説明

信号雷管式火災監視装置

【課題】 多段に積み上げられる倉庫等において、火災の発生を早期に検出または火災の発生場所を判定する。
【解決手段】 複数の収容部が設けられて各収容部のそれぞれに設置される、信号雷管を具備する火災検出部と、信号雷管が発する警笛音または炸裂音を拾う集音部と、集音部で拾った音に基づいて火災の発生または火災発生場所を判定する火災報知盤と、を有し、いずれかの収容部で火災が発生すると、火災検出部の信号雷管が作動して警笛音または炸裂音が鳴動するので、火災報知盤Pが集音部Mを介してその警笛音等を簡便に検出することで火災の発生、または、その警笛音等を区別することによる火災の発生場所を判定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、信号雷管を用いて火災の発生および火災発生場所を判定できる火災監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
広い空間で棚やパレット等の収容部を何層にも積み上げられた倉庫では、天井面に熱感知器や煙感知器が設置されていても、下層部からの火災を検出することが難しい。そのため、各収容部それぞれにスポット型の火災感知器を設置したり、有線式や分布型の火災感知器を用いることもできるが、信号線等の配線が面倒であったり、収容部への可搬物の搬入の妨げとなったりして、非常に困難であった。
【0003】
そのため、例えば、立体的なラックに可搬物を出入れするスタッカクレーンに、火災検知手段として複数組の赤外線カメラを設置し、スタッカクレーンの移動時に火災を検知する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平9−221201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなスタッカクレーンに赤外線カメラを設置する方式は、各収容部を常時赤外線カメラで監視しているわけではなく、スタッカクレーンが止まっている際には機能しないという不具合がある。
【0005】
この発明は、多段に積み上げられる倉庫等において、火災の発生を早期に検出するとともに、火災の発生場所を判定することができる火災監視装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1に係る信号雷管式火災監視装置は、複数の収容部が設けられて各収容部のそれぞれに設置される、信号雷管を具備する火災検出部と、前記信号雷管が発する警笛音または炸裂音を拾う集音部と、該集音部で拾った音に基づいて火災の発生または火災発生場所を判定する火災判別部と、を有することを特徴とするものである。
【0007】
そして、この発明の請求項2に係る信号雷管式火災監視装置は、火災判別部が判定した火災発生場所に対して、消火薬剤を放出する消火装置を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明の請求項3に係る信号雷管式火災監視装置は、複数の収容部は、立体倉庫または立体駐車場であり、あるいは、前記複数の収容部は、多列多段に収容部が配置されている建物であることを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明の請求項4に係る信号雷管式火災監視装置は、消火装置は、前記火災判別部が火災の発生を複数回判定した場合に、自動起動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る信号雷管式火災監視装置では、いずれかの収容部で火災が発生すると、火災検出部の信号雷管が作動して警笛音または炸裂音が鳴動するので、火災判別部が集音部を介してその警笛音等を検出することで火災の発生を判定でき、その警笛音等を識別することで火災の発生場所を判定できるという効果がある。
【0011】
そして、請求項2に係る信号雷管式火災監視装置は、消火装置を有するので、火災の収容部を特定し、初期消火の対処が可能という効果がある。
【0012】
また、請求項3に係る信号雷管式火災監視装置は、複数の収容部は、立体倉庫または立体駐車場であり、あるいは、前記複数の収容部は、多列多段に収容部が配置されている建物であり、天井面の火災感知器や空間を監視する炎感知器に比べて容易にかつ早期に火災の発生や場所の特定ができるという効果がある。
【0013】
また、請求項4に係る信号雷管式火災監視装置は、消火装置は、前記火災判別部が火災の発生を複数回判定した場合に自動起動させることで、誤報の場合に作動させず、かつ、人がいない場合にも火災に対する消火活動を行えるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施形態1
図1は、本発明の一実施形態である信号雷管式火災監視装置の概略構成図である。
【0015】
Sは倉庫等の空間H内で多列多段に積み上げられた収容部であり、ここでは、その場所に応じて、左側から1列目で下から1段目を収容部S11、2列目で3段目を収容部S23と呼ぶ。
【0016】
Dは信号雷管を利用した火災検出部であり、ここでは、設置される収容部Sの場所に応じて、収容部Sと同様に、左側から1列目で下から1段目を火災検出部D11、2列目で3段目を火災検出部D23と呼ぶ。
【0017】
Mは空間H内の適度な位置に必要数設置される集音部としてのマイクであり、電路Lを介して火災報知盤Pに接続されている。この火災報知盤Pは、火災判別部として、各マイクMが集音した音から、信号雷管による警笛音または炸裂音を判定し、火災の発生を警報音を鳴動して報知し、火災発生位置を特定して、消火装置を起動させる動作を行う。
【0018】
火災検出部Dは、全ての収容部Sに設置され、図示しないが、火薬等あるいは燃焼ガスまたは気化ガスを発生する反応性の化学物質を内蔵し、火災で発生した炎によって導火線から燃焼性物質に点火する等で起動し、燃焼性物質の燃焼ガス等を発生して信号雷管による警笛音を発生させる。また、火薬等の燃焼性物質により、それが同様に起動して反応する際に炸裂音を発生させる。
【0019】
なお、導火線に炎を作用させなくとも、電気式や撃発式の雷管とすることもでき、検出部として熱や煙を検出するときに電源部から通電して電気的刺激によって起爆させることや、バイメタルや形状記憶合金の変位を打撃として物理的刺激によって起爆させる、あるいは、その物理的刺激を圧電作用で起電力に変えて電気的刺激を与えて起爆させることも可能である。
【0020】
このような燃焼性物質による警笛音は、いわゆるロケット花火に用いられるように、比較的大きな音で所定時間にわたり鳴動させることが可能であり、この警笛音等を周波数で区別することによって、個々の火災検出部Dのいずれが発報したかを区別することもできる。
【0021】
倉庫等の空間Hは、例えば、収容部Sが多列多段に積み上げられるラック式倉庫や機械式駐車場などであり、多列多段の棚あるいは収容空間が形成されているものである。
【0022】
つぎに、本発明の一実施形態における動作について説明する。
【0023】
図1における多列多段の収容部Sのうち、収容部S42の収納物が過熱して火災が発生した場合、その収容部S42の天井部分に設置されている火災検出部D42の図示しない導火線に着火し、図示しない信号雷管内の燃焼性物質が反応して、発生するガスによって図示しない警笛から警笛音を発生させる。倉庫等の空間H内に作業員がいて、この警笛音に気付いた場合には、その作業員が現場を調査して、収容部S42の火災の初期段階で消火することもできる。しかし、火災検出部D42からの警笛音は、比較的大きい音とできるが、長時間にわたって発生させることが困難であり、作業員がいたとしても注意していないと聞き逃すことも多い。
【0024】
火災検出部D42から発生した警笛音は、マイクMによって検出され、デジタル信号あるいはアナログ信号として、電路Lを通じて火災報知盤Pに入力される。このように、警笛音は、電路や配管を必要とせず、空気中を伝播するので、収容部Sが多列多段であっても設置が容易である。
【0025】
火災報知盤Pは、入力された信号を解析して、まず警笛音であることを判別して火災が発生したことを判定する。そして、警笛音の周波数を判別して、その周波数に該当する火災検出部D42の位置を判定する。なお、警笛音であることについても、周波数で判別すればよい。この結果に基づいて、火災報知盤Pは、図示しない音響装置によって火災警報を鳴動し、また、収容部S42から火災が発生した旨の音声警報を鳴動することも可能である。そして、図示しない表示部に、収容部S42が火災であることを表示する。
【0026】
さらに、マイクMの配置を複数かつ所定間隔にするなどで、警笛音を拾う位置に基づいて検出レベルが異なってくることから、火災報知盤Pにおいて、各マイクMの2次元あるいは3次元的に検出レベルを解析することにより、火災発生場所を識別するようにしてもよい。
【0027】
この図示しない音響装置からの火災警報は保持されることから、作業員がいれば必ず気付くこととなる。そして、火災に気付いた作業員が、音声警報または火災表示から収容部S42が火災であることを把握し、現場に駆け付けて消火活動を行って、火災を鎮火することができる。
【0028】
この実施形態では、各収容部Sに個々に警笛音の周波数が異なる火災検出部Dを用いているので、警笛音を解析して火災報知盤Pが火災発生場所を報知することができ、作業員が対応しやすい。
【0029】
ここで、空間H内に作業員がいない場合、収容部S42で発生した火災は拡大していくこととなる。この火災が拡大するときには、当然、収容部S42の上部側である収容部S43に炎が入り込むこととなる。
【0030】
そして、収容部S43の内部に着火すると、そのその収容部S43の天井部分に設置されている火災検出部D43の図示しない導火線に着火し、図示しない信号雷管内の燃焼性物質が反応して、発生するガスによって図示しない警笛から警笛音を発生させる。この警笛音は、マイクMによって検出され、電路Lを通じて火災報知盤Pに入力される。火災報知盤Pは、入力された信号を解析して、警笛音であることを判別すると、後続の警笛音であるので誤報でないとして、図示しない消火装置を起動する。この消火装置について、図示しないが、モニター式の放水ノズルや可動式の放水ロボット等を用い、局所的に消火薬剤を散布して鎮火させる装置であることが好ましい。また、消火装置以外に、図示しない搬出装置を設け、収容部S42、S43内の収容物を空間H外または設定された火災対策の安全な場所に搬出するようにしてもよい。このような安全な場所が設定されている場合には、必ずしも消火しなくても、その他の収容物に延焼等の影響がなく保護できればよい。
【0031】
なお、この後続の警笛音の判別は、2回以上の複数回の警笛音の判別で確実に火災を判定することであるが、上記動作において、火災報知盤Pにおける警笛音であることの判定のみで後続としたが、警笛音の周波数を判別して、その周波数が火災検出部D43の位置のものであることを判定するときに後続の警笛音としてもよい。この警笛音の場所を判別することにより、火災が拡大しているのか、複数箇所で火災の発生する同時火災であるのかを区別することができる。そして、同時火災を判別する場合、複数火災のそれぞれで後続の有無を判別する。
【0032】
このようにして、空間H内等に作業員がいない場合にも、消火活動等の火災への対応を行うことが可能となっている。
【0033】
なお、空間Hには、各収容部Sの火災検出部D以外に、天井面に火災感知器が設けられていてもよく、火災報知盤Pがいわゆる火災受信機と兼用されてもよく、また、火災報知盤Pから火災代表や個別の火災位置を、別途設置された火災受信機に移報するようにしてもよい。
【0034】
以上のような動作において、火災検出部Dが信号雷管による警笛音を発生させる場合について説明したが、火薬等の燃焼性物質により、それが反応する際に発生する炸裂音を用いても同様に行え、このような炸裂音は比較的大きく、作業者へのインパクトは大きい。
【0035】
このような実施の形態1では、複数の収容部Sが設けられて各収容部Sのそれぞれに設置される、信号雷管を具備する火災検出部Dと、信号雷管Dが発する警笛音または炸裂音を拾う集音部Mと、集音部Mで拾った音に基づいて火災の発生または火災発生場所を判定する火災報知盤Pと、を有し、いずれかの収容部Sで火災が発生すると、火災検出部Dの信号雷管が作動して警笛音または炸裂音が鳴動するので、火災報知盤Pが集音部Mを介してその警笛音等を早期に簡便に検出することで火災の発生を判定でき、また、その警笛音等を区別することによる火災の発生場所を判定できる。
【0036】
そして、火災判別を行う火災報知盤Pが判定した火災発生場所に対して、消火薬剤を放出する消火装置を有することで、火災の収容部Sに対して、初期消火の対処が可能となる。
【0037】
また、複数の収容部Sは、立体倉庫または立体駐車場であり、あるいは、前記複数の収容部は、多列多段に収容部が配置されている建物であって、従来から利用されている天井面の火災感知器や空間を監視する炎感知器に比べて、早期かつ容易に火災の発生または場所の特定ができる。
【0038】
また、火災報知盤Pが火災の発生を複数回判定した場合に、消火装置を自動起動するので、誤報の場合に作動させず、かつ、人がいない場合にも火災に対して消火活動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の信号雷管式火災監視装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0040】
S 収容部
D 火災検出部
M マイク(集音部)
P 火災報知盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収容部が設けられて各収容部のそれぞれに設置される、信号雷管を具備する火災検出部と、
前記信号雷管が発する警笛音または炸裂音を拾う集音部と、
該集音部で拾った音に基づいて火災の発生または火災発生場所を判定する火災判別部と、
を有することを特徴とする信号雷管式火災監視装置。
【請求項2】
前記火災判別部が判定した火災発生場所に対して、消火薬剤を放出する消火装置を有する請求項1の信号雷管式火災監視装置。
【請求項3】
前記複数の収容部は、立体倉庫または立体駐車場であり、あるいは、前記複数の収容部は、多列多段に収容部が配置されている建物である請求項1の信号雷管式火災監視装置。
【請求項4】
前記消火装置は、前記火災判別部が火災の発生を複数回判定した場合に、自動起動するものである請求項2の信号雷管式火災監視装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−115073(P2007−115073A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306554(P2005−306554)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】