説明

修飾L−核酸

【課題】修飾L-核酸、その使用、ならびにその調製方法の提供。
【解決手段】L-核酸部分および非L-核酸部分を含む修飾L-核酸であって、L-核酸部分が非L-核酸部分にコンジュゲートされ、L-核酸部分の非L-核酸部分とのコンジュゲーションによって、L-核酸部分のみを含むL-核酸と比較して、生物外への排出の遅延を導き、L-核酸部分がシュピーゲルマーである、修飾L-核酸。診断剤、医薬品を調製するための添加剤としての上記の修飾L-核酸の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾L-核酸、その使用、ならびにその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的小さな有機分子の使用の他に、新規の治療概念の開発は、モノクローナル抗体、ペプチド、および機能的核酸、すなわち、標的構造に特異的に結合する核酸に益々頼っている。これらの機能的核酸の典型的な代表はいわゆるアプタマーであり、これは、多数の異なる生体分子に対して既に開発されている。それにより、D-核酸ライブラリーから出発し、その標的構造に対する特に高い親和性によって区別される一つまたは複数の核酸分子、いわゆるアプタマーが、インビトロ選択によって数段階で単離される。そのようなアプタマーの調製方法は、例えば、欧州特許出願第0 533 838号(特許文献1)に記載されている。
【0003】
薬理学においては、投与された薬学的活性剤の生物学的な半減期として表わされる、安定性および生物学的利用能の問題は十分に周知である。投与された薬学的活性な物質の最適な効果を可能とする生物学的半減期を達成するための戦略は、一方では、薬学的活性剤の適切な修飾、他方では、投与の適切な形態の開発に焦点を当てている。前者の場合には、生物学的半減期、すなわち治療すべき生物内での滞留時間が増大した化合物がその薬理学的特性、換言すれば、その有効性を失わないことに加え、出来る限り副作用を起こさないことが保証されなければならないというかなりの制限が存在する。
【0004】
前記したアプタマーとは別に、いわゆるシュピーゲルマー(spiegelmer)においては更なる形態の機能的核酸が存在する。シュピーゲルマーも特異的に標的配列に結合し、ここで、それはD-核酸ライブラリーを用いて標的のエナンチオマー形態に対して選択されるが、その際、それに結合するD-核酸はL-核酸として調製され、キラル相互関係の結果、これらは真の標的に結合することができ、選択プロセスで用いたそのエナンチオマー形態には結合することができない。そのようなシュピーゲルマーの調製方法は、例えば、国際特許出願、国際公開公報第98/08856号(特許文献2)に記載されている。
【0005】
純粋に化学的に見れば、シュピーゲルマーは、L-ヌクレオチドからのその組立ての結果、天然酵素によっては実質的に分解できないL-核酸、典型的にはL-オリゴヌクレオチドである。標的特異性とは別に、この特徴によって、それらが、例えば生物学的試料の分析、診断および治療などのほとんどの様々な領域で用いられるのに適格となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願第0 533 838号
【特許文献2】国際公開公報第98/08856号
【発明の概要】
【0007】
診断並びに治療、特に、生物で適用されるものにおいて応用を有する他の化学化合物と同様に、シュピーゲルマーが長時間にわたって生物内に存在し、かつ有効であることを可能とする形態へ、シュピーゲルマーを変換する必要性が存在する。それにより、シュピーゲルマーに特徴的な標的分子特異性が修飾によって影響されないことが、本発明の基礎をなす更なる目的である。
【0008】
本発明によると、前記目的は、L-核酸部分および非L-核酸部分を含み、L-核酸部分と非L-核酸部分とのコンジュゲーションが、L-核酸部分のみを含むL-核酸と比較して、各々、生物からの排出の遅延および腎臓クリアランスの遅延を導くL-核酸によって、第一の局面において解決される。
【0009】
第二の局面において、本発明の基礎をなす目的は、L-核酸部分および非L-核酸部分を含み、非L-核酸部分とのコンジュゲーションは、L-核酸部分のみを含むL-核酸と比較して、生物における滞留時間の増大を導く修飾L-核酸によって解決される。
【0010】
第三の局面において、本発明の基礎をなす目的は、修飾L-核酸、特に、L-核酸部分および非L-核酸部分を含み、非L-核酸部分が約300Daを超える分子量、好ましくは約20,000Daを超える分子量、より好ましくは約40,000Daを超える分子量を有する、本発明の修飾L-核酸によって解決される。
【0011】
本発明の修飾L-核酸の1つの態様において、L-核酸部分は非L-核酸部分とコンジュゲートしており、非L-核酸部分は約300Daを超える分子量、好ましくは約20,000Daを超える分子量、およびより好ましくは約40,000Daを超える分子量を有することが意図される。
【0012】
本発明の修飾L-核酸の更なる態様においては、修飾L-核酸は約600Daから500,000Da、好ましくは約10,000Daから400,000Da、より好ましくは約50,000Daから300,000Daの分子量を有することが意図される。
【0013】
本発明の修飾L-核酸のなお更なる態様において、L-核酸部分は300Daから50,000Da、好ましくは5,000Daから25,000Da、より好ましくは7,000Daから15,000Daの分子量を有することを意図する。
【0014】
最後に、本発明の修飾L-核酸の態様において、非L-核酸部分は、L-核酸部分の以下の成分の1つに存在するか、またはそれに結合した、L-核酸部分の官能基を介してL-核酸部分に直接的または間接的に連結され、官能基は末端および非末端リン酸、末端および非末端糖部分、ならびに天然および非天然プリン塩基、ならびに天然および非天然ピリミジン塩基からなる群より選択されることが意図される。
【0015】
本発明の修飾L-核酸の1つの態様において、非L-核酸部分とL-核酸部分との結合は、L-核酸部分の糖部分の一つまたは複数の2'-OH-、3'-OH-および/もしくは5'-OH-基またはその誘導体を介して起こることが意図される。
【0016】
本発明の修飾L-核酸の更なる態様において、結合は、ピリミジン塩基の5位または6位の少なくとも1つを介して起こることが意図される。
【0017】
本発明の修飾L-核酸のなお更なる態様において、結合は、プリン塩基の8位の少なくとも1つを介して起こることが意図される。
【0018】
最後に、本発明の修飾L-核酸の1つの態様において、結合は、プリンおよび/もしくはピリミジン塩基ならびに/または脱塩基位置の、環外および/または環内のアミン基および/またはケト基の一つまたは複数で起こることが意図される。
【0019】
本発明の修飾L-核酸の1つの態様において、非核酸部分は、直鎖ポリ(エチレン)グリコール、分岐ポリ(エチレン)グリコール、ヒドロキシエチルデンプン、ペプチド、タンパク質、多糖、ステロール、ポリオキシプロピレン、ポリオキシアミデート、ポリ(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミン、正確なポリエチレングリコールからなる群より選択されることが意図される。
【0020】
本発明の修飾L-核酸の1つの態様において、L-核酸部分と非L-核酸部分との間にリンカーが配置されることが意図される。
【0021】
本発明の修飾L-核酸の更なる態様において、L-核酸部分は配列番号:1の核酸を含むことが意図される。
【0022】
本発明の修飾L-核酸の好ましい態様において、L-核酸部分はリンカーとして5'-OH末端に6-アミノヘキシルリン酸を有することが意図される。
【0023】
本発明の修飾L-核酸の特に好ましい態様において、ポリエチレングリコールがアミノヘキシルリン酸リンカーの遊離アミンにカップリングされることが意図される。
【0024】
第四の局面において、本目的は、診断または診断手段として本発明のL-核酸を用いることによって解決される。
【0025】
第五の局面において、本発明の基礎をなす目的は、医薬品を調製するための本発明の修飾L-核酸の使用によって解決される。
【0026】
第六の局面において、本目的は、修飾L-核酸、特に、L-核酸部分および非L-核酸部分を含む本発明の核酸を提供する方法であって、以下の段階が意図される方法によって解決される:
a)修飾L-核酸の、L-核酸部分またはその一部を形成するL-核酸を提供する段階;
b)修飾された非L-核酸の、非L-核酸部分またはその部分を形成する非L-核酸を提供する段階;
c)a)からのL-核酸およびb)からの非L-核酸を反応させる段階;ならびに
d)段階c)で得られた修飾L-核酸を任意で単離する段階。
【0027】
本発明の前記方法の1つの態様において、段階a)におけるL-核酸はリンカーを含むことが意図される。
【0028】
本発明の方法の更なる態様において、段階a)においてL-核酸を提供した後に、それにリンカーを設けることが意図される。
【0029】
さらに、非L-核酸部分がリンカーを含むこと、および段階b)において非L-核酸を提供した後に、それにリンカーを設けることは、それぞれ本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】6つの炭素原子からなる直鎖スペーサー(「距離保持手段」)ならびに末端アミノ基および末端リン酸残基を有するヘキシルアミンリンカーを示す。Rで示される置換は、各々核酸、および修飾L-核酸のL-核酸部分も示し得る。アミノ基を介し、非L-核酸部分はL-核酸部分にカップリングすることができ、従って本発明の修飾L-核酸が形成される。
【図2】さらなるリンカーを示し、ここで(2)、(4)および(6)に示す構造は(1)、(3)および(5)によるリンカーに対応し、後者においては、残基Rを備えるリン酸部分は好ましくはL-核酸部分を表わし、修飾L-核酸の非L-核酸部分は、Xと呼ばれる官能基を介してL-核酸にカップリングされる。用語「オリゴ」は例示的にオリゴヌクレオチドを表わし、オリゴおよびL-核酸またはL-核酸部分は、各々本明細書において一般的にL-ポリヌクレオチドであってよいことは本発明の範囲内である。ここでは、種々の置換基は、個々に、各々相互に独立して以下の反応性基を指す。 X=OH、NH2、HS、Hal、CHO、COOH Y=O、NH、NMe、S、CH2 Z1、Z2、Z3、Z4、Z5およびZ6=H、Me、アルキル、HO(CH2)n、HO、H2N(CH2)n、H2N、F、(nは1から20の間の整数であり、アルキルは好ましくは1個〜20個の炭素原子、より好ましくは1個〜4個の炭素原子を持つ直鎖および分岐状炭化水素鎖、および/または-(CH2)nH、-CH[(CH2)nH][(CH2)mH]、-C[(CH2)nH][(CH2)mH][(CH2)lH]、-(CH2)n(CH)m[(CH2)lH][(CH2)kH]、-(CH2)n(C)m[(CH2)lH][(CH2)kH][(CH2)jH]、ここで、n、m、l、kおよびjは、相互に独立して、1から8の間の整数であり、好ましくは1個〜4個の炭素原子である。
【図3】核酸塩基の異なる位置にカップリングした異なるリンカーの図である。それにより、各場合に示されるヌクレオシドの糖部分は、各々、リボース、デオキシリボースまたは修飾リボースおよび修飾デオキシリボースであってよく、残基Xは、H、HO、H2N、MeO、EtOHまたはアルコキシであってよいことは注目に値する。アルコキシは、特に、1個〜20個の炭素原子、好ましくは1個〜4個の炭素原子を持つ直鎖および分岐状オキシ炭化水素鎖、および/または-O(CH2)nH、-CH[(CH2)nH][(CH2)mH]、-OC[(CH2)nH][(CH2)mH][(CH2)lH]、-O(CH2)n(CH)m[(CH2)lH][(CH2)kH]、-(CH2)n(C)m[(CH2)lH][(CH2)kH][(CH2)jH]を指し、ここで、n、m、l、kおよびjは、相互に独立して、1から8の間の整数であり、好ましくは1個〜4個の炭素原子である。実際のリンカー構造は示された全ての4つのヌクレオシド(1)、(2)、(3)および(4)においてX1-[X]nであり、nは0から20の間の整数である。X1はHO、H2N、HRN、HS、SSR、Hal、CHO、COOH、COORおよびCOHalからなる群より選択される官能基を表わす。構造式(5〜12)として示されるリンカーにおいて、nは同様に0から20の間の整数であり、Zは、他の置換基から独立して、O、NH、NRまたはSいずれかを意味し、ここで、Rは本明細書で定義されるアルキルを表わす。
【図4】各々、ピリミジンヌクレオシドおよびヌクレオチドの5位における可能なリンカーを示す。残基R'、R''およびR'''に関しては、基本的に図5の文脈で本明細書において述べられたことが適用される。リンカーRは構造-[Y]n-X1を有し、好ましくは構造(2)〜(9)に示した形態をとることができ、ここで、Zは他の置換基の選択とは独立して、ここでもO、NH、NHRまたはSを意味してもよく、nは1から20の間の整数であり得る。官能基X1は、好ましくは、HO、H2N、HRN、HS、SSR、Hal、CHO、COOH、COOR、COHalを有する基から選択される。
【図5】1において、その環外アミンにおいて異なるリンカー構造を有することができるシトシンの基本的構造を示す。それに関して、R'はL-核酸またはL-ポリヌクレオチド、OHまたはリン酸を指し、R''はL-核酸またはL-ポリヌクレオチド、OHまたはリン酸を指し、R'''はH、OH、OMe、OEt、NH2をいう。それにより残基Rは基本的構造-[Y]n-X1を有するリンカーを指し、かつ(2)〜(9)で示された構造式を有することができ、ここでZは、O、NH、NR、Sであり、nは1から20の間の整数であり得る。官能基X1は、好ましくは、HO、H2N、HRN、HS、SSR、Hal、CHO、COOH、COOR、COHalを有する基から選択される。
【図6】PEG-NHSと、リンカーを備えたL-核酸との反応による本発明の修飾L-核酸の形成を示す。カップリングの成功後、修飾L-核酸が存在し、これは、この場合には非L-核酸部分としてPEGを含み、かつ、この実際の場合には、L-核酸としてオリゴヌクレオチドを含み、ここで、各々アミノ基を担持するリンカーまたはスペーサーが双方の間に挿入され、それはリンカーおよびPEGの間を結合する酸アミドとなる。修飾L-核酸とは別に、PEGから切断されたN-ヒドロキシスクシンイミドがさらなる反応生成物として得られる。可能な残基Rとして、H、CH3および、一般に1個〜20個の長さのアルキル鎖が好ましい。官能基は、原則的に、本明細書中にて先に説明したいずれか一つの反応の生成物であり得る。さらなる図面、特に図2および図3に関連して記載されたリンカーの態様もこの文脈で適用される。同様のことが、置換基および式中に示されたnのような制御変数に適用される。
【図7】異なるリンカーでの異なるPEG誘導体の変換を示す。ここで、2つの反応(1)および(2)は、反応(1)において、PEGにカルボキシル基が存在し、反応(2)においては、リンカーを備えたL-オリゴヌクレオチドにカルボキシル基が存在する点においてのみ異なる。各対応する反応パートナーの官能基、すなわち、反応(1)の場合には、リンカーを備えたL-核酸、および反応(2)の場合には、アミン基を備えたPEG。従って、もし一つまたは複数の挿入されたリンカーの参加により適応可能であれば、原則的に前記した反応性基が、関連する全ての反応パートナーに存在し得るという、L-核酸部分と非L-核酸部分との間で可能である前記の異なる反応の文脈においてなされた記載が確認される。最後に得られる構造は、酸アミド基がPEGに存在する反応(1)の場合、および酸アミド結合がリンカーおよびオリゴヌクレオチド(すなわち、L-核酸)からの構築物に存在する反応(2)の場合のように、対応して相互に異なるであろう。置換基Rに関しては、図6に関して述べたことが対応して適応される。
【図8】各々、非L-核酸部分またはL-核酸部分のいずれかに結合したチオエステルとハロゲン化物との反応を示す。反応(1)〜(3)において、ここでは全ての図面においてオリゴと省略されるL-核酸にリンカーを設けること、および前記リンカーが、例えば、I、Br、Clのようなハロゲン化物を担持することが意図される。この誘導体化されたL-核酸は、これに際し、チオール基、好ましくは末端チオール基を備えたPEGと反応する。反応(1)の場合には、リンカーとPEGとの間にチオエーテル結合が生じるであろう。反応(2)に示すように、酸化により、スルホキシドまたはスルホンが各々形成され得る。また、(4)〜(6)の反応においては、チオールとハロゲン化物との間の反応が起こり、ここでこれらの場合において、L-核酸にはチオール基が備えられ、リンカーはハロゲン化物を担持する。それに対応して、化合物の形成が起こり、ここで、硫黄がL-核酸とリンカーとの間に配置され、それは反応(5)および(6)に示すように、再度、対応する誘導体まで酸化され得る。
【図9】チオール基を担持するリンカーを有する、そこではオリゴとして示されるL-核酸と、マレイミド基を備えたPEGとの反応を示す。反応生成物はチオエーテルである。
【図10】チオール基を担持するリンカーを設けたPEGと、リン酸基を担持するL-核酸との反応を示す。反応生成物はホスホチオエートである。
【図11】アミンを有するリンカーを備えたPEGと、リン酸残基を(適用可能であれば末端に)備えたL-核酸との反応を示す。反応生成物はホスホアミデートである。残基Rに関しては、図6の文脈で示されたことが適応される。
【図12】L-核酸の活性リン酸基、好ましくは末端リン酸基を用いる、反応性アミノ基または反応性チオール基それぞれのL-核酸への挿入を示す。ここでホスホルイミダゾリド(I)が最初の段階で作成され、これは、各々、エチレンジアミンを用いる反応(2)の場合には2-アミノエチレン-1-ホスホルアミデート(II)の形成を導き、またはシステアミンを用いる反応(3)の場合には2-チオエチレン-1-ホスホアミデート(III)を導く。その結果(II)および(III)による化合物は、非L-核酸、特に本明細書に開示したものと反応させることができる。
【図13】アミン基を担持するリンカーを有するL-核酸と、塩化スルホニル基を備えたPEGの反応を示す。反応生成物はスルホンアミドである。残基Rに関しては、図6の文脈で述べたことが適用される。
【図14】アミンを形成するアミン基を担持するリンカーを有するL-核酸と、エポキシド基を備えたPEGとの反応を示す。残基Rに関しては、図6の文脈で述べたことが適用される。
【図15】チオール基を備えたリンカーを有するL-核酸と、エポキシド基を備えたPEGとの反応を示す。反応生成物はチオエーテルである。
【図16】アミン基を担持するリンカーを有するL-核酸と、イソチオシアネート基を備えたPEGとの反応を示す。反応生成物はイソチオ尿素である。残基Rに関しては、図6で述べたことが適応される。
【図17】イソ尿素を形成するアミン基を担持するリンカーを有するL-核酸と、イソシアネート基を備えたPEGとの反応を示す。残基Rに関しては、図6で述べたことが適用される。
【図18】L-核酸、例えばヌクレオシドのリン酸基または糖部分、すなわち位置2'-OH、3'-OH、または5'-OHに直接由来し得る遊離OH基を担持するL-核酸と、イソシアネート基を備えたPEGとの反応を示す。または、OH基は適当なリンカーを介してL-核酸に連結させることができる。反応生成物はカルバメートである。
【図19】各場合において、PEGに示される場合の非L-核酸部分(反応(1));またはL-核酸部分(反応(2))のいずれかに存在するアミノ基と、アルデヒドまたはケト基との反応を示す。ここで、好ましくは、L-核酸部分は各反応性基、すなわち、アミノ酸基またはカルボニル基を担持するリンカーを有する。反応(1)の場合には、PEGはアミノ基を担持し、他方で、L-核酸はカルボニル基を担持するリンカーを有する。直接的に得られる反応生成物であるイミンは、その際還元によってアミンに変換される。反応(2)の場合には、カルボニル基を担持するPEGを、アミノ基を有するリンカーを担持するL-核酸と反応させる。反応生成物イミンを還元し、アミンを導く。残基Rに関しては、図6の文脈で述べたことが適用される。
【図20】チオール基を備えたリンカーを担持するL-核酸と、同様にチオール基を備えたPEGとの反応を示す。反応生成物は修飾L-核酸であり、これは、PEGとL-核酸との間にジスルフィド基、厳密にいえば、それに結合されたリンカーを有する、修飾L-核酸である。
【図21】カルボニル基を含むリンカーを担持するL-核酸と、ヒドラジン基を備えたPEGとの反応を示す。反応の第一の段階において、ヒドラゾンが得られ、その際、これは還元的に置換ヒドラジンに変換される。残基Rに関しては、図6の文脈で述べたことが適用される。
【図22】いわゆるジエノフィル基を備えたリンカーを担持するL-核酸での、共役ジエンを備えたPEGの変換を反応(1)で示す。ジエノフィルはC-C二重結合からなり、これはさらに、電子吸引基を含む置換基Zを有する。これらは好ましくはNO2、CH2Cl、COOR、CNまたはマレイミドであり得る。残基Rに関しては、図6の文脈で述べたことが適用される。この反応のため、PEGとリンカーを備えたL-核酸との間にヘキセネイル基を有する、修飾L-核酸の形成が起こる。反応(2)に示されたディールス-アルダー反応は、共役ジエンを担持するリンカーを含むL-核酸と反応する、置換基Zを持つジエノフィルを有するPEGから出発する。置換基Zに関しては、反応(1)の文脈で述べたことが適用される。また、この反応(2)における反応生成物は、ヘキセネイル基を介して連結されたL-核酸コンジュゲートである。
【図23】用いた分岐状および直鎖状mPEG-NHSエステルの構造を示す。
【図24】核酸塩基の代わりに、水素原子または一つもしくは複数の任意で異なるリンカー構造のいずれかを有し得る、脱塩基L-ヌクレオシドの基本的組み立てを(1)に示す。ここで、R'はL-核酸またはL-ポリヌクレオチド、OHまたはリン酸を示し、R'''はL-核酸またはL-ポリヌクレオチド、OHまたはリン酸を示し、XはH、OH、OMe、OEt、NH2を示す。残基Rは核酸塩基の代わりの水素原子、または(2)〜(8)に示した構造式を有し得るリンカーのいずれかを示し、ここで、ZはCH2、O、NH、NR、Sであり、nは1から20の間の整数であり得る。官能基X1は、好ましくは、HO、H2N、HRN、HS、SSR、Hal、CHO、COOH、COOR、COHalを有する群から選択される。
【図25】雄精巣摘除ラットにおける、GnRHに結合するPEG化DNAシュピーゲルマーの活性試験を示す。
【図26a】インビトロにおける、GnRHに結合するPEG化DNAシュピーゲルマーの活性試験を示す。
【図26b】インビトロにおける、GnRHに結合する非PEG化DNAシュピーゲルマーおよびPEG化DNAシュピーゲルマーの活性試験を示す。
【図27】ラットにおける、GnRHに結合するPEG化DNAシュピーゲルマーの薬物動態学を示す。
【図28a】ラットにおける静脈内投与後のPEG化L-RNAの薬物動態学プロフィールを示す。
【図28b】ラットにおける静脈内投与後の非PEG化L-RNAの薬物動態学プロフィールを示す。
【図28c】ラットにおける皮下投与後のPEG化L-RNAの薬物動態学プロフィールを示す。
【図28d】ラットにおける皮下投与後の非PEG化L-RNAの薬物動態学プロフィールを示す。
【図29】インビボでの雄精巣摘除ラットにおける、GnRHに結合するDNAシュピーゲルマーの活性試験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、生物、例えば、哺乳類生物、特に、好ましくはヒト、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、モルモット、マウスおよびラットを含む群から選択される哺乳動物におけるL-核酸の使用に際して、L-核酸は代謝されず、これは概してそのような生物において生じるヌクレアーゼへと戻り、その立体特異性のため基質としてL-核酸を認識しないが、前記生物におけるL-核酸の生物学的半減期はそれにもかかわらず比較的低いという驚くべき発見に基づく。そこで、ラットおよびサルにおけるランダム配列の未修飾L-核酸のインビボ投与に際して、半減期は30分および6時間の間であることが分かった。また、L-核酸、すなわち被験生物に存在する標的分子に向けられるシュピーゲルマーを用い、比較的低い生物学的半減期の前記観察が確認され、これにより、これがL-核酸の非特異性の結果としての人為結果によるものではないことが確認される。さらに、本発明者らは、非修飾L-核酸の半減期が非修飾D-核酸の半減期とほぼ同程度であることを見出した。同時に、非修飾L-核酸の安定性は、非修飾D-核酸の安定性と比較して明瞭に増加した。驚くべきことに、修飾のため、L-核酸の半減期は、D-核酸の修飾の際よりも増加することが示された。従って、全く予期せぬことに、その半減期が非修飾形態において相互に類似する修飾されたD-核酸の半減期と比較して、修飾の結果として修飾L-核酸の半減期に変化がある。換言すれば、修飾の結果としてのみ、機能的核酸の半減期の延長という所望の効果が実現でき、これは、恐らくは修飾L-核酸を使用すると可能であり、修飾されたD-核酸を使用すると不可能である。前記した具体的場合において、それは、精巣摘除術を施した雄ラットに投与されたホルモンアゴニストである性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)に対するシュピーゲルマーである。GnRHは性腺刺激ホルモン濾胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)の合成および放出を刺激する。テストステロンフィードバック信号がないため、精巣摘除術を施した雄ラットではFSHおよびLHレベルが増大している。特異的シュピーゲルマーは第一の実験(100mg/kg,皮下投与)においてLHレベルの明瞭な降下を引き起こしたが、既に数時間後には、シュピーゲルマーの有効性の低下を観察することができた。対応するGnRHシュピーゲルマーPEGコンジュゲートでの同一の実験(150mg/kg,静脈内投与)の実行において、LHレベルの完全な降下が観察できたが、依然として、24時間に渡って完全に降下したままであった。GnRHシュピーゲルマーPEGコンジュゲートは、本発明の修飾L-核酸についての例を表わす。ここで、GnRHシュピーゲルマーはL-核酸部分に対応し、PEGは非L-核酸部分に対応する。
【0032】
これらの結果は、生物におけるシュピーゲルマーのようなL-核酸の滞留時間が、修飾、特にL-核酸の高分子修飾によって延長することができることを示す。L-核酸の修飾は、それを非L-核酸と連結させることによって起こる。理論にしばられるわけではないが、この驚くべき観察は、生物からの、特に哺乳動物生物からの修飾L-核酸の排出が、そのように修飾L-核酸の分子量の増大の結果として遅くなることに帰せられるようである。前記排出は典型的には腎臓を介して行われるので、現在、修飾L-核酸に関する腎臓の糸球体濾過速度は、非修飾L-核酸のそれと比較してかなり低下し、これは、対応する非修飾L-核酸の滞留時間と比較して、修飾L-核酸の滞留時間の増大、すなわち生物学的半減期の増大を導くと推定される。
【0033】
この文脈において特に顕著なのは、修飾が行われたにもかかわらず、修飾L-核酸、すなわち、特に、標的分子特異性を担うそのL-核酸部分が、明らかにその特異性を何も失わないという事実である。従って、本発明の修飾L-核酸は、驚くべきことに、他の薬学的活性な化合物では通常実現できない、すなわち、例えば薬剤を順次放出するデポ製剤の形態の広範な生薬処方なしに行うことができる特徴を完全に有し、むしろ、その各標的分子との複合体の反応または形成の特異性として特に表わされるシュピーゲルマーの場合に、その生物学的活性が負に影響されることなく、問題の薬剤の直接的修飾を行うことができる。換言すれば、本発明の修飾L-核酸は、生物におけるその滞留時間が増大し、特に、例えば薬学的活性剤、特に特異的活性を有する小さな薬剤の分子に存在する糸球体濾過速度における排出速度が低下した、薬学的活性剤の不適合性を克服する。ここで、L-核酸部分の親和性は、非L-核酸部分とのコンジュゲーションによって本質的に不変のままであることは注目に値する。
【0034】
前記したことは、もちろん、治療上活性剤としてのシュピーゲルマーのような修飾L-核酸の使用の場合のみならず、診断的手段としてのその使用、特にインビボ診断剤としてのその使用にも当てはまる。インビボ診断剤としてのシュピーゲルマーの使用の典型的な例は、インビボ画像化、ここでは、特に陽電子放射断層撮影法のための放射性ヌクレオチド担持シュピーゲルマーの使用である。この適用においては、それは、正確に規定された間残存する放射性ヌクレオチドに適合させる。放射性ヌクレオチド、および従って放射能は、より長い時間生物内に留まり、ここで、より長いとは、各実験を行うのに必要に応じて時間を取ることを意味し、これには、患者に不必要であり、かつある場合には健康リスクを生じ得る放射性放射線への曝露が伴われるであろう。他方、身体からの診断手段、および従って放射性標識の排出が余りにも速く起こる場合には、これは、適切な診断または可能な診断的陳述を導かないであろう。本発明の修飾L-核酸の利用可能性により、診断手段を、その滞留時間、すなわちその生物学的半減期に関する各要件に応じて、最適に調整することができる。これは、糸球体濾過速度が約45,000Daを超える分子量からかなり制限されるようになるという観察にも大いに基づく。そうでなければ、前記排出、特に、糸球体濾過速度は、明瞭に、分子のサイズに相関する。適当な非L-核酸部分、例えば、本明細書中に記載したものを用いることによって、修飾L-核酸の滞留時間は正確に前記要件に調整することができる。
【0035】
修飾L-核酸の非L-核酸部分の化学的性質は、一定の制限の範囲内で実質的に自由に設定することができる。修飾L-核酸を適用する多くの場合において満たされる、生物に投与される修飾された核酸についての要件は、非L-核酸部分が一つまたは複数の非免疫原性化合物からなることである。あるいは、しかしながら、もし追加的にそれにも適用できれば、これらは親油性化合物ならびに親水性化合物であり得る。当業者にとっては、単離された場合の一般的な条件に応じて、特に、もし本発明の修飾L-核酸の投与が、長時間にわたるか、または反復して起こることが意図されず、単に一度のみが意図されるならば、わずかに免疫原性の化合物を動員することができることが明らかである。今度は、この局面は、もし本発明の修飾L-核酸がより長い時間にわたって、または反復して投与されなければならないならば、特に重要である。概して、その繰り返される投与に際し、免疫学的またはアレルギー性反応に導くであろう、修飾L-核酸の適用に際し、本発明の修飾L-核酸の非L-核酸部分によって免疫応答は生じないことが確認されなければならない。
【0036】
修飾L-核酸の非L-核酸部分は、複数の非L-核酸部分がL-核酸部分に結合するか、またはそれとコンジュゲートするように設計することができる。例えば、2つまたはそれ以上の非L-核酸部分がL-核酸部分に結合することは可能である。単一非L-核酸部分は好ましくはポリマーであり、ポリマーのサブユニットは比較的低い分子量を有することができる。また、複数のL-核酸部分が非L-核酸部分に結合しているのも本発明の範囲内である。
【0037】
修飾L-核酸の非L-核酸部分を選択する場合に考慮しなければならない更なる局面は、ある種の化合物、特にある種の生物または細胞へのシュピーゲルマーのアドレッシングである。ここで、具体的状況に応じて、修飾L-核酸が、L-核酸部分によって生じる、シュピーゲルマーまたは修飾L-核酸の結合特異性とは無関係に、好ましくはある種の細胞、組織または器官に蓄積されるように、非L-核酸部分を調整することができる。
【0038】
典型的には、非L-核酸部分の分子量は300Daから500,000Daの間である。L-核酸部分は、修飾L-核酸のL-核酸部分の同一または異なる位置に、個々に、複数で、あるいは他の非L-核酸部分との任意の組合せのいずれかでカップリングさせることが出来る。
【0039】
修飾L-核酸の分子量が非L-核酸部分によって強く決定されることは本発明の範囲内である。基本的には、修飾L-核酸は600Da〜500,000Da程度、好ましくは10,000Da〜400,000Da程度、およびより好ましくは50,000Da〜300,000Da程度の分子量を有することができる。より低い分子量は、例えば、コレステロールコンジュゲートであって、典型的に、10kDa〜25kDa程度の分子量を有する、ある種の修飾L-核酸によって実現される。より高い分子量範囲は、例えば、HBSコンジュゲートであって、しばしば、100kDa〜500kDa程度の分子量を有する、ある種の修飾L-核酸によって実現される。修飾L-核酸がPEGコンジュゲートである場合、好ましい分子量は40〜70kDa程度である。
【0040】
非L-核酸部分として、例えば、以下のものを用いることができる。
【0041】
ポリエーテル、アルコキシポリエーテル、例えば、直鎖または分岐ポリ(エチレン)グリコール(PEG)、メトキシポリ(エチレン)グリコール、エトキシポリ(エチレン)グリコール、正確なPEG(ここで正確なPEGとは、式(-NH-Y-NH-CO-X-CO)のポリアミドであり、YおよびZは各位置において4〜6の範囲の異なるpを持つ(-CH2CH2O-)pとして変化することができる)、ポリ(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミン、ポリオキシプロピレン。これらは、特にインビボで代謝できないことによって区別され、かつ制御された排出の効果はサイズによって引き起こされるので、修飾L-核酸の分子量は特に継続して反映され、非L-核酸部分における分解プロセスによって干渉されない。
【0042】
例えば、アルブミンのような、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質。これらの化合物は天然に存在するもの、ならびに外部から加えられる物質であり得る。
【0043】
多糖、例えば、ヒドロキシエチルデンプン、デキストランは、それらに関する限り、代謝可能であって、分解速度が正確に制御可能である結果として、滞留時間に非常に特異的に影響し得る。1つの態様で用いるヒドロキシエチルデンプンの分子量は10kDaの間、好ましくは40kDaから400kDaの間、好ましくは100kDaから300kDaの間である。ヒドロキシエチルデンプンは、0.1〜0.8のモル置換度、および2〜20の範囲のC2:C6比を有する。修飾L-核酸のL-核酸部分への多糖のカップリングに関しては、OH基およびそれらの誘導体化の使用に関してL-核酸の糖部分の文脈において本明細書中で述べたことが適用される。
【0044】
ステロール、例えばコレステロール。ステロールは比較的低い分子量が特徴であるが、これは、そのようにして修飾L-核酸の滞留時間の増加を導き得る。この点でさらにより重要なのは、特に、例えば、HDLのような、インビボでリポタンパク質と非共有結合複合体を形成する、判断されるステロール(特にコレステロール)の挙動であり、それにより、分子量の増大、および従って、より長い半減期が達成される。
【0045】
基本的には、非L-核酸部分が、各々、一つまたは複数のD-ヌクレオシドおよびD-ヌクレオチドからも形成されるのは本発明の範囲内であり、ここで、これらは個々に、または全体として、さらなる修飾、例えば、生物系における安定性の増大のための修飾を有することができる。そのような修飾は、例えば、ヌクレオチドおよびヌクレオシド各々の糖部分の2'位におけるフッ素化である。さらに、これらのD-ヌクレオシドおよびD-ヌクレオチドは、様々な非L-核酸、特に前記したものの成分であり得るが、本明細書中に記載するリンカーの一部でもあり得る。ここで、個々のもしくはいくつかのD-ヌクレオシドまたはD-ヌクレオチドが、一つまたは複数の脱塩基部位も含むことができるのは、本発明の範囲内である。
【0046】
L-核酸部分と一つまたは複数の非L-核酸部分との結合は、原則的に、修飾L-核酸を組み立てる2つの部分の全ての構成要素または分類(grouping)で起こり得、ここで誘導体化は、一方または双方の部分の一つまたは複数の位置において、すなわちL-核酸において、ならびに非L-核酸部分において起こることが意図されてよい。結合は、特にL-核酸のリボースまたはデオキシリボース部分におけるその5'-OH、3'-OHまたは2'-OH基において起こり得る。
【0047】
同時に、L-核酸を組み立てるヌクレオチドの糖成分の少なくとも一部は、リボースまたはデオキシリボース以外の糖を有することができることも本発明の範囲内である。そのような糖は、例えば、アラビノースのようなさらなるペントース、またヘキソースまたはテトロースであってもよく、あるいは例えば、モルホリノ環またはアザ糖またはチオ糖における窒素原子、あるいはロックされた核酸(LNA)またはペプチド核酸(PNA)におけるようなさらなる糖修飾を含むこともできる。これらのOH基は、適当な化学修飾により、NH2、SH、アルデヒド、カルボン酸、リン酸、ヨウ素、臭素、または塩素基として存在することができる。L-核酸部分への結合を可能とするさらなる官能基は当業者に公知である。非L-核酸部分とL-核酸部分との結合が本明細書に記載されている限り、反対の記載が与えられない条件で、前記コメントは基本的に、複数の非L-核酸部分がL-核酸部分に連結されるか、またはそれに結合している場合に適用される。
【0048】
さらに、修飾L-核酸を組み立てるヌクレオチドのリン酸基の少なくとも1つの部分が修飾を有するのは本発明の範囲内である。そのような修飾は、例えばホスホチオエート、ホスホジチオエート、ホスホアミデート、ホスホネート、および当業者に公知のさらなる修飾である。
【0049】
L-核酸部分の糖部分を介する非L-核酸部分へのL-核酸部分の結合とは別に、結合はリン酸骨格においても起こり得、ここでも、L-核酸のリボースまたはデオキシリボース部分を介する結合の文脈で指摘するように、対応する修飾が起こり得る。結局は、前記で詳説したように、その機能的修飾後にも適用可能であれば、ピリミジン塩基の5位および/または6位、プリン塩基の8位、ならびに各核酸塩基の、環外および環内のアミンおよびケト基を介する結合が可能である。天然の塩基とは別に、L-核酸は、例えば、イソグアニジン、イソシチジン、キサントシン、イノシン、2,4-ジアミノピリミジンのような一つまたは複数の非天然塩基を含有することができる。ここで、L-核酸部分と非L-核酸部分との間の本明細書中に記載した結合のいずれも、直接的にまたは間接的に起こり得ることは本発明の範囲内である。特に、リンカー、例えば本明細書中に記載したリンカーが、L-核酸部分および非L-核酸部分の間に配置されれば、間接的な結合が存在し、官能基の一方または双方を提供する。
【0050】
また、L-核酸部分および非L-核酸部分の間に、一つまたは複数のいわゆるリンカーを含むことができることも本発明の範囲内である。そのようなリンカーは、典型的には、少なくとも1つの官能基、ならびに距離を保つ手段またはスペーサーからなる。一方では、このリンカーの機能はカップリング反応を容易とすることにあり得る。加えて、または別法として、修飾L-核酸のL-核酸部分と非L-核酸部分との間に空間的距離が形成されるように、リンカーは機能を付与し得る。例えば、修飾L-核酸を組み立てる部分間の、特にL-核酸部分と非L-核酸部分との間、または修飾L-核酸の2つまたはそれ以上の非L-核酸部分間の相互作用を防ぐべきである場合、そのような距離はある状況下では有利である。
【0051】
また、リンカー自体は、一つまたは複数の官能基を含むことができ、前記したL-核酸部分の部位の1つにおいて、後者に結合することができる。典型的には、スペーサーは、異なる長さのアルキル鎖からなり、1個〜20個、特に4個〜15個、さらに特別には6個〜12個の炭素原子の鎖長が好ましい。アルキル鎖自身は分岐していてよく、またはさらなる官能基を担持していてもよい。スペーサーの典型的な態様は、例えば、ポリ(エチレン)グリコールまたはポリプロキシレンに存在するような、単一モノマー間のエーテル結合を含み、モノマーはポリマー中に1〜20回存在することが多い。また、ポリアミンアルキルまたはポリアミドアルキル鎖からスペーサーを形成することにおいて、1〜20の値の頻度は、これらのポリマーを組み立てるモノマーにとっては普通である。
【0052】
リンカーは、修飾L-核酸のL-核酸部分を形成するL-ヌクレオチドの一方にカップリングすることができる。または、リンカーは、L-核酸の酵素的合成または化学的合成の間に出現するオリゴマーに含まれてもよい。さらに、L-核酸を合成後に修飾し、それにより、非L-核酸部分のカップリング用のリンカーが提供されるのは、本発明の範囲内である。
【0053】
また、リンカーが、例えばヘアピンループ中の脱塩基位置、または3'-もしくは5'-末端、または別の位置に含まれるのは本発明の範囲内である。
【0054】
L-核酸がシュピーゲルマーであるならば、脱塩基位置はシュピーゲルマーの位置に含まれてもよく、これは、標的分子の結合、およびシュピーゲルマーの構造それぞれには必須でない。脱塩基位置は、本明細書中においては、通常のヌクレオチドと同様に、リン酸および糖からの同一骨格を保有するL-核酸部分の部位であるが、核酸塩基が、図24にも示されるように、水素原子またはリンカーによって置換されている部位を指す。
【0055】
L-核酸部分および非L-核酸部分の間の結合部位に関して前記の明細から既に明らかなように、本明細書中においてL-核酸コンジュゲートとも呼ばれる修飾L-核酸は、以下により詳細に述べるように、多数の反応によって調製することができる。
【0056】
酸アミドは、第一級または第二級アミンから、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の反応、または無水物などのカルボン酸、酸塩化物、エステル、スクシンイミドおよびマレイミドの同様の活性化によって調製することができる1,2
【0057】
チオエーテルはハロゲン化物またはチオールから出発して調製することができ3,4、引き続いて、スルホキシドまたはスルホンへの酸化に供することができる5,6。ハロゲン化物、特にハロアシル(ヨード酢酸、ブロモ酢酸)を、エステルまたは酸アミド結合につき双方のL-核酸部分の1つの任意の官能基にカップリングさせることができ、引き続いて、高反応性ヨウ素または臭素基を遊離チオールとカップリングさせることができる。従って、ハロアセチルはハロゲニドチオールカップリングの特別な場合である7。チオエーテルはマレイミドおよびチオールから出発して調製することもでき7-9、イソチオ尿素はイソチオシアネートおよびアミンから調製することができ10、イソ尿素はイソシアネートおよびアミンから出発して調製することができ11、カルバメートはイソシアネートおよびアルコールから出発して調製することができ12、C-C結合はディールス-アルダー反応によって調製することができ13、複素環は1,3二極環付加によって調製することができ13、アミンは、例えばアルデヒドまたはケトンとアミンとの、引き続いての還元に応じた反応に続く、還元的アミノ化によって調製することができ14、酸アミドは酸およびアミンから出発して調製することができ15,16、エステルはカルボン酸または前記した活性化されたカルボン酸およびアルコールから出発して調製することができ、スルホンアミドはアミンおよび塩化スルホニルから出発して調製することができ17、第二級アミンはエポキシドおよびアミンから出発して調製することができ18,19、チオエーテルはエポキシドおよびチオールから出発して調製することができ20、ジスルフィドはチオールおよびさらなるチオールまたはジスルフィドから出発して調製することができ21,22、ヒドラゾンはヒドラジンおよびアルデヒドまたはケトンから出発して調製することができ、ここで、ヒドラゾンはさらに安定な修飾されたヒドラジンに還元することができ23、ホスホチオエートはリン酸、または例えばホスホロイミダゾリドのような活性化されたリン酸およびチオールから出発して調製することができ24、ホスホルアミデートはリン酸、または例えばホスホロイミダゾリドまたはホス-N-ヒドロキシドベンゾトリアゾーレのような活性化されたリン酸およびアミンから出発して調製することができる24-27。それにより、まず、リンカーをホスホアミデートまたはホスホチオエート結合を介してL-核酸部分にカップリングさせ、引き続いて、非L-核酸部分にカップリングさせることは本発明の範囲内である。そのようなリンカーは、特に、エチレンジアミンまたはシステアミンであり得る。
【0058】
原則的に、前記説明は、最初に述べた反応性出発基を非L-核酸部分に配置する場合、ならびにL-核酸部分に配置する場合にも適用される。対応する反応性基が提供されるという意味におけるL-核酸の対応する修飾は、当業者に公知である。同じことが非L-核酸部分に適用される。
【0059】
L-核酸という用語は、本明細書中では、L-オリゴヌクレオチドまたはL-ポリヌクレオチドという用語と同意義に用いられ、とりわけ、L-デオキシリボ核酸およびL-リボ核酸ならびにその組合せを指し、すなわち、単一のヌクレオチドまたはヌクレオチド群がRNAとして存在し、かつ核酸を作り上げるさらなるヌクレオチドはDNAとして存在するか、またはその逆である。ここで、デオキシリボースまたはリボースの代わりに、他の糖がヌクレオチドの糖成分を形成してもよいことも意図される。さらに、NH2、OMe、OEt、Oアルキル、NHアルキルのような2'位がさらに修飾されたヌクレオチドの使用、および天然および非天然核酸塩基、例えば、イソシチジン、イソグアノシンの使用が含まれる。それにより、L-核酸がいわゆる脱塩基位置、すなわち、核酸塩基が存在しないヌクレオチドを有することも本発明の範囲内である。そのような脱塩基位置は、L-核酸のヌクレオチド配列内、ならびに一方または双方の末端において、すなわち、5'-および/または3'-末端に配置され得る。
【0060】
さらに、L-核酸が一つまたは複数のD-ヌクレオシドまたはD-ヌクレオチドを含むのは本発明の範囲内である。ここで、1個または数個のD-ヌクレオシドまたはヌクレオチドをL-核酸内、ならびにL-核酸の一方または双方の末端に配置することができる。単一のD-ヌクレオシドまたはD-ヌクレオチドは、例えば、各々ヌクレオシドまたはヌクレオチドの安定性、および各々L-核酸へのその結合を増加させるために、一つまたは複数の修飾を担持することができる。
【0061】
原則的に、L-核酸は二本鎖または一本鎖で存在することができる。典型的には、それは一本鎖のL-核酸であるが、しかしながらこれはその一次配列により、規定された二次構造および、それによって三次構造を形成することができる。二次構造においては、多数のL-核酸が二本鎖部分を有する。
【0062】
特に本明細書中で記載した高分子修飾とは別に、L-核酸は核酸の単一ヌクレオチドに関する修飾ということができ、ここで、例えばヌクレオチドの糖部分の2'-OH基は、既に開示したように、メチルエーテルとして存在することができる。
【0063】
本明細書中に記載した、L-核酸およびL-核酸部分は、それぞれ好ましくは機能的核酸である。機能的核酸には、とりわけ、アプタマー、シュピーゲルマー、リボザイムおよびアプタザイムが属する。好ましくは、L-核酸およびL-核酸部分はそれぞれシュピーゲルマーである。既に最初に記載したように、シュピーゲルマーは、標的分子またはその一部に結合し、少なくとも標的分子に結合する核酸の一部のL-ヌクレオチドから作成される核酸である。好ましくは、それらは核酸ライブラリー、特に統計学的核酸ライブラリーを標的分子と接触させた結果である。
【0064】
機能的核酸の開発のための選択方法に関して、コンビナトリアルDNAライブラリーがまず調製される。概してそれは、2つのプライマー結合部位が5'-および3'-末端に近接する、中心に10個〜100個のランダム化ヌクレオチドからの領域を含有するDNAオリゴヌクレオチドの合成である。そのようなコンビナトリアルライブラリーの調製は、例えば、Conrad,R.C.、Giver,L.、Tian,Y.およびEllington,A.D.、1996、Methods Enzymol.、Vol 267、336-367に記載されている。そのような化学的に合成された一本鎖DNAライブラリーは、ポリメラーゼ連鎖反応によってそれ自体選択のために用いられ得る二本鎖ライブラリーへ変換することができる。一般に、個々の鎖の分離は、一本鎖ライブラリーが再度得られるように、適切な方法で行い、それがDNA選択である場合、これは選択方法で用いることができる(Bock,L.C.、Griffin,L.C.、Latham,J.A.、Vermaas.E.H.およびToole,J.J.、1992、Nature、Vol.355、564-566)。インビトロ選択のために化学的に合成されたDNAライブラリーを直接用いることもさらに可能である。加えて、原則的に、もしT7プロモーターが以前に含まれていれば、RNAライブラリーは、適当なDNA依存性ポリメラーゼ、例えばT7 RNAポリメラーゼによって二本鎖DNAから生成することができる。記載された方法を用いて、1015以上のDNAまたはRNA分子のライブラリーを生成することが可能である。このライブラリーからの各分子は異なる配列を有し、従って、異なる三次元構造を有する。インビトロ選択方法によって、今では、もし適用可能であれば、一つまたは複数のサイクルの選択および増幅ならびに変異によって、前記ライブラリーから、与えられた標的に対して重要な結合特性を有する一つまたは複数のDNA分子を単離することができる。例えば、Gold,L.、Polisky,B.、Uhlenbeck,O.およびYarus、1995、Annu.Rev.Biochem.Vol.6、763-797およびLorsch,J.R.およびSzostak,J.W.、1996、Combinatorial Libraries, Synthesis, Screening and application Potential、Riccardo Cortese編、Walter de Gruyter、ベルリンに記載されているように、標的はウイルス、タンパク質、ペプチド、核酸、代謝産物のような小分子、薬剤およびその代謝産物、または他の化学、生化学、または生物学的化合物であり得る。前記手法は、最初に用いたライブラリーから結合DNAまたはRNA分子を単離し、ポリメラーゼ連鎖反応によって選択段階後に増幅するという様式で行う。RNAの選択においては、逆転写は、ポリメラーゼ連鎖反応による増幅段階に先立って行うべきである。第一ラウンドの選択後に濃縮されたライブラリーは、第1ラウンドの選択で濃縮された分子が、選択および増幅によって再度優勢となり、かつより多くの娘分子でのさらなる選択ラウンドに付される機会を有するように、再選択ラウンドで用いることができる。同時に、ポリメラーゼ連鎖反応の段階は、例えば、塩濃度を変化させることによって、増幅の間に新しい変異を導入する可能性を呈する。十分な増幅および選択ラウンドの後に、結合分子が支配的となった。そのメンバーがクローニングによって分離され得る、このようにして生じた濃縮プールを、引き続いて、配列を決定するための通常の方法によってその一次構造に関して決定することができる。次いで、得られた配列を、標的に対するその結合特性に関して試験する。そのようなアプタマーの創製方法は、SELEX方法ともいい、例えば、参照として本明細書に組み入れられる欧州特許第0 533 838号に記載されている。
【0065】
最良の結合分子は、一次配列を短縮することによってその必須の結合ドメインまで短くすることができ、それは、化学的または酵素的合成によって調製することができる。
【0066】
そのようにして製造可能な特別な形態のアプタマーは、いわゆるシュピーゲルマーであり、これは、少なくとも部分的には、好ましくは完全に、非天然L-ヌクレオチドから組み立てられることによって実質的に特徴付けられる。そのようなシュピーゲルマーの調製方法は、参照として本明細書に組み入れられるPCT/EP 97/04726に記載されている。そこに記載された方法の具体的特徴は、すなわち、天然標的、すなわち天然の形態または立体配座をとる標的に結合する、エナンチオマー核酸分子、すなわちL-核酸分子の創製である。例えば、標的分子がD-タンパク質に対するタンパク質である場合、前記したインビトロ選択方法を用いて、エナンチオマー、例えば、天然標的の非天然構造に対する結合核酸または配列をまず選択する。このようにして得られた結合分子(各々、D-DNA、D-RNA、および対応するD-誘導体)をその配列に関して決定し、次いで、同一配列を鏡像核酸分子(各々、L-ヌクレオチドおよびL-ヌクレオチド誘導体)で合成する。得られた鏡像エナンチオマー核酸(各々、L-DNA、L-RNA、および対応するL-誘導体)、いわゆるシュピーゲルマーは、対称性の理由で、鏡像三次構造を有し、従って、天然形態または立体配座で存在する標的に対する、結合特性を有する。
【0067】
標的とも呼ばれる前記の標的分子は、例えば、ウイルス、ウイロイド、細菌、細胞表面、細胞オルガネラ、タンパク質、ペプチド、核酸、代謝の代謝産物のような小分子、薬剤およびその代謝産物、または他の化学的、生化学的もしくは生物学的化合物のような分子または構造であり得る。
【0068】
以下において、本発明のさらなる利点、態様および特徴が続く図面および実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0069】
実施例1:L-核酸のPEGコンジュゲートの合成
配列番号:2に記載したL-核酸およびPEGから出発し、L-核酸のPEGコンジュゲートの合成のための条件を調べた。ここで、PEGは、アミンおよびリン酸それぞれへのカップリングのために、NHSエステルとして、または第一級アミンとして存在するように修飾した。核酸を水系に溶解させるように進行させた。様々な緩衝液または塩基、例えば、NaHCO3、NaH2PO4/Na2HPO4、HEPES、MOPS、NH4OAc、トリエチルアミンなどによって、pHを6.5〜9.0に調整した。様々な有機溶媒、例えば、DMF、DMSO、アセトニトリル、その他の添加の影響を試験した。ここで有機溶媒の割合は0〜100%の間で変化させた。引き続いて、10,000Daから40,000Daの間の異なる分子量の、例えば、分岐mPEG2-NHSエステル、直鎖mPEG-NHSエステル、またはmPEG-NH2(Shearwater Corporations)のような異なるPEG誘導体の付加が起こった。PEG-NHSエステルの付加は種々の方法で行うことができる。従って、PEG-NHSエステルは、例えば、0.01N HClのような低濃度の酸に溶解させることができるか、または滴下してDMFのような有機溶媒に溶解させるか、または固体として添加することができる。PEG-NHSを添加する好ましい方法は固体として少量ずつ加えることである。さらに、4℃〜65℃の間の反応温度の影響を試験した。核酸として、以下の配列5'-NH2-TAT TAG AGA C-3'(配列番号:2)、および5'-PO4-TAT TAG AGA C-3'(配列番号:3)を持つ核酸、ならびに配列番号:1の核酸を用いた。前記で要約した反応の収率は5〜78%の間だった。
【0070】
反応の好ましい変形は、水60に対しNaHCO3(0.2M、pH8.0)を加えたDMF40の割合からなる溶媒に溶解させた核酸への、約30分の間隔で、全部で6回、37℃での、各2当量の固体PEG-NHSエステルの添加であった。反応条件は78%の収率を導いた。
【0071】
実施例2:L-核酸ホスホアミデートのPEGコンジュゲートの合成
配列5'-PO4-TAT TAG AGA C-3'(配列番号:3)を持つL-核酸から出発し、対応するホスホアミデートPEGコンジュゲートを作成した。L-核酸(10 OD)を50℃にてEDCIを含む水溶液中のPEG-NH2(20,000Da、直鎖状、1〜10当量)と反応させて、L-核酸ホスホアミデートのPEGコンジュゲートとした。分析および精製は、実施例1に記載したL-核酸のPEG-NHSでのPEG化と同様に行った。反応条件は最適化されず、<8%の収率を導いた。
【0072】
実施例3:GnRHシュピーゲルマーリガンドのPEG化
一般にGnRHといわれるペプチドホルモンGnRH I(性腺刺激ホルモン放出ホルモン、ゴナドリベリン)は、視床下部で作成されるデカペプチドであり、これは、下垂体による性腺刺激ホルモン黄体形成ホルモンおよび濾胞刺激ホルオン(FSH)の分泌を刺激する。GnRHはパルス状に視床下部のニューロンから分泌され、次いで、下垂体の細胞表面の受容体に結合する。リガンド受容体複合体は内部移行され、それにより、FSHおよびLHの放出が起こり、これは、今度はエストロゲン、プロゲステロンまたはテストステロンのような性ホルモンの生産を刺激する。シュピーゲルマー、すなわち、特異的にGnRHに結合し、以下の配列:

を有するL-核酸を生産することができた。
【0073】
前記で示された配列のシュピーゲルマーの合成は、2-シアノエチル-ホスホラミダイト化学(Sinhaら、NAR, 12, 1984, p.4539ff)に従い、1,000Å CPG固相(Controlled Pored Glass)で780μモルスケールにて、Amersham Pharmacia Biotech Oligopilot II DNA合成機で行った。引き続いて、6-(モノメトキシトリチルアミノ)-ヘキシル-(2-シアノエチル)-N,N-ジイソプロピル-ホスホラミダイトをシュピーゲルマー(5'-MMT-アミノヘキシルシュピーゲルマー)の5'末端に連結して、PEGとの合成後コンジュゲーションを行った。
【0074】
合成の完了後に、65℃における33%アンモニア溶液中での8時間のインキュベーションによって、5'-MMTアミノヘキシルシュピーゲルマーを固相から切断し、完全に脱保護し、その後、濃縮乾固し、10mM NaOH中に採り、RP-HPLCによって精製した。モノメトキシトリチル保護基の切断は、室温にて30分間、0.4%トリフルオロ酢酸(TFA)で行った。TFAをエタノールでの2倍共蒸発によって除去し、配列番号:1の5'-アミノヘキシルシュピーゲルマーをエタノール中の沈殿によって精製した(収率:5,000 OD、7.5μmol)。生成物のピークを収集し、Sephadex G10カラムを介するサイズ排除クロマトグラフィーによって、または限外濾過(Labscale TFF System、Millipore)によって脱塩した。
【0075】
そのようにして5'-アミノ修飾したGnRHシュピーゲルマー(5,000 OD、7.5μmol)を0.2M NaHCO3、pH8.5/DMF 60:40(v/v)(125mL)中で調製し、37℃まで加温し、分岐した40,000Daのポリ(エチレン)グリコールの粉末状N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)活性化エステルを、30分ごとに少量ずつ(2当量)、合計12当量(6×600mg、180μmol)を添加した。反応の進行は分析ゲル電気泳動(8%ポリアクリルアミド、8.3M尿素)によってモニターした。粗生成物をまず過剰のPEGからのイオン交換HPLC(Source Q30;溶媒A:水、溶媒B:2M NaCl;低速20mL/分;10%Bでのカラムの充填および遊離PEGの溶出;50%BでのPEG-GnRHシュピーゲルマーコンジュゲートの溶出)によって精製し、引き続いて、RP-HPLCによってPEG化されたGnRHシュピーゲルマーを非PEG化GnRHシュピーゲルマーから分離し(Source RPC 15;溶媒A:100mM 酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)、溶媒B:水/アセトニトリル5:95中の100mMTEAA;流速40mL/分;10%Bでのカラムの充填;10カラム容量での10%〜70%Bの勾配、45%〜50%BでのPEG-GnRHシュピーゲルマーの溶出)、塩交換し(Source Q30;溶媒A:水、溶媒B:2M NaCl;流速:20mL/分;10%Bでのカラムの充填および遊離PEGの溶出;50%BでのPEG-GnRHシュピーゲルマーの溶出)、引き続いて、ゲル濾過(Sephadex G10;溶媒:水;流速:5mL/分)または限外濾過(Labscale TFF System、Millipore)によって脱塩した。凍結乾燥によって、所望の生成物を白色粉末(3,900 OD、375mg、78%)として得た。
【0076】
同様に、配列番号:1の配列を含む更なる核酸を異なるPEG(直鎖状10,000ダルトン、直鎖状20,000ダルトン、分岐状20,000ダルトン、直鎖状35,000ダルトン)と連結させ、精製した。
【0077】
実施例4:L-核酸のFITCコンジュゲートの合成:5'-NH2-C6リンカーとフルオレセインイソチオシアネートのGnHRシュピーゲルマーへのカップリング
実施例3に従って作成した5'アミノ-修飾GnRHシュピーゲルマーを0.5M NaHCO3(pH8.5)中で調製し、65℃まで加温し、過剰のフルオレセインイソチオシアネート(FITC、10当量)を反応混合物に添加した。反応を分析RP-HPLCによってモニターした。それを65℃にて48時間振盪し、Centri-Spin10(Princeton Separations)によって過剰のFITCを分離し、フルオレセイン標識L-核酸をRP-HPLCで精製した。凍結乾燥により、定量的収率にて、所望の生成物を黄色がかった粉末として得た。
【0078】
実施例5:雄精巣摘除ラットにおけるインビボでのGnRH結合性PEG化DNAシュピーゲルマーの活性テスト
雄ラットを精巣摘除し、それにより、ラットのLHレベルは、テストステロンフィードバック信号がないためその後の8日間着々と増加した。8日目に、PEG-GnRH DNAシュピーゲルマー、すなわちPEGおよびGnRHシュピーゲルマーからのコンジュゲートを、7匹のラットに静脈内投与した(150mg/kg)。0日目(精巣摘除前)、8日目(PEG-GnRHシュピーゲルマーの静脈内投与前の0時間)、静脈内投与から0.5時間、1.5時間、3時間、6時間および24時間後に血液試料を採取し、ラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて各LHレベルを測定した。平行して、陰性対照として賦形剤のみ(PBS緩衝液、pH7.4)を7匹の雄精巣摘除ラットに静脈内投与し、陽性対照として標準アンタゴニストCetrorelix(100μg/kg)を7匹の雄精巣摘除ラットに皮下投与した。結果を図25に示す。陰性対照(図25に三角形で表示)を除いて、PEG-GnRHシュピーゲルマーの影響下で24時間後であっても、非精巣摘除ラット、および標準アンタゴニストCetrorelixを受容したラットのそれぞれに匹敵するLHレベルがある。これは、長時間にわたるGnRHの効果に継続して影響するPEG-GnRH DNAシュピーゲルマーの適合性を示す。前記したPEG-GnRH DNAシュピーゲルマーの効果がGnRHシュピーゲルマーのPEG化によることは、対応する修飾がないGnRHシュピーゲルマーを100mg/kgの皮下適用で適用すると、GnRHシュピーゲルマーの活性の低下が数時間後に既に観察できたという事実に由来する。結果を同様に図29に示す。
【0079】
実施例6:CHO細胞における、インビトロでのGnRH結合性PEG化DNAシュピーゲルマーおよび非PEG化DNAシュピーゲルマーの活性試験
本明細書中に記載した細胞培養実験は、GnRHに対するヒト受容体を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で行った。ここで、シグナル伝達に重要なCa2+イオンの放出が、アゴニスト受容体複合体の形成の後に起こるため、Ca2+イオンの細胞内放出を測定した。次いで、Ca2+感受性蛍光色素によって、Ca2+レベルを測定した。各々、PEG-GnRH DNAシュピーゲルマーおよびGnRHシュピーゲルマーはアゴニストGnRHを捕獲し、従って、細胞膜上の受容体へのその結合を阻害するものであった。それは、アゴニストGnRH(2nM)を、100pM〜1μMの濃度範囲にて、各々、GnRHシュピーゲルマーおよびPEG-GnRH DNAシュピーゲルマーと共に20分間プレインキュベートするように実験的に行った。この各々の溶液を蛍光色素を負荷したCHO細胞に与え、各Ca2+濃度を蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)で測定した。陽性対照としてここで用いたPEG-GnRH DNAシュピーゲルマー(塗りつぶした三角形)および標準アンタゴニスト(塗りつぶした四角形)の結果を図26aに示す。
【0080】
濃度依存性測定の結果、シグモイド活性曲線が得られ、これは、天然、すなわち非修飾GnRHシュピーゲルマー(塗りつぶした四角形)ならびにPEGで修飾したGnRH-DNAシュピーゲルマー(塗りつぶした三角形)が、GnRH受容体複合体の形成を100%阻害できたことを示す。IC50は、GnRHシュピーゲルマーでは20nMであり、PEG-GnRH DNAシュピーゲルマーでは30nMであった(図26b)。
【0081】
実施例7:ラットにおけるGnRH結合PEG化DNAシュピーゲルマーの薬物動態学
7匹の雄Wistarラット(Tierzucht Schonwalde GmbH.ドイツ、体重:250〜300g)を、GnRH結合性PEG化DNAシュピーゲルマーの薬物動態学的特徴の測定のために用いた。群を活性試験のための群と平行して処理し(実施例6参照)、すなわち、適合期の後に去勢し、さらに1週間後に、静脈内投与される800nmol/kgのPEG-GnRH DNAシュピーゲルマーの単一用量を動物に与えた。物質を1×PBS、pH7.4(ストック溶液:1mM)に溶解させた。
【0082】
物質投与の前(0時間)ならびに物質投与の1時間、6時間および8時間後に、分析用に血液試料を採取し、EDTA血漿として分析した。
【0083】
弱い陰イオン交換体を用いた固相抽出によって、前記血漿から、GnRH結合性PEG化DNAシュピーゲルマーを抽出した。この50μlのEDTA血漿につき、各々を、合計1ml用量の緩衝液A(50mM NaH2PO4、pH 5.5;0.2M NaClO4;20%(v/v)ホルムアミドおよび5%(v/v)アセトニトリル)に溶解させ、各々、抽出まで4℃にて一晩、または-20℃にて最大4日間貯蔵した。凍結した試料を室温にて少なくとも2時間解凍し、混合し、引き続いて遠心した。
【0084】
固相抽出のために、Baker spe-12G真空装置(Mallinckrodt Baker、Griesheim)でのジメチルアミノプロピル-陰イオン交換体カラム(DMA 3ml/200mgカラム材料、Macherey & Nagel、Duren)を用いた。用いた緩衝液は緩衝液A(50mM NaH2PO4、pH5.5;0.2M NaClO4;20%(v/v)ホルムアミドおよび5%(v/v)アセトニトリル)および緩衝液B(80mM NaH2PO4、pH6.0;50mM Na2HPO4、2M NaClO4;20%(v/v)ホルムアミドおよび5%(v/v)アセトニトリル)からなり、ここで二つの緩衝液AおよびBは、所望の塩濃度が達成されるように、洗浄および溶出緩衝液の調製用の特別の比率で混合した。陰イオン交換体を2mlの緩衝液Aで洗い流した。試料を-100mbarにて添加し、2mlの緩衝液Aならびに2mlの洗浄緩衝液(0.4M NaClO4)で洗浄した。-200mbarを適用することによって、カラム材料を5分間乾燥した後、PEG化GnRH結合DNAシュピーゲルマーを3×0.5ml溶出緩衝液(0.9M NaClO4)で溶出させ、ここで、溶出前に緩衝液を70℃まで加熱した。溶出物をゲル濾過まで4℃にて貯蔵した。
【0085】
内部標準として、30量体DNAシュピーゲルマーが抽出前に試料に添加されており、これは5'-末端において40kDaポリエチレングリコール分子(PEG)に結合した。内部標準を緩衝液で1μg/μlの濃度の360μlの用量とし、その各10μlを各試料に添加した。
【0086】
HPLC分析前に試料を脱塩するために、NAP-25カラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いた。得られた溶出物を真空下で乾燥し、100mlの10mM トリス-HCl、pH 8.0に溶解させた。
【0087】
PEG化シュピーゲルマーの同定および定量は、Waters Alliance 2695 HPLCシステムを用いる陰イオン交換クロマトグラフィーおよび254nmにおける検出によって行った。条件は以下のとおりであった:
プレカラム:DNAPac PA-100(504mm、Dionex)
主カラム:DNAPac PA-100(2504mm、Dionex)
溶出剤A:水中の10mM NaOH、1mM EDTA、10%(v/v)アセトニトリル
溶出剤B:溶出剤A中の375mM NaCl4
温度:25℃
注入容量:20μl
勾配および流速:0〜1分、0.5ml/分での10%溶出剤B;1〜2分、2ml/分での10%溶出剤B;2〜3分、2ml/分での30%溶出剤B;3〜13分、2ml/分での60%溶出剤B;13〜19分、2ml/分での10%溶出剤B。
【0088】
サンプリング時間での異なる時点におけるPEG化GnRH結合性DNAシュピーゲルマーの濃度を図27に示す。静脈注射に際してのPEG化GnRH結合性DNAシュピーゲルマーの半減期はラットでは約4時間である。
【0089】
実施例8:ラットにおける未修飾およびPEG化L-RNAの薬物動態学プロフィール
ヌクレオチド配列:
L-RNA、40量体(NOX M039)

40キロダルトンPEG-L-RNA、40量体(NOX M041)

【0090】
非PEG化L-RNA(NOX M039)およびPEG化L-RNA(NOX M041)の薬物動態学プロフィールを雄ラット(CD(登録商標)、Charles River Germany GmbH;体重280〜318g)で調べた。7日の定着期間(settling-in period)の後、物質当たり3匹の動物に150mmol/kgの単一用量を静脈内投与した。各々物質当たり4匹のラットに単一皮下用量として各々150mmol/kgを与えた。物質は1×PBS pH 7.4(ストック溶液:383μM)に溶解させた。静脈内投与の後に、物質適用の前(0分)、および物質適用から5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間後に、血液試料を未修飾L-RNAについて採取し、分析のためにEDTAエッペンドルフ管に移した。静脈内投与の後、物質の適用の前(0分)、および物質適用から5分、30分、1時間、3時間、8時間、16時間、24時間、36時間および48時間後に、血液試料をPEG化L-RNAについて採取し、分析のためにEDTAエッペンドルフ管に移した。皮下処理した動物において、物質適用の前(0分)、および物質適用から5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間後に、血液試料を未修飾L-RNAについて採取し、分析のためにEDTAエッペンドルフ試験管に移した。皮下処理した動物において、物質適用の前(0分)、および物質の適用から5分、30分、1時間、3時間、8時間、16時間、24時間、36時間および48時間後に、PEG化L-RNAについて血液試料を採取し、分析のためにEDTAエッペンドルフ試験管に移した。
【0091】
血液試料中のL-RNAおよびPEG化L-RNAの量をハイブリダイゼーションアッセイによって調べた(Drolet,D.W.ら(2000)Pharmacokinetics and safety of an anti-vascular endothelial growth factor aptamer(NX1838)following injection into the vitreous humor of rhesus monkeys. Pharmaceutical Res 17(12):1503-1510参照)。ハイブリダイゼーションアッセイは以下の原理に基づく。検出すべきL-RNA分子を、固定化L-DNAオリオヌクレオチドプローブ(=捕獲プローブ;ここでは:

(配列番号:6))にハイブリダイズさせ、ビオチン化検出L-DNAプローブ(=検出プローブ;ここでは:

(配列番号:7))によって検出する。このために、ストレプトアビジンアルカリ性ホスファターゼコンジュゲートを、さらなる段階において複合体に結合させる。化学発光基質の添加の後、光を発生させ、ルミノメーターで測定する。
【0092】
オリゴヌクレオチドプローブの固定化:ウェルあたり100gの捕獲プローブ(カップリング緩衝液(500mM Na2HPO4,pH 8.5,0.5mM EDTA)中、0.75pmol/μl)をDNA BINDプレート(COSTAR)に移し、4℃で一晩インキュベートした。引き続いて、それを各3×200μlのカップリング緩衝液で洗浄し、各々200μlのブロッキング緩衝液(カップリング緩衝液中0.5%(w/v)BSA)と共に37℃にて1時間インキュベートした。200μlのカップリング緩衝液および3×200μlのハイブリダイゼーション緩衝液1(0.5×SSC(pH7.0)、0.5% SDS(w/v))での再洗浄の後、プレートは検出用に用いることができる。
【0093】
ハイブリダイゼーションおよび検出:10mMトリス-Cl(pH8.0)中20pmol/μlの検出L-DNAプローブ(=検出プローブ)溶液を調製した。10μlのEDTA血漿(またはddH2O)を90μlのハイブリダイゼーション緩衝液1(0.5×SSC(pH7.0)、0.5%(w/v)SDS)と混合した。引き続いて、2μlの検出プローブ溶液(20pmol/μl)を添加し、混合し、遠心した。サーモサイクラー(MJ Research)における95℃での10分間の変性段階を続けた。調製したDNA-BINDウェル(前記参照)にバッチを移し、50℃にて2時間インキュベートした。その後、洗浄段階を続けた:2×200μlのハイブリダイゼーション緩衝液1(0.5×SSC(pH7.0)、0.5%(w/v)SDS)および3×200μlの1×TBS/Tween 20(20mMトリス-Cl(pH7.6)、137mM NaCl、0.1%(v/v)Tween 20)。1μlのストレプトアビジンアルカリホスファターゼコンジュゲート(Promega)を5mlの1×TBS/Tween 20で希釈した。100μlの希釈されたコンジュゲートをウェルごとに添加し、室温にて30分間インキュベートした。これに洗浄段階を続けた:1×200μlの1×TBS/Tween 20および3×200μlの1×アッセイ緩衝液(20mMトリス-Cl(pH9.8)、1mM MgCl2)。最後に、100μlのCSPD「即使用可能な基質(Ready-To-Use Substrate)」(Applied Biosystems)を添加し、室温で30分間インキュベートし、化学発光をPOLARstar Galaxyマルチ検出プレートリーダー(BMG Labtechnologies)で測定した。
【0094】
静脈内投与および皮下投与に際してのPEG化L-RNAの濃度-時間曲線を図28aおよび図28cに示す。静脈内および皮下投与に際しての未修飾L-RNAの濃度プロフィールを図28bおよび図28dに示す。静脈内投与に際し、終端半減期は未修飾L-RNAについては50分である。対照的に、PEG化物質については、約18時間の半減期が生じる。皮下投与に際し、終端半減期は未修飾L-RNAについては84分であり、対照的に、PEG化物質については、非常に長い排出期をもたらす。
【0095】
従って、本発明の修飾L-核酸は未修飾L-核酸と比較して有利であることが示される。この利点は、例えば、Watson S.R.ら、Antisense nucleic acid drug dev.10.63-75(2000)によって記載された技術水準を考慮しても生じる。この刊行物において、L-セレクチンに結合する2'-F-修飾アプタマーが調べられた。Sprague-Dawleyラットにおけるインビボ静脈内投与されたPEG化2'-F-アプタマー(40kDa PEG)の薬物動態学半減期は228分であり、従って本発明による修飾L-核酸よりも明らかに短い。
【0096】
実施例9:L-リボ核酸のPEG化のための一般的な方法
ラットでの未修飾L-RNAおよびPEG化L-RNAの薬理学的プロフィールの調査のために、L-リボ核酸を生成した。L-RNAは以下の配列を有する。

【0097】
前記で示した配列を持つL-RNAの合成は、2-シアノエチルホスホラミダイト化学に従い、1000Å CPG固相にて20μMのスケールで、AKTA Pilot 10合成機(Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala、スウェーデン)で行った。引き続いて、6-(モノメトキシトリチルアミノ)-ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホラミダイトをL-RNAの5'-末端にカップリングさせて(5'-MMT-アミノヘキシル-L-RNA)、PEGとの合成後コンジュゲーションを行った。
【0098】
合成の完了後、41%メチルアミン溶液中における65℃での30分間のインキュベーションによって、5'-MMT-アミノヘキシル-L-RNAを固相から切断し、核酸塩基を完全に脱保護した。2'位の脱保護は、1.5ml DMSO、0.75mlトリエチルアミン(TEA)および1ml TEA 3HF中の60℃で2時間のインキュベーションによって行った。最初の精製はRP-HPLCによって行った。モノメトキシトリチル保護基の切断は、室温にて70分間、80%酢酸で行った。酢酸は2回のエタノールとの共蒸発によって除去し、配列番号:4の5'-アミノヘキシル-L-RNAはエタノール沈殿によって精製した(収率:220 OD、純度60%)。生成物を1M酢酸ナトリウム(pH8.0)に採り、Sephadex G10カラム、またはVivaspin 3000(Vivascience、ハノーバー、ドイツ)によるサイズ排除クロマトグラフィーによって脱塩した。
【0099】
このように5'-アミノ修飾されたL-RNA(530 OD、純度60%)は、TheorellおよびStenhagenによる水性汎用緩衝液(33mMクエン酸ナトリウム、33mMリン酸ナトリウム、57mMホウ酸ナトリウム、pH7.5)(7.5ml)中で調製し、37℃まで加温し、DMF(5ml)を添加し、分岐した40,000Daのポリ(エチレン)グリコールの粉末状N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)-活性化エステルを、分割して添加した(45分毎に2当量、合計18当量)。反応の進行は分析ゲル電気泳動(8%ポリアクリルアミド、8.3M尿素)または分析イオン交換HPLCによってモニターした。粗生成物をまず過剰のPEGからイオン交換HPLCによって精製し(Source Q;溶媒A:10mM炭酸水素ナトリウム、pH7.5、溶媒B:10mM炭酸水素ナトリウム、pH7.5、2M塩化ナトリウム、5%Bでのカラムの充填および遊離PEGの溶出;流速20ml/分;20カラム用量にわたる35%Bまでの勾配での、非反応L-RNAからのPEG-L-RNAコンジュゲートの分離および溶出;流速50ml/分)、引き続いて、限外濾過(Labscale TFF System、Millipore)によって脱塩した。凍結乾燥によって、所望の生成物を白色粉末として得た(254 OD、48%(出発生成物の純度に対して80%))。
【0100】
同様にして、配列番号:1の配列を含む更なるL-核酸を、異なるPEG(直鎖状10,000ダルトン、直鎖状20,000ダルトン、分岐状20,000ダルトン、直鎖状35,000ダルトン)と連結し、精製した。
【0101】
実施例10:雄精巣摘除ラットにおけるインビボでのGnRH結合性DNAシュピーゲルマーの活性試験
雄ラットを精巣摘除し、それにより、テストステロンフィードバック信号がないためにその後の8日間、ラットのLHレベルは着実に増加した。8日目に、PEG-GnRH DNAシュピーゲルマー(NOX 1255)を5匹のラットに皮下投与した(100mg/kg)。0日目(精巣摘除前)、8日目(GnRHシュピーゲルマーの皮下投与前0時間)、ならびに皮下投与から0.5時間、1.5時間、3時間、6時間および24時間後に、血液試料を採取し、ラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて各LHレベルを測定した。平行して、陰性対照として賦形剤(PBS緩衝液、pH7.4)のみを5匹の雄精巣摘除ラットに皮下投与し、陽性対象として標準アンタゴニストCetrorelix(100μg/kg)を5匹の雄精巣摘除ラットに皮下投与した。結果を図29に示す。
【0102】
LHレベルはGnRH DNAシュピーゲルマー群(図29では丸で示す)で降下し、1.5時間後にはその最低点に達し、ほぼ3時間留まる。この減少は、非精巣摘除ラット、およびCetrorelix(標準アンタゴニスト)で処理したラットの各々と匹敵する。GnRH DNAシュピーゲルマー投与から6時間後、LHレベルはゆっくりと増大し、24時間以内に未処理対照群のレベルに到達する。
【0103】
従って、GnRH DNAシュピーゲルマーの生物学的効果は3時間の期間にわたって観察可能であり、他方、PEG化GnRH DNAシュピーゲルマーは24時間にわたって活性である(実施例5参照)。
【0104】
以下に与えられる文献は、本明細書中に掲げる上付き数字を付した引用に対応する。
【0105】
文献




【0106】
前記の説明、請求の範囲ならびに図面で開示した本発明の特徴は、その異なる態様における本発明の実現のため、個々に、ならびに任意の組合せにおいて、必須であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-核酸部分および非L-核酸部分を含む、修飾L-核酸であって、L-核酸部分は、非L-核酸部分とコンジュゲートされ、かつL-核酸部分と非L-核酸部分とのコンジュゲーションは、L-核酸部分のみを含むL-核酸と比較して、生物からの排出の遅延を導き、かつL-核酸部分はシュピーゲルマーである、修飾L-核酸。
【請求項2】
L-核酸部分および非L-核酸部分を含む、修飾L-核酸であって、L-核酸部分は非L-核酸部分とコンジュゲートされ、かつL-核酸部分と非L-核酸部分とのコンジュゲーションは、L-核酸部分のみを含むL-核酸と比較して、生物内の滞留時間の増大を導き、かつL-核酸部分はシュピーゲルマーである、修飾L-核酸。
【請求項3】
L-核酸部分および非L-核酸部分を含み、L-核酸部分は非L-核酸部分とコンジュゲートされ、非L-核酸部分は約300Daを超える分子量、好ましくは約20,000Daを超える分子量、より好ましくは約40,000Daを超える分子量を有する、特に請求項1および/または請求項2記載の修飾L-核酸。
【請求項4】
約600Daから500,000Da、好ましくは約10,000Daから400,000Da、より好ましくは約50,000Daから300,000Daの分子量を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項記載の修飾L-核酸。
【請求項5】
L-核酸部分が、300Daから50,000Da、好ましくは5,000Daから25,000Da、より好ましくは7,000Daから15,000Daの分子量を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項記載の修飾L-核酸。
【請求項6】
非L-核酸部分が、L-核酸の以下の成分のうちの一つに存在するか、またはそれに結合されたL-核酸部分の官能基を介して、L-核酸部分に直接的または間接的に連結され、官能基は、末端および非末端リン酸、末端および非末端糖部分、ならびに天然および非天然プリン塩基、ならびに天然および非天然ピリミジン塩基からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項記載の修飾L-核酸。
【請求項7】
非L-核酸部分とL-核酸部分との結合が、2'-OH-、3'-OH-および/もしくは5'-OH-基またはそれらに由来する誘導体、あるいはL-核酸部分の糖部分の一つまたは複数を介して起こることを特徴とする、請求項6記載の修飾L-核酸。
【請求項8】
結合が、ピリミジン塩基の5位または6位の少なくとも1つを介して起こることを特徴とする、請求項6または7記載の修飾L-核酸。
【請求項9】
結合がプリン塩基の少なくとも1つを介して起こり、結合が好ましくは8位で起こることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項記載の修飾L-核酸。
【請求項10】
結合が、プリンおよび/もしくはピリミジン塩基ならびに/または脱塩基部分の、環外および/または環内のアミン基および/またはケト基の一つまたは複数において起こることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項記載の修飾L-核酸。
【請求項11】
非核酸部分が、直鎖ポリ(エチレン)グリコール、分岐ポリ(エチレン)グリコール、ヒドロキシエチルデンプン、ペプチド、タンパク質、多糖、ステロール、ポリオキシプロピレン、ポリオキシアミデート、ポリ(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミン、正確なポリエチレングリコールからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項記載の修飾L-核酸。
【請求項12】
L-核酸部分と非L-核酸部分との間に配置されたリンカーを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項記載の修飾L-核酸。
【請求項13】
L-核酸部分が、配列番号:1の核酸を含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項記載の修飾L-核酸。
【請求項14】
L-核酸部分がリンカーとして5'-OH末端に6-アミノヘキシルリン酸を有することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項記載の修飾L-核酸。
【請求項15】
ポリエチレングリコールが、アミノヘキシルリン酸リンカーの遊離アミンにカップリングすることを特徴とする、請求項14記載の修飾L-核酸。
【請求項16】
診断剤としての請求項1から15のいずれか一項記載の修飾L-核酸の使用法。
【請求項17】
医薬品を調製するための請求項1から15のいずれか一項記載の修飾L-核酸の使用法。
【請求項18】
以下の段階を特徴とする、L-核酸部分および非L-核酸部分を含む修飾L-核酸、特に、請求項1から15のいずれか一項記載の修飾L-核酸の調製方法:
a)修飾L-核酸の、L-核酸部分またはその一部を形成するL-核酸を提供する段階;
b)修飾L-核酸の、非L-核酸部分またはその一部を形成する非L-核酸を提供する段階;
c)a)からのL-核酸およびb)からの非L-核酸を反応させる段階;ならびに
d)L-核酸部分がシュピーゲルマーである、段階c)で得られた修飾L-核酸を任意で単離する段階。
【請求項19】
段階a)におけるL-核酸がリンカーを含むことを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
段階a)においてL-核酸を提供した後に、それにリンカーを設けることを特徴とする、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26a】
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【図26b】
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【図27】
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【図28a】
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【図28b】
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【図28c】
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【図28d】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−68651(P2011−68651A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227293(P2010−227293)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【分割の表示】特願2003−538178(P2003−538178)の分割
【原出願日】平成14年10月25日(2002.10.25)
【出願人】(504164918)ノクゾン ファルマ アーゲー (1)
【Fターム(参考)】