接続できるように、もしくは、外側シェル242及びセル222の端壁222aの対向する表面において嵌合ファスナー(メーティングファスナー)260a、260bによって外側シェルに取り外し可能に接続できるように、構造240を設計することができる。
【0073】
上記したように、前述の種々の衝撃エネルギー管理構造のセル(およびふいご状カプセル)を従来のブロー成形プロセスを用いて形成することができる。しかしながら、いくつかの用途では、セルの壁厚をより精密に制御し、及び、該壁厚を選択的にカスタマイズすることが望ましい場合がある。たとえば、ある所与の用途では、選択した初期変形特性を達成するために、端壁よりも厚いかもしくは薄い変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能な側壁、または、側壁の厚みが側壁の高さに沿って変化する変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能な側壁をセル10、50、または222に設けるのが望ましい場合がある。
【0074】
私は、そのような精密公差は、たとえば、米国特許第3,247,548及び第4,919,608に開示されたタイプの特別な変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能な金型コアを有するモールド(金型などの型)を使用してセル(及びふいご状カプセル)を射出成形することによって達成できることを発見した。尚、これらの米国特許の内容は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。このタイプのモールドによれば、軸対称性を有する物品の成形が可能であるが、その直径は該物品の軸に沿って変化する場合がある。そのようなモールドには、物品の外部壁を形成する外側モールド(型)部、及び、物品の内部壁を形成する内部の変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能なコアが含まれる。成形処理が完了すると、内部コアを変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)させて、内部コアを物品の内部から軸方向に分離することができる。そのようなモールドによれば、上述したように角度の付いた側壁を有するセルを形成することができ、該側壁の壁厚を正確に制御して本発明の目的を達成することができる。
【0075】
要約すると、我々が説明したものは、個々に選択及び調整することが可能で、かつ、新規なやり方で衝撃エネルギーを管理するために互いに協調して作用する要素及び特性の独自の組み合わせを有する保護ユニットすなわち保護構造である。具体的には、それらの構造は、以下の利点をもたらす。
(a)多くのカスタマイズオプション。
(b)異なる衝撃吸収メカニズムによって提供される段階的抵抗性(これによって、力曲線を整形し、力のピーク値を小さくすることができる)。
(c)圧縮に伴ってより大きく「押し付けられ」、かつ、圧縮による密度の増加を回避する(これは、力曲線の平坦化、及び、厚みを増すことなく力のピーク値を小さくすることにつながる)。
(d)様々な衝撃エネルギーレベルへの適応。
(e)発泡体に比べて優れた耐久性。
【0076】
特定の実施形態を参照して本発明を図示及び説明したが、当業者には、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲から逸脱することなく、説明された実施形態に対して様々な変更及び追加を行うことができることが理解されよう。たとえば、構造220について説明したオリフィス(複数の場合がある)を構造10及び50に用いることができること、及び、ふいご状カプセル2224を構造50に結合して複合保護ユニットを形成できること、が理解されよう。また、いくつかの用途では、保護ユニットの各々は、開口248に保持される、比較的長いふいご状カプセルのような単一の変形(へこみは折れ曲がりなどの変形)可能な構造を備え、これによって、該構造の対応する端部が、支持層244の両側の面から突き出るようにすることができる。すなわち、これらの構造は、中間層246と内部ライナー250の両方を形成する。当業者には、また、非常に多くの他のメカニズムを考案して、開示したセルが衝撃の初期段階の間(へこみや折れ曲がりなどの)変形に対して所望の抵抗を生じるようにするために、それらのメカニズムを用いることができるということが理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、当業者には明白でありうるこれらの及び他の変更をカバーすることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には衝撃エネルギー管理方法及びシステムに関し、より具体的には、衝撃を受けた物体または身体を衝撃によるダメージ(以下、損傷という)から保護するように設計された保護構造であって、広範囲の衝撃エネルギーにわたって最適な衝撃減衰応答をもたらすように簡単にカスタマイズされる特性を有する保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
A.衝突物体の物理学
運動している物体の運動エネルギー(KE)は、質量(m)と速度(v)の関数であって、以下の式で表される。
KE=(1/2)mv2 (1)
【0003】
この物体が別の物体に衝突すると、エネルギーが伝達されて、力(F)が加えられる。加えられる力は、2つの主要な関係の関数である。
【0004】
第一に、物体に加えられる力(F)は、ニュートンの運動の第2法則によって規定されるように、物体の質量(m)と生じる加速度(a)の積に等しい。すなわち、F=maである。加速度(a)は、時間(t)の経過に対する物体の速度の変化(Δv)の測度であり(速度の変化は正または負でありうるので、加速度は正の量または負の量を表しうる)、したがって、ニュートンの法則は次のように書き換えることができる。
F=m((Δv)/t) (2)
【0005】
この式から、一定の質量(m)の物体に加えられる力を小さくする一つの方法は、その物体が速度を変化させる時間(t)を長くし、これによって、その物体の加速度を小さくすることであることが明らかである。
【0006】
第二に、力(F)は、(運動エネルギーの形態である)物体のエネルギー(E)が距離(d)にわたって伝達される結果として生じ、次の式で表される。
F=E/d (3)
【0007】
この式から、所与の量のエネルギー(E)を有する衝突物体の力(F)を小さくする別の方法は、物体のエネルギー(E)が伝達される距離(d)を長くすることであることが明らかである。
【0008】
第三の関係が、加えられた力の効果を規定する。圧力(P)は、力(F)が加えられる面積(A)に対する力(F)の集中度を表し、次の式によって規定される。
P=F/A (4)
【0009】
この式から、衝突物体から与えられる力(F)を小さくすることによって、または、力(F)が加わる面積(A)を大きくすることによって、衝撃の圧力(P)を小さくできることが明らかである。
【0010】
以上の3つの関係から、衝突物体から受ける損傷を小さくする方法は、その物体が加速(または減速)する時間(t)、または、エネルギーが伝達される距離(d)を長くすることによって加えられる力(F)の大きさを小さくすること、または、力(F)が拡散する面積(A)を大きくすることであることが明らかである。一つの理想的なシステムは、衝撃による損傷を低減するためにこれら3つの方法全てを利用するというものだろう。
【0011】
力は、ニュートン(1N=1kg-m/s2)またはポンド(1b)の単位で測定される。すなわち、質量はキログラム(kg)単位またはポンド質量(1b-m)単位で測定され、加速度は、毎秒1メートル毎秒(m/s2)の単位または毎秒1フィート毎秒(ft/s2)の単位で測定される。一般的に知られている力は、物体に作用する重力を測定する重さ(w)である。これは、物体の質量(m)と重力による加速度(g)の積に等しく、9.81m/s2または32ft/s2である。同じかまたは似たような質量(m)の物体に作用する力を比較するときには、力の単位(F=maを想起されたい)ではなく加速度の単位でそれらの力を表すのが一般的である。このような場合には、重力の加速度の倍数、すなわち、「g's」の単位で加速度を表すことが多い。したがって、ある物体は、「80-g」の力、または、重力の力の80倍に等しい力を受けているということができる。一般的に、力が大きいほどより大きな損傷を物体に与えるということを想定することができる。
【0012】
2つの物体が衝突する可能性が高い任意の状況において、衝突のエネルギーを管理し、及び、衝突による衝撃を受けた物体への損傷を最小限にするために設計された保護構造または保護材料を利用することが一般的なやり方である。そのような保護システムの有効性をテストする一般的な方法は、保護構造または保護材料の一方の側に既知の力(F)を加えて、保護システムを介して他方の側に伝達される力を測定することである。しばしば、これは、「落下試験」によって行われる。このタイプの試験では、衝突物体を所与の高さから固定された表面に落下させる(または機械的に加速させる)。この表面は、衝突物体によって該表面に加えられた力を記録するように構成されている。衝撃を受ける表面は通常鋼板であり、この鋼板の下には「フォースリング(force ring)」が取り付けられており、このリングは、鋼板に加わる力を記録して、その力を表す信号を、典型的にはプログラムされたコンピュータであるデータ捕捉システムに送信することができる。鋼板とフォースリングの組み合わせは「フォースプレート(または押型板(force plate)」と呼ばれる。このように、保護システムの有用な比較には、エネルギー管理システムまたはエネルギー管理材料をフォースプレート上に置き、該システムまたは材料上に衝突質量体を落下させ、該システムまたは材料を介してフォースプレートに伝達された力を時間の関数として記録することが含まれる。
【0013】
一定質量の物体を落下させる高さが高くなるほど、衝突前に該物体が達する速度は速くなり、衝突された表面に伝達するために該物体が有する運動エネルギーも大きくなる。時間の経過に対するこの衝突の力は、図1に示す曲線のように、力/時間曲線で表される。
【0014】
同じ質量及び同じ衝突速度を有する全ての物体は、同じ量のエネルギーを有するということに留意することが重要である。保護構造または保護材料によりエネルギーを管理するやり方によって力/時間曲線の形状が決まることになる。所与の物体が所与の速度で衝突する場合は、インパルス(または力積)(I)として知られている、力/時間曲線の下側の面積は、曲線の形状に関係なく同じになる。しかしながら、この曲線の形状は、力のプロファイルを表しており、使用されるエネルギー管理システムに依存して大きく異なりうる。一般的に、衝撃を管理するときには、得られる力のピーク値は、エネルギー管理システムの有効性の最も重要な指標であると考えることができる。
【0015】
B.衝撃吸収材料としての発泡体
物体を衝撃力から保護するために使用される最も一般的な材料(物質)の一つは発泡体(または、発泡樹脂)である。固体の発泡体は、軽量の気泡質(または多孔性)の工業材料の重要な部類を構成しており、運動競技活動(たとえば、保護用のかぶり物)や自動車用途(たとえば、ダッシュボードのカバー)などの通常衝撃を受ける多くの用途で使用されている。発泡体は、最も一般的には、小さな気孔を比較的高い容積百分率で含む物質であって、液体(または流体)または固体の気泡を閉じ込めることによって形成された物質として定義される。これらの気孔により、発泡体は衝撃を受けた際に弾性的に変形することができ、衝撃エネルギーは、材料が圧縮されるのに応じて消散する。一般的に、発泡体は、広い面積にわたって力を拡散することによって、及び、衝撃が生じる距離及び時間を長くすることによって、衝撃圧力を低減し、以て、伝達される力の大きさを小さくする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
発泡体は、数十年にもわたって衝撃保護の主力となっているが、それらは、エネルギー管理能力のために材料の変形にもっぱら頼っている。このため、2つの主な制約を受ける。
【0017】
第一に、材料の特性に依存しているために、発泡体の適応性が大幅に制限される。発泡体は、発泡体の密度または形状(厚み)を変化させることによって、衝撃エネルギーの非常に限定された範囲にのみ最適に応答するようにカスタマイズされることができるが、発泡体は、広範囲の衝撃エネルギーに応答するように適合することはできない。このため、発泡体の機能と衝撃エネルギーとのミスマッチが起こり、発泡体を、衝撃に対して「柔らかすぎる」か「堅すぎる」ものにしてしまう場合がある。衝撃に対して柔らかすぎる(密度が十分でない)発泡体は、あまりに速く圧縮され、すなわち、あまりに速く「底につき」、衝撃を受けた身体(または物体。以下同じ)に過度の力を伝達してしまうことになる。衝撃に対して堅すぎる(密度が高すぎる)発泡体は、十分に圧縮されず、衝撃を受けた身体をあまりに速く減速させることになる。
【0018】
発泡体が衝撃を受けているときに完全に圧縮された状態になると、発泡体は、剛体として機能し、エネルギーを吸収する能力を失う。発泡体が完全に圧縮された後に残っている衝撃エネルギーは、発泡体を介して衝撃を受けた身体に直接伝達される。所与の衝撃に対して柔らかすぎる発泡体はあまりに速く圧縮され、衝撃を受けた身体に大きな力を加えることを可能にし、衝撃が生じている実効的な距離及び時間を実際上低減する。所与の衝撃に対して柔らかすぎる発泡体の力/時間曲線を図2に示す。
【0019】
衝撃の初期段階では、発泡体は物体を十分に減速させないが、これは、図2の力/時間曲線上の初期の0〜0.075秒における少しずつ増加している線分によって表されている。次の、0.075〜0.0125秒の時間期間では、発泡体は、急速に圧縮されて突き固まり、この時点で、図2の曲線にスパイクとして示されているように、短い距離及び時間で減速が行われる。この曲線は、減速の大部分が短い時間期間及び距離で行われ、これによって、衝撃を受けた身体に最も大きな損傷を与える大きなピーク値をとる力が加えられるということを実証している。さらに、柔らかい発泡体は局部的に圧縮される潜在性を有するために、力が伝達されうる面積が小さくなり、したがって、衝撃の圧力及び損傷を大きくする可能性がある。小さな面積内で底を突くという壊滅的な結果を生じる可能性があるために、中程度のエネルギー衝撃または高いエネルギー衝撃を伴うことがある状況では、柔らかい発泡体を使用することはできない。
【0020】
逆に、所与の衝撃に対して発泡体が堅すぎる(密度が高すぎる)場合もありうる。発泡体が堅すぎる場合には、発泡体は、衝突の初期の段階であまりにも大きな抵抗を示し、衝突の距離または時間を長くするのに十分には圧縮されない(十分には「押さえ付け」られない)。したがって、発泡体は物体を急停止させるが、これは、図3に示す力/時間曲線において力の大きなピーク値に向う連続的な急上昇として示されている。これは、図3の「実験1」と表示された曲線において最も明らかである。
【0021】
これらの高密度の発泡体は、本質的に、衝撃を受ける領域を広げ、その領域に対する圧力を小さくするように作用するが、依然として強い力をもたらしうる。高密度の発泡体の別の問題は、大きな「跳ね返り」の可能性があることであり、その場合には。発泡体は、圧縮された状態で一時的に衝撃エネルギーを保存し、跳ね返るときにそのエネルギーを再度伝達する。したがって、高密度の発泡体は、衝撃の圧力を小さくするのには有効であるが、力のピーク値を大幅に小さくする能力は制限されている。
【0022】
発泡体がたまたま衝撃に整合している(これは、偶然に、または、ある極めて特別なエネルギーレベル基準を満たすための発泡体の特定の設計によって起こる場合がある)ときでさえ、依然として固有の制限がある。1つの主な制限は、発泡体は、衝突の距離と時間を長くするのに十分なだけ「押さえ付け」られることができないことである。ほとんどの発泡体は、最大でもそれらの元の高さの60%〜70%までしか押さえ付けられないが、これによって、衝撃が存在する距離及び時間が制限され、力のピーク値はより大きくなる。所与のエネルギーレベルで動作する所与の材料に対して発泡体をカスタマイズする能力が制限されている場合には、力のピーク値をさらに小さくするための選択肢はたった一つしかない。具体的には、力のピーク値をさらに小さくするための唯一の方法は、発泡体の密度を小さくし、その高さまたは厚みを増加させることである。かかる変更により力のピーク値を小さくすることができるが、発泡体の固有の特性−この特性により、圧縮されると発泡体の密度は徐々に高くなる−のために、曲線は、依然として、こぶ状または釣鐘形(または鐘形){しょうけい}となり、力のピーク値を小さくする発泡体の能力は制限される。さらに、厚みが増した発泡体は、いくつかの用途では美容上または実用上許容されない場合があり、また、エネルギー管理システムの大きさと重量を許容できないレベルまで増加させる場合がある。
【0023】
所与の特性を有する発泡体が製造されると、発泡体はそれが「最適に」機能する所定のエネルギーレベルを有するであろう。しかし、その性能は、依然として、大きな改良の余地があり、それの最適な範囲外では、発泡体の機能はかえって悪化し、所与の衝撃に対して堅すぎるか柔らかすぎるものとなる可能性がある。したがって、発泡体には、可能性のある異なるエネルギーレベルの衝撃に適応する能力がない。このため、ある特定の基準で最高に機能するように単純に設計された発泡体を使用するか、または、最も重大な損傷の形態だけを防止するように設計された発泡体を使用することになるが、他の損傷の形態には十分に対処できないままとなる。図4は、所与の発泡体について2つの異なる衝撃エネルギーに応答して生成された2つの力/時間曲線を含んでいる。図4から明らかなように、発泡体の性能は、衝撃エネルギーが増加すると低下する。
【0024】
発泡体の第2の主な制限は、全ての発泡体が、衝撃を繰り返し受けると機能が低下するということである。発泡{はっぽう}ポリスチレン(EPS)などのいくつかの一般的な発泡体は、1つの衝撃用にしか設計されていない。他の発泡体−それらが、「複数の衝撃」用に設計されている場合であっても−もまた、衝撃を繰り返し受けると機能が低下する。かかる耐久性の欠如のために、発泡体の使用に安全上の制限だけでなく実用上の制限が生じうる。図5は、「複数の衝撃」用の発泡体に連続して衝撃を与えた場合の一連の力/時間曲線を含んでおり、該曲線は、衝撃を繰り返し受けると発泡体の性能が低下することを示している。
【0025】
要約すると、衝撃吸収材料としての発泡体に関連する問題には、
(a)適応能力に制限がある。
(b)衝撃エネルギー管理が最適化されていない。
(c)エネルギー吸収能力と使用される材料の量とが両立しない。
(d)耐久性が不十分である。
といったものがある。
【0026】
我々は、特にこれらの発泡体の制限に焦点をあてているが、当業者には、他のエネルギー管理メカニズムを利用できること、及び、それらのメカニズムにも、発泡体と同じかまたは類似の機能上の制限がありうることが理解されよう。
【0027】
したがって、衝撃エネルギー管理の分野において、発泡体及び従来の他のエネルギー管理システムに課されている制限に対処できる新規なシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明によれば、新規な衝撃エネルギー管理方法及びシステムが提供される。これらの方法及びシステムは、上述した発泡体や他の従来のエネルギー管理システムの制限に対処するように設計されている。
【0029】
本発明によれば、衝撃エネルギー管理方法は、身体(または物体。以下では主に身体と記すが、本発明は、身体以外の物体にも同様に適用できる)に与えられた衝撃による損傷から身体を保護するために提供されるものであり、次のステップを含む。
(a)保護すべき身体の一部を覆って(または該一部の上に)保護構造を配置するステップ。この保護構造は、該保護構造を介して身体に伝達される衝撃の力を低減することができる。
(b)衝撃の初期段階(または初期段階の衝撃)に応答して変形(へこみや曲がりなどの変形)に抗し、衝撃の初期段階後は衝撃に屈して変形(へこみや曲がりなどの変形)する第1の衝撃吸収メカニズム(第1の衝撃吸収機構ともいう)を保護構造に提供するステップ。
(c)衝撃の初期段階後は、身体に伝達される衝撃力が、衝撃の残り全部にわたってほぼ一定のままであるように動作する第2の衝撃吸収メカニズム(第2の衝撃吸収機構ともいう)を保護構造に提供するステップ。
【0030】
本発明の例示的な1実施形態によれば、保護構造は、1つ以上の衝撃吸収圧縮可能セル(セルとは気泡や細かく仕切られた空間などを意味する)を含む。この保護構造は、単独の場合もあれば、他の衝撃吸収材料及び/または層と組み合わされる場合もある。各々のセルは、少なくとも1つのオリフィス(開口部)を有する流体で満たされた内部チャンバー(室)を画定する熱可塑性材料の薄肉(薄壁)筐体(または薄肉容器)の形態とされている。各セルは、衝撃の初期段階または早期の段階の間、各セルに加えられる衝撃に抗し、その後、オリフィスを通して流体を排出することによって、セルの内部チャンバー内の流体による衝撃の残りの管理を可能にするために、意図的に(衝撃力に屈して)変形(たとえばへこむなど)するように構成されている。各セルは、さらに、その元の形状に復帰するように構成されており、オリフィスは、セルの内部チャンバーに流体を急速に補給(充填)できるように構成されており、これによって、衝撃を受けた後、セルは、さらなる衝撃を受け入れてそれを減衰させる準備ができる。
【0031】
本発明の好適な実施形態では、セルは、ほぼ円形で対称形をなす円盤形状であり、やや垂直方向に配向した側壁が設けられている。側壁の厚さは、セルに対する衝撃の初期段階または早期の段階における(へこみや折れ曲がりなどの)変形に抵抗できるような厚さであり、かつ、(衝撃の初期段階の)後で、内側及び/または外側に曲がって、セル内の流体がオリフィスを通って流れ出ることによって衝撃の残りを管理できるような厚さである。セルを製作する材料、セルの種々の壁部の厚み、セルの形状、セルに収容される流体内容物または他の物質や材料、排出用オリフィスの大きさ、構成(構造)、配置、及び数などのセルの特性を注意深く選択することによって、広範囲の衝撃エネルギーにわたって衝撃に対する最適な応答を提供するように、セルをカスタマイズすることができる。
【0032】
保護用の圧縮可能なセル構造の種々の代替実施形態が開示される。好適な1実施形態における身体を衝撃から保護するための保護構造は、比較的柔軟な材料からなる内部層を有し、該保護構造の両側の面の間に延在する隔置された複数の開口と、対応する複数の保護ユニット(保護装置)を有する。それぞれの保護ユニットは、薄肉で、(へこみや折れ曲がりなどの)変形が可能な流体密封式の筐体(または密閉箱)を有し、該筐体は、該筐体を満たすある容量の流体を含み、該筐体の壁には、該保護構造に対する衝撃に応答して、流体の排出に抵抗しつつも選択されたレート(流量)で該流体を該筐体から排出する少なくとも1つのオリフィスがある。複数の保護ユニットは、第1の層の一方の面から突き出している該筐体の対応する第1のセグメントが中間層を共に形成するように、複数の開口内に受容(または収容)される。内部層上の表面と各保護ユニット(または各保護ユニット上の表面)が協働することによって、内部層内の対応する開口内に各保護ユニットが保持される。
【0033】
当業者であれば、後述する例示的な実施形態の詳細な説明及び添付の図面から、本発明の上記の及び他の目的、特徴及び利点をより良く理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】衝撃吸収材料について、該材料によって伝達された力を時間の関数として示す、典型的な力/時間曲線である。
【図2】発泡体材料に加えられた衝撃に対して「柔らか」過ぎる該発泡体材料についての力/時間曲線である。
【図3】発泡体材料に加えられた所与の衝撃(すなわち、実験1)に対して「堅」過ぎる該発泡体材料についての一連の力/時間曲線である。
【図4】異なる衝撃エネルギーに対する所与の発泡体の性能の変化を例示する該所与の発泡体についての2つの力/時間曲線を示す。
【図5】ある発泡体材料についての一連の力/時間曲線であり、衝撃が繰り返された結果、該発泡体の性能が低下することを示している。
【図6】本発明に従って具現化された圧縮可能なセルの部分断面側面図である。
【図7】図6のセルの上面図であり、該セルのほぼ円形の対称形状及び構造を示す。
【図8】図6に示すようなセルについての力/時間曲線であり、ほぼ台形で平坦な力応答を生じさせるためにセルをどのようにカスタマイズできるかを例示している。
【図9】図6に示すようなセルについての2つの力/時間曲線を示し、2つの異なる衝撃エネルギーに対するセルの応答を例示している。
【図10】受け皿形状を有し、初期の時点で作動する抵抗メカニズムを有しない圧縮可能なセルについての力/時間曲線を示す。
【図11】ふいご状(または、蛇腹状)の側壁を有し、初期の時点で作動する抵抗メカニズムを有しない圧縮可能なセルについての力/時間曲線を示す。
【図12】本発明に従って具現化された好適なセルの断面及び幾何学(形状)の細部を示す略図である。
【図13】本発明に潜在的に適した他のセル形状の断面を示す略図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の部分断面側面図であり、初期の時点で抵抗するメカニズム(衝撃の初期の段階において衝撃に抗するように動作するメカニズム)が、セル内部に配置された弾性的に(へこみや折れ曲がりなどの)変形が可能なリングから構成されている。
【図15】本発明の第3の実施形態の部分断面側面図であり、図6に示すようなセルが、ショック吸収応答(または緩衝応答)、セルの耐久性、並びに該セルを含む保護構造の快適度を改善するために、発泡体のベースプレートに結合されている。
【図16】本発明の第4の実施形態の側面図であり、図6に示すようなセルが、別の類似の構成のセルと組み合わされている。
【図17】図6、図14、図15、または図16に示すようなセルからなる複数のセルが、外殻(外側シェル)と内部層を有する多層化された保護構造の中間層を形成するように並んで配置されている様子を示す。
【図18】図16に類似するが、2つの変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能な要素を具備する複合保護構造からなる本発明の第5の実施形態を示す。
【図19】図18に示す構造をヘルメットなどの多層構造中に複数個組み込んだ構造を示す。
【図19A】図19のライン19A−19Aに沿って切り取った拡大断面図である。
【図19B】図19のライン19B−19Bに沿って切り取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
例示的な実施形態の詳細な説明
本発明に従って具現化された衝撃を吸収する圧縮可能な保護ユニットすなわち保護セル10を図6及び図7に示す。
【0036】
図6及び図7の例示的な実施形態では、セル10は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)または熱可塑性エラストマー(TPE)などの熱可塑性材料から形成され、上部壁14a、底部壁14b、及び底部壁14bを貫通するオリフィス16を有する薄肉(薄壁)の中空筐体(密閉容器)12として形成される。セル10の側壁18は、やや垂直方向に配向しており、これによって、側壁は、セル10への衝撃に対して初期の時点において抵抗を示すが、その後、戦略的に外側に曲がって、セル10内の流体(この例では空気)が、空気流の矢印20によって示されるように、オリフィス16を通って流れ出ることによって、衝撃の残りを管理(または制御)できるようにする。オリフィス16を通る空気の再充填(再補給)と相まって、セル10が製造される熱可塑性材料の弾性特性により、セル10は、衝撃を受けた後に元の形状に素早く復帰することができる。
【0037】
図7は、セル10の上面図であり、セル10の概ね円形で対称性のある円盤形状と構造を示している。この概ね対称な形状のために、セル10に加えられる衝撃の場所に関係なく、かつ、セル10に対する衝撃の角度に関係なく、セル10は、一貫した応答を行うことができる。
【0038】
セル10の基本的な概念は、特に、従来の発泡体並びに他の類似のエネルギー管理材料及び構造にある制限に対処するものであり、エネルギー管理システムにこれまで利用されていた他の空気冷凍システム(または給気システム)とは異なる。第1に、セル10は、複数のカスタマイズオプションを提供し、このオプションには、セルが製作される熱可塑性材料の特性、セルの壁の厚み、セルの形状、セルの流体内容物、排出用オリフィス(複数の場合がある)の大きさ、構成(構造)、配置(位置)及び数の選択及び変更が含まれる。これらの特性を、他の特性と互いに連携させながら注意深く選択し、調整することによって、セル10の機能をカスタマイズして、従来の発泡体や他のシステムによってこれまで可能であったものより頑強な機能の範囲を確保することができる。これらのいくつかの特性を注意深く較正することによって、当業者は、セル10が適用される特定の用途に基づいて最適な組み合わせを決定することができる。
【0039】
第2に、セル10は、独自の方法で衝撃エネルギーを管理(または制御)するように機能する。所与の速度(v)で移動している所与の質量(m)の物体の場合に、その物体のインパルス(または力積または衝撃)、または、力/時間曲線の下の面積は同じであるということが上記から想起されよう。しかしながら、衝撃吸収セル10がそのインパルスを管理するやり方によって、力/時間曲線のプロファイル(形状)が決まる。最適な発泡体でさえ、釣鐘形またはこぶ状の力/時間曲線を生じることを想起されたい。しかしながら、セル10は、同じインパルスを発泡体とは異なる方法で管理することを可能にする。釣鐘形またはこぶ状の曲線とは対照的に、セル10は、主としてその初期の時点で抵抗するメカニズム(以下、初期抵抗メカニズムともいう)のために、力/時間曲線が、平坦部まで急速に立ち上がるほぼ台形形状になるようにインパルスを管理し、その後、主として流体排出メカニズムのために、力/時間曲線が、インパルスがゼロに戻る前にインパルスの残りの大部分を通じてかなり広い平坦部を示すようにインパルスを管理する。したがって、セル10は、セル10の力/時間曲線が実際に「平坦化」されるようにインパルスを管理することによって、セル10が伝達する力のピーク値を小さくすることができる。本発明のセル10によって生じるタイプの平坦化された力/時間曲線の1例を図8に示す。
【0040】
通常の釣鐘形の力/時間曲線が、ほぼ台形状及び平坦状になるようなやり方でこのインパルスを管理するために、上記のセル10の特性、すなわち、材料、壁厚(肉厚)、セルの形状、流体内容物、オリフィスの大きさ、構成(構造)、位置及び数が、所望の応答を生じるように互いに連携させられながら選択される。具体的には、これらの特性は、衝撃の初期部分において、最初に(すなわち初期の時点で)抵抗するメカニズム、たとえば、セル10の(へこみや曲がりなどの)変形が可能な側壁18が、図8の0〜0.005秒の時間期間である、急勾配で傾斜している力/時間曲線の初期の部分によって表されているように、物体の減速を開始させるように作用する。セル10の側壁18がつぶれて(またはへこみなどの変形をして)外側に曲がり始めると、衝撃は、オリフィス16を通ってセル10から排出される流体によって管理(または制御)される。これは、図8の0.005〜0.02秒の時間期間における曲線の平坦部によって表されている。
【0041】
セル10が衝撃エネルギーをより好適に管理できる主な理由の1つは、流体の排出により、セル10を発泡体よりも最適な距離まで「押さえ付ける」(縮ませる)ことができることにある。すなわち、ほとんどの場合、セル10の特定の壁厚に依存して、セル10の元の高さの90%を超えてセル10を簡単に圧縮することができる。この圧縮能力により、発泡体よりも長い距離及び時間にわたって衝撃を継続させることができる。さらに、セル10内の流体は、圧縮中に実質的に密度が高くならず、これによって、圧縮とともに徐々に密度が高くなってスパイク状の曲線部が生じる発泡体の場合よりも時間の経過及び距離の変化に対して抵抗力を一定にすることができる。セル10がより長い距離押え付けられ、かつ、密度がより一定であることによって、衝突物体への「軟着陸」を示す、より平坦な力/時間曲線が得られる。
【0042】
セル10のもう1つの主な利点は、異なる衝撃エネルギーレベルに適応する能力である。この利点は、一般に、圧縮下にある流体の特性から生じる。この場合、衝撃エネルギーが増大するにつれて、セル10の内部チャンバー12内の流体は、乱れが大きくなり、エネルギー衝撃がより小さいときに比べてオリフィス16中を流れにくくなる。したがって、流体は、実際には、衝撃エネルギーがより小さいときにはより柔らかな挙動を示すのに対して、衝撃エネルギーが高いときにはより堅い(または硬質の)メカニズムとして挙動する。かかる適応性により、異なる衝撃エネルギーレベルに対してより最適なエネルギー管理がもたらされる。セル10のこの適応性の一例を図9に示す。図9は、2つの異なる衝撃エネルギーレベルにおけるセル10などの圧縮可能なセル(圧縮性セル)についての力/時間曲線を示す。これらの曲線から、一方の曲線の方が衝撃エネルギー及びインパルス(力積)が大きいにもかかわらず、2つの衝撃の力のピーク値はほぼ同じであることが明らかである。図9の曲線と図4に示す2つの異なる衝撃エネルギーレベルにおける単一の発泡体についての曲線との比較から明らかなように、この適応性によって、発泡体に対する価値ある利点がもたらされる。
【0043】
最後に、セル10は、発泡体よりもすぐれた耐久性を有する可能性がある。セル10用に選択された材料に依存して、及び、後述の図13、図14、図16の実施形態に関して説明するような、セル10を相補的なエネルギー管理コンポーネントと組み合わせる可能性も含めて、セル10は、衝撃が繰り返された後でさえも機能をほとんどまたは全く低下させることなく一貫した衝撃吸収性能を示すことができる。
【0044】
上述した独自のインパルス管理特性を発揮するために、上述したセル10の重要な特性は、任意の個別の設計において最適化されることに留意することが重要である。セル10の初期抵抗メカニズム、たとえば、変形可能な側壁18が、堅すぎる場合には、セル10は、高密度の発泡体に類似した挙動をするだろう。一方、初期抵抗メカニズム(たとえば、側壁18)が柔らかすぎる場合には、セル10は、低密度の発泡体に類似した挙動をするだろう。流体がオリフィス16から適切に排出されない場合は、セル10は初期の衝撃(衝撃の初期段階)の後において適切に応答しないだろう。たとえば、オリフィス16が大きすぎる場合には、空気は排出(流出)中に抵抗を与えず、セル10は柔らかな発泡体に類似した挙動をする。一方、オリフィス16が小さすぎる場合には、空気は閉じこめられて(または捕捉されて)、バネのように挙動し、したがって、減衰効果とは逆の好ましくない跳ね返り効果をもたらす。
【0045】
流体が充填された中空のキャビティまたは空気チャンバーの全てが、上述した独自のやり方でエネルギーを管理するわけではないことに留意することも重要である。エネルギー管理システムとして空気を使用するというやり方は広く利用されているが、他の形態では制限を受ける。初期に抵抗するメカニズムを持たない2つの他のタイプの空気充填セルについての力/時間曲線を図10及び図11に示す。図10は、初期に抵抗するメカニズムを持たない、薄い円盤状のもの(すなわちディスク)または空飛ぶ円盤の形態及び形状をなす排出(または排気)式の圧縮可能なセルに対応する。図11は、初期に抵抗するメカニズムを持たない、蛇腹状または波形状(すなわち波をうった形状)の側壁を有する排出(または排気)式の圧縮可能セルに対応する。
【0046】
図10及び図11に示された力/時間曲線を有するセルは、曲線が力の高いピーク値に向かって急傾斜するまでの徐々に増加する曲線の初期の部分によって明らかにされているように、初期の段階において衝撃に対して十分な抵抗をもたらすことができない。これらの曲線は、比較的柔らかな発泡体についての曲線と類似しているように見える。空気の圧縮性(または圧縮率)を考慮すると、初期に抵抗するメカニズムがセルに組み込まれていない場合には、セルは、あまりに速く圧縮して、急速に立ち上がる平坦な台形形状の曲線をもたらすことはできないだろう。逆に、セルが密閉されて圧力をかけられると、セルは、あまりに堅くなり、エネルギーを適切に管理するのに十分な変形を生じない場合があり、この場合も、好ましくない跳ね返り効果を生じうる。あるいは、空気が、(比較的制約されたセル10の環境とは異なり)相互接続された圧縮可能なセルからなる広大な空気袋の網状構造に収容されているときには、衝撃を受けたときに、空気は、その空気袋を通って移動し、衝撃に対する抵抗をほとんど生じない場合がある。
【0047】
図6のセル10の好適な材料、壁厚(肉厚)、セルの形状及び大きさ、並びにオリフィスの大きさは、もちろん、セル10が使用される特定の用途、並びに、特定の保護構造で使用されるセルの数、及び、その構造の他の要素及び部品(コンポーネント)に依存することになる。上述したように、TPE材料は、セル10用の材料として特に適している。アーニテル(Arnitel(商標))及びサントプレーン(Santoprene(商標))のTPEは、セル10の所望の形状及び構造に容易に吹込成形することができ、かつ、優れた弾性及び耐久性を呈する2つの市販されているTPEである。セル10用に使用できる他の材料には、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)及び低密度のポリエチレン(LDPE)がある。
【0048】
図12は、本発明に従って具現化された好適な保護ユニットすなわちセル10の断面図であり、幾何学的な細部と寸法の詳細を示す略図である。好適なセルの断面は、図12の太めすなわち厚めの線で表されている。図12のセル10は、中心軸Xに関して対称であるのが好ましく、これによって、軸Xに垂直な平面に沿ったセル10のどの断面も円を形成するようにする。上述したように、これは、セル10の応答が、衝撃の位置及び角度に関係なく同じになるのを確実にするのに役立つ。たとえば、図12に示すように、セル10が任意の直径の側面で断面化されると、セルのエッジ(端部)は特定のパターンをなすように配列した1組の特定のポイントを通る対称形状を形成する。これらのポイントは、図12においてA、A’、B、B’、C、C’で表記されており、セル10のエッジが丸くされている場合には円形とすることができる。このパターンでは、ポイントBは、AとCの間でこれらのポイントから等距離にあり、ポイントB’は、A’とC’との間でこれらのポイントから等距離にある。線ACとABのなす角度は0度より大きく45度より小さい。線CAとCB、線A’C’とA’B’、線C’A’とC’B’がそれぞれなす角度についても同じことがいえる。この要件を満たし、かつ、本発明に従うセル10に使用するのに潜在的に適する他のセル断面形状が、図12において、比較的薄く細い線で表されている。
【0049】
図13は、本発明に従うセル10に使用するのに潜在的に適した他の断面形状を示す。
【0050】
上述したように、セル10の具体的な形状及び寸法は、ある程度、該セルが適用される個々の用途に依存する。保護構造に使用することが意図されている図12のセル10のようなセル(このセルは、複数の同一のセル10とともに、図17に示され、かつ図17に関連して後述するようなセルであって、かつ、保護用ヘッドギア(保護用のかぶり物)として使用するための形状及び構造を有する)は、以下の寸法及びその他の細目を有する場合がある。図12のセル10の高さhは約1.0インチ(1インチは約2.54cm)であり、その上部壁と底部壁の直径d1は約1.75インチであり、その中間部の直径d2は約2.00インチである。セル10の材料はTPUであるが、TPEとすることもできる。セルの筐体(容器)12の壁厚tは、約1.0〜約3.00mmの範囲とすることができ、典型的な厚さ(t)は約2.00mmである。オリフィス16(図6参照)の直径は、約1.0mm〜約5.00mmの範囲とすることができ、典型的なオリフィス直径は約2.5mmである。全ての値は相互に関連しているので、これらの寸法及び/または角度のいずれか1つを変化させると、他の寸法及び/または角度をそれに応じて調整することが必要となる場合があることが理解されよう。所与の用途に対する最適な値の組み合わせは、過度の実験をすることなく、標本試験によって容易に決定することができる。
【0051】
図14は、前述したセル10と構造が似ている圧縮可能な保護ユニットすなわち保護セル50の形態をなす本発明の1代替実施形態を示す。しかしながら、セル50では、初期抵抗メカニズムは、セル50の筐体52から分離されているが、筐体52と協働して所望の初期抵抗をもたらすコンポーネント(部品)によって提供される。この例示的な実施形態では、初期の時点で(衝撃に対して)抵抗するコンポーネントは、セル50の筐体52内に配置された弾性のあるプラスチックリング(または、弾性を有する可塑性リング)62から構成される。セル50は概ね垂直な側壁58を有しており、これらの側壁は、比較的柔軟なものとすることができるので、衝撃に応答する(へこみなどの)変形に対してほとんど抵抗を生じない。しかしながら、内部リング62は、セル10内の側壁18とほとんど同じように、衝撃の初期段階の間(へこみなどの)変形に抵抗し、その後、戦略的に内側に曲がってへこみ、これによって、セル50を少なくとも部分的に満たし、かつ、セル50のオリフィス56を通って排出される流体が、衝撃の残りに対処するためのメカニズムとして機能できるように設計されている。セル10と同様に、セル50及びその内部リング62の特性を、広範囲の衝撃エネルギーに応答して、ほぼ台形形状の(上部が)平坦な力/時間曲線を生成するように設計することができる。
【0052】
リング62を、セル50の筐体52から分離して作製し、かつ、底部壁54を固定する前に、セルの筐体52の内部に挿入することができる。リング62を、それの上部端及び底部端において筐体52の内部表面に接合(または接着)することができる。初期の時点で抵抗するコンポーネントもまた、セル50の周辺のセルの筐体52の外部に配置できることが理解されよう。
【0053】
図15は、図6のセル10などの圧縮可能なセルを、従来の発泡体のベースプレート70と組み合わせた、本発明の別の実施形態を示す。発泡体のベースプレート70を、セル10に、接合(または接着)するか、溶接するか、または、他のやり方で固定することができ、また、ベースプレート70は、流体が、衝撃を受けている間はセル10から自由に流れ出ることができるようにし、かつ、衝撃の終わりにセル10の中に戻ることができるようにする中央開口部72を有することができる。発泡体のベースプレート70は、衝撃を減衰させ、吸収する、組み合わされたセル10の能力を改善し、及び、セル10の耐久性、すなわち、何回もの衝撃に対して最小限の損傷及び性能の低下で持ちこたえる能力を高め、それゆえ、該セルを組み込んでいるヘルメット及び他の保護構造の快適度を高める。
【0054】
図16は、保護ユニットすなわち保護構造100が、図6のセル10または図14のセル50などの圧縮可能なセルが共通のベースプレート102の両側に取り付けられた一対の圧縮可能なセルを含む、本発明のさらに別の実施形態を示す。上部のセル10または50は、衝撃を受けた際に下方に排出する(下向きに排出口(流出口)がくる)ように配向乃至配置されている。下部のセル10または50は、衝撃を受けた際に上方に排出する(上向きに排出口(流出口)がくる)ように配向乃至配置されている。発泡体または他のプラスチック(または可塑性材料)とすることができるベースプレート102には、いくつかの逆方向に延びる放射状の(または半径方向に沿った)通路104が設けられており、この通路は、衝撃を受けたときに流体をセル10または50から横方向に排出できるようにし、及び、衝撃の後に流体がセル10または50へと横方向に戻ることができるようにする。図16のセル10または50は、互いに同じ大きさであるものとして示されているが、空間を節約し、及び、構造をより小さくするために、それらを異なる大きさにする(たとえば、下部のセル10または50を上部のセル10または50よりも小さくする)ことも可能であることが理解されよう。
【0055】
図17は、衝撃による損傷から身体Bを保護するための多層保護シェル構造200の1実施形態の断面図である。この保護構造200は、図6のセル10または図14のセル50などの圧縮可能な保護ユニットすなわち保護セルが、外側シェル(殻)204と内部層206の間の中間層202をなすように並んで(または並列に)配置された複数の圧縮可能な保護ユニットすなわち保護セルを備える。外側シェル204は、衝撃に応答して局部的にかつ放射状(または半径方向)に変形する比較的薄く、比較的堅いプラスチック層とすることができる。内部層206は、従来の発泡体とすることができる。セル10または50を、外側シェル204の内側表面及び/または内部層206の外側表面に接着(または接合)することができ、または、着脱可能な留め具(不図示)によって該内側表面または外側表面に半永久的に固定することができる。図15の実施形態における発泡体のベースプレート70と同様の内部層206に、衝撃を受けている間、セル10または50から排出される流体が、内部層206を通って身体Bまで移動できるようにする複数の開口部208を設けることができる。セル10または50の弾性のために、外側シェル204は、衝撃の半径(または放射)方向成分(この成分は、セル10または50及び内部層206によって効果的に吸収されることになる)に応じて変形するだけでなく、衝撃の接線方向成分に応じて内部層206に対してせん断変形し、これによって該成分もまた吸収されるであろうことが理解されよう。
【0056】
図17の層構造200は、衝撃に関連する激しい振動や他の傷害から保護用のかぶり物(以下、保護用ヘッドギアという)を着用している者の頭を保護するための該保護用ヘッドギアの構成に使用するのに特に適している。層構造200の具体的な構造及び実装例には、安全帽、オートバイ用ヘルメット、自転車用ヘルメット、スキー帽(またはスキー用ヘルメット)、ラクロス用ヘルメット、ホッケー用ヘルメット、フットボール用ヘルメット、バッティング用ヘルメット、ロッククライミングや登山用のかぶり物、ボクサー用のヘッドギアなどがある。他の用途には、建設現場で使用されるヘルメット、国防及び軍事用途で使用されるヘルメット、及び、地下活動のために使用されるヘルメットなどがある。
【0057】
セル10及び50、並びに、層構造200を、他の様々な衝撃吸収用途及びショック減衰用途に使用するために適応させることができることも理解されよう。
【0058】
もちろん、本願出願人の基本的なセル構造を、図15に示すような発泡体以外の衝撃吸収材料、または別の図16のセルに類似のセルと組み合わせて、本発明にしたがって衝撃エネルギー管理を提供する保護ユニットを形成することができる。図18は、背中合わせに接続され、かつ流体が互いを自由に行き来できるように接続されて複合保護ユニットを形成するセル222とふいご状(または蛇腹状)カプセル224からなる保護構造すなわち保護ユニット220を示す。
【0059】
セル222は、上述したセル10及び50と類似の変形可能な特性を有する、端壁すなわち上部壁222a及び背面対向接続式の截頭円錐形側壁222bを備える。下側の側壁222bの下部端は、セルの底部にある大きな開口226を画定する環状の底部壁すなわちフランジ222cに接続されている。
【0060】
セル222は、該セルの上部壁または側壁に少なくとも1つの排出用オリフィス230を有する。図示のセル222は、上部壁222aにバルブ(弁)の形態をなすそのような2つのオリフィスを有する。
【0061】
一方、ふいご状カプセル224は、底部壁224aと従来の回旋状の側壁224bから構成され、該側壁224bの上部エッジは、ふいご状カプセルの上部にある大きな開口232を囲む環状の上部壁すなわちフランジ224cに接続されている。図示のカプセルは2つの回旋部(または湾曲部)のみを有しているが、もちろん、それより多くの回旋部を有することもできる。壁すなわちフランジ224cは、壁すなわちフランジ220cと大きさが同じであり、このため、図18の228に示すように、これら2つの壁すなわちフランジを、向かい合って接触するように配置して、共に高周波溶接または接着をすることができる。もちろん、所与の用途において、セルとふいご状カプセルの両方の対向する壁すなわちフランジをリングの対向する面(両側の面)に固定することができる。いずれの場合でも、セル222及びカプセル224内の空間は、流体が自由に行き来できるように連通しており、したがって、オリフィス230を除き流体密封である単一の比較的大きなチャンバーを画定する。そういう訳で、図18の236における破線で示すように、排出用オリフィス(複数の場合あり)を、セル222の壁ではなく、または、該壁に加えて、ふいご状カプセルの壁に設けることができ、または、同図の237における破線で示すように、フランジ222cと224cの間に放射状の流路(複数の場合あり)として形成することができる。
【0062】
ふいご状カプセル224は、基本的なセル構造にかなりの圧縮可能な容積を追加する。したがって、ふいご状カプセル224は、衝撃を減衰させ及び吸収するための構造全体の能力を高める。具体的には、ふいご状カプセル224は、たとえば、図8に関して上述した力/時間曲線の平坦な部分の持続期間を長くする。いくつかの用途では、この曲線をさらに整形し、保護構造全体の快適性能を改善するために、たとえば、図15の発泡体プレート70に類似の発泡体の圧縮可能な弾性のボディ(本体または筐体)を、図18の239において破線で示すようにふいご状カプセル224内に設けることができる。ボディ239を、ボディ239の1つの面に固定された薄い網状組織(たとえば、メッシュ(網)や薄膜)239aによって支持することができる。この薄い網状組織239aは、フランジ222cと224cが高周波溶接されるときに、または、他の方法で互いに固定されるときに、それらのフランジの間に捕捉される張り出した縁部を有する。
【0063】
個々の用途に依存して、排出用オリフィス(複数の場合あり)230(及び/または236)は種々の特性を有することができる。たとえば、1つのケースでは、そのような2つのオリフィスを、保護ユニット220が、異なる流量で吸い込み(流入)と排出(流出)をすることができるようにする、異なる流量制限器を組み込んだ2つの対向する逆止め弁として実施することができる。したがって、それらのオリフィスは、該構造が衝撃を受けたときの力/時間曲線の平坦部の持続時間と、そのような衝撃後の回復速度を制御することができる。別の用途では、該構造内の圧力が選択された大きさ(量)を超えたときに開くバルブ(弁)の形態で排出用オリフィスを設けるのが望ましい場合がある。このように、ユニット220は、空気圧が該構造内で上がっている間、空気を一時的に閉じ込め、その後、バルブが開いたときにその空気を放出する。各々が各々自体の圧力レベル設定値を有するそのようなバルブを複数使用することによって、該構造からの排出量(または排出速度)を、複数の衝撃エネルギーレベルにおいて最適化することができる。
【0064】
また、図18のセル222とふいご状カプセル224は、ほぼ同じ断面積または直径を有するものとして示されているが、ある特定の用途に対して所望の力/時間曲線形状を得るために、該カプセルを該セルよりも大きくまたは小さくすること、及び/または、該セルとは異なる材料または壁厚のカプセルを作製することが望ましい場合があり、及び/または、選択されたバネ定数をカプセルに与えるのが望ましい場合があり、最終的な目的は、該所与の用途に可能なかぎり適合した保護ユニット全体すなわち保護構造全体220を作り上げることである。
【0065】
図18のユニット220が特に適している1つの特定の用途は、人体を衝撃に関連する傷害から保護するための多層保護シェル(殻)構造の一部として使用することである。図19には、そのような多層構造の部分断面図が240で全体的に示されており、該多層構造は、たとえば運動選手または労働者などの着用者の頭部Hを保護するために使用することができる。
【0066】
図19に示すように、構造240は、衝撃に応答して局部的にかつ半径方向に変形する比較的堅いプラスチック層とすることができる外側シェル242と、それより柔らかく剛性が低い材料とすることができる内部層244から構成され、これらはすべて、本出願人の上記出願に詳しく記載されている。構造240はまた、246で全体的に示されている第3の中間の層を含み、この層は、図18に示す複数の圧縮可能な保護ユニット220のセル222を備える。構造220は、すべての構造のふいご状カプセル224が、内部層244の下に選択された距離だけ突き出して、整合的な(または整合している)内部ライナー250を共に形成するように、内部層244内に形成された穴248に並んで(または隣り合って)配置されている。換言すれば、各保護ユニット220の1つのセグメントは、セル222から構成され、内部層244の一方の面から外側層242の方へ突き出し、各保護ユニットの別のセグメントは、層244の反対側の他方の面から突き出して内部ライナー250の一部を形成している。
【0067】
様々な手段を用いて、構造220を多層構造240内の層224と取り外し可能に相互接続できるようにして、構造220が使用中に損傷を受けた場合に構造220を簡単に交換できるようにし、または、異なる特性を有する構造220による代用を容易にすることが好ましい。たとえば、層244内の各開口248のエッジに放射状の切り欠きまたはスリット(切り込み)248aを形成して、開口の縁が幾分柔軟で弾力を有するようにすることができる。複合保護ユニット220は各開口248に下から挿入される。各ユニットのフランジ222c、224cは、該ユニットの上部が外側シェル242に接触するときに、図19A及び19Bに示すように層244の上にはめ込まれ、これによって、層244は、図19Bに最もよく示すように、該ユニットのフランジとふいご状カプセルの第1の回旋状部(または最初の回旋状部)の間に捕捉される。代替的には、切り欠きを保護ユニットのフランジ222c、224cに設けて同じ効果を達成することができる。同じ手段を用いて、保護ユニット10、50、及び100を支持層244に取り外し可能に接続して、該ユニットの対応するセグメントを層244から外側層242の方へと突き出させ、これによって、該構造の中間層246を形成するようにすることができる。保護ユニット100及び220の場合には、これらのユニットの対向する端部セグメントが支持層の反対側の面から突き出してライナー250に類似の内部ライナーを形成する。
【0068】
構造220のオリフィス(複数の場合がある)230をセル222の上部壁222aに形成された溝256に配置して、空気が、自由にオリフィス230へと流れ、及びオリフィス230から構造240の開放端部へと流れ、または、穴を通って内部層244に流れるようするのが好ましい。たとえば、いくつかの用途では、スリットまたは切り欠き248aをフランジ222c、224cのエッジ(または端部)を越えて延在させて、図19Aに248bで示すような穴を設け、間にある層246内の空気を、たとえば、着用者の頭部Hを冷やすために、内部層244の下側に排出できるようにするのが望ましい場合がある。
【0069】
セル222が図示のように配置されて中間層246が形成されると、ふいご状カプセル224の底部壁224aはすべて、着用者の頭部Hに係合する位置にくる。事実上、ふいご状カプセルは、着用者の頭部Hの輪郭にぴったりと合う、多層構造240の動的な内部ライナーを形成する。
【0070】
換言すれば、多層構造240が着用者の頭部で静止しているときは、各保護構造220内の圧力は比較的小さく、各ふいご状カプセルは、必要に応じて、着用者の頭部の下側の領域にぴったりと合うように曲がることができる。したがって、ふいご状カプセルは、全体として、着用者の頭部に隣接する比較的柔らかく快適な内部ライナーを提供する。一方、構造全体240が衝撃を受けると、各構造220内の圧力が、外側シェル242に対する衝撃の場所及び激しさに依存する量だけ増加する。こうして、該カプセルは、衝撃を和らげるように作用し、したがって、着用者の頭部を傷害から保護する。
【0071】
要するに、ふいご状カプセル224は、該構造240のための動的な内部ライナーを効果的に形成する。これらのカプセルは、着用者の頭部に合うように広い範囲にわたって自己調整可能であるので、非常に広範囲の頭部のサイズに対して適合性及び快適性をもたらす。そして、衝撃を受けている間は、上述したように、該カプセルは、圧力を受け(または加圧され)て、衝撃エネルギーの管理を支援するために動的に機能する。
【0072】
上述したように、1つずつ保護ユニットを交換する代わりに、保護ユニット220がすでに設置されている内部層244を、完全なサブシステムとして外側シェル242内に挿入し、並びに、層242及び244の対向する外側エッジにおいて、たとえば、スナップファスナー、マジックテープ(または面ファスナー)などの適切な固定手段によって外側シェルに取り外し可能に接続できるように、もしくは、外側シェル242及びセル222の端壁222aの対向する表面において嵌合ファスナー(メーティングファスナー)260a、260bによって外側シェルに取り外し可能に接続できるように、構造240を設計することができる。
【0073】
上記したように、前述の種々の衝撃エネルギー管理構造のセル(およびふいご状カプセル)を従来のブロー成形プロセスを用いて形成することができる。しかしながら、いくつかの用途では、セルの壁厚をより精密に制御し、及び、該壁厚を選択的にカスタマイズすることが望ましい場合がある。たとえば、ある所与の用途では、選択した初期変形特性を達成するために、端壁よりも厚いかもしくは薄い変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能な側壁、または、側壁の厚みが側壁の高さに沿って変化する変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能な側壁をセル10、50、または222に設けるのが望ましい場合がある。
【0074】
私は、そのような精密公差は、たとえば、米国特許第3,247,548及び第4,919,608に開示されたタイプの特別な変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能な金型コアを有するモールド(金型などの型)を使用してセル(及びふいご状カプセル)を射出成形することによって達成できることを発見した。尚、これらの米国特許の内容は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。このタイプのモールドによれば、軸対称性を有する物品の成形が可能であるが、その直径は該物品の軸に沿って変化する場合がある。そのようなモールドには、物品の外部壁を形成する外側モールド(型)部、及び、物品の内部壁を形成する内部の変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)可能なコアが含まれる。成形処理が完了すると、内部コアを変形(へこみや折れ曲がりなどの変形)させて、内部コアを物品の内部から軸方向に分離することができる。そのようなモールドによれば、上述したように角度の付いた側壁を有するセルを形成することができ、該側壁の壁厚を正確に制御して本発明の目的を達成することができる。
【0075】
要約すると、我々が説明したものは、個々に選択及び調整することが可能で、かつ、新規なやり方で衝撃エネルギーを管理するために互いに協調して作用する要素及び特性の独自の組み合わせを有する保護ユニットすなわち保護構造である。具体的には、それらの構造は、以下の利点をもたらす。
(a)多くのカスタマイズオプション。
(b)異なる衝撃吸収メカニズムによって提供される段階的抵抗性(これによって、力曲線を整形し、力のピーク値を小さくすることができる)。
(c)圧縮に伴ってより大きく「押し付けられ」、かつ、圧縮による密度の増加を回避する(これは、力曲線の平坦化、及び、厚みを増すことなく力のピーク値を小さくすることにつながる)。
(d)様々な衝撃エネルギーレベルへの適応。
(e)発泡体に比べて優れた耐久性。
【0076】
特定の実施形態を参照して本発明を図示及び説明したが、当業者には、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲から逸脱することなく、説明された実施形態に対して様々な変更及び追加を行うことができることが理解されよう。たとえば、構造220について説明したオリフィス(複数の場合がある)を構造10及び50に用いることができること、及び、ふいご状カプセル2224を構造50に結合して複合保護ユニットを形成できること、が理解されよう。また、いくつかの用途では、保護ユニットの各々は、開口248に保持される、比較的長いふいご状カプセルのような単一の変形(へこみは折れ曲がりなどの変形)可能な構造を備え、これによって、該構造の対応する端部が、支持層244の両側の面から突き出るようにすることができる。すなわち、これらの構造は、中間層246と内部ライナー250の両方を形成する。当業者には、また、非常に多くの他のメカニズムを考案して、開示したセルが衝撃の初期段階の間(へこみや折れ曲がりなどの)変形に対して所望の抵抗を生じるようにするために、それらのメカニズムを用いることができるということが理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、当業者には明白でありうるこれらの及び他の変更をカバーすることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃から物体を保護するための保護構造であって、
比較的柔軟な材料からなる内部層であって、該内部層の両側の面の間に延在する隔置された複数の開口を有する内部層と、
対応する複数の保護ユニットと、
前記内部層内の対応する開口に各保護ユニットを保持するために、前記内部層及び各保護ユニットの協働する表面
を備え、
各保護ユニットは、へこむことが可能な流体密封の筐体と、該筐体を満たすある容積の流体と、前記保護構造に対する衝撃に応答して、選択されたレートで前記筐体から流体の排出に抵抗しつつも該流体を排出する、該筐体の壁にある少なくとも1つのオリフィスを有し、前記複数の保護ユニットは、前記筐体の対応する第1のセグメントが、第1の層の一方の面から突き出して中間層を共に形成するように、前記複数の開口に受容されることからなる、保護構造。
【請求項2】
前記協働する表面は、前記複数の開口に前記複数の保護ユニットを取り外し可能に保持するように構成される、請求項1の保護構造。
【請求項3】
前記内部層に概ね平行に延在し、かつ、前記筐体の第1のセグメントに係合する比較的堅い(または比較的硬質の)外側層をさらに含む、請求項1の保護構造。
【請求項4】
前記第3の層は、ある一定の形状が付けられている外側シェルを構成し、
前記内部層及び中間層は、前記外側シェル内に嵌入するある一定の形状が付けられているサブシステムを共に形成し、
前記サブシステムを前記外側シェルに固定するための固定手段をさらに備える、請求項3の保護構造。
【請求項5】
各保護ユニットはまた、同じ保護ユニットの対応する第1の筐体セグメント(第1の筐体部分)から延びる第2の筐体セグメント(第2の筐体部分)を備え、該第2の筐体セグメントは、前記保護ユニットの全ての前記第2の筐体セグメントが前記保護構造の整合的な内部ライナーを共に形成するように、前記内部層の他方の面から突き出る、請求項1の保護構造。
【請求項6】
各保護ユニットの前記第2の筐体セグメントは、該保護ユニットの前記第1の筐体セグメントの延長部分である、請求項5の保護構造。
【請求項7】
各保護ユニットの前記第2の筐体セグメントは、該保護ユニットの前記第1の筐体セグメントの鏡像である、請求項5の保護構造。
【請求項8】
各保護ユニットの前記第2の筐体セグメントは、同じ保護ユニットの対応する第1の筐体セグメントに結合されたふいご状カプセルを備えて、放射状のフランジを有する複合ユニットを形成する(または、各保護ユニットの前記第2の筐体セグメントは、同じ保護ユニットの対応する第1の筐体セグメントに結合されて、放射状のフランジを有する複合ユニットを形成するふいご状カプセルを備える)、請求項5の保護構造。
【請求項9】
前記協働する表面は、前記放射状のフランジと、前記保護ユニットを収容する開口のエッジとによって構成される、請求項8の保護構造。
【請求項10】
各保護ユニットの前記ふいご状カプセル及び対応する第1のセグメントは、高周波溶接によって対応するフランジにおいて接合される、請求項8の保護構造。
【請求項11】
各保護ユニットの前記第1の筐体セグメントは、背中合わせに接続された一対のほぼ截頭円錐形の側壁を有し、該一対の側壁は鈍角をなし、前記側壁は、該保護ユニットの協働する表面から対応する第1の筐体セグメントの端壁まで延在する、請求項1の保護構造。
【請求項12】
各保護ユニットの第2の筐体セグメントは、同じ保護ユニットの対応する第1の筐体セグメントと流体連絡するふいご状カプセルを有する、請求項11の保護構造。
【請求項13】
前記ふいご状カプセルは圧縮可能な弾性のボディを含む、請求項12の保護構造。
【請求項14】
各保護ユニットの第1及び第2の筐体セグメントは同程度(または類似)の断面積を有する、請求項1の保護構造。
【請求項15】
各保護ユニットの第1及び第2の筐体セグメントはかなり異なる断面積を有する、請求項1の保護構造。
【請求項16】
各筐体は、変形(へこみや曲がりなどの変形)可能なモールドを用いて射出成形されて、その全体において高レベルの壁厚公差を有する、請求項1の保護構造。
【請求項17】
各筐体は、該筐体における位置と共に変化する高レベルの壁厚公差を有する、請求項1の保護構造。
【請求項18】
前記少なくとも1つのオリフィスはまた、前記筐体中に流体を流入させることよって、衝撃を受けた後に前記筐体をその変形していない構成に戻すことができるようにする、請求項1の保護構造。
【請求項19】
前記少なくとも1つのオリフィスは、ある設定値を有する排出弁を有し、これによって、前記筐体内の圧力が選択された大きさを超えているときのみ前記排出弁が開くようにする、請求項1の保護構造。
【請求項20】
前記少なくとも1つのオリフィスは、互いに異なる流量制限特性を有する第1の排出弁と流入弁を有し、これによって、前記筐体からの流出と該筐体への流入が異なる流量で行われる、請求項1の保護構造。
【請求項21】
前記第1の排出弁は、前記筐体内の圧力が選択された大きさを超えたときのみ開くようにするある設定値を有する、請求項20の保護構造。
【請求項22】
前記少なくとも1つのオリフィスはまた、前記第1の排出弁の設定値より大きな設定値を有する少なくとも1つの追加の排出弁を有し、これによって、前記第1の排出弁と前記少なくとも1つの追加の排出弁が、前記保護構造に対する異なるレベル(異なる強さ及び/または規模)の衝撃に応答して開くようにする、請求項21の保護構造。
【請求項23】
前記筐体は、TPUまたはTPE材料である、請求項1の保護構造。
【請求項24】
各保護ユニットの第1の筐体セグメントは、衝撃の初期段階に応答して変形(へこみなどの変形)に抗し、及び、衝撃の前記初期段階の後は変形(へこみなどの変形)して、該衝撃の残りを、対応する保護ユニットの前記少なくとも1つのオリフィスを通って排出される流体によって管理できるようにする側壁を有する、請求項1の保護構造。
【請求項25】
各筐体はほぼ軸対称の形状を有する、請求項1の保護構造。
【請求項26】
保護ユニットを作製する方法であって、
端壁を有するキャビティと、前記端壁から隔置された開口を囲む環状のフランジと、前記端壁と前記フランジの壁の間に延びる角度の付いた側壁と、コアの端壁を有する半径方向に変形(へこみなどの変形)可能なコアと、コアのフランジ壁と、前記コアの端壁とコアのフランジ壁との間に延びるコアの側壁とを画定する分割された外側モールド部分を含むモールドを形成するステップであって、前記角度の付いた側壁は、前記端壁の中央にある軸に関して対称であり、開口と、前記軸に沿って変化する直径を有し、前記コアの壁は、前記外側モールド部分の対応する壁よりも半径方向に幾分小さく、このため、前記コアが前記キャビティ内に変形していない状態で同軸で配置されたときに、前記コアの対応する壁と外側モールド部分がほぼ平行になり、それらの間に途切れない(または連続する)ギャップを画定する、ステップと、
溶融した熱可塑性材料で前記ギャップを満たすステップと、
前記熱可塑性材料を硬化できるようにするステップと、
前記コアの側壁の最大径が、前記開口の径よりもかなり小さくなるように前記コアを変形(へこみなどの変形)させ、及び、前記コアを、前記開口を通って前記外側モールド部分から軸方向に滑動させるステップと、
前記外側モールド部分を分割し、1組の熱可塑性材料を該モールド部分から分離して、前記衝撃エネルギー管理構造を、端壁、フランジ、及び側壁を有する薄肉筐体として具現化するステップであって、該側壁は、前記筐体と端壁とフランジとの間に延びる、ステップ
を含む方法。
【請求項27】
前記満たすステップの間または後に前記熱可塑性材料の壁に少なくとも1つの排出用オリフィスを形成する追加のステップを含む、請求項26の方法。
【請求項28】
前記外側モールド部分の側壁を、背中合わせにされて、選択された夾角(または開先角度)をなす第1と第2の截頭円錐形の壁として形成する追加のステップを含む、請求項26の方法。
【請求項29】
前記ギャップの幅が前記キャビティ内の位置に応じて変わるように、前記モールドを形成する追加のステップを含む、請求項26の方法。
【請求項30】
端壁と、該端壁からフランジへと延びる回旋状の側壁とを有するふいご状カプセルを形成するステップと、
前記カプセルのフランジを前記構造のフランジに結合して、複合ユニットを形成するステップ
という追加のステップを含む、請求項26の方法。
【請求項31】
前記結合するステップが、前記筐体とカプセルのフランジを共に高周波溶接することによって達成される、請求項30の方法。
【請求項1】
衝撃から物体を保護するための保護構造であって、
比較的柔軟な材料からなる内部層であって、該内部層の両側の面の間に延在する隔置された複数の開口を有する内部層と、
対応する複数の保護ユニットと、
前記内部層内の対応する開口に各保護ユニットを保持するために、前記内部層及び各保護ユニットの協働する表面
を備え、
各保護ユニットは、へこむことが可能な流体密封の筐体と、該筐体を満たすある容積の流体と、前記保護構造に対する衝撃に応答して、選択されたレートで前記筐体から流体の排出に抵抗しつつも該流体を排出する、該筐体の壁にある少なくとも1つのオリフィスを有し、前記複数の保護ユニットは、前記筐体の対応する第1のセグメントが、第1の層の一方の面から突き出して中間層を共に形成するように、前記複数の開口に受容されることからなる、保護構造。
【請求項2】
前記協働する表面は、前記複数の開口に前記複数の保護ユニットを取り外し可能に保持するように構成される、請求項1の保護構造。
【請求項3】
前記内部層に概ね平行に延在し、かつ、前記筐体の第1のセグメントに係合する比較的堅い(または比較的硬質の)外側層をさらに含む、請求項1の保護構造。
【請求項4】
前記第3の層は、ある一定の形状が付けられている外側シェルを構成し、
前記内部層及び中間層は、前記外側シェル内に嵌入するある一定の形状が付けられているサブシステムを共に形成し、
前記サブシステムを前記外側シェルに固定するための固定手段をさらに備える、請求項3の保護構造。
【請求項5】
各保護ユニットはまた、同じ保護ユニットの対応する第1の筐体セグメント(第1の筐体部分)から延びる第2の筐体セグメント(第2の筐体部分)を備え、該第2の筐体セグメントは、前記保護ユニットの全ての前記第2の筐体セグメントが前記保護構造の整合的な内部ライナーを共に形成するように、前記内部層の他方の面から突き出る、請求項1の保護構造。
【請求項6】
各保護ユニットの前記第2の筐体セグメントは、該保護ユニットの前記第1の筐体セグメントの延長部分である、請求項5の保護構造。
【請求項7】
各保護ユニットの前記第2の筐体セグメントは、該保護ユニットの前記第1の筐体セグメントの鏡像である、請求項5の保護構造。
【請求項8】
各保護ユニットの前記第2の筐体セグメントは、同じ保護ユニットの対応する第1の筐体セグメントに結合されたふいご状カプセルを備えて、放射状のフランジを有する複合ユニットを形成する(または、各保護ユニットの前記第2の筐体セグメントは、同じ保護ユニットの対応する第1の筐体セグメントに結合されて、放射状のフランジを有する複合ユニットを形成するふいご状カプセルを備える)、請求項5の保護構造。
【請求項9】
前記協働する表面は、前記放射状のフランジと、前記保護ユニットを収容する開口のエッジとによって構成される、請求項8の保護構造。
【請求項10】
各保護ユニットの前記ふいご状カプセル及び対応する第1のセグメントは、高周波溶接によって対応するフランジにおいて接合される、請求項8の保護構造。
【請求項11】
各保護ユニットの前記第1の筐体セグメントは、背中合わせに接続された一対のほぼ截頭円錐形の側壁を有し、該一対の側壁は鈍角をなし、前記側壁は、該保護ユニットの協働する表面から対応する第1の筐体セグメントの端壁まで延在する、請求項1の保護構造。
【請求項12】
各保護ユニットの第2の筐体セグメントは、同じ保護ユニットの対応する第1の筐体セグメントと流体連絡するふいご状カプセルを有する、請求項11の保護構造。
【請求項13】
前記ふいご状カプセルは圧縮可能な弾性のボディを含む、請求項12の保護構造。
【請求項14】
各保護ユニットの第1及び第2の筐体セグメントは同程度(または類似)の断面積を有する、請求項1の保護構造。
【請求項15】
各保護ユニットの第1及び第2の筐体セグメントはかなり異なる断面積を有する、請求項1の保護構造。
【請求項16】
各筐体は、変形(へこみや曲がりなどの変形)可能なモールドを用いて射出成形されて、その全体において高レベルの壁厚公差を有する、請求項1の保護構造。
【請求項17】
各筐体は、該筐体における位置と共に変化する高レベルの壁厚公差を有する、請求項1の保護構造。
【請求項18】
前記少なくとも1つのオリフィスはまた、前記筐体中に流体を流入させることよって、衝撃を受けた後に前記筐体をその変形していない構成に戻すことができるようにする、請求項1の保護構造。
【請求項19】
前記少なくとも1つのオリフィスは、ある設定値を有する排出弁を有し、これによって、前記筐体内の圧力が選択された大きさを超えているときのみ前記排出弁が開くようにする、請求項1の保護構造。
【請求項20】
前記少なくとも1つのオリフィスは、互いに異なる流量制限特性を有する第1の排出弁と流入弁を有し、これによって、前記筐体からの流出と該筐体への流入が異なる流量で行われる、請求項1の保護構造。
【請求項21】
前記第1の排出弁は、前記筐体内の圧力が選択された大きさを超えたときのみ開くようにするある設定値を有する、請求項20の保護構造。
【請求項22】
前記少なくとも1つのオリフィスはまた、前記第1の排出弁の設定値より大きな設定値を有する少なくとも1つの追加の排出弁を有し、これによって、前記第1の排出弁と前記少なくとも1つの追加の排出弁が、前記保護構造に対する異なるレベル(異なる強さ及び/または規模)の衝撃に応答して開くようにする、請求項21の保護構造。
【請求項23】
前記筐体は、TPUまたはTPE材料である、請求項1の保護構造。
【請求項24】
各保護ユニットの第1の筐体セグメントは、衝撃の初期段階に応答して変形(へこみなどの変形)に抗し、及び、衝撃の前記初期段階の後は変形(へこみなどの変形)して、該衝撃の残りを、対応する保護ユニットの前記少なくとも1つのオリフィスを通って排出される流体によって管理できるようにする側壁を有する、請求項1の保護構造。
【請求項25】
各筐体はほぼ軸対称の形状を有する、請求項1の保護構造。
【請求項26】
保護ユニットを作製する方法であって、
端壁を有するキャビティと、前記端壁から隔置された開口を囲む環状のフランジと、前記端壁と前記フランジの壁の間に延びる角度の付いた側壁と、コアの端壁を有する半径方向に変形(へこみなどの変形)可能なコアと、コアのフランジ壁と、前記コアの端壁とコアのフランジ壁との間に延びるコアの側壁とを画定する分割された外側モールド部分を含むモールドを形成するステップであって、前記角度の付いた側壁は、前記端壁の中央にある軸に関して対称であり、開口と、前記軸に沿って変化する直径を有し、前記コアの壁は、前記外側モールド部分の対応する壁よりも半径方向に幾分小さく、このため、前記コアが前記キャビティ内に変形していない状態で同軸で配置されたときに、前記コアの対応する壁と外側モールド部分がほぼ平行になり、それらの間に途切れない(または連続する)ギャップを画定する、ステップと、
溶融した熱可塑性材料で前記ギャップを満たすステップと、
前記熱可塑性材料を硬化できるようにするステップと、
前記コアの側壁の最大径が、前記開口の径よりもかなり小さくなるように前記コアを変形(へこみなどの変形)させ、及び、前記コアを、前記開口を通って前記外側モールド部分から軸方向に滑動させるステップと、
前記外側モールド部分を分割し、1組の熱可塑性材料を該モールド部分から分離して、前記衝撃エネルギー管理構造を、端壁、フランジ、及び側壁を有する薄肉筐体として具現化するステップであって、該側壁は、前記筐体と端壁とフランジとの間に延びる、ステップ
を含む方法。
【請求項27】
前記満たすステップの間または後に前記熱可塑性材料の壁に少なくとも1つの排出用オリフィスを形成する追加のステップを含む、請求項26の方法。
【請求項28】
前記外側モールド部分の側壁を、背中合わせにされて、選択された夾角(または開先角度)をなす第1と第2の截頭円錐形の壁として形成する追加のステップを含む、請求項26の方法。
【請求項29】
前記ギャップの幅が前記キャビティ内の位置に応じて変わるように、前記モールドを形成する追加のステップを含む、請求項26の方法。
【請求項30】
端壁と、該端壁からフランジへと延びる回旋状の側壁とを有するふいご状カプセルを形成するステップと、
前記カプセルのフランジを前記構造のフランジに結合して、複合ユニットを形成するステップ
という追加のステップを含む、請求項26の方法。
【請求項31】
前記結合するステップが、前記筐体とカプセルのフランジを共に高周波溶接することによって達成される、請求項30の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図19A】
【図19B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図19A】
【図19B】
【公表番号】特表2010−525243(P2010−525243A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500914(P2010−500914)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/003264
【国際公開番号】WO2008/140650
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(507311636)ゼニス エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/003264
【国際公開番号】WO2008/140650
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(507311636)ゼニス エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
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