説明

信号伝送用フラットケーブル

【課題】ケーブルの形崩れを防止でき、しかも接地導体と金属層との間の電気的接触状態が不安定となることに起因する、信号伝送用フラットケーブルの高周波周波数帯域における信号伝送損失の悪化に伴う信号伝送特性の低下を抑止する。
【解決手段】上部電気絶縁薄膜層4は、外面側に位置する第1電気絶縁薄膜4aと内面側に位置する第2電気絶縁薄膜4bとからなり、第2電気絶縁薄膜4bの下部電気絶縁薄膜層5側に、信号導体1および前記接地導体2、3が積層形成されている。第2電気絶縁薄膜4bは、そのケーブル幅方向寸法が、折り曲げ部2b、3bの寸法を含めたケーブル幅方向寸法とほぼ等しく形成されている。第2電気絶縁薄膜4bのケーブル幅方向の両端部は接地導体2、3のケーブル幅方向外側端部2a、3aと一体となってケーブル厚さ方向に向けて折り曲げられることにより折り曲げ部12,13が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型でかつ優れた電気特性を有する信号伝送用フラットケーブル、特に、携帯電話やノートパソコン等の内部配線に適した信号伝送用フラットケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコンのような高密度配線電子機器に使用される信号伝送用フラットケーブルには、狭い空間での配線を可能とするために薄型でかつ高周波帯域での伝送損失が小さいことが要求される。
【0003】
このような信号伝送用フラットケーブルとして、図3に示すように、金属薄膜からなる信号導体51と、信号導体のケーブル幅方向の両側に配置され、金属薄膜からなる接地導体52、53と、信号導体51および接地導体52、53をケーブル厚さ方向の上下から被覆する上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55と、金属層56の一方面に電気絶縁プラスチック層57が積層され、電気絶縁プラスチック層57が外面側となるようにして上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55の直接外周に設けられた保護遮蔽層58とを備え、保護遮蔽層58は、ケーブル横断面において上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55を一括包囲すると共に、ケーブル長手方向において一方の端縁部59が他方の端縁部60の外側に重ね合わせたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−300343(段落0033、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された信号伝送用フラットケーブルは、上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55と保護遮蔽層58との間の導電性接着層を省略して上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55の直接外周に保護遮蔽層58を設け、しかも保護遮蔽層58はケーブル横断面において上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55を一括包囲する構成としたため、高周波信号の伝送損失を抑制して低損失化をはかることができるものである。
【0006】
しかしながら、この信号伝送用フラットケーブルでは、上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55と保護遮蔽層58とは接着されて無いため、保護遮蔽層58が上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55から剥離してケーブルの形崩れが発生しやすい。
【0007】
このため、上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55を加熱によって溶融接着可能な熱可塑性樹脂材料により形成し、保護遮蔽層58の外部から加熱、加圧して上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55と金属層56とを接着させることにより保護遮蔽層58の上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55からの剥離を防止してケーブルの形崩れの発生を防止することが考えられる。
【0008】
しかし、この場合、保護遮蔽層58の外部からの加熱、加圧により上部電気絶縁薄膜層54および下部電気絶縁薄膜層55がケーブル幅方向に延びるように変形し、図4に示すように、接地導体52の幅方向外側端部52aと金属層56との間および接地導体53の幅方向外側端部53aと金属層56との間に隙間61、62が発生し、接地導体52の幅方向外側端部52aと金属層56との電気的接触状態および接地導体53の幅方向外側端部53aと金属層56との電気的接触状態がより不安定になり、信号伝送用フラットケーブルの高周波周波数帯域における信号伝送損失が増大することにより信号伝送特性が低下することが明らかになった。
【0009】
そこで、本発明は、ケーブルの形崩れを防止でき、しかも接地導体と金属層との間の電気的接触状態が不安定となることに起因する、信号伝送用フラットケーブルの高周波周波数帯域における信号伝送損失の悪化に伴う信号伝送特性の低下を抑止することができる信号伝送用フラットケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するため、請求項1の発明は、金属薄膜からなる信号導体と、前記信号導体のケーブル幅方向の両側に配置され、金属薄膜からなる接地導体と、前記信号導体および前記接地導体をケーブル厚さ方向の上下から被覆する上部電気絶縁薄膜層および下部電気絶縁薄膜層と、金属層の一方面に電気絶縁プラスチック層が積層され、前記電気絶縁プラスチック層が外面側に位置して前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層の直接外周に形成される保護遮蔽層とを備え、
前記保護遮蔽層は、ケーブル横断面において前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層を一括包囲するとともに、ケーブル長手方向において一方の端縁部が他方の端縁部の外側に重ね合わせて形成され、かつ前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層と前記金属層とは、前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層を溶融させることにより接着されており、
前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層の少なくとも一方は、外面側に位置する第1電気絶縁薄膜と内面側に位置する第2電気絶縁薄膜とからなると共に、前記上部電気絶縁薄膜層が前記第1電気絶縁薄膜および前記第2電気絶縁薄膜からなるときは前記第2電気絶縁薄膜の前記下部電気絶縁薄膜層側に、前記下部電気絶縁薄膜層が前記第1電気絶縁薄膜および前記第2電気絶縁薄膜からなるときは前記第2電気絶縁薄膜の前記上部電気絶縁薄膜層側に、前記信号導体および前記接地導体が積層形成されており、
前記信号導体のケーブル幅方向の両側に配置された前記接地導体のケーブル幅方向端部には、前記接地導体と前記金属層との接触面積を確保するための折り曲げ部が、前記接地導体と前記第2電気絶縁薄膜とが一体となってケーブル厚さ方向に向けて形成されている信号伝送用フラットケーブルを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、保護遮蔽層は、ケーブル横断面において上部電気絶縁薄膜層および下部電気絶縁薄膜層を一括包囲するとともに、ケーブル長手方向において一方の端縁部が他方の端縁部の外側に重ね合わせて形成され、かつ上部電気絶縁薄膜層および下部電気絶縁薄膜層と金属層とは、上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層を溶融させることにより接着されており、ケーブルの形崩れを防止できる。
【0012】
上部電気絶縁薄膜層および下部電気絶縁薄膜層の少なくとも一方は、外面側に位置する第1電気絶縁薄膜と内面側に位置する第2電気絶縁薄膜とからなると共に、上部電気絶縁薄膜層が第1電気絶縁薄膜および第2電気絶縁薄膜からなるときは第2電気絶縁薄膜の下部電気絶縁薄膜層側に、下部電気絶縁薄膜層が第1電気絶縁薄膜および第2電気絶縁薄膜からなるときは第2電気絶縁薄膜の前記上部電気絶縁薄膜層側に、信号導体および接地導体が積層形成されており、金属薄膜からなる信号導体および接地導体が第2電気絶縁薄膜で補強されているので取扱いが容易となる。また、市販の銅張積層版を購入して第2電気絶縁薄膜に信号導体および接地導体を形成することができるので、安価に製造することが可能となる。
【0013】
信号導体のケーブル幅方向の両側に配置された接地導体のケーブル幅方向端部には、接地導体と金属層との接触面積を確保するための折り曲げ部が、接地導体と第2電気絶縁薄膜とが一体となってケーブル厚さ方向に向けて形成されており、信号伝送用フラットケーブルの高周波周波数帯域における信号伝送損失の悪化に伴う信号伝送特性の低下を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】「本発明の実施形態の信号伝送用フラットケーブルの横断面図である。」
【図2】(a)〜(d)「本発明の実施形態の信号伝送用フラットケーブルの製造方法を説明する横断面図である。」
【図3】「従来の信号伝送用フラットケーブルの横断面図である。」
【図4】「従来の信号伝送用フラットケーブルの横断面図である。」
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の第1実施形態の信号伝送用フラットケーブルの横断面図であり、金属薄膜からなる信号導体1と、信号導体のケーブル幅方向の両側に配置され、金属薄膜からなる接地導体2、3と、信号導体1および接地導体2、3をケーブル厚さ方向の上下から被覆する上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5と、金属層6の一方面に電気絶縁プラスチック層7が積層され、電気絶縁プラスチック層7が外面側となるようにして上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5の直接外周に設けられた保護遮蔽層8とを備え、保護遮蔽層8は、ケーブル横断面において上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5を一括包囲すると共に、ケーブル長手方向において一方の端縁部9が他方の端縁部10の外側に重ね合わせることにより重ね合わせ部11が形成されている。
【0016】
金属層6と電気絶縁プラスチック層7とを積層一体化した保護遮蔽層8を上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5の外周に被覆形成した状態で、保護遮蔽層8の上下方向から加熱加圧(ホットプレス)を施すことにより、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5が軟化溶融されて金属層6と接着され、さらに、端縁部9、10の重ね合わせ部11において電気絶縁プラスチック層7が軟化溶融されて金属層6と電気絶縁プラスチック層7とが接着される。これによって、保護遮蔽層8の形崩れを防止できるとともに、端縁部9、10の重ね合わせ部11における開口の発生を防止できる。
【0017】
上部電気絶縁薄膜層4は、外面側に位置する第1電気絶縁薄膜4aと内面側に位置する第2電気絶縁薄膜4bとからなり、第2電気絶縁薄膜4bの下部電気絶縁薄膜層5側に、信号導体1および前記接地導体2、3が積層形成されている。
【0018】
第2電気絶縁薄膜4bは、そのケーブル幅方向寸法が信号導体1および接地導体2、3が配置されたケーブル幅方向寸法であって接地導体2、3の幅方向外側端部2a、3aに形成された折り曲げ部2b、3bの寸法を含めたケーブル幅方向寸法とほぼ等しく形成されている。そして、第2電気絶縁薄膜4bのケーブル幅方向の両端部は接地導体2、3のケーブル幅方向外側端部2a、3aと一体となってケーブル厚さ方向に向けて折り曲げられることにより折り曲げ部12,13が形成されている。
【0019】
この場合、折り曲げ部12、13は接地導体2、3の外側端部2a、3aを金属層6側に位置させて形成されており、接地導体2、3と金属層6とは安定した電気的接触がなされるようになり、信号伝送用フラットケーブルの高周波周波数帯域における信号伝送損失の増大を抑止できる。
【0020】
信号導体1および接地導体2、3は、共に良導電性の金属で形成されており、具体的には、産業的に良導電性金属として一般的である銅(導電率:5.76×10ジーメンス/m)を箔状に加工したものを電気絶縁薄膜層4bに積層することにより、または銅を電気絶縁薄膜層4bに蒸着あるいはめっきを施すことにより形成することができ、銅以外の金属としてはアルミニウム(導電率:3.96×10ジーメンス/m)をあげることができる。
【0021】
なお、携帯電話やノートパソコンのように2GHzを越えるような高周波信号が伝送される電子機器では、所謂表皮効果と呼ばれる現象によって数ミクロンの表面層に電流が集中するので、導電率が銅やアルミニウムより小さいニッケルのようなめっき層は伝送損失を増大させることから、このようなめっき層を信号導体1や接地導体2、3の表面に形成しないようにする必要がある。
【0022】
保護遮蔽層8を形成する金属層6は、信号導体1や接地導体2、3と同様に、銅またはアルミニウムのような良導電性の金属で形成することが好ましい。なお、従来の信号伝送用フラットケーブルにおいては金属層6の表面に導電性接着層を形成して上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5と金属層6とを接着させていたが、導電性接着層は、前述したように、2GHzを越えるような高周波信号が伝送される電子機器では伝送損失を増大させるので、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5と金属層6との間には導電性接着層は形成しないようにする必要がある。
【0023】
上部電気絶縁薄膜層4と下部電気絶縁薄膜層5とは、いずれも、例えば0.125mmの同じ厚さとすることにより、特性インピーダンスが50Ωの丸型同軸ケーブルと同様の信号伝送特性を有する信号伝送用フラットケーブルを実現できる。本実施形態では、第1電気絶縁薄膜の厚さを0.100mmとし、第2電気絶縁薄膜の厚さを0.025mmとすることにより上部電気絶縁層4の厚さを0.125mmとしている。このように、厚さ0.025mmの電気絶縁薄膜に銅箔を積層した銅張積層板は市販品を使用することにより、信号伝送用フラットケーブルのコストダウンをはかることができる。
【0024】
上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5は、加熱によって溶融接着する性質を有する熱可塑性樹脂材料からなっており、保護遮蔽層8の外側から加えられる熱によって上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5と金属層6とが溶融接着されることにより、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5と保護遮蔽層8とが剥離されにくくなり、保護遮蔽層8の形崩れを防止でき、また、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5と金属層6とは伝送損失の増加要因となる接着剤の介在なしに直接接着されているので、低損失での伝送が可能である。
【0025】
電気絶縁プラスチック層7は、加熱によって溶融瀬着する性質を有する熱可塑性プラスチック材料からなっている。このため、保護遮蔽層8は、金属層6を内側、電気絶縁プラスチック層7を外側にして両者を接着剤等の介在物なしで直接積層形成した状態でケーブル横断面において上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5を一括包囲している。すなわち、保護遮蔽層8は、接着剤等の介在物なしで金属層6と電気絶縁プラスチック層7とを積層したものであり、接着剤が存在しない分だけ薄く形成することができ、薄型の信号伝送用フラットケーブルを実現できる。
【0026】
また、保護遮蔽層8は、ケーブル長手方向において一方の端縁部9が他方の端縁部10の外側に重ね合わせて形成されている。しかも、端縁部9、10の重ね合わせ部11において金属層6と電気絶縁プラスチック層7とが電気絶縁プラスチック層7の加熱による溶融によって接着されており、重ね合わせ部11において開口が発生しにくくなり、遮蔽効果の低下を抑止することができる。
【0027】
なお、保護遮蔽層8を上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5の外周に被覆形成した状態で、保護遮蔽層8の上下方向からホットプレスを行う場合、ホットプレスによって電気絶縁プラスチック層7が変形しないようにするため、または変形しにくくするため、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5と電気絶縁プラスチック層7とは同種の材料を使用すること、または、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5の方が電気絶縁プラスチック層7よりも低温で熱軟化する材料を選択して使用することが好ましい。
【0028】
上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5は加熱によって溶融接着する性質を有し、かつ、2GHzを越えるような高周波帯域での誘電率および誘電正接が小さい材料であることが好ましく、このような材料としては、液晶ポリマーやポリテトラフルオロエチレンをあげることができる。
【0029】
液晶ポリマーは、溶融時に光学的異方性を示す熱可塑性樹脂であり、具体的には、全芳香族系もしくは半芳香族系のポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエステルアミド、あるいはこれらを含有する樹脂組成物があげられ、なかでも(A)液晶ポリエステルを連続相とし(B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体を分散相とする液晶ポリエステル樹脂組成物が好ましい。
【0030】
電気絶縁プラスチック層7は、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5と同様に加熱によって溶融接着する性質を有し、かつ、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5と金属層6とを加熱により接着させるときに加えられる熱よっては変形しないまたは変形しにくい性質を有する必要があり、このような材料としては、電気絶縁薄膜層4を液晶ポリマーで形成したときは、液晶ポリマーあるいは極性有機溶媒可溶性ポリアミドイミド樹脂とフッ素系樹脂とを含有するプラスチック組成物をあげることができる。
【0031】
極性有機溶媒可溶性ポリアミドイミド樹脂単独で形成した被膜の誘電率は3.5以上、誘電正接は0.012以上(誘電率、誘電正接はいずれも空洞共振器摂動により周波数1GHzで測定)であるが、極性有機溶媒可溶性ポリアミドイミド樹脂とフッ素系樹脂とを含有するプラスチック組成物で形成した被膜(電気絶縁プラスチック層7)は、誘電率が3.20以下、誘電正接が0.01以下(誘電率、誘電正接はいずれも空洞共振器摂動により周波数1GHzで測定)となり、電気特性が著しく向上する。
【0032】
フッ素系樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等から選ばれた1種又は2種以上が使用される。
【0033】
本実施形態の信号伝送用フラットケーブルの製造方法を図2に基づいて説明すると、第2電気絶縁薄膜4bの下面に第2電気絶縁薄膜4bと等しい横幅寸法を有する銅箔Cを積層した銅張積層板を用意し(図2(a))、銅箔Cをエッチングすることにより信号導体1および接地導体2、3を形成する(図2(b))。次に、第2電気絶縁薄膜4bの上部に第1電気絶縁薄膜4aを積層して上部電気絶縁薄膜層4を形成すると共に、信号導体1および接地導体2、3の下部に下部電気絶縁薄膜層5を設け(図2(c))、第2電気絶縁薄膜4bのケーブル幅方向の両端部を接地導体2、3のケーブル幅方向外側端部2a、3aと一体に折り曲げることにより折り曲げ部12、13を形成する(図2(d))。
【0034】
続いて、図1に示すように、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5の外周に保護遮蔽層8を被覆形成し、保護遮蔽層8の上下方向から加熱加圧(ホットプレス)を施すことにより、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5が軟化溶融されて金属層6と接着され、さらに、端縁部9、10の重ね合わせ部11において電気絶縁プラスチック層7が軟化溶融されて金属層6と電気絶縁プラスチック層7とが接着され、信号伝送用フラットケーブルが作成される。
【0035】
本実施形態の信号伝送用フラットケーブルは、第2電気絶縁薄膜4bが金属薄膜である信号導体1および接地導体2、3を補強する役目を担っており、第2電気絶縁薄膜4bと銅箔Cとを積層した銅張積層板の使用は、上部電気絶縁薄膜層4および下部電気絶縁薄膜層5よりも横幅が大なる接地導体2、3の取り扱い性を大幅に改善しており、これによって、折り曲げ部13、14の形成が容易化される。
【産業状の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、電気絶縁薄膜層と保護遮蔽層との間の剥離発生に起因する保護遮蔽層の形崩れの防止をはかることができるとともに、接地導体と金属遮蔽層との電気的接触が安定化された信号伝送用フラットケーブルを実現でき、携帯電話やノートパソコン等のように高密度配線電子機器の内部配線への適用が期待される。
【符号の説明】
【0037】
1:信号導体
2、3:接地導体
2a、3a:幅方向外側端部
2b、3b:折り曲げ部
4:上部電気絶縁薄膜層
4a:第1電気絶縁薄膜
4b:第2電気絶縁薄膜
5:下部電気絶縁薄膜層
6:金属層
7:電気絶縁プラスチック層
8:保護遮蔽層
11:重ね合わせ部
12、13:折り曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄膜からなる信号導体と、前記信号導体のケーブル幅方向の両側に配置され、金属薄膜からなる接地導体と、前記信号導体および前記接地導体をケーブル厚さ方向の上下から被覆する上部電気絶縁薄膜層および下部電気絶縁薄膜層と、金属層の一方面に電気絶縁プラスチック層が積層され、前記電気絶縁プラスチック層が外面側に位置して前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層の直接外周に形成される保護遮蔽層とを備え、
前記保護遮蔽層は、ケーブル横断面において前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層を一括包囲するとともに、ケーブル長手方向において一方の端縁部が他方の端縁部の外側に重ね合わせて形成され、かつ前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層と前記金属層とは、前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層を溶融させることにより接着されており、
前記上部電気絶縁薄膜層および前記下部電気絶縁薄膜層の少なくとも一方は、外面側に位置する第1電気絶縁薄膜と内面側に位置する第2電気絶縁薄膜とからなると共に、前記上部電気絶縁薄膜層が前記第1電気絶縁薄膜および前記第2電気絶縁薄膜からなるときは前記第2電気絶縁薄膜の前記下部電気絶縁薄膜層側に、前記下部電気絶縁薄膜層が前記第1電気絶縁薄膜および前記第2電気絶縁薄膜からなるときは前記第2電気絶縁薄膜の前記上部電気絶縁薄膜層側に、前記信号導体および前記接地導体が積層形成されており、
前記信号導体のケーブル幅方向の両側に配置された前記接地導体のケーブル幅方向端部には、前記接地導体と前記金属層との接触面積を確保するための折り曲げ部が、前記接地導体と前記第2電気絶縁薄膜とが一体となってケーブル厚さ方向に向けて形成されていることを特徴とする信号伝送用フラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−119198(P2011−119198A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293334(P2009−293334)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(505303668)株式会社テクノ・コア (4)
【出願人】(502252699)
【Fターム(参考)】