説明

信号再生装置

【課題】 信号再生装置において、例外処理から復帰する際に再生信号が飽和する期間を短縮し、直ちに再生可能な状態になるよう、制御する。
【解決手段】 可変増幅部2は再生された入力信号SIを、与えられたゲインGに応じて増幅し、出力する。制御値算出部20は可変増幅部2の出力信号SOから、ゲインGの設定のための制御値CVを算出する。この制御値CVに応じて、制御部8はゲインGを設定し、可変増幅部2に与える。ディフェクト検出部11はディフェクト検出の発生を検出したとき、検出信号SDを制御部8に送る。検出信号SDが出力されている間、制御部8の例外処理時制御手段10は、ゲインGを、所定値に固定するか、増加しないように制限をかける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクのような光学式記録媒体に記録されたデータの再生装置に関し、特に、データ再生信号の自動利得制御(AGC)機能を有するディジタル制御回路を備えた信号再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクシステムにおける信号処理回路として、信号再生系の利得を固定して再生すると、再生振幅が小さすぎたり、逆に大きすぎたりして信号が飽和してしまう可能性があった。このため、再生信号の振幅を一定にするために、自動利得制御(AGC)が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、光ピックアップから出力される再生信号の処理にAGCを用いた例が開示されている。すなわち、信号の上側および下側それぞれの検波処理を行い、振幅の大きさを検知し、その検知した大きさに応じたゲインを可変増幅器に与える。また、出力信号の中心を検知するための直流生成回路の出力も可変ゲインアンプに与え、入力信号のオフセットを打ち消す。これら振幅値や直流値を、AGCの処理を行う際に可変増幅器に与えることによって、入力信号の振幅が変化しても、出力信号の振幅が一定になるように動作させることができる。
【0004】
光ディスクシステムにおける信号処理回路に関しては、再生信号の信頼性を少しでも向上させるような回路構成の開発が期待されている。
【特許文献1】特開2000−134049号公報(8頁、図1)
【特許文献2】特開平10−269590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の信号再生装置では、ディスク面のキズやブラックドットの検出(以下、ディフェクト検出と呼ぶ)、トラッキング外れやアクセス動作(以下、これら3つを例外処理と称する)の間でも、AGC回路が動作し続ける。このため、しばらくの間、信号の再生ができなくなる場合があった。
【0006】
図11は従来の信号再生装置の構成の一例を示すブロック図である。光ピックアップから出力された再生信号は入力端子51を介して(入力信号SI)可変増幅部52によってて増幅された後、出力端子59に出力信号SOとして出力される。その一方で、出力信号SOは低域成分除去部53によって直流成分が除去される。ここで、可変増幅部52の増幅度は制御部58が出力する制御値(ゲインG)によって決定される。低域成分除去部53から出力された信号は、ピーク比較部55によって、そのピーク値と所定値54とが比較される。比較の結果は信号保持部56により一定時間保持される。さらに、信号保持部56から出力された信号は、平均化部57によって一定間隔で加算され、その和が平均値として出力され、制御部58に入力される。制御部58は、可変増幅部52にゲインGを与え、装置全体に負帰還がかかるように増幅レベルを制御する。
【0007】
図12は図11の信号再生装置におけるディスク上にあるディフェクト通過中の信号波形を示すタイミングチャートである。図12において、(a)は入力端子51を介して可変増幅部52に与えられる入力信号SI、(b)は可変増幅部52に与えられるゲインG、(c)は可変増幅部52から出力された出力信号SO、(d)はディスク面のキズ、汚れ、ほこり等を通過するときに検出できる信号である。ディフェクト検出中のとき、“H”になる。
【0008】
図12において、時間T1のディフェクト検出直前では、入力信号SIの振幅が小さくなり、ゲインGが増加し始める。時間T2でディフェクト検出が始まる。時間T3では、ゲインGが帰還されて出力信号SOの振幅が上昇し始める。時間T4では、出力信号SOの振幅が所望の値に達した、またはゲイン値Gが最大値になっている。時間T5では、入力信号SIの振幅が増加し始めている。このとき、ゲインGは所望の値と比べて高いので、出力信号SOが飽和してしまう期間が発生する。時間T6では、入力信号SIの振幅が所望の値になったため、ゲインGが減少し始める。このため、時間T7では帰還により出力信号SOが下降し始めている。時間T9では、ゲインGが所望の値になるため、出力信号SOも安定する。
【0009】
このように、ディフェクト検出時において、出力信号SOが飽和する期間が生じる。
【0010】
図13は図11の信号再生装置におけるトラッキング外れ時の信号波形を示すタイミングチャートである。図13において、(a)は入力端子51を介して可変増幅部52に与えられる入力信号SI、(b)は可変増幅部52に与えられるゲインG、(c)は可変増幅部52から出力された出力信号SO、(d)はトラッキング外れが検出されたか否かを示す信号である。トラッキング外れが検出されたとき、“H”になる。
【0011】
図13において、時間T1のトラッキング外れ直前では、入力信号SIの振幅が小さくなる。このとき、ゲインGも増加し始める。時間T2では、トラッキング外れが検出されている。時間T3では、ゲインGが帰還されて出力信号SOの振幅が増加し始めている。時間T4では、出力信号SOの振幅が所望の値に達している、または、ゲインGが最大値になっている。時間T5では、入力信号SIの振幅が増加し始め、トラッキングを引きこみ始めている。入力信号SIの振幅が増加し始めてもゲインGは所望の値と比べて高いので、出力信号SOが飽和する期間が生じる。時間T6では入力信号SIの振幅が所望の値になったため、ゲインGが減り始める。このため、時間T7では、帰還により出力信号SOが減少し始めている。時間T9では、ゲインGが所望の値になるため、出力信号SOも安定する。
【0012】
このように、トラッキング外れ時において、出力信号SOが飽和する期間が生じる。
【0013】
図14は図11の信号再生装置におけるアクセス動作時の信号波形を示すタイミングチャートである。図14において、(a)は入力端子51を介して可変増幅部52に与えられる入力信号SI、(b)は可変増幅部52に与えられるゲインG、(c)は可変増幅部52から出力された出力信号SO、(d)はアクセス動作中か否かを示す信号である。アクセス動作中のとき、“H”になる。
【0014】
図14において、時間T1のアクセス動作直前では、入力信SIの振幅のオフセットが明側に移動する。AGC動作により、ゲインGが下がったと判断され、ゲインGは増加し始める。時間T3では、ゲインGが帰還されて出力信号SOの振幅が増加し始めている。時間T4は出力信号SOの振幅が所望の値に達した、もしくは、ゲインGが最大値になった時点である。時間T5では、入力信号SIの振幅が上昇し始め、ゲインGは所望の値と比べて高いので、出力信号SOが飽和する期間が生じる。時間T6では、入力信号SIの振幅が所望の値になったため、ゲインGが下がり始める。このため、時間T7で、帰還により出力信号SOが下降し始めている。時間T9では、ゲインGが所望の値になるため、出力信号SOも安定する。
【0015】
このように、アクセス動作時において、出力信号が飽和する期間が生じる。
【0016】
図12〜図14のように、従来技術では、例外処理から復帰する際に再生信号が飽和する期間が生じる場合がある。これにより、次のような問題がある。
1)例外処理から復帰する際、目標データへのアクセスタイムが増大してしまう。
2)飽和する期間は再生信号の傾きが変化するため、再生ジッタ(アナログ信号の時間軸の揺れ)が発生し、誤ったデータを読み取る可能性が高くなる。
【0017】
前記の問題に鑑み、本発明は、光学式記録媒体に記録されたデータを再生する信号再生装置において、例外処理から復帰する際に、再生信号が飽和する期間を短縮し、直ちに再生可能な状態になるよう制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の課題を解決するために、本発明は、光学式記録媒体に記録されたデータを再生する信号再生装置として、前記光学式記録媒体から再生された入力信号を受け、与えられたゲインに応じて増幅し、出力する可変増幅部と、前記可変増幅部の出力信号から、前記ゲインの設定のための制御値を算出する制御値算出部と、前記制御値算出部によって算出された制御値に応じて、前記ゲインを設定し、前記可変増幅部に与える制御部と、前記光学式記録媒体の再生における例外処理の発生を検出し、検出したとき、例外処理の発生を示す検出信号を前記制御部に送る例外処理検出部とを備え、前記制御部は、前記例外処理検出部から前記検出信号によって例外処理の発生が通知されている間、前記ゲインを、所定値に固定する、または、増加しないように制限をかける、例外処理時制御手段を備えているものである。
【0019】
本発明によると、光学式記録媒体の再生において例外処理が発生したとき、例外処理検出部から制御部に、例外処理の発生を示す検出信号が送られる。制御部は、例外処理時制御手段を備えており、検出信号によって例外処理の発生が通知されている間、例外処理時制御手段は、可変増幅部に与えるゲインを、所定値に固定する、または、増加しないように制限をかける。このため、例外処理が発生している間、可変増幅部の入力信号の振幅が小さくなった場合でも、AGC動作におけるゲインが増加しない。したがって、例外処理から復帰したときに、帰還によって可変増幅部の出力信号が飽和する期間が、従来よりも短縮される。
【0020】
また、前記本発明に係る信号再生装置における例外処理検出部は、例外処理として、ディフェクト検出、トラッキング外れ、およびアクセス動作のうちの少なくともいずれか1つを、検出するものであるのが好ましい。
【0021】
また、前記本発明に係る信号再生装置における例外処理検出部は、前記検出信号の停止を、例外処理が終了してから所定時間遅延させる手段を備えているのが好ましい。
【0022】
また、前記本発明に係る信号再生装置における例外処理時制御手段は、前記ゲインを、前記検出信号によって例外処理の発生が通知された直前の値に、固定するものであるのが好ましい。
【0023】
また、前記本発明に係る信号再生装置における例外処理時制御手段は、前記ゲインを、前記検出信号によって例外処理の発生が通知された直前の値に所定値を加算または減算して得た値に、固定するものであるのが好ましい。
【0024】
また、前記本発明に係る信号再生装置における制御値算出部は、前記可変増幅部の出力信号の交流成分を通過させる低域成分除去部と、前記低域成分除去部の出力信号のピーク値を求め、所定値とを比較するピーク比較部と、前記ピーク比較部の出力を保持する信号保持部と、前記信号保持部に保持された値を平均化する平均化部とを備え、前記平均化部の出力を、前記制御値として出力するものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、例外処理から復帰したときに再生信号が飽和する期間を、従来よりも短縮することができる。したがって、信号再生の応答性や信頼性を、向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る信号再生装置の構成を示すブロック図である。図1の信号再生装置は、光ディスク等の光学式記録媒体に記録されたデータを再生する。
【0028】
図1において、入力端子1は光ピックアップから出力された再生信号を入力信号SIとして受ける。可変増幅部2は入力端子1から入力信号SIを受け、与えられたゲインGに応じてこれを増幅し、出力する。ここでのゲインGは、制御部8によって制御される。可変増幅部2の出力信号SOは出力端子9に出力される。またその一方で、出力信号SOは低域成分除去部3に与えられ、低域成分除去部3はその直流成分を除去し、交流成分を通過させる。低域成分除去部3の出力信号はピーク比較部5に送られ、ピーク比較部5は、低域成分除去部3の出力信号のピーク値を求め、これを所定値4と比較する。比較結果は信号保持部6により一定時間保持される。平均化部7は、信号保持部6から出力された信号を一定間隔で加算し、その和を平均値として出力する。この平均値は、可変増幅部2におけるゲインを制御する基となる制御値CVとして、制御部8に与えられる。低域成分除去部3、ピーク比較部5、信号保持部6および平均化部7によって、制御値算出部20が構成されている。
【0029】
例外処理検出部としてのディフェクト検出部11は、光学式記録媒体の再生におけるディフェクト検出の発生を検出する。ディフェクトとは、例えば、光ディスクのディスク面におけるキズ、汚れ、ほこり等である。そして、検出したとき、ディフェクト検出の発生を示す検出信号SDを制御部8に送る。
【0030】
制御部8は、通常状態、すなわち検出信号SDを受けていないときは、帰還された制御値CVに応じてゲインGを制御する。すなわち、自動利得制御(AGC:Auto Gain Control)が実現される。
【0031】
一方、検出信号SDによってディフェクト検出の発生が通知されたとき、例外処理時制御手段10が、ゲインGが増加しないように制限をかける。この動作は、検出信号SDによる通知がなくなるまで、すなわち例外処理としてのディフェクト検出が終了するまで、続けられる。あるいは、例外処理時制御手段10は、検出信号SDによってディフェクト検出の発生が通知されている間、ゲインGを固定する。固定する値は、例えば、検出信号SDによってディフェクト検出の発生が通知された直前のゲインGの値とする。
【0032】
図2は図1の信号再生装置におけるディフェクト検出発生時の信号波形を示すタイミングチャートである。図2において、(a)は可変増幅部2の入力信号SI、(b)は可変増幅部2のゲインG、(c)は可変増幅部2の出力信号SO、(d)はディフェクト検出部11から出力された検出信号SDである。
【0033】
図2において、時間T1のディフェクト検出直前では、入力信号SIの振幅が小さくなり始める。このとき、ゲインGは増加し始める。時間T2において、ディフェクト検出の発生が検出信号SDによって通知される。検出信号SDを受けた制御部8では、例外処理時制御手段10が、ゲインGを、増加しないように制限をかけるか、所定値に固定する。時間T5において、ディフェクト検出から復帰したとき、例外処理時制御手段10の動作は解除され、通常状態のAGCが動作する。すると、入力信号SIの振幅が所望の振幅になる時間T6まで、ゲインGは増加する。ただし、時間T2からT5までの間、ゲインGは制限または固定されていたので、所望値と比べて高いゲインGによって出力信号SOが飽和してしまう期間が、従来よりも短縮される。入力信号SIの振幅が所望の値になると、ゲインGは下がり始める。時間T7では、帰還により出力信号SOの振幅が小さくなり始める。時間T8では、ゲインGが所望の値になるため、出力信号SOも所望の振幅で安定する。
【0034】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態に係る信号再生装置の構成を示すブロック図である。図3では、図1と共通の構成要素には図1と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
【0035】
図3の構成では、ディフェクト検出の発生を示す検出信号SDについて、復帰する側を引き伸ばす引き伸ばし手段12を備えている。すなわち、引き伸ばし手段12は、検出信号SDを停止するタイミングを、例外処理としてのディフェクト検出が終了してから所定時間遅延させ、新たな検出信号SDaとして出力する。この新たな検出信号SDaが、検出信号SDの代わりに、制御部8に与えられる。本実施形態では、ディフェクト検出部11および引き伸ばし手段12によって、例外処理検出部が構成されている。
【0036】
図4は図3の信号再生装置におけるディフェクト検出発生時の信号波形を示すタイミングチャートである。図4において、(a)は可変増幅部2の入力信号SI、(b)は可変増幅部2のゲインG、(c)は可変増幅部2の出力信号SO、(d)は引き伸ばし手段12から出力された検出信号SDaである。
【0037】
図4の動作は、第1の実施形態の図2とほぼ同様である。図2と異なるのは、ディフェクト検出が終了した時間T5において検出信号SDaが停止せずに、所定時間後の時間T6において検出信号SDaが停止している点である。すなわち、時間T5からT6までの間も、ゲインGは制限または固定されている。ゲインGが制限または固定される期間が時間T6まで延びているので、所望値と比べて高いゲインGによって出力信号SOが飽和してしまう期間が、第1の実施形態よりも短縮される。
【0038】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る信号再生装置の構成は、図3と同様である。異なるのは、例外処理時制御手段10が、検出信号SDaによってディフェクト検出の発生が通知されている間、ディフェクト検出の発生が通知された直前のゲインGの値に所定値を加算または減算して得た値に、ゲインGを固定する点である。
【0039】
図5は本実施形態におけるディフェクト検出発生時の信号波形を示すタイミングチャートである。図2において、(a)は可変増幅部2の入力信号SI、(b)は可変増幅部2のゲインG、(c)は可変増幅部2の出力信号SO、(d)は引き伸ばし手段12から出力された検出信号SDaである。
【0040】
図5の動作は、第2の実施形態の図4とほぼ同様である。図4と異なるのは、ディフェクト検出の発生が検出された時間T2において、例外処理時制御手段10が、そのときのゲインGから所定値を減算している点である。このときの所定値は、ある特定の状態において、出力信号SOの飽和期間が短くなるような値に設定すればよい。これにより、時間T6において検出信号SDaが停止し、AGC動作が復帰した後に、ゲインGは上昇せず、出力信号SOの振幅が所望の振幅で安定する。
【0041】
(第4の実施形態)
図6は本発明の第4の実施形態に係る信号発生装置の構成を示すブロック図である。図6では、図1および図3と共通の構成要素には図1および図3と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
【0042】
図6では、ディフェクト検出部11の代わりに、トラッキング外れ中か否かを検出するトラッキング外れ検出部13が設けられている。トラッキング外れ検出部13は、トラッキング外れを検出したとき、トラッキング外れ検出の発生を示す検出信号SD2を出力する。引き伸ばし手段12は、検出信号SD2を停止するタイミングを、例外処理としてのトラッキング外れ検出が終了してから所定時間遅延させ、新たな検出信号SD2aとして出力する。この新たな検出信号SD2aが、検出信号SD2の代わりに、制御部8に与えられる。本実施形態では、トラッキング外れ検出部13および引き伸ばし手段12によって、例外処理検出部が構成されている。なお、引き伸ばし手段12を設けないで、検出信号SD2を制御部8に与えてもよい。
【0043】
制御部8は、検出信号SD2aによってトラッキング外れ検出の発生が通知されたとき、例外処理時制御手段10が、ゲインGを初期の設定値に固定する。なお、検出信号SD2aによってトラッキング外れ検出の発生が通知された直前のゲインGの値に、固定してもかまわない。あるいは、ゲインGが増加しないように制限をかけてもかまわない。
【0044】
図7は図6の信号再生装置におけるトラッキング外れ検出発生時の信号波形を示すタイミングチャートである。図7において、(a)は可変増幅部2の入力信号SI、(b)は可変増幅部2のゲインG、(c)は可変増幅部2の出力信号SO、(d)はトラッキング外れ検出部13から引き伸ばし手段12を介して出力された検出信号SD2aである。
【0045】
本実施形態は、まだ1度もトラッキング引き込みを行ったことのない場合に適している。このため、図7では、AGCのゲインGがでたらめな値になっているものとした。
【0046】
図7において、時間T1のトラッキング外れ検出直前では、入力信号SIの振幅が小さくなり始める。時間T2において、トラッキング外れ検出が検出信号SD2aによって通知される。検出信号SD2aを受けた制御部8では、例外処理時制御手段10が、ゲインGを初期設定値に設定する。もちろん、トラッキング外れ検出と同時でなくても、図7(b)で示したゲイン設定期間中に初期設定値に設定すれば、同等の効果が得られることは言うまでもない。時間T6において、トラッキング引き込みが終了してから引き伸ばされた検出信号SD2aが停止した後、出力信号SOの振幅が所望の振幅になった状態から、通常のAGCが動作する。このとき、ゲインGは所望の値に近い状態になっているた
め(初期設定値が所望の値に一致することは少ないので、図7では少し高い値を取るように図示している)、出力信号SOが飽和する期間が従来よりも短縮できる。時間T6では、入力信号SIの振幅が所望の値になったため、ゲインGが下がり始める。時間T7では、下がり始めたゲインGが帰還されて出力信号SOの振幅が減り始める。時間T8では、ゲインGが所望の値になるため、出力信号SOも所望の振幅で安定する。
【0047】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る信号再生装置の構成は、図6と同様である。第4の実施形態と異なるのは、検出信号SD2aによってトラッキング外れ検出の発生が通知されたとき、例外処理時制御手段10が、ゲインGが増加しないように制限をかける点である。本実施形態は、再トラッキング引き込み時に適している。
【0048】
図8は本実施形態におけるトラッキング外れ検出発生時の信号波形を示すタイミングチャートである。図8において、(a)は可変増幅部2の入力信号SI、(b)は可変増幅部2のゲインG、(c)は可変増幅部2の出力信号SO、(d)はトラッキング外れ検出部13から引き伸ばし手段12を介して出力された検出信号SD2aである。
【0049】
図8において、時間T1のトラッキング外れ検出直前では、入力信号SIの振幅が小さくなり始める。これとともに、ゲインGが増加し始める。時間T2において、トラッキング外れ検出が検出信号SD2aによって通知される。検出信号SD2aを受けた制御部8では、例外処理制制御手段10が、トラッキング外れ検出する前のゲインGを保持する、または、ゲインGが増加しないように制限をかける。時間T6において、トラッキング引き込みが終了してから引き伸ばされ検出信号SD2aが停止した後、出力信号SOの振幅が所望の振幅になった状態から、通常のAGCが動作する。このとき、ゲインGは上昇することもなく、出力信号SOの振幅が所望の振幅で安定する。
【0050】
(第6の実施形態)
図9は本発明の第6の実施形態に係る信号発生装置の構成を示すブロック図である。図9では、図1および図3と共通の構成要素には図1および図3と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
【0051】
図9では、ディフェクト検出部11の代わりに、アクセス動作を実行中か否かを検出するアクセス動作検出部14が設けられている。アクセス動作検出部14は、アクセス動作を実行中であるとき、アクセス動作の検出を示す検出信号SD3を出力する。引き伸ばし手段12は、検出信号SD3を停止するタイミングを、例外処理としてのアクセス動作が終了してから所定時間遅延させ、新たな検出信号SD3aとして出力する。この新たな検出信号SD3aが、検出信号SD3の代わりに、制御部8に与えられる。本実施形態では、アクセス動作検出部14および引き伸ばし手段12によって、例外処理検出部が構成されている。なお、引き伸ばし手段12を設けないで、検出信号SD3を制御部8に与えてもよい。
【0052】
制御部8は、検出信号SD3aによってアクセス動作の検出が通知されたとき、例外処理時制御手段10が、ゲインGを初期の設定値に固定する。なお、検出信号SD3aによってトラッキング外れ検出の発生が通知された直前のゲインGの値に、固定してもかまわない。あるいは、ゲインGが増加しないように制限をかけてもかまわない。
【0053】
図10は図9の信号再生装置におけるアクセス動作検出時の信号波形を示すタイミングチャートである。図10において、(a)は可変増幅部2の入力信号SI、(b)は可変増幅部2のゲインG、(c)は可変増幅部2の出力信号SO、(d)はアクセス動作検出部14から引き伸ばし手段12を介して出力された検出信号SD3aである。
【0054】
図10において、時間T1のアクセス動作検出直前では、入力信号SIのレベルが明るいと判断される方へ下がり始める。このとき、検出信号SD3aを受けた制御部8では、例外処理時制御手段10が、アクセス動作検出する前のゲインGを保持する、または、ゲインGが増加しないように制限をかける。時間T6において、出力信号SOのレベルが所望の位置になる時点で通常のAGC動作を再開すると、ゲインGは上昇することもなく、出力信号SOが所望のレベルで安定する。
【0055】
以上説明した第1〜第6の実施形態は、いずれも、例外処理から復帰する際に再生信号が飽和する期間が短縮される構成になっているが、それぞれに特徴がある。第1の実施形態は、最もシンプルであり、ディフェクト検出中から復帰するときに再生信号が飽和する期間を、効果的に短縮させることができる。また、第2の実施形態は、平均的なディフェクトに対応した回路構成であるといえる。第3の実施形態は、図では最も効果があるような波形を示しているが、倍速再生などディフェクト信号の立ち上がり方が変化したとき、AGCのホールド値に加算や減算をしてしまうと、再生信号が余計に飽和してしまう可能性がある。このため、使用方法を選択する必要がある。
【0056】
第4および第5の実施形態は、それぞれ単独で採用しても、再生信号が飽和する期間を短縮できるが、さらに組み合わせて用いることによって、より効果的な構成になる、すなわち、トラッキング引き込みを初めて行う場合は第4の実施形態を用い、衝撃などに起因してトラッキングが外れ、トラッキングを再引き込みする場合は第5の実施形態を用いることによって、再生信号が飽和する期間をより効果的に短縮することができる。第6の実施形態は、アクセス動作時に最も効果的に飽和期間を短縮できる構成になっている。
【0057】
よって、第2の実施形態のような引き伸ばし有りのディフェクト検出中の処理と、第4および第5の実施形態を組み合わせたトラッキング外れ時の処理と、第6の実施形態のアクセス動作中の処理とを組み合わせることによって、最良の形態を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る信号再生装置は、自動増幅制御の機能を制御し、再生信号の信頼性向上を図ることができるので、例えば、光ディスクシステムの信号再生装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施形態に係る信号再生装置のブロック構成図である。
【図2】第1の実施形態におけるディフェクト検出発生時の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図3】第2の実施形態に係る信号再生装置のブロック構成図である。
【図4】第2の実施形態におけるディフェクト検出発生時の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図5】第3の実施形態におけるディフェクト検出発生時の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図6】第4の実施形態に係る信号再生装置のブロック構成図である。
【図7】第4の実施形態におけるトラッキング外れ検出時の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図8】第5の実施形態におけるトラッキング外れ検出時の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図9】第6の実施形態に係る信号発生装置のブロック構成図である。
【図10】第6の実施形態におけるアクセス動作検出時の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図11】従来の信号再生装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図12】従来のディフェクト検出発生時の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図13】従来のトラッキング外れ検出時の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図14】従来のアクセス動作検出時の信号波形を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 入力端子
2 可変増幅部
3 低域成分除去部
5 ピーク比較部
6 信号保持部
7 平均化部
8 制御部
9 出力端子
10 例外処理制御手段
11 ディフェクト検出部(例外処理検出部)
12 引き伸ばし手段
13 トラッキング外れ検出部(例外処理検出部)
14 アクセス動作検出部(例外処理検出部)
SI 入力信号
SO 出力信号
G ゲイン
CV 制御値
SD,SDa,SD2,SD2a,SD3,SD3a 検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式記録媒体に記録されたデータを再生する信号再生装置であって、
前記光学式記録媒体から再生された入力信号を受け、与えられたゲインに応じて増幅し、出力する可変増幅部と、
前記可変増幅部の出力信号から、前記ゲインの設定のための制御値を算出する制御値算出部と、
前記制御値算出部によって算出された制御値に応じて、前記ゲインを設定し、前記可変増幅部に与える制御部と、
前記光学式記録媒体の再生における例外処理の発生を検出し、検出したとき、例外処理の発生を示す検出信号を前記制御部に送る例外処理検出部とを備え、
前記制御部は、
前記例外処理検出部から前記検出信号によって例外処理の発生が通知されている間、前記ゲインを、所定値に固定する、または、増加しないように制限をかける、例外処理時制御手段を備えている
ことを特徴とする信号再生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記例外処理検出部は、例外処理として、ディフェクト検出、トラッキング外れ、およびアクセス動作のうちの少なくともいずれか1つを、検出するものである
ことを特徴とする信号再生装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記例外処理検出部は、前記検出信号の停止を、例外処理が終了してから所定時間遅延させる手段を備えている
ことを特徴とする信号再生装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記例外処理時制御手段は、前記ゲインを、前記検出信号によって例外処理の発生が通知された直前の値に、固定するものである
ことを特徴とする信号再生装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記例外処理時制御手段は、前記ゲインを、前記検出信号によって例外処理の発生が通知された直前の値に所定値を加算または減算して得た値に、固定するものである
ことを特徴とする信号再生装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記制御値算出部は、
前記可変増幅部の出力信号の交流成分を通過させる低域成分除去部と、
前記低域成分除去部の出力信号のピーク値を求め、所定値とを比較するピーク比較部と、
前記ピーク比較部の出力を保持する信号保持部と、
前記信号保持部に保持された値を平均化する平均化部とを備え、
前記平均化部の出力を、前記制御値として出力するものである
ことを特徴とする信号再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−351121(P2006−351121A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176800(P2005−176800)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】