説明

修飾Fcドメインを含む多量体Fc受容体ポリペプチド

白血球Fcγ受容体(FcγR)および免疫グロブリンG(IgG)の相
互作用を阻害できる可溶性多量体ポリペプチドまたはタンパク質が開示される。該
タンパク質またはポリペプチドは、ヘッドトゥーテール配置で結合した2つ以上の
Fc結合領域を含み、そのうち少なくとも1つは、FcγR型受容体に由来し、か
つ、前記Fc結合領域との結合を低減または阻害するためおよび/またはエフェク
ター機能を変化させるために修飾されている免疫グロブリンのFcドメインに含む
。該ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子、および免
疫複合体(IC)媒介性炎症性疾患について被験体を治療する方法におけるその使
用もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白血球Fcγ受容体(FcγR)および免疫グロブリンG(IgG)
相互作用を阻害できる、可溶性多量体Fc受容体ポリペプチドおよびタンパク質に
関する。そのようなポリペプチドおよびタンパク質は、炎症性疾患、特に関節リウ
マチ(RA)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)および全身性エリテマトーサ
ス(SLE)といった免疫複合体媒介性炎症性疾患の治療に有用である。
【0002】
参照による取り込み
本特許出願は:
−PCT/AU2006/001890表題『多量体Fc受容体ポリペプ
チド』2006年12月13日出願、および
−US11/762、664表題『多量体Fc受容体ポリペプチド』20
07年6月13日出願
からの優先権を主張する。
これらの特許出願の全内容は参照により本開示に含まれる。
【背景技術】
【0003】
自己免疫疾患およびRAおよびSLEといった他の炎症性疾患の治療は、免疫系
に関与する分子の高まる理解が腫瘍壊死因子−α(TNFα)およびインターロイ
キン1β(IL−1β)といった主要な炎症性分子の特異的阻害を可能にしている
、新たなおよび刺激的な局面に入っている。たとえば、近年の研究では、RAの病
因に抗体が強力な役割を果たしうることが示されており、およびヒト臨床試験にお
いて、抗体産生B細胞を消去するための抗CD20モノクローナル抗体(MAb)
療法の使用に対する肯定的な応答は、RAにおける抗体の重要な役割の強力な証拠
を生じている(エメリー(Emery)他、2001)。Fc受容体(FcR)は
免疫グロブリンを基礎とするエフェクター系において中枢的な役割を果たすため、
FcR機能の阻害はさまざまな疾患のための有効な治療法の基礎を提供しうる。さ
らに、Fcγ受容体(FcγR)はIgGのためのエフェクター系に中枢的である
ため、白血球FcγRと抗体との間の相互作用を標的にすることは、RAにおける
治療的介入のための新しい機会を提供する(ナッベ(Nabbe)他、2003)
。本出願者の目的であるそのような介入を達成する1つの方法は、抗体による白血
球活性化を防ぐ「おとり」として作用する、FcγRの可溶性形の使用である。
【0004】
Fc受容体(FcR)は抗体のFc部分を特異的に結合する白血球表面糖タンパ
ク質である。IgGに対する受容体は、FcγRであり、最も広範囲および多様で
あり、主な型はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγ
RIII(CD16)である。正常免疫応答でin vivoで形成される免疫複
合体(IC)、およびRAといった自己免疫疾患の病理でみられるものは、多数の
FcRを同時に関与させうる。たとえば、ヒトでは、活性化マクロファージ、好中
球、好酸球および肥満細胞は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIbおよ
びFcγRIIIを発現しうる(タカイ(Takai)、2002)。しかし、こ
れらのうち、FcγRIIaがIC媒介性炎症の主要な発動因子であり、および、
FcγR型のすべてがIgGFcドメインおよびCH2ドメインの下側ヒンジ領域
に関与するため、任意の可溶性FcγRおとりポリペプチドはすべてのクラスのF
cγRへのIgGの結合を阻害しうるが、本出願者は、FcγRIIaが最も広い
結合特異性および最高の選択性を結合活性IgG免疫複合体結合について示すため
、可溶性FcγRIIaの開発および研究は最大の潜在性を提供することを理解し
ている。
【0005】
実際、以前の研究は、FcγRIIa外部ドメイン(イエリノ(Ierino)
他、1993a)から成る単純な組み換え可溶性FcγRIIaポリペプチド(r
sFcγRIIa単量体)がIC媒介性炎症を明らかに阻害できることを示してい
る。これらの研究では、rsFcγRIIaは抗体および抗原の受動投与によって
免疫複合体が真皮内に形成される(Pflum他、1979)、アルサス(Art
hus)反応を用いて試験され、それは血管炎(関節炎における関節外合併症)の
モデルであり、およびまたSLEでも起こる。rsFcγRIIa単量体が抗体お
よび抗原と同時投与された際に炎症および好中球浸潤を阻害した一方、免疫複合体
についての相対的に低レベルの選択性のため、多量のrsFcγRIIa単量体が
必要であったことが見出された。この問題を克服するため、本出願者はrsFcγ
RIIaおとりの多量体形を用いることを提案し、および驚くべきことに、そのよ
うな多量体形の発現に成功できただけでなく、それらは免疫複合体についての選択
性の上昇を示したことを見出している。そのような多量体rsFcγRIIaポリ
ペプチドは、したがってRAおよびSLEといったIC媒介性炎症性疾患の治療に
顕著な有望性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題および課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、第1の態様では、本発明は白血球Fcγ受容体(FcγR)および
免疫グロブリンG(IgG)の相互作用を阻害できる可溶性多量体ポリペプチドを
提供し、前記ポリペプチドはヘッドトゥーテール配置で結合した2つ以上のFc結
合領域を含み、そのうち少なくとも1つは、FcγR型受容体、および前記Fc結
合領域との結合を低減または阻害するためおよび/またはエフェクター機能を変化
させるために修飾されている免疫グロブリンのFcドメインに由来する。
【0007】
好ましくは、該ポリペプチドは、FcγRII型受容体、特にFcγRIIaに
由来するFc結合領域の多量体である。そのような分子はホモ多量体であると考え
ることができ、およびこの種類の特に好ましい分子の1つは、FcγRII型受容
体に由来するFc結合領域のホモ二量体である。しかし、本発明はまた、該分子は
FcγR型受容体(たとえばFcγRII型受容体)に由来するFc結合領域およ
び別の起源由来のFc結合領域(たとえば別のFc受容体型に由来するFc結合領
域または合成Fc結合ポリペプチド)の多量体でありうるとも考える。この種類の
分子はヘテロ多量体であると考えることができ、およびこの種類の特に好ましい分
子の1つはFcγRII型受容体に由来するFc結合領域およびFcγRIII型
受容体に由来するFc結合領域のヘテロ二量体である。
【0008】
Fc結合領域は、ペプチド結合を介してまたは短いリンカー配列(たとえば1ア
ミノ酸または、たとえば、長さ2から20アミノ酸の短鎖ペプチド)を介して結合
されうる。
【0009】
第2の態様では、本発明は、第1の態様に記載のポリペプチドを含む可溶性多量
体タンパク質を提供する。
【0010】
第3の態様では、本発明は、第1の態様に記載のポリペプチドまたは第2の態様
に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を
提供する。
【0011】
該ポリヌクレオチド分子は、発現カセットまたは発現ベクター(たとえば細菌宿
主細胞への導入のためのプラスミド、または昆虫宿主細胞のトランスフェクション
のためのバキュロウイルスベクターといったウイルスベクター、または哺乳類宿主
細胞のトランスフェクションのためのプラスミドまたはレンチウイルスといったウ
イルスベクター)に存在しうる。
【0012】
したがって、第4の態様では、本発明は、第3の態様に記載のポリヌクレオチド
分子を含む組み換え宿主細胞を提供する。
【0013】
第5の態様では、本発明は;
(i)第3の態様に記載のポリヌクレオチド分子を含む組み換え宿主細胞を提供
すること、
(ii)前記宿主細胞を適当な培地でおよび前記ポリペプチドまたはタンパク質
の発現に適した条件下で培養すること、および
(iii)前記ポリペプチドまたはタンパク質を培養物から、および、任意に培
養培地から単離することの段階を含む、ポリペプチドまたはタンパク質を製造する
ための方法を提供する。
【0014】
第6の態様では、本発明は炎症性疾患について被験体を治療する方法であって、
第1の態様に記載のポリペプチドまたは第2の態様に記載のタンパク質を、薬学的
にまたは獣医学的に許容可能なキャリヤーまたは添加物と任意に組み合わせて前記
被験体へ投与することを含む、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、両方のFcγRIIa外部ドメイン、すなわち外部ドメイン1および2をそれぞれ含む、2つのFcγRIIa細胞外領域のヘッドトゥーテールのホモ二量体コンストラクトのヌクレオチド配列(および翻訳されたアミノ酸配列)を提供する。FcγRIIa外部ドメイン1および2は、ドメイン1を含むアミノ酸1から88およびドメイン2を含むアミノ酸89から174を含むFcγRIIaポリペプチド配列のアミノ酸1から174から成る(ヒブズ(Hibbs)他,1988;ヒト(Homo sapiens)IgGのFc断片、低親和性IIa受容体(CD32)(FCGR2A)、mRNA、受入番号(ACCESSION NM)_021642; およびパウエル(Powell)他,1999)。図中で、アミノ酸1から182はFcγRIIaの細胞外領域に由来し、そのうちアミノ酸1から174はFcγRIIa外部ドメイン1および2を含み、およびアミノ酸175から182は膜近傍柄部(FcγRIIaにおいて外部ドメイン1および2を膜貫通配列と結合する)を含む。二量体を含むFcγRIIa細胞外領域の第1はしたがってアミノ酸1から182から成り、およびFcγRIIa細胞外領域の第2はアミノ酸184から362(FcγRIIaのアミノ酸3から182に対応)から成る。下線のアミノ酸は非FcγRIIaリンカーアミノ酸残基を表す一方、太字のアミノ酸はC末端His6タグを示す。
【図2】図2は、図1に示すヌクレオチド配列から発現されるFcγRIIaの組み換え可溶性(rs)多量体形のウェスタンブロット分析を示す。rsFcγRIIa二量体は実質的に安定で、少量のrsFcγRIIa単量体分解産物だけが認められた。一方、rsFcγRIIa三量体および四量体形は不安定で、実質的にrsFcγRIIa二量体形へ分解された。この分解は製造中のプロテアーゼインヒビターの使用によって、または別に切断部位を除去するように多量体形の配列を改変することによって回避されうる。
【図3】図3は、予想サイズが〜30kDaであるrsFcγRIIa単量体(哺乳類細胞から発現された)(a)、および予想サイズが〜50kDaであるrsFcγRIIa二量体(b)の精製から回収された画分のクマシー染色されたSDS−PAGE(12%アクリルアミドゲル、非還元条件下)を示す。
【図4】図4は、固定化(a)IgG単量体(サンドグロブリン(Sandoglobulin))および(b)モデル免疫複合体の熱凝集IgG(HAGG)へのrsFcγRIIa単量体の平衡結合反応を図式的に示す。
【図5】図5は、固定化(a)IgG単量体(サンドグロブリン(Sandoglobulin))および(b)モデル免疫複合体のHAGGへのrsFcγRIIa二量体の平衡結合反応を図式的に示す。
【図6】図6は、標準BIAcoreアッセイ手順を用いて測定した、ヒトIgG単量体(サンドグロブリン(Sandoglobulin))および二量体−IgG(ライト(Wright)他,1980)との溶液中の前の反応後に固定化ヒトIgG単量体(サンドグロブリン(Sandoglobulin))と結合した、rsFcγRIIa単量体(a)および図1のヌクレオチド配列から発現されたrsFcγRIIa二量体(b)のプロットを示す。
【図7a】図7は、(a)非阻害二量体−IgG結合活性の百分率として計算した、精製rsFcγRIIa単量体およびrsFcγRIIa二量体によるヒト好中球(ボランティアV5)との二量体−IgG(ライト(Wright)他,1980)結合の阻害および(b)二量体−IgG結合二量体の百分率として計算した、精製rsFcγRIIa二量体(図1のヌクレオチド配列から発現された)によるヒト好中球(ボランティアV1)との二量体−IgG結合の阻害のプロットを示す。
【図7b】図7は、(a)非阻害二量体−IgG結合活性の百分率として計算した、精製rsFcγRIIa単量体およびrsFcγRIIa二量体によるヒト好中球(ボランティアV5)との二量体−IgG(ライト(Wright)他,1980)結合の阻害および(b)二量体−IgG結合二量体の百分率として計算した、精製rsFcγRIIa二量体(図1のヌクレオチド配列から発現された)によるヒト好中球(ボランティアV1)との二量体−IgG結合の阻害のプロットを示す。
【図8】図8は、(a)ではrsFcγRIIa二量体(上清中に2.5μg/mlにて)の非存在下および存在下の24時間分化ヒトMDM(ボランティアV5)からの免疫複合体(二量体−IgG)刺激TNF分泌のプロットを示し;一方(b)ではrsFcγRIIa二量体(2.5μg/ml)の非存在下および存在下の24時間分化ヒトMDM(ボランティアV1)からの免疫複合体(二量体−IgG)刺激TNF分泌のプロットを示す。
【図9】図9は、rsFcγRIIa二量体(30μg/ml)の非存在下および存在下のP−セレクチン発現の平均蛍光強度(MFI)によって測定したヒト血小板の免疫複合体(HAGG)刺激活性化のプロットを示す。
【図10】図10は、安定にトランスフェクションされたCHO−S細胞から単離されたrsFcγRIIa二量体の(a)非還元および(b)還元条件下でのSDS−PAGE、(c)抗FcγRIIa抗体を用いるウェスタンブロッティング、および(d)HPLCによる分析結果を示す。rsFcγRIIa二量体は予想分子量(〜50kD)にて単一バンドとして泳動し、抗FcγRIIa抗体と反応し、およびHPLC分析による測定で純度>96%であった。
【図11】図11は、rsFcγRIIa単量体またはrsFcγRIIa二量体のどちらかの存在下の細胞表面発現されたヒトFcγRIIb(マウスBリンパ腫細胞株IIA1.6上)への免疫複合体(HAGG)結合のプロットを示す。
【図12】図12は、HAGG単独での処理後の活性化血小板の百分率として、rsFcγRIIa単量体またはrsFcγRIIa二量体(図1のヌクレオチド配列から発現された)の存在下でHAGGでの処理後の、活性化血小板(CD41およびCD62Pの両方について陽性)のプロットを示す。
【図13】図13は、OVA免疫複合体単独の存在下で放出されたTNF−(の百分率として、rsFcγRIIa単量体またはrsFcγRIIa二量体の存在下でOVA免疫複合体とのインキュベート後の、MC/9細胞からのTNF−(放出のプロットを示す。
【図14】図14は、rsFcγRIIa融合タンパク質のウェスタンブロット分析を示す。(1)rsFcγRIIa単量体;(2)rsFcγRIIa二量体;(3)IgG1−Fcγ1(L234A、L235A)と融合したrsFcγRIIa単量体;(4)IgG1−Fcγ1(L234A、L235A)と融合したrsFcγRIIa二量体;(5)ヒト血清アルブミン(HSA)と融合したrsFcγRIIa単量体;(6)HSAと融合したrsFcγRIIa二量体;(7)精製rsFcγRIIa単量体標準;および(8)精製rsFcγRIIa二量体標準。
【図15】図15は、rsFcγRIIa単量体およびrsFcγRIIa二量体融合物を用いたHAGG捕捉ELISAの結果を示す。(a)0.75μg/ml(単量体標準)で始まるFcγRIIa単量体標準(パウエル(Powell)他、1999);rsFcγRIIa単量体コンストラクト(トランスフェクション426(単量体))をトランスフェクションされた細胞に由来するタンパク質;IgG−Fcγ1(L234A、L235A)コンストラクトとのrsFcγRIIa単量体融合物(単量体−Fc)をトランスフェクションされた細胞に由来するタンパク質;およびHSAコンストラクトとのrsFcγRIIa単量体融合物(HSA−単量体)をトランスフェクションされた細胞に由来するタンパク質;(b)0.5μg/ml(二量体標準)で始まるrsFcγRIIa二量体標準;rsFcγRIIa二量体(トランスフェクション427(二量体))をトランスフェクションされた細胞に由来する上清;IgG−Fcγ1(L234A、L235A)とのrsFcγRIIa二量体融合物(二量体−Fc)をトランスフェクションされた細胞に由来する上清;およびHSAとのrsFcγRIIa二量体融合物(HSA−二量体)をトランスフェクションされた細胞に由来する上清。
【図16】図16は、受容体が適切に折りたたまれていることを確立するエピトープの存在を確認するための、rsFcγRIIa単量体およびrsFcγRIIa二量体融合タンパク質に対する捕捉タグELISAから得られた結果を示す。(A)0.75μg/ml(単量体標準)で始まるrsFcγRIIa単量体標準;rsFcγRIIa単量体(トランスフェクション426(単量体))をトランスフェクションされた細胞に由来する上清;IgG−Fcγ1(L234A、L235A)とのrsFcγRIIa単量体融合物(単量体−Fc)をトランスフェクションされた細胞に由来する上清;およびHSAとのrsFcγRIIa単量体融合物(HSA−単量体)をトランスフェクションされた細胞に由来する上清;(B)0.5μg/mlで始まるrsFcγRIIa二量体標準(自製);FcγRIIa二量体(トランスフェクション427(二量体))をトランスフェクションされた細胞に由来する上清;IgGとのrsFcγRIIa二量体融合IgG−Fcγ1(L234A、L235A)(二量体−Fc)をトランスフェクションされた細胞に由来する上清;およびHSAとのrsFcγRIIa二量体融合物(HSA−二量体)をトランスフェクションされた細胞に由来する上清。
【図17】図17は、(a)rsFc(RIIa単量体;(b)rsFcγRIIa二量体;(c)二量体化がrsFcγRIIa単量体融合ポリペプチドのFcドメインを介して起こり、2つのFc結合領域を有する分子(すなわちFc結合領域について二量体である、または「二価」を有するタンパク質)を与える、IgG−Fcγ1(L234A、L235A)とのrsFcγRIIa単量体融合物の二量体;(d)二量体化がrsFcγRIIa二量体融合ポリペプチドの2つのFcドメインを介して起こり、4つのFc結合領域を有する分子(すなわちFc結合領域について四量体である、または「四価」を有するタンパク質)を与える、IgG−Fcγ1(L234A、L235A)とのrsFcγRIIa二量体融合物の二量体;(e)HSAとのrsFcγRIIa単量体融合物;および(f)HSAとのrsFcγRIIa二量体融合物の模式図を示す。図中で、D1およびD2はそれぞれ外部ドメイン1および2を指し、D2に隣接して示す棒はリンカー配列を表し、(c)および(d)で二量体化Fcドメインの上の灰色ループはジスルフィド結合を表し、およびH6はHisタグを指す)。
【図18】図18は、関節炎のマウスモデルにおけるrsFcγRIIa二量体(融合パートナー無し)の作用を示す。FcγRIIa二量体の非存在下(黒四角)および存在下(白四角)で関節炎誘発性抗コラーゲン抗体で処理されたマウス。
【図19】図19は、本発明の一実施形態、すなわちIgG2aに由来するFcドメインとのrsFcγRIIa二量体融合物(この融合タンパク質を以後D2タンパク質と呼ぶ)のアミノ酸配列を示す。
【図20】図20は、図19のD2タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。
【図21】図21は、図20のヌクレオチド配列(D2タンパク質をコードする)を発現するために用いられたプラスミドを図示する。
【図22】図22は、SDS−PAGE(図A)による、およびウェスタンブロット(図B)による、図19の精製D2タンパク質の分析を示す。
【図23】図23は、MC/9肥満細胞アッセイにおけるTNF−α放出に対する(図19の)D2タンパク質の作用を示す。
【図24】図24は、ヒト好中球活性化に対する(図19の)D2タンパク質の作用を示す。および
【図25】図25は、ヒト血小板活性化に対する(図19の)D2タンパク質の作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、2つ以上のFc結合領域を含みそのうち1つが本質的にFcγR型受
容体に由来する、白血球Fcγ受容体(FcγR)および免疫グロブリンG(Ig
G)の相互作用を阻害できる可溶性多量体ポリペプチドおよびタンパク質を提供す
る。そのようなポリペプチドおよびタンパク質は、rsFcγRII単量体といっ
た可溶性単量体ポリペプチドで以前に観察されたよりも免疫複合体に対する選択性
の増大を与え、およびそれによって、RAおよびSLEといったIC媒介性炎症性
疾患の治療のための「おとり」分子としての顕著な有望性を提供する。
【0017】
第1の態様では、本発明はしたがって白血球Fcγ受容体(FcγR)および免
疫グロブリンG(IgG)の相互作用を阻害できる可溶性多量体ポリペプチドを提
供し、前記ポリペプチドはヘッドトゥーテール配置で結合した2つ以上のFc結合
領域を含み、そのうち少なくとも1つは、FcγR型受容体、および前記Fc結合
領域との結合を低減または阻害するためにおよび/またはエフェクター機能を変化
させるために修飾されている免疫グロブリンのFcドメインに由来する。
【0018】
ここでは、「可溶性」の語は、ポリペプチド(またはタンパク質)が細胞膜と結
合しておらず、およびしたがって膜貫通(すなわち親油性)ドメインのすべてまた
は相当な部分の不在または機能的破壊によって特徴づけられ、そのためポリペプチ
ド(またはタンパク質)が膜結合機能を全く持たないことを示す。細胞質ドメイン
もまた不在でありうる。
【0019】
ここでは、「Fc結合領域」の語は、免疫グロブリンのFcドメイン(たとえば
免疫グロブリンのパパイン加水分解によって作製されたFc断片)と結合できる、
遺伝子改変型および合成Fc結合ポリペプチドを含む、Fc受容体の任意の一また
は複数の部分をいう。
【0020】
FcγR型受容体に由来する少なくとも1つのFc結合領域は、たとえば、Ig
Gに対して低親和性である,すなわちIgGに対する親和性が5x107-1未満
であるFcγRに由来しうる。そのような低親和性受容体は、FcγRII型受容
体(たとえば多型変異体FcγRIIa−H131およびFcγRIIa−R13
1を含むFcγRIIa(スチュアート(Stuart)他,1987;ブルック
ス(Brooks)他,1989;セキ(Seki)他,1989)、FcγRI
IbおよびFcγRIIc)、FcγRIII型受容体(たとえばFcγRIII
aおよびFcγRIIIb)、FcγRI受容体の3つの外側ドメインの第1およ
び第2を含む切断ポリペプチド(ヒューレット(Hulett)他,1991;ヒ
ューレット(Hulett)他,1998)のようなFcγRI型受容体の切断形
(たとえばFcγRIaおよびFcγRIb)、および通常はIgGに対して高い
親和性を有するがしかし改変(たとえば1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/ま
たは付加)のためにIgGに対して5x107-1未満の低下した親和性を示すF
cγRの遺伝子改変形)を含む。
【0021】
好ましくは、該ポリペプチドは低親和性FcγRといったFcγR受容体に由来
するFc結合領域のホモ多量体である。適当なFc結合領域は、FcγR受容体の
1つ以上の外部ドメインの、すべてのまたは1つのFc結合部分から成る。当業者
はFcγR受容体のFc結合外部ドメインを容易に同定できる。なぜならこれらの
ドメインはIgGドメインスーパーファミリーに属し(ヒューレット(Hulet
t)他,1994,ヒューレット他,1995,ヒューレット他,1998,およ
びタム(Tamm)他,1996)および典型的には「トリプトファン・サンドイ
ッチ」(たとえばFcγRIIaの残基W90およびW113)および他の残基に
よって特徴づけられるためである(たとえばFcγRIIaでは;外部ドメイン1
および外部ドメイン2リンカーの残基、および外部ドメイン2のBC(W113−
V119)、C'E(F132−P137)およびFG(G159−Y160)ル
ープ(ヒューレット(Hulett)他,1994))。
【0022】
より好ましくは、該ポリペプチドはFcγRIIaのFc結合領域のホモ多量体
である。FcγRIIa由来の適当なFc結合領域は、FcγRIIaの外部ドメ
イン1および2の、すべてのまたは1つのFc結合部分から成る。FcγRIIa
外部ドメイン1および2は、FcγRIIaアミノ酸配列のアミノ酸1から172
の間に見られる(ヒブズ(Hibbs)他,1988,および受入番号(ACCE
SSIONNM)_021642)。FcγRIIa外部ドメイン1および2のF
c結合部分の例は、FcγRIIaアミノ酸配列のアミノ酸90から174を含む
断片であり、外部ドメイン1および外部ドメイン2リンカーの残基および外部ドメ
イン2のBC(W113−V119)、C'E(F132−P137)およびFG
(G159−Y160)ループを含む。X線結晶学試験は、この断片内で、アミノ
酸113−116、129、131、133、134、155、156および15
8−160が、IgGのFcドメインと結合できる断片表面へ重要な寄与を行って
いることを明らかにしている(国際公開WO2005/075512)。
【0023】
該ポリペプチドはまた、FcγRII型受容体に由来するFc結合領域および別
の起源に由来するFc結合領域(たとえば別のFcγR型といった別のFc受容体
型に由来するFc結合領域、またはIgAおよびIgEに対する受容体といった他
の免疫グロブリン受容体に由来するFc結合領域)のヘテロ多量体でありうる。こ
の種類の特に好ましい分子の1つは、FcγRII型受容体(特に、FcγRII
a)に由来するFc結合領域およびFcγRIII型受容体に由来するFc結合領
域のヘテロ二量体である。
【0024】
特定のFc受容体に「由来」していると考えられるFc結合領域は、Fc受容体
のアミノ酸配列と同等であるアミノ酸配列を有するFc結合領域、およびFc受容
体に見られるFc結合領域の配列の1つ以上のアミノ酸修飾を含むFc結合領域を
含む。そのようなアミノ酸修飾は、アミノ酸置換、欠失、付加またはそれらの修飾
の任意の組み合わせを含んでよく、およびFc受容体の生物活性と比較してFc結
合領域の生物活性を変化させうる(たとえばアミノ酸修飾は免疫複合体に対する選
択性または親和性を向上させうる;アミノ酸133、134、158−161での
そのような修飾は国際公開第WO96/08512に記載されている)。一方、特
定のFc受容体に由来するFc結合領域は、Fc受容体の生物活性と比較してFc
結合領域の生物活性を実質的に変化させない1つ以上のアミノ酸修飾を含みうる。
この種類のアミノ酸修飾は、典型的には保存的アミノ酸置換を含む。典型的な保存
的アミノ酸置換を下記の表1に示す。想定される具体的な保存的アミノ酸置換は、
G、A、V、I、L、M;D、E、N、Q;S、C、T;K、R、H:およびP、
Nα−アルキルアミノ酸である。一般的に、保存的アミノ酸置換は、(a)置換の
部位でのFc結合領域のポリペプチド骨格の構造、(b)置換の部位でのポリペプ
チドの電荷または疎水性、および/または(c)置換の部位でのアミノ酸側鎖のか
さに何ら実質的な作用を有しないことに基づいて選択される。1つ以上の保存的ア
ミノ酸置換を含むFc結合領域が合成によって調製される場合は、Fc結合領域は
また、γ−カルボキシグルタミン酸およびヒドロキシプロリンおよびD−アミノ酸
といった、遺伝コードによってコードされない1または複数のアミノ酸を含みうる

【表1】

*は好ましい保存的置換を示す
【0025】
Fc結合領域は好ましくは、ペプチド結合を介してまたは短いリンカー配列(た
とえば1アミノ酸または、たとえば、長さ2から20アミノ酸の短鎖ペプチド)を
介して結合している。しかし、一部の環境では、Fc結合領域を他の適当な結合手
段を介して(たとえば化学的架橋によって)結合するのが好ましいかまたは望まし
い可能性がある。
【0026】
本発明のポリペプチドのFc結合領域は、「ヘッドトゥーテール」配置で結合し
ている。すなわち、第1のFc結合領域のC末端(「テール」)が第2のFc結合
領域のN末端(「ヘッド」)と直列に結合する。この方法で結合した少なくとも2
つのFc結合領域、典型的には2つから4つのFc結合領域があるが、しかしポリ
ペプチドはヘッドトゥーテール配置で結合した最大10以上(たとえば20)のF
c結合領域を有しうる。Fc結合領域は典型的には、ペプチド結合を介してまたは
短いリンカー配列(たとえば1アミノ酸または、たとえば、長さ2から20アミノ
酸、または、より好ましくは、長さ2から15アミノ酸、長さ2から10アミノ酸
、長さ2から8アミノ酸、または、非常に好ましくは、長さ2から5アミノ酸の短
鎖ペプチド)を介して結合されうる。適当な短いリンカー配列は、短いランダム配
列でありうるかまたは、FcγRの短い非Fc結合領域断片(たとえばFcγRの
膜柄部の隣接領域に由来する20アミノ酸以下の短い断片)を含みうる。リンカー
配列は、たとえば、タンパク質分解に対して低感受性である、GGGGSGGGG
S(配列番号:4)といった合成リンカー配列でありうる。そのようなリンカー配
列は、2から5個のタンデム「Gly4Ser」単位の形で提供されうる。Fc結
合領域を、ペプチド結合または短いリンカー配列を介して結合することは、組み換
え発現系を用いるポリペプチドの作成を可能にする。
【0027】
このように、本発明に記載のポリペプチドの第1の特に好ましい一実施形態では
、ポリペプチドは、ヘッドトゥーテール配置で結合したFcγRIIa由来の2か
ら4個のFc結合領域を含む。
【0028】
本発明に記載のポリペプチドの第2の特に好ましい一実施形態では、ポリペプチ
ドは、ヘッドトゥーテール配置で結合したFcγRIIa由来の2個のFc結合領
域を含む。
【0029】
および本発明に記載のポリペプチドの第3の特に好ましい一実施形態では、ポリ
ペプチドは、それぞれ外部ドメイン1および2を含む2個のFcγRIIa細胞外
領域を含み、ここで前記細胞外領域は、1から20アミノ酸を含むリンカーを介し
てヘッドトゥーテール配置で結合している。
【0030】
本発明の一部の実施形態では、ポリペプチド内のFc結合領域は、配列PSMG
SSSP(配列番号:7)で表される、FcγRIIaの膜隣接柄部領域を構成す
るペプチドリンカーを介して結合する。保存的アミノ酸置換を組み込む同等物を含
む、同様の二次構造を取る同等のリンカーもまた有用である。さらに、1または2
個少ないかまたは追加のアミノ酸を有する、このアミノ酸配列の切断および伸長も
また有用である。
【0031】
適当なリンカーは一般的に、多量体ポリペプチドが、各Fc結合領域がFcドメ
インを持つ分子の結合に参加しうる構造を取ることを可能にするものである。この
方法で、リンカーは、たとえば、2つの結合したFc結合領域を含むポリペプチド
が、対応する単量体によって結合されるよりも多量の、Fcドメインを有する分子
を結合することを可能にする。この目的に適するリンカーの選択は、ここで例示さ
れる通り、簡単な結合実験に基づいて実施することができる。
【0032】
本発明のポリペプチドは、キャリヤータンパク質をさらに含みうる(すなわちポ
リペプチドがキャリヤータンパク質および前記2つ以上の結合したFc結合領域お
よび修飾Fcドメインの「融合物」であるように)。キャリヤータンパク質は当業
者によく知られた任意の適当なキャリヤータンパク質でありうるが、しかし好まし
くは、ヒト血清アルブミン(HSA)またはバイオアベイラビリティを改善するた
めに一般的に用いられる別のキャリヤータンパク質である(すなわち被験体へ投与
される際のポリペプチドの血清半減期を増加させることを介して)。都合良く、キ
ャリヤータンパク質は、当業者によく知られた任意の方法にしたがって、ポリペプ
チドを前記キャリヤータンパク質との融合タンパク質として発現することによって
、ポリペプチドと融合されうる。
【0033】
本発明のポリペプチドはさらに、他の有用な結合分子、たとえば、バイオアベイ
ラビリティを改善するためのエチレングリコール(すなわちPEG化ポリペプチド
を生じるため)、CD46、CD55およびCD59といった補体調節分子、サイ
トカイン(たとえば炎症の部位へのサイトカインの配送を可能にするため)および
サイトカイン受容体を含みうる。
【0034】
本発明のポリペプチドは、免疫グロブリンのFcドメインを含む。このFcドメ
インは、別のFcドメインと結合(すなわち二量体を形成)でき、およびそれによ
って、本発明に記載の2つ以上のポリペプチドを結合してタンパク質を形成する手
段を提供する。
【0035】
このように、たとえば、同一でもまたは異なってもよくおよびそれ自身が2つ以
上の結合したFc結合領域を含むもう1つのポリペプチドと融合しているもう1つ
のFcドメインと結合できるFcドメインと融合している、2つ以上の結合したF
c結合領域を含むポリペプチドを用いることによって、少なくとも4つのFc結合
領域を含むタンパク質(つまり、4つ以上のFc結合領域を含む可溶性多量体タン
パク質)が作製されうる。
【0036】
Fcドメインは、任意の免疫グロブリン(たとえば、IgG1、IgG2aまた
はIgG4といったIgG)から選択されうる。野生型ではIgG4Fcドメイン
はFcγRII受容体に対して相対的に低親和性であり、およびしたがってポリペ
プチドの結合したFc結合領域(すなわちFcγRII型受容体に由来する)との
自己アニーリングを回避するための修飾無しで本発明のポリペプチドに使用されう
る。より望ましくは、しかし、選択されたFcドメインは、結合したFc結合領域
とのFcドメインの自己アニーリング(すなわち「自己結合」)を防ぐために、(
たとえばFc受容体との結合に決定的な残基でのアミノ酸置換によって)修飾され
ており、および、好ましくは、invivoでFc受容体との結合を防ぐために修
飾されている(すなわち修飾Fcドメインは好ましくは、新生児Fc受容体(Fc
Rn)以外の、たとえば、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを含む
内因性Fc受容体の結合について低下した親和性を示す)。その上、選択されたF
cドメインは、望ましくはエフェクター機能を変化させるように、たとえば補体結
合を低下させるように、および/または補体依存性細胞毒性(CDC)を低下また
は除去するように、修飾されている。そのような修飾は、たとえば、一連の変異I
gG1、IgG2およびIgG4FcドメインおよびそれらのFcγR結合特性を
設計および記載しているクラーク(Clark)および共同研究者らによって広範
に記載されている(参照により本開示に含まれる、アーマー(Armour)他,
1999;アーマー(Armour)他)。たとえば、234、235、236、
237、297、318、320および322位のアミノ酸のうち任意の1つ以上
は、(たとえばアミノ酸置換によって)Fc受容体または補体のC1成分といった
エフェクターリガンドに対する親和性を変化させるために、修飾されうる(ウィン
ター(Winter)他のUS特許公報第5,624,821号および第5,64
8,260号)。また、329、331および322位のアミノ酸のうち1つ以上
は、(たとえばアミノ酸置換によって)C1q結合を変化および/またはCDCを
低減または除去するように(たとえば、イドソジー(Idusogie)他によっ
てUS特許公報第6,194,551号に記載された通り)、および/または抗体
依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を低減または除去するように修飾されうる

【0037】
ある特に好ましい修飾Fcドメインでは、FcドメインはIgG1に由来し(ワ
インズ(Wines)他,2000)、およびアミノ酸234および/または23
5、すなわちLeu234および/またはLeu235にアミノ酸修飾を含む。これらの
ロイシン残基は、Fc受容体がFcドメインと噛み合う(engage)IgG1
の下部ヒンジ領域内にある。Fc受容体の噛み合い(すなわち結合)を防ぐために
、ロイシン残基の一方または両方が置換または欠失されうる;たとえば、Leu2
34およびLeu235の一方または両方がアラニン(すなわちL234Aおよび/ま
たはL235A)または別の適当なアミノ酸で置換されうる(ワインズ(Wine
s)他,2000)。
【0038】
別の特に好ましい修飾Fcドメインでは、FcドメインはIgG2aに由来し、
およびアミノ酸235、318、320および322、すなわちLeu235、Gl
318、Lys320およびLys322のいずれか1つ以上にアミノ酸修飾を含む。好
ましくは、Leu235がグルタミン酸で置換され、およびGlu318、Lys320
よびLys322がアラニンで置換される。
【0039】
別の特に好ましい修飾Fcドメインでは、FcドメインはヒトIgG4を含むI
gG4に由来し、およびアミノ酸228、233、234、235および236の
うちいずれかもう1つにアミノ酸修飾を含む。好ましくは、IgG4Fcドメイン
中のアミノ酸修飾は、Pro228、Pro233、Val234、Ala235、および23
6の欠失(すなわちDel236)を導入する。
【0040】
第2の態様では、本発明は、第1の態様に記載のポリペプチドを含む可溶性多量
体タンパク質を提供する。
【0041】
第3の態様では、本発明は、第1の態様に記載のポリペプチドまたは第2の態様
に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を
提供する。
【0042】
該ポリヌクレオチド分子は、発現カセットまたは発現ベクター(たとえば細菌宿
主細胞への導入のためのプラスミド、または昆虫宿主細胞のトランスフェクション
のためのバキュロウイルスベクターといったウイルスベクター、または哺乳類宿主
細胞のトランスフェクションのためのプラスミドまたはレンチウイルスといったウ
イルスベクター)に存在しうる。
【0043】
本発明に記載のポリペプチドの二量体を含む可溶性多量体タンパク質については
、当業者は、該コードポリヌクレオチド分子が、宿主細胞における発現に際して、
融合ポリペプチドの1本鎖を与え、それが次いで、宿主細胞分泌の産物として目的
の多量体タンパク質を与えることを理解する。
【0044】
第4の態様では、本発明は、第3の態様に記載のポリヌクレオチド分子を含む組
み換え宿主細胞を提供する。
【0045】
組み換え宿主細胞は、大腸菌(E.coli)といった細菌細胞、メタノール資
化酵母(P.pastoris)といった酵母細胞、ヨトウガ(Spodopte
ra)Sf9細胞といった昆虫細胞、チャイニーズハムスタ−卵巣(CHO)、サ
ル腎臓(COS)細胞およびヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞といった哺
乳類細胞、および植物細胞から選択されうる。
【0046】
第5の態様では、本発明は;
(i)第4の態様に記載のポリヌクレオチド分子を含む組み換え宿主細胞を提供
すること、
(ii)前記宿主細胞を適当な培養培地でおよび前記ポリペプチドまたはタンパ
ク質の発現に適した条件下で培養すること、および
(iii)前記ポリペプチドまたはタンパク質を培養物から、および、任意に培
養培地から単離すること
の段階を含む、ポリペプチドまたはタンパク質を製造するための方法を提供する。
【0047】
該ポリペプチドまたはタンパク質は、当業者によく知られた任意の方法を用いて
単離されうる。たとえば、ポリペプチドまたはタンパク質は、金属アフィニティク
ロマトグラフィー法を用いて、または固定化IgGまたは熱凝集IgG(HAGG
)クロマトグラフィー法を用いて、容易に単離されうる。
【0048】
第6の態様では、本発明は炎症性疾患について被験体を治療する方法であって、
第1の態様に記載のポリペプチドまたは第2の態様に記載のタンパク質を、薬学的
にまたは獣医学的に許容可能なキャリヤーまたは添加物と任意に組み合わせて前記
被験体へ投与することを含む、前記方法を提供する。
【0049】
該方法は、RA、ITP、SLE、糸球体腎炎およびヘパリン誘導性血小板減少
血栓症候群(HITTS)を含むIC媒介性炎症性疾患といった炎症性疾患の治療
に適する。
【0050】
被験体は、典型的にはヒトであるが、しかし第6の態様の方法はまた、家畜(た
とえば競走馬)およびコンパニオンアニマルといった他の動物被験体での使用にも
適しうる。
【0051】
「薬学的にまたは獣医学的に許容可能なキャリヤーまたは添加物」の語は、本発
明のポリペプチドまたはタンパク質を被験体へ送るための、任意の薬学的にまたは
獣医学的に許容可能な溶媒、懸濁剤または媒体をいうことが意図される。
【0052】
該ポリペプチドまたはタンパク質は、当業者によく知られた任意の経路、特に静
脈内(iv)投与、皮内(id)投与および皮下(sc)投与ならびに経口および
経鼻投与を介して被験体へ投与されうる。皮下投与については、投与は注射を介し
てまたは皮下に挿入されたカテーテルによって達成されうる。代替的に、皮下投与
は、徐放インプラント組成物または注射用デポ形成組成物を介して達成されうる。
【0053】
典型的には、該ポリペプチドまたはタンパク質は、1日当たり0.5から15m
g/kg被験体体重の範囲の用量で投与される。当業者は、しかし、「有効量」(
すなわち炎症性疾患を治療する際に有効となる用量)の量は被験体の年齢および一
般的健康および治療すべき炎症性疾患の重症度を含むいくつかの因子にしたがって
変化することを理解する。具体的な各被験体について適当な有効量を特定または最
適化することは十分に当業者の能力内である。
【0054】
本発明の別の態様では、第1の態様に記載のポリペプチドまたは第2の態様に記
載のタンパク質を、薬学的にまたは獣医学的に許容可能なキャリヤーまたは添加物
と任意に組み合わせて含む組成物、および第1の態様に記載のポリペプチドまたは
第2の態様に記載のタンパク質の、炎症性疾患の治療用の医薬の製造における使用
が提供される。
【0055】
さらに、本発明のポリペプチドおよびタンパク質はまた、炎症性疾患についての
被験体の治療以外の用途にも有用である。すなわち、それらはRAおよびSLEと
いった自己免疫疾患の病理に関連する循環性免疫複合体(IC)を検出する診断ア
ッセイに使用でき、ここで該ポリペプチドまたはタンパク質は、そのようなアッセ
イで使用される典型的な沈降段階(ポリエチレングリコールを用いる)の代わりに
、IC「捕捉」(たとえばELISAプレートといった適当な基材へのポリペプチ
ドまたはタンパク質の結合による)の段階に使用されうる。分析すべき試料(たと
えば被験体に由来する血清または滑液試料)からのICを捕捉後、捕捉されたIC
は、本発明のポリペプチドまたはタンパク質を、マーカーまたはレポーター(検出
可能なシグナルを生じることができる、たとえば放射性標識分子、化学発光分子、
生物発光分子、蛍光分子またはホースラディッシュペルオキシダーゼといった酵素
)として作用しうる分子と結合した形で用いることによって検出されうる。代替的
に、捕捉されたICは、循環性IC中の特定の自己抗原のレベルの測定を可能にす
るための、特定の自己抗原(たとえばRAにおけるシトルリン、SLEにおけるD
NA、シェーグレン症候群におけるLa/SS−B、および強皮症におけるDNA
トポイソメラーゼI)に特異的な抗体を用いて、検出または「プローブ」すること
ができ、それは改善された診断または予後判定結果を有する自己免疫疾患のための
アッセイの開発を可能にしうる。さらに、同様の方法で、適当な基材に結合した本
発明のポリペプチドまたはタンパク質によって捕捉されたICは、感染性病原体(
たとえばブドウ状球菌および連鎖球菌といった細菌、熱帯熱マラリア原虫(P.f
alciparum)(マラリア)といった寄生虫、およびC型肝炎ウイルス(H
CV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV
)およびデング熱の原因アルボウイルスといったウイルス)の特定抗原に特異的な
抗体を用いて、検出または「プローブ」することができ、感染症の病原体の同定、
疾患予後および/または感染症の管理に有用な情報を提供する。
【0056】
さらに、本発明のポリペプチドおよびタンパク質はまた、さまざまなバイオアッ
セイに有用であり、そこでマクロファージ、樹状細胞(DC)および好中球を含む
細胞からの腫瘍壊死因子(TNF)の放出を有用に阻害できる。さらに、上述のも
ののようなマーカーまたはレポーターとして作用しうる分子と結合される場合、該
ポリペプチドまたはタンパク質は、炎症部位のin vivo造影に使用されうる

【0057】
さらに、本発明のポリペプチドおよびタンパク質は、IC媒介性炎症性疾患に伴
う循環性ICの除去に有用であり、そこで該ポリペプチドまたはタンパク質は不活
性ビーズ、繊維または他の表面といった適当な基材と結合しており、およびIC複
合体を含む被験体由来の体液(特に血液)に曝露され、そのためICが捕捉されお
よび続いて体液から除去される。処理された体液は、実質的にICが枯渇しており
、次いでその体液が得られた被験体へ戻すことができる。
【0058】
本発明の性質がより明瞭に理解されうるように、その好ましい形態がここで下記
の非限定的な実施例を参照して記載される。
【実施例1】
【0059】
FcR多量体ポリペプチドの作製、精製および特徴づけ
材料および方法
FcγRIIa多量体発現ベクターの構築
ヒトFcγRIIaの外部ドメイン1および2を含むFc結合領域を、熱安定性
ポリメラーゼPwo(ロシュ社(Roche))、クローンHu3.0(ヒブズ(
Hibbs)他、1988、受入番号(ACCESSION NM)_021642
)をcDNAテンプレートとして、およびプライマーoBW10 GTAGCTCCCCCAAA
GGCTG (配列番号:1)およびoBW11 CTACCCGGGTGAAGAGCTGCCCATG (配列番
号:2)を用いることによって増幅した。半分のSnaBI部位(すべてのDNA
修飾酵素はニュー・イングランド・バイオラブズ社(New England Bi
olabs)由来であった)およびSmaI部位を下線で示す。平滑末端PCR産
物を、T4DNAリガーゼを用いて、ベクターpPIC9(インビトロジェン・ラ
イフテクノロジーズ(Invitrogen,Life Technologie
s))へ、DNAポリメラーゼIのクレノー(Klenow)断片で埋めたEco
RI部位にてライゲーションし、ベクターpBAR14を作製した。FcγRII
aのタンデム外部ドメインをコードするベクターpBAR28を作製するために、
pBAR14をSnaBIで消化し、その部位へpBAR14のSnaBI/Sm
aI断片をライゲーションした。
【0060】
FcγRIIa多量体化外部ドメインを発現するためのバキュロウイルスベクタ
ーは下記の通り構築された:FcγRIIaリーダー配列および外部ドメイン1お
よび2をコードする断片は、pVL−1392(パウエル(Powell)他,1
999,およびマクスウェル(Maxwell)他,1999)からEcoRIお
よびXbaIでの消化によって得られ、および次いで複数クローニング部位のBa
mHI部位がまずBamHIでの消化によって除去されDNAポリメラーゼのクレ
ノー(Klenow)断片および再ライゲーションを用いて埋めた修飾pBACP
AK9(インビトロジェン・ライフテク(Invitrogen Life Tec
h))のEcoRI/XbaI部位へライゲーションした。このコンストラクトの
ベクターpBAR69をBamHIで消化し、pBAR28のBamHI断片をラ
イゲーションして、それぞれrsFcγRIIa二量体、三量体および四量体をコ
ードするベクターpBAR71、pBAR72およびpBAR73を生じた。挿入
サイズはEcoRI/XbaI消化によって定められ、および多量体化BamHI
断片の正しい方向はPvuII消化によって標準手順を用いてスクリーニングした

【0061】
FcγRIIa単量体および二量体をコードする哺乳類発現ベクターを下記の通
り作製した:FcγRIIacDNAクローンHu3.0(ヒブズ(Hibbs)
他,1988,および定義(DEFINITION):ヒト(Homo sapi
ens)IgGのFc断片,低親和性IIa,受容体(CD32)(FCGR2A
),mRNA,受入番号(ACCESSION NM)_021642)を、アキュ
プライム(accuprime)Pfx PCR (インビトロジェン・ライフテク
ノロジーズ(Invitrogen,Life Technologies))を
用いて増幅し、およびゲートウェイ(Gateway)(商標)ベクター pDO
NR(商標)221(インビトロジェン・ライフテクノロジーズ)へ、取扱説明書
にしたがってBPクロナーゼ(商標)反応(インビトロジェン・ライフテク)を用
いてクローニングし、pNB6を生じた。pNB6のポリメラーゼのアキュプライ
ムPfxを用いたプライマーoBW11およびoBW302 TCTCATCACCACCATCAC
CACGTCTAGACCCAGCTTTCTTGTACAAAG (配列番号: 3)とのPCR、SmaIでの消
化およびT4リガーゼでのライゲーションは、C末端ヘキサヒスチジンタグを有す
るrsFcγRIIaをコードするpBAR390を生じた。pBAR390のB
amHIでの消化およびpBAR28のBamHI断片のライゲーションは、rs
FcγRIIa二量体をコードするベクターpBAR397を生じた。PvuII
消化を次いで用いて、二量体化BamHI断片の方向をスクリーニングし、および
ABIBigDye3.1(アプライド・バイオシステムズ社(Applied
Biosytems))でシークエンシングし、標的配列を確認した。ゲートウェ
イLRクロナーゼ反応(インビトロジェン・ライフテクノロジーズ)を次いで用い
、FcγRIIa単量体(pBAR390)または二量体(pBAR397)をゲ
ートウェイ(Gateway)リーディングフレームAカセット(インビトロジェ
ン・ライフテクノロジーズ)を適用した発現ベクターpAPEX3P(エバンズ(
Evans)他,1995,およびクリスチャンセン(Christiansen
)他,1996)へ導入し、発現ベクターpBAR426およびpBAR427を
生じた。同様に、ゲートウェイLRクロナーゼ反応を用いて、FcγRIIa単量
体(pBAR390)または二量体(pBAR397)を、ゲートウェイ(Gat
eway)リーディングフレームAカセット(インビトロジェン・ライフテクノロ
ジーズ)を適用した発現ベクターpIRESneo(クローンテック社(Clon
tech))へ導入した。図1は、発現ベクターpBAR427を構築するのに用
いたpBAR397内のFcγRIIa「ヘッドトゥーテール」二量体コンストラ
クトについてポリヌクレオチド配列(および翻訳されたアミノ酸配列)を示す。2
つの反復はアミノ酸1から174(すなわち第1のFc結合領域)および184か
ら362(すなわち第2のFc結合領域)として示され、およびFcγRIIa膜
隣接柄部の短い(8アミノ酸配列;残基175から182)断片に加えて追加のバ
リン残基(図1で下線で示す残基183)を介して結合している。図1に示す配列
のアミノ酸−31から−1はFcγRIIaの天然のリーダー配列を表す。
【0062】
rsFcγRIIa単量体および二量体ポリペプチドの作製
組み換え可溶性FcγRIIa(rsFcγRIIa)単量体および二量体ポリ
ペプチドのHEK293E細胞における発現は、5μgのプラスミドDNA(pB
AR426,pBAR427)を10cm2ウェルに入れ、およびリポフェクタミ
ン2000試薬(インビトロジェン・ライフテクノロジーズ(Invitroge
n,Life Technologies))またはトランジット(Transi
t)試薬(バイオラッド・ラボラトリーズ社(BioRad Laborator
ies))を用いるトランスフェクションによって取扱説明書にしたがって実施さ
れた。48時間後、トランスフェクションされた細胞を次いで4μg/mlピュー
ロマイシン中でのインキュベートによって選択した。ピューロマイシン選択細胞を
、次いで1%FCS添加CD293培地(インビトロジェン・ライフテクノロジー
ズ)中で定常期まで増殖させた。組み換え産物を次いで固定化ニッケル(キアゲン
社(Qiagen))またはコバルト(クローンテック社(Clontech))
カラムを用いたクロマトグラフィーによって精製し、およびスーパーデックス(S
uperdex)200またはスーパーデックスG75(アマシャム/ファルマシ
ア社(Amersham/Pharmacia))サイズ排除クロマトグラフィー
を用いてさらに精製した。
【0063】
rsFcγRIIa単量体および二量体ポリペプチドのアフィニティ測定の比較
標準BIAcoreアッセイ手順(ワインズ(Wines)他,2001;ワイ
ンズ(Wines)他,2003)を用いて、精製rsFcγRIIa単量体およ
び二量体についてアフィニティ測定を実施した;rsFcγRIIa単量体または
二量体をさまざまな濃度で、固定化ヒトIgG単量体(サンドグロブリン(San
doglobulin),ノバルティス社(Novartis))または熱凝集I
gG(HAGG,ワインズ(Wines)他,1988;ワインズ(Wines)
他,2003)へ60分間注入し、その時間後、表面を再生した(ワインズ(Wi
nes)他、2003)。バイオセンサー表面上にヒトIgG単量体を固定化する
ことで、それは免疫複合体を模倣する多価アレイになる。
【0064】
rsFcγRIIa単量体および二量体ポリペプチドの阻害活性の比較
精製rsFcγRIIa単量体および二量体を、ヒトIgG単量体(サンドグロ
ブリン(Sandoglobulin))および二量体−IgG(ライト(Wri
ght)他,1985)の漸増濃度の溶液とインキュベートした。遊離受容体ポリ
ペプチドの量を次いで、標準BIAcoreアッセイ手順にしたがって固定化ヒト
IgG単量体へ注入することによって測定した。
【0065】
rsFcγRIIa単量体および二量体ポリペプチドによるヒト細胞への免疫複
合体結合の阻害
小さい免疫複合体(二量体−IgGに代表される)のヒト好中球(ボランティア
V1およびV5)への結合を、精製rsFcγRIIa単量体および二量体ポリペ
プチドの非存在下および存在下で、フローサイトメトリー分析によって測定した(
『免疫学カレント・プロトコル』(Current Protocols in I
mmunology),ワイリー・インターサイエンス社(Wiley Inte
rscience))。
【0066】
免疫複合体刺激MDM(単球由来マクロファージ)からのTNF分泌のrsFc
γRIIa単量体および二量体ポリペプチドによる阻害
第1の実験で、末梢単核細胞をヒト血液(ボランティアV5)から抽出し、CD
14発現についてオートマックス(automacs)ソーター(ミルテニー・バ
イオテク社(Miltenyi Biotec))を用いて陽性選択し、および2
4時間M−CSFの存在下でMDM(単球由来マクロファージ)へ分化させ、その
後、さまざまな濃度の小さい免疫複合体(二量体−IgGに代表される)で、rs
FcγRIIa二量体(上清中に2.5μg/ml)の非存在下および存在下で刺
激した。MDMからのTNF分泌を次いでヒトTNFELISAによって取扱説明
書にしたがって測定した(BDファーミンジェン社(BD Pharmingen
))。第2の実験で、MDMを同様にex vivoでヒト血液(今回はボランテ
ィアV1由来)から作製しおよび24時間分化させ、その後、さまざまな濃度の小
さい免疫複合体(すなわち二量体−IgG)で、rsFcγRIIa二量体(上清
中に2.5μg/ml)の非存在下および存在下で刺激した。
【0067】
rsFcγRIIa二量体ポリペプチドによる血小板の免疫複合体活性化の阻害
洗浄した血小板を全血の低速遠心分離によって調製し(タイ(Thai)他,2
003)および熱凝集IgG(HAGG)で刺激した。血小板の活性化は、P−セ
レクチン(CD62P)の表面発現の増加によってフローサイトメトリーで測定し
た(ラウ(Lau)他,2004)。
【0068】
結果
rsFcγRIIa単量体および多量体ポリペプチドの昆虫細胞からの発現
感染細胞上清のウェスタンブロット分析は、組み換え可溶性FcγRIIaの二
量体および三量体形の産生の成功を実証した(図2)。いくらかの三量体ポリペプ
チドが検出されたが、これは概ね切断されて二量体形となり、および四量体は検出
されず、概ね切断されて二量体形を生じた。FcγRIIa二量体は本質的に最も
安定であったため、これはさらに特徴づけられおよび哺乳類発現系で開発された(
すなわちHEK293E細胞)。
【0069】
しかし、天然FcγRIIaはタンパク質分解によって白血球細胞表面から脱落
しうるため(アスティア(Astier)他,1994)、三量体、四量体および
より大きい多量体のタンパク質分解を最小化するための1つの戦略は、FcγRI
Ia細胞外領域を結合する膜隣接柄部リンカー配列を消去するかまたはより好まし
くは置換することになる。たとえば、膜隣接柄部リンカー配列のタンパク質分解感
受性は、1つ以上のアミノ酸修飾(たとえば1つ以上のアミノ酸置換、欠失および
/または付加)によって、またはリンカー配列を、たとえば、タンパク質分解に対
して低感受性であるGGGGSGGGGS(配列番号:4)といった合成リンカー
配列で置換することによって、低減されうる。
【0070】
三量体、四量体およびより大きい多量体の作製に成功するための別の戦略は、発
現された二量体ポリペプチドを、1つ以上の単量体または別の二量体ポリペプチド
と、化学的架橋によって結合することである。FcγRIIa二量体の多量体もま
た、二量体ポリペプチドを、自身が二量体でありおよび任意の融合パートナーを二
量体化するFcドメイン(たとえばIgG Fcドメイン)との融合タンパク質と
して発現することによって作製されうる。
【0071】
rsFcγRIIa単量体および二量体ポリペプチドの哺乳類細胞からの発現
タンパク質収量は、rsFcγRIIa単量体について3mg/l(コンストラ
クトpBAR426)、およびrsFcγRIIa二量体について、〜0.5mg
/lまで(コンストラクトpBAR427)であった。図3は、rsFcγRII
a単量体および二量体の精製から回収された画分のクマシー(Coomassie
)染色SDS−PAGE(12%アクリルアミドゲル、非還元条件下)を示す。r
sFcγRIIa単量体は予想サイズが〜30kDaであり(a)、一方、rsF
cγRIIa二量体は予想サイズが〜60kDaであった(b)。
【0072】
rsFcγRIIa単量体および二量体ポリペプチドのアフィニティ測定の比較
アッセイの結果を図4および5に示す。アッセイは、rsFcγRIIa単量体
が、ヒトIgG単量体について1.7μMおよびHAGGについて1.05μMの
アフィニティ解離定数(KD)を有する1結合部位を有することを示した。rsF
cγRIIa二量体の場合、結合データは、固定化ヒトIgG単量体について3.
2nM(KD1)および100nM(KD2)、およびHAGGについて2.73nM
(KD1;単量体rsFcγRIIaのKDより約300倍小さい)および99nM
(KD2)のアフィニティ解離定数(KD)を有する2結合部位モデルに最も良く合
致した。
【0073】
rsFcγRIIa単量体および二量体ポリペプチドの阻害活性の比較
rsFcγRIIa単量体および二量体ポリペプチドの阻害活性を比較するため
に実施した実験は、溶液中で、rsFcγRIIa単量体(図6a)はヒトIgG
単量体および小さい免疫複合体(すなわち二量体−IgGに代表される)を識別し
ないことを示した。対照的に、溶液中のrsFcγRIIa二量体(図6b)は、
ヒトIgG単量体よりも小さい免疫複合体(すなわち二量体−IgG)を選択的に
結合する。
【0074】
ヒト細胞への免疫複合体結合のrsFcγRIIa単量体および二量体ポリペプ
チドによる阻害
阻害アッセイの結果を図7aおよび7bに示し、およびこれらは、小さい免疫複
合体(すなわち二量体−IgG)をヒト好中球との結合から阻害することについて
、rsFc(RIIa二量体(IC50=1.1μg/ml)が、rsFc(RIIa
単量体(IC50=10.5μg/ml)よりも〜10倍活性が高いことを示す。さ
らに、結果は、小さい免疫複合体(二量体−IgG)のヒト好中球との結合からの
rsFcγRIIa二量体による阻害は、別々の2人に由来する好中球で再現可能
でありIC50が0.9〜1.1μg/mlであったことを示した。
【0075】
免疫複合体刺激MDM(単球由来マクロファージ)からのTNF分泌のrsFc
γRIIa単量体および二量体ポリペプチドによる阻害
結果を図8aおよび8bに示す。rsFcγRIIa二量体は、24時間分化ヒ
トMDMからの免疫複合体(すなわち二量体−IgG)刺激されたTNF分泌を阻
害するように見えた。
【0076】
rsFcγRIIa二量体ポリペプチドによる血小板の免疫複合体活性化の阻害
洗浄したヒト血小板をHAGG(10μg/ml)と共に、rsFcγRIIa
二量体30μg/mlの存在下および非存在下で30分間インキュベートした。図
9に示す通り、P−セレクチン(CD62P)のより少ない発現が証拠となり、血
小板の活性化はrsFc(RIIa二量体の存在下で阻害されたことが見出された

【0077】
考察
単量体(rsFcγRIIa単量体)および二量体(rsFcγRIIa二量体
)形の組み換え可溶性FcγRIIaのHEK293E細胞における発現に成功し
た。BIAcore平衡結合アッセイは、rsFcγRIIa二量体が固定化Ig
G(サンドグロブリン(Sandoglobulin))に対して単量体受容体よ
りも〜300倍大きい結合活性を有する(すなわち固定化IgGとの相互作用にお
いてrsFcγRIIa単量体はKD〜1μMである一方rsFcγRIIa二量
体はKD〜3nMである)ことを実証した。BIAcoreを用いる競合実験はま
た、rsFcγRIIa二量体が小さい免疫複合体を選択的に結合することを実証
し、および2名のドナー由来の好中球を用いる細胞系アッセイで選択的阻害活性が
確認された。rsFcγRIIa二量体はまた、rsFcγRIIa単量体よりも
小さいIgG免疫複合体結合の約10倍強力なインヒビターであることが証明され
、および標準血小板アッセイでは、rsFcγRIIa二量体は血小板の免疫複合
体活性化を完全に阻害することが観察された(すなわちrsFcγRIIa二量体
は細胞活性化の強力なインヒビターである)。したがって、本発明に記載のrsF
cγRIIa二量体および他の可溶性多量体タンパク質およびポリペプチドは、R
AおよびSLEといったIC媒介性炎症性疾患の治療に顕著な有望性を示すと考え
られる。
【実施例2】
【0078】
rsFcγRIIa二量体ポリペプチドの作製、精製および特徴づけ
材料および方法
rsFcγRIIa二量体ポリペプチドの産生
実施例1に記載のFc(RIIa二量体コンストラクトを修飾CMVプロモータ
ーの調節下の哺乳類発現ベクターへクローニングした。安定CHO−S形質転換体
を次いで下記の通りに樹立した:90%集密のCHO−S細胞を採取し、3回洗浄
し、および2x107細胞を含む15ml培地を10cmシャーレに分注した。直
鎖化DNA−リポフェクタミン2000複合体(比1:2.5)を次いで5分間室
温にてインキュベートし、および細胞へ滴下して加えた。続いて、細胞を37℃に
て48時間インキュベートし、および次いで限界希釈で96ウェルプレートに、6
00μg/mlハイグロマイシンB、8mM L−グルタミン、1xHTサプリメ
ントおよび50μg/ml硫酸デキストランを添加したCD−CHO培地に播種し
た。細胞を標準ELISAによってスクリーニングして可溶性FcγRIIaタン
パク質を検出し、および最高の発現株を限界希釈によって再びサブクローニングし
た。1つのクローン(#6)がFcγRIIa二量体を約40mg/Lにて分泌し
、および振とうフラスコ内で30℃にて最適タンパク質発現のために培養された。
【0079】
rsFcγRIIa二量体を含む上清をタンジェンシャルフローろ過によって濃
縮し、および20mMリン酸ナトリウムpH7.4緩衝液へ交換した。試料を次い
で20mMリン酸ナトリウムおよび0.5M塩化ナトリウムで4倍に希釈し、およ
びHisTrapFF2x5mlカラム(GEヘルスケア社(GE Health
care))で精製し,20mMリン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウムpH
7.4および100mMイミダゾールで溶出した。溶出した材料を透析し、および
イオン交換クロマトグラフィーによって25mlQFFカラム(GEヘルスケア社
)を用いて精製し、および150mM塩化ナトリウムで溶出した。精製した材料を
次いでリン酸緩衝生理食塩水へ透析した。
【0080】
FcγRIIbへのHAGG結合のrsFcγRIIa二量体ポリペプチドでの
ブロッキング
精製rsFcγRIIa二量体が細胞表面FcγRIIbへの免疫複合体結合を
ブロックする能力を、フローサイトメトリーアッセイによって評価した。熱凝集I
gG(HAGG)をさまざまな濃度のrsFcγRIIa二量体またはrsFcγ
RIIa単量体(R&Dシステムズ社(R&D Systems),品番1330
−CD/CF)と1時間4℃にてインキュベートした。これらの混合物を次いで、
ヒトFcγRIIbでトランスフェクションしたIIA1.6細胞105個の入っ
た96ウェルプレートへ加えた(IIA1.6は内因性FcγR発現を欠くマウス
Bリンパ腫株である)。プレートを1時間4℃にてインキュベートし、洗浄し、お
よび次いで抗hIgG−FITC複合体で染色して結合HAGGを検出した。洗浄
後、細胞をFACSスキャンフローサイトメーターで標準手順を用いて分析した。
【0081】
rsFcγRIIa二量体ポリペプチドを用いたHAGG誘導血小板活性化のブ
ロッキング
HAGGへの血小板の曝露は、Fc(RIIaを介する活性化を結果として生じ
、P−セレクチン(CD62P)のアップレギュレーションに繋がる。rsFcγ
RIIa二量体またはrsFcγRIIa単量体がこの活性化をブロックする能力
を、フローサイトメトリーアッセイによって評価した。熱凝集IgG(HAGG)
をさまざまな濃度のrsFcγRIIa二量体またはrsFcγRIIa単量体(
R&Dシステムズ社(R&D Systems),品番1330−CD/CF)と
1時間4℃にてインキュベートした。混合物を次いで、予め洗浄しおよび1mM
EDTA添加タイロード/ヘペス(Tyrodes/Hepes)緩衝液に再懸濁
したヒト血小板3x107個の入った96ウェルプレートへ加えた。30分間室温
にてインキュベート後、細胞を洗浄し、固定し、およびCD62PおよびGPII
b(CD41)発現について標準法によって染色し、およびFACSスキャンフロ
ーサイトメーターで分析した。
【0082】
rsFcγRIIa二量体ポリペプチドは免疫複合体誘導MC/9活性化をブロ
ックする
MC/9は免疫複合体への曝露後に活性化されおよびTNF−αを放出するFc
γR陽性マウス肥満細胞株である。rsFc(RIIa二量体またはrsFcγR
IIa単量体がこの活性化をブロックする能力を、オボアルブミンおよび抗オボア
ルブミン抗体から成る免疫複合体(OVA IC)を刺激剤として用いて評価した
。OVA IC(10μg)をさまざまな濃度のrsFcγRIIa二量体または
rsFcγRIIa単量体(R&Dシステムズ社(R&D Systems)、品
番1330−CD/CF)と1時間室温にてインキュベートした。混合物を次いで
、2x105MC/9細胞の入った96ウェルプレートへ加え、および一夜37℃
にてインキュベートした。上清を回収し、およびTNF−αの量を市販のELIS
Aキット(BDバイオサイエンス社(BD Biosciences))を用いて
測定した。
【0083】
rsFcγRIIa二量体はヒトFcγRIIaトランスジェニックマウスモデ
ルにおいて誘導性関節炎を阻害する
rsFcγRIIa二量体の活性を、参照により本開示に含まれる公開されたP
CT出願WO03/104459に記載されるトランスジェニックヒトFcγRI
Iaマウスを用いて関節炎モデルで評価した。これらのマウスは、ヒトFcγRI
Iaをコードする導入遺伝子を発現する。
【0084】
臨床的に明らかな関節炎(標準関節炎指標を用いて判定)がこれらのマウスにお
いて単回2mg用量のモノクローナル抗体M2139含有PBSの投与後少なくと
も4日目までに誘発され、それはコラーゲンIIのアミノ酸551−564のJ1
エピトープに特異的に結合するIgG2aである。該モノクローナル抗体は、関節
炎誘発性であると証明されているハイブリドーマによって産生される(アミルアフ
マディ(Amirahmadi)他,Arthritis and Rheumat
ism,June 2005; ナンダクマール(Nandakumar) 他,A
rthritis Research and Therapy,May 2004)

【0085】
マウスを図1に示す可溶性FcγRIIa二量体を用いて下記の通り処理した:
4匹のFcγRIIa Tgマウスに0.5mg可溶性FcγRIIa二量体を注
射し、およびマウス4匹の対照群にPBSをi.p.投与した。2時間後、両方の
群に2mgのM2139(ip)を注射し、および1mgの二量体またはPBSを
ボーラス投与した。二量体(0.5mg/用量)をM2139の注射後24および
48時間の両方に再び投与した。関節炎を通常通り採点し、可能な最高スコアは1
2点であった。4足各0〜3点(0=正常;1=発症関節1、紅斑、軽度腫脹;2
=2つ以上の発症関節、足首/手首腫脹;3=全関節発症、可動性消失/強直、著
明な紅斑および浮腫)。
【0086】
結果
rsFcγRIIa二量体ポリペプチドの産生
図10は、SDS−PAGE(還元および非還元条件下);抗FcγRIIa抗
体((R&Dシステムズ社(R&D systems),品番AF1875)およ
びウサギ抗ヤギIgG−ペルオキシダーゼを検出抗体として用いるウェスタンブロ
ッティング;およびHPLCを含む、精製rsFcγRIIa材料の分析を示す。
ポリペプチドは予想分子量(〜50kD)で単一バンドとして泳動し、抗FcγR
IIa抗体と反応し、およびHPLC分析によって測定された通り純度>96%で
ある。
【0087】
rsFcγRIIa二量体ポリペプチドはFc(RIIbへのHAGG結合をブ
ロックする
HAGG結合アッセイの結果を図11に示す。rsFcγRIIa二量体および
rsFcγRIIa単量体の両方が、細胞表面FcγRIIbへのHAGGの結合
を完全にブロックできた。しかし、rsFcγRIIa二量体(IC50=3.9
ng/ml)は単量体タンパク質(IC50=2082ng/ml)よりも500
倍よりもっと強力であった。
【0088】
rsFc(RIIa二量体ポリペプチドはHAGGに誘導される血小板活性化を
ブロックする
血小板活性化アッセイの結果を図12に示す。HAGG単独での処理後の活性化
血小板(CD41およびCD62Pの両方について陽性)の割合を100%と定め
た。rsFcγRIIa二量体およびrsFcγRIIa単量体の両方が、HAG
Gに誘導されるCD62Pアップレギュレーションを顕著に低減できた。滴定によ
って、rsFcγRIIa二量体(IC50=3.9μg/ml)はrsFc(R
IIa単量体(IC50=20.9μg/ml)よりも5倍強力であったことが明
らかになった。
【0089】
rsFcγRIIa二量体ポリペプチドは免疫複合体誘導MC/9活性化をブロ
ックする
MC/9活性化アッセイの結果を図13に示す。OVAIC単独とのインキュベ
ート後に放出されるTNF−αの量を100%と定めた。rsFcγRIIa二量
体およびrsFcγRIIa単量体の両方が、免疫複合体によって誘導されるTN
F−α放出を完全に抑制できた。滴定によって、rsFcγRIIa二量体(IC
50=2.1μg/ml)はrsFcγRIIa単量体(IC50=17.7μg
/ml)よりも8倍強力であったことが明らかになった。
【0090】
rsFcγRIIa二量体はヒトFcγRIIaトランスジェニックマウスモデ
ルにおいて誘導性関節炎を阻害する
図18に示す通り、rsFcγRIIa二量体の投与は関節炎スコアの劇的な低
下を与えた。第2の試験は、二量体によって媒介される関節炎スコアの低下を、そ
れほど劇的にではないが確認した。
【0091】
考察
rsFcγRIIa二量体のCHO−S細胞における発現に成功した。還元およ
び非還元SDS−PAGEは、精製rsFcγRIIa二量体はサイズが約50k
Daであったことを示し、およびウェスタンブロッティングは、二量体が抗Fc(
RIIa抗体によって特異的に結合したことを示した。rsFcγRIIa二量体
はHPLCによって純度96%と測定された。
【0092】
rsFcγRIIa二量体およびrsFc(RIIa単量体の両方が、細胞表面
FcγRIIbへのHAGGの結合を完全にブロックし、rsFcγRIIa二量
体がrsFcγRIIa単量体よりも約500倍高いブロッキング効率を有した。
同様に、rsFcγRIIa二量体およびrsFcγRIIa単量体の両方が、H
AGGに誘導される血小板活性化を顕著に低減でき、二量体がrsFcγRIIa
単量体よりも約5倍高い効力を有した。さらに、rsFcγRIIa二量体および
rsFcγRIIa単量体の両方が、TNF−α放出によって測定されるマウス肥
満細胞株(MC/9)活性化を抑制し、二量体が単量体よりも8倍高い効力を示し
た。
【0093】
重要なことに、rsFcγRIIa二量体は誘導性関節炎のマウスモデルにおい
て関節炎を回復させ、in vivo有効性を実証した。
【実施例3】
【0094】
IgG1由来Fcドメインを含むrsFcγRIIa融合ポリペプチドの設計お
よび発現
材料および方法
rsFcγRIIa融合発現ベクターの構築
可溶性単量体FcγRIIaまたは可溶性二量体FcγRIIaをコードするポ
リヌクレオチドを独立して、IgG1−Fcγ1をコードするポリヌクレオチドと
融合した(L234A、L235A)。
【0095】
可溶性単量体FcγRIIaポリペプチドのC末端を、2個のFc部分を共有結
合する下部ヒンジの鎖間ジスルフィド結合のN末端側の位置で、ヒトIgG1ポリ
ペプチドと動作可能に融合した。この位置での融合は、共有結合したFcドメイン
間の相互作用のために第2のFcドメインと二量体化する、単量体FcγRIIa
−IgG1−Fcγ1(L234A、L235A)融合タンパク質を生じる。Ig
Gヒンジ領域はその柔軟性が知られており、および下部ヒンジの鎖間ジスルフィド
結合のN末端側にFc結合領域を含むポリペプチドの融合は、Fc結合領域の動き
の相当な自由を可能にする。
【0096】
同様に、可溶性二量体FcγRIIaポリペプチドのC末端を、2個のFc部分
を共有結合する下部ヒンジの鎖間ジスルフィド結合のN末端側の位置で、ヒトIg
1ポリペプチドと動作可能に融合した。
【0097】
可溶性単量体FcγRIIaまたは可溶性二量体FcγRIIaをコードするポ
リヌクレオチドを独立して、ヒト血清アルブミン(HSA)をコードするポリヌク
レオチドと、従前の国際特許明細書第WO96/08512号に記載されるのと同
等の方法で融合した。その明細書に開示される通り、HSAをrsFcγRIIa
単量体のN末端に融合した。同様の方法で、HSAをrsFcγRIIa二量体の
N末端に融合した。
【0098】
さまざまな融合ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドを
、pAPEX3P−xDESTへ、標準クローニング法を用いて、動作可能に挿入
した。
【0099】
rsFcγRIIa単量体およびrsFcγRIIa二量体融合物の精製
rsFcγRIIa単量体および二量体融合発現ベクターを、標準的方法を用い
て、CHOP細胞に一過性トランスフェクションし、および293E細胞に安定ト
ランスフェクションした。一過性トランスフェクションされたCHOP細胞上清を
、抗FcγRIIa抗体8.2を用いて免疫沈降し(パウエル(Powell)他
,1999)、および免疫沈降物を非還元SDS−PAGE(12%)に供した。
ウェスタンブロット分析を次いで標準的方法を用いて、およびウサギ抗FcγRI
Ia抗体(マクスウェル(Maxwell)他,1999)を一次抗体としておよ
び抗ウサギIg−HRPを二次抗体として用いて実施した。
【0100】
トランスフェクションされたCHOP細胞上清中のrsFcγRIIa融合物の
検出のためのHAGG捕捉ELISA
HAGG捕捉ELISAを、rsFcγRIIa融合物のFc結合活性を測定す
るために実施した。rsFcγRIIa単量体融合物の結合活性を測定するために
、既知のFcγRIIa単量体標準(パウエル(Powell)他,1999)(
0.75μgにて開始)およびrsFcγRIIa単量体トランスフェクション細
胞に由来するタンパク質(トランスフェクション426)を、滴定し、および、I
gG−Fcγ1とのrsFcγRIIa単量体融合物(L234A,L235A)
(単量体−Fc)をトランスフェクションした細胞由来のタンパク質の結合と比較
し、およびHSAとのrsFcγRIIa単量体融合物(HSA−単量体)をトラ
ンスフェクションした細胞由来のタンパク質の結合と比較した。
【0101】
rsFcγRIIa二量体融合物の結合活性を測定するために、既知のFcγR
IIa二量体標準(0.5μg/mlにて開始)およびrsFcγRIIa二量体
をトランスフェクションした細胞由来のタンパク質(トランスフェクション427
)を、滴定し、および、IgG−Fcγ1とのrsFcγRIIa二量体融合物(
L234A,L235A)(二量体−Fc)をトランスフェクションした細胞由来
のタンパク質の結合と比較し、およびHSAとのrsFcγRIIa二量体融合物
(HSA−二量体)をトランスフェクションした細胞由来のタンパク質の結合と比
較した。
【0102】
トランスフェクションされたCHOP細胞上清中のrsFcγRIIa融合物の
検出のための捕捉タグELISA
標準ELISA法を用いて、プレートを抗FcγRIIa抗体8.2でコーティ
ングした。rsFcγRIIa融合物をウェルに加え、および8.2抗体と接触さ
せた。二次抗体は抗FcγRIIa抗体8.7−HRP(パウエル(Powell
)他,1999;イエリノ(Ierino)他,1993a)であり、これは、抗
体8.2とは異なるFcγRIIaエピトープに特異的である。
【0103】
試験した単量体rsFcγRIIa試料は、既知rsFcγRIIa単量体(単
量体標準0.75μg/mlにて開始)、rsFcγRIIa単量体をトランスフ
ェクションした細胞(トランスフェクション426)由来の上清、IgG−Fcγ
1とのrsFcγRIIa単量体融合物(L234A、L235A)(単量体−F
c)をトランスフェクションした細胞由来の上清、およびHSAとのrsFcγR
IIa単量体融合物(HSA−単量体)をトランスフェクションした細胞由来の上
清を含んだ。
【0104】
試験した二量体rsFcγRIIa試料は、既知FcγRIIa二量体(二量体
標準0.5μg/mlにて開始)、rsFcγRIIa二量体をトランスフェクシ
ョンした細胞(トランスフェクション427)由来の上清、IgG−Fcγ1との
rsFcγRIIa二量体融合物(L234A、L235A)(単量体−Fc)を
トランスフェクションした細胞由来の上清、およびHSAとのrsFcγRIIa
二量体融合物(HSA−単量体)をトランスフェクションした細胞由来の上清を含
んだ。
【0105】
結果
rsFcγRIIa単量体および二量体融合物の発現
精製rsFcγRIIa単量体およびrsFcγRIIa二量体の活性に基づき
、rsFcγRIIa単量体−IgG−Fcγ1(L234A、L235A)融合
物は、rsFcγRIIa二量体−IgG−Fcγ1(L234A、L235A)
融合物(293E細胞中で約4μg/ml)よりも高いレベル(293E細胞中で
約12μg/ml)で分泌された。
【0106】
図14に示す通り、ウェスタンブロット分析は、融合タンパク質が上清中に予想
分子量サイズに存在したこと、およびそれらは識別可能なタンパク質として産生に
成功し、分解産物の証拠が無かったことを示した。
【0107】
トランスフェクションされたCHOP細胞上清中のrsFcγRIIa融合物の
検出のためのHAGG捕捉ELISA
図15(a)に示す通り、IgG−Fcγ1とのrsFcγRIIa単量体融合
物(L234A、L235A)(単量体−Fc)はアッセイで検出可能に結合し、
一方HSAとのrsFcγRIIa単量体融合物(HSA−単量体)は結合が不十
分であったことが観察された。この結果は、IgG−Fcγ1とのrsFcγRI
Ia単量体融合物(L234A、L235A)は融合Fcドメインの重鎖間の二量
体化の結果として(Fc結合領域の)二量体になり、一方HSAとのrsFcγR
IIa単量体融合物はFc結合領域について単量体のままである事実によって説明
されうる。
【0108】
図15(b)に示す通り、精製されたIgG−Fcγ1とのrsFcγRIIa
二量体融合物(L234A、L235A)(二量体−Fc)は二量体標準と同様の
結合活性を示し、およびHSAとのrsFcγRIIa二量体融合物(HSA−単
量体)は、検出可能な、しかしより低い、結合活性を有した。この場合、IgG−
Fcγ1とのrsFcγRIIa二量体融合物(L234A、L235A)は、融
合Fcドメインの重鎖間の二量体化のため、Fc結合領域について四量体(または
「四価」)であった一方、HSAとのrsFcγRIIa二量体融合物はFc結合
領域について二量体のままである。
【0109】
トランスフェクションされたCHOP細胞上清中のrsFcγRIIa融合物の
検出のための捕捉タグELISA
図16(a)に示す通り、IgG−Fcγ1とのrsFcγRIIa単量体融合
物(L234A、L235A)およびHSAとのrsFcγRIIa単量体融合物
は両方とも、このアッセイで捕捉されおよび検出可能である。図16(b)に示す
通り、IgG−Fcγ1とのrsFcγRIIa二量体融合物(L234A,L2
35A)およびHSAとのrsFcγRIIa二量体融合物もまた両方とも、この
アッセイで捕捉されおよび検出可能である。明らかに、これらの受容体を捕捉する
のに用いられた8.2エピトープおよび捕捉された受容体を検出するのに用いられ
た8.7エピトープの両方が未変化であり、融合物の正しい折りたたみを示す。
【0110】
考察
rsFcγRIIa単量体およびrsFcγRIIa二量体融合コンストラクト
をベクターp−APEX3P−xDSTから発現し、およびCHOP細胞で一過性
に、および293E細胞で安定に発現した。発現された融合物は、ウェスタンブロ
ット上で明瞭なタンパク質として現れ、分解産物の証拠は無かった。
【0111】
IgG−Fcγ1とのrsFcγRIIa二量体融合物(L234A、L235
A)は、対応する単量体よりも低い発現レベルを示しうる。しかし、HSAとのr
sFcγRIIa二量体融合物の発現レベルは、ウェスタンブロットによって測定
された通りHSAとのrsFcγRIIa単量体融合物の発現レベルとほぼ同等で
あり(図14)、およびしたがってrsFcγRIIa二量体の大スケール生産の
手段として相当な有望性を示す。興味あることに、rsFcγRIIa二量体融合
物は、対応する単量体よりも高いHAGGおよび抗FcγRIIa抗体8.2結合
活性を示した。上述の通り、これはrsFcγRIIa二量体融合物がFc結合領
域について二量体または四量体(IgG−Fcγ1とのrsFcγRIIa二量体
融合物(L234A、L235A)の場合)であって、および結果として、この多
価性のためにより高い見かけの結合親和性(結合活性)を有した事実によって説明
されうる。四量体分子は免疫複合体と、結合が実質的に不可逆的となる高い親和性
で結合し得ると予想される。
【実施例4】
【0112】
IgG2aに由来するFcドメインを含むrsFcγRIIa融合ポリペプチド
の設計および発現
この実施例では、rsFcγRIIa二量体融合タンパク質を、修飾マウスIg
G2aFcドメインを融合パートナーとして用いて調製した。該二量体融合タンパ
ク質をD2と表した。このタンパク質の活性を、融合パートナーを欠くrsFcγ
RIIa二量体(実施例1および2に記載される通り)と比較し、および融合パー
トナーが該修飾マウスIgG2aFcドメインであるrsFcγRIIa単量体融
合タンパク質と比較した。
【0113】
組み換え可溶性D2FcγRIIaFc(D2)タンパク質の設計
D2タンパク質の翻訳されたアミノ酸配列(配列番号:8)およびヌクレオチド
配列(配列番号:9)をそれぞれ図19および20に示す。D2タンパク質は、天
然FcγRIIaシグナル配列(アミノ酸1−31)、FcγRIIaタンパク質
の細胞外ドメイン(アミノ酸32−205)、FcγRIIa膜隣接柄部に相当す
る短いリンカーに加えて追加のバリン残基(残基206−214)、第2のFcγ
RIIaタンパク質(残基215−385)、膜隣接柄部リンカーの1反復(残基
386−393)およびマウスIgG2aFcドメイン(ヒンジ−CH2−CH3
)領域(残基394−625)から成るポリペプチドの二量体を含む。IgG2a
Fcドメインは下記の4つの変異を含み、それらはFc受容体結合および補体結合
を低減するために導入された:Leu−413からGluへ(EUナンバリング系
で235位に相当),Glu−496からAlaへ(EU318位に相当),Ly
s−498からAlaへ(EU320位に相当)およびLys−500からAla
へ(EU322位に相当)。
【0114】
D2発現ベクターの構築
ヒトFcγRIIaのシグナルペプチドおよび細胞外ドメインをコードするcD
NAを、以前に構築されたプラスミド(FcγRIIa−d/pAPEX−des
t)をテンプレートとしておよび表1に示すプライマー1および4を用いてPCR
によって増幅した。変異マウスIgG2aFc領域を、以前に構築されたプラスミ
ド(CD200IgG2aFc−d)をテンプレートとしておよび表2に示すプラ
イマー2および3を用いてPCRによって増幅した。
【表2】

【0115】
FcγRIIaおよび修飾マウスIgG2aFcPCR産物を次いでオーバーラッピングPCRによって、プライマー1および2を用いて増幅した。増幅は、プラチナPfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社(Invitrogen))、1mM MgSO4、0.4mMの各dNTP、20pmolの各プライマーおよび100ngのテンプレートDNAを用いることによって下記の条件下で実施した:最初の融解を94℃にて5分間、その後、94℃1.5分間、次いで65℃2分間、次いで72℃3分間から成る30サイクル。反応物を次いで72℃にて10分間保ち、および4℃へ冷却した。反応産物を0.7%アガロースゲルで電気泳動し、およびエチジウムブロマイドで可視化した。目的のDNAバンドを切り出し、およびキアクイック(QIAquick)ゲル抽出キット(キアゲン社(Qiagen))を用いることによってアガロースゲルから精製した。この精製PCR産物をNheIおよびAgeI制限酵素で消化し、およびキアクイックPCR精製キット(キアゲン社(Qiagen))を用いて精製した。断片を次いでT4DNAリガーゼによって、NheIおよびAgeIで同様に消化したpMPG発現プラスミドへライゲーションした。ライゲーション反応物(5μl)を次いで50μlのコンピテント大腸菌(Escherichia coli)DH5α細胞(インビトロジェン社)へ取扱説明書にしたがって形質転換した。形質転換体を、100μg/mlアンピシリンを含むLB寒天プレートに平板播種し、次いで37℃にて16時間インキュベートした。プラスミドDNAを小スケール大腸菌(E.coli)培養物からミニプレップ(mini−prep)によって精製し,およびDNA配列を確認した。結果として生じる発現プラスミドpMPG−D2FcγRIIA−IgG2aFcの図を図21に示す。
【0116】
D2を発現するCHOクローンの作製
pMPG−D2 FcγRIIa−IgG2aFcプラスミドDNAを大腸菌(E.coli)の大量培養からプラスミドマキシ(plasmid Maxi)キット(キアゲン社(Qiagen))を用いて単離し、XbaIによって直鎖化し、およびキアゲンチップを用いて精製した。無血清の化学的に定められた培地で増殖したCHO−S細胞を、該直鎖化プラスミドで、リポフェクタミン2000試薬を用いてトランスフェクションした。48時間後、細胞を96ウェルプレートへ異なる濃度で(10000、5000、または2000細胞/ウェル)、600μg/mlハイグロマイシンB含有培地へ移した。薬剤耐性オリゴクローンを、ELISAによって下記の通りスクリーニングした:96ウェルプレートを100μlのヤギ抗マウスIgGFc(シグマ社(Sigma))でコーティングし、および一夜4℃にてインキュベートした。ウェルを洗浄し、および200μlの2%BSAを含むPBSTで室温にて1時間ブロッキングした。洗浄後、試料100μlを1%BSA含有PBSTで希釈し、ウェルに加え、1時間インキュベートし、洗浄しおよび次いでHRP複合体化ヤギ抗マウスIgG(Fc特異的)(シグマ社)と1時間室温にてインキュベートした。ウェルを洗浄し、およびTMB基質を添加しおよび3から5分間室温にてインキュベートした。吸光度を450nmにて測定し、および既知量の精製マウスIgGまたはD2FcγRIIa−IgG2aFcを用いて標準曲線を作成した。上清試料もまたSDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングによって分析した。SDS−PAGEについて、試料を、2−MEを含むかまたは含まない試料緩衝液に再懸濁し、および95℃にて10分間加熱し、および氷上で冷却した。試料を次いで8%SDS−PAGEゲルで分離した。ゲルを次いでクマシーブルー(CoomassieBlue)で取扱説明書にしたがって染色した。ウェスタンブロッティングについては、上記の通り試料を調製しおよびSDS−PAGEで分離し、および次いでイムノブロット(ImmunoBlot)PVDF膜(バイオラッド社(Bio−Rad))に1時間100Vにて移した。膜を1時間5%スキムミルクを含むPBS/0.1%ツイーン(Tween)−20でブロックし、および0.2(g/mlヤギ抗ヒトFcγRIIa抗体(R&Dシステムズ社(R&D Systems))と共に1時間、およびHRP複合体化ウサギ抗ヤギIgG(シグマ社の完全分子)と共に1時間インキュベートし,次いでTMB基質(ベクター・ラボラトリーズ社(Vector Laboratories Inc)を用いて発色した。2回目の限界希釈をより低い別の濃度(0.25,および0.5細胞/ウェル)にて600μg/mlハイグロマイシンBを含む培地で実施した。2から3週間後、薬剤耐性クローンを再び組み換えタンパク質産生についてELISAによって評価し、およびウェスタンブロットによって試験した。
【0117】
D2タンパク質の精製
CHO形質転換体を振とうフラスコで37℃にて増殖させた。細胞が密度1.5から2x106細胞/mlに達した際、30℃にて7から10日間連続かくはんしながらインキュベートした。上清を回収し、3000xgで30分間4℃にて遠心分離し、および一連の異なるオートクレーブ処理メンブレンフィルター孔径(5.0から0.2μm)を通してろ過した。バイオマックス(BioMax)10メンブレンを用いたタンジェンシャルフローろ過(ミリポア社(Millipore))を用いて上清を濃縮しおよび20mM Na−P/148mM NaCl、pH7.8への緩衝液交換を実施した。材料を次いで結合緩衝液(20mM Na−P&3M NaCl、pH7.8)で9倍希釈し、およびプロテインAカラム(GEヘルスケア社(GE Heathcare))に4ml/分間一夜4℃にて負荷した。カラムを結合緩衝液(20容5ml/分にて)で洗浄し、およびタンパク質を0.1Mクエン酸pH4.0で2ml/分にて溶出した。溶出した材料を中性へpH調整し、および4Lの10mM Na−P、pH6.0に対して4℃にて一夜透析した。それを次いでマクロプレップ40μmセラミックヒドロキシアパタイトII型(CHTII)カラム(バイオラッド社(Bio−Rad))に負荷した。カラムを結合緩衝液で洗浄後、タンパク質を10mM Na−P、500mM NaCl、pH6.0で溶出した(全操作を流速5ml/分にて。溶出した材料を次いで3X4LのPBS、pH7.4に対して4℃にて透析した。タンパク質濃度を280nMでの吸収によって測定した(吸光係数1.34)。図22Aは最終精製材料のSDS−PAGE分析を示す。ウェスタンブロット分析を図22Bに示す。
【0118】
D2タンパク質は免疫複合体誘導MC/9肥満細胞活性化をブロックする
D2タンパク質をFcγ受容体の免疫複合体媒介性活性化をブロックする能力についてMC/9肥満細胞アッセイで試験した。MC/9は、免疫複合体への曝露後に活性化されおよびTNF−αを放出するFcγR陽性マウス肥満細胞株である。オボアルブミン−抗オボアルブミン抗体の免疫複合体(OVA IC)10(gを精製D2と1時間室温にてインキュベートした。OVA ICをまた精製BIF(実施例1および2に記載の通りFcタグを欠くD2の変異体)および精製M2タンパク質(修飾IgG2aFcドメインと融合したFcγRIIaサブユニットを1個だけ含むD2の変異体)とインキュベートした。混合物を次いで、2x105MC/9細胞の入った96ウェルプレートへ加え、および一夜37℃にてインキュベートした。上清を回収し、およびTNF−αの量を市販のELISAキットによって測定した。結果を図23に示し、ここで処理の非存在下で放出されたTNF−αの量を100%と定めている。D2およびM2タンパク質およびrsFcγRIIa二量体ポリペプチドはOVA IC媒介性活性化を完全に抑制する。D2タンパク質は、しかし、非Fcタグ化二量体よりも3倍強力であり、およびFcタグ化単量体(M2)よりも12倍強力である。
【0119】
D2タンパク質はFcγRの免疫複合体媒介活性化を好中球活性化アッセイにおいてブロックする
D2タンパク質をまた、Fcγ受容体の免疫複合体媒介性活性化をブロックする能力について好中球活性化アッセイで試験した。休止ヒト好中球はFcγRIIaおよびFcγRIIIbの両方を発現し、および免疫複合体による活性化に際してL−セレクチン(CD62L)の細胞表面発現を速やかに失う。OVA IC(100μg/ml)を単独で、または精製D2、M2またはBIFの滴定された量と1時間氷上でインキュベートした。混合物を次いで、デキストラン沈降およびフィコール(Ficoll)密度勾配遠心分離によって末梢血から精製されたヒト好中球2x105/ウェルの入った96ウェルプレートへ加えた。プレートを37℃にて15分間インキュベートし、および反応を等容の氷冷緩衝液の添加によって停止し、続いて氷上で5分間インキュベートした。好中球細胞表面上のCD62Lのレベルをフローサイトメトリーによって測定した。結果を図24に示し、ここでOVA IC単独の存在下でCD62Lを発現している細胞の割合を100%パーセント活性化と定め、およびCD62Lを発現している未処理細胞のパーセントを0%活性化と定めている。BIFおよびM2タンパク質は同様の抑制活性を示した。D2タンパク質は、しかし、約6倍強力である。
【0120】
D2タンパク質はFcγRの免疫複合体媒性活性化を血小板活性化アッセイにおいてブロックする
さらに、D2タンパク質を、Fcγ受容体の免疫複合体媒介性活性化をブロックする能力について血小板活性化アッセイで試験した。典型的な免疫複合体の熱凝集IgG(HAGG)への血小板の曝露は、FcγRIIaを介する活性化を結果として生じ、P−セレクチン(CD62P)のアップレギュレーションに繋がる。熱凝集IgG(HAGG)をさまざまな濃度のD2タンパク質(またはM2またはBIF)と1時間4℃にてインキュベートした。混合物を次いで、予め洗浄しおよび1mM EDTA添加タイロード/ヘペス(Tyrodes/Hepes)緩衝液に再懸濁したヒト血小板3x107個の入った96ウェルプレートへ加えた。30分間室温にてインキュベート後、細胞を洗浄し、固定し、およびCD62PおよびGPIIb(CD41)発現について標準法によって染色し、およびFACSスキャンフローサイトメーターで分析した。活性化アッセイの結果を図25に示す。HAGG単独での処理後の活性化血小板(CD41およびCD62Pの両方について陽性)の割合を100%と定めた。BIFおよびM2タンパク質は同様の抑制活性を示した。D2タンパク質は、しかし、約3倍強力である。
【0121】
考察
D2タンパク質は、Fc受容体結合および補体固定を低減するためにアミノ酸4個で変異しているマウスIgG2aFcドメインと融合したFcγRIIaタンパク質の2個のヘッドトゥーテールの細胞外ドメインを含む。D2タンパク質はMC/9肥満細胞の免疫複合体媒介活性化を効果的にブロックし、および好中球活性化アッセイおよび血小板活性化アッセイの両方においてFcγRの免疫複合体媒介活性化を効果的にブロックした。そのようなFc結合二量体融合タンパク質はしたがって、in vivoで免疫複合体媒介性疾患の有効なインヒビターでありうる。
【実施例5】
【0122】
ヘテロ二量体Fc受容体ポリペプチドの設計および発現
材料および方法
FcγRIIa−FcγRIIIヘテロ二量体発現ベクターの構築
FcγRIIaおよびFcγRIIIのFc結合領域は、cDNAテンプレートから、実施例1に記載される適当なプライマーを用いて、独立してPCR増幅されうる。増幅される領域は、外部ドメイン1および外部ドメイン2リンカー(すなわちD1/D2結合部)の残基、およびBC、C'EおよびFGループといった、Fc結合領域の既知の特徴的残基およびモチーフを包含する。これらのFc結合領域についてポリヌクレオチド配列は当業者によく知られている。
【0123】
平滑末端PCR産物は、T4DNAリガーゼを用いて、ベクターpPIC9(インビトロジェン・ライフテクノロジーズ(Invitrogen,Life Technologies))へ、DNAポリメラーゼのクレノー(Klenow)断片で埋めたEcoRI部位にてライゲーションされうる。動作可能に融合されたFcγRIIa−FcγRIIIヘテロ二量体ポリヌクレオチドは、実施例1に記載されたのと同様のPCRおよびクローニング法を用いて、これらの増幅産物から作製されうる。挿入サイズおよび方向は、分析的制限酵素消化またはDNA配列決定によって確認されうる。
【0124】
動作可能に融合されたFcγRIIa−FcγRIIIヘテロ二量体ポリヌクレオチドは、さまざまな発現ベクターへクローニングされうる。たとえば、FcγRIIa−FcγRIIIヘテロ二量体ポリヌクレオチドは、複数クローニング部位のBamHI部位がまずBamHIでの消化によって除去されDNAポリメラーゼIのクレノー(Klenow)断片および再ライゲーションを用いて埋めた修飾pBACPAK9(インビトロジェン・ライフテク(Invitrogen Life Tech))のEcoRI/XbaI部位へライゲーションされうる。挿入サイズはEcoRI/XbaI消化によって定められ、および多量体化BamHI断片の正しい方向はPvuII消化によって標準手順を用いてスクリーニングされうる。
【0125】
代替的に、FcγRIIa−FcγRIIIヘテロ二量体ポリヌクレオチドは、哺乳類発現ベクターへクローニングされうる。たとえば、ゲートウェイ(Gateway)LRクロナーゼ反応(インビトロジェン・ライフテクノロジーズ(Invitrogen,Life Technologies))を用いて、任意に融合された多量体Fc受容体ポリヌクレオチド断片を、ゲートウェイ(商標)・リーディングフレームAカセット(インビトロジェン・ライフテクノロジーズ)を適用した発現ベクターpAPEX3P(エバンズ(Evans)他,1995,およびクリスチャンセン(Christiansen)他,1996)へ導入して、融合Fc受容体多量体を発現する哺乳類発現ベクターを与えることができる。同様に、ゲートウェイLRクロナーゼ反応を、任意に融合された多量体Fc受容体ポリヌクレオチド断片を、ゲートウェイ・リーディングフレームAカセット(インビトロジェン・ライフテクノロジーズ)を適用した発現ベクターpIRESneo(クローンテック社(Clontech))へ導入するのに用いることができる。
【0126】
考察
Fc結合領域の多量体化は、Fcドメインとのより高い結合活性相互作用を有する分子を生じる。多量体中の各単量体は、免疫グロブリンのFcドメインと別々に相互作用でき、より高い結合活性を生じる。異なるFc受容体に由来するFc結合ドメインを含む多量体が作製されうる。たとえば、FcγRI、FgγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、Fc(RIおよびFc(RIのFc結合領域の組み合わせから多量体が形成されうる。ヘテロ二量体もまた、これらのFc結合領域の組み合わせから形成されうる。たとえば、FcγRIIa−FcγRIII、FcγRIIa−FcγRI、およびFcγRI−FcγRIIIヘテロ二量体、およびFc結合領域の他の組み合わせから成るヘテロ二量体が形成されうる。
【0127】
いくつかのFc受容体のFc結合ドメインが突然変異誘発または結晶学によって定められている(IgGおよびFcγR:マクスウェル(Maxwell)他1999,ラダエフ(Radaev)他,2001,ゾンダーマン(Sondermann)他,2000,ヒューレット(Hulett)他,1988,ヒューレット他,1991,ヒューレット他,1994,ヒューレット他,1995;IgEおよびFc(RI:ガーマン(Garman)他,2000;IgAおよびFcαRI相互作用:ワインズ(Wines)他,2001,ハー(Herr)他,2003)。さらに、類似FcR配列の比較およびFc受容体構造の比較分析が実施されている(ゾンダーマン(Sondermann)他,2001)。これらの分析は、異なるFc受容体の、関連する明瞭に定められたセグメントは、それらのリガンドと相互作用できることを示す。さらに、結晶分析は、これをFcγRIIaおよびIgG相互作用について国際特許明細書第WO2006/133486号において、FcγRIIIおよびIgGの結晶分析と比較して実証している(ラダエフ(Radaev)他2001、ゾンダーマン(Sonderman)他、2001)。
【0128】
明らかに、これらのデータは、他のFc受容体の突然変異誘発実験と合わせて、これらの関連するFc受容体の外部ドメイン1および外部ドメイン2の間の連結領域に由来するセグメント、および別の受容体の第2のドメインのBC、C'EおよびFGループに由来するセグメントは、それらのそれぞれのリガンドと相互作用することを示す。他のポリペプチドへのそのようなFc結合領域の組み込みは、新しいポリペプチドにその免疫グロブリン型に対する特異性を与えることができる。この目的のために、ヒューレット(Hulett)他,1991,ヒューレット他,1995,およびマクスウェル(Maxwell)他,1999は、そうでなければIgGを結合できないタンパク質へのIgG結合領域の付加は、IgGに対する特異性を獲得したことを実証している。同様に、国際特許明細書第WO96/08512号に以前に記載された通り、IgEを結合できないタンパク質への一連のIgE結合配列の挿入は、IgE特異性を有するタンパク質キメラを結果として生じたことが観察されている。したがって、同様の方法で、FcγRIまたはFcγRIII由来の、IgGと相互作用するFc結合領域の、ポリペプチドまたはタンパク質への包含は、IgG結合機能をそのポリペプチドまたはタンパク質に与えることができ、または同様に、CD89またはFcαRI由来の、IgAと相互作用するFc結合領域の、ポリペプチドまたはタンパク質への包含は、IgA結合機能をそのポリペプチドまたはタンパク質に与えることができることが予測される。そのような配列は、IgAと相互作用することが知られているCD89のFcαRIの第1の細胞外ドメインのループを含むことができ、そのようなループはドメイン1のBC、C'EおよびFGループを含む。重要な残基は、アミノ酸35、52および81−86を含む(ワインズ(Wines)他,2001,ハー(Herr)他,2003)。この方法で、免疫グロブリンの異なるクラスと相互作用する能力のあるセグメントを含む受容体ポリペプチドおよびタンパク質が可能である。
【0129】
本明細書を介して、「含む」の語、または三人称または現在分詞といった変形は表示された1つの要素、整数または段階、または要素、整数または段階の群の包含を意味するが、しかし任意の他の1つの要素、整数または段階、または要素、整数または段階の群の除外を意味しないと理解される。
【0130】
本明細書で言及されるすべての文献は参照により本開示に含まれる。本明細書に含まれている文書、法令、材料、器具、品目などの任意の考察は本発明のコンテクストを提供する目的のためだけである。これらの事柄のいずれかまたはすべてが先行技術基礎の一部をなすかまたは、オーストラリアまたは別の場所で本出願の各請求項の優先日以前に存在した本発明に関連する分野の一般常識であったことの承認とは取られない。
【0131】
具体的な実施形態に示される通り、幅広く記載された本発明の概念または範囲を離れることなく多数の変形および/または修飾が本発明に実施されうることを当業者は理解する。本実施形態は、したがって、すべての面で例証と考えられおよび限定的でないと考えられる。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血球Fcγ受容体(FcγR)および免疫グロブリンG(IgG)の相互作用
を阻害できる可溶性多量体ポリペプチドであって、ヘッドトゥーテール配置で結合
した2つ以上のFc結合領域を含み、そのうち少なくとも1つは、FcγR型受容
体に由来し、かつ、前記Fc結合領域を結合する能力が実質的に無くおよび前記ポ
リペプチドの二量体化を可能にする修飾Fcドメインを含む、前記ペプチド。
【請求項2】
結合したFc結合領域を2個だけ含み、そのうち少なくとも1つがFcγR型受
容体に由来する、請求項1のポリペプチド。
【請求項3】
前記FcγR型受容体に由来する少なくとも1つのFc結合領域がFcγRII
型受容体に由来する、請求項1または2のポリペプチド。
【請求項4】
前記少なくとも1つのFc結合領域がFcγRIIaに由来する、請求項3のポ
リペプチド。
【請求項5】
前記結合したFc結合領域のそれぞれがFcγR型受容体に由来する、請求項1
から4のいずれか1項のポリペプチド。
【請求項6】
前記結合したFc結合領域のそれぞれが同一のFcγRII型受容体に由来する
、請求項5のポリペプチド。
【請求項7】
前記Fc結合領域が1から20個のアミノ酸を含むリンカーを介して結合する、
請求項1から6のいずれか1項のポリペプチド。
【請求項8】
前記修飾Fcドメインが変化したエフェクター機能を示す、請求項1から7のい
ずれか1項のポリペプチド。
【請求項9】
前記FcドメインがIgG1に由来しおよびLeu234および/またはLeu235
の置換によって修飾されている、請求項1から8のいずれか1項のポリペプチド。
【請求項10】
前記FcドメインがIgG2aに由来しおよびLeu235、Glu318、Lys3
20およびLys322のうちいずれか1つ以上の置換によって修飾されている、請求
項1から8のいずれか1項のポリペプチド。
【請求項11】
前記FcドメインがIgG4に由来しおよび228、233、234、235お
よび236位のアミノ酸のうちいずれか1つ以上のアミノ酸修飾によって修飾さ
れている、請求項1から8のいずれか1項のポリペプチド。
【請求項12】
さらにキャリヤータンパク質を含む、請求項1から11のいずれか1項のポリペ
プチド。
【請求項13】
前記キャリヤータンパク質がヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項12
のポリペプチド。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のポリペプチドの二量体を含む可溶性多
量体タンパク質。
【請求項15】
Fc融合二量体タンパク質の形の請求項14のタンパク質であって、Fc融合二
量体タンパク質が第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、各ポ
リペプチド鎖が(i)ヘッドトゥーテール配置で結合した、FcγRIIaに由来
する2つのFc結合領域および(ii)実質的にFcγRIIa結合能が無くおよ
び第1および第2のポリペプチド鎖の二量体化を可能にする修飾Fcドメインを含
む、前記タンパク質。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか1項のポリペプチドまたは請求項14もしくは15
のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子。
【請求項17】
発現カセットまたは発現ベクターに存在する、請求項16のポリヌクレオチド分
子。
【請求項18】
請求項16または17のポリヌクレオチド分子を含む組み換え宿主細胞。
【請求項19】
下記の段階:
(i) 請求項16または17の前記ポリヌクレオチド分子を含む組み換え宿主
細胞を提供すること、
(ii) 前記宿主細胞を適当な培地でおよび前記ポリペプチドまたはタンパク
質の発現に適した条件下で培養すること、および
(iii) 前記ポリペプチドまたはタンパク質を培養物から、および、任意に
培地から単離すること、を含むポリペプチドまたはタンパク質を作製する方法。
【請求項20】
炎症性疾患について被験体を治療する方法であって、前記被験体に請求項1から
12のいずれか1項のポリペプチドまたは請求項14または15のタンパク質を、
薬学的にまたは獣医学的に許容可能なキャリヤーまたは添加物と任意に組み合わせ
て投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
前記炎症性疾患が免疫複合体(IC)媒介性炎症性疾患である、請求項20の
方法。
【請求項22】
前記IC媒介性炎症性疾患が、関節リウマチ(RA)、免疫性血小板減少性紫斑
病(ITP)、全身性エリテマトーサス(SLE)、糸球体腎炎ヘパリン誘導性血
小板減少血栓症候群(HITTS)から成る群から選択される、請求項21の方法

【請求項23】
下記の段階:
(i)適当な基材に結合した、請求項1から13のいずれか1項に記載のポリペ
プチドまたは請求項14または15に記載のタンパク質を提供すること、
(ii)前記被験体から採取した血液を、ex vivoで前記基材に結合した
ポリペプチドまたはタンパク質と接触させることによって、前記血液中に存在する
ICが前記ポリペプチドまたはタンパク質を介して基材に結合するように処理する
こと、
(iii)処理された血液を基材から分離すること、および
(iv)その後、処理された血液を被験体へ戻すこと、を含む、免疫複合体媒介
性炎症性疾患に罹患した被験体から循環性免疫複合体(IC)を除去する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2010−512154(P2010−512154A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540549(P2009−540549)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001934
【国際公開番号】WO2008/070927
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509037961)ズップレモル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】