説明

個別サイズのLDL(低比重リポ蛋白)サブクラス粒子の生体内での濃度勾配を考慮する数理モデルを使用してCHD(冠状動脈性心臓疾患)のリスクを評価する方法、システムおよびコンピュータプログラム

本方法、コンピュータプログラム製品および装置は、CHDを有するまたは発症する被験者のリスクを特定の数理モデルにより決定する。該特定の数理モデルは、小型および大型LDL粒子の生体外測定値を、予測される生体内部濃度を反映するように調整するために、濃度勾配係数を利用したLDL粒子の生体内濃度のモデルである。それによってCHDリスクの改良モデルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は一般にリポ蛋白の分析に関する。本発明は、特に、血漿および血清内のリポ蛋白成分に関連する重畳信号のNMR分析に適する。
【背景技術】
【0002】
従来、「高度の」リポ蛋白試験パネルは一般に、平均低比重リポ蛋白(LDL)粒子サイズならびにLDL粒子数のリポ蛋白測定を含んでおり、後者は(nmol/Lなどの濃度単位の)濃度および量を表し、前者はサンプル中のLDLを構成するLDL粒子の平均サイズ(nm単位)を表す。例えば、Raleigh,N.C.に所在するLipoScience Inc.から入手可能なNMR LipoProfileR(登録商標)リポ蛋白パネルレポートにおいては、平均LDL粒子サイズはサンプルのLDL粒子全体、すなわち、結合した小型、中型および大型のLDL粒子の平均サイズに一致する。誰もが様々な粒子サイズの連続体で存在するLDL粒子を有し得る。特定のリポ蛋白サブクラスパラメータの典型的レポートに関してはwww.liposcience.comおよび米国特許第6,576,471号を参照されたい。この特許の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
「NMR分光計から得られるデータの分析による血液のリポ蛋白成分の測定(Measurement of Blood Lipoprotein Constituents by Analysis of Data Acquired from an NMR Spectrometer)」と題したOtvosへの米国特許第4,933,844号、および、「リポ蛋白のクラスおよびサブクラスの測定方法ならびに装置(Method and Apparatus for Measuring Classes and Subclasses of Lipoproteins)」と題した同じくOtvosへの米国特許第5,343,389号は、インビトロの血漿または血清サンプルにおける複数の様々なリポ蛋白成分を同時に取得および測定する、NMR評価技法を記載している。また、「血漿および血清サンプルにおけるリポ蛋白Xの存在ならびに濃度を決定する方法(Method Of Determining Presence And Concentration Of Lipoprotein X In Blood Plasma And Serum)」と題した米国特許第6,617,167号も参照されたい。上記の各特許の全内容は、参照によりあたかも再度引用したかのように本明細書に組み込まれる。血漿および/または血清サンプル中のリポ蛋白を評価するため、NMRスペクトルの化学シフト領域内のNMR分光分析由来の複数の信号の振幅は、複合信号またはスペクトルのデコンボリューションにより導き出され、冠状動脈または心臓疾患を有するまたは発症する患者のリスクを評価するために所定の試験基準と比較される。
【0004】
図1を参照すると、リポ蛋白の特定のサブクラスの成分は重畳信号を有することに注意されたい。例えば、明瞭にするために2つだけの(L2およびL5)LDLサブクラス成分値として示すLDL成分の値は、信号強度対PPMのスペクトルグラフに表示される場合、著しく重畳する。信号の重畳特性は、ほぼ単一の回帰行列を生成する。ほぼ一直線上のデータに非負値最小二乗法を使用する従来の統計的評価方法は不安定で変化する回帰係数を有する。Myers、Raymond H.による「各種用途における古典的および最新の回帰(Classical and Modern Regression with Applications)」(2nd Ed.,Mass.PWS−Kent、1990);Boxら(Statistics for Experimenters;An Introduction to Design,Data Analysis,and Model Building)」(New York、Wiley、1978)を参照のこと。
【0005】
さらに、最近では、各種のサンプル評価方法が開発され、対象とするバイオサンプル中のLDL粒子サイズなどの、対象とするリポ蛋白サブクラスのパラメータの個別のサイズセグメントまたはサイズカテゴリの測定における分解能および/または信頼性の向上を実現している。例えば、代理人ファイル第9062−27号および関連仮出願第60/421,177号により識別される、「重畳信号から各化学成分のスペクトルへの寄与を解析するための方法、システム、コンピュータプログラム(Methods,Systems and Computer Programs for Deconvolving the Spectral Contribution of Chemical Constituents With Overlapping Signals)」と題した米国特許出願第XXX号を参照すること。これら特許出願の全内容は、参照によりあたかも再度引用したかのように本明細書に組み込まれる。
【0006】
平均LDL粒子サイズおよび/またはLDL粒子総数が臨床上有益な情報を提供し、冠状動脈性心臓疾患(CHD)および/または冠動脈疾患(CAD)に対するリスクがある被験者を正しく識別すると同時に、この情報は、一部の被験者についての一部のサンプルにおいては実際の予測リスクを軽視または抑制することがある。さらに、インビトロの血漿または血清サンプルにおけるLDLの含有量の測定は、被験者の実際のリスクを表さないことがある。前述の内容を考慮して、CHDを発症または有する被験者のリスクを評価する改良された予測モデルを提供する必要がある。
【発明の開示】
【0007】
[関連出願]
本出願は2003年10月23日出願の米国仮特許出願第60/513,795号に対する優先権を主張するものであり、この仮出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
本発明の特定の実施形態は、血漿または血清サンプルから取られる個別のサイズ範囲のLDL粒子の生体内濃度勾配を考慮に入れる数理モデルを用いて、母集団に対してCHDのリスク分析の予測能力を改良および/または向上する、方法、システムおよびコンピュータプログラム製品を提供することである。この予測モデルは、特に、生体外バイオサンプルのCHDスクリーニングに対する自動化スクリーニング試験および/またはリスク判定評価に有効である。
【0009】
本発明の実施形態は、治療が必要かどうか判定するため、および/または、治療の効果(物理的治療および/またはスタチンなどの薬物治療のいずれであっても)を追跡するために臨床医が簡単に調査できる、LDLのリスク数(すなわち、LDL粒子の重み付き濃度または重み付きLDL粒子数)を提供することが可能な予測モデルを提供する。LDLのリスク数は、本発明の実施形態により現在考察されているとおり、実施形態によっては、LipoScience,Inc.からのレポートと同様に、試験パラメータを識別するため研究室レポート上では「wLDL−P」数と称される、重み付きLDLパラメータとして識別される。
【0010】
数理モデルは、血漿および/または血清中の測定される小型および大型のLDLサブクラス粒子の濃度値を調整して、動脈壁中にまたは動脈壁に存在するおよび/または内皮下腔に存在する確率が高いこれらLDL粒子の生体内の濃度により密接に一致させるように構成でき、被験者のリスクのよりよい予測値を提供できる。予測数理モデルを構成することにより単一の予測変数を定義し、この変数を用いて治療に適すると認めるこれらの被験者を識別しおよび治療の有効性を追跡することができる(すなわち、予測変数は患者体内のLDL粒子の感度判定基準であり、奏功した治療的介入において予測変数の値の減少を示すことができる)。
【0011】
特定の実施形態においては、所定の数理LDLリスクモデルは、LDLサブクラス粒子の所定の範囲のそれぞれの測定量を評価し、その後、それぞれの所定のLDL粒子のサブクラスの量を考慮して特定のサンプル/被験者についての重み付きLDL粒子リスク数を自動的に計算するように構成される。本発明の実施形態は、サンプルを分析して少なくとも小型LDL粒子および大型LDL粒子についての個別の測定値を提供し、それぞれのサイズカテゴリが様々な割合のアテローム生成を有することを認識し、その後、それぞれの所定のサブクラス粒子の測定値を考慮に入れるLDL予測変数を計算することができる。すなわち、高濃度(高いLDL粒子数)の大型LDLサブクラス粒子を有するサンプルは、高濃度の小型LDLサブクラス粒子を有するサンプルと同様に、リスクが増大することを示す。しかし、より小型のLDL粒子は大型LDL粒子よりアテローム発生性が高く、体内で異なる挙動を示す。その結果、LDL粒子の総数が同じ2人の被験者でも、一方が他方の被験者に比べてより少ない大型LDLサブクラス粒子を有する場合には、リスクが異なる。
【0012】
特定の実施形態においては、LDL粒子サイズのリスクの予測変数(RLDL)は、サンプル中で測定されたより大型のLDLサブクラス粒子(LDLL)の量に比べて、小型のLDLサブクラス粒子(LDLS)の量に対してより高い重み付け値を割当てることにより計算される。
【0013】
予測(LDLサブクラスのリスク)数理モデルは、重畳信号を有する化学成分からのスペクトル寄与率を有する信号を用いてリポ蛋白成分を測定する、NMR信号測定方法において使用される。特定の実施形態においては、LDLサブクラスのサイズ範囲は、3つまたはそれ以上の様々な個別の測定可能な成分(すなわち、L1、L2、L3、L4)としてさらに定義され、この成分のそれぞれは所定の数理モデルに従って個別に重み付けされる。
【0014】
本発明の特定の実施形態は、CHDを有するまたは発症する被験者のリスクを決定する方法を提供する。この方法は、(a)血漿または血清サンプル中の小型および大型LDLサブクラス粒子の濃度測定値を取得し、(b)被験者のLDLに基づくCHDリスクを予測する所定の数理モデルに基づいた小型のLDLサブクラス粒子の測定値を増加し、(c)増加された小型LDLサブクラス粒子の測定値を使用して、CHDを有するおよび/または発症する被験者のリスクを決定することを含む。
【0015】
別の実施形態は、CHDを有するおよび/または発症する被験者のリスクを決定する方法であって、この方法は、(a)対象の生体外の血漿および/または血清サンプルから取られる小型および大型LDLサブクラス粒子の濃度を測定すること、(b)被験者の生体内の動脈壁の近位の(通常その中の)予測される濃度を反映するために、内部濃度勾配を考慮に入れる所定の数理モデルに基づいて少なくとも小型LDL粒子の濃度測定値を調整することにより、被験者のCHDリスクを決定することを含む。
【0016】
さらに別の実施形態は、被験者のCHDリスクを決定する方法であって、この方法は、(a)対象のバイオサンプル中の小型および大型LDLサブクラス粒子のNMR導出濃度測定値を取得すること、(b)測定された小型LDLサブクラス値に第1重み係数を適用し、および測定された大型LDLサブクラス値に第2重み係数を適用すること、(c)重み付き小型および大型LDLサブクラス粒子の値を用いてLDLのリスク予測値数を計算することを含む。
【0017】
LDLのリスクの予測値数はnmol/L単位の重み付きLDL粒子数である。
【0018】
さらに本発明の別の実施形態は、動脈壁における生体内の見込まれる値を反映するために(被験者の見込まれるCHDリスクを予測するために)、生体外のLDLサブクラス粒子の値を調整するコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は媒体に組み込まれたコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ可読記憶媒体を含む。コンピュータ可読プログラムコードは、動脈壁内の生体内の予測される濃度を反映するように、小型および大型LDLサブクラス粒子の測定された生体外濃度を調整する数理モデルを提供するように構成されるコンピュータ可読プログラムコードを含む。
【0019】
特定の実施形態では、コンピュータプログラム製品は複合NMR信号を小型および大型LDLサブクラス粒子の測定された濃度にデコンボリューションするコンピュータ可読プログラムコードを含む。
【0020】
別の実施形態は被験者内のリポ蛋白成分を測定する装置を提供する。この装置は、(a)血漿または血清サンプルのNMR複合スペクトルを取得するNMR分光計、(b)それぞれが選択された参照リポ蛋白成分信号の線形に関連付けられ、それぞれの成分スペクトルが血漿または血清サンプルの複合NMRスペクトルに寄与する関連スペクトルを有する、複数の別個のNMR成分スペクトルを定義するコンピュータプログラムコード、(c)分析されるサンプル中の小型および大型LDLサブクラス粒子の濃度を決定するコンピュータプログラムコード、(d)数理モデルを適用して、動脈壁内の予測される内部の濃度を反映するように決定されたサンプル濃度を調整するコンピュータプログラムコード、を含む。
【0021】
本発明の開示を参照することにより当業者には理解されるように、本発明の実施形態には、方法、システム、装置および/またはコンピュータプログラムまたはそれらの組み合わせを含む。
【0022】
本発明の前述および他の目的および態様は本明細書において以下に詳細が説明されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明をさらに詳細は説明し、以下に本発明の実施形態を示す。ただし、本発明は様々な形態で具体化でき、本明細書に示す実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が詳細な完全なものであり、当業者に本発明の範囲を完全に伝達するために提供される。図面では、同一番号は全体を通して同一要素を指し、特定の部品の厚さ、サイズおよび寸法、または形状は、明瞭化のために強調されている。図に示されたまたは請求項に記述された操作および/またはステップの順番は、別に定めない限り、提示された順番に限定されないものとする。図面で使用される破線は、示されている形状、操作またはステップは随意であることを示す。
【0024】
一般に認められているとおり、従来の脂質パネルにより提供されるLDLコレステロールレベルは、CHDまたはCADを有するおよび有していない異なる母集団を区別できない。しかし、リポ蛋白粒子の生理学的機能および/または特質は、コレステロールを運搬するリポ蛋白に内在するアテローム生成の優れたインジケータを提供できる。公知のとおり、LDLは、いわゆる「悪玉」コレステロールを運搬する。LDL粒子は様々なサイズを有し、小型サイズは最も危険な種類と考えられている。小型のLDL粒子は大型のLDL粒子よりも簡単に動脈壁を貫通し、また動脈壁により簡単に捕集され、その位置においてコレステロールが開放されプラークの生成を引き起こす。コレステロールのレベル外の心臓疾患の患者リスクを決定する――患者のコレステロールレベルでなく――のはこれらのリポ蛋白の数およびサイズであるため、薬物療法は一般に、LDL粒子の数を低減することを目標とする。
【0025】
より積極的な治療が望ましいのは、LDL粒子が境界線および/または高レベル量に存在する場合、および/または特定のLDL粒子のサイズがリスク増加を示している場合である。現在、LDL粒子サイズは、パターンA(大)およびパターンB(小)に識別されている。パターンAは、通常約20.6〜22.0nmのサイズを含む大型の平均粒子サイズに関連する低リスクのパターンと定義される。パターンBは、高リスクカテゴリとして定義され、一般に、約19.0〜20.5nmの小型の平均粒子サイズに相当する。
【0026】
本明細書おいて使用されるとき、用語「小型LDL粒子」はサイズが一般に約19.0〜20.5nmに分布する粒子を含み、用語「大型LDL粒子」は約20.6〜22.0nmの範囲にある粒子を含む。中間サイズの粒子は小型および/または大型の呼称の一方に分類されるか、または一般に約20.5nmに近いサイズ範囲の粒子を含むとして別個に測定される。特定のカテゴリ内のある特定のサイズは、一般に大きな臨床研究に応じて、異なるカテゴリに移動できる。例えば、「小型LDL粒子」は中間カテゴリの下位部分を含むように拡大でき、大型LDL粒子は中間カテゴリの上位部分を含むように拡大できる。用語CADおよびCHDは互換的に使用され、冠状動脈性心臓疾患および/または冠動脈疾患を発症するまたは有する患者または被験者のリスクに相当する。
【0027】
図2は、血流中(血管内腔内と称される)を循環するLDL粒子および(動脈内膜と称される)内皮細胞の反対側にあるLDL粒子を示している。図示されているとおり、生体内の小型LDL粒子は、大型LDL粒子より動脈内膜(場合により、内皮下空間と称される)に内皮細胞の境界を横切って容易に移動する。内皮下空間において、小型LDL粒子は、細胞外マトリックスのプロテオグリカンに大型LDL粒子より強固に結合している。結果的に、小型LDL粒子は大型LDL粒子に比べて動脈壁の内皮下空間で長い残留期間を有し、大型LDLに比べた小型LDLの濃度は、血漿または血清サンプル中の濃度と比較して動脈壁中で増加し得る。結果として、循環内(すなわち血流中)を移動するLDL粒子の量を測定するが、動脈疾患が発現する可能性がある場所の内部濃度勾配を考慮に入れない評価は、CADのリスクを正確に表さない。用語「濃度勾配」は、生体外の血漿および/または血清サンプル中で測定された量に対する、内皮細胞、境界、内皮下空間の近位でおよび/またはCHD/CADが発生する可能性がある場所の内部濃度を反映するために、動脈壁上および壁内で、発生することが予測される濃度の量の間の濃度差を範囲に含むものとする。用語「動脈壁内」は内皮下空間および/または内皮細胞内などの、動脈壁上および/または動脈壁内を含む。
【0028】
いずれの理論による制限も望まないが、小型LDL粒子の生体内の比較的安定状態の濃度は、それらのより小型のサイズおよび/または細胞構造のために、血流から内皮細胞を通って動脈の内膜に移動する、と考えられる。したがって、血漿および/または血清サンプル中で小型LDL粒子の測定に適用される重み係数は、動脈壁内の小型LDL粒子のより適正な生体内濃度に実質的に(通常線形的に)近くなる。加えて、大型LDLが充分な量で存在するが、血流内で見られる量から低減された量で動脈空間内に存在する場合は問題であると認識されるが、低減された重み係数はさらに、この成分に対する患者リスクをより適正に予測することもできる。
【0029】
加えて、内皮下空間内の小型LDL粒子の長い残留時間により、酸化および化学変化を受ける時間および/または機会が増加する、と考えられる。酸化および化学変化は、粒子がマクロファージにより吸収され、泡沫細胞変換され、最終的にアテローム斑になる前駆物質である、と考えられるプロセスである。大型LDL粒子は内皮下空間内の時間が短く、したがって、動脈プラークおよび/またはCADを引き起こすこれらの変化を受ける機会が少ない。
【0030】
したがって、本発明の実施形態は血漿および/または血清サンプルから測定されたLDL粒子の値の重み付き指標を与える予測モデルを提供する。該予測モデルは、動脈壁内および/またはCADが発現している可能性のある場所のLDL粒子の組成をより正確に表す。
【0031】
従来においては、平均LDL粒子サイズ20.5nmは、50%が大型であり50%が小型である粒子を有するサンプル(中間の粒子サイズに平均化する)からだけでなく、大型ではなく小型でもない(すべて中間の)LDL粒子を有するサンプルからももたらされる。したがって、類似のLDL粒子数に対して、これらのサンプルのそれぞれについてのCHDリスクは異なるが、以前はおそらく明確に提示されていない。さらに、動脈壁内の(様々な)濃度に対する調整が実行されていなかった。
【0032】
本発明の特定の実施形態は、内部濃度勾配を考慮に入れ、および/または、様々な所定の粒子サイズ範囲のLDLサブクラスの重み付きの個別の指標を使用する数理モデルを使用することにより、母集団全体にわたるリスク分析の予測能力を改良および/または向上する、方法、システムおよびコンピュータプログラム製品を提供する。この予測モデルは、特に、生体外バイオサンプルのCADスクリーニングに対する自動化スクリーニング試験および/またはリスク判定評価に有効である。
【0033】
特定の実施形態においては、所定の数理的LDLサブクラスリスクモデルは、所定のLDLサブクラスのそれぞれの測定量を評価し、その後、LDL粒子の重み付き測定値に基づいて予測変数値を決定するように構成される。本発明の実施形態は、サンプルを分析して小型LDL粒子および大型LDL粒子の両方についての個別の濃度測定値を提供し、それぞれのサイズカテゴリが様々な割合のアテローム生成を有することを認識し、その後、それぞれのLDLサブクラスの測定値を考慮に入れる予測変数を計算することができる。
【0034】
特定の実施形態においては、LDL粒子のリスク予測数(RiskLDL)は、サンプル中で測定された小型のLDL粒子の量(LDLS)に第1(より高い)重み係数(X)を割り当て、および大型のLDL粒子(LDLL)に第2重み係数(Y)を割当てることにより計算される。このモデルは、下記の数式を用いて表される。
X(LDLS)+Y(LDLL)=RiskLDL
ここでX>Yである。
【0035】
別の実施形態においては、第3重み係数「Z」を用いてモデルに中間LDL粒子を追加することができる。第3重み係数Zは大型の粒子サイズに対して使用されるYと同一であるか、それより大きい。したがって、特定の実施形態では、X>Z>Yである。追加の重みおよびLDLサブクラス粒子の下位区分を使用することもできる。
【0036】
特定の実施形態では、Xは1より高い重みとし、Yは1未満の重みとして、内皮下空間でおよび/または動脈壁内で見られるこれらの成分のそれぞれに対して濃度勾配を反映することができる。特定の実施形態では、Xは少なくとも約25%まで、小型LDL粒子の測定値を増加するように構成される。加えて、または代替として、Yは少なくとも約25%まで大型LDL粒子の測定値を低減するように構成される。
【0037】
モデル内の重み係数X、Y(および/またはZ)は、ほぼ全てのサンプルにわたって適用される定数であってよい。別の実施形態では、重み付け値は、その場で定義されてもよいし、および/または特定のサンプル内容物に基づき公式または参照テーブルを用いて適用されてもよい。例えば、XおよびYは、LDL粒子数または他の測定技法などにより表される現在のLDL粒子全体、および/または母集団に対して測定されたLDLサブクラス粒子のそれぞれの量、および/またはLDL粒子の割合、に応じて変化してもよい。例えば、小型LDLサブクラス粒子が母集団の約50%より大きな量に存在している場合に、通常の重みよりも高い重みがXに割当てられる。小型LDL粒子および大型LDL粒子の両方が母集団よりも大きな量で存在し、LDL粒子数が境界線にあるかまたは高い場合、XおよびYの両方は、大型LDLサブクラス粒子がほぼ平均であるまたは平均より少ないときには、これらの状態と比較して、より大きな値を割当てられる。
【0038】
サンプルが(約1400nmol/Lより大きい)大型LDL粒子数を有しているような(ただし、これに限定されない)特定の実施形態においては、より大型のLDLサブクラス粒子の測定値は、例えば2またはそれ以上の係数(すなわち、X=2、Y=0.5)によって、小型LDLサブクラス粒子の測定値を与えられた重みに比べて大幅に低減される。サンプルが(約1400nmol/Lより大きい)極めて大型のLDLサブクラス粒子の大型のLDL粒子数を有しているような(ただし、これに限定されない)特定の実施形態においては、重みはほぼ同一(すなわち、X=1.1、Y=1)である。
【0039】
特定の実施形態では、小型および/または大型LDL粒子の増加した濃度が決定されるとき、モデルは様々な増加した重み係数を適用するように構成される。したがって、低レベルのLDLについては、LDLのリスク数を決定するのに使用されるLDLモデルは、リスク数に到達するために、小型および/または大型LDLサブクラス粒子の測定値にいずれの重み係数も適用しない。しかし、それぞれのサブクラス粒子の全体または個々の濃度が所定のしきい値レベルに近づくと、重み係数はより低いLDLサブクラス濃度を適用されるかそれを超えて増加される。
【0040】
別の実施形態においては、数理モデルは、生体外サンプル中の小型LDL粒子の測定値を増加して体内の(内皮空間などにおける)動脈壁内に見られるレベルに近づける、様々な数式(非線形)を使用する。他のモデルは、年齢、性別などを考慮に入れて、内皮細胞生理学における相違に対して濃度勾配を調整する。
【0041】
予測モデルは、濃度勾配ゲル電気泳動、密度勾配超遠心分離法およびNMR分光分析法を含む(ただし、これらには限定されない)、任意の適切なLDLサブクラス測定技法において使用できる。ただし、特定の実施形態においては、予測モデルは生体外の血漿および/または血清サンプル中のLDLサブクラスのNMR分光測定において使用される。
【0042】
操作においては、予測リスク変数RLDLの値を取得するために、対象のサンプル中の大型および小型LDL粒子の粒子濃度測定値(nmol/L単位または他の適切な単位など)が最初に取得される。NMR分光分析法を使用する場合、NMR導出粒子濃度測定値の従来の技法と同様に、小型および大型LDLサブクラス粒子に対する粒子濃度(リットル当たりのナノモル、nmol/L)は、これらのサブクラスによる信号振幅の同報通報を測定し、公知の粒子濃度の単一のサブクラス標準のNMR測定から得られる換算係数を適用することにより計算される。次に、大型および小型のLDLサブクラスの粒子濃度は、重み係数(X、Yなど)を乗算され、一緒に加算されてRLDLの値(これも通常nmol/L)を提供する。この値は、線形またはスカラーリスク数、すなわち1−10に変換でき、またはそれ自体リスク数として使用できる。以前の分析方法とは対照的に、同一のLDL粒子数を有する2人の被験者は、LDL粒子数および/または重み係数を構成する成分の重み付き濃度に基づく様々な重み付きLDLリスク数を有し、これにより、大型LDL粒子からのリスクを無視することなく、小型のLDL粒子の増加量を有する被験者におけるLDLベースのリスクをより正確に表す。
【0043】
いずれにせよ、従来、リポ蛋白増加した数の治療における第1ステップは識別である。本発明の実施形態は、リポ蛋白の固有特性を分析するスクリーニング試験およびレポートを提供して、完全な定量的および定性的なリポ蛋白情報を与える。試験レポートは、LDLリスク予測変数RLDL(すなわち重み付きLDL粒子数)を含む代謝症候群に対する個々の潜在するリスクについて有意な固有情報を含むように構成され、RLDLは図3に示されているとおりリポ蛋白のリスクの分析部分においてLDL粒子に関連するリスクを評価するために使用される。加えて、RLDLパラメータは、図3のリスク評価パネルに示されている小型LDLサブクラスおよび/または増加したLDL粒子数を置き換えることができる。
【0044】
前述の通り、本発明の特定の実施形態は、NMRLipoProfileR(登録商標)のNMR導出コレステロールまたはリポ蛋白パネルに類似するリポ蛋白のNMR導出測定を提供することであり、上記パネルは、患者を評価する場合に考慮に入れるRLDL数ならびに対象の他のリポ蛋白を含み、HDLのサブクラスおよびVLDLのサブクラスの濃度を含む。
【0045】
典型的なNMRサンプル分析
公知のとおり、NMRリポ蛋白サブクラス分析は、NMR分光分析法によってリポ蛋白サブクラスレベルおよびVLDL、LDLおよびHDL粒子の平均粒径を測定するために実行される。NMR分光方法は、定量化を基本として、様々なサイズのリポ蛋白サブクラスによる特性信号同報通報を使用する。Otvos JD、Jeyarajah EJ、Vennett DW、Krauss RM(Development of a proton nuclear magnetic resonance spectroscopic method for determining plasma lipoprotein concentrations and subspecies distributions from a single,rapid. measurement)(Clin Chem、1992;38:pp.1632−1638);およびOtvos JD(Measurement of lipoprotein subclass profiles by nuclear magnetic resonance spectroscopy)(Clin Lab、2002;48:pp.171−180)を参照されたい。各サブクラス信号は粒子内に含まれる脂質の末端メチル基の総数から発生し、粒子核中のコレステロールエステルおよびトリグリセリドはそれぞれが、3つのメチル基に寄与し、ならびに、粒子外表面におけるリン脂質および非エステル化コレステロールは2つのメチル基に寄与する。サブクラス粒子内に含まれるメチル基の総数は、よい近似で、粒径にのみ依存し、粒子核内のコレステロールエステルおよびトリグリセリドの相対量における変動性のような発生源から生じ、脂質アシル鎖の不飽和度合いを変化させ、またはホスホリピド組成を変化させる、脂質組成の相違による影響を実質的に受けない。この理由から、各サブクラスにより発生するメチルNMR信号は、サブクラスの粒子濃度の直接測定として役立つ。
【0046】
従来は、各血漿標本(0.25ml)のNMRスペクトルが、自動化された400MHzリポ蛋白分析器を使用して、複製によって取得され(通常、約5つの分離したスペクトルが取得される)、脂質メチル信号の包絡線は、コンピュータ上で分解され、16のリポ蛋白サブクラス(キロミクロン、6VLDL、1IDL、3LDL、5HDL)の寄与信号の振幅を与えていた。次に、これらの信号振幅を粒子濃度単位または脂質質量濃度単位(コレステロールまたはトリグリセリド)で表されるサブクラス濃度に関連付ける変換係数が適用されていた。変換係数はNMRと、超遠心分離法とアガロースゲルろ過クロマトグラフィーの組み合わせを使用して正常および脂質異常の個人の多様なグループから分離されている、定義されたサイズの一式の精製されたサブクラス標準について実行される化学分析とから導き出されていた。粒子濃度(nmol/L(リットル当たりの粒子のnmol)の単位)は核脂質(コレステロールエステルおよびトリグリセリド)の全体濃度を測定し、これら脂質により占有される容積を粒径の値から計算される粒子あたりの核容積で割算することにより、各サブクラス標準に対して計算される。編者Rifai N、Warnic GR、Dominiczak MH(Handbook of LipoProtein Testing(2nd Ed.,Washington,DC,AACC Press;2000、pp.609−623)。VLDLサブクラスの脂質質量濃度はトリグリセリド単位mg/dLで与えられ、LDLおよびHDLサブクラスの脂質質量濃度はコレステロール単位mg/dLで与えられる。関連するサブクラス濃度は、VLDLトリグリセリド、LDLコレステロールおよびHDLコレステロール全体に対してNMR導出値を与える。
【0047】
従来は、分析のために、16の測定されたサブクラスが、下記の10のサブクラスカテゴリにグループ化される(しかし、様々なサイズ範囲も上記のとおり使用できる)。すなわち、大型VLDL(60−200nm)、中間VLDL(35−60nm)、小型VLDL(27−35nm)、IDL(23−27nm)、大型LDL(21.3−23nm)、中間LDL(19.8−21.2nm)、小型LDL(18.3−19.7nm)、大型HDL(8.8−13nm)、中間HDL(8.2−8.8nm)および小型HDL(7.3−8.2nm)である。IDLおよびLDLサブクラス直径は、濃度ゲル電気泳動により推定される直径より均一に約5nm小さく、電子顕微鏡検査およびLDL脂質合成データの両方と一致する。Redgrave TG、 Carlson LA(Changes in plasma very low density and low density lipoprotein content,composition,and size after a fatty meal in normo−and hypertriglyceridemic man)(J Lipid Res、1979;20:pp.217−29)およびRumsey SC、Galeano NF、Arad Y、Deckelbaum RJ.(Cryopreservation with sucrose maintains normal physical and biological properties of human plasma low density lipoproteins)(J Lipid Res 1992;33:pp.1551−1561)を参照のこと。
【0048】
重み付き平均VLDL、LDLおよびHDL粒子サイズ(nm直径)は、それのメチルNMR信号の振幅から推定されるその相対質量百分率で乗算される各サブクラスの直径の合計として算出される。濃度勾配ゲル電気泳動およびNMRにより決定されるLDLおよびHDLサブクラス分布は高い相互関係を有する。Otvos JD(Measurement of lipoprotein subclass profiles by nuclear magnetic resonance spectroscopy)(Clin Lab 2002;48:pp.171−180)、およびMcNamara JR、Small DM、Li Z、Schaefer EJ(Differences in LDL subspecies involve alterations in lipid composition and conformational changes in apolipoprotein B)(J lipid Res 1996;37:pp.1924−1935)、およびGrundy SM、Vega GL、Otvos JD、Rainwater DL、Cohen JC(Hepatic lipase influences high density lipoprotein subclass distribution in normotriglyceridemic men : genetic and pharmacological evidence)(J Lipid Res 1999、40:pp.229−234)。
【0049】
血漿プールの複製分析は、NMRサブクラス測定の変動係数が、全体およびVLDLトリグリセリド、LDLおよびHDLコレステロールおよびLDL粒子濃度についてのNMR導出値に対しては<3%、VLDLサイズに対しては<4%、およびLDLおよびHDL平均サイズに対しては<1%であるほどに再現性があることを示す。Otvos JD(Measurement of lipoprotein subclass profiles by nuclear magnetic resonance spectoroscopy)(Clin Lab 2002;48:pp.171−180)。
【0050】
前述の通り、上に述べた従来の分析技法を修正して、代理人ファイル番号第9062−27号および対応する米国仮出願第60/421,177号により識別される、同時係属の米国特許出願に記載されるとおり、大型および小型LDL粒子濃度を高精度で定量化できるようにした。さらに、評価法を修正して予測モデルを実現し、本発明の実施形態に従って重み付けされたLDLリスク数を提供できる。加えて、前述の通り、別の評価技法(非NMR測定技術を含む)も本発明の代替の実施形態において使用できる。
【0051】
統計的操作
特定の実施形態においては、標本を評価するのに使用される方法、システムおよび/またはコンピュータ製品は統計的近似モデルを使用する。該統計近似モデルは、所定の近似モデルおよび標準に従って未知サンプルの信号データを評価して、少なくとも1つの選択された化学成分の存在を識別しおよび/またはサンプル中の該化学成分のレベルまたは濃度を測定する。一般的には、本発明のモデル、プログラムおよび方法は、高度にまたは密接に相互関連している個々の成分スペクトル(スペクトルにおいて重畳信号ラインを少なくとも複数備える)を備える複合サンプルの信号データを評価して、少なくとも10の異なる個々の成分および/またはそれのレベルの存在を識別する、ように構成される。用語「高度に」および「密接に」は、「相互関連している」と共に使用される場合には区別なく使用され、「高度に相互関連している」または「密接に相互関連している」のどちらかが続く説明においては、分析されるサンプル中の複数の成分が、これら成分からのスペクトル寄与を含む複合信号内で重畳するそれぞれのスペクトルを生成することを意味する。
【0052】
当業者には明らかなとおり、本発明は、装置、方法、データまたは信号処理システム、あるいはコンピュータプログラム製品として具体化できる。したがって、本発明は、完全なソフトウェア実施形態またはソフトウェアおよびハードウェア態様の組み合わせの実施形態の形態を取ることができる。さらに、本発明の特定の実施形態は、媒体に組み込まれているコンピュータ使用可能プログラムコードを有するコンピュータ使用可能記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。ハードディスク、CD−ROM,光学記憶装置または磁気記憶装置を含む、任意の適切なコンピュータ可読媒体を利用できる。
【0053】
コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線または半導体システム、装置、デバイスまたは伝搬媒体であってもよいが、これらに限定されない。コンピュータ可読媒体の多くの特定例には(すべてを網羅したリストではない)、1つまたは複数のワイヤを有する電気接続、携帯用のコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能PROM(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバおよび携帯用コンパクトディスク読出し専用メモリー(CD−ROM)を含む。なお、コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体としては、プログラムがその上にプリントされた紙または別の適切な媒体であってもよいことに留意する。該プログラムは、例えば、光学式走査、コンパイルされ、インタープリットされ、または必要な場合適切な方法で別に処理されることを通じてプログラムが電気的に取り込まれ、その後コンピュータメモリに記憶される。
【0054】
本発明の操作を実行するコンピュータプログラムコードは、Java(登録商標)、Smalltalk、Python、Labview、C++またはVisualBasicなど、オブジェクト指向プログラミング言語で記述されていてもよい。ただし、本発明の操作を実行するコンピュータプログラムコードは、「C」プログラミング言語またはさらにアセンブリ言語など、従来の手続き形プログラミング言語でも記述できる。プログラムコードは、独立形ソフトウェアパッケージとして、ユーザコンピュータ上で完全に、ユーザコンピュータ上で部分的に、さらに一部はユーザコンピュータ上かつ一部はリモートコンピュータ上で、またはリモートコンピュータ上で完全に実行される。後者のシナリオの場合、リモートコンピュータはローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)を介してユーザコンピュータと接続されるか、または外部コンピュータへの接続が(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用するインターネットを介して)形成される。
【0055】
本明細書の図面のうちのいくつかのフローチャートおよびブロック図は、本発明による分析モデルおよび評価システムおよび/またはプログラムの可能な具体化のアーキテクチャ、機能性および操作を示している。これに関しては、フローチャートまたはブロック図における各ブロックは、モジュール、セグメント、オペレーション、またはコードの一部分を表し、特定された論理機能を実現する1つまたは複数の実行可能な命令を含む。また、代替の具体化によっては、ブロック内に記された機能は図に示されている順序以外で発生することもある点に留意すべきである。例えば、連続して示される2つのブロックは、実質的にほぼ同時に実行されるかもしれないし、またはブロックは場合により関係する機能によっては、逆順序で実行されることもある。
【0056】
リポ蛋白クラスの線形の小さな個人間の変化は、これらのリポ蛋白クラスのそれぞれの中に存在することが知られているサブクラスの異質性により発生する。図1はリポ蛋白のサブクラス数に対する線形および化学シフト(位置)を示している。図1に示されているとおり、様々なサブクラス間の化学シフトおよび線形の相違はメジャーリポ蛋白クラス間の相違よりさらに小さいが、完全に再現可能である。したがって、各個人の血漿からのNMR信号間の相違は、血漿に存在するサブクラスからの脂質共振の振幅の相違によりもたらされ、換言すれば、血漿中のそれらクラスの濃度に比例する。これは図4に示され、血漿サンプルのNMR化学シフトスペクトルが図示されている。メチル(CH3)プロトン60により生成されるスペクトルピークは(実践で示される)、図4で血液サンプルに対して示されている。図4のスペクトルのピーク61は(点線で示されている)、図1のサブクラスのいくつかにより図示されているとおり、主要クラスのVLDL,LDL、HDLプロテインおよびキロミクロンのリポ蛋白サブクラスにより生成されるNMR信号の算術和により生成される。全体の血漿スペクトルの線形は、その振幅が血漿サンプル中のリポ蛋白サブクラスの相対的濃度と共に(ときには劇的に)変化し、リポ蛋白サブクラスの相対量に依存することが分かる。
【0057】
血漿サンプル全体の観察されるCH3の線形は、それの成分のリポ蛋白クラスの脂質信号の適切な重み付き合計により緊密にシミュレートされるため、任意のサンプルに存在するこれら成分の濃度を抽出することが可能である。これは、観察された血漿NMRスペクトルと計算された血漿スペクトルの間の最適近似を提供する重み係数を計算することにより達成される。一般的に、NMRリポ蛋白分析のプロセスは、以下のステップにより実行される。すなわち、(1)対象の血漿の構成成分たるリポ蛋白のクラスおよび/またはサブクラスの「純粋に」個別または関連するグループに対してNMR「参照」スペクトル全体を取得し、(2)参照スペクトルの取得に使用されるのとほぼ同一の測定条件を用いて、サンプルについて血漿NMRスペクトルを取得し、(3)構成成分たるクラスおよび/またはサブクラス(またはそれらの関連する分類)に関して血漿NMRスペクトルをコンピュータデコンボリューションし、対応するリポ蛋白の基準の多重な濃度として表される各リポ蛋白の成分の濃度を得る。
【0058】
手順はリポ蛋白クラスについて実行されるが、リポ蛋白のサブクラスに対するプロセスの実行は、計算された線形とNMR線形との間の誤差を低減し、これにより測定の正確さを向上すると同時に、各クラスのサブクラスのプロファイルの同時決定を可能にする。サブクラスのリポ蛋白および化学シフトにおける相違は小さいため、血漿スペクトルと各サブクラスの参照スペクトルとを正確に位置合わせするのは重要である。これらのスペクトルの位置合わせはスペクトルの制御ピークの位置合わせにより達成され、これは、温度およびサンプル組成などの環境変数に対して、リポ蛋白のスペクトルと同一の方法で対応できることが知られている。このような適切な整列ピークの1つは、CaEDTAにより生成されるピークであるが、他のEDTAのピークまたは適切なピークも利用される。スペクトルの位置合わせにより、サブクラスの線形および化学シフトの小さな変化を活用して、より高度な正確性およびサブクラスのプロファイルを生成できる。
【0059】
これらの方法の詳細な説明はOtvosへの米国特許第4,933,844号および第5,343,389号で見ることができる。
【0060】
線形
線形近似プロセス(すなわち、公知の関数の重み付き合計に関する未知関数の最小二乗近似)に使用される数学は公知であり、F.B.Hilderbrand(Introduction to Numerical Analysis)(2nd Ed.,McGraw−Hill,1975、 pp.314−326、539−567)など、数値解析の多くの教科書で説明されている。
【0061】
特定の実施形態においては、分析される各成分のリポ蛋白およびプロテイン成分の参照サンプルが調製され(一般に保存中は冷凍され、分析に先立ち温められる)、分光計10内に置かれる。次に、NMR測定が各参照サンプルについてなされ、それぞれの成分に関する標準が定義される。参照サンプルに関するデータ(複数の異なる成分に関する)は処理され、コンピュータ11に記憶される。NMRの分光データの取得および記憶の技法は当業者には公知であり、詳細を説明する必要はない。参照サンプルまたは標準は事前に確立されており、これを用いて複数の異なる患者の標本またはサンプルをある期間にわたって測定する。
【0062】
分析を実行するために、近似されるスペクトル領域(リポ蛋白の評価に対しては通常0.73〜0.85ppm)を含むサンプル血漿スペクトルの実部のデータ点が配列に入れられる。この血漿配列は、Pi0=1,2,...mで示されるm個の個別のデータ点から成る。同一スペクトル領域に対するリポ蛋白の亜種の参照スペクトルの実部のデータ点が別個の配列に入れられる。これらの配列のデータ点はVjiで示され、ここでi=1,2,..mデータ点であり、j=1,2...n成分である。なお、以下の説明における同一事項を述べる等式および文章においては、一部の記号は、特定の場所では太字体および/またはイタリック体であるが他の位置ではそうでない。これは、ここで述べる相関関係を変更するまたは記号の意味を変更することを意味しない。
【0063】
測定されたサンプルの血漿スペクトルPi0をnの成分スペクトルの直線組み合わせで近似する方法は、一式の係数(重み係数)、すなわち成分j(リポ蛋白サブクラス成分およびプロテイン成分)の寄与率に対応するcjと、各データ点Pi0〜Picに対するなどの、サンプルの血漿スペクトルの虚数部に対応する係数cpIとが存在する、という前提に基づいている。ここで、
【数1】

(計算された血漿スペクトル)
従来は、最適近似は、以下の式の二乗平均平方根誤差が最小のときに実現された。
【数2】

ここで、∈i=Pi0−Picである。これはΣ∈j2を最小にするこれらの係数を見出すことにより、すなわち以下の式が成立するときに達成される。
【数3】

ここで、j=1,2,...n+1(n−1亜種成分は蛋白質および血漿スペクトル位相寄与率を加える)である。微分することにより、n+1連立一次方程式を得る。
【数4】

【数5】

次に、n+1連立一次方程式の形になる。
【数6】

n+1×n+1マトリックス、[A]=[akj]、j=1,2...n−1;k=1,2...n+1を形成することにより、[A]C=Sを得る。ここで、CおよびSは列ベクトルである。
【数7】

最適近似を提供する係数は行列[A]を[A]の「特異値分解」として総称して知られている新しい一式のmXmマトリクスに分解することにより計算される。
【数8】

ここで、[U]は直交列ベクトルの行列(スカラー積=0)であり、[V]Tは直交行列[V]の転置であり、[W]は「特異値」と呼ばれる、正または0を備える対角行列である。
【数9】

これから
【数10】

ここで、
【数11】

これによりCを解くことができる。
【数12】

ここで、特定のしきい値(ユーザにより選択される)より下のwjの値が無視される(1/wjは0に設定される)と仮定すると、Cは最適の解ベクトルである。これらの特異値は、丸め誤差により大部分が損なわれる、かなり変質した解の「悪条件」の一次結合を引き起こす。Cの実際の解は、wmが決定される「後方置換」により取得でき、wm-1などの解を可能にする。二乗平均平方根偏差(RMSD)は以下の式で計算される。
【数13】

相関係数は下記式で計算されていた。
【数14】

従来は、この線形分析から得る成分係数は、各血漿サンプル中のリポ蛋白およびプロテイン成分の濃度を提供した。各濃度はそのスペクトルが参照として使用されるリポ蛋白の濃度を基準として表すことができる。操作において、最終濃度を、同じ日に実行される中にトリメチル酢酸の外部標準サンプルからの共振の合成領域に対して規格化することにより、NMR分光計の検出感度の変動を補正する。
【0064】
前述の通り、従来は、リポ蛋白サブクラスのNMR導出測定に使用される最小二乗法はその導出濃度が正の値であることを必要とした。一般的に説明すると、従来は、標準の1つに関連する選択された成分に対して負の係数が現れると、それをゼロにするように制約され、その制約に従って、計算を再度実行した。後者の制約は、近似血漿サンプルが近似モデルに含まれる1つまたは複数の成分を含まない場合、またはデータ中の実験誤差(ノイズ)により、これらの成分の濃度に対して負の値を提供する計算を実行する必要を生じる理由から、望ましい。
【0065】
図5はブロック100〜160における上記の等式のいくつかに関する操作のフローチャートを示している。操作において、亜種成分のスペクトルは配列V(ブロック100)に読み込まれる。サンプル血漿スペクトルの実部は配列P0(ブロック110)に読み込まれる。サンプル血漿スペクトルの虚部は配列V(ブロック120)に読み込まれる。行列[A]およびSベクトルは等式5を使用して計算される(ブロック130)。行列[A]は、例えば等式8を使用して、特異値分解に分解される(ブロック140)。特異値は所定の受入れ関数に基づいて選択される(ブロック145)。係数ベクトルCは後方置換を用いて計算される(ブロック150)。Cにおける負の値は、負の値が残らなくなるまで、順次0に設定され、曲線が再近似される。(ブロック151)の「yes」または「no」の問い合わせは、負の値が残っているかどうかを質問しており、残っている場合は、プログラムに(ブロック130)の操作に戻るように命令し、残っていない場合、(ブロック155)に進むように操作に命令する。Cに正規化定数を乗算し、濃度を得る(ブロック155)。二乗平均平方根の偏差および相関係数は、例えば等式13および14を使用して計算される(ブロック160)。
【0066】
本発明の実施形態は、個々の成分の測定変動性を低減する操作を使用することによりおよび/または「0」値を有すると報告される対象の成分数を低減することにより、従来のプロトコルを修正および改良する。測定変動性は所定のサンプルを繰り返し分析し、個々の成分を測定することにより評価できる。本発明による測定される個々の成分は一般に、従来のプロトコルにより測定された個々の成分と比較してさらに緊密に一緒に集結される。この方法およびシステムは、同一サンプルについての従来の方法に比べて、少なくとも約50%まで変動性を低減する。さらに、繰り返される問合わせにおいて同一サンプルを分析する場合、対象の成分の少なくとも大部分の測定値は、対象の成分すべてではないにしても、通常、約+/−2.34%(中央値CV)以内で再現可能である。
【0067】
図6を参照すると、本発明の特定の実施形態の操作が示されている。なお、本明細書で使用される用語「行列」は、特定の実施形態においてはベクトルであってもよく、このときのベクトルは、行列の特別の形式である(すなわち、ベクトルはn行1列または1行K列の行列である)。図6に示されるとおり、操作には、複数の数理成分行列データセットを含む成分データの数理計画行列を生成することを含み、上記複数のデータセットのそれぞれの成分データセットは(公知の参照サンプルの)、所定の分析方法により生成された所望のデータ点全体にわたり選択された独立の成分パラメータのそれぞれのスペクトル線形の振幅値を含む(ブロック200)。選択された成分パラメータ(独立パラメータ)は、波長、電圧、電流、速度、力、回転力、圧力、運動、エネルギー、化学シフト(ppm)、温度、周波数であってもよい。対象の典型的な依存パラメータは、強度、不透明度、透過率、反射率、蛍光性、振動または他の所望のパラメータを含むが、これらには限定されない。計画行列の成分データ(「X」)は参照または標準データであって、このデータは、対象の個別成分の分離した個々の分析から事前に確立され、および/または標準として使用されるアクセス可能データベースに記憶され、および未知サンプルのすべてまたは選択されたサンプルの分析に適用される。
【0068】
複合数理行列は、所定の分析方法により生成される、未知サンプルに対する所望のデータ点全体にわたる複合スペクトルの線形の振幅値のデータセットを含んで生成されることができる。該複合スペクトルの線形は複数の選択された個々の成分からのスペクトルの寄与を含む(ブロック205)。計画行列を回転して主成分の回転計画行列を導き出すことができ(特定の実施形態では、以下に詳細に説明されるとおり、行列「Z」により数理的に表される)、また計画行列は、特定の主成分に対するデータを選択的に除外するように処理されることにより、低減された計画行列を作成できる(特定の実施形態では、以下に詳細に説明されているとおり、行列「X*」により数学的に表される)(ブロック220)。用語「主成分」は回転空間における独立した識別可能な成分(および関連するおよび関連しない成分の両方を含む)を意味する。操作において、特定の実施形態では、操作には、計画行列を数学的に回転すること、回転された計画行列(受け入れ関数を使用して)を問い合わせて、デコンボリューションに役立つ寄与を備えるこれらの回転された主成分を見出すこと、これらの受け付けられた主成分を逆回転して低減された計画行列を形成すること、を含む。
【0069】
特定の実施形態においては、正規方程式の行列(特定の実施形態では、行列「XTX」により数学的に表されている)は計画行列から計算される(ブロック225)。正規方程式の行列は、所定の受け入れ関数(「A(λ)」)を利用して主成分を問い合わせすることにより、低減された計画行列を作成する。受け入れ関数は強制的な論理関数「0」および「1」(それぞれ、拒絶される(除外された)値および受け入れられる(含まれる)値を表す)であるか、あるいは他の成分に比べてまたは既定のしきい値に対して低い値(すなわち、最も重要性が低い値)を有する主成分を放棄する相対関数または絶対関数であって、低減された計画行列においてより重要な値を保持する。低減行列は、計画行列を回転し、受け入れ関数により決定されるときに、大部分が「0」を備える回転された計画行列の1列(または複数列)を削除することにより作成される。
【0070】
回帰近似重み係数は、低減された計画行列内の回転計画行列の受け入れられた主成分に基づいて計算し、分析がなされる未知サンプル中の選択された成分または対象の成分の存在および/または測定値を決定できる(ブロック230)。特定の実施形態では、重み係数は、以下に詳細に説明される等式(21)に従って決定される。次に、逐次最小二乗回帰分析を用いて、対象の成分すべて(または実質上すべて)が非負値になるまで、負の係数を0に制限または抑制できる(ブロック231)。特定の実施形態においては、逐次回帰分析評価が実行される前に、低減された計画行列を複合行列に結合して、重み付き関数の第1セットを定義する。
【0071】
別の説明をすると、未知の試験サンプルからの信号を選択された主成分が広がる空間上に投影し、投影係数を初期の空間に変更して戻し、低減された計画行列を提供して重み係数に到達することができる。このようにして、計画行列を回転計画行列および選択された成分にマッピングし、低減された計画行列を得ることができる。
【0072】
低減された計画行列は、縮小推定量を使用して所定の基準に基づいて作成できる。特定の実施形態では、縮小推定量は成分マトリックスと転置成分行列との乗算により定義される、行列のスペクトル分解に基づいている。特定の実施形態では、縮小推定量は計画行列の回転から決定される受け付けられる基本セットが広がる空間上に成分行列を投影することにより、およびゼロに対して直交部分空間上の成分行列の投影を縮小することにより、見出すことができる。最適の縮小推定量は等式(21)で表される。
【0073】
なお、他の縮小推定量も使用することができる。一般的には、パラメータbの縮小推定量は、‖E{B(X)}‖<‖b‖のような、データXの任意の推定量B(X)である。簡単な例はbの不偏推定量、すなわちU(X)であり、1より小さい定数を乗算され、B(X)=pU(X)(ここで0<p<1)となる。U(X)は不偏の定義により不偏であるため、E{U(X)}=bである。p<1であるので、期待値のノルムは、‖E{B(X)}‖=‖E{pU(X)}‖=p‖E{U(X)}‖=p‖b‖<‖b‖として表される。等式(21)の縮小推定量では、縮小は一部の成分についてはゼロの方向に選択的に実行され、他の成分については実行されない。
【0074】
独立成分データセットの数は少なくとも10であり、各成分データセットは、少なくとも10の様々な密接に関連する化学成分のそれぞれのデータセットの1つを表し、一部の成分は分析されたスペクトル領域内で重畳する信号ラインを有する(ブロック202)。設計成分行列の列の数は対象における異なる独立成分の数に一致し、必要な場合は、変数の行列である少なくとも1つの追加列に一致し、この変数の行列は少なくとも1つの関連性がない可変成分および/またはノイズからスペクトル寄与を表す(ブロック201)。操作においては、この追加列は使用されない(すなわち「0」である)。少なくとも1つの関連性がない変数は、サンプル中の既知の成分であるが、目標対象および/またはバックグラウンドまたは環境ノイズ等ではない。
【0075】
特定の実施形態においては、所定の分析方法はNMR分光分析法であり、複合信号は、所望の期間全体にわたる強度、または強度が従属変数パラメータである(通常ppmで表される)化学シフトスペクトル中の領域全体にわたる強度で表される(ブロック212)。
【0076】
図7は、密接に相互に関連している信号データを評価するのに使用されるデコンボリューション操作の特定の実施形態の略図である。図示されているとおり、複数の独立した数理データセットを含む成分データの計画行列「X」が取得される。各成分データセットは対象の可変空間、スペクトル長さまたはデータ点全体にわたる選択された成分パラメータのそれぞれのスペクトル線形の振幅値を含む。計画行列の座標系を回転して、回転計画行列「Z」、最終的には、低減された計画行列「X*」(および関連する転置行列「X**」)を形成する。X*とX**との間に延びる線は、X内のどの主成分データをX*から除外するかを決定する、選別関数または受け入れ関数を表す。次に、行列を回転して初期の座標系に戻し、それにより、その座標系の回転で実行される分析により修正されるXからのデータを用いて低減された計画行列「X*」を作成する。複合スペクトル線形データ「Y」の行列はX*および計算された重み係数「b」上に投影される。定義された重み係数について正の重み係数が確立されることを保証するように逐次最小二乗(「SLS」)回帰分析を実行する。この操作は反復的に繰り返される。
【0077】
図8は、データ処理システムの典型的な実施形態のブロック図であって、本発明の実施形態によるシステム、方法およびコンピュータプログラム製品を示す。プロセッサ310はアドレス/データバス348を介してメモリ314と通信する。プロセッサ310は任意の市販されているまたは特注のマイクロプロセッサであってもよい。メモリ314は、データ処理システム305の機能性を実現するのに使用されるソフトウェアおよびデータを含むメモリ装置の全体的な階層を表している。メモリ314は、以下の種類の装置、すなわちキャッシュ、ROM、PROM,EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、SRAMおよびDRAMを含むがこれらに限定されない。
【0078】
図8に示されているとおり、メモリ314はデータ処理システム305で使用されるソフトウェアおよびデータのいくつかのカテゴリ、すなわちオペレーティングシステム352、アプリケーションプログラム354、入力/出力(I/O)デバイスドライバ358、小型および大型LDL粒子の内部濃度を考慮するLDL関連CHDリスクの数理モデルのモジュール350およびデータ356、を含む。LDL予測リスクモジュール350は、小型LDL粒子に対する所定の増加された重み付き関数および大型LDL粒子に対する低減された重み付き関数を使用する数理モデルを含み、インビボの動脈壁(内皮下空間)の濃度を反映するために血液または血漿サンプル中の各測定値を調整する累積の重み付きリスクLDL粒子数を提供する。
【0079】
データ356は、データまたは信号取得システム320から取得される信号(成分および/または複合スペクトル線形)データ362を含む。当業者には明らかな通り、オペレーティングシステム352は、ニューヨーク州アーモンク市のIBM社(International Business Machines Corporation)のOS/2、AIXまたはOS/390、ワシントン州レドモンド市のMicrosoft社のWindows(登録商標)CE、Windows(登録商標) NT、Windows(登録商標)95、Windows(登録商標)98、Windows(登録商標)2000またはWindows(登録商標)XP、Palm社のPalmOS、アップルコンピュータ社のMacOS、UNIX(登録商標),FreeBSDまたはリナックス、例えば、組込型データ処理システムのための、所有権を主張できるオペレーティングシステムまたは専用オペレーティングシステムなどの、データ処理システムを用いて使用するのに適した任意のオペレーティングシステムである。
【0080】
I/Oデバイスドライバ358は通常、I/Oデータポート、データ記憶装置356およびあるメモリ314コンポーネントおよび/または画像取得システム320といった装置と通信するアプリケーションプログラム354によりオペレーティングシステム352を介してアクセスされるソフトウェアルーチンを含む。アプリケーションプログラム354はデータ処理システム305の様々な機能を実現するプログラムの例であり、好ましくは、本発明の実施形態に従った操作をサポートする少なくとも1つのアプリケーションを含む。最終的にデータ356は、アプリケーションプログラム354、オペレーティングシステム352、I/Oデバイスドライバ358およびメモリ314に存在する他のソフトウェアプログラムにより使用される静的および動的データを表す。
【0081】
本発明は、当業者には明らかなとおり、例えば、図8におけるアプリケーションプログラムであるデコンボリューションモジュール350を参照して説明されるが、他の設定を利用して、本発明の教示技術から利益を得ることもできる。例えば、LDLモデルモジュール350は、オペレーティングシステム352、I/Oデバイスドライバ358、またはデータ処理システム305の他のこのような論理部に組み込むこともできる。
【0082】
したがって、本発明は図8の構成に限定されると解釈すべきではなく、ここに説明されている動作を実行できる任意の構成を含むものとする。
【0083】
特定の実施形態においては、モジュール350は、被験者体内のLDL粒子についての単一リスク予測数を提供するコンピュータプログラムコードを含み、上記リスク予測数は、治療介入が望ましいかどうかを示すことができおよび/または動脈壁に発生する感知可能な反射としてリスク予測数を使用する治療法の有効性を追跡できる。したがって、本発明は図8の構成に限定されると解釈すべきではなく、ここに説明されている動作を実行できる任意の構成を含むものとする。
【0084】
NMR導出リポ蛋白測定値については、コンピュータプログラムコードは統計モデルに基づく逐次最小二乗回帰分析を含み、上記モデルは、(a)スペクトル中の「n」点」と交差する未知のサンプルの複合信号の振幅のスペクトル測定値を表す数理複合行列、(b)スペクトル中の「n」点と交差する複数の独立に選択された成分の振幅に対するそれぞれの数理行列を含む計画行列、を含む。縮小推定量および受け入れ関数を使用して、複合信号振幅と成分および複合ベクトルにおける値の問い合わせにより定義される成分振幅との相違に基づいて、対象の各成分に対する最適重み係数「bopt」を生成できる。分析は逐次最小二乗回帰モデルにおいて反復的に繰り返され、これが、目標または選択された成分に非負値の重み係数を割当てることにより、逐次最小二乗統計評価が目標成分に対して満足できる非負値の解集合を生成するまで続行される。
【0085】
I/Oデータポートを用いて、データ処理システム305と画像スキャナまたは取得システム320または別のコンピュータシステムまたはネットワーク(例えばインターネット)との間の情報転送、またはプロセッサにより制御される他の装置への情報転送ができる。これらのコンポーネントは、従来の多くのデータ処理システムで使用される従来のコンポーネントであり、これらコンポーネントを本発明に従って構成し、本明細書に述べるように作動させることができる。
【0086】
本発明は、例えばプログラム、機能およびメモリの特定の部分を参照して説明されているが、本発明はこのような論理部分に制限されると解釈してはならない。したがって、本発明は図8の構成に限定されると解釈すべきではなく、ここに説明されている動作を実行できる任意の構成を含むものとする。
【0087】
さらに詳細には、特定の実施形態においては、分析される目標サンプルは、多数の様々な選択された部分あるいは成分あるいは個別のまたは選択された成分の集合を有する。成分部分の数は、kで表される。したがって、分析されるサンプルは成分部分、P1,...,Pkを含む。前述の通り、数kは少なくとも10であり35〜40の間であるかまたはさらに大きい。サンプルは、変化する独立変数(例えば、前述の、強度、波長、保持時間、電流等)の振幅を備える、所望の適切な分析機器で分析される。独立成分の振幅または値は分析機器の検出器応答に対応して変化し、この変化はスペクトルの形式で記録される。スペクトルまたは線形は、n点における(特定の実施形態では強度測定値である)振幅の測定値から成る。分析されるサンプルのこれらの振幅測定値は、複合行列Yに格納される。
【0088】
また、各成分部分Pj,j=1〜kは別々に分析し、分析されるサンプルとして、同一の独立変数空間、領域またはデータ点に全体にわたる標準または参照を定義する。(強度など)それぞれの参照成分のスペクトル振幅の各セットは行列Xjに格納される。ここで、j=1,...,kであり、長さはnである。したがって、設計成分行列Xは以下の式で表される。
【0089】
【数15】

ここで、Zはスペクトルの信号からデコンボリューションされる、少なくとも1つの追加変数に関する振幅データの行列である。例えば、Zは、他の既知または未知成分のスペクトル強度を表すデータ、分析物のサンプルのスペクトルの虚部(Yがスペクトルの実部を含む場合)、ノイズなどを含んでいてもよい。しかし、Zは行列、ベクトル、または特定の実施形態では、空白(0列を備える縮退行列)であってもよい。
【0090】
特定の実施形態においては、Zはサイズn×wの行列であり、ここではw≧0である。ある特定の実施形態では、w=1である。サンプルまたは分析物の複合スペクトルに対する個々の成分の推定される寄与率は、等式16により与えられる正規化されたまたは最適の係数の重みboptを決定することにより見出すことができる。正規化された重み係数は、arg minb関数のカッコ内の値を最小化する。
【数16】

これらの正規化された重みは、回帰問題に対して縮小推定量を使用する等式(16)を解くことにより見出すことができ、その後に非負値の最小二乗法を適用することにより、非負値の制約が満たされることを保証する。このサイクルは、最小二乗分法の解が非負値の重み係数のみを提供するまで繰り返される。縮小推定量は、行列M=XTXのスペクトルの分解に基づくことができ、ここでXTは成分行列Xの転置を表す。さらに、スペクトルの分解行列Mは以下の式で表すことができる。
【数17】

ここで、Q(k+w)×(k+w)は直交行列であり、Λ(k+w)×(k+w)は固有値を含む対角行列である。固有値行列Λは(1,1)要素または位置の最大固有値、(2,2)要素または位置における次の最大値を用いて分類され、最小の要素が(n,n)要素または位置に置かれるまで、左から右および上から下に続ける。調整可能な許容差パラメータ「τ」はτ≧0のように定義できる。また、受け入れまたは分類関数「A」はA(λ):R→{0,1}のように定義でき、これによりどの成分が近似モデルに受け入れられるかを示す。
【0091】
低減された固有値行列「Λred」は以下の式で定義される。
【数18】

上記のX*行列(「低減された計画行列」)は以下の式で表すことができる。
【数19】

使用した1つの受け入れ関数は以下である。
【数20】

ここで、τはE{b}を維持すると同時に、Var bを最小にするように選択した。τの値の例は、kが約37である場合には、すなわち、約37の成分または部分「p1−p37」が存在する場合には、10-6〜4×10-6の範囲である。他の値はより少ない数の成分またはより多い数の成分に対して適する。bは以下の式で計算できる。
【数21】

【0092】
調整されたLDL粒子のサブクラスおよび/またはLDL粒子のリスク数を取得および計算する典型的なシステムの構成
次に図9を参照すると、選択されたサンプルの線形を取得および計算するシステム7が示されている。システム7はサンプルのNMR測定値を得るNMR分光計10を含む。一実施形態においては、分光計10は、NMR測定がプロトン信号について400MHzで実行されるように構成され、別の実施形態では、測定は360MHzまたは他の適切な周波数で実行される。所望の操作磁界強度に対応する他の周波数も使用できる。サンプル温度を47+/−0.2℃で維持する温度コントローラがあるときは、通常、プロトンフロープローブが装着される。分光計10の磁界均一性は、HDONMR信号スペクトルの線幅が0.6Hz未満になるまで、99.8%D2Oのサンプルについてシミングすることにより最適化される。D2O測定に使用される90°RF励振パルス幅は通常およそ6〜7マイクロ秒である。
【0093】
再度図9を参照すると、分光計10はディジタルコンピュータ11または他の信号処理ユニットにより制御される。コンピュータ11は、高速フーリエ変換を実行できる能力を有する必要があり、この目的のために、ハードに組み込まれているサインテーブルおよびハードに組み込まれている乗算および除算回路を含むことができる。コンピュータ11はさらに、外部のパーソナルコンピュータ13へのデータリンク12およびハードディスクユニット15に接続する直接記憶アクセスチャネル14を含むこともできる。
【0094】
ディジタルコンピュータ11はさらに、アナログ−ディジタル変換器セット、ディジタル−アナログ変換器セット、および分光計の操作要素にパルス制御およびインターフェース回路16を介して接続する低速デバイスI/Oポートを含む。これらの要素は、ディジタルコンピュータ11により指令された継続時間、周波数および大きさのRF励振パルスを生成するRF送信機17と、パルスを増幅し、かつサンプルセル20を囲むRF伝送コイル19に接続されているRF電力増幅器18とを含む。超伝導磁石21により生成される9.4テスラの有極磁界中の励振されたサンプルにより生成されるNMR信号は、コイル22により受信され、RF受信機23に加えられる。増幅され、濾波されたNMR信号は24で復調され、結果として生じた直交信号は、インターフェース回路16に加えられ、そこでディジタル化され、ディジタルコンピュータ11を介してディスク記憶装置15内のファイルに入力される。モジュール350(図8)はディジタルコンピュータ11内および/またはオンサイトまたはリモートの二次コンピュータ内に置くことができる。
【0095】
NMRデータが測定セル20内のサンプルから取得された後、コンピュータ11による処理は、必要に応じて、ディスク記憶装置15に格納される別のファイルを作成する。この第2ファイルは、化学シフトのスペクトルのディジタル表現であり、引き続きコンピュータ13に読み出されて、ディスク記憶装置25に格納される。コンピュータメモリに格納されたプログラムの指令の下で、コンピュータ13(パーソナル、ラップトップ、デスクトップまたは他のコンピュータであってもよい)は、本発明の教示に従って化学シフトスペクトルを処理してレポートを印刷し、そのレポートはプリンタ26に出力されるか、または電子的に格納され、所望の電子メールアドレスまたはURLに中継される。結果の表示にはコンピュータディスプレイ画面などの他の出力装置も利用できることは、当業者には認識されるであろう。
【0096】
当業者には明らかであるが、コンピュータ13および別個のディスク記憶装置25により実行される機能もまた、分光計のディジタルコンピュータ11により実行される機能に組み込むことができる。この場合には、プリンタ26はディジタルコンピュータ11に直接接続されてもよい。当業者には公知のとおり、他のインターフェースおよび出力装置も使用できる。
【0097】
前述の記載内容は本発明の実例であり、本発明を制限すると解釈すべきではない。本発明のいくつかの典型的な実施形態を説明してきたが、本発明の新規の教示および利点から大きく逸脱することなく、典型的な実施形態において、多くの修正が可能であることは、当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような修正は全て、「特許請求の範囲」で定義される本発明の範囲内に含まれるものとする。「特許請求の範囲」においては、ミーンズプラスファンクション条項は、使用される場合、列挙される機能を実行するときの明細書に記載された構造物、および構造的均等物だけでなく同等の構造物も範囲に含むものとして意図されている。したがって、前述の記載内容は本発明の具体例であり、開示された特定の実施形態に限定されると解釈すべきではなく、開示された実施形態ならびに他の実施形態に関する修正は「特許請求の範囲」の範囲内に含まれるものとする。本発明は、「特許請求の範囲」に含まれている均等物を含む、「特許請求の範囲」により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】リポ蛋白成分サブクラスの代表的なサンプルの化学シフトスペクトルを示すグラフである。
【図2】本発明の実施形態による、体内における(内皮の境界空間全体にわたる血流内の)小型および大型LDLの勾配差の略図である。
【図3】本発明の実施形態による、被験者のLDLに関連するリスクを反映するためにLDLリスク数を使用する典型的レポートの図である。
【図4】図示されたメチル基に対するピークを有する、複合血漿サンプルおよびリポ蛋白サブクラスおよびそれの蛋白成分に対するNMRスペクトルを示したグラフである。
【図5】本発明の実施形態による、信号データを評価するのに使用される操作のブロック図である。
【図6】本発明の実施形態による、信号データを評価するのに使用される操作のブロック図である。
【図7】本発明の実施形態による、重畳成分からの寄与を有する複合スペクトルに対する信号データを評価するのに使用される質問プロトコルの略図である。
【図8】本発明の実施形態によるデータ処理システムの略図である。
【図9】本発明の実施形態によるNMR分光分析装置の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHDを有するおよび/または発症する被験者のリスクを決定する方法であって、
血漿または血清サンプル中の小型および大型LDLサブクラス粒子の両方の濃度測定値を得るステップと、
被験者のLDLベースのリスクを予測する所定の数理モデルに基づいて、小型LDLサブクラス粒子測定数を増加するステップと、
前記増加された小型LDLサブクラス粒子測定数に基づいて、CHDを有するおよび/または発症する被験者のリスクを決定するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記大型LDLサブクラス粒子測定値を調整するステップと、
前記増加された小型LDLサブクラス粒子測定数と前記調整された大型LDLサブクラス粒子測定値とを組み合わせるステップと、をさらに含み、
前記決定するステップが、前記組み合わされた測定値に基づく請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記決定ステップが、濃度単位の、重み付けされたLDL粒子数を計算する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の数理モデルが、生体内の内皮下空間における濃度を表す小型および大型LDL粒子に対して異なる濃度勾配を定義するように構成され、
前記増加および調整ステップが、動脈壁内の小型および大型LDLサブクラス粒子の予測される生体内濃度を反映するために、生体外の血漿または血清サンプルからの前記得られた測定値の調整を実行する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記数理予測値モデルが、小型LDL粒子の前記得られた濃度測定値に対する第1重み係数と大型LDL粒子の前記得られた濃度測定値に対する第2の異なる重み係数とを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2重み係数を小型および大型LDLサブクラス粒子測定値にそれぞれ乗算し、その結果を一緒に加算して、重み付きLDL粒子数を得る請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記調整ステップが、大型LDLサブクラス粒子測定値が減少するように実行される請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記調整ステップが、大型LDLサブクラス粒子測定値が小型LDLサブクラス粒子測定値に比べて少量増加するように実行される請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記濃度値取得ステップが、小型および大型LDLサブクラス粒子のNMR導出濃度測定値を得ることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
CHDを有するおよび/または発症する被験者のリスクを決定する方法であって、
対象の生体外の血漿および/または血清サンプル中の小型および大型LDLサブクラス粒子の濃度を測定するステップと、
被験者の動脈壁内の生体内の予測される濃度を反映するために、少なくとも1つの内部濃度勾配を考慮に入れる所定の数理モデルに基づいて、少なくとも小型LDL粒子の濃度測定値を調整し、それにより被験者のCHDリスクを決定するステップとを含む方法。
【請求項11】
大型LDL粒子測定値を調整し、前記調整された小型および大型LDL粒子測定値に基づいてLDLリスク数を決定することをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被験者のCHDリスクを決定する方法であって、
対象のバイオサンプル中の小型および大型LDLサブクラス粒子のNMR導出濃度測定値を取得するステップと、
前記測定された小型LDL粒子濃度に第1重み係数を適用し、前記測定された大型粒子濃度に第2重み係数を適用するステップと、
前記重み付き小型および大型LDL粒子濃度を用いてLDLのリスク予測値数を計算するステップとを含む方法。
【請求項13】
前記LDLのリスク予測値数が、濃度単位nmol/Lの、重み付きLDL粒子数である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記濃度値取得ステップが、
小型および大型LDLサブクラス粒子濃度測定値を計算するために、バイオサンプルのNMR分光分析信号をデコンボリューションするステップと、
前記LDLリスク予測値数を計算するために、前記得られた濃度測定値および前記第1および第2重み係数を使用して、動脈壁内の小型および大型LDL粒子の見込まれる生体内濃度を規定する、LDL粒子の所定の予測数理モデルを適用するステップとを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2重み係数が、前記得られた大型LDLサブクラス粒子測定値を減少させ、前記第1重み係数が、前記得られた小型LDLサブクラス粒子測定値を増加させ請求項13に記載の方法。
【請求項16】
バイオサンプルが、生体外の血漿および/または血清サンプルである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
LDL粒子の生体外濃度を調整するコンピュータプログラム製品であって、
媒体に組み込まれたコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ可読記憶媒体を備え、
前記コンピュータ可読プログラムコードが、
被験者の動脈壁内の小型および大型LDL粒子の見込まれる濃度を反映するために、小型および大型LDLサブクラス粒子の測定された生体外濃度を調整する数理モデルを備えるように構成されているコンピュータ可読プログラムコードを含むコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
複合NMR信号を小型および大型LDLサブクラス粒子の測定された濃度にデコンボリューションするコンピュータ可読プログラムコードをさらに備えた請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
数理モデルの前記コンピュータ可読プログラムコードが、前記測定された小型および大型LDL粒子の濃度測定値のそれぞれについて異なる内部傾斜濃度調整値を提供することにより、被験者の動脈壁の内皮下空間におけるLDL粒子濃度を予測するモデルを実現し、
それにより対応するLDLベースのCHDリスク濃度を規定する請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
数理モデルの前記コンピュータ可読プログラムコードが、
小型LDL粒子測定値を増加するコンピュータ可読プログラムコードと、
大型LDL粒子測定値を調整するコンピュータ可読プログラムコードと、
前記増加された小型LDL粒子測定値と前記調整された大型LDL粒子測定値とを一緒に組み合わせるコンピュータ可読プログラムコードとを備えた請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
前記調整された小型および大型LDL粒子濃度を用いてLDLリスク数を規定することにより、対応するLDLベースのCHDリスクを規定する、コンピュータ可読プログラムコードをさらに備えた請求項20に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
数理モデルの前記コンピュータ可読プログラムコードが、濃度単位の、重み付けされたLDL粒子数を計算するコンピュータ可読プログラムコードをさらに備えた請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
数理モデルの前記コンピュータ可読プログラムコードが、被験者の内皮下空間における小型および大型LDL粒子の生体内濃度を予測するために、前記小型および大型LDL粒子に対する様々な濃度勾配重み係数を生成するように構成されている請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項24】
数理モデルの前記コンピュータ可読プログラムコードが、小型LDL粒子測定値を増加し、大型LDL粒子測定値を減少することにより、動脈壁内のLDL粒子の予測される生理学的挙動および生体内濃度を反映するために、生体外の血漿または血清サンプルからの前記測定値を調整するように構成されている請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項25】
数理モデルの前記コンピュータ可読プログラムコードが、第1重み係数を小型LDL粒子の濃度測定値に乗算し、第2の異なる重み係数を大型LDL粒子の濃度測定値に乗算するように構成されている請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項26】
数理モデルの前記コンピュータ可読プログラムコードが、
前記結果として生じる乗算された小型および大型LDL粒子数を一緒に加算し、重み付きLDL粒子数を得るように構成されている請求項25に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項27】
数理モデルの前記コンピュータ可読プログラムコードが、大型LDL粒子濃度測定値を減少させ、小型LDL粒子濃度測定値を増加させるように構成されている請求項25に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項28】
被験者のリポ蛋白成分に関するデータを取得する装置であって、
生体外の血漿または血清サンプルのNMR複合スペクトルを取得するNMR分光計と、
複数の個々のNMR成分スペクトルを定義するコンピュータプログラムコードであって、前記各成分スペクトルが選択された参照リポ蛋白成分信号線形に関連付けされており、各成分スペクトルが血漿または血清サンプルの前記NMR複合スペクトルに寄与する関連スペクトルを有する、コンピュータプログラムコードと、
分析されるサンプル中の小型および大型LDLサブクラス粒子の濃度を決定するコンピュータプログラムコードと、
数理モデルを適用することにより、動脈壁内の予測される濃度を反映するために、前記決定された生体外の小型および大型LDL粒子濃度を調整するコンピュータプログラムコードとを備えた装置。
【請求項29】
数理モデルを適用する前記ピュータプログラムコードが、第1の生体内濃度勾配重み係数を小型LDL粒子濃度に乗算し、第2の生体内濃度勾配重み係数を大型LDL粒子濃度に乗算することを含む請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記コンピュータプログラムコードが、前記第2重み係数より大きい第1重み係数を定義するように構成されている請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記コンピュータプログラムコードが、前記第1重み係数を1より大きい値に定義し、前記第2重み係数を1より小さい値に定義するように構成されている請求項30に記載の装置。
【請求項32】
数理モデルの前記コンピュータ可読プログラムコードが、小型LDL粒子測定値を増加し、大型LDL粒子測定値を減少することにより、被験者の動脈壁内のLDL粒子の予測される生理学的挙動および生体内濃度を反映するために、生体外の血漿または血清サンプルからの前記測定値を調整するように構成されている請求項28に記載の装置。
【請求項33】
被験者のCHDリスクを評価する方法であって、
少なくとも2つの異なるサイズの被験者のLDL粒子の生体外濃度測定値を使用して、重み付けされたLDLリポ蛋白パラメータ数を計算するステップと、
前記重み付けされたLDLパラメータ数に関連するCHDリスクを定義するステップとを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−511749(P2007−511749A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536792(P2006−536792)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/034906
【国際公開番号】WO2005/043171
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.リナックス
【出願人】(506140561)リポサイエンス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】