説明

信号プロセッサに関するリソースの最適使用法

【課題】 信号処理方法、信号処理受信機及びそのための集積回路に関する。
【解決手段】 信号処理受信機は、相関エンジンを有し、この相関エンジンは、更に複数のタップと複数の独立したチャネルを構成する独立したタップとで構成され、この相関エンジンは、デジタル信号処理コアと動作可能な形で接続されており、このデジタル信号処理コアは、相関エンジンの少なくとも一つの出力を、一定数の積分間隔後の検出確率に対応する所定の閾値と比較する命令を実行して、少なくとも二つの候補となるピークを識別し、これらの命令は、更に、少なくとも二つの独立したチャネルを制御して、少なくとも二つの候補となるピークを確認させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、信号処理のための装置及び方法全般に関する。
【背景技術】
【0002】
これらの装置及び方法は、例えば、低電力のスペクトル拡散信号で使用するために高感度な性能を必要とする環境において、特に有用であると考えられる。より詳しくは、この発明の実施形態は、符号分割多重アクセス(CDMA)などの直交符号多重化方式やそれと同等の方式を採用しているシステム、及び/又は衛星航法システムやガリレオなどの全地球的衛星利用測位システム(GNSS)に有用であると考えられる。特に、この発明の実施形態は、信号処理受信機で利用可能なリソースの性能を最大化して、最小限の電力、複雑さ及び製造コストで最速の信号捕捉時間を達成するのに有用である。
【0003】
一つの特別な例では、現在の関心が、ビル内などの難しい環境で発生する可能性の有る低電力GPS信号を処理する能力に有る。そのような環境での信号の総電力は、典型的には−145dBmW以下であり、より一般的には−150dBmW〜−160dBmWである。
【0004】
低電力GPS信号に関する一つの特別な課題は、捕捉時間又は衛星信号を識別して、追跡することが可能となるのに必要な時間である。GPS受信機で受信される信号は、所望のGPS衛星信号、その他のGPS衛星信号、同じ周波数帯域内の放射及び様々なソースからの雑音が混合したものである。従って、GPS受信機の最初の仕事は、所望の衛星のGPS信号を受信信号のその他全ての成分から分離することに努めることである。
【0005】
GPS信号は、送信衛星に固有の擬似ランダム雑音コード(PNコード)を搬送するスペクトル拡散信号である。民生利用のためのPNコードは、1ミリ秒(ms)毎に繰り返されている。典型的な捕捉方法は、このPNコードを受信信号内で「検出」することであり、それは、受信信号に対してPNコードの既知のコピーとの相関を取ることによって行われる。相関プロセスは、受信信号を特定のPNコードの既知のコピーと乗算する乗算工程と、受信信号と特定のPNコードの積をコード位相に渡って積分する積分(又は「積算」)工程とを有する。既知のPNコードが、同じPNコードを搬送する受信信号と正しく符合した場合、その結果として大きな積分値(又は「ピーク」)が得られる。
【0006】
克服すべき幾つかの問題が有り、その中の主要な二つの問題は、コード位相の決定と信号周波数の決定である。コード位相は、受信信号によって搬送されるPNコードの時間的な始点と終点に関連する。受信機は、最善でもその時点のGPS時間、それ自身の位置及び送信衛星の位置の不正確な知識しか持っていないので、そのローカルクロックによって、PNコードが何時始まり、或いは終わるのかを求めることはできない。言い換えると、受信機は、繰り返されるPNコードの1msの境界が時間的に何処に有るのかを知らない。コード位相が何処から始まるのかを評価することを可能とする情報を受信機が持っていない場合、コード位相全体の探索を行わなければならない。そのことは、典型的には、相関を取り、受信信号に対して相対的にコードチップの一部だけ既知のPNコードをシフトさせて、再び相関を取ることである。このプロセスは、既知のPNコードを1ms分シフトするまで繰り返すか、或いは並行して行うことができる。
【0007】
第二の問題は、周波数の決定である。衛星は、既知の周波数を放送しているが、衛星は、また受信機に対して相対的に動いており、従って、ドップラーシフトが生じる。このドップラーシフトは、時として信号の捕捉を妨害するのに十分な大きさとなる。従って、受信機が、ドップラーシフトを評価する手法を持たない場合、異なるコード位相だけでなく、異なる周波数も探索する必要が有る。
【0008】
更に、低電力信号の環境では、しばしば長い周期時間に渡って相関の積分工程を行うことが必要である。この周期は、通常コヒーレント積分に対しては数ミリ秒であり、20ミリ秒までとなる場合が有る。これより長い積分は、非コヒーレントで行われる場合が有り、秒単位での非コヒーレント積分時間は、珍しいことではない。
【0009】
そのような演算を多くのコード位相、多くの周波数領域及び長い積分周期に渡って実行するために、信号処理装置は、しばしば正しくは「大規模相関(Massive Correlation )」と呼ばれる力任せの手法を採用して、多数の相関ユニットを並列的に使用している。相関器の数に依存して、低電力信号の条件下においても、許容可能な捕捉時間を達成することができる場合が有る。「タップ」という用語は、一般的に、受信信号と一定の周波数オフセット及びコードオフセットを持つレプリカコードとの単一の相関演算を実行することができる物理的な回路部品を意味するために使用される。タップは、一般的に、選定したコード/周波数空間に渡って相関を実行するために使用される「チャネル」と呼ばれるユニットに組み上げられる。
【0010】
大規模相関の例として、GPS受信機による「ホットスタート」が考えられ、その場合受信機は、その位置とその時点の時間の推定値又は存在するのであれば、補助データを介して利用可能な推定時間を保有している。そのような条件下では、探索空間は、PNコード空間全体(民生用では1023チップ)と周波数領域での数百ヘルツ(例えば、±150Hz)に等しいとすることができる。単一のタップの探索範囲は、例えば、コード空間における1/2チップと周波数空間における±1/(3T)(この場合、Tは、コヒーレント積分時間であり、2/(3T)は、周波数ビンと呼ばれる)となる。従って、探索空間全体をカバーするためには、約16000個のタップのセットが必要となる。
【0011】
多くのGPS受信機は、益々多くの数のタップを実装して、一つ以上の衛星を並行して探索することが可能となっている。その他の受信機では、小数のタップしか使用しておらず、単一の衛星の探索を複数の工程にシリアル化しなければならない。「大規模相関」受信機は、通常一つの衛星に関するコード全体の不確実性(即ち、少なくとも2046個の物理的なタップ)を並行して探索する能力を少なくとも有する受信機を意味するために使用される。周波数領域における探索は、より効率的である相関後高速フーリエ変換(FFT)を用いるか、或いは特に、周波数の高い不確実性に対して全く非効率的である物理的なタップを用いて実行することができる。
【特許文献1】米国特許公開第2002/0015456号明細書
【特許文献2】米国特許公開第5600670号明細書
【特許文献3】米国特許公開第5901171号明細書
【特許文献4】米国特許公開第5952960号明細書
【特許文献5】米国特許公開第6175848号明細書
【特許文献6】米国特許公開第6195041号明細書
【特許文献7】米国特許公開第6208291号明細書
【特許文献8】米国特許公開第6298083号明細書
【特許文献9】米国特許公開第6304216号明細書
【特許文献10】米国特許公開第6393046号明細書
【特許文献11】米国特許公開第6400753号明細書
【特許文献12】米国特許公開第6496145号明細書
【特許文献13】米国特許公開第6522682号明細書
【特許文献14】米国特許公開第6577271号明細書
【特許文献15】米国特許公開第6606346号明細書
【特許文献16】米国特許公開第6618670号明細書
【特許文献17】米国特許公開第6636178号明細書
【特許文献18】米国特許公開第6683923号明細書
【特許文献19】米国特許公開第6704348号明細書
【特許文献20】米国特許公開第6748015号明細書
【特許文献21】米国特許公開第6760363号明細書
【特許文献22】米国特許公開第6788735号明細書
【特許文献23】米国特許公開第6804290号明細書
【特許文献24】米国特許公開第6831911号明細書
【特許文献25】米国特許公開第6850557号明細書
【特許文献26】米国特許公開第6891449号明細書
【特許文献27】米国特許公開第6933886号明細書
【特許文献28】米国特許公開第6934322号明細書
【特許文献29】米国特許公開第7127351号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般的に、相関用リソースを増やすことは、製造コストが上昇するとともに、消費電力が大きくなることを意味する。相関用リソースが少なくなると、その結果コストが低下するだけでなく、捕捉時間も長くなる。従って、最小限の電力、複雑さ及び製造コストで最速の捕捉時間を達成するために、利用可能な相関用リソースの性能を最大化することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の一つの特徴は、相関用リソースを効率的に使用する信号処理装置を実現することに関する。
【0014】
相関用リソースを効率的に使用するための信号処理方法を実現することが、この発明の別の特徴である。
【0015】
この発明の別の特徴は、チャネルメモリを効率的に使用するための信号処理方法を実現することに関する。
【0016】
この発明の更に別の特徴は、事前検出ステージの実行と少なくとも一つの抽出ステージの実行を有する信号処理方法を実現することに関する。
【0017】
事前検出ステージの実行と複数の抽出ステージの実行を有する信号処理方法を実現することが、この発明の別の特徴である。
【0018】
信号追跡用に通常確保されているチャネルを用いた、少なくとも一つの事前検出ステージ、少なくとも一つの中間ステージ及び少なくとも一つの抽出ステージの実行を有する信号処理方法を実現することが、この発明の別の特徴である。
【0019】
この発明の別の特徴は、少なくとも一つの事前検出ステージで識別された相関のピークを確認するために使用される一定数の独立したチャネルを有する信号処理受信機を実現することに関する。
【0020】
この発明の別の特徴は、複数のタップと複数の独立したチャネルを構成する独立したタップとを備えた相関エンジンを有する信号処理受信機であって、この相関エンジンが、デジタル信号処理コアと動作可能な形で接続されており、このデジタル信号処理コアが、少なくとも二つの候補となるピークを識別するために、相関エンジンの少なくとも一つの出力を、一定数の積分間隔後の検出確率に対応する所定の閾値と比較する命令を実行し、これらの命令が、更に少なくとも二つの独立したチャネルを制御して、少なくとも二つの候補となるピークを確認させるように構成されている信号処理受信機を実現することに関する。
【0021】
この発明の別の特徴は、信号と符合する一定の確率を満たさないタップ、即ち、タップの積算値が、一定のレベル以下に低下した場合に、そのタップを解放する能力を有する少なくとも一つのチャネルを備えた信号処理受信機である。一つのタップ又は一群のタップが解放された場合、それを、別の信号の捕捉、確認又は追跡などの別の目的に使用するか、或いはリソースの浪費を回避するために単純に停止することができる。このようにして、当該の少なくとも一つのチャネルは、事前検出と抽出ステージを非コヒーレント積分に統合して、各積分間隔の最後にタップを解放することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の好ましい実施形態は、相関を実行するための回路部品又はそれと同等のソフトウェアを有する。そのような部品は、個々の抽象化されたユニットにまで分解された場合、「タップ」と呼ぶことができる。単一のタップの模式図が、図1に図示されている。当業者は、多くのタップ構造と複数のタップの直列的及び並列的な組合せが可能であることを認識している。
【0023】
図1に図示されているタップは、デジタル入力11を有し、そこには、受信信号のデジタルサンプルが現れる。デジタル入力11は、キャリア除去回路12に供給され、この回路は、デジタルサンプルから、見込まれる、或いは既知のキャリア波を取り除く。そのようなキャリア除去回路は、典型的には、一定数の異なるタップによって共有されている。次に、サンプルは、信号逆拡散器13に供給される。
【0024】
逆拡散器13は、二つの入力を有し、一方は、キャリア除去回路12からの入力であり、他方は、コードリプリケータ14からの入力である。コードリプリケータは、探索しようとしている特定の衛星に関する既知のPNコードを生成する。これらのコードは、GPS衛星への民生利用アクセスに関して従来技術で周知の方法によって生成することができる。コードの生成は、使用する相関方法に依存して、直列的に(チップ毎に順番に)、並列的に(一度に複数のコードチップで)又はそれらを組み合わせて行われる。典型的には、一つのコードリプリケータが、複数のタップによって共有される。
【0025】
コードリプリケータ14の出力は、例えば、ここではz変換形式で図示されている移相器15によって、位相をシフトすることができる。単一のコードリプリケータが、多くのタップによって共有されているので、異なるタップが、既知のPNコードを異なる信号位置で相関を取ることができるように、コードを位相シフトさせる必要が有る。
【0026】
逆拡散器13は、コードリプリケータ14によって生成された既知の位相シフトされたPNコードをキャリア除去回路12から来る信号と効果的に乗算する。これは、相関に必要な工程であるだけでなく、既知のPNコードが、当該のタップにおいて信号と正しく符合した場合に、信号を逆拡散させる効果も有する。
【0027】
逆拡散器13での逆拡散後に、信号は、受信信号を効果的に積分するコヒーレント積算器16に入力される。受信信号の符号が、積分に含まれるので、積分は、コヒーレントである。一つの特定の時間周期に渡るコヒーレント積分の結果は、次に非コヒーレント積分器17に入力され、非コヒーレント積分器は、その結果を符号を無視して、例えば、絶対値又は平方値として合算する。
【0028】
信号の相関を取っている間に、相関のピーク又は大きな積分結果を探索する。非常に低い電力の信号に関する探索は、識別可能な相関のピークが現れるまでには、例えば、1〜3秒の長い積分時間を必要とする。そのことは、コヒーレント積分に関して選定した間隔の長さに依存して、数百のコヒーレント積分の合計に相当する。
【0029】
しかし、雑音のために、幾つかの相関のピークが検出される。GPS受信機は、一般的に一つの信号が最も大きな相関値を持つ信号として現れるまで、長い周期時間に渡って積分を実行することによって、この状況に対処している。
【0030】
この発明の実施形態は、探索フェーズを一連のステージに分解することで構成される。各ステージは、信号と符合する確率が上位となるタップの選定アルゴリズムを実装している。第一ステージは、衛星信号の探索空間全体又はその部分集合内における信号探索の実行を有する。探索空間は、信号のコード及び周波数の不確実性によって決まる。このステージの最後において、以下に記述する方法の中の一つにより、複数の上位の候補を選定する。第二のステージは、第一ステージで候補を選定するために使用した原理と同様の原理を適用して、第一ステージで識別された候補の更なる選択を行う。その他のステージを続けることができる。プロセスは、最後のステージが、受信機で利用可能な追跡チャネル数以下の一定数の候補を生成することができた場合何時でも停止するように構成することができる。第一ステージを実行するチャネルは、「スキミング」チャネルと呼ぶ。第二ステージ又はそれ以降のステージを実行するチャネルは、「抽出器」又は「抽出」チャネルと呼ぶことにする。以下において、GPS受信機によって広く実装されているアプローチと比べた、このアプローチの利点を説明する。
【0031】
図2は、以下の例に対応する二組の理論的なデータを図示している。探索空間の不確実性が8つの周波数ビンとコード空間全体であるとする。この不確実性をカバーするには、全部で16368(1023x2x8)のタップが必要となる。所望の信号が存在する場合、図2のグラフは、タップのその他全てのタップと比べた、信号との符合に関するランキングを非コヒーレント積分間隔の関数として表している。従って、図2の水平軸は、実行される非コヒーレント積分間隔の数と看做すことができる。
【0032】
垂直軸は、「ランク」と表示された対数座標であり、統計量を示す。ここでは、各試行が、雑音電力レベルの二乗平均平方根が同じである同じ入力信号に対して行われるが、ノイズが、試行の間で相関を持たない場合、多数の理論的な相関試行を考慮する必要が有る。試行が実行された場合、信号と符合するタップの積分値は、信号と符合しないその他全てのタップに関する積分値と比較することができるが、それにも関わらず最も大きな値を有する。全ての値を、Eと呼ばれる集合に構成して、(「1」の位置における)最も大きな値から最も小さい値までに並べ替えた場合、各タップを、その集合E内の位置に対応する「ランク」に割り当てることができる。そのような集合Eは、積分間隔毎及び試行毎に構築することができる。各集合Eは、1〜16368に及ぶ数と各タップに対応する独自の(循環しない)数のリストのように見える。
【0033】
特定のタップと特定の積分間隔が選択された場合、各試行における特定の積分間隔後において、そのタップに対するランクを含むその他の集合Gを構築することができる。対象とするタップが、信号と符合するタップである場合、積分間隔の数を増大させて行くと、集合G内の値(ランク)は、値1に近付いて行く。即ち、相関のプロセスは、雑音から信号を「選り分ける」ものである。
【0034】
集合Gのスカラー表示は、集合の上限として選定することができる。上限とは、Lが数の集合である場合に、Lの要素であるmの全てに対して関係式a≧mを満足する数aである。従って、Gの最小上限は、Gの上方限界又はG内の全ての個々のランクと等しいか、依然として大きい最も小さいランクである。更に、Lの要素である全てのmのX%に対して、関係式a≧mを満足する数aを意味するX%上限を定義することができる。例えば、90%上限は、集合Lの10個の要素の中の9個に対して上記の関係式を満足するものである。その場合、最小上限又は上方限界は、100%上限に等しい。例えば、Lが10個のランク(1,1,2,1,1,5,1,1,7,4)の集合である場合、最小上限又は上方限界は、7である一方、90%上限は、5である。
【0035】
また、少ない数の積分周期と低電力信号では、信号と符合するタップは、信号の雑音成分が優勢であり、基本的にランダムである積分値を依然として有する。このステージで信号と符合するタップに関する集合Gは、1〜16368の多くの異なるランクを有する。Gの上方限界は、信号と符合しないタップの集合Gに関する上方限界よりも著しく小さいと期待することはできない。しかし、積分が進行するにつれて、信号と符合するタップの集合Gは、より一層1に近いランクで占められることとなる。このことは、集合の上方限界を低下させる。
【0036】
従って、図2のグラフの垂直軸は、集合G(N)の上限を表しており、その場合Nは、水平軸における特定の積分間隔である。円でプロットされたデータ、即ち、下の方の曲線は、信号と符合するタップに関する90%上限を表す。矩形でプロットされたデータである上の方の曲線は、信号と符合するタップに関する99%上限を表す。しかし、積分が進行するにつれて、90%及び99%上限は、値1に向かって近付いて行く。
【0037】
実際には、図2のグラフは、信号と符合するタップに対して、それぞれ90%と99%の信頼係数で特定の上限を生成するのに必要な積分周期の数を提供するものと読み取ることができる。例えば、(特定の信号対雑音電力において)信号と符合するタップが、時間の90%に対して、上限1を持つようになるのに必要な積分周期の数は180となる。
【0038】
180個の間隔に渡って積分を実行した後に、受信機は、集合Gの90%上限が1に等しい候補を確認及び追跡ステージに転送する。確認ステージは、より少ない数の「独立した」タップにより実行される。独立したタップは、任意のコード位相と任意の周波数ビンで動作することが可能なタップである。従って、独立したタップにより、受信機は、信号のコード位相と周波数に関係無く、最も大きい相関値を生成するタップからコード位相と周波数ビンを取得して、信号を追跡することが可能となる。
【0039】
しかし、このプロセスの効率を大幅に向上させることが可能である。非効率性を図解するために、図2のグラフを図3に図示した通りのチャネルリソースの効率性グラフに書き換えることができる。図3は、図2のグラフと同様に、水平軸が非コヒーレント積分周期の数を表すグラフである。図3の垂直軸は、「リソース使用率%」と表示されており、実際に使用されているチャネルリソースを表している。「チャネル」という語は、探索、例えば、コード空間全体と8つの周波数ビンに渡る上記の探索を処理するのに必要なハードウェア及び/又はソフトウェアを表しており、一つ以上のタップで構成される。チャネルリソースの実際の使用とは、信号を識別するとの目的を促進するような形で使用することを意味するものとする。
【0040】
図3のグラフは、以下の通り説明することができる。Mが、N個の非コヒーレント積分周期後に時間の90%で信号と符合するタップのランクに関する上限である場合、少なくともリソース使用率という観点での最適な手順は、先ずは最初のM個の積算周期に対してタップの全てを使用することである。その周期の最後に、上位M個のタップが選定されるとともに、その他全てのタップが解放される。即ち、時間の90%において、信号は、解放されているタップの中には無いので、チャネルは、それらを積算のために使用することを停止する。次に、これらのタップを、第二の信号の捕捉などその他の目的に使用することができる。従って、図3のグラフにプロットした量は、90%と99%の信頼係数で、この信号に対して有効に専念しているタップの百分率を表している。
【0041】
このグラフは、以下の通り計算することができる。如何なる数の積分周期N後でも、信号と符合するタップは、MのX%上限を有する。即ち、X%上限がM〜1であるタップは、依然として、符合しない信号から符合する信号を選り分ける必要が有る。残ったタップは、無駄となる。従って、X%の信頼係数で有効に用いられているタップの百分率は、((タップの全数−X%上限)/(タップの全数))x100%となる。図3のグラフは、積算の初期ステージに対してのみタップの全電力が必要であることを示している。例えば、1/3以内の時間、例えば、図3のグラフで50回の積算後において、受信機は、リソースの6%しか使用していない。
【0042】
特定のキャリア対雑音レベルにおける特定のランクの信頼係数、積分値及び積分周期の数の統計的な解析による評価を受信機に配備することができる。非コヒーレント積算Yの結果は、以下の通り、信号が存在しない場合はχ2 (カイ二乗)分布を持つ確率変数として、一つの信号が存在する場合は非心χ2 分布を持つ確率変数としてモデル化することができる。
【0043】
【数1】

ここで、Ii とQi は、ドウェル時間周期Tにおける、擬似ランダムレプリカコードを用いた入力の同相信号IT と直角位相信号QT のi番目の相関の結果である。
【0044】
二つの分布を完全に定義するためには、当業者に周知の自由度(δ)と非心度パラメータ(λ)の二つのパラメータが必要である。両方の場合に、自由度は、この発明の目的に対して積算数の二倍に設定される。信号のキャリア対雑音比が与えられると、非心χ2 分布の非心度パラメータは、以下の段落に示される通り計算される。
【0045】
ノイズレベルをσn とすると、
【0046】
【数2】

ここで、IT とQT は、ドウェル時間周期T(この例では、T=1ms)における、擬似ランダムレプリカコードを用いた入力の同相信号IT と直角位相信号QT の相関の結果である。上記の式は、入力信号が、純粋な雑音から成る場合に適用される。
【0047】
ここで、Tをコヒーレント積分間隔とする。Tは、1〜20msの範囲とすることができるが、非常に小さい信号レベル、即ち、−150〜−160dBmWでは、典型的な値が16msとなる。そして、コヒーレント積分間隔T後のコヒーレント関数の振幅Aは、以下の通りである。
【0048】
【数3】

ここで、C/N0 は、キャリア対雑音比である。ここでは、相関という用語は、受信信号と既知の信号との相関を取る行為ではなく、統計的な相関関数を示すために使用されている。ノイズ電力で正規化した非心度パラメータは、以下に通り与えられる。
【0049】
【数4】

C/N0 と非コヒーレント積算数nacc の信号を与えられた場合の非心度分布は、Ii とQi の二乗の合計である積算結果Yの統計量を示す。累乗の実際の積算は、受信機のハードウェアに実装するのに特に効率的ではない。それに代わって、多くの場合、以下の通り、
【0050】
【数5】

信号の包絡線が積算される。数値的なシミュレーションでは、累乗の合計に対して有効な全ての結果が、包絡線の合計に対しても適用可能であることが示されている。その代わりに、以下の式が得られる。
【0051】
【数6】

Signalは、与えられた積算値Yに対して、Yが、キャリア対雑音比がC/N0 である信号の結果となる確率である。PNoise は、同様に、与えられた積算値Yに対して、Yが雑音から得られた結果となる確率である。
【0052】
積算確率関数も、以下の通り定義される。
【0053】
【数7】

Signal(Y>τ)は、積算値Yが、C/N0 比の信号及びノイズの非コヒーレント積算の結果である場合に、Yが特定の閾値τよりも大きくなる確率である。PNoise (Y>τ)は、積算値Yが、ノイズだけ(信号が無い)である場合に、Yがτよりも大きくなる確率である。以下の式は、上記の統計量をベースとしており、信号と符合するタップにおいて、pconfidenceに等しい信頼係数でρと等しいランクを有する値に積算するのに必要な積算数nacc を計算するために使用される。
【0054】
【数8】

受信機において、無駄となるチャネル数の評価が入手可能であれば、複数の抽出器と事前検出ステージを用いた、より効率的な仕組みを実装することが可能となる。
【0055】
事前検出ステージを使用する可能性は、図2と3のグラフに図示された例から明らかである。受信機が、信号の確認/追跡を実行することができる一つのチャネルを有するものと仮定する。180個の積分周期後には、図2から、信号に符合するタップが、90%の信頼係数で少なくともランク1に到達していることは明らかである。そのことは、180個の積分周期後には、最善のピークを信号確認のために、この独立したチャネルに移送することが可能であることを意味する。それは、一般的に大規模相関で使用されているアプローチである。180個の積分周期の間に積分を行うために、16368個のタップを使用した。
【0056】
それに対応して、135個の積分周期後において、上位10個のピークを識別することができ、その中で、信号と符合するタップが検出される確率は90%である。10個の独立チャネルが、確認用に利用可能である場合、僅か135個の積分周期後には、圧倒的多数の相関用リソースを節約することができる。90個の積分周期後では、上位100個のピークを識別することができ、その中で、信号と符合するタップが検出される確率は90%である。100個の独立したチャネルが、確認用に利用可能である場合、僅か90個の積分周期後には、圧倒的多数の相関用リソースを節約することができる(即ち、16368個のタップの中の多くのリソースが、一般的な大規模相関のアプローチと比べて半分の時間の間だけ使用される)。それらの候補が、より少ない抽出チャネルに対して解放されると、大規模相関用チャネルは、別の信号の事前検出ステージ用に使用することができる。事前検出/抽出器の階層的な構造により、一種のパイプライン化とリソース使用率の最適化で一定の並列処理を導入することが可能となる。
【0057】
この手法の利点は、GPS受信機の主要な性能パラメータの一つである初期測位開始時間(Time To First Fix )の観点において、容易に定量化することができる。特に、第一の衛星を捕捉するのに必要な時間が大幅に低減される。信号レベル、一定の信号レベルでの検出確率及びコードと周波数の不確実性が与えられると、例に挙げた(例えば、100個の候補での)アーキテクチャは、(ちょうど一つの候補での)従来の大規模相関によるアプローチと比べて二倍もの速さとすることができる。抽出器エンジンに複雑さが加わるが、このエンジンのメモリ消費量(即ち、チップサイズとコスト)に関して、事前検出チャネルは、典型的には、そのメモリの約1/20しか必要としない。
【0058】
前の例は、単一の抽出フェーズを示している。しかし、この発明の実施形態の効率を改善する複数の抽出フェーズを実装することが可能であることも期待される。設計段階において、複数の抽出フェーズを使用した場合に所望の正しい検出確率が得られることを保証するように留意すべきである。
【0059】
多くの抽出フェーズを使用した結果、不要なチャネルリソースを直ちに解放するという観点において最適である準連続プロセス(又は非常に細かい工程による離散的なプロセス)となる。しかし、全体的な設計を考慮した場合、部品の複雑さや電力消費などの、その他の設計時における要素によっては、そのような準連続プロセスを最適な状態に次ぐ状態とすることができる。
【0060】
この発明の実施形態を実装するために、現在のGPS受信機のチャネルリソースを再配分することができるものと考えている。それは、一般的に少なくとも一定数の、さもなければ追跡用に専念していた独立したタップを、事前検出ステージと一つ以上の抽出ステージ後に識別される一定数の相関のピークの抽出プロセス用に再配置することによって可能となる。
【0061】
非常に低い信号レベルでは、捕捉エンジンは、一般的に非常に低い検出確率で動作するように設計されている。検出確率が低くなる程、ここで提案した方法の効率が上昇することを示すことができる。低い検出用閾値を用いた事前検出ステージを使用した例として、図4のグラフは、計算したランクの統計量を図示しており、そこでは、事前検出フェーズで信号の積算値Yが閾値τを超えた試行だけを考えている。この例では、40%の検出確率PD を考慮した。即ち、特定の数の積算間隔nacc 後において、特定の雑音レベルと積分間隔に関して40%の検出確率PD に対応する閾値τを計算するために、前述した統計的な方法を使用した。90%又は99%の信頼係数を使用した場合、間隔nacc 後に閾値τより大きい積算値を示すタップが、抽出を続行した。
【0062】
与えられた積算数nacc に対する閾値τの計算は、以下の通り進行する。
【0063】
【数9】

閾値τは、以下の不等式を満たす最大値である。
【0064】
【数10】

非コヒーレント積分サンプル数の関数としての非心度パラメータは、以下の通り与えられる。
【0065】
【数11】

図4のグラフは、上記の条件下において、信号と符合するタップに関して(時間の90%で)ランク10を持つ値を積算するのに必要な積算時間が、(時間の90%で)ランク1を持つ値に積算するのに必要な時間の半分であることを図示している。更に、信号と符合するタップに関して(時間の90%で)ランク100を持つ値を積算するのに必要な積算時間が、(時間の90%で)ランク1を持つ値に積算するのに必要な時間の1/4であることを図示している。第一の衛星を捕捉する時間に関して、それは、40%の検出確率では、ここに提案した方法の効率が、ずっと大きいことを意味する(実際に前の例と比べて二倍になっている)。四つの抽出器エンジンが利用可能であると仮定すると、パイプライン化の結果、効率が四倍向上する。ここで提案した方法により、メモリ使用率とハードウェアの複雑さに関して僅かに増大するが、従来のアーキテクチャよりも四倍高速化されている。
【0066】
図5のグラフは、図2のグラフから図3のグラフに変換するために使用したのと同じ方法を用いて、図4のグラフをチャネルリソース使用率のグラフに変換したものである。ここでは、積分周期当りのチャネルリソースの使用率が、事前検出ステージを実行した後の低い方のレベルの積分においてさえ、著しく低下している。
【0067】
図8は、周波数/コード探索空間80を図示しており、そこでは、多くのドメイン81の各々が、一つの候補又はコードオフセット・周波数オフセット対を表している。図8は、探索するコード空間を示す水平軸82と、周波数空間を示す垂直軸83を有する。単一の例の候補81には、符号「X」を付与している。
【0068】
図8は、代表的な形で多くの候補対81を図示している。主な目的の一つは、より少ない候補の集合を取得することである。この発明の一定の実施形態では、抽出チャネルは、二つの点で事前検出チャネルと異なる。第一は、探索フェーズの間のチップ間隔である。事前検出チャネルにより提供される各候補に対して、候補の探索を続けるためには、タップに対して、1/4チップの距離84と1又は1/2ビンの距離85が可能である。
【0069】
候補選定基準に関して、二つの方法を例示する。第一の方法は、事前検出チャネルに適用される方法と同様であり、固定周期の非コヒーレント積算の最後に、積算値が上位となる複数の候補を選定する。その違いは、この場合には積算値と閾値の比較が行われないことである。第二の方法は、ベイズの公式にもとづき、候補のタップが信号となる確率をリアルタイムに評価することである。その方法は、以下の通り進行する。
【0070】
Sig (n)をチャネルタップに信号が存在する確率(即ち、信頼度)とする。工程0において、プロセスは、そのタップが信号と符合するか否かに関する見込みを持っておらず、PSig (0)=0.5である。
【0071】
第一の非コヒーレント積算周期後には、以下の通り、信頼度が更新される。
【0072】
【数12】

ここで、PD は、信号が存在するチャネルによって、測度νが生成される確率である一方、PFaは、信号が存在しないチャネルによって、測度が生成される確率である。一定数の工程後に、確率が上位となる候補が選定される。この後者の方法は、一般的に最も良い性能を生み出す。
【0073】
測定事象は、閾値と比較した結果又は測定自体の値とすることができる。第一の場合、PD は、以下の通り、ベルヌーイ試行によって与えられる。
【0074】
【数13】

第二の場合、その確率は、以下の通り、非心χ2 分布の確率密度関数(X2 )で与えられる。
【0075】
【数14】

FAに関して、測定事象が、閾値と比較した結果である場合、PFAは、以下の通り、ベルヌーイ試行の確率関数によって与えられる。
【0076】
【数15】

第二の場合、その確率は、以下の通り、カイ自乗分布の確率密度関数によって与えられる。
【0077】
【数16】

上記の全ての確率に関して、νは、最後のコヒーレント積算周期T内で積算される電力である。
【0078】
最適な抽出器は、その候補リストが、第三ステージの抽出器に適合する、或いは追跡チャネルの数に見合った数に低減されるまで続行する。一般的に、抽出器の主な機能は、信号の確認だけではない。最適な抽出器は、全体的な検出確率を変更すべきではない。実際には、検出確率は、事前検出から最終的な確認までに行われるステージの検出確率の積である。事前検出ステージが、通常通り低い確率で開始する限りにおいて、それ以降の確率は、ずっと高くなるはずである。
【0079】
図6は、この発明の実施形態による信号受信機で使用されるベースバンドプロセッサ60のブロック接続図であり、このプロセッサは、複数回繰り返すことが可能な相関エンジン61と、一定数の物理的なタップを備えた回路62と、一定数の独立した物理的なタップを備えた回路63とを有する。相関エンジン61は、通常データの相互接続と制御信号の相互接続の両方で構成される通信リンク65と66を介して、デジタル信号プロセッサ(DSP)64と動作可能な形で接続されている。DSP64は、一般的に従来技術で周知の形式のマイクロプロセッサ又はマイクロプロセッサコアであり、信号受信機内での相関用リソースの使用を管理することができる命令を実行するが、明らかにDSPをソフトウェア無しで動作するハードウェアによる制御回路とすることができる。ここに図示されているベースバンドプロセッサ60は、単一の集積回路として実現されているが、複数の集積回路で構成するか、或いはナビゲーション用プロセッサ及び/又は無線周波数回路などの別の部品を同じ集積回路上に含めることも可能である。
【0080】
相関エンジン61は、図6に図示されていない入力を介して信号を受信した後、DSP64によって決定された周波数/コード探索空間に渡る探索を開始する。予め設定された条件又は前述した相関のピークの大きさにもとづきDSPが決定した時間周期後において、DSPは、前述した閾値を超える相関のピークの候補を識別し、更に、リンク65を介して、識別した相関のピークと符合する各タップのコード位相と周波数ビンを受信する。従って、DSPは、事前検出ステージ用の候補を識別して、それらの候補を独立したチャネルに提供し、それらを抽出、確認して、最終的に追跡させるように構成されている。次に、この情報は、識別したピークの更なる相関を取って、確認するように、独立したチャネル63を制御するために使用される。
【0081】
図7は、この発明の実施形態により動作するチャネルの機能図を図示している。図7には、一定数の相関用チャネル70が、積み重なった層として図示されている。各相関用チャネルは、事前検出チャネル71を有し、そこでは、捕捉用探索が開始されるとともに、非常に多くの量のリソースが集中している。一定数の候補となるピークの部分的な相関と識別後に、抽出ステージが実行される一定数の独立した抽出チャネル72のいずれかにおいて、捕捉用探索を続行することができる。チャネル72が、一つの時間周期の間積分を続行した場合(更なる部分的な相関)、より少ない数の候補となるピークの部分集合を識別して、各チャネル72内で利用可能な複数の独立したチャネル73の中の一つにおいて、更なる抽出ステージを再び続行することができる。
【0082】
事前検出チャネル71を抽出チャネル72に分割するか、或いは抽出チャネル72を更なる抽出チャネル73に分割することは、必ずしも更に物理的なチャネルを追加することを示すものではなく、むしろ相関を、より少ないリソースしか必要としないより少ない数の下位の相関に分割することを表すものである。実際には、相関プロセスの各ステージでは、各チャネルの不必要な部分を単純に解放することが可能である。また、当業者には、最終的に許容可能な相関結果74が得られるまで、それ以降の各ステージが、より少ない量のリソースで動作する形で、多くの数の抽出ステージを採用することが可能であることは明らかである。
【0083】
このようにして、前述した通り、リソースを大幅に節約した形で、多くの数の候補となるピークを識別、抽出することができるとともに、複数の抽出ステージを実装することができることは明らかである。更に、当業者には、特定の設計と特定の用途の要求にもとづき、ここに含まれる特定の例を実際の広範囲な事例に適用することが可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】物理的なタップの模式図
【図2】90%と99%の信頼係数に対する、タップのその他全てのタップと比べた、信号との符合に関するランキングの典型的なグラフ
【図3】チャネルリソース使用率対積分時間の典型的なグラフ
【図4】40%の検出確率による事前検出フェーズ後における、90%と99%の信頼係数に対する、タップのその他全てのタップと比べた、信号との符合に関するランキングの典型的なグラフ
【図5】40%の検出確率による事前検出フェーズ後における、チャネルリソース使用率対積分時間の典型的なグラフ
【図6】この発明の一連の実施形態による信号受信機用ベースバンドプロセッサのブロック接続図
【図7】この発明の一つの実施形態にもとづき動作するチャネルを示す図
【図8】コード位相・周波数探索空間の一画の概念図
【符号の説明】
【0085】
11 デジタル入力
12 キャリア除去回路
13 信号逆拡散器
14 コードリプリケータ
15 移相器
16 コヒーレント積算器
17 非コヒーレント積分器
60 ベースバンドプロセッサ
61 相関エンジン
62 一定数の物理的なタップを備えた回路
63 一定数の独立した物理的なタップを備えた回路(独立したチャネル)
64 デジタル信号プロセッサ(DSP)
65,66 通信リンク
70 相関用チャネル
71 事前検出チャネル
72 独立した抽出チャネル
73 独立したチャネル
74 最終的に許容可能な相関結果
80 周波数/コード探索空間
81 候補(ドメイン)
82 水平軸
83 垂直軸
84 1/4チップの距離
85 1,1/2ビンの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を受信する工程と、
関連する相関用リソースを有する相関エンジンを用いて、コード及び周波数探索空間全体に渡って複数の相関工程を実行して、複数の相関結果を生成する工程と、
当該の相関結果の中から、各候補がコードオフセットと周波数オフセットの対で構成される、少なくとも二つの候補を識別する工程と、
当該の少なくとも二つの候補を除く全ての候補を排除する工程と、
当該の少なくとも二つの候補の更なる相関を取る工程と、
当該の少なくとも二つの候補から、所望の信号を表す一つの候補を識別する工程と、
を有する信号処理方法であって、
当該の少なくとも二つの候補の更なる相関を取る工程が、当該の複数の相関工程を実行する工程よりも少ない相関用リソースを用いて実行される信号処理方法。
【請求項2】
当該の相関結果の中から少なくとも二つの候補を識別する工程が、少なくともN個の候補を識別する工程で構成され、Nが、10よりも大きい数であり、当該の少なくとも二つの候補の更なる相関を取る工程が、少なくともN個の候補の更なる相関を取る工程で構成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該の少なくともN個の候補から、Nより小さい数の中間的な候補を識別して、これらのNより少ない中間的な候補の更なる相関を取る工程を更に有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
当該の数Nが、少なくとも百である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
当該の少なくとも二つの候補を識別する工程が、その候補が所望の信号を表す所定の統計的確率の近似値である閾値に対して、当該の少なくとも二つの候補を比較する工程で構成される請求項2に記載の方法。
【請求項6】
所望の信号の電力レベルが、−145dBmW以下である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第一の信号を受信する工程と、
事前検出ステージを実行する工程と、
第二の信号を処理するために、事前検出ステージで使用されている相関用リソースの一部を解放する工程と、
第一の信号に対して、少なくとも一つの抽出ステージを実行する工程と、
を有する信号処理方法。
【請求項8】
当該の少なくとも一つの抽出ステージを実行する工程が、少なくとも二つの抽出ステージを実行する工程で構成される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
事前検出ステージ後において、非コヒーレント積分間隔後毎に、少なくとも一つの抽出ステージが実行される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
当該の第一の信号を受信する工程が、−145dBmW以下の信号電力のGNSS信号を受信する工程で構成される請求項7に記載の方法。
【請求項11】
受信信号に対して既知のコードとの相関を取るように構成された、少なくとも三つのチャネルを備えた相関エンジンと、
当該の少なくとも三つのチャネルの中の一つのチャネルで実行されている部分的な相関を、当該の少なくとも三つのチャネルの中の少なくとも二つのチャネルで続行させるための実行可能な命令を有するメモリと繋がっている、相関エンジンと動作可能な形で接続されたプロセッサと、
を有する信号処理受信機であって、
更に、プロセッサは、当該の少なくとも三つのチャネルの中の一つのチャネルによる部分的な相関が完了した場合に、その一つのチャネルを受信信号の相関から解放するように構成されている信号処理受信機。
【請求項12】
当該の相関エンジンが、少なくとも一つの独立していないチャネルと少なくとも二つの独立したチャネルを備えている請求項11に記載の信号処理受信機。
【請求項13】
当該の少なくとも三つのチャネルが、複数のチャネルグループで構成され、各グループが、少なくとも一つのチャネルメンバーを有し、
当該の実行可能な命令が、前のチャネルグループで部分的に実行されていた相関を、前のチャネルグループから次のチャネルグループに引き継いで続行させるための命令を含んでいる、
請求項11に記載の信号処理受信機。
【請求項14】
当該の次のチャネルグループの各々が、その前のチャネルグループのより小さい部分集合である請求項13に記載の信号処理受信機。
【請求項15】
少なくとも三つのチャネルグループを有する請求項13に記載の信号処理受信機。
【請求項16】
相関エンジンを備えた集積回路であって、
この相関エンジンが、更に複数のチャネルを備えており、
当該の複数のチャネルが、少なくとも二つの独立したチャネルを有し、
当該の複数のチャネルのサブグループは、一つのチャネルで実行されていた捕捉用探索を、少なくとも二つの独立したチャネルによって更に処理することができるように、少なくとも間接的に繋がっており、
各チャネルは、一つの積分周期後に、少なくとも一つの対応する候補を排除するように構成されており、
少なくとも一つのチャネルは、複数の候補を排除した後解放されるように構成されている、
集積回路。
【請求項17】
当該の少なくとも間接的に繋がっている複数のチャネルのサブグループが、デジタル信号処理コアを介して繋がっている請求項16に記載の集積回路。
【請求項18】
当該の少なくとも二つの独立したチャネルが、少なくとも10個の独立したチャネルで構成され、その中の少なくとも二つのチャネルは、信号追跡用チャネルとして使用されるようには構成されていない請求項16に記載の集積回路。
【請求項19】
当該の複数のチャネルが、独立したチャネルだけで構成される請求項16に記載の集積回路。
【請求項20】
当該の複数のチャネルが、少なくとも一つの大規模相関用チャネルを有する請求項16に記載の集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−221768(P2007−221768A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−342599(P2006−342599)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(506422261)ネメリクス・ソシエテ・アノニム (10)
【Fターム(参考)】