説明

信号発信機

【課題】トリガ信号を発信する信号発信機に求められる性能を劣化させることなく、特性の異なる複数のトリガ信号を発信することのできる信号発信機を実現する。
【解決手段】無線ICタグに対して、無線ICタグを起動させるためのトリガ信号を、アンテナを介して発信する信号発信機であって、複数のアンテナを1対1で対応するように接続する複数の接続部と、複数の接続部に接続された複数のアンテナの1つを選択する選択部と、を有し、複数の接続部に接続された複数のアンテナを介して特性の異なる複数のトリガ信号を発信できるように、かつ、電源投入後に、選択部により選択されたアンテナ以外のアンテナの両端の電圧が0となるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号発信機に関し、特に、例えば無線ICタグを保持した人の動向を管理する動体管理システム等において好ましく適用される技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗等において商品に無線ICタグを取り付けて商品を管理するセキュリティシステムや、無線ICタグを保持した人の動向を管理する動体管理システムが知られている。無線ICタグ(RFIDタグ)は、電池等の電源部を備えたアクティブタグと、電源部を備えないパッシブタグに大別されるが、アクティブタグは、電源部からの電力供給を受けて数十m程度の範囲で通信することができ、またパッシブタグと比べると広範囲に信号を送信することが可能である。このため、上記のシステムでは、アクティブタグが使用されることが多い。
【0003】
アクティブタグを利用したセキュリティシステムや動体管理システムでは、タグを起動するためのトリガ信号を該タグに対して発信するトリガ発信機が用いられる。トリガ発信機は、数十μH〜100μH程度の外部トリガコイルに対して、位置情報等でASK(Amplitude Shift Keying)変調された100kHz前後の周波数で約10Ap−pの電流を流し、磁界にてアクティブタグを起動する。
【0004】
例えば特許文献1には、無線ICタグをきめ細かく管理できる管理システムが開示されており、当該管理システムにおいてもトリガ発信機が用いられている。当該管理システムで用いられているトリガ発信機は、図5に示すように、アンテナとしての外部トリガコイルを1つ備えるもの(1チャンネルトリガ発信機)であり、1つの発信機から特性の異なる複数のトリガ信号を発信することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−41475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線ICタグを用いた動体管理システムやセキュリティシステムは、設置するビル内の各フロアの部屋入口や通路にトリガ発信機を設置するため、大規模なビルでは設置に必要なトリガ発信機の数量が多くなり、設置コストが膨大となってしまう。設置コストを減らすには、1つのトリガ発信機から特性の異なる複数のトリガ信号を発信できるようにすることが有効である。例えば、1つのトリガ発信機に2つの外部トリガコイルを搭載すれば、設置に必要な台数を半分にすることができる。
【0007】
しかし、上記のように2つの外部トリガコイルを1つのトリガ発信機に搭載する場合、トリガコイル間あるいはそれぞれのコイルを接続するコネクタ間の電気的干渉による相手コイルへのトリガ信号のリークが問題となる。このトリガ信号のリークは、予定していない外部トリガコイルからトリガ信号を発信することになり、そのチャンネルに割り当てていないIDでタグを起動してしまうというシステム上の誤作動が発生する。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みて、トリガ信号を発信する信号発信機に求められる性能を劣化させることなく、特性の異なる複数のトリガ信号を発信することのできる信号発信機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の信号発信機は、無線ICタグに対して、無線ICタグを起動させるためのトリガ信号を、アンテナを介して発信する信号発信機であって、複数のアンテナを1対1で対応するように接続する複数の接続部と、複数の接続部に接続された複数のアンテナの1つを選択する選択部と、を有し、複数の接続部に接続された複数のアンテナを介して特性の異なる複数のトリガ信号を発信できるように、かつ、電源投入後に、選択部により選択されたアンテナ以外のアンテナの両端の電圧が0となるように構成されたものである。
【0010】
また、上記のトリガ発信機において、選択部により選択されたアンテナを流れる電流を検出し電圧値として出力する電流検出部と、電流検出部により出力された電圧値に基づいて、選択部で選択されたアンテナに発生する共振電圧のピーク点を判定する制御部と、を有するものであってもよい。
【0011】
また、上記のトリガ発信機において、複数のコンデンサが設定値に応じてオン/オフし、複数通りの共振コンデンサを構成するように組み込まれた回路で、制御部及び選択部と接続された共振コンデンサ回路を有し、電流検出部は、選択部により選択されたアンテナ及び共振コンデンサ回路を流れる電流の電圧値を検出し、制御部は、所定の間隔で設定値を共振コンデンサ回路に出力し、設定値ごとの電圧値を電流検出部から取得し、取得した電圧値の中から最大の電圧値に対応する設定値を、選択されたアンテナとの最適な共振コンデンサの設定値として記憶するものであってもよい。
【0012】
また、上記のトリガ発信機において、第1のアンテナと接続される第1の接続部は、一方の端子がグラウンドと接続され、他方の端子が第1のスイッチを介してグラウンドと接続され、第2のアンテナと接続される第2の接続部は、一方の端子がグラウンドと接続され、他方の端子が第2のスイッチを介してグラウンドと接続され、制御部は、選択部により第1のアンテナが選択された場合に、第1のスイッチをオフ、第2のスイッチをオンとし、選択部により第2のアンテナが選択された場合に、第1のスイッチをオン、第2のスイッチをオフとするものであってもよい。
【0013】
また、上記のトリガ発信機において、第1の接続部は、一方の端子が第1のコンデンサを介してグラウンドと接続され、第2の接続部は、一方の端子が第2のコンデンサを介してグラウンドと接続されているものであってもよい。
【0014】
また、上記のトリガ発信機において、第1のコンデンサは、選択部により第1のアンテナが選択された場合に、共振回路の一部として動作し、第2のコンデンサは、選択部により第2のアンテナが選択された場合に、共振回路の一部として動作するものであってもよい。
【0015】
また、上記のトリガ発信機において、第1のコンデンサは、選択部により第2のアンテナが選択された場合に、第1のコンデンサが接続された端子に漏れこんだ第2のアンテナの電圧を除去するフィルタとして動作し、第2のコンデンサは、選択部により第1のアンテナが選択された場合に、第2のコンデンサが接続された端子に漏れこんだ第2のアンテナの電圧を除去するフィルタとして動作するものであってもよい。
【0016】
また、上記のトリガ発信機において、第1の接続部は、他方の端子が第3のコンデンサ及び第1のスイッチを介してグラウンドと接続され、第2の接続部は、他方の端子が第4のコンデンサ及び第2のスイッチを介してグラウンドと接続され、第3のコンデンサは、選択部により第2のアンテナが選択された場合に、選択部における第1のアンテナを選択するための端子に漏れこんだ第2のアンテナの電圧を除去するフィルタとして動作し、第4のコンデンサは、選択部により第1のアンテナが選択された場合に、選択部における第2のアンテナを選択するための端子に漏れこんだ第1のアンテナの電圧を除去するフィルタとして動作するものであってもよい。
【0017】
また、上記のトリガ発信機において、選択部はパワーMOSFETスイッチで構成されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、トリガ信号のリークを防止しシステム上の誤作動を発生させずに、特性の異なる複数のトリガ信号を発信できるトリガ発信機が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る2チャンネルトリガ発信機の内部構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る2チャンネルトリガ発信機におけるNビット共振コンデンサの内部構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る2チャンネルトリガ発信機における第3SW(スイッチ)の内部構成を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施形態におけるCPUからの出力と各ANDゲート及び各SW(スイッチ)の出力との関係を示した図である。
【図5】従来の1チャンネルトリガ発信機の内部構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、トリガ発信機に求められる仕様を下げることなく、回路ブロックの共通化と新規回路により2チャンネル発信機を具現化するものである。以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る2チャンネルトリガ発信機の内部構成を示したブロック図であり、図5は、従来の1チャンネルトリガ発信機の内部構成を示したブロック図である。本実施形態の2チャンネルトリガ発信機は、従来の1チャンネルトリガ発信機をもとに、2チャンネル化して2つの外部トリガコイルを接続可能に構成したものである。
【0022】
従来の1チャンネルトリガ発信機を2チャンネル化する障害として、外部トリガコイルと接続するチャンネル1用コネクタとチャンネル2用コネクタの電気間干渉による相手チャンネルへのトリガ信号リークがあった。これは、通常動作時にチャンネル1用コネクタ及びチャンネル2用コネクタを経由して外部トリガコイルに20Ap−p以上の電流を流す場合もあり、また外部トリガコイルのインダクタンス値によっては600Vp−p以上の高電圧が発生するのでチャンネル間のリークが生じてしまうことである。また、機器の小型化の市場要求もあり、チャンネル1用コネクタとチャンネル2用コネクタを数センチメートル程度の距離に配置した状態で、トリガ信号リークをなくす必要があった。これが第1の問題である。
【0023】
また、Nビット共振コンデンサと接続するスイッチ回路(例えばパワーMOSFETスイッチ)は、チャンネル1出力とチャンネル2出力を切り替えるが、選択されないチャンネルへも、スイッチ回路のオフ時のインピーダンスを介して他チャンネル側の外部トリガコイルに数V程度の電圧を誘起してしまう。そして、その選択されなかったチャンネルに割り当てていないトリガ信号でタグを起動してしまうというシステム上の誤作動が発生する。これが第2の問題である。
【0024】
上記第1及び第2の問題の解決方法として、本発明では、外部トリガコイルとのコネクタについて、一方の端子はコンデンサを介してグラウンドと接続し、他方の端子はコンデンサ及びスイッチ回路を介してグラウンドと接続するように構成している。当該スイッチ回路は、接続されている側のコネクタがNビット共振コンデンサと接続されたスイッチ回路により選択されなかった(もう一方のコネクタが選択された)場合、オンに切り替えられる。すなわち、選択されなかったコネクタ側に接続されている外部トリガコイルの両端の電圧を0にして、コネクタの近距離配置によるトリガ信号リークや、Nビット共振コンデンサと接続されたスイッチ回路のオフ時のインピーダンスを介したトリガ信号リークを防止する。
【0025】
従来では、外部トリガコイルと共振するNビットコンデンサの最適な組み合わせをCPUで判定する手段として、外部トリガコイルに発生する共振電圧をピークホールド回路にて判定していたが、共振波形の立ち上がり時のトランジェントを保持して誤ったピーク点を判定する場合があり、外部トリガコイルとNビットコンデンサの最適な組み合わせの判定ができなかった。また、共振電圧は、外部トリガコイルのインダクタンス値に比例して増大するため、CPUに取り込んだA/D値から外部トリガコイルより発生した磁界強度を判定することが困難であった。これが第3の問題である。
【0026】
上記第3の問題の解決方法として、本発明では、選択されたコネクタ側に接続されている外部トリガコイルや該コイルにトリガ信号を出力する共振ドライブを流れる電流を検出することで、共振ピーク点(共振電圧の最大点)を把握し、該外部トリガコイルと共振するNビットコンデンサの最適な組み合わせを判定する。
【0027】
本実施形態の2チャンネルトリガ発信機の構成についてさらに詳細に説明する。本実施形態の2チャンネルトリガ発信機1は、電源部11、外部I/F12、CPU13、Nビット共振コンデンサ14、第3SW15、第1電流検出部21、第1ANDゲート22、第1共振ドライブ23、第1SW24、コンデンサa25、コンデンサb26、第2電流検出部31、第2ANDゲート32、第2共振ドライブ33、第2SW34、コンデンサc35、コンデンサd36を有して構成される。
【0028】
電源部11は、直流電圧を2チャンネルトリガ発信機1の各部に供給する。
【0029】
外部I/F12は、PC等の外部装置との通信を行うためのインターフェースであり、本実施形態ではシリアル通信規格のRS−485を用いて構成している。PC等の外部装置は、外部I/F12を介して、2チャンネルトリガ発信機1に対して、トリガ発信間隔、トリガID、トリガ信号のデューティ可変による出力調整といった各種設定や、外部トリガコイルの断線検出を行うことが可能である。
【0030】
CPU13は、2チャンネルトリガ発信機1の全体の動作を制御する回路である。CPU13は、各共振ドライブや各SWに向けてトリガ信号や制御信号を出力するとともに、各電流検出部から検出結果を入力し、その検出結果に基づいてNビットの設定値を制御信号としてNビット共振コンデンサ14に出力する。また、CPU13は、PC等の外部装置からのトリガID設定に基づいて、各接続部に接続された外部トリガコイルごとのトリガ信号を生成する。
【0031】
Nビット共振コンデンサ14は、N個のコンデンサを有し、CPU13から出力された制御信号(Nビットの設定値)に基づいて、所定の数のコンデンサを選択して電流を流す回路である。Nビット共振コンデンサ14は、ビット数(通常8ビット)によっては部品点数が多く、さらに外部トリガコイルに流す電流を10Ap−p以上にすると共振コンデンサ切替用スイッチ(パワーMOSFET)に放熱器を取り付ける必要があるため、コスト低減とサイズダウンのために共通回路としている。具体的な構成を図2に示す。図2では、8ビット共振コンデンサとして説明したが、これに限定されるものではなく、6ビットであっても10ビットであってもよい。
【0032】
図2に示すように、Nビット共振コンデンサ14は、N1コンデンサ1411及びN1SW1421からN8コンデンサ1418及びN8SW1428まで、8組のコンデンサ及びスイッチング素子の組が並列に接続されて構成される。また、各スイッチング素子は、グラウンドに接続されるとともにコンデンサと接続され、CPU13からのNビット設定値に基づいてON/OFFし、ONに切り替えたとき該コンデンサに電流を流す。そして、ONに切り替えられたスイッチング素子に接続されたコンデンサと接続部に接続された外部トリガコイルとで主に共振回路を構成する(正確には、後述するように、コンデンサa25やコンデンサc35も共振回路に含まれる)。
【0033】
なお、本実施形態では、スイッチング素子としてパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いるが、これに限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)をもちいてもよい。その他のスイッチング素子(第1SW、第2SW、SWa151(図3)、SWb152(図3))についても同様である。
【0034】
第3SW15は、CPU13から出力された制御信号に基づいて、いずれかのチャンネル(接続部及びこれに接続された外部トリガコイル)を選択して電流を流す回路である。具体的な構成を図3に示す。
【0035】
図3に示すように、第3SW15は、チャンネル1(第1接続部27及びこれに接続された外部トリガコイル)を選択するための切り替えを行うスイッチング素子であるSWa151と、チャンネル2(第2接続部37及びこれに接続された外部トリガコイル)を選択するための切り替えを行うスイッチング素子であるSWb152と、を有して構成される。
【0036】
第1電流検出部21は、第1接続部27に接続された外部トリガコイルやNビット共振コンデンサ14で選択されたコンデンサ等を流れる電流の検出を行う回路で、電流検出で得られた電圧値をCPU13のポートEに出力する。第2電流検出部31は、第2接続部37に接続された外部トリガコイルやNビット共振コンデンサ14で選択されたコンデンサ等を流れる電流の検出を行う回路で、電流検出で得られた電圧値をCPU13のポートFに出力する。
【0037】
第1ANDゲート22は、CPU13から出力されたトリガ信号や制御信号に基づいて、第1共振ドライブ23へのトリガ信号の出力を行う回路である。第2ANDゲート32は、CPU13から出力されたトリガ信号や制御信号に基づいて、第2共振ドライブ33へのトリガ信号の出力を行う回路である。両ゲートはANDゲートであり、2つのポートからHの制御信号を入力したとき、トリガ信号を各共振ドライブに出力する。
【0038】
第1共振ドライブ23は、CPU13で生成されたトリガ信号(第1接続部27に接続された外部トリガコイルからの発信が想定されたもの)を、第1ANDゲート22から入力し、第1接続部27へ出力する。第2共振ドライブ33は、CPU13で生成されたトリガ信号(第2接続部37に接続された外部トリガコイルからの発信が想定されたもの)を、第2ANDゲート32から入力し、第2接続部37へ出力する。
【0039】
第1SW24は、コンデンサb26とグラウンドの接続を切り替えるスイッチング素子である。第1SW24は、CPU13のポートBからの制御信号に基づいてON/OFFし、ONに切り替えたときコンデンサb26とグラウンドの接続して、第3SW15のSWa151がOFFに切り替えたときに漏れ込んだ電流をグラウンドに流す。第2SW34は、コンデンサd36とグラウンドの接続を切り替えるスイッチング素子である。第2SW34は、CPU13のポートCからの制御信号に基づいてON/OFFし、ONに切り替えたときコンデンサd36とグラウンドの接続して、第3SW15のSWb152がOFFに切り替えたときに漏れ込んだ電流をグラウンドに流す。
【0040】
課題で述べたように、1つのトリガ発信機に2つの外部トリガコイルを搭載する場合は相手コイルへのトリガ信号のリークが問題となる。また、通常より著しく高い電圧をかける場合には信号リークの問題はさらに顕著となる。加えて、ユーザによってはより精度の高い信号送信(誤作動を起こさない完璧なシステム運用)を要請することもある。これらの事情に対して、本願発明では、信号送信を行わない側のコイル両端の電圧が0となるように構成し、個々の回路(モジュール)内での接地とは別に独立して、第1SW24及び第2SW34をグラウンドと接続している。モジュール内におけるグラウンド接続と、第1SW24及び第2SW34とのグラウンド接続は、その意味合い・目的が異なり、後者において、通常なくてもよいグラウンド接続を、信号リーク防止のためにあえて設けている。
【0041】
なお、図1では図示を省略しているが、CPU13のポートBと第1SW24、及び、ポートCと第2SW34の間にはインバータ1つが設けられており、各ポートからの制御信号が反転して各SWに入力される。また、CPU13のポートBと第3SW15、及び、ポートCと第3SW15の間にはインバータ2つが設けられており、2度の反転を経て各ポートからの制御信号がそのまま各SWに入力される。
【0042】
コンデンサa25は、第1接続部27においてコンデンサb26が接続されている端子とは別の端子と一端が接続されており、他端がグラウンドと接続されている。コンデンサc35は、第2接続部37においてコンデンサd36が接続されている端子とは別の端子と一端が接続されており、他端がグラウンドと接続されている。
【0043】
第1接続部27は、一方の外部トリガコイルを接続するコネクタであり、チャンネル1用コネクタである。第2接続部37は、他方の外部トリガコイルを接続するコネクタであり、チャンネル2用コネクタである。
【0044】
次に、本発明の2チャンネルトリガ発信機の動作について説明する。まず、電源投入後、電源部11により直流電圧が各部に供給され、CPU13は、外部装置(PC等)によるトリガID設定に基づいてトリガ信号を生成する。
【0045】
続いて、CPU13は、ポートAからトリガ信号、ポートBからHの制御信号、ポートCからLの制御信号を出力し、各信号は、第1ANDゲート22、第2ANDゲート32、第1SW24、第2SW34、第3SW15に入力される。ポートAから出力されたトリガ信号は、第1ANDゲート22及び第2ANDゲート32に入力される。また、ポートBから出力されたHの制御信号は、第1ANDゲート22にHの状態で入力され、1つのインバータを経由してLに反転されて第1SW24に入力され、2つのインバータを経由してHの状態で第3SW15内のSWa151に入力される。また、ポートCから出力されたLの制御信号は、第2ANDゲート32にLの状態で入力され、1つのインバータを経由してHに反転されて第2SW34に入力され、2つのインバータを経由してHの状態で第3SW15内のSWb152に入力される。
【0046】
第1ANDゲート22は、ポートAからのトリガ信号とポートBからのHの制御信号を入力するため、ゲートを開きトリガ信号を第1共振ドライブ23に出力する。第2ANDゲート32は、ポートAからのトリガ信号とポートCからのLの制御信号を入力するため、ゲートを開かずトリガ信号を第2共振ドライブ33には出力しない。第1SW24は、1つのインバータで反転されたLの制御信号を入力するため、OFFに切り替えてコンデンサb26とグラウンドを非接続とする。第2SW34は、1つのインバータで反転されたHの制御信号を入力するため、ONに切り替えてコンデンサd36とグラウンドを接続する。第3SW15内のSWa151は、2つのインバータを経由してHの状態の制御信号を入力するため、ONに切り替えて第1接続部27に接続された外部トリガコイルとNビット共振コンデンサ14を接続する。第3SW15内のSWb152は、2つのインバータを経由してLの状態の制御信号を入力するため、OFFに切り替えて第2接続部37に接続された外部トリガコイルとNビット共振コンデンサ14を非接続とする。CPU13からの出力と各ANDゲート及び各SWの出力との関係を図4に示す。
【0047】
また、CPU13は、所定の間隔(例えば4ms)でポートNから制御信号(Nビットの設定値)をNビット共振コンデンサ14に出力し、第3SW15により選択されたチャンネル1の外部トリガコイルとNビット共振コンデンサ14を自動同調させるためのNビット分のスキャンを行う。自動同調は、第1共振ドライブ23と接続された第1電流検出部21からの出力結果(電圧値)をCPU13がポートEから入力し、入力した電圧値が最大となったNビットの設定値を記憶することで行う。
【0048】
次いで、CPU13は、ポートAからトリガ信号、ポートBからLの制御信号、ポートCからHの制御信号を出力し、上記と同様に、チャンネル2の外部トリガコイルとNビット共振コンデンサ14を自動同調させるためのNビット分のスキャンを行って、共振電圧が最大となったNビットの設定値を記憶する。
【0049】
本実施形態では、外部トリガコイルと共振するNビット共振コンデンサの最適な組み合わせについて電流検出を行うことでCPUが判定しているが、このように構成することで、正確に共振点に同調させることができるようになった。また、外部トリガコイルに流れる電流を測定できるため、コイルから発生する磁界強度を把握することが可能である。さらに、共振ドライブ回路に流れる電流も加算されるため、共振回路全体の異常動作の検出に応用することができる。
【0050】
チャンネル1(第1接続部)とチャンネル2(第2接続部)にはCPU13で設定される任意の発信間隔(例えば15〜100ms)で交互にトリガ信号を供給し、外部トリガコイルを介してトリガ信号を送信し無線ICタグを起動させる。チャンネル1にトリガ信号を供給するときは、CPU13は、上記自動同調で得られたNビットの設定値をポートNからNビット共振コンデンサ14に出力した後に、ポートA、B、Cからトリガ信号や制御信号を出力してチャンネル1へのトリガ信号のドライブを行う。チャンネル2にトリガ信号を供給するときも、CPU13は、上記と同様に、まずNビットの設定値をポートNから出力し、その後にトリガ信号や制御信号をポートA、B、Cから出力してチャンネル1へのトリガ信号を供給する。
【0051】
図4に示すように、第1SW24及び第2SW34は、それぞれ他方のチャンネルが選択されたときにONに切り替えられ、コンデンサとグラウンドを接続する。つまり、チャンネル1が選択された場合、第1SW24はOFF、第2SW34はONとなり、チャンネル2が選択された場合、第1SW24はON、第2SW34はOFFとなる。
【0052】
例えばチャンネル1(第1接続部27及びこれに接続する外部トリガコイル)が選択された場合、第2SW34はONとなってコンデンサd36がグラウンドと接続し、またコンデンサc35もグラウンドと接続しているため、チャンネル2における外部トリガコイルの両端の電圧は0となる。また、この場合、コンデンサc35は、チャンネル1への出力時にY点(図1)に漏れ込んだ微小電圧を除去するフィルタとして機能し、コンデンサd36は、チャンネル1への出力時にQ点(図4)に漏れ込んだ微小電圧を除去するフィルタとして機能する。
【0053】
チャンネル2(第2接続部37及びこれに接続する外部トリガコイル)が選択された場合も上記と同様で、チャンネル1における外部トリガコイルの両端の電圧は0となり、この場合、コンデンサa25は、チャンネル2への出力時にW点(図1)に漏れ込んだ微小電圧を除去するフィルタとして機能し、コンデンサb26は、チャンネル2への出力時にQ点(図4)に漏れ込んだ微小電圧を除去するフィルタとして機能する。
【0054】
チャンネル1とチャンネル2における外部トリガコイルは、独立したエリアに設置され、別のトリガIDを持つため、チャンネル1とチャンネル2のアイソレーションはシステムを運用する上で極めて重要となる。本実施形態では、上記のように構成することで、チャンネル1における外部トリガコイルの両端(W点、X点)と、チャンネル2における外部トリガコイルの両端(Y点、Z点)において、非動作(トリガ信号の非ドライブ)時に動作(トリガ信号のドライブ)側のチャンネルの電圧が微小でも発生しないようにしている。
【0055】
また、各接続部においてSWと接続されたコンデンサとは別のコンデンサ(コンデンサa25、コンデンサc35)は、自らが接続している側のチャンネルが選択された場合に共振回路の一部として機能する。すなわち、Nビット共振コンデンサ14及び接続部に接続された外部トリガコイルとともに共振回路を構成する。
【0056】
本発明では、2チャンネル化の実現のために、従来の1チャンネルトリガ発信機で用いた回路ブロックを共通化したが、上述した実施形態のほか、さらに電流検出部を共通化するように構成してもよい。回路ブロックの共通化を可能な限り行うことで、コスト削減及び機器小型化が可能となる。
【0057】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 2chトリガ発信機
5 1chトリガ発信機
11,51 電源部
12,52 外部I/F
13,53 CPU
14,54 Nビット共振コンデンサ
15 第3SW(スイッチ)
21 第1電流検出部
22 第1ANDゲート
23 第1共振ドライブ
24 第1SW(スイッチ)
25 コンデンサa
26 コンデンサb
27 第1接続部
31 第2電流検出部
32 第2ANDゲート
33 第2共振ドライブ
34 第2SW(スイッチ)
35 コンデンサc
36 コンデンサd
37 第2接続部
55 共振ドライブ
56 接続部
151 SW(スイッチ)a
152 SW(スイッチ)b
1411〜1418 N1コンデンサ〜N8コンデンサ
1421〜1428 N1SW(スイッチ)〜N8SW(スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ICタグに対して、前記無線ICタグを起動させるためのトリガ信号を、アンテナを介して発信する信号発信機であって、
複数の前記アンテナを1対1で対応するように接続する複数の接続部と、
前記複数の接続部に接続された複数のアンテナの1つを選択する選択部と、
を有し、
前記複数の接続部に接続された複数のアンテナを介して特性の異なる複数のトリガ信号を発信できるように、かつ、電源投入後に、前記選択部により選択されたアンテナ以外のアンテナの両端の電圧が0となるように構成されたことを特徴とする請求項4に記載の信号発信機。
【請求項2】
前記選択部により選択されたアンテナを流れる電流を検出し電圧値として出力する電流検出部と、
前記電流検出部により出力された電圧値に基づいて、前記選択部で選択されたアンテナに発生する共振電圧のピーク点を判定する制御部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の信号発信機。
【請求項3】
複数のコンデンサが設定値に応じてオン/オフし、複数通りの共振コンデンサを構成するように組み込まれた回路で、前記制御部及び前記選択部と接続された共振コンデンサ回路を有し、
前記電流検出部は、前記選択部により選択されたアンテナ及び前記共振コンデンサ回路を流れる電流の電圧値を検出し、
前記制御部は、所定の間隔で設定値を前記共振コンデンサ回路に出力し、設定値ごとの電圧値を前記電流検出部から取得し、前記取得した電圧値の中から最大の電圧値に対応する設定値を、前記選択されたアンテナとの最適な共振コンデンサの設定値として記憶することを特徴とする請求項2に記載の信号発信機。
【請求項4】
第1のアンテナと接続される第1の接続部は、一方の端子がグラウンドと接続され、他方の端子が第1のスイッチを介してグラウンドと接続され、
第2のアンテナと接続される第2の接続部は、一方の端子がグラウンドと接続され、他方の端子が第2のスイッチを介してグラウンドと接続され、
前記制御部は、前記選択部により第1のアンテナが選択された場合に、前記第1のスイッチをオフ、前記第2のスイッチをオンとし、前記選択部により第2のアンテナが選択された場合に、前記第1のスイッチをオン、前記第2のスイッチをオフとすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の信号発信機。
【請求項5】
前記第1の接続部は、前記一方の端子が第1のコンデンサを介してグラウンドと接続され、
前記第2の接続部は、前記一方の端子が第2のコンデンサを介してグラウンドと接続されていることを特徴とする請求項4に記載の信号発信機。
【請求項6】
前記第1のコンデンサは、前記選択部により第1のアンテナが選択された場合に、共振回路の一部として動作し、前記第2のコンデンサは、前記選択部により第2のアンテナが選択された場合に、共振回路の一部として動作することを特徴とする請求項5に記載の信号発信機。
【請求項7】
前記第1のコンデンサは、前記選択部により第2のアンテナが選択された場合に、前記第1のコンデンサが接続された端子に漏れこんだ前記第2のアンテナの電圧を除去するフィルタとして動作し、前記第2のコンデンサは、前記選択部により第1のアンテナが選択された場合に、前記第2のコンデンサが接続された端子に漏れこんだ前記第2のアンテナの電圧を除去するフィルタとして動作することを特徴とする請求項5又は6に記載の信号発信機。
【請求項8】
前記第1の接続部は、前記他方の端子が第3のコンデンサ及び前記第1のスイッチを介してグラウンドと接続され、
前記第2の接続部は、前記他方の端子が第4のコンデンサ及び前記第2のスイッチを介してグラウンドと接続され、
前記第3のコンデンサは、前記選択部により第2のアンテナが選択された場合に、前記選択部における前記第1のアンテナを選択するための端子に漏れこんだ前記第2のアンテナの電圧を除去するフィルタとして動作し、前記第4のコンデンサは、前記選択部により第1のアンテナが選択された場合に、前記選択部における前記第2のアンテナを選択するための端子に漏れこんだ前記第1のアンテナの電圧を除去するフィルタとして動作することを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の信号発信機。
【請求項9】
前記選択部はパワーMOSFETスイッチで構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の信号発信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−129639(P2012−129639A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277331(P2010−277331)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000165848)原田工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】