説明

信号処理回路および信号処理方法

【課題】 検出性能の悪化を抑制できるSAWセンサ用の信号処理回路を提供する。
【解決手段】 発振回路11は、所定周波数の信号を出力する。その出力信号は、搬送波分周器13、第1分周器25、および第2分周器29に入力される。搬送波分周器13は入力信号を分周比Nで分周し搬送波を生成する。アンテナ21はSAWセンサ3から送信された受信信号を受信する。このとき、搬送波分周器13は動作を停止する。第1分周器25は入力信号を分周比N1で分周し第1基準信号を生成する。また、第2分周器29は入力信号を分周比N2で分周し第2基準信号を生成する。このとき、分周比は、N≠1、N≠N1、N≠N2、1/N2=|1/N−1/N1|という条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAWセンサ用の信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
SAWデバイスの共振周波数または遅延時間の変化を検出することにより、圧力センサ、歪センサ、温度センサなどとして機能するSAWセンサ(表面弾性波センサ)が用いられている。
【0003】
SAWセンサとセンシング用の信号処理回路との通信を無線で行うように構成することで、SAWセンサの小型化が可能となり、設置が容易になり様々な場面で使用しやすくなる。
【0004】
このように通信を無線で行う無線遠隔センシングシステムが特許文献1に記載されている。特許文献1のシステム構成を図8に示す。
このシステムにおいて、センシング装置13(信号処理回路)は、搬送波発生手段14とパルス発生手段15との出力信号をミキサ16によってミキシングしてパルス変調された信号を作り、アンプ17で増幅した後にアンテナ12で信号を送信し、SAWセンサ1に送る。SAWセンサ1のアンテナ4は信号を受信し、SAWデバイス2に入力する。SAWデバイス固有の遅延時間T秒後に反射波または透過波がアンテナ4に伝わり、SAWセンサ1からセンシング装置13に信号を伝える。
【0005】
SAWセンサ1は温度または歪により遅延時間Tが変化するため、センシング装置13で温度または歪の非接触計測ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−92490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のセンシング装置13は、SAWセンサ1から帰ってくる信号(通常−60dB以下)と、ミキサ16から搬送波が漏れた信号と、が合成され、センサ信号の検出性能(検出精度、分解能)が悪化する虞がある。
【0008】
特に、センシング装置13を高度に集積化し、シリコン基板の1チップにしようとする場合、ミキサ16の漏れ信号による検出性能の悪化を、複数のスイッチや増幅器17のゲイン調整などで抑制することが困難である。シリコン基板は導電性のため約30dBのアイソレーションしかなく、検出性能が悪化しやすい。
【0009】
本発明の目的は、検出性能の悪化を抑制できるSAWセンサ用の信号処理回路および信号処理方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、搬送波をSAWセンサに送信するとともに、SAWセンサから返信された信号を受信して、当該受信信号に同期検波または直交検波を行って検出信号を出力する信号処理回路であり、発振回路、搬送波生成部、基準信号生成部などを含んでいる。
【0011】
発振回路は、所定の周波数の信号を出力する。搬送波生成部は、発振回路の信号を分周または逓倍して搬送波を生成する。基準信号生成部は複数設けられており、発振回路の信号を分周または逓倍して所定の基準信号を生成する。また複数の基準信号生成部それぞれに対応して設けられる混合器が基準信号とSAWセンサからの受信信号とを混合する。
【0012】
搬送波生成部により生成される搬送波の周波数、および複数の基準信号生成部により生成される複数の基準信号の周波数それぞれは、搬送波に対して複数の基準信号を順次混合したときに搬送波の周波数が直流に変換される周波数である。そのため、例えばローパスフィルタを通過させることでSAWセンサからの受信信号の位相を直流の出力信号として出力できる。この位相がSAWセンサによる遅延時間Tを表し、温度や歪などの非接触計測ができる。
【0013】
そして搬送波生成部により生成される搬送波の周波数は、複数の基準信号生成部により生成される複数の基準信号の周波数それぞれとは異なる周波数である。また、搬送波生成部は、受信信号を受信して同期検波または直交検波を行う際には、搬送波の生成を停止する。
【0014】
このように構成された信号処理回路では、搬送波生成部によって生成される搬送波(SAWセンサからの受信信号)が、発振回路で生成される信号、および複数の基準信号生成部とで生成される基準信号と異なる周波数であるため、SAWセンサからの受信信号を受信して同期検波または直交検波を行う際に搬送波生成部による搬送波の生成を停止することで、SAWセンサからの受信信号と同じ周波数の信号が存在しなくなり、受信信号に漏れた信号が合成されて検出性能が悪化してしまうことを抑制できる。
【0015】
なお、搬送波生成部および基準信号生成部は、分周器あるいは逓倍器を1つ以上用いて構成することができる。また、複数の基準信号生成部が、分周器あるいは逓倍器を1つ以上用いた共通の構成によりなるものであってもよい。例えば1つの分周器により生成される基準信号を2つに分配して、2つの基準信号とすることができる。その場合、上記分周器は2つの基準信号生成部を兼ねることとなる。
【0016】
上述した信号処理回路には適宜増幅器を配置することができるが、受信した受信信号がいずれかの混合器に入力される前に当該受信信号を増幅するように増幅器を配置してもよい。このように構成することで、受信信号の信号レベルを向上させ、検出信号の品質低下を抑制できる。
【0017】
搬送波および基準信号の周波数は、上述した条件を満たす範囲で様々な値とすることができる。例えば、搬送波生成部が、発振回路の信号を分周比Nで分周し、基準信号生成部はn個設けられていて、発振回路の信号を分周比Nx(x=1,2…n)で分周するものであり、NxはNの整数倍を除く値であるように構成してもよい。
【0018】
このように構成された信号処理回路では、生成された基準信号の周波数を整数倍しても搬送波の周波数とならない。即ち、基準信号の高調波がSAWセンサからの受信信号と同一にならないため、基準信号の受信信号への影響が低減され検出信号の品質低下をさらに抑制できる。
【0019】
高次の分周器は、次数の約数を分周比とする分周器の縦列接続で作成されることが多い。上述した分周比の条件は、縦列接続点でSAWセンサからの信号と同じ周波数成分が生じないための条件でもある。
【0020】
また、検出信号の品質低下をさらに抑制するため、信号処理回路を以下に示す(i)、(ii)のいずれかのように構成してもよい。
(i)複数の基準信号生成部は、発振回路の信号を分周比N1で分周する第1基準信号生成部と、発振回路の信号を分周比N2で分周する第2基準信号生成部と、からなる。第1基準信号生成部で生成した基準信号は、第2基準信号生成部で生成した基準信号よりも上流でSAWセンサからの受信信号に混合される。搬送波生成部は、発振回路の信号を分周比Nで分周する。そして、1/N≠2/N1−1/N2という条件を満たす。
【0021】
(ii)複数の基準信号生成部は、発振回路の信号を逓倍率M1で逓倍する第1基準信号生成部と、発振回路の信号を逓倍率M2で逓倍する第2基準信号生成部と、からなる。第1基準信号生成部で生成した基準信号は、第2基準信号生成部で生成した基準信号よりも上流でSAWセンサからの受信信号に混合される。搬送波生成部は、発振回路の信号を逓倍率Mで逓倍する。そして以下の(a)、(b)の条件を満たす。
【0022】
(a)M≠2M1−M2
(b)M>M1の場合には M1≠(M+1)/2
上述した構成の信号処理回路では、検出信号の品質低下を抑制できる。図3に、SAWセンサからの受信信号(A)、第1基準信号生成部で生成された基準信号(B)、および受信信号(A)に対するイメージ信号(C)の周波数を説明する図を示す。第2基準信号生成部にて生成される基準信号がイメージ信号の周波数と同一である場合、当該基準信号が漏れて第1混合器(第1基準信号生成部にて生成される基準信号と受信信号とを混合する混合器)に入力されると、その差の出力周波数が、受信信号(A)と基準信号(B)との差の周波数と等しくなるため、漏れた信号が受信信号に影響を与えてしまう。しかしながら、上記(i)、(ii)の条件を満たせば第2の基準信号がイメージ信号の周波数と同一になることは無く、検出信号の品質低下を抑制できる。
【0023】
ところで、搬送波生成部および基準信号生成部の少なくとも1つは、複数の分周器あるいは逓倍器の縦列接続により構成されていてもよい。この場合、1つの分周器または逓倍器が、搬送波生成部および2つ以上の基準信号生成部の構成要素となっていてもよい。
【0024】
また、上述した問題を解決するためになされた請求項7に記載の発明は、発振回路より出力された所定の信号周波数の出力信号を分周または逓倍して搬送波を生成するステップと、搬送波をパルス変調し、SAWセンサに送信するステップと、搬送波の生成を停止した状態で、SAWセンサから返信された受信信号を受信するステップと、搬送波の生成を停止した状態で、上記出力信号を分周または逓倍して複数の基準信号を生成し、当該複数の基準信号を受信信号と混合して同期検波または直交検波を行うステップと、を備える信号処理方法であり、搬送波の周波数が、複数の基準信号の周波数それぞれとは異なる周波数であり、かつ、搬送波の周波数、および複数の基準信号の周波数それぞれは、搬送波に対して複数の基準信号を順次混合したときに搬送波の周波数が直流に変換される周波数であることを特徴とする。
【0025】
このような信号処理方法であれば、請求項1の信号処理回路と同様に、検出性能が悪化してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1の信号処理回路とSAWセンサとから構成されるセンシングシステム全体の概念図である。
【図2】実施例2の信号処理回路を説明する図である。
【図3】SAWセンサからの受信信号、第1基準信号、およびそれらの信号を混合する混合器から出力されるイメージ信号を説明する図である。
【図4】実施例3の信号処理回路を説明する図である。
【図5】実施例4の信号処理回路を説明する図である。
【図6】実施例5の信号処理回路を説明する図である。
【図7】変形例の信号処理回路を説明する図である。
【図8】従来の信号処理回路とSAWセンサとから構成されるセンシングシステム全体の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[実施例1]
(1)全体構成
本実施例の信号処理回路1は、無給電SAWセンサ3と協同して無線遠隔センシングを行うものである。センシングシステム全体の概念図を図1に示す。なお、本実施例において、周波数に小数点以下の値がある場合には、小数点以下第一位で四捨五入した値を記載している。後述する他の実施例でも同様である。
【0028】
SAWデバイス2は、圧電基板上に表面弾性波を励振するための櫛歯電極と表面弾性波を反射する反射電極を形成してなるセンシングデバイスであって、櫛歯電極が入出力共用である構成を例示している。もちろん、入力側と出力側と別々の櫛歯電極を有するものを用いてもよく、測定対象などに応じて適宜変更して用いることができる。
【0029】
信号処理回路1は、発振回路11、搬送波分周器13、第1増幅器15、スイッチ素子17、パルス発生器19、アンテナ21、第2増幅器23、第1分周器25、第1混合器27、第2分周器29、第2混合器31、ローパスフィルタ33を有し、図示しない基板上に図1に示すように接続されている。
【0030】
各構成要素の動作を信号の流れに沿って説明する。
発振回路11は、周波数400MHzの信号を出力する。その出力信号は、搬送波分周器13、第1分周器25、および第2分周器29に入力される。
【0031】
搬送波分周器13は入力信号を分周比2で分周し、200MHzの搬送波を生成する。生成された搬送波は第1増幅器15で増幅され、スイッチ素子17に入力される。また搬送波分周器13は動作のON/OFFを切替可能となっている。
【0032】
パルス発生器19はパルス信号を発生するものであって、スイッチ素子17において搬送波をパルス変調する。パルス変調された搬送波は、アンテナ21を介してSAWセンサ3に無線送信される。
【0033】
SAWセンサ3はアンテナ5を介して搬送波を受信する。その信号はSAWデバイス2の櫛歯電極により表面弾性波に変換され、遅延時間経過後に櫛歯電極に到達してアンテナ5から送信される。
【0034】
アンテナ21はSAWセンサ3のアンテナ5から送信された受信信号を受信する。このとき、搬送波分周器13は動作を停止して、200MHzの搬送波の生成を停止する。受信した受信信号は第2増幅器23により増幅され、第1混合器27に入力される。搬送波分周器13が、本発明の搬送波生成部の一例である。
【0035】
第1分周器25は入力信号を分周比3で分周し、133MHzの第1基準信号を生成する。また、第2分周器29は入力信号を分周比6で分周し、67MHzの第2基準信号を生成する。第1分周器25および第2分周器29それぞれが、本発明の基準信号生成部の一例である。
【0036】
第1混合器27には、第1分周器25にて生成された第1基準信号と、第2増幅器23により増幅されたSAWセンサ3からの受信信号と、が入力され、その差の周波数67MHzの信号が出力される。なお、和の周波数の信号は後述するローパスフィルタ33により除去されるため説明を割愛する。以下の説明においても同様とする。
【0037】
第1混合器27から出力された信号は第2混合器31に入力される。つまり、第1混合器27は第2混合器31よりも上流に配置される。第2混合器31には、第2分周器29にて生成された第2の基準信号が入力され、その差の周波数の信号が出力される。この信号は搬送波の周波数が直流に変換されている。その信号はローパスフィルタ33を通過し、SAWセンサ3からの受信信号の位相が直流の出力信号として出力される。
【0038】
(2)効果
上述した信号処理回路1では、搬送波(SAWセンサ3からの受信信号)の周波数が、発振回路11で生成される信号、第1基準信号、および第2基準信号の周波数と異なる周波数である。そして、SAWセンサ3からの受信信号を検波する際に搬送波分周器13の動作を停止して搬送波の生成を停止する。
【0039】
そのため、SAWセンサ3からの受信信号と同じ周波数の信号が存在しなくなり、受信信号に発振回路11などから漏れた信号が合成されて、同期検波による検出性能が悪化してしまうことを抑制できる。
【0040】
なお、同様の効果は、搬送波分周器13の分周比が、第1分周器25および第2分周器29の分周比と異なる値であること、即ち、搬送波が各基準信号と異なる周波数であること、および、受信信号に各基準信号を順次混合することで搬送波の周波数が直流に変換される周波数であること、を満たすように周波数を設定することで得ることができる。
【0041】
上述したように、発振回路11の信号から2つの基準信号を生成して同期検波を行う場合、搬送波分周器13の分周比をN、第1分周器25の分周比をN1、第2分周器29の分周比をN2とすると、以下の条件を全て満たすように分周比を設定するとよい。
【0042】
N≠1、N≠N1、N≠N2、1/N2=|1/N−1/N1
上記の分周比にて信号を生成するために用いる分周器は上記実施例のようにそれぞれ1つであってもよいが、複数の分周器を接続して所望の分周比を得るように構成されていてもよい。
【0043】
なお、分周比および後述する実施例で用いる逓倍率は、正の整数である。
[実施例2]
(1)全体構成
実施例2の信号処理回路41は、基本的に実施例1と同様の構成を有しているが、発振回路の出力周波数や分周器の分周比が相違するため、その相違点を説明し、実施例1と同様の点については説明を割愛する。
【0044】
本実施例の信号処理回路41を図2に示す。発振回路43は、1200MHzの信号を出力する。搬送波分周器45は分周比N=6、第1分周器47は分周比N1=2、第2分周器49は分周比N2=3である。
【0045】
発振回路43の出力信号は、搬送波分周器45、第1分周器47、および第2分周器49に入力される。搬送波分周器45は入力信号を分周し、200MHzの搬送波を生成する。第1分周器47は入力信号を分周し、600MHzの第1基準信号を生成する。第2分周器49は入力信号を分周し、400MHzの第2基準信号を生成する。
【0046】
アンテナ21が受信したSAWセンサ3からの受信信号は、第2増幅器23にて増幅された後、第1混合器27にて第1基準信号と混合され、その出力は第2混合器31によって第2基準信号と混合される。そしてローパスフィルタ33を通過することで、搬送波成分は直流に変換され、同期検波が可能となる。
【0047】
(2)効果
上述した信号処理回路41では、実施例1の信号処理回路1と同様の効果を得ることができる。
【0048】
さらに上述した信号処理回路41では、生成された第1、第2基準信号の周波数を整数倍しても搬送波の周波数とならない。つまり、基準信号の高調波がSAWセンサ3からの受信信号と同一にならないため、基準信号の受信信号への影響が低減され検出信号の品質低下を抑制できる。
【0049】
またSAWセンサ3からの受信信号、第1基準信号、および受信信号に対するイメージ信号の周波数を説明する図を図3に示す。第2基準信号の周波数がイメージ信号の周波数と同一である場合、第2基準信号が漏れ、第1混合器27に入力されると、その差の出力周波数が、受信信号と第1基準信号との差の周波数と等しくなるため、漏れた信号が受信信号に影響を与えてしまう。
【0050】
しかしながら本実施例の構成では、第2基準信号がイメージ信号の周波数と同一になることは無く、検出信号の品質低下を抑制できる。なお、このような効果は、次に示す分周比の条件 1/N≠2/N1−1/N2 を満たす場合にその効果を奏するものとなる。
【0051】
[実施例3]
(1)全体構成
本実施例の信号処理回路51は、無給電SAWセンサ3と協同して無線遠隔センシングを行う点では実施例1の信号処理回路1と同様であるが、分周器の配置などが相違するため、その相違点を説明し、実施例1と同様の点については説明を割愛する。
【0052】
本実施例の信号処理回路51を図4に示す。発振回路53は、1200MHzの信号を出力する。第1搬送波分周器55は分周比Na=3、第2搬送波分周器57は分周比Nb=2、基準分周器59は分周比N1=2である。
【0053】
発振回路53の出力信号は、第1搬送波分周器55、および基準分周器59に入力される。第1搬送波分周器55は入力信号を分周し、400MHzの信号を生成する。この信号は、第2搬送波分周器57、および第2混合器31に入力される。第2混合器31には第2基準信号として入力される。
【0054】
第2搬送波分周器57は入力信号を分周し、200MHzの搬送波を生成する。基準分周器59は入力信号を分周し、600MHzの第1基準信号を生成する。
アンテナ21が受信したSAWセンサ3からの受信信号は、第2増幅器23にて増幅された後、第1混合器27にて第1基準信号と混合され、その出力は第2混合器31によって第2基準生成した信号と混合される。
【0055】
即ち本実施例では、発振回路53の出力信号に基づき、第1搬送波分周器55と第2搬送波分周器57によって搬送波を生成し、基準分周器59によって第1基準信号を生成し、第1搬送波分周器55によって第2基準信号を生成する。またSAWセンサ3からの受信信号を受信する際には、第2搬送波分周器57が停止する。
【0056】
(2)効果
上述した信号処理回路51では、実施例1の信号処理回路1と同様の効果を得ることができる。この構成は、実施例2の信号処理回路と実質的に同一周波数の搬送波および基準信号を生成するものであって、実施例2のように各分周器の分周比が1以外の公約数を持っている場合に可能である。具体的には、実施例2において搬送波分周器45の分周比Nは6であり、第2分周器49の分周比N2は3であるため、3が公約数となる。そこで、搬送波分周器45を分周比3、2の2つの分周器に分け、一方を基準信号生成用の分周器としても用いることができる。これにより、回路構成を簡素化できる。
【0057】
本実施例においては、第1搬送波分周器55および第2搬送波分周器57が、本発明の搬送波生成部の一例であり、基準分周器59および第1搬送波分周器55それぞれが、本発明の基準信号生成部の一例である。
【0058】
[実施例4]
(1)全体構成
実施例4の信号処理回路61は、基本的に実施例1と同様の構成を有しているが、分周器に変えて逓倍器を用いている点などが相違するため、その相違点を説明し、実施例1と同様の点については説明を割愛する。
【0059】
本実施例の信号処理回路61を図5に示す。発振回路63は、33(33.3…)MHzの信号を出力する。搬送波逓倍器65は逓倍率M=6、第1逓倍器67は逓倍率M1=4、第2逓倍器69は逓倍率M2=2である。
【0060】
発振回路63の出力信号は、搬送波逓倍器65、第1逓倍器67および第2逓倍器69に入力される。搬送波逓倍器65は33MHzの入力信号を逓倍し、200MHzの搬送波を生成する。第1逓倍器67は入力信号を逓倍し、133MHzの第1基準信号を生成する。第2逓倍器69は入力信号を逓倍し、67MHzの第2基準信号を生成する。
【0061】
アンテナ21が受信したSAWセンサ3からの受信信号は、第2増幅器23にて増幅された後、第1混合器27にて第1逓倍器67が生成した信号と混合され、その出力は第2混合器31によって第2逓倍器69が生成した信号と混合される。
【0062】
(2)効果
上述した信号処理回路51では、実施例1の信号処理回路1と同様の効果を得ることができる。また、信号処理回路内の最高周波数を低減できる。
【0063】
なお、同様の効果は、搬送波逓倍器65の逓倍率が、第1逓倍器67および第2逓倍器69の逓倍率と異なる値であること、即ち、搬送波が各基準信号と異なる周波数であること、および、受信信号に各基準信号を順次混合することで搬送波の周波数が直流に変換される周波数であること、を満たすように周波数を設定することで得ることができる。
【0064】
上述したように、発振回路63の信号から2つの基準信号を生成して同期検波を行う場合、以下の条件を全て満たすように逓倍率を設定するとよい。
M≠1、M≠N1、M≠N2、M2=|M−M1
なお本実施例において、図5の括弧内に示す周波数のように、第1逓倍器67と第2逓倍器69の逓倍率を入れ替えることで、SAWセンサ3からの受信信号と第1基準信号とを混合する第1混合器27から出力されるイメージ信号と、第2基準信号が同一になることが無くなり、実施例2の信号処理回路51と同様に検出信号の品質低下を抑制できる。
【0065】
このような効果は、次に示す逓倍率の条件を満たす場合にその効果を奏するものとなる。
(a)M≠2M1−M2
(b)M>M1の場合には M1≠(M+1)/2
[実施例5]
(1)全体構成
本実施例の信号処理回路51は、無給電SAWセンサ3と協同して無線遠隔センシングを行う点では実施例1の信号処理回路1と同様であるが、分周器に変えて逓倍器を用いている点などが相違するため、その相違点を説明し、実施例1と同様の点については説明を割愛する。
【0066】
本実施例の信号処理回路71を図6に示す。発振回路73は、33MHzの信号を出力する。第1搬送波逓倍器75は逓倍率Ma=2、第2搬送波逓倍器77は逓倍率Mb=3、基準逓倍器79は逓倍率M1=2である。
【0067】
発振回路73の出力信号は、第1搬送波逓倍器75に入力される。第1搬送波逓倍器75は33MHzの入力信号を逓倍し、67MHzの信号を生成する。この信号は、第2搬送波逓倍器77、および第1混合器27に入力される。第1混合器27には第1基準信号として入力される。
【0068】
第2搬送波逓倍器77は第1搬送波逓倍器75の出力信号を逓倍し、200MHzの搬送波を生成する。基準逓倍器79は第1搬送波逓倍器75の出力信号を逓倍し、133MHzの第2基準信号を生成する。
【0069】
アンテナ21が受信したSAWセンサ3からの受信信号は、第2増幅器23にて増幅された後、第1混合器27にて第1基準信号と混合され、その出力は第2混合器31によって第2基準信号と混合される。
【0070】
即ち本実施例では、発振回路73の出力信号に基づき、第1搬送波逓倍器75と第2搬送波逓倍器77によって搬送波を生成し、基準逓倍器79によって第2基準信号を生成し、第1搬送波逓倍器75によって第1基準信号を生成する。またSAWセンサ3からの受信信号を受信する際には、第2搬送波逓倍器77が停止する。
【0071】
(2)効果
上述した信号処理回路71では、実施例1の信号処理回路1と同様の効果を得ることができる。この構成は、実施例4の変形例に示した信号処理回路(図5の括弧内に示す周波数の構成)と実質的に同一周波数の搬送波および基準信号を生成するものであって、逓倍器の逓倍率が1以外の公約数を持っている場合に可能である。具体的には、実施例4の変形例において搬送波逓倍器65の逓倍率Mは6であり、第1逓倍器67の逓倍率M1は2であり、第2逓倍器69の逓倍率M2は4であるため、2が公約数となる。そこで、発振回路73の信号を逓倍率2で逓倍して、その信号を適宜逓倍して用いることができる。これにより、回路構成を簡素化できる。
【0072】
本実施例においては、第1搬送波逓倍器75および第2搬送波逓倍器77が、本発明の搬送波生成部の一例であり、基準逓倍器79および第1搬送波逓倍器75それぞれが、本発明の基準信号生成部の一例である。
【0073】
[変形例]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0074】
例えば、上記各実施例においては2つの混合器を用いて同期検波を行う構成を例示したが、3つ以上の混合器を用いてもよく、その場合には搬送波の周波数および複数の基準信号の周波数それぞれを、搬送波に対して複数の基準信号を順次混合したときに搬送波の周波数が直流に変換される周波数とするとよい。
【0075】
また、上記各実施例においては、複数の基準信号がそれぞれ異なる周波数である構成を例示したが、周波数の条件を満たすならば、同一の周波数であってもよい。
その場合には、共通の分周器、逓倍器、およびそれらを縦列接続したもの、のうちいずれかを用いて、発振回路からの入力信号を分周または逓倍し、その信号を分配して複数の基準信号を生成するように構成してもよい。この例において、上記分周器、逓倍器、およびそれらを縦列接続したもの、のうちのいずれかが、本発明における基準信号生成部の一例であって、かつ複数の基準信号生成部を兼ねるものとなる。
【0076】
また上記実施例においては、同期検波による検波を行う構成を例示したが、直交検波により検波を行う構成であってもよい。実施例1の信号処理回路を直交検波に変更した信号処理回路81を図7に示す。
【0077】
信号処理回路81において、SAWセンサ3から受信した受信信号の一部は、第2増幅器23により増幅された後、位相シフタ83により位相がπ/2シフトされた第1基準信号と混合器85により混合され、また位相シフタ83により位相がπ/2シフトされた第2基準信号と混合器87により混合され、ローパスフィルタ89を通過する。このようにして、直交検波に必要な信号が出力される。
【符号の説明】
【0078】
1…信号処理回路、2…SAWデバイス、3…SAWセンサ、5…アンテナ、11…発振回路、13…搬送波分周器、15…第1増幅器、17…スイッチ素子、19…パルス発生器、21…アンテナ、23…第2増幅器、25…第1分周器、27…第1混合器、29…第2分周器、31…第2混合器、33…ローパスフィルタ、41…信号処理回路、43…発振回路、45…搬送波分周器、47…第1分周器、49…第2分周器、51…信号処理回路、53…発振回路、55…第1搬送波分周器、57…第2搬送波分周器、59…基準分周器、61…信号処理回路、63…発振回路、65…搬送波逓倍器、67…第1逓倍器、69…第2逓倍器、71…信号処理回路、73…発振回路、75…第1搬送波逓倍器、77…第2搬送波逓倍器、79…基準逓倍器、81…信号処理回路、83…位相シフタ、85…混合器、87…混合器、89…ローパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波をSAWセンサに送信するとともに、前記SAWセンサから返信された信号を受信し、当該受信信号に同期検波または直交検波を行う信号処理回路であって、
所定の周波数の信号を出力する発振回路と、
前記発振回路の信号を分周または逓倍して搬送波を生成する搬送波生成部と、
前記発振回路の信号を分周または逓倍して所定の基準信号を生成する複数の基準信号生成部と、
前記複数の基準信号生成部それぞれに対応して設けられ、前記基準信号と前記SAWセンサからの受信信号とを混合する複数の混合器と、を備え、
前記搬送波生成部により生成される前記搬送波の周波数は、前記複数の基準信号生成部により生成される前記複数の基準信号の周波数それぞれとは異なる周波数であり、
前記搬送波の周波数、および前記複数の基準信号の周波数それぞれは、前記搬送波に対して前記複数の基準信号を順次混合したときに前記搬送波の周波数が直流に変換される周波数であり、
前記搬送波生成部は、前記受信信号を受信して前記同期検波または前記直交検波を行う際には、前記搬送波の生成を停止する
ことを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
前記受信信号がいずれかの前記混合器に入力される前に前記受信信号を増幅する増幅器を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項3】
前記搬送波生成部は、前記発振回路の信号を分周比Nで分周するものであり、
前記基準信号生成部はn個設けられ、前記発振回路の信号を分周比Nx(x=1,2…n)で分周するものであり、NxはNの整数倍を除く値である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の信号処理回路。
【請求項4】
前記複数の基準信号生成部は、前記発振回路の信号を分周比N1で分周する第1基準信号生成部と、前記発振回路の信号を分周比N2で分周する第2基準信号生成部と、からなり、
前記第1基準信号生成部で生成された基準信号は、前記第2基準信号生成部で生成された基準信号よりも上流で前記受信信号に混合され、
前記搬送波生成部は、前記発振回路の信号を分周比Nで分周するものであり、
1/N≠2/N1−1/N2 である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の信号処理回路。
【請求項5】
前記複数の基準信号生成部は、前記発振回路の信号を逓倍率M1で逓倍する第1基準信号生成部と、前記発振回路の信号を逓倍率M2で逓倍する第2基準信号生成部と、からなり、
前記第1基準信号生成部で生成された基準信号は、前記第2基準信号生成部で生成された基準信号よりも上流で前記受信信号に混合され、
前記搬送波生成部は、前記発振回路の信号を逓倍率Mで逓倍するものであり、
以下の(a)、(b)の条件を満たすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の信号処理回路。
(a)M≠2M1−M2
(b)M>M1の場合には M1≠(M+1)/2
【請求項6】
前記搬送波生成部および前記基準信号生成部の少なくとも1つは、複数の分周器あるいは逓倍器の縦列接続より構成される
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の信号処理回路。
【請求項7】
発振回路より出力された所定の周波数の出力信号を分周または逓倍して搬送波を生成するステップと、
前記搬送波をパルス変調し、SAWセンサに送信するステップと、
前記搬送波の生成を停止した状態で、前記SAWセンサから返信された受信信号を受信するステップと、
前記搬送波の生成を停止した状態で、前記出力信号を分周または逓倍して複数の基準信号を生成し、当該複数の基準信号を前記受信信号と混合して同期検波または直交検波を行うステップと、を備え、
前記搬送波の周波数は、前記複数の基準信号の周波数それぞれとは異なる周波数であり、かつ、前記搬送波の周波数、および前記複数の基準信号の周波数それぞれは、前記搬送波に対して前記複数の基準信号を順次混合したときに前記搬送波の周波数が直流に変換される周波数である
ことを特徴とする信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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