信号処理装置及び信号処理方法
【課題】入力映像信号の各フレームに現れる動きをより高い精度で推定するための映像信号を、出力映像の画質に影響を与えることなく供給すること。
【解決手段】入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得する計測値取得部と、上記計測値取得部により取得される上記計測値に基づいて、上記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定する決定部と、上記決定部により決定される特性を有するフィルタを上記入力映像信号に適用することにより、上記動きの推定のために使用される映像信号を生成するフィルタリング部と、を備える信号処理装置を提供する。
【解決手段】入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得する計測値取得部と、上記計測値取得部により取得される上記計測値に基づいて、上記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定する決定部と、上記決定部により決定される特性を有するフィルタを上記入力映像信号に適用することにより、上記動きの推定のために使用される映像信号を生成するフィルタリング部と、を備える信号処理装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像信号の各フレームに現れる人物又は物体の動きを動きベクトルとして推定するための、ブロックマッチング法に代表される動きベクトル推定技術が知られている。推定された動きベクトルは、例えば、インターレース−プログレッシブ変換又はフレームレート変換に際して、動き補償と共にフレーム(又はフィールド)を補間するために用いられる。また、動きベクトル推定技術は、動画の圧縮符号化において圧縮効率を高めるためのフレーム間予測にとっても欠かせない技術である。しかし、動きベクトル推定技術は、一般的に、映像信号に含まれる繰り返しパターンやノイズの影響を受け易い。例えば、映像信号の1つのフレーム内に複数の類似するパターンが含まれている場合、前のフレームの1つのパターンが複数の類似するパターンのいずれに移動したのかを正確に決定することは困難である。
【0003】
一例として、図17を参照すると、左側に時刻TにおけるフレームIm01、右側に時刻T+ΔtにおけるフレームIm02が示されている。フレームIm01は、ストライプ状の網掛けで示した繰り返しパターンを有するブロックB1を含んでいる。また、フレームIm02は、ストライプ状の網掛けで示した繰り返しパターンをそれぞれ有するブロックB2及びB3を含んでいる。このような入力映像信号にブロックマッチング法を適用すると、ブロックB1とブロックB2との相関、及びブロックB1とブロックB3との相関はほぼ同等である。そのため、時刻TにおけるブロックB1は、時刻T+ΔTにおいてブロックB2に移動したともブロックB3に移動したとも解釈され得る。
【0004】
結果として、映像信号に高周波の繰り返しパターンやノイズが多く含まれる場合には、類似するパターンが同一のフレーム内に多数存在するため、画素ごとに導かれる動きベクトルの方向が様々に異なるという結果が生じる。そして、ベクトルのばらつきなどのエラーを原因とする映像の破綻が顕在化する。即ち、動きベクトルのエラーが頻繁に発生し、例えばフレーム補間後の映像の破綻がユーザに感知されるといった問題が生じ得る。
【0005】
動きベクトルのエラーを軽減するための手法として、例えば、下記特許文献1は、算出した動きベクトルとその周囲のベクトルとを比較し、空間的又は時間的なベクトルのばらつきが抑制されるようにベクトル自体を補正する手法を提案している。また、MPEG(Moving Picture Experts Group)圧縮の分野では、入力映像信号の内容に応じて適応的に入力映像信号にローパスフィルタを施すことにより、モスキートノイズなどのノイズ成分を抑制する手法が知られている(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−266170号公報
【特許文献2】特開2001−231038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1により提案された手法では、過去に算出した多数のベクトルをその後の比較のために保持しておかなければならず、大規模なフレームメモリなどのリソースが必要であり、装置の小型化や低コスト化などの要求を満たすことができなかった。また、上記特許文献2に示されているような入力映像信号をフィルタリングする手法は、ノイズ成分を抑制することはできるものの、動きベクトルの推定に単純に応用し得るものではない。例えば、映像信号にローパスフィルタを施せば、フィルタの強度によっては出力される映像の画質(例えば鮮鋭度)が低下し得る。しかし、動きベクトルの推定を目的とする場合には、動きベクトルの推定の基礎とする情報においてエラーの原因となる成分が除去されていればよく、出力映像の画質にまで影響を与えることは避けられるべきである。エラーの原因となる成分とは、例えば、映像信号に高周波の繰り返しパターンやノイズが多く含まれる場合における映像信号の高周波成分である。この場合、低周波数成分を抽出し又は相対的に強調した上で動きベクトルを推定することで、より良好な推定結果を得ることができるものと期待される。
【0008】
そこで、本発明は、入力映像信号の各フレームに現れる動きをより高い精度で推定するための映像信号を、出力映像の画質に影響を与えることなく供給することのできる、新規かつ改良された信号処理装置及び信号処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある実施形態によれば、入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得する計測値取得部と、上記計測値取得部により取得される上記計測値に基づいて、上記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定する決定部と、上記決定部により決定される特性を有するフィルタを上記入力映像信号に適用することにより、上記動きの推定のために使用される映像信号を生成するフィルタリング部と、を備える信号処理装置が提供される。
【0010】
かかる構成によれば、入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値に基づいて入力映像信号に適用すべきフィルタの特性が決定され、決定された特性を有するフィルタが入力映像信号に適用される。そして、フィルタリング処理の結果として生成される映像信号が、動きの推定のために使用される。
【0011】
また、上記動きの推定に影響を与える特徴量は、上記入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における高周波成分の大きさに応じた特徴量を含んでもよい。
【0012】
また、上記高周波成分の大きさに応じた特徴量は、上記入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における帯域別のヒストグラムを表す第1の特徴量を含んでもよい。
【0013】
また、上記高周波成分の大きさに応じた特徴量は、上記入力映像信号の各フレームに含まれる隣接画素間の画素値の差分の総和を表す第2の特徴量を含んでもよい。
【0014】
また、上記決定部は、上記計測値取得部により取得される上記計測値が示す上記入力映像信号の各フレームの上記高周波成分の大きさに応じて、上記フィルタの特性における高周波帯域の減衰の強さを変化させてもよい。
【0015】
また、上記決定部は、上記帯域別のヒストグラムにおいて最大の度数を示す帯域の周波数に応じて、上記フィルタの特性における遮断帯域を変化させてもよい。
【0016】
また、上記動きの推定に影響を与える特徴量は、上記入力映像信号の各フレームに含まれるノイズ成分の強さに応じた第3の特徴量を含んでもよい。
【0017】
また、上記フィルタの特性は、上記入力映像信号の各信号値に乗算されるフィルタ係数と各信号値に対するシフト量とにより表現され、上記決定部は、上記計測値取得部により取得される上記計測値が示す上記入力映像信号の各フレームの上記ノイズ成分の強さに応じて、上記シフト量を変化させてもよい。
【0018】
また、上記信号処理装置は、上記入力映像信号の各フレームについて上記特徴量を計測する計測部、をさらに備えてもよい。
【0019】
また、上記信号処理装置は、上記フィルタリング部により生成される上記映像信号の第1のフレームと第2のフレームとの間の信号の相関に基づいて、各フレームに現れる上記動きを推定する動き推定部、をさらに備えてもよい。
【0020】
また、上記信号処理装置は、上記動き推定部により推定された上記動きに応じて、上記入力映像信号の第1のフレームと第2のフレームとの間のフレームを補間する補間処理部、をさらに備えてもよい。
【0021】
また、本発明の別の実施形態によれば、入力映像信号を処理する信号処理装置による信号処理方法であって、上記入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得するステップと、取得された上記計測値に基づいて、上記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定するステップと、決定された特性を有するフィルタを上記入力映像信号に適用することにより、上記動きの推定のために使用される映像信号を生成するステップと、を含む信号処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る信号処理装置及び信号処理方法によれば、入力映像信号の各フレームに現れる動きをより高い精度で推定するための映像信号を、出力映像の画質に影響を与えることなく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施形態に係る信号処理装置の全体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図2】一実施形態に係る計測部のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【図3】一実施形態に係る帯域計測部のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図4】一実施形態に係る隣接差分計測部のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図5】一実施形態に係るノイズ計測部のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図6】一実施形態に係る決定部のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【図7A】帯域別ヒストグラムの第1のデータ例を示す説明図である。
【図7B】帯域別ヒストグラムの第2のデータ例を示す説明図である。
【図8】強度選択テーブルのデータの一例を示す説明図である。
【図9】一実施形態に係る帯域別ヒストグラムに基づくフィルタ強度判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図10】一実施形態に係る隣接差分総和に基づくフィルタ強度判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図11】一実施形態に係る特性決定部のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図12】一実施形態に係る強度段階制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】一実施形態に係るフィルタ係数について説明するための説明図である。
【図14】一実施形態に係るシフト量のオフセットについて説明するための説明図である。
【図15】一実施形態に係るフィルタリング部のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【図16】一変形例に係る信号処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図17】入力フレームに含まれる繰り返しパターンの動きベクトル推定への影響について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0025】
また、以下の順序にしたがって当該「発明を実施するための形態」を説明する。
1.一実施形態に係る信号処理装置の全体的な構成
2.各部の説明
2−1.計測部
2−2.計測値取得部
2−3.決定部
2−4.フィルタリング部
2−5.フレームメモリ
2−6.動き推定部
2−7.補間処理部
3.効果の説明
4.変形例
【0026】
<1.一実施形態に係る信号処理装置の全体的な構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1を参照すると、信号処理装置100は、計測部110、計測値取得部130、決定部140、フィルタリング部150、フレームメモリ160、動き推定部170、及び補間処理部180を備える。信号処理装置100のこれら構成要素のうち、フレームメモリ160以外の構成要素は、主にASIC(Application Specific Integrated Circuit)若しくはシステムLSI(Large Scale Integration)などの集積回路又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、補助的な記憶媒体とを用いて実現され得る。フレームメモリ160は、例えばRAM(Random Access Memory)又はフラッシュメモリなどの記憶媒体を用いて実現され得る。
【0027】
本実施形態において、信号処理装置100は、外部から入力される入力映像信号Vinを取得し、入力映像信号Vinを処理した後、フレームが補間された出力映像信号Voutを出力する。かかる信号処理の過程において、フレームの補間のために利用される動きベクトルは、動き推定用の映像信号Vexを用いて推定されるベクトルである。フレームが補間される入力映像信号Vinとは独立して動き推定用の映像信号Vexが動きベクトルの推定のために供給されることは、本発明の有利な側面の1つである。次節より、このような動き推定用の映像信号Vexの生成、動きの推定及びフレームの補間を行う信号処理装置100の各部の構成について、より具体的に説明する。
【0028】
<2.各部の説明>
[2−1.計測部]
計測部110は、入力映像信号Vinの各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量を計測する。本実施形態において、計測部110が計測する特徴量は、入力映像信号Vinの各フレームの水平方向及び垂直方向における高周波成分の大きさ(amplitude)に応じた特徴量と、入力映像信号Vinの各フレームに含まれるノイズ成分の強さに応じた特徴量とを含む。さらに、高周波成分の大きさに応じた特徴量は、入力映像信号Vinの各フレームの水平方向及び垂直方向における帯域別のヒストグラムと、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる隣接画素間の画素値の差分の総和(以下、隣接差分総和という)とを含み得る。
【0029】
図2は、本実施形態に係る計測部110のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。図2を参照すると、計測部110は、帯域計測部112、隣接差分計測部114及びノイズ計測部118を含む。計測部110に入力される入力映像信号Vinは、これら帯域計測部112、隣接差分計測部114及びノイズ計測部118にそれぞれ入力される。そして、帯域計測部112は、上述した特徴量のうち、各フレームにおける帯域別ヒストグラムM1を出力する。隣接差分計測部114は、各フレームの隣接差分総和M2を出力する。ノイズ計測部118は、各フレームに含まれるノイズ成分の強さを表すノイズレベルM3を出力する。
【0030】
なお、他の実施形態において、計測部110は、上述した3種類の計測値M1、M2及びM3のうちのいずれかの計測値を計測せず又は出力しなくてもよい。また、計測部110は、入力映像信号Vinの各フレームの水平方向及び垂直方向のいずれか一方について特徴量を計測してもよい。
【0031】
(帯域計測部)
帯域計測部112は、入力映像信号Vinの各フレームの水平方向及び垂直方向における帯域別の繰り返し成分の強さを計測し、水平方向の帯域別ヒストグラムと垂直方向の帯域別ヒストグラムとを生成する。帯域別の繰り返し成分の強さは、個々の帯域(band)にそれぞれ適合される帯域通過フィルタである水平フィルタ及び垂直フィルタを用いて計測され得る。
【0032】
図3は、本実施形態に係る帯域計測部112のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。図3を参照すると、帯域計測部112は、M個の帯域別水平フィルタFh1〜FhM、N個の帯域別垂直フィルタFv1〜FvN、及びヒストグラム生成部113を含む。
【0033】
第1の帯域別水平フィルタFh1は、入力映像信号Vinの水平方向の第1の帯域成分を分離する。第2の帯域別水平フィルタFh2は、入力映像信号Vinの水平方向の第2の帯域成分を分離する。同様に、第Mの帯域別水平フィルタFhMは、入力映像信号Vinの水平方向の第Mの帯域成分を分離する。即ち、本実施形態において、1つのフレームに含まれる水平方向の繰り返し成分は、M個の帯域成分に分離され計測される。
【0034】
また、第1の帯域別垂直フィルタFv1は、入力映像信号Vinの垂直方向の第1の帯域成分を分離する。第2の帯域別垂直フィルタFv2は、入力映像信号Vinの垂直方向の第2の帯域成分を分離する。同様に、第Nの帯域別垂直フィルタFvNは、入力映像信号Vinの垂直方向の第Nの帯域成分を分離する。即ち、本実施形態において、1つのフレームに含まれる垂直方向の繰り返し成分は、N個の帯域成分に分離され計測される。
【0035】
ヒストグラム生成部113は、水平フィルタFh1〜FhM及び垂直フィルタFv1〜FvNから入力される各帯域成分の大きさを1つのフレームにわたってそれぞれ積算し、帯域別ヒストグラムM1を生成する。帯域別ヒストグラムM1は、水平方向のM個の帯域ごとの度数(フィルタ出力の積算値)と、垂直方向のN個の帯域ごとの度数とを含む。
【0036】
(隣接差分計測部)
隣接差分計測部114は、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる隣接差分総和を水平方向及び垂直方向のそれぞれについて計測する。
【0037】
図4は、本実施形態に係る隣接差分計測部114のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。図4を参照すると、隣接差分計測部114は、遅延部115a、減算部115b、絶対値演算部115c及び積算部115d、並びに遅延部116a、減算部116b、絶対値演算部116c及び積算部116dを含む。このうち、遅延部115a、減算部115b、絶対値演算部115c及び積算部115dは、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる水平方向についての隣接差分総和を算出する。一方、遅延部116a、減算部116b、絶対値演算部116c及び積算部116dは、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる垂直方向についての隣接差分総和を算出する。
【0038】
遅延部115aは、入力映像信号Vinの各画素の処理タイミングを1画素(1Pixel)分遅延させ、遅延後の画素値を減算部115bへ出力する。減算部115bは、隣接差分計測部114に入力される入力映像信号Vinの各画素の画素値と遅延部115aから入力される遅延後の画素値との差分を算出する。絶対値演算部115cは、減算部115bにより算出された差分の絶対値を算出する。そして、積算部115dは、絶対値演算部115cにより算出された差分の絶対値を1つのフレームにわたって積算する。それにより、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる水平方向についての隣接差分総和が算出される。
【0039】
一方、遅延部116aは、入力映像信号Vinの各画素の処理タイミングを1ライン(1Line)分遅延させ、遅延後の画素値を減算部116bへ出力する。減算部116bは、隣接差分計測部114に入力される入力映像信号Vinの各画素の画素値と遅延部116aから入力される遅延後の画素値との差分を算出する。絶対値演算部116cは、減算部116bにより算出された差分の絶対値を算出する。そして、積算部116dは、絶対値演算部116cにより算出された差分の絶対値を1つのフレームにわたって積算する。それにより、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる垂直方向についての隣接差分総和が算出される。
【0040】
(ノイズ計測部)
ノイズ計測部118は、入力映像信号Vinの各フレームに含まれるノイズ成分の強さを表すノイズレベルを計測する。
【0041】
図5は、本実施形態に係るノイズ計測部118のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。図5を参照すると、ノイズ計測部118は、フレームメモリ119a及びノイズレベル検出部119bを含む。
【0042】
フレームメモリ119aは、入力映像信号Vinの各フレームを一時的に記憶する。ノイズレベル検出部119bは、入力映像信号Vinの各フレームとフレームメモリ119aに記憶されている前のフレームとを比較し、その比較の結果に基づいて、各フレームについてのノイズレベルを検出する。ノイズレベル検出部119bによるノイズレベルの検出は、例えば特開2009−3599号公報に記載された公知の手法に従って行われ得る。ノイズレベルの値は、例えば標準偏差又は標準分散などの量を所定のビット数(例えば10bit)を用いて表現した値であってよい。
【0043】
計測部110は、上述したような帯域計測部112、隣接差分計測部114及びノイズ計測部118による計測結果としての計測値、即ち帯域別ヒストグラムM1、隣接差分総和M2及びノイズレベルM3を、計測値取得部130へ出力する。
【0044】
[2−2.計測値取得部]
計測値取得部130は、入力映像信号Vinの各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を、計測部110から取得する。本実施形態において計測値取得部130が取得する計測値は、上述した帯域別ヒストグラムM1、隣接差分総和M2及びノイズレベルM3である。そして、計測値取得部130は、取得したこれら計測値を決定部140へ出力する。
【0045】
[2−3.決定部]
決定部140は、計測値取得部130により取得される計測値に基づいて、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタの特性を決定する。入力映像信号Vinに適用すべきフィルタとは、後に説明するフィルタリング部150が有するフィルタである。本実施形態において、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタの特性は、入力映像信号Vinの各信号値に乗算されるフィルタ係数と、各信号値に対するシフト量(スケーリングパラメータともいう)とにより表現される。従って、決定部140は、以下に説明するように、計測値取得部130により取得される計測値に基づいて、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタのフィルタ係数とシフト量とを決定する。
【0046】
図6は、本実施形態に係る決定部140のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。図6を参照すると、決定部140は、第1判定部142、強度選択テーブル143、第2判定部144、特性決定部146及びフィルタ係数テーブル148を含む。このうち第1判定部142及び第2判定部144は、入力映像信号Vinの各フレームの高周波成分の大きさに応じて、フィルタ特性における高周波帯域の減衰の強さを変化させるための処理を行う。
【0047】
(第1判定部)
第1判定部142は、計測値取得部130から入力される帯域別ヒストグラムM1に応じて、入力映像信号Vinに適用すべき水平方向のフィルタの強度及び垂直方向のフィルタの強度をそれぞれ変化させる。本明細書において、フィルタの強度とは、入力信号に対する減衰の強さと遮断帯域の広さとを含む概念である。後に説明する図8の例では、フィルタの強度は、Lv0からLv4までの5つのレベルのいずれかにより表される。フィルタの強度は、フィルタタップごと係数値をそれぞれ含むフィルタ係数のセットと関連付けれ、実質的にはフィルタ係数のセットが入力信号に対する減衰の強さと遮断帯域の広さとを規定する。
【0048】
より具体的には、第1判定部142は、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて、まず、帯域別のヒストグラムにおいて最大の度数を示す帯域を選択する。次に、第1判定部142は、選択した帯域の度数を閾値と比較する。ここで、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回る場合には、入力フレーム内で当該帯域の繰り返しパターンが強く現れているものと判断される。この場合、第1判定部142は、選択した帯域の周波数が高いほど強いフィルタの強度を選択する。また、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回らない場合には、入力フレーム内でいずれの帯域においても繰り返しパターンがあまり強くは現れていないものと判断される。この場合、第1判定部142は、最も弱いフィルタの強度を選択する。
【0049】
図7A及び図7Bは、帯域別ヒストグラムのデータ例をそれぞれ示す説明図である。
【0050】
図7Aを参照すると、帯域別ヒストグラムは、1から8までの番号が付された8個の帯域ごとに計測された度数を含む。図7Aの例では、最大の度数を示す帯域は8番目の帯域である。また、8番目の帯域の度数は閾値Th1を上回っている。この場合、入力フレーム内で8番目の帯域の周波数を有する繰り返しパターンが強く現れていると判断される。そこで、第1判定部142は、当該8番目の帯域の周波数に応じたフィルタの強度を強度選択テーブル143を参照して設定する。
【0051】
一方、図7Bの例では、最大の度数を示す帯域は4番目の帯域である。また、4番目の帯域の度数は閾値Th1を下回っている。この場合、いずれの周波数を有する繰り返しパターンも入力フレーム内で強くは現れていないと判断される。そこで、第1判定部142は、最も弱いフィルタの強度を選択する。
【0052】
図8は、強度選択テーブル143のデータの一例を示す説明図である。図8を参照すると、強度選択テーブル143は、選択された帯域及び強度判定値という2つのデータ項目を有する。図8の例における第2行は、7番目(#7)又は8番目(#8)の帯域が最大の度数を示す帯域として選択された場合に、最も高い強度Lv4が設定され得ることを示している。第3行は、5番目(#5)又は6番目(#6)の帯域が最大の度数を示す帯域として選択された場合に、次に高い強度Lv3が設定され得ることを示している。第4行は、3番目(#3)又は4番目(#4)の帯域が最大の度数を示す帯域として選択された場合に、次に高い強度Lv2が設定され得ることを示している。第5行は、1番目(#1)又は2番目(#2)の帯域が最大の度数を示す帯域として選択された場合に、次に高い強度Lv1が設定され得ることを示している。なお、上述したように、選択された帯域の度数が閾値Th1を上回らない場合には、帯域の周波数及び強度選択テーブル143における強度判定値に関わらず、第1判定部142は、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタの強度として最も弱い強度Lv0を設定する。
【0053】
第1判定部142は、このようなフィルタ強度判定処理を水平方向及び垂直方向のそれぞれについて行う。そして、第1判定部142は、判定結果としての水平方向のフィルタ強度S1htmp及び垂直方向のフィルタ強度S1vtmpを特性決定部146へ出力する。なお、フィルタ強度S1htmp及びS1vtmpの添え字の“tmp”は、本実施形態において、第1判定部142により判定されたフィルタ強度が暫定的な値であることを意味している。但し、かかる実施形態に限定されず、第1判定部142により判定されたフィルタ強度は最終的な値として扱われてもよい。
【0054】
図9は、本実施形態に係る第1判定部142によるフィルタ強度判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0055】
図9を参照すると、第1判定部142は、まず、水平方向の帯域別ヒストグラムから最大度数を示す帯域を選択する(ステップS102)。次に、第1判定部142は、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS104)。ここで、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回る場合には、第1判定部142は、強度選択テーブル143を参照し、選択した帯域の度数に応じて水平方向のフィルタ強度S1htmpを設定する(ステップS106)。一方、ステップS104において選択した帯域の度数が所定の閾値を上回らない場合には、第1判定部142は、水平方向のフィルタ強度S1htmpを最も弱いLv0に設定する(ステップS108)。
【0056】
次に、第1判定部142は、垂直方向の帯域別ヒストグラムから最大度数を示す帯域を選択する(ステップS112)。次に、第1判定部142は、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS114)。ここで、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回る場合には、第1判定部142は、強度選択テーブル143を参照し、選択した帯域の度数に応じて垂直方向のフィルタ強度S1vtmpを設定する(ステップS116)。一方、ステップS114において選択した帯域の度数が所定の閾値を上回らない場合には、第1判定部142は、垂直方向のフィルタ強度S1vtmpを最も弱いLv0に設定する(ステップS118)。
【0057】
なお、ステップ104において水平方向の帯域別ヒストグラムの度数と比較される閾値と、ステップ114において垂直方向の帯域別ヒストグラムの度数と比較される閾値とは、同じ値であってもよく又は異なる値であってもよい。
【0058】
(第2判定部)
第2判定部144は、計測値取得部130から入力される隣接差分総和M2に応じて、入力映像信号Vinに適用すべき水平方向のフィルタの強度及び垂直方向のフィルタの強度をそれぞれ変化させる。より具体的には、第2判定部144は、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて、隣接差分総和M2の値を所定の閾値と比較する。そして、例えば、第2判定部144は、隣接差分総和M2の値が当該閾値を上回る場合には最も強いフィルタ強度、隣接差分総和M2の値が当該閾値を上回らない場合には最も弱いフィルタ強度を選択する。第2判定部144は、このようなフィルタ強度判定処理を水平方向及び垂直方向のそれぞれについて行う。そして、第2判定部144は、判定結果としての水平方向のフィルタ強度S2htmp及び垂直方向のフィルタ強度S2vtmpを特性決定部146へ出力する。
【0059】
図10は、本実施形態に係る第2判定部144によるフィルタ強度判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0060】
図10を参照すると、第2判定部144は、まず、水平方向の隣接差分総和が所定の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS152)。ここで、隣接差分総和が所定の閾値を上回る場合には、第2判定部144は、水平方向のフィルタ強度S2htmpを最も強いLv4に設定する(ステップS154)。一方、ステップS152において隣接差分総和が所定の閾値を上回らない場合には、第2判定部144は、水平方向のフィルタ強度S2htmpを最も弱いLv0に設定する(ステップS156)。
【0061】
次に、第2判定部144は、垂直方向の隣接差分総和が所定の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS162)。ここで、隣接差分総和が所定の閾値を上回る場合には、第2判定部144は、垂直方向のフィルタ強度S2vtmpを最も強いLv4に設定する(ステップS164)。一方、ステップS162において隣接差分総和が所定の閾値を上回らない場合には、第2判定部144は、垂直方向のフィルタ強度S2vtmpを最も弱いLv0に設定する(ステップS166)。
【0062】
なお、ステップ152において水平方向の隣接差分総和と比較される閾値と、ステップ162において垂直方向の隣接差分総和と比較される閾値とは、同じ値であってもよく又は異なる値であってもよい。
【0063】
(特性決定部)
特性決定部146は、第1判定部142から入力される水平方向のフィルタ強度S1htmp及び第2判定部144から入力される水平方向のフィルタ強度S2htmpに基づいて、入力映像信号Vinに適用すべき水平方向のフィルタのフィルタ係数を決定する。また、特性決定部146は、第1判定部142から入力される垂直方向のフィルタ強度S1vtmp及び第2判定部144から入力される垂直方向のフィルタ強度S2vtmpに基づいて、入力映像信号Vinに適用すべき垂直方向のフィルタのフィルタ係数を決定する。さらに、特性決定部146は、計測値取得部130により取得されるノイズレベルM3に基づいて、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタにおけるシフト量を決定する。
【0064】
図11は、本実施形態に係る特性決定部146のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。図11を参照すると、特性決定部146は、強度決定部147a、強度段階制御部147b、ノイズレベル段階制御部147c、及びパラメータ出力部147dを含む。
【0065】
(1)フィルタ係数の決定
強度決定部147aは、第1判定部142から入力される水平方向のフィルタ強度S1htmp及び第2判定部144から入力される水平方向のフィルタ強度S2htmpから1つのフィルタ強度Shを算出する。フィルタ強度Shは、例えば、フィルタ強度S1htmp及びS2htmpの平均値であってもよい。また、例えば、フィルタ強度S1htmp及びS2htmpに所定の重みを乗算した上で、その重み付け後の値の平均値としてフィルタ強度Shが算出されてもよい。なお、算出された平均値が小数点以下の端数を有する場合には、例えば、端数は四捨五入され得る。同様に、強度決定部147aは、第1判定部142から入力される垂直方向のフィルタ強度S1vtmp及び第2判定部144から入力される垂直方向のフィルタ強度S2vtmpから1つのフィルタ強度Svを算出する。強度決定部147aは、このように算出したフィルタ強度Sh及びSvを強度段階制御部147bへ出力する。
【0066】
強度段階制御部147bは、フィルタ強度の急激な変化によりベクトルエラーが引き起こされることを防止するために、フィルタ強度が段階的に変化するように強度の出力値を制御する。例えば、強度段階制御部147bは、前のフレームについての強度の出力値がLv0であって、強度決定部147aから入力された最新の強度がLv4である場合には、パラメータ出力部147dへ出力する強度がフレームを追って(frame by frame)Lv0→Lv1→Lv2→Lv3→Lv4となるように、強度の出力値を制御する。
【0067】
図12は、本実施形態に係る強度段階制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0068】
図12を参照すると、まず、強度段階制御部147bは、強度決定部147aからフィルタ強度(Sh又はSv)を取得する(ステップS202)。次に、強度段階制御部147bは、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値と等しいか否かを判定する(ステップS204)。ここで、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値と等しい場合には、強度段階制御部147bは、そのフィルタ強度をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS206)。一方、強度段階制御部147bは、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値と等しくない場合には、当該取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値を上回るか否かをさらに判定する(ステップS210)。ここで、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値を上回る場合には、処理はステップS212へ進む。一方、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値を下回る場合には、処理はステップS222へ進む。
【0069】
ステップS212では、強度段階制御部147bは、前回の強度の出力値に所定の変化量(variation)を加えた値をフィルタ強度に代入する(ステップS212)。例えば、前回の強度の出力値がLv0であって、変化量が1レベルであると定義されている場合には、新たなフィルタ強度はLv1となる。次に、強度段階制御部147bは、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の上限値を上回るか否かを判定する(ステップS214)。ここで、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の上限値を上回る場合には、強度段階制御部147bは、フィルタ強度の上限値(例えばLv4)をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS216)。一方、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の上限値を上回らない場合には、強度段階制御部147bは、その新たなフィルタ強度をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS218)。
【0070】
ステップS222では、強度段階制御部147bは、前回の強度の出力値から所定の変化量を差し引いた値をフィルタ強度に代入する(ステップS222)。例えば、前回の強度の出力値がLv4であって、変化量が1レベルであると定義されている場合には、新たなフィルタ強度はLv3となる。次に、強度段階制御部147bは、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の下限値を下回るか否かを判定する(ステップS224)。ここで、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の下限値を下回る場合には、強度段階制御部147bは、フィルタ強度の下限値(例えばLv0)をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS226)。一方、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の下限値を下回らない場合には、強度段階制御部147bは、その新たなフィルタ強度をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS228)。
【0071】
強度段階制御部147bによるこのような段階制御処理は、水平方向のフィルタ強度Sh及び垂直方向のフィルタ強度Svのそれぞれについて並列的に行われる。
【0072】
パラメータ出力部147dは、強度段階制御部147bから入力されるフィルタ強度Sh及びSvとそれぞれ関連付けられるフィルタ係数のセットをフィルタ係数テーブル148から取得し、取得したフィルタ係数のセットをフィルタリング部150へ出力する。
【0073】
図13は、本実施形態に係る一例としてのフィルタ係数について説明するための説明図である。フィルタ係数テーブル148は、予め定義される複数のフィルタ強度と各フィルタ強度に対応するフィルタ係数のセットとを関連付けて記憶している。図13は、各フィルタ強度に対応するフィルタ係数のセットによりそれぞれ規定されるフィルタ特性を特性図でそれぞれ示している。
【0074】
まず、フィルタ強度=Lv0である場合(図の上段左)には、フィルタ特性は、ゼロから最高周波数(サンプリングレートfsの1/2)にわたって1である。即ち、この場合、フィルタは全ての信号をそのまま通過させる。また、フィルタ強度=Lv1〜Lv4である場合には、フィルタ特性は、ローパスフィルタの特性を示す。そして、フィルタ強度が強くなるほど、高周波帯域における減衰の強さは大きくなっている。また、フィルタ強度が強くなるほど、遮断帯域はより低い帯域まで広がっている。例えば、フィルタ強度=Lv1である場合(図の上段中央)には、最高周波数(fs/2)に近い帯域においてのみ信号が遮断され、fs/4付近ではほとんど信号は減衰されない。これに対し、フィルタ強度=Lv4である場合(図の下段右)には、fs/4よりも周波数の低い帯域にまで信号が遮断される帯域が広がっている。
【0075】
なお、図13に示したフィルタ特性は一例に過ぎない。即ち、より多くの若しくはより少ない種類のフィルタ係数のセットが提供されてもよく、又は図13の例とは異なる特性を示すフィルタ係数のセットが提供されてもよい。
【0076】
パラメータ出力部147dは、強度段階制御部147bから入力されるフィルタ強度に応じて、このようなフィルタ特性を示すフィルタ係数のセットを水平方向及び垂直方向のそれぞれについて取得し、取得したフィルタ係数のセットをフィルタリング部150へ出力する。
【0077】
なお、フィルタ係数テーブル148には、フィルタ係数のセットの各々と関連付けて、シフト量の既定値がさらに記憶される。シフト量の既定値は、次に説明するシフト量の決定の際にパラメータ出力部147dにより使用される。
【0078】
(2)シフト量の決定
本実施形態において、シフト量とは、フィルタ出力の最大値が出力のダイナミックレンジを超えないようにするためにフィルタリング部150が実行するシフト演算における、シフトされるビット数を指す。シフト演算により信号値の下位のビットが削られることから、シフト量が大きいほど、フレームの鮮鋭度が低下する一方でフレームに含まれるノイズがより強く除去される。
【0079】
ノイズレベル段階制御部147cは、ノイズレベルに基づいて決定されるシフト量の急激な変化を緩和するために、ノイズレベルの出力値を段階的に変化するように制御する。例えば、ノイズレベル段階制御部147cは、ノイズ計測部118から出力されるノイズレベルM3の値がフレームごとに一定の変化量で変化するように、ノイズレベルM3の値を修正(加算又は減算)する。ノイズレベル段階制御部147cは、図12に示した強度段階制御処理と同様の論理的な処理により実現されてもよく、その代わりにIIR(Infinite Impulse Response)を用いて実現されてもよい。
【0080】
パラメータ出力部147dは、フィルタ係数テーブル148を参照し、ノイズレベル段階制御部147cから入力されるノイズレベルと関連付けられているシフト量のオフセットを取得する。そして、パラメータ出力部147dは、フィルタ係数のセットと共にフィルタ係数テーブル148から取得されるシフト量の既定値にシフト量のオフセットを加えた値を、最終的に使用すべきシフト量としてフィルタリング部150へ出力する。
【0081】
図14は、本実施形態に係る一例としてのシフト量のオフセットについて説明するための説明図である。フィルタ係数テーブル148は、ノイズレベルの値の範囲と各ノイズレベルに対応するシフト量のオフセットとを関連付けて記憶している。
【0082】
図14の例では、ノイズレベルの値がn0からn1までの間にあるとき、シフト量のオフセットはゼロである。ノイズレベルの値がn1からn2までの間にあるとき、シフト量のオフセットは1である。ノイズレベルの値がn2からn3までの間にあるとき、シフト量のオフセットは2である。ノイズレベルの値がn3を超えているとき、シフト量のオフセットは3である。なお、これらノイズレベルの範囲を規定するn0、n1、n2及びn3の値は、信号処理装置100において予め定義されると共に、信号処理装置100が取り扱う入力映像信号に応じて事後的に変更されてよい。
【0083】
フィルタ係数のセットと共に予め定義されるシフト量の既定値をSfin、ノイズレベルに応じて取得されるシフト量のオフセットをSfoffset、パラメータ出力部147dが出力するシフト量をSfoutとすると、Sfoutは次式により導かれる。
【0084】
【数1】
【0085】
[2−4.フィルタリング部]
フィルタリング部150は、決定部140により決定される特性を有するフィルタを入力映像信号Vinに適用することにより、動き推定用の映像信号Vexを生成する。
【0086】
図15は、本実施形態に係るフィルタリング部150のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。図15を参照すると、フィルタリング部150は、水平方向フィルタ152、垂直方向フィルタ154及びスケーリング部156を含む。決定部140からフィルタリング部150へ入力されるフィルタ特性データFDのうち、水平方向のフィルタ係数のセットは、水平方向フィルタ152へ入力される。垂直方向のフィルタ係数のセットは、垂直方向フィルタ154へ入力される。そして、シフト量は、スケーリング部156へ入力される。
【0087】
水平方向フィルタ152は、水平方向のフィルタ係数のセットを用いて入力信号Vinの各フレームをフィルタリングすることにより、各フレームに含まれる水平方向の高周波成分を遮断し又は減衰させる。水平方向フィルタ152によるフィルタ演算は次式により表される。
【0088】
【数2】
【0089】
ここで、Vin[x,y]は入力映像信号の1フレーム内の座標(x,y)における画素値である。Mは、水平方向フィルタ152のフィルタタップの数を決定する値である。Coeffh[0]〜Coeffh[2M]は、水平方向のフィルタ係数のセットである。Vhout[x,y]は、水平方向フィルタ152の出力信号の1フレーム内の座標(x,y)における画素値である。
【0090】
垂直方向フィルタ154は、垂直方向のフィルタ係数のセットを用いて水平方向フィルタ152からの出力信号Vhoutの各フレームをフィルタリングすることにより、各フレームに含まれる垂直方向の高周波成分を遮断し又は減衰させる。垂直方向フィルタ154によるフィルタ演算は次式により表される。
【0091】
【数3】
【0092】
ここで、Nは、垂直方向フィルタ154のフィルタタップの数を決定する値である。Coeffv[0]〜Coeffv[2N]は、垂直方向のフィルタ係数のセットである。Vvout[x,y]は、垂直方向フィルタ154の出力信号の1フレーム内の座標(x,y)における画素値である。
【0093】
スケーリング部156は、フィルタリング部150からの出力信号がダイナミックレンジを超えないように、垂直方向フィルタ154の出力信号をシフトさせる。スケーリング部156によるシフト演算は次式により表される。
【0094】
【数4】
【0095】
Vex[x,y]は、フィルタリング処理の結果としてフィルタリング部150から出力される動き推定用の映像信号Vexの1フレーム内の座標(x,y)における画素値である。
【0096】
[2−5.フレームメモリ]
フレームメモリ160は、フィルタリング部150から出力される動き推定用の映像信号Vexの各フレームを一時的に記憶する。フレームメモリ160により記憶される動き推定用の映像信号Vexの各フレームは、動き推定部170による動きベクトルの推定のために用いられる。また、フレームメモリ160は、信号処理装置100に入力される入力映像信号Vinの各フレームを一時的に記憶する。さらに、フレームメモリ160は、動き推定部170により推定される各フレームについての動きベクトルを一時的に記憶する。フレームメモリ160により記憶される入力映像信号Vinの各フレーム及び各フレームについての動きベクトルは、補間処理部180によるフレームの補間のために用いられる。
【0097】
[2−6.動き推定部]
動き推定部170は、フィルタリング部150により生成される動き推定用の映像信号Vexの第1のフレームと第2のフレームとの間の信号の相関に基づいて、各フレームに現れる動きを表す動きベクトルを推定する。第1のフレームと第2のフレームとは、例えば、現在の(最新の)フレームと前のフレームに相当する。動き推定部170による動きベクトルの推定は、例えばブロックマッチング法などの公知の手法に従って行われてよい。そして、動き推定部170は、推定した動きベクトルを補間処理部180へ出力する。
【0098】
[2−7.補間処理部]
補間処理部180は、動き推定部170により推定された動きに応じて、即ち動き推定部170から入力される動きベクトルに応じて、入力映像信号Vinの第1のフレームと第2のフレームとの間のフレームを補間する。補間処理部180によるフレームの補間もまた公知の手法に従って行われてよい。そして、補間処理部180は、フレームを補間した出力映像信号Voutを出力する。出力映像信号Voutは、フレームレート変換された映像信号として直接的に利用されてもよく、インターレース−プログレッシブ変換などの用途に利用されてもよい。
【0099】
<3.効果の説明>
ここまで、図1〜図15を用いて、本発明の一実施形態に係る信号処理装置100について詳細に説明した。本実施形態によれば、入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値に基づいて入力映像信号に適用すべきフィルタの特性が決定され、決定された特性を有するフィルタが入力映像信号に適用される。そして、フィルタリング処理の結果として生成される映像信号が、動きの推定のために使用される。かかる構成によれば、動き推定用の映像信号の生成のためのフィルタの特性が動的に制御されるため、入力映像信号が繰り返しパターン又は強いノイズを含む場合には、その影響を効果的に低減することができる。また、入力映像信号が繰り返しパターンも強いノイズも含まない場合には、入力映像信号に適用されるフィルタの強度が抑制される。従って、入力映像信号の各フレームに現れる動きをより高いロバスト性をもって推定することを可能とする映像信号が供給される。また、本実施形態によれば、例えばフレームの補間などの後段の処理のために入力される映像信号とは別個に動き推定用の映像信号が供給される。従って、動きベクトルのベクトルエラーの低減のために強いフィルタを使用した場合にも、フィルタリング処理が出力映像の画質に影響を与えることがない。
【0100】
また、本実施形態によれば、動きの推定に影響を与える特徴量は、入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における高周波成分の大きさに応じた特徴量を含む。即ち、水平方向若しくは垂直方向(又はその双方)における高周波成分の大きさをフィルタ特性の決定の基礎とすることにより、入力フレーム内に現れる繰り返しパターンの強さを認識し、繰り返しパターンを除去又は緩和するようなフィルタ特性を選択することができる。高周波成分の大きさに応じた特徴量は、例えば、入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における帯域別のヒストグラムである。帯域別のヒストグラムを用いることにより、帯域の数に応じて高周波成分の大きさを複数のレベルに分類できるため、フィルタ特性をより柔軟に制御することが可能となる。また、高周波成分の大きさに応じた特徴量は、例えば、入力映像信号の各フレームに含まれる隣接画素間の画素値の差分の総和である。隣接画素間の画素値の差分の総和は、複雑な計算処理を要求しないため、少ない計算コストと比較的小さい回路規模とにより算出され得る。
【0101】
また、本実施形態によれば、動きの推定に影響を与える特徴量は、入力映像信号の各フレームに含まれるノイズ成分の強さを表すノイズレベルを含む。例えば、ノイズレベルに応じてフィルタ特性のうちのシフト量を決定することにより、ノイズが少ない場合にはフレームの鮮鋭度を維持すると共に、ノイズが多い場合にはそのノイズを除去することができる。それにより、動きベクトルの推定のロバスト性が一層向上される。
【0102】
<4.変形例>
上述した実施形態では、信号処理装置100が計測部110、動き推定部170及び補間処理部180を含む例を説明した。しかしながら、かかる例に限定されず、例えば上述した計測値取得部130、決定部140及びフィルタリング部150、又は、計測値取得部130及び決定部140のみを備える装置が提供されてもよい。例えば、図16に示した一変形例に係る信号処理装置200は、計測値取得部130及び決定部140のみを備える。この場合、信号処理装置200は、上述した計測部110と同等の機能を有する計測装置210と接続される。そして、信号処理装置200の計測値取得部130は、計測装置210から入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得する。また、信号処理装置200は、映像処理装置260と接続される。そして、信号処理装置200の決定部140は、計測値取得部130により取得される計測値に基づいて、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタの特性を決定し、決定したフィルタの特性を映像処理装置260のフィルタリング部150に通知する。映像処理装置260のフィルタリング部150は、通知された特性を有するフィルタを入力映像信号Vinに適用することにより動き推定用の映像信号Vexを生成し、生成した動き推定用の映像信号Vexを映像処理部270へ出力する。映像処理部270は、かかる動き推定用の映像信号Vexを用いて動きベクトルを推定し、例えば入力映像信号Vinに対してフレームを補間した出力映像信号Voutを出力する。
【0103】
また、信号処理装置100又は200は、上述した3種類の計測値M1、M2及びM3のうちのいずれかの計測値をフィルタ特性の決定のために使用しなくてもよい。例えば、隣接差分総和M2を使用しない場合には、決定部140の特性決定部146は、第1判定部142から入力されるフィルタ強度S1htmp及びS1vtmpのみに基づいてフィルタ特性を決定し得る。同様に、帯域別ヒストグラムM1を使用しない場合には、決定部140の特性決定部146は、第2判定部144から入力されるフィルタ強度S2htmp及びS2vtmpのみに基づいてフィルタ特性を決定し得る。さらに、信号処理装置100又は200は、水平方向及び垂直方向のいずれか一方についてフィルタ特性の決定及びフィルタリング処理を省略してもよい。
【0104】
なお、本明細書において説明した信号処理装置100及び200による一連の処理の全部又は一部は、ソフトウェアを用いて実現されてもよい。一連の処理の全部又は一部を実現するソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0106】
100,200 信号処理装置
110 計測部
130 計測値取得部
140 決定部
150 フィルタリング部
170 動き推定部
180 補間処理部
Vin 入力映像信号
Vex 動き推定用の映像信号
Vout 出力映像信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像信号の各フレームに現れる人物又は物体の動きを動きベクトルとして推定するための、ブロックマッチング法に代表される動きベクトル推定技術が知られている。推定された動きベクトルは、例えば、インターレース−プログレッシブ変換又はフレームレート変換に際して、動き補償と共にフレーム(又はフィールド)を補間するために用いられる。また、動きベクトル推定技術は、動画の圧縮符号化において圧縮効率を高めるためのフレーム間予測にとっても欠かせない技術である。しかし、動きベクトル推定技術は、一般的に、映像信号に含まれる繰り返しパターンやノイズの影響を受け易い。例えば、映像信号の1つのフレーム内に複数の類似するパターンが含まれている場合、前のフレームの1つのパターンが複数の類似するパターンのいずれに移動したのかを正確に決定することは困難である。
【0003】
一例として、図17を参照すると、左側に時刻TにおけるフレームIm01、右側に時刻T+ΔtにおけるフレームIm02が示されている。フレームIm01は、ストライプ状の網掛けで示した繰り返しパターンを有するブロックB1を含んでいる。また、フレームIm02は、ストライプ状の網掛けで示した繰り返しパターンをそれぞれ有するブロックB2及びB3を含んでいる。このような入力映像信号にブロックマッチング法を適用すると、ブロックB1とブロックB2との相関、及びブロックB1とブロックB3との相関はほぼ同等である。そのため、時刻TにおけるブロックB1は、時刻T+ΔTにおいてブロックB2に移動したともブロックB3に移動したとも解釈され得る。
【0004】
結果として、映像信号に高周波の繰り返しパターンやノイズが多く含まれる場合には、類似するパターンが同一のフレーム内に多数存在するため、画素ごとに導かれる動きベクトルの方向が様々に異なるという結果が生じる。そして、ベクトルのばらつきなどのエラーを原因とする映像の破綻が顕在化する。即ち、動きベクトルのエラーが頻繁に発生し、例えばフレーム補間後の映像の破綻がユーザに感知されるといった問題が生じ得る。
【0005】
動きベクトルのエラーを軽減するための手法として、例えば、下記特許文献1は、算出した動きベクトルとその周囲のベクトルとを比較し、空間的又は時間的なベクトルのばらつきが抑制されるようにベクトル自体を補正する手法を提案している。また、MPEG(Moving Picture Experts Group)圧縮の分野では、入力映像信号の内容に応じて適応的に入力映像信号にローパスフィルタを施すことにより、モスキートノイズなどのノイズ成分を抑制する手法が知られている(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−266170号公報
【特許文献2】特開2001−231038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1により提案された手法では、過去に算出した多数のベクトルをその後の比較のために保持しておかなければならず、大規模なフレームメモリなどのリソースが必要であり、装置の小型化や低コスト化などの要求を満たすことができなかった。また、上記特許文献2に示されているような入力映像信号をフィルタリングする手法は、ノイズ成分を抑制することはできるものの、動きベクトルの推定に単純に応用し得るものではない。例えば、映像信号にローパスフィルタを施せば、フィルタの強度によっては出力される映像の画質(例えば鮮鋭度)が低下し得る。しかし、動きベクトルの推定を目的とする場合には、動きベクトルの推定の基礎とする情報においてエラーの原因となる成分が除去されていればよく、出力映像の画質にまで影響を与えることは避けられるべきである。エラーの原因となる成分とは、例えば、映像信号に高周波の繰り返しパターンやノイズが多く含まれる場合における映像信号の高周波成分である。この場合、低周波数成分を抽出し又は相対的に強調した上で動きベクトルを推定することで、より良好な推定結果を得ることができるものと期待される。
【0008】
そこで、本発明は、入力映像信号の各フレームに現れる動きをより高い精度で推定するための映像信号を、出力映像の画質に影響を与えることなく供給することのできる、新規かつ改良された信号処理装置及び信号処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある実施形態によれば、入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得する計測値取得部と、上記計測値取得部により取得される上記計測値に基づいて、上記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定する決定部と、上記決定部により決定される特性を有するフィルタを上記入力映像信号に適用することにより、上記動きの推定のために使用される映像信号を生成するフィルタリング部と、を備える信号処理装置が提供される。
【0010】
かかる構成によれば、入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値に基づいて入力映像信号に適用すべきフィルタの特性が決定され、決定された特性を有するフィルタが入力映像信号に適用される。そして、フィルタリング処理の結果として生成される映像信号が、動きの推定のために使用される。
【0011】
また、上記動きの推定に影響を与える特徴量は、上記入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における高周波成分の大きさに応じた特徴量を含んでもよい。
【0012】
また、上記高周波成分の大きさに応じた特徴量は、上記入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における帯域別のヒストグラムを表す第1の特徴量を含んでもよい。
【0013】
また、上記高周波成分の大きさに応じた特徴量は、上記入力映像信号の各フレームに含まれる隣接画素間の画素値の差分の総和を表す第2の特徴量を含んでもよい。
【0014】
また、上記決定部は、上記計測値取得部により取得される上記計測値が示す上記入力映像信号の各フレームの上記高周波成分の大きさに応じて、上記フィルタの特性における高周波帯域の減衰の強さを変化させてもよい。
【0015】
また、上記決定部は、上記帯域別のヒストグラムにおいて最大の度数を示す帯域の周波数に応じて、上記フィルタの特性における遮断帯域を変化させてもよい。
【0016】
また、上記動きの推定に影響を与える特徴量は、上記入力映像信号の各フレームに含まれるノイズ成分の強さに応じた第3の特徴量を含んでもよい。
【0017】
また、上記フィルタの特性は、上記入力映像信号の各信号値に乗算されるフィルタ係数と各信号値に対するシフト量とにより表現され、上記決定部は、上記計測値取得部により取得される上記計測値が示す上記入力映像信号の各フレームの上記ノイズ成分の強さに応じて、上記シフト量を変化させてもよい。
【0018】
また、上記信号処理装置は、上記入力映像信号の各フレームについて上記特徴量を計測する計測部、をさらに備えてもよい。
【0019】
また、上記信号処理装置は、上記フィルタリング部により生成される上記映像信号の第1のフレームと第2のフレームとの間の信号の相関に基づいて、各フレームに現れる上記動きを推定する動き推定部、をさらに備えてもよい。
【0020】
また、上記信号処理装置は、上記動き推定部により推定された上記動きに応じて、上記入力映像信号の第1のフレームと第2のフレームとの間のフレームを補間する補間処理部、をさらに備えてもよい。
【0021】
また、本発明の別の実施形態によれば、入力映像信号を処理する信号処理装置による信号処理方法であって、上記入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得するステップと、取得された上記計測値に基づいて、上記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定するステップと、決定された特性を有するフィルタを上記入力映像信号に適用することにより、上記動きの推定のために使用される映像信号を生成するステップと、を含む信号処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る信号処理装置及び信号処理方法によれば、入力映像信号の各フレームに現れる動きをより高い精度で推定するための映像信号を、出力映像の画質に影響を与えることなく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施形態に係る信号処理装置の全体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図2】一実施形態に係る計測部のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【図3】一実施形態に係る帯域計測部のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図4】一実施形態に係る隣接差分計測部のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図5】一実施形態に係るノイズ計測部のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図6】一実施形態に係る決定部のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【図7A】帯域別ヒストグラムの第1のデータ例を示す説明図である。
【図7B】帯域別ヒストグラムの第2のデータ例を示す説明図である。
【図8】強度選択テーブルのデータの一例を示す説明図である。
【図9】一実施形態に係る帯域別ヒストグラムに基づくフィルタ強度判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図10】一実施形態に係る隣接差分総和に基づくフィルタ強度判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図11】一実施形態に係る特性決定部のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図12】一実施形態に係る強度段階制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】一実施形態に係るフィルタ係数について説明するための説明図である。
【図14】一実施形態に係るシフト量のオフセットについて説明するための説明図である。
【図15】一実施形態に係るフィルタリング部のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【図16】一変形例に係る信号処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図17】入力フレームに含まれる繰り返しパターンの動きベクトル推定への影響について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0025】
また、以下の順序にしたがって当該「発明を実施するための形態」を説明する。
1.一実施形態に係る信号処理装置の全体的な構成
2.各部の説明
2−1.計測部
2−2.計測値取得部
2−3.決定部
2−4.フィルタリング部
2−5.フレームメモリ
2−6.動き推定部
2−7.補間処理部
3.効果の説明
4.変形例
【0026】
<1.一実施形態に係る信号処理装置の全体的な構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1を参照すると、信号処理装置100は、計測部110、計測値取得部130、決定部140、フィルタリング部150、フレームメモリ160、動き推定部170、及び補間処理部180を備える。信号処理装置100のこれら構成要素のうち、フレームメモリ160以外の構成要素は、主にASIC(Application Specific Integrated Circuit)若しくはシステムLSI(Large Scale Integration)などの集積回路又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、補助的な記憶媒体とを用いて実現され得る。フレームメモリ160は、例えばRAM(Random Access Memory)又はフラッシュメモリなどの記憶媒体を用いて実現され得る。
【0027】
本実施形態において、信号処理装置100は、外部から入力される入力映像信号Vinを取得し、入力映像信号Vinを処理した後、フレームが補間された出力映像信号Voutを出力する。かかる信号処理の過程において、フレームの補間のために利用される動きベクトルは、動き推定用の映像信号Vexを用いて推定されるベクトルである。フレームが補間される入力映像信号Vinとは独立して動き推定用の映像信号Vexが動きベクトルの推定のために供給されることは、本発明の有利な側面の1つである。次節より、このような動き推定用の映像信号Vexの生成、動きの推定及びフレームの補間を行う信号処理装置100の各部の構成について、より具体的に説明する。
【0028】
<2.各部の説明>
[2−1.計測部]
計測部110は、入力映像信号Vinの各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量を計測する。本実施形態において、計測部110が計測する特徴量は、入力映像信号Vinの各フレームの水平方向及び垂直方向における高周波成分の大きさ(amplitude)に応じた特徴量と、入力映像信号Vinの各フレームに含まれるノイズ成分の強さに応じた特徴量とを含む。さらに、高周波成分の大きさに応じた特徴量は、入力映像信号Vinの各フレームの水平方向及び垂直方向における帯域別のヒストグラムと、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる隣接画素間の画素値の差分の総和(以下、隣接差分総和という)とを含み得る。
【0029】
図2は、本実施形態に係る計測部110のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。図2を参照すると、計測部110は、帯域計測部112、隣接差分計測部114及びノイズ計測部118を含む。計測部110に入力される入力映像信号Vinは、これら帯域計測部112、隣接差分計測部114及びノイズ計測部118にそれぞれ入力される。そして、帯域計測部112は、上述した特徴量のうち、各フレームにおける帯域別ヒストグラムM1を出力する。隣接差分計測部114は、各フレームの隣接差分総和M2を出力する。ノイズ計測部118は、各フレームに含まれるノイズ成分の強さを表すノイズレベルM3を出力する。
【0030】
なお、他の実施形態において、計測部110は、上述した3種類の計測値M1、M2及びM3のうちのいずれかの計測値を計測せず又は出力しなくてもよい。また、計測部110は、入力映像信号Vinの各フレームの水平方向及び垂直方向のいずれか一方について特徴量を計測してもよい。
【0031】
(帯域計測部)
帯域計測部112は、入力映像信号Vinの各フレームの水平方向及び垂直方向における帯域別の繰り返し成分の強さを計測し、水平方向の帯域別ヒストグラムと垂直方向の帯域別ヒストグラムとを生成する。帯域別の繰り返し成分の強さは、個々の帯域(band)にそれぞれ適合される帯域通過フィルタである水平フィルタ及び垂直フィルタを用いて計測され得る。
【0032】
図3は、本実施形態に係る帯域計測部112のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。図3を参照すると、帯域計測部112は、M個の帯域別水平フィルタFh1〜FhM、N個の帯域別垂直フィルタFv1〜FvN、及びヒストグラム生成部113を含む。
【0033】
第1の帯域別水平フィルタFh1は、入力映像信号Vinの水平方向の第1の帯域成分を分離する。第2の帯域別水平フィルタFh2は、入力映像信号Vinの水平方向の第2の帯域成分を分離する。同様に、第Mの帯域別水平フィルタFhMは、入力映像信号Vinの水平方向の第Mの帯域成分を分離する。即ち、本実施形態において、1つのフレームに含まれる水平方向の繰り返し成分は、M個の帯域成分に分離され計測される。
【0034】
また、第1の帯域別垂直フィルタFv1は、入力映像信号Vinの垂直方向の第1の帯域成分を分離する。第2の帯域別垂直フィルタFv2は、入力映像信号Vinの垂直方向の第2の帯域成分を分離する。同様に、第Nの帯域別垂直フィルタFvNは、入力映像信号Vinの垂直方向の第Nの帯域成分を分離する。即ち、本実施形態において、1つのフレームに含まれる垂直方向の繰り返し成分は、N個の帯域成分に分離され計測される。
【0035】
ヒストグラム生成部113は、水平フィルタFh1〜FhM及び垂直フィルタFv1〜FvNから入力される各帯域成分の大きさを1つのフレームにわたってそれぞれ積算し、帯域別ヒストグラムM1を生成する。帯域別ヒストグラムM1は、水平方向のM個の帯域ごとの度数(フィルタ出力の積算値)と、垂直方向のN個の帯域ごとの度数とを含む。
【0036】
(隣接差分計測部)
隣接差分計測部114は、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる隣接差分総和を水平方向及び垂直方向のそれぞれについて計測する。
【0037】
図4は、本実施形態に係る隣接差分計測部114のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。図4を参照すると、隣接差分計測部114は、遅延部115a、減算部115b、絶対値演算部115c及び積算部115d、並びに遅延部116a、減算部116b、絶対値演算部116c及び積算部116dを含む。このうち、遅延部115a、減算部115b、絶対値演算部115c及び積算部115dは、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる水平方向についての隣接差分総和を算出する。一方、遅延部116a、減算部116b、絶対値演算部116c及び積算部116dは、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる垂直方向についての隣接差分総和を算出する。
【0038】
遅延部115aは、入力映像信号Vinの各画素の処理タイミングを1画素(1Pixel)分遅延させ、遅延後の画素値を減算部115bへ出力する。減算部115bは、隣接差分計測部114に入力される入力映像信号Vinの各画素の画素値と遅延部115aから入力される遅延後の画素値との差分を算出する。絶対値演算部115cは、減算部115bにより算出された差分の絶対値を算出する。そして、積算部115dは、絶対値演算部115cにより算出された差分の絶対値を1つのフレームにわたって積算する。それにより、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる水平方向についての隣接差分総和が算出される。
【0039】
一方、遅延部116aは、入力映像信号Vinの各画素の処理タイミングを1ライン(1Line)分遅延させ、遅延後の画素値を減算部116bへ出力する。減算部116bは、隣接差分計測部114に入力される入力映像信号Vinの各画素の画素値と遅延部116aから入力される遅延後の画素値との差分を算出する。絶対値演算部116cは、減算部116bにより算出された差分の絶対値を算出する。そして、積算部116dは、絶対値演算部116cにより算出された差分の絶対値を1つのフレームにわたって積算する。それにより、入力映像信号Vinの各フレームに含まれる垂直方向についての隣接差分総和が算出される。
【0040】
(ノイズ計測部)
ノイズ計測部118は、入力映像信号Vinの各フレームに含まれるノイズ成分の強さを表すノイズレベルを計測する。
【0041】
図5は、本実施形態に係るノイズ計測部118のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。図5を参照すると、ノイズ計測部118は、フレームメモリ119a及びノイズレベル検出部119bを含む。
【0042】
フレームメモリ119aは、入力映像信号Vinの各フレームを一時的に記憶する。ノイズレベル検出部119bは、入力映像信号Vinの各フレームとフレームメモリ119aに記憶されている前のフレームとを比較し、その比較の結果に基づいて、各フレームについてのノイズレベルを検出する。ノイズレベル検出部119bによるノイズレベルの検出は、例えば特開2009−3599号公報に記載された公知の手法に従って行われ得る。ノイズレベルの値は、例えば標準偏差又は標準分散などの量を所定のビット数(例えば10bit)を用いて表現した値であってよい。
【0043】
計測部110は、上述したような帯域計測部112、隣接差分計測部114及びノイズ計測部118による計測結果としての計測値、即ち帯域別ヒストグラムM1、隣接差分総和M2及びノイズレベルM3を、計測値取得部130へ出力する。
【0044】
[2−2.計測値取得部]
計測値取得部130は、入力映像信号Vinの各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を、計測部110から取得する。本実施形態において計測値取得部130が取得する計測値は、上述した帯域別ヒストグラムM1、隣接差分総和M2及びノイズレベルM3である。そして、計測値取得部130は、取得したこれら計測値を決定部140へ出力する。
【0045】
[2−3.決定部]
決定部140は、計測値取得部130により取得される計測値に基づいて、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタの特性を決定する。入力映像信号Vinに適用すべきフィルタとは、後に説明するフィルタリング部150が有するフィルタである。本実施形態において、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタの特性は、入力映像信号Vinの各信号値に乗算されるフィルタ係数と、各信号値に対するシフト量(スケーリングパラメータともいう)とにより表現される。従って、決定部140は、以下に説明するように、計測値取得部130により取得される計測値に基づいて、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタのフィルタ係数とシフト量とを決定する。
【0046】
図6は、本実施形態に係る決定部140のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。図6を参照すると、決定部140は、第1判定部142、強度選択テーブル143、第2判定部144、特性決定部146及びフィルタ係数テーブル148を含む。このうち第1判定部142及び第2判定部144は、入力映像信号Vinの各フレームの高周波成分の大きさに応じて、フィルタ特性における高周波帯域の減衰の強さを変化させるための処理を行う。
【0047】
(第1判定部)
第1判定部142は、計測値取得部130から入力される帯域別ヒストグラムM1に応じて、入力映像信号Vinに適用すべき水平方向のフィルタの強度及び垂直方向のフィルタの強度をそれぞれ変化させる。本明細書において、フィルタの強度とは、入力信号に対する減衰の強さと遮断帯域の広さとを含む概念である。後に説明する図8の例では、フィルタの強度は、Lv0からLv4までの5つのレベルのいずれかにより表される。フィルタの強度は、フィルタタップごと係数値をそれぞれ含むフィルタ係数のセットと関連付けれ、実質的にはフィルタ係数のセットが入力信号に対する減衰の強さと遮断帯域の広さとを規定する。
【0048】
より具体的には、第1判定部142は、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて、まず、帯域別のヒストグラムにおいて最大の度数を示す帯域を選択する。次に、第1判定部142は、選択した帯域の度数を閾値と比較する。ここで、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回る場合には、入力フレーム内で当該帯域の繰り返しパターンが強く現れているものと判断される。この場合、第1判定部142は、選択した帯域の周波数が高いほど強いフィルタの強度を選択する。また、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回らない場合には、入力フレーム内でいずれの帯域においても繰り返しパターンがあまり強くは現れていないものと判断される。この場合、第1判定部142は、最も弱いフィルタの強度を選択する。
【0049】
図7A及び図7Bは、帯域別ヒストグラムのデータ例をそれぞれ示す説明図である。
【0050】
図7Aを参照すると、帯域別ヒストグラムは、1から8までの番号が付された8個の帯域ごとに計測された度数を含む。図7Aの例では、最大の度数を示す帯域は8番目の帯域である。また、8番目の帯域の度数は閾値Th1を上回っている。この場合、入力フレーム内で8番目の帯域の周波数を有する繰り返しパターンが強く現れていると判断される。そこで、第1判定部142は、当該8番目の帯域の周波数に応じたフィルタの強度を強度選択テーブル143を参照して設定する。
【0051】
一方、図7Bの例では、最大の度数を示す帯域は4番目の帯域である。また、4番目の帯域の度数は閾値Th1を下回っている。この場合、いずれの周波数を有する繰り返しパターンも入力フレーム内で強くは現れていないと判断される。そこで、第1判定部142は、最も弱いフィルタの強度を選択する。
【0052】
図8は、強度選択テーブル143のデータの一例を示す説明図である。図8を参照すると、強度選択テーブル143は、選択された帯域及び強度判定値という2つのデータ項目を有する。図8の例における第2行は、7番目(#7)又は8番目(#8)の帯域が最大の度数を示す帯域として選択された場合に、最も高い強度Lv4が設定され得ることを示している。第3行は、5番目(#5)又は6番目(#6)の帯域が最大の度数を示す帯域として選択された場合に、次に高い強度Lv3が設定され得ることを示している。第4行は、3番目(#3)又は4番目(#4)の帯域が最大の度数を示す帯域として選択された場合に、次に高い強度Lv2が設定され得ることを示している。第5行は、1番目(#1)又は2番目(#2)の帯域が最大の度数を示す帯域として選択された場合に、次に高い強度Lv1が設定され得ることを示している。なお、上述したように、選択された帯域の度数が閾値Th1を上回らない場合には、帯域の周波数及び強度選択テーブル143における強度判定値に関わらず、第1判定部142は、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタの強度として最も弱い強度Lv0を設定する。
【0053】
第1判定部142は、このようなフィルタ強度判定処理を水平方向及び垂直方向のそれぞれについて行う。そして、第1判定部142は、判定結果としての水平方向のフィルタ強度S1htmp及び垂直方向のフィルタ強度S1vtmpを特性決定部146へ出力する。なお、フィルタ強度S1htmp及びS1vtmpの添え字の“tmp”は、本実施形態において、第1判定部142により判定されたフィルタ強度が暫定的な値であることを意味している。但し、かかる実施形態に限定されず、第1判定部142により判定されたフィルタ強度は最終的な値として扱われてもよい。
【0054】
図9は、本実施形態に係る第1判定部142によるフィルタ強度判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0055】
図9を参照すると、第1判定部142は、まず、水平方向の帯域別ヒストグラムから最大度数を示す帯域を選択する(ステップS102)。次に、第1判定部142は、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS104)。ここで、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回る場合には、第1判定部142は、強度選択テーブル143を参照し、選択した帯域の度数に応じて水平方向のフィルタ強度S1htmpを設定する(ステップS106)。一方、ステップS104において選択した帯域の度数が所定の閾値を上回らない場合には、第1判定部142は、水平方向のフィルタ強度S1htmpを最も弱いLv0に設定する(ステップS108)。
【0056】
次に、第1判定部142は、垂直方向の帯域別ヒストグラムから最大度数を示す帯域を選択する(ステップS112)。次に、第1判定部142は、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS114)。ここで、選択した帯域の度数が所定の閾値を上回る場合には、第1判定部142は、強度選択テーブル143を参照し、選択した帯域の度数に応じて垂直方向のフィルタ強度S1vtmpを設定する(ステップS116)。一方、ステップS114において選択した帯域の度数が所定の閾値を上回らない場合には、第1判定部142は、垂直方向のフィルタ強度S1vtmpを最も弱いLv0に設定する(ステップS118)。
【0057】
なお、ステップ104において水平方向の帯域別ヒストグラムの度数と比較される閾値と、ステップ114において垂直方向の帯域別ヒストグラムの度数と比較される閾値とは、同じ値であってもよく又は異なる値であってもよい。
【0058】
(第2判定部)
第2判定部144は、計測値取得部130から入力される隣接差分総和M2に応じて、入力映像信号Vinに適用すべき水平方向のフィルタの強度及び垂直方向のフィルタの強度をそれぞれ変化させる。より具体的には、第2判定部144は、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて、隣接差分総和M2の値を所定の閾値と比較する。そして、例えば、第2判定部144は、隣接差分総和M2の値が当該閾値を上回る場合には最も強いフィルタ強度、隣接差分総和M2の値が当該閾値を上回らない場合には最も弱いフィルタ強度を選択する。第2判定部144は、このようなフィルタ強度判定処理を水平方向及び垂直方向のそれぞれについて行う。そして、第2判定部144は、判定結果としての水平方向のフィルタ強度S2htmp及び垂直方向のフィルタ強度S2vtmpを特性決定部146へ出力する。
【0059】
図10は、本実施形態に係る第2判定部144によるフィルタ強度判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0060】
図10を参照すると、第2判定部144は、まず、水平方向の隣接差分総和が所定の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS152)。ここで、隣接差分総和が所定の閾値を上回る場合には、第2判定部144は、水平方向のフィルタ強度S2htmpを最も強いLv4に設定する(ステップS154)。一方、ステップS152において隣接差分総和が所定の閾値を上回らない場合には、第2判定部144は、水平方向のフィルタ強度S2htmpを最も弱いLv0に設定する(ステップS156)。
【0061】
次に、第2判定部144は、垂直方向の隣接差分総和が所定の閾値を上回るか否かを判定する(ステップS162)。ここで、隣接差分総和が所定の閾値を上回る場合には、第2判定部144は、垂直方向のフィルタ強度S2vtmpを最も強いLv4に設定する(ステップS164)。一方、ステップS162において隣接差分総和が所定の閾値を上回らない場合には、第2判定部144は、垂直方向のフィルタ強度S2vtmpを最も弱いLv0に設定する(ステップS166)。
【0062】
なお、ステップ152において水平方向の隣接差分総和と比較される閾値と、ステップ162において垂直方向の隣接差分総和と比較される閾値とは、同じ値であってもよく又は異なる値であってもよい。
【0063】
(特性決定部)
特性決定部146は、第1判定部142から入力される水平方向のフィルタ強度S1htmp及び第2判定部144から入力される水平方向のフィルタ強度S2htmpに基づいて、入力映像信号Vinに適用すべき水平方向のフィルタのフィルタ係数を決定する。また、特性決定部146は、第1判定部142から入力される垂直方向のフィルタ強度S1vtmp及び第2判定部144から入力される垂直方向のフィルタ強度S2vtmpに基づいて、入力映像信号Vinに適用すべき垂直方向のフィルタのフィルタ係数を決定する。さらに、特性決定部146は、計測値取得部130により取得されるノイズレベルM3に基づいて、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタにおけるシフト量を決定する。
【0064】
図11は、本実施形態に係る特性決定部146のさらに具体的な構成の一例を示すブロック図である。図11を参照すると、特性決定部146は、強度決定部147a、強度段階制御部147b、ノイズレベル段階制御部147c、及びパラメータ出力部147dを含む。
【0065】
(1)フィルタ係数の決定
強度決定部147aは、第1判定部142から入力される水平方向のフィルタ強度S1htmp及び第2判定部144から入力される水平方向のフィルタ強度S2htmpから1つのフィルタ強度Shを算出する。フィルタ強度Shは、例えば、フィルタ強度S1htmp及びS2htmpの平均値であってもよい。また、例えば、フィルタ強度S1htmp及びS2htmpに所定の重みを乗算した上で、その重み付け後の値の平均値としてフィルタ強度Shが算出されてもよい。なお、算出された平均値が小数点以下の端数を有する場合には、例えば、端数は四捨五入され得る。同様に、強度決定部147aは、第1判定部142から入力される垂直方向のフィルタ強度S1vtmp及び第2判定部144から入力される垂直方向のフィルタ強度S2vtmpから1つのフィルタ強度Svを算出する。強度決定部147aは、このように算出したフィルタ強度Sh及びSvを強度段階制御部147bへ出力する。
【0066】
強度段階制御部147bは、フィルタ強度の急激な変化によりベクトルエラーが引き起こされることを防止するために、フィルタ強度が段階的に変化するように強度の出力値を制御する。例えば、強度段階制御部147bは、前のフレームについての強度の出力値がLv0であって、強度決定部147aから入力された最新の強度がLv4である場合には、パラメータ出力部147dへ出力する強度がフレームを追って(frame by frame)Lv0→Lv1→Lv2→Lv3→Lv4となるように、強度の出力値を制御する。
【0067】
図12は、本実施形態に係る強度段階制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0068】
図12を参照すると、まず、強度段階制御部147bは、強度決定部147aからフィルタ強度(Sh又はSv)を取得する(ステップS202)。次に、強度段階制御部147bは、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値と等しいか否かを判定する(ステップS204)。ここで、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値と等しい場合には、強度段階制御部147bは、そのフィルタ強度をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS206)。一方、強度段階制御部147bは、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値と等しくない場合には、当該取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値を上回るか否かをさらに判定する(ステップS210)。ここで、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値を上回る場合には、処理はステップS212へ進む。一方、取得したフィルタ強度が前回の強度の出力値を下回る場合には、処理はステップS222へ進む。
【0069】
ステップS212では、強度段階制御部147bは、前回の強度の出力値に所定の変化量(variation)を加えた値をフィルタ強度に代入する(ステップS212)。例えば、前回の強度の出力値がLv0であって、変化量が1レベルであると定義されている場合には、新たなフィルタ強度はLv1となる。次に、強度段階制御部147bは、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の上限値を上回るか否かを判定する(ステップS214)。ここで、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の上限値を上回る場合には、強度段階制御部147bは、フィルタ強度の上限値(例えばLv4)をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS216)。一方、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の上限値を上回らない場合には、強度段階制御部147bは、その新たなフィルタ強度をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS218)。
【0070】
ステップS222では、強度段階制御部147bは、前回の強度の出力値から所定の変化量を差し引いた値をフィルタ強度に代入する(ステップS222)。例えば、前回の強度の出力値がLv4であって、変化量が1レベルであると定義されている場合には、新たなフィルタ強度はLv3となる。次に、強度段階制御部147bは、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の下限値を下回るか否かを判定する(ステップS224)。ここで、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の下限値を下回る場合には、強度段階制御部147bは、フィルタ強度の下限値(例えばLv0)をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS226)。一方、新たなフィルタ強度がフィルタ強度の下限値を下回らない場合には、強度段階制御部147bは、その新たなフィルタ強度をパラメータ出力部147dへ出力する(ステップS228)。
【0071】
強度段階制御部147bによるこのような段階制御処理は、水平方向のフィルタ強度Sh及び垂直方向のフィルタ強度Svのそれぞれについて並列的に行われる。
【0072】
パラメータ出力部147dは、強度段階制御部147bから入力されるフィルタ強度Sh及びSvとそれぞれ関連付けられるフィルタ係数のセットをフィルタ係数テーブル148から取得し、取得したフィルタ係数のセットをフィルタリング部150へ出力する。
【0073】
図13は、本実施形態に係る一例としてのフィルタ係数について説明するための説明図である。フィルタ係数テーブル148は、予め定義される複数のフィルタ強度と各フィルタ強度に対応するフィルタ係数のセットとを関連付けて記憶している。図13は、各フィルタ強度に対応するフィルタ係数のセットによりそれぞれ規定されるフィルタ特性を特性図でそれぞれ示している。
【0074】
まず、フィルタ強度=Lv0である場合(図の上段左)には、フィルタ特性は、ゼロから最高周波数(サンプリングレートfsの1/2)にわたって1である。即ち、この場合、フィルタは全ての信号をそのまま通過させる。また、フィルタ強度=Lv1〜Lv4である場合には、フィルタ特性は、ローパスフィルタの特性を示す。そして、フィルタ強度が強くなるほど、高周波帯域における減衰の強さは大きくなっている。また、フィルタ強度が強くなるほど、遮断帯域はより低い帯域まで広がっている。例えば、フィルタ強度=Lv1である場合(図の上段中央)には、最高周波数(fs/2)に近い帯域においてのみ信号が遮断され、fs/4付近ではほとんど信号は減衰されない。これに対し、フィルタ強度=Lv4である場合(図の下段右)には、fs/4よりも周波数の低い帯域にまで信号が遮断される帯域が広がっている。
【0075】
なお、図13に示したフィルタ特性は一例に過ぎない。即ち、より多くの若しくはより少ない種類のフィルタ係数のセットが提供されてもよく、又は図13の例とは異なる特性を示すフィルタ係数のセットが提供されてもよい。
【0076】
パラメータ出力部147dは、強度段階制御部147bから入力されるフィルタ強度に応じて、このようなフィルタ特性を示すフィルタ係数のセットを水平方向及び垂直方向のそれぞれについて取得し、取得したフィルタ係数のセットをフィルタリング部150へ出力する。
【0077】
なお、フィルタ係数テーブル148には、フィルタ係数のセットの各々と関連付けて、シフト量の既定値がさらに記憶される。シフト量の既定値は、次に説明するシフト量の決定の際にパラメータ出力部147dにより使用される。
【0078】
(2)シフト量の決定
本実施形態において、シフト量とは、フィルタ出力の最大値が出力のダイナミックレンジを超えないようにするためにフィルタリング部150が実行するシフト演算における、シフトされるビット数を指す。シフト演算により信号値の下位のビットが削られることから、シフト量が大きいほど、フレームの鮮鋭度が低下する一方でフレームに含まれるノイズがより強く除去される。
【0079】
ノイズレベル段階制御部147cは、ノイズレベルに基づいて決定されるシフト量の急激な変化を緩和するために、ノイズレベルの出力値を段階的に変化するように制御する。例えば、ノイズレベル段階制御部147cは、ノイズ計測部118から出力されるノイズレベルM3の値がフレームごとに一定の変化量で変化するように、ノイズレベルM3の値を修正(加算又は減算)する。ノイズレベル段階制御部147cは、図12に示した強度段階制御処理と同様の論理的な処理により実現されてもよく、その代わりにIIR(Infinite Impulse Response)を用いて実現されてもよい。
【0080】
パラメータ出力部147dは、フィルタ係数テーブル148を参照し、ノイズレベル段階制御部147cから入力されるノイズレベルと関連付けられているシフト量のオフセットを取得する。そして、パラメータ出力部147dは、フィルタ係数のセットと共にフィルタ係数テーブル148から取得されるシフト量の既定値にシフト量のオフセットを加えた値を、最終的に使用すべきシフト量としてフィルタリング部150へ出力する。
【0081】
図14は、本実施形態に係る一例としてのシフト量のオフセットについて説明するための説明図である。フィルタ係数テーブル148は、ノイズレベルの値の範囲と各ノイズレベルに対応するシフト量のオフセットとを関連付けて記憶している。
【0082】
図14の例では、ノイズレベルの値がn0からn1までの間にあるとき、シフト量のオフセットはゼロである。ノイズレベルの値がn1からn2までの間にあるとき、シフト量のオフセットは1である。ノイズレベルの値がn2からn3までの間にあるとき、シフト量のオフセットは2である。ノイズレベルの値がn3を超えているとき、シフト量のオフセットは3である。なお、これらノイズレベルの範囲を規定するn0、n1、n2及びn3の値は、信号処理装置100において予め定義されると共に、信号処理装置100が取り扱う入力映像信号に応じて事後的に変更されてよい。
【0083】
フィルタ係数のセットと共に予め定義されるシフト量の既定値をSfin、ノイズレベルに応じて取得されるシフト量のオフセットをSfoffset、パラメータ出力部147dが出力するシフト量をSfoutとすると、Sfoutは次式により導かれる。
【0084】
【数1】
【0085】
[2−4.フィルタリング部]
フィルタリング部150は、決定部140により決定される特性を有するフィルタを入力映像信号Vinに適用することにより、動き推定用の映像信号Vexを生成する。
【0086】
図15は、本実施形態に係るフィルタリング部150のより詳細な構成の一例を示すブロック図である。図15を参照すると、フィルタリング部150は、水平方向フィルタ152、垂直方向フィルタ154及びスケーリング部156を含む。決定部140からフィルタリング部150へ入力されるフィルタ特性データFDのうち、水平方向のフィルタ係数のセットは、水平方向フィルタ152へ入力される。垂直方向のフィルタ係数のセットは、垂直方向フィルタ154へ入力される。そして、シフト量は、スケーリング部156へ入力される。
【0087】
水平方向フィルタ152は、水平方向のフィルタ係数のセットを用いて入力信号Vinの各フレームをフィルタリングすることにより、各フレームに含まれる水平方向の高周波成分を遮断し又は減衰させる。水平方向フィルタ152によるフィルタ演算は次式により表される。
【0088】
【数2】
【0089】
ここで、Vin[x,y]は入力映像信号の1フレーム内の座標(x,y)における画素値である。Mは、水平方向フィルタ152のフィルタタップの数を決定する値である。Coeffh[0]〜Coeffh[2M]は、水平方向のフィルタ係数のセットである。Vhout[x,y]は、水平方向フィルタ152の出力信号の1フレーム内の座標(x,y)における画素値である。
【0090】
垂直方向フィルタ154は、垂直方向のフィルタ係数のセットを用いて水平方向フィルタ152からの出力信号Vhoutの各フレームをフィルタリングすることにより、各フレームに含まれる垂直方向の高周波成分を遮断し又は減衰させる。垂直方向フィルタ154によるフィルタ演算は次式により表される。
【0091】
【数3】
【0092】
ここで、Nは、垂直方向フィルタ154のフィルタタップの数を決定する値である。Coeffv[0]〜Coeffv[2N]は、垂直方向のフィルタ係数のセットである。Vvout[x,y]は、垂直方向フィルタ154の出力信号の1フレーム内の座標(x,y)における画素値である。
【0093】
スケーリング部156は、フィルタリング部150からの出力信号がダイナミックレンジを超えないように、垂直方向フィルタ154の出力信号をシフトさせる。スケーリング部156によるシフト演算は次式により表される。
【0094】
【数4】
【0095】
Vex[x,y]は、フィルタリング処理の結果としてフィルタリング部150から出力される動き推定用の映像信号Vexの1フレーム内の座標(x,y)における画素値である。
【0096】
[2−5.フレームメモリ]
フレームメモリ160は、フィルタリング部150から出力される動き推定用の映像信号Vexの各フレームを一時的に記憶する。フレームメモリ160により記憶される動き推定用の映像信号Vexの各フレームは、動き推定部170による動きベクトルの推定のために用いられる。また、フレームメモリ160は、信号処理装置100に入力される入力映像信号Vinの各フレームを一時的に記憶する。さらに、フレームメモリ160は、動き推定部170により推定される各フレームについての動きベクトルを一時的に記憶する。フレームメモリ160により記憶される入力映像信号Vinの各フレーム及び各フレームについての動きベクトルは、補間処理部180によるフレームの補間のために用いられる。
【0097】
[2−6.動き推定部]
動き推定部170は、フィルタリング部150により生成される動き推定用の映像信号Vexの第1のフレームと第2のフレームとの間の信号の相関に基づいて、各フレームに現れる動きを表す動きベクトルを推定する。第1のフレームと第2のフレームとは、例えば、現在の(最新の)フレームと前のフレームに相当する。動き推定部170による動きベクトルの推定は、例えばブロックマッチング法などの公知の手法に従って行われてよい。そして、動き推定部170は、推定した動きベクトルを補間処理部180へ出力する。
【0098】
[2−7.補間処理部]
補間処理部180は、動き推定部170により推定された動きに応じて、即ち動き推定部170から入力される動きベクトルに応じて、入力映像信号Vinの第1のフレームと第2のフレームとの間のフレームを補間する。補間処理部180によるフレームの補間もまた公知の手法に従って行われてよい。そして、補間処理部180は、フレームを補間した出力映像信号Voutを出力する。出力映像信号Voutは、フレームレート変換された映像信号として直接的に利用されてもよく、インターレース−プログレッシブ変換などの用途に利用されてもよい。
【0099】
<3.効果の説明>
ここまで、図1〜図15を用いて、本発明の一実施形態に係る信号処理装置100について詳細に説明した。本実施形態によれば、入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値に基づいて入力映像信号に適用すべきフィルタの特性が決定され、決定された特性を有するフィルタが入力映像信号に適用される。そして、フィルタリング処理の結果として生成される映像信号が、動きの推定のために使用される。かかる構成によれば、動き推定用の映像信号の生成のためのフィルタの特性が動的に制御されるため、入力映像信号が繰り返しパターン又は強いノイズを含む場合には、その影響を効果的に低減することができる。また、入力映像信号が繰り返しパターンも強いノイズも含まない場合には、入力映像信号に適用されるフィルタの強度が抑制される。従って、入力映像信号の各フレームに現れる動きをより高いロバスト性をもって推定することを可能とする映像信号が供給される。また、本実施形態によれば、例えばフレームの補間などの後段の処理のために入力される映像信号とは別個に動き推定用の映像信号が供給される。従って、動きベクトルのベクトルエラーの低減のために強いフィルタを使用した場合にも、フィルタリング処理が出力映像の画質に影響を与えることがない。
【0100】
また、本実施形態によれば、動きの推定に影響を与える特徴量は、入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における高周波成分の大きさに応じた特徴量を含む。即ち、水平方向若しくは垂直方向(又はその双方)における高周波成分の大きさをフィルタ特性の決定の基礎とすることにより、入力フレーム内に現れる繰り返しパターンの強さを認識し、繰り返しパターンを除去又は緩和するようなフィルタ特性を選択することができる。高周波成分の大きさに応じた特徴量は、例えば、入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における帯域別のヒストグラムである。帯域別のヒストグラムを用いることにより、帯域の数に応じて高周波成分の大きさを複数のレベルに分類できるため、フィルタ特性をより柔軟に制御することが可能となる。また、高周波成分の大きさに応じた特徴量は、例えば、入力映像信号の各フレームに含まれる隣接画素間の画素値の差分の総和である。隣接画素間の画素値の差分の総和は、複雑な計算処理を要求しないため、少ない計算コストと比較的小さい回路規模とにより算出され得る。
【0101】
また、本実施形態によれば、動きの推定に影響を与える特徴量は、入力映像信号の各フレームに含まれるノイズ成分の強さを表すノイズレベルを含む。例えば、ノイズレベルに応じてフィルタ特性のうちのシフト量を決定することにより、ノイズが少ない場合にはフレームの鮮鋭度を維持すると共に、ノイズが多い場合にはそのノイズを除去することができる。それにより、動きベクトルの推定のロバスト性が一層向上される。
【0102】
<4.変形例>
上述した実施形態では、信号処理装置100が計測部110、動き推定部170及び補間処理部180を含む例を説明した。しかしながら、かかる例に限定されず、例えば上述した計測値取得部130、決定部140及びフィルタリング部150、又は、計測値取得部130及び決定部140のみを備える装置が提供されてもよい。例えば、図16に示した一変形例に係る信号処理装置200は、計測値取得部130及び決定部140のみを備える。この場合、信号処理装置200は、上述した計測部110と同等の機能を有する計測装置210と接続される。そして、信号処理装置200の計測値取得部130は、計測装置210から入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得する。また、信号処理装置200は、映像処理装置260と接続される。そして、信号処理装置200の決定部140は、計測値取得部130により取得される計測値に基づいて、入力映像信号Vinに適用すべきフィルタの特性を決定し、決定したフィルタの特性を映像処理装置260のフィルタリング部150に通知する。映像処理装置260のフィルタリング部150は、通知された特性を有するフィルタを入力映像信号Vinに適用することにより動き推定用の映像信号Vexを生成し、生成した動き推定用の映像信号Vexを映像処理部270へ出力する。映像処理部270は、かかる動き推定用の映像信号Vexを用いて動きベクトルを推定し、例えば入力映像信号Vinに対してフレームを補間した出力映像信号Voutを出力する。
【0103】
また、信号処理装置100又は200は、上述した3種類の計測値M1、M2及びM3のうちのいずれかの計測値をフィルタ特性の決定のために使用しなくてもよい。例えば、隣接差分総和M2を使用しない場合には、決定部140の特性決定部146は、第1判定部142から入力されるフィルタ強度S1htmp及びS1vtmpのみに基づいてフィルタ特性を決定し得る。同様に、帯域別ヒストグラムM1を使用しない場合には、決定部140の特性決定部146は、第2判定部144から入力されるフィルタ強度S2htmp及びS2vtmpのみに基づいてフィルタ特性を決定し得る。さらに、信号処理装置100又は200は、水平方向及び垂直方向のいずれか一方についてフィルタ特性の決定及びフィルタリング処理を省略してもよい。
【0104】
なお、本明細書において説明した信号処理装置100及び200による一連の処理の全部又は一部は、ソフトウェアを用いて実現されてもよい。一連の処理の全部又は一部を実現するソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0106】
100,200 信号処理装置
110 計測部
130 計測値取得部
140 決定部
150 フィルタリング部
170 動き推定部
180 補間処理部
Vin 入力映像信号
Vex 動き推定用の映像信号
Vout 出力映像信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得する計測値取得部と;
前記計測値取得部により取得される前記計測値に基づいて、前記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定する決定部と;
前記決定部により決定される特性を有するフィルタを前記入力映像信号に適用することにより、前記動きの推定のために使用される映像信号を生成するフィルタリング部と;
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記動きの推定に影響を与える特徴量は、前記入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における高周波成分の大きさに応じた特徴量を含む、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記高周波成分の大きさに応じた特徴量は、前記入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における帯域別のヒストグラムを表す第1の特徴量を含む、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記高周波成分の大きさに応じた特徴量は、前記入力映像信号の各フレームに含まれる隣接画素間の画素値の差分の総和を表す第2の特徴量を含む、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記計測値取得部により取得される前記計測値が示す前記入力映像信号の各フレームの前記高周波成分の大きさに応じて、前記フィルタの特性における高周波帯域の減衰の強さを変化させる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記帯域別のヒストグラムにおいて最大の度数を示す帯域の周波数に応じて、前記フィルタの特性における遮断帯域を変化させる、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記動きの推定に影響を与える特徴量は、前記入力映像信号の各フレームに含まれるノイズ成分の強さに応じた第3の特徴量を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記フィルタの特性は、前記入力映像信号の各信号値に乗算されるフィルタ係数と各信号値に対するシフト量とにより表現され、
前記決定部は、前記計測値取得部により取得される前記計測値が示す前記入力映像信号の各フレームの前記ノイズ成分の強さに応じて、前記シフト量を変化させる、
請求項7に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記信号処理装置は、
前記入力映像信号の各フレームについて前記特徴量を計測する計測部、
をさらに備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記信号処理装置は、
前記フィルタリング部により生成される前記映像信号の第1のフレームと第2のフレームとの間の信号の相関に基づいて、各フレームに現れる前記動きを推定する動き推定部、
をさらに備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項11】
前記信号処理装置は、
前記動き推定部により推定された前記動きに応じて、前記入力映像信号の第1のフレームと第2のフレームとの間のフレームを補間する補間処理部、
をさらに備える、請求項10に記載の信号処理装置。
【請求項12】
入力映像信号を処理する信号処理装置による信号処理方法であって:
前記入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得するステップと;
取得された前記計測値に基づいて、前記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定するステップと;
決定された特性を有するフィルタを前記入力映像信号に適用することにより、前記動きの推定のために使用される映像信号を生成するステップと;
を含む信号処理方法。
【請求項1】
入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得する計測値取得部と;
前記計測値取得部により取得される前記計測値に基づいて、前記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定する決定部と;
前記決定部により決定される特性を有するフィルタを前記入力映像信号に適用することにより、前記動きの推定のために使用される映像信号を生成するフィルタリング部と;
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記動きの推定に影響を与える特徴量は、前記入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における高周波成分の大きさに応じた特徴量を含む、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記高周波成分の大きさに応じた特徴量は、前記入力映像信号の各フレームの水平方向又は垂直方向における帯域別のヒストグラムを表す第1の特徴量を含む、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記高周波成分の大きさに応じた特徴量は、前記入力映像信号の各フレームに含まれる隣接画素間の画素値の差分の総和を表す第2の特徴量を含む、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記計測値取得部により取得される前記計測値が示す前記入力映像信号の各フレームの前記高周波成分の大きさに応じて、前記フィルタの特性における高周波帯域の減衰の強さを変化させる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記帯域別のヒストグラムにおいて最大の度数を示す帯域の周波数に応じて、前記フィルタの特性における遮断帯域を変化させる、請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記動きの推定に影響を与える特徴量は、前記入力映像信号の各フレームに含まれるノイズ成分の強さに応じた第3の特徴量を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記フィルタの特性は、前記入力映像信号の各信号値に乗算されるフィルタ係数と各信号値に対するシフト量とにより表現され、
前記決定部は、前記計測値取得部により取得される前記計測値が示す前記入力映像信号の各フレームの前記ノイズ成分の強さに応じて、前記シフト量を変化させる、
請求項7に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記信号処理装置は、
前記入力映像信号の各フレームについて前記特徴量を計測する計測部、
をさらに備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記信号処理装置は、
前記フィルタリング部により生成される前記映像信号の第1のフレームと第2のフレームとの間の信号の相関に基づいて、各フレームに現れる前記動きを推定する動き推定部、
をさらに備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項11】
前記信号処理装置は、
前記動き推定部により推定された前記動きに応じて、前記入力映像信号の第1のフレームと第2のフレームとの間のフレームを補間する補間処理部、
をさらに備える、請求項10に記載の信号処理装置。
【請求項12】
入力映像信号を処理する信号処理装置による信号処理方法であって:
前記入力映像信号の各フレームに現れる動きの推定に影響を与える特徴量についての計測値を取得するステップと;
取得された前記計測値に基づいて、前記入力映像信号に適用すべきフィルタの特性を決定するステップと;
決定された特性を有するフィルタを前記入力映像信号に適用することにより、前記動きの推定のために使用される映像信号を生成するステップと;
を含む信号処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−244085(P2011−244085A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112273(P2010−112273)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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