説明

倒立二輪車、その姿勢制御方法及びプログラム

【課題】特別なロック機能等を設けることなく、胴囲の大小にかかわらず、搭乗が可能な倒立二輪車、その姿勢制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】倒立二輪車は、ユーザが搭乗するステップを有する本体と、本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段102と、検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、駆動ユニットの駆動速度指令を生成する姿勢制御手段103と、ユーザがステップに搭乗した際に、ユーザとハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として検出した姿勢角度を調整する調整手段105とを有する。姿勢制御手段103は、調整角度を姿勢情報指令として姿勢制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立二輪車、その姿勢制御方法及びプログラムに関し、特に、ピッチ角に基づき姿勢制御する倒立二輪車、その姿勢制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジャイロセンサや加速度センサなどを用いて自己の姿勢情報を検出して、検出した姿勢情報に基づいて駆動制御を行う移動体が開発されている。これらの移動体では、自己に搭載したジャイロセンサと加速度センサ信号から自己の姿勢情報を検出して、倒立振子による姿勢を制御する原理により、或いは、二足歩行ロボット制御のZMP(ゼロモーメントポイント)制御の原理により、自己の姿勢を保つようにモータへの回転指令を演算し、モータ制御装置へ回転指令データを送信する。こうしたフィードバック制御により自己の姿勢を保ち、搭乗者の重心姿勢変化により走行することができる。
【0003】
ところで、従来においては、搭乗者が操縦するハンドル部分を持つ倒立二輪車が提案されている。例えば、特許文献1には、降車を容易に行うことができ、安全性の高い同軸二輪車及びその制御方法を提供することを目的とした同軸二輪車が開示されている。当該同軸二輪車は、足を乗せるステップ部と、少なくとも左右の旋回を操作可能な操作部を有し、搭乗者を乗せて移動する同軸二輪車であって、搭乗者が降車を行う場合に、搭乗者の降車方向に対する、ステップ部の傾斜角度を増加させる降車補助制御を実行する制御装置を備えたものである。
【0004】
従来の倒立二輪車においては、ハンドルの伸縮などの機械的な機構によって、ハンドルの位置を調整し、搭乗者の体格の違いに合わせるということが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−315666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、搭乗者の体格の違いのうち、主に胴囲の大小により、搭乗者によって最適なハンドルの位置が変化する。これについて、機械的なスライド機構でハンドルの長さ(高さ)を調整し、ハンドルの根元の回転機能でハンドル先端と、搭乗者の身体との距離を調整する機構とした場合には、回転軸を設けることにより、強度が不足してしまうという問題が生じる。回転軸のロック機構が緩み、ハンドルがグラグラして危険であるという問題点もある。したがって、このような構成にする場合は、安全性を加味すると、調整機構とそのロック機構を大がかりなものとする必要がある。
【0007】
これはすなわち、倒立二輪車の走行時にステップを水平に保ったままでハンドル先端の位置を調整するとどうしても機械的な調整機構が必要となってしまうためである。機械的な調整機構を追加するコストや重量増、ロック機能が壊れた際の危険性を考慮して、調整機構をなしとすると、搭乗者の体格に制限を設けざるを得ず、搭乗できる人が限られてしまうという問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、機械的な調整機構等を設けることなく、胴囲の大小にかかわらず、搭乗が可能な倒立二輪車、その姿勢制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る倒立二輪車は、ユーザが搭乗するステップを有する本体と、前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有し、前記姿勢制御手段は、前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度である調整角度を、制御目標値として姿勢制御を実行するものである。
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明に係る倒立二輪車は、ユーザが搭乗するステップを有する本体と、前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として検出した姿勢角度を調整する調整手段と、を有し、前記姿勢制御手段は、前記調整された姿勢角度を前記姿勢情報指令として姿勢制御を実行するものである。
【0011】
本発明においては、ユーザとハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度を、制御目標値として姿勢制御を行うため、体型、特に、胴囲の大きさによらず、良好な倒立姿勢を取ることができる。
【0012】
また、前記駆動ユニットの駆動速度を検出する駆動速度検出手段と、前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する前記動作状態検出手段と、前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、前記生成した駆動速度指令と前記駆動速度検出手段で検出した駆動速度とに基づいて、前記駆動ユニットのトルク指令を生成する速度制御手段と、を備え、前記速度制御手段で生成したトルク指令に応じて前記駆動ユニットを駆動して移動するものとすることができる。これにより、速度制御手段が行う速度制御は、姿勢制御手段が行う制御と比較して相対的に高速な制御周期を実現することができる。即ち、姿勢制御手段が行う姿勢制御はより高価なシステム(CPU、姿勢センサ)を使用せずとも、従来技術と同等のCPUや姿勢センサを用いて同等の制御性能を実現することができ、同時に、速度制御手段が行う速度制御は単純な制御であるため、安価に高速な制御周期を実現することができる。従って、安価に高速化が可能な速度制御手段による制御系を、姿勢制御手段による制御系の内側の制御ループに有する構成とすることで、システム全体のコストを低下させつつ、より性能の高い制御を実現することができる。
【0013】
また、前記ユーザが搭乗した際に、前記ハンドルを含む本体を、前後にゆっくり傾斜させ、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になった位置で傾斜動作を停止することができる調整モードを有し、当該調整モード時に前記調整角度を測定することができる。調整モードを設けることにより、安全かつ正確に調整角度を測定することができる。
【0014】
さらに、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になった位置は、前記ユーザが指示することができ、ユーザ自身又はインストラクター等が最適な距離を決定し、調整角度を決めることができる。
【0015】
さらにまた、前記ハンドル部分に取り付けられた距離センサを有し、前記調整モードでは、前記距離センサが、前記ハンドルと前記ユーザとの距離を計測し、前記距離センサが所定の距離を検出した時点で前記傾斜動作を停止させ、前記調整角度を測定する。これにより、自動的に、調整角度を測定することができる。
【0016】
また、ユーザを識別するユーザ識別情報と、当該ユーザの調整角度とを対応づけて記憶する記憶部を更に有することができ、複数人で共有して倒立二輪車を共有することができる上、毎回搭乗の毎に、調整角度を測定する必要がない。
【0017】
本発明に係る調整角度記憶装置は、ユーザが搭乗するステップを有する本体と、前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有する倒立二輪車の前記姿勢制御手段が、姿勢制御する際に、制御目標値として使用する、前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度である調整角度と、前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを有することができる。
【0018】
本発明に係る姿勢制御方法は、ユーザが搭乗するステップを有する本体と、前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有する倒立二輪車の姿勢制御方法であって、前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度である調整角度を、制御目標値として姿勢制御を実行するものである。
【0019】
本発明に係る姿勢制御方法は、ユーザが搭乗するステップを有する本体と、前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有する倒立二輪車の姿勢制御方法であって、前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として検出した姿勢角度を調整する調整工程と、前記調整された姿勢角度を前記姿勢情報指令として姿勢制御を実行する姿勢制御工程とを有するものである。
【0020】
本発明においては、ユーザとハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度である調整角度を、制御目標値として姿勢制御を実行するため、胴囲によらず、良好な搭乗姿勢を取ることができる。
【0021】
また、前記ユーザが搭乗した際に、前記ハンドルを含む本体を、前後にゆっくり傾斜させ、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になった位置で傾斜動作を停止させる調整モードを有し、当該調整モード時に前記調整角度を測定することができる。調整モードを設けることにより、確実に調整角度を測定することができる。
【0022】
さらに、前記調整モードでは、前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、当該ハンドルを含む本体を前後方向に移動し、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になった位置で前記前後方向の移動を停止し、前記停止した状態における本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を前記調整角度として検出することができる。
【0023】
さらにまた、前記調整モードでは、前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、当該ハンドルを含む本体を前後方向に移動し、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離を距離センサにより測定し、当該距離が所定の距離となった位置で前記前後方向の移動を停止し、前記停止した状態における本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を前記調整角度として検出することができる。
【0024】
また、ユーザを識別するユーザ識別情報と、当該ユーザの調整角度とを対応づけて記憶し、前記ユーザ識別情報を入力することで、当該ユーザの調整角度を読み出し、姿勢制御することができ、複数人の調整角度を記憶することで、複数人のユーザで倒立二輪車を共有することができる。
【0025】
また、本発明に係るプログラムは、上述した、ユーザが搭乗するステップを有する本体と、前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有する倒立二輪車の姿勢制御をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、機械的な調整機構等を設けることなく、胴囲の大小にかかわらず、搭乗が可能な倒立二輪車、その姿勢制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る移動体の制御系の概要を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1として、本発明に係る走行装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る同軸二輪車の動作制御系を示す制御ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる倒立二輪車における姿勢制御を行う部分を示すブロック図である。
【図5】(a)乃至(d)は、様々な体系の搭乗者が倒立二輪車に搭乗している様子を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における調整モード時の調整角度測定方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2にかかる調整角度測定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明の具体的な実施の形態の説明に先立ち、本発明の概要について説明する。図1は、本発明に係る移動体の制御系の概要を示す制御ブロック図である。本発明に係る移動体41は、移動体41を駆動する駆動手段42と、駆動手段42の駆動速度を検出する駆動速度検出手段43と、移動体41の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段44と、検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、駆動手段42の駆動速度指令を生成する姿勢制御手段45と、生成した駆動速度指令と駆動速度検出手段で検出した駆動速度とに基づいて、駆動手段42のトルク指令を生成する速度制御手段46と、を備えている。本発明に係る移動体41は、速度制御手段46で生成したトルク指令に応じて駆動手段42を駆動して移動する。本発明に係る移動体の姿勢制御手段45は、動作状態検出手段44で検出した姿勢情報が、入力する姿勢情報指令に追従するように姿勢制御を行い、かつ、速度制御手段46は、駆動速度検出手段43で検出した駆動速度が、姿勢制御手段45で生成した駆動速度指令に追従するように速度制御を行うことを特徴とする。
【0029】
これにより、安価に高速化が可能な速度制御手段46による制御ループ51を、姿勢制御手段45による制御ループ52の内側に有する構成とすることで、システム全体のコストを低下させつつ、より性能の高い制御を実現することができる。
【0030】
さらには、速度制御手段46による制御系を、姿勢制御手段45による姿勢制御を行う制御器に対して速い下位の制御器で行うことで、負荷変動(走行中の路面からの外乱や、車輪が浮いたことによる負荷変動)に対する高いロバスト性を実現することができる。従って、進行方向の安定性が向上し、走行中に片輪が浮いた場合であっても安定することができる。
【0031】
本実施の形態にかかる倒立二輪車は、このような姿勢制御に加え、胴囲の大小にかかわらず、搭乗を可能とするため、本体(ステップ)の水平位置からの角度を調整する。すなわち、本体が前側に倒れれば、ユーザとハンドルとの間の隙間が大きくなり、本体が後ろ側に倒れれば、ユーザとハンドルとの間の隙間が小さくなる。これを利用し、胴囲の大小に合わせて、本体を水平角度から若干傾斜させた状態を基準の位置として倒立制御を行うものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0032】
発明の実施の形態1.
図2は、本発明に係る実施の形態1として、本発明に係る走行装置の一実施形態の構成を示す図である。尚、図2のAは正面図を示し、図2のBは側面図を示す。図2において、本実施の形態1に係る走行装置は、乗員が立つ部分である本体1に対して、同軸芯線上に平行に車輪3A、3Bを有する同軸二輪車である。
【0033】
尚、以下の説明で用いる同軸二輪車の車両の全体に対する各座標系を、図中に記載のように、車軸に対して垂直方向をX軸、車軸方向をY軸、鉛直方向をZ軸、車軸周り(Y軸周り)をピッチ軸、車両上面視においてX−Y平面上の回転方向をヨー軸とする。
【0034】
本実施の形態1に係る走行装置は、本体1と、本体1に同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニット2A及び2Bと、駆動ユニット2A及び2Bによりそれぞれ回転駆動される車輪3A及び3Bと、乗員がつかまるT字型のハンドル4と、本体1の前後(Y軸周り)の傾きを検出する姿勢検出装置4と、旋回操作を指示するための旋回操作装置6と、を備えている。また、本体1には、図示しないが、後述する車両の制御を行う制御装置が設けられている。尚、本体1には乗員の乗車を識別するセンサ、或いはスイッチ(図示せず)を内蔵していてもよい。
【0035】
この倒立二輪車は、倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段(不図示)と、検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、駆動ユニット2A及び2Bの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段(不図示)と、ユーザが本体(ステップ)に搭乗した際に、ユーザとハンドル4との間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として検出する調整角検出手段(不図示)と、を有する。そして、姿勢制御手段は、通常、制御目標値をゼロとして姿勢制御するものであるが、本実施の形態にかかる倒立二輪車は、調整角度を姿勢情報指令として姿勢制御を実行する。これについての詳細は後述する。
【0036】
以下、図3を参照して、車両の動作制御について詳細に説明する。図3は、本実施の形態1に係る同軸二輪車の動作制御系を示す制御ブロック図である。まず、以下の説明に用いる変数について説明する。βは車両ピッチ角度を示し、β′は車両ピッチ角速度を示す。xは車両位置を示し、x′は車両速度を示す。これら車両ピッチ角度β、車両ピッチ角速度β′、車両位置x、車両速度x′は検出値を示す。また、βは車両ピッチ角度指令を示し、β′は車両ピッチ角速度指令を示す。xは車両位置指令を示し、x′は車両速度指令を示す。γ′は車両のヨー角速度指令を示す。これら車両ピッチ角度指令β、車両ピッチ角速度指令β′、車両位置指令x、車両速度指令x′、ヨー角速度指令γ′は目標値である指令値を示す。即ち、下添え文字にrが付いている変数は指令値を示し、rが付いていない変数は検出値を示す。また、2Lはトレッド幅を示し、Rは車輪半径を示す。尚、本実施の形態1において、図3における車両の動作制御は通常走行時における動作制御を説明するものであり、姿勢制御器12に対して少なくとも車両ピッチ角度指令が入力される。
【0037】
図3において、駆動ユニット2は、同軸上に配置された複数の車輪3を独立に駆動する。駆動ユニット2は、各車輪3を駆動するためのモータとアンプを含み、入力されるトルク指令を受けてトルク制御を行う。モータの回転に伴い車輪3にはトルクが加えられる。また、モータの回転に伴い車両本体1に対してトルクの反力が加わると共に、車輪3の回転に伴い車両本体1に対して地面からの反力としての力が加えられる。
【0038】
図示しない車輪角速度検出手段により、本体1と複数の車輪3との相対角度及び相対角速度としての車輪角度及び車輪角速度を検出する。車輪角速度検出手段は、例えば、モータの回転軸に設けられたエンコーダ情報から、車輪角度及び車輪角速度を検出する。
【0039】
姿勢検出装置5は、本体1の車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度を検出する。姿勢検出装置5は、ジャイロセンサや加速度センサを用いて車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度を検出する。
【0040】
姿勢制御手段としての姿勢制御器12は、姿勢検出装置5で検出した車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度が、入力する車両ピッチ角度指令及び車両ピッチ角速度指令に追従するように姿勢制御を行う。即ち、姿勢制御器12は、姿勢検出装置5で検出した車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度と、入力する車両ピッチ角度指令及び車両ピッチ角速度指令とに基づいて、駆動ユニット2の姿勢速度指令を生成し、姿勢速度指令についての制御を行う。
【0041】
より具体的には、姿勢制御器12は、入力される車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′と、姿勢検出装置5で検出した車両ピッチ角度β及び車両ピッチ角速度β′との差を取り、差を0に収束させるようにPD(比例・微分)制御を行う。通常は、車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′の値を共に0として入力し、乗員の重心移動によって生じる車両ピッチ角度β及び車両ピッチ角速度β′を0に保つように姿勢制御を行う。姿勢制御器12は、PD制御により、以下の数1を用いて姿勢速度指令を計算する。数1において、Kppは比例ゲインを示し、Kdpは微分ゲインを示す。
【0042】
(数1)
姿勢速度指令=Kpp(β−β)+Kdp(β′−β′)
【0043】
これらの制御ゲインによって、モータが車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′に対して応答する追従性が変化する。例えば、モータロータは、比例ゲインKppを小さくすると、ゆっくりとした追従遅れをもって動くようになり、比例ゲインKppを大きくすると、高速に追従するようになる。このように、制御ゲインを変化させることにより、車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′と、実際に検出した車両ピッチ角度β及び車両ピッチ角速度β′との誤差の大きさや応答時間を調整することが可能となる。尚、姿勢制御器12では、PD制御に限定されず、H∞制御や、ファジィ制御などを用いて制御を行うようにしてもよい。
【0044】
旋回制御手段としての旋回制御器14は、入力するヨー角速度指令に基づいて旋回速度指令を生成する。ヨー角速度指令は、上述した旋回操作装置6により入力する。旋回制御器14は、車両のトレッド幅2Lと車輪Rとを用いて、入力されるヨー角速度指令γ′を各車輪3への旋回速度指令に分解する。旋回制御器14は、以下の数2を用いて旋回速度指令を計算する。
【0045】
(数2)
旋回速度指令=(Lγ′)/R
【0046】
姿勢制御器12で生成した姿勢速度指令と、旋回制御器14で生成した旋回速度指令とを加算器により加算して(又は減算器により減算)、車輪角速度指令として速度制御器13に入力する。図5に示すように左右の車輪3A、3Bに対して車輪角速度指令を生成する場合には、数1で計算した姿勢速度指令と、数2で計算した旋回速度指令とから、以下の数3及び数4を用いて左右の車輪の角速度指令を計算する。
【0047】
(数3)
左車輪角速度指令=姿勢速度指令−旋回速度指令
【0048】
(数4)
右車輪角速度指令=姿勢速度指令+旋回速度指令
【0049】
速度制御手段としての速度制御器13は、入力される車輪角速度指令と、車輪角速度検出手段で検出した車輪角速度との差を取り、差を0に収束させるようにPI(比例・微分)制御を行い、検出値が指令値に一致するように速度制御を行う。即ち、速度制御器13は、入力される車輪角速度指令と、車輪角速度検出手段で検出した車輪角速度とに基づいて、複数の車輪3のトルク指令を生成し、駆動ユニット2へと出力する。速度制御器13は、モータのエンコーダ情報に基づいた単純なPI制御やPD制御を行なうので、安価なCPUにより十分高速な制御周期を実現することができる。
【0050】
以上の制御系により、乗員の体重移動に応じた姿勢制御と、乗員の操作や体重移動による旋回制御とを両立することができる。
【0051】
ここで、通常の倒立二輪車においては、車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′、及び車両速度指令x′は、ゼロとするフィードバック制御を働かせることで倒立制御を成り立たせることができる。これに対し、上述したように、本実施の形態においては、車両ピッチ角速度指令β′(制御目標値)をゼロでない値に「調整」することで、快適な乗車姿勢を提供するものである。以下、本実施の形態について、詳細に説明する。
【0052】
図4は、本実施の形態にかかる倒立二輪車における姿勢制御を行う部分を示すブロック図である。図4に示すように、倒立二輪車100は、駆動ユニット2の駆動速度を検出する駆動速度検出手段101と、倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段102と、検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、駆動ユニット2の駆動速度指令を生成する姿勢制御手段103と、生成した駆動速度指令と駆動速度検出手段101で検出した駆動速度とに基づいて、駆動ユニット2のトルク指令を生成する速度制御手段104と、ユーザがステップに搭乗した際に、ユーザとハンドル4との間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として検出した姿勢角度を調整する調整手段105と、ユーザを識別するユーザ識別情報と、当該ユーザの調整角度とを対応づけて記憶する記憶部106とを有している。
【0053】
調整手段105により、ユーザがステップに搭乗した際に、ユーザとハンドル4との間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として検出することで、姿勢制御手段103は、調整角度を姿勢情報指令として姿勢制御を実行することができる。すなわち、通常であれば、水平面=ピッチ角度ゼロを基準として制御目標値をするが、本実施の形態においては、この調整角度(水平面からのずれ)を制御目標値として姿勢制御を行う。
【0054】
ここで、従来の問題点について説明しておく。図5(a)乃至図5(d)は、様々な体系の搭乗者が倒立二輪車に搭乗している様子を示す図である。図5(a)は、適切な搭乗姿勢が取られている様子を示す図。図5(b)は、身長が低めにも拘わらず、手が長いために、肘の曲げが窮屈になってしまっている搭乗姿勢を示す図である。図5(c)は、胴体が大きく、静止状態でもハンドルが腹部に当たってしまう搭乗姿勢を示す。図5(d)は、最適に調整された後の搭乗姿勢を示す図である。
【0055】
搭乗式の倒立二輪車には、搭乗者が自身の重心を前後に移動させることで、操作を行うものが提案されている。搭乗者(ユーザ)が台車の上に立ち、ハンドルを手で持つことで操作を容易にしている。このとき、搭乗者は、ハンドルにつかまることで、自身の重心位置を安定化させている。人間の重心位置は、おおよそ臍の位置にあると言われており、この重心位置がタイヤの接地点の真上にあれば停止、タイヤの接地点より前にあると前進、後ろにあると後進となる。
【0056】
このとき、ハンドルを手前に引くと車両は一旦後退し、タイヤ接地点が重心位置より後ろに移動するため、車両が前傾し前進が始まる。
【0057】
しかしながら、図5(b)に示すような搭乗姿勢であると、手首や肘の関節が窮屈な状態になってしまい、スムーズにハンドルを引いたり、戻したりできなくなってしまう。その結果、重心位置のコントロールがぎくしゃくしてしまい、前進開始や前進乃至停止時にガクガクしたりと不快な動作となる。
【0058】
また、図5(c)に示す搭乗姿勢であると、停止状態では、ハンドルが腹部に当たっているため、前進しようとするとハンドルが腹部にめり込み、不快な状態にならざるを得ない。更に状況は悪い場合は、そもそも前進できないだけではなく、停止すら出来ずに、ひたすら後方に進んでしまうという状態になることも想定される。
【0059】
搭乗者の重心がタイヤ接地点より前方に移動可能な量、すなわち、ハンドルと腹部との隙間の大きさが倒立二輪車の加速度の大きさをコントロールすることができる範囲を決める、という見方をすることができる。ハンドルが近すぎると、ゆっくりした加速しかできないし、ハンドルが遠すぎると搭乗者が前方に倒れ込むことができてしまい、その結果、倒立二輪車の性能で出し得る以上の加速がなされ、倒立制御が維持できない恐れがある。以上の観点から、搭乗者とハンドルの位置関係は、遠すぎても近すぎてもいけないということがわかる。
【0060】
ハンドルの位置を調整する方法として、ハンドルの上下方向のスライド機構、ハンドル根元にあるハンドルの前後角度を調整するピポッド機構を設けることで調整することは、容易に思いつくが、機械的な機構であるため、ロック機構やロックが外れてしまった際の安全機構などの実施にあたって解決しなければならない問題が非常に多い。
【0061】
そこで、本願発明者等が鋭意実験研究し、ハンドルの前後角度を調整する代わりに車体の傾きを変えてしまうことで、上記のハンドルの前後の角度の調整に、代用できることを見出した。実際に多くの搭乗者についてハンドルと腹部の隙間を観察した結果、ハンドルの前後の傾き調整幅は、1乃至2度で十分であることがわかった。一般の搭乗者は、ハンドルの傾きに対し、敏感だが、ステップ部の傾きに対しては鈍感である。例えば、通常、我々が履いてる靴は、踵側が高くなっているが、1度や2度変化しても、よほど敏感な人でないかぎり気付かないし、気づいても、すぐにその状態になれてしまい気にしなくなる。
【0062】
したがって、倒立二輪車の前傾角度をオフセットさせることで、機械的なハンドル位置の調整の代用とすることができるのである。そこで、本実施の形態にかかる倒立二輪車は、このオフセット量(以下、調整角度という。)を測定する機能(モード)を有している。
【0063】
搭乗者に最適な調整角度は、それぞれユーザの体型等に応じて異なる。そこで、この調整角度を倒立二輪車に搭乗する際に測定するか、又は予め測定しておくことが考えられる。また、ユーザに応じて、調整角度は異なるため、本実施の形態にかかる倒立二輪車は、ユーザを識別するユーザ識別情報と、当該ユーザの調整角度とを対応づけて記憶する記憶部106を更に有する。
【0064】
この記憶部106により、搭乗者毎の最適な調整角度を記憶しておき、搭乗者が変わった場合には、当該調整角度も自動的に変更することで、異なる搭乗者に対して最適な調整角度での搭乗を提供することができる。搭乗者の識別には、ICカードや鍵などを利用することができる。また、調整角度を記憶する記憶部を車両内部の記憶領域ではなく、ICカードや電子化された鍵などの内部の記憶領域に保存することで、同一シリーズのどの車両に対しても、自分に最適な調整角度で搭乗することが可能となる。
【0065】
つまり、ICカードは、倒立二輪車の姿勢制御手段が、姿勢制御する際に、制御目標値として使用する、ユーザがステップに搭乗した際に、ユーザとハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度である調整角度と、ユーザを識別するユーザ識別情報とを有する調整角度記憶装置として機能する。
【0066】
次に、最適な調整角度を調整するための調整モードについて説明する。本願発明者等の調査により、最適なオフセット量は、体重、胴囲、又はBMI(ボディ・マス・インデックス)から一元的な変換式を使用して求めてもうまく求めることができないことがわかった。例えば、実際に、ユーザが搭乗してみて、搭乗者本人又は搭乗方法を指導するインストラクターが、「この位置が最適である」と判断した位置で、何らかの指示を行い、その時の角度を記憶するという方法が好ましい。このためには、倒立二輪車に特別なモード(以下、調整モードという。)を設け、これで起動することができる。
【0067】
倒立二輪車には、旋回時に旋回指令を出すための旋回指令用スイッチが設けられている。この旋回指令用スイッチ等を利用する場合について説明する。図6は、調整モード時の調整角度測定方法を示すフローチャートである。調整モード時のみに旋回指令スイッチを調整角度調整スイッチとして使用する。図6に示すように、このモードでは、旋回指令スイッチは、旋回を行う代わりに、調整角度を変更する(ステップS1)。スイッチをONにすると、例えば右旋回スイッチで、本体4をゆっくり前側に倒す(ステップS2)。また、左旋回スイッチで、本体4をゆっくり後ろ側に倒す(ステップS3)。ユーザが最適な位置にハンドルを調整できた後に、降車を指示するスイッチを押して、一旦降車する(ステップS4)。倒立二輪車は、降車スイッチが押された角度を調整角度として記憶し、調整モードを解除する(ステップS5)。
【0068】
以降、通常走行モードでは、記憶されているオフセット量を使用して倒立制御を行うことで、最適なハンドル位置で倒立二輪車を操縦することができる。このように、調整モードにより、ユーザが搭乗した際に、ハンドルを含む本体を、前後にゆっくり傾斜させ、ユーザとハンドルとの間の距離が最適になった位置で傾斜動作を停止する。ユーザとハンドルとの間の距離が最適になった位置は、ユーザが降車ボタンを押した時点としてユーザが指示することができる。図5(d)は、このような調整モードにより調整角度が設定されている状態の搭乗姿勢を示している。胴体が大きいユーザであっても、本体を若干傾けるのみで、適切な搭乗姿勢を取ることができる。
【0069】
本発明の実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。調整モードで搭乗すると、倒立二輪車は、前後にゆっくりと倒立制御目標値を変更する。倒立制御目標値は、滑らかに変化することか好ましい。図7は、本実施の形態にかかる調整角度測定方法を示すフローチャートである。図7に示すように、例えばサインカーブに従って、変化させることが考えられる(ステップS11)。この動作中に、ハンドルの位置が最適な場所になったところ、すなわち、ハンドルが最適な角度になったところで降車スイッチを押して、一旦降車する(ステップS12)。降車スイッチが押された時の調整角度を記憶し、調整モードを解除する(ステップS13)。以降の通常の走行モードでは、記憶されている調整角度を使用して、倒立制御を行うことで、最適なハンドル位置で倒立二輪車を操縦することができる。
【0070】
本発明の実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。例えば、何らかのセンサを使用して、ハンドルと腹部との間の距離を測定し、自動的に調整する方法も考えられる。ハンドル部に赤外線方式などの距離センサを設ける。そして、腹部との距離を測定することで、調整角度を調整する。この場合、距離の測定を自動化することもできる。
【0071】
調整モードでは、ユーザがステップに搭乗した際に、当該ハンドルを含む本体を前後方向に移動し、ユーザとハンドルとの間の距離を距離センサにより測定し、当該距離が所定の距離となった位置で前後方向の移動を停止し、停止した状態における本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として測定すればよい。
【0072】
ただし、走行中で坂道で測定をしてしまわないような条件の判定が必要である。例えば、次のようなときにのみ、測定を行う。例えば、「停止している」かつ「坂道ではない」かつ「乗車直後で走行開始前」とする。測定している間に不用意に走り出してしまわないように、特定動作中を示す音楽案内やメロディによる聴覚メッセージ、何らかのインジケータによる視覚メッセージを利用するとより効果的である。
【0073】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0074】
例えば、上述の実施の形態では、ハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではなく、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0075】
1 本体
2A、B 駆動ユニット
3A、B 車輪
4 ハンドル、
5 姿勢検出装置
6 旋回操作装置、
7 ブレーキ
8 ブレーキ検出装置
9 戻りバネ
10 ブラケット、
11 制御装置
12 姿勢制御器
13A、B 速度制御器
14 旋回制御器、
21 制御装置
22 車両速度検出装置、
23 車両速度指令設定装置、
24 姿勢制御器
25 速度制御器
26 旋回制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが搭乗するステップを有する本体と、
前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、
前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、
前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、
前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、
前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有し、
前記姿勢制御手段は、前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度である調整角度を、制御目標値として姿勢制御を実行する、倒立二輪車。
【請求項2】
ユーザが搭乗するステップを有する本体と、
前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、
前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、
前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、
前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、
前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、
前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として検出した姿勢角度を調整する調整手段と、を有し、
前記姿勢制御手段は、前記調整された姿勢角度を前記姿勢情報指令として姿勢制御を実行する、倒立二輪車。
【請求項3】
前記駆動ユニットの駆動速度を検出する駆動速度検出手段と、前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する前記動作状態検出手段と、前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、前記生成した駆動速度指令と前記駆動速度検出手段で検出した駆動速度とに基づいて、前記駆動ユニットのトルク指令を生成する速度制御手段と、を備え、前記速度制御手段で生成したトルク指令に応じて前記駆動ユニットを駆動して移動する、請求項1又は2記載の倒立二輪車。
【請求項4】
前記ユーザが搭乗した際に、前記ハンドルを含む本体を、前後にゆっくり傾斜させ、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になった位置で傾斜動作を停止することができる調整モードを有し、
当該調整モード時に前記調整角度を測定する、請求項2又は3記載の倒立二輪車。
【請求項5】
前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になった位置は、前記ユーザが指示する、請求項4記載の倒立二輪車。
【請求項6】
前記ハンドル部分に取り付けられた距離センサを有し、
前記調整モードでは、前記距離センサが、前記ハンドルと前記ユーザとの距離を計測し、前記距離センサが所定の距離を検出した時点で前記傾斜動作を停止させ、前記調整角度を測定する請求項4記載の倒立二輪車。
【請求項7】
ユーザを識別するユーザ識別情報と、当該ユーザの調整角度とを対応づけて記憶する記憶部を更に有する、請求項1乃至5のいずれか1項記載の倒立二輪車。
【請求項8】
ユーザが搭乗するステップを有する本体と、
前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、
前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、
前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、
前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、
前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有する倒立二輪車の前記姿勢制御手段が、姿勢制御する際に、制御目標値として使用する、前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度である調整角度と、
前記ユーザを識別するユーザ識別情報とを有する調整角度記憶装置。
【請求項9】
ユーザが搭乗するステップを有する本体と、
前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、
前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、
前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、
前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、
前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有する倒立二輪車の姿勢制御方法であって、
前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度である調整角度を、制御目標値として姿勢制御を実行する、姿勢制御方法。
【請求項10】
ユーザが搭乗するステップを有する本体と、
前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、
前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、
前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、
前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、
前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有する倒立二輪車の姿勢制御方法であって、
前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として検出した姿勢角度を調整する調整工程と、
前記調整された姿勢角度を前記姿勢情報指令として姿勢制御を実行する姿勢制御工程とを有する、姿勢制御方法。
【請求項11】
前記ユーザが搭乗した際に、前記ハンドルを含む本体を、前後にゆっくり傾斜させ、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になった位置で傾斜動作を停止させる調整モードを有し、
当該調整モード時に前記調整角度を測定する、請求項10記載の倒立二輪車。
【請求項12】
前記調整モードでは、
前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、当該ハンドルを含む本体を前後方向に移動し、
前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になった位置で前記前後方向の移動を停止し、
前記停止した状態における本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を前記調整角度として検出する請求項11記載の姿勢制御方法。
【請求項13】
前記調整モードでは、
前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、当該ハンドルを含む本体を前後方向に移動し、
前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離を距離センサにより測定し、当該距離が所定の距離となった位置で前記前後方向の移動を停止し、
前記停止した状態における本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を前記調整角度として検出する請求項11記載の姿勢制御方法。
【請求項14】
ユーザを識別するユーザ識別情報と、当該ユーザの調整角度とを対応づけて記憶し、
前記ユーザ識別情報を入力することで、当該ユーザの調整角度を読み出し、姿勢制御する、請求項8乃至13のいずれか1項記載の姿勢制御方法。
【請求項15】
ユーザが搭乗するステップを有する本体と、
前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、
前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、
前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、
前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、
前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有する倒立二輪車の姿勢制御をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度である調整角度を、制御目標値として姿勢制御を実行する工程を有する、プログラム。
【請求項16】
ユーザが搭乗するステップを有する本体と、
前記本体と同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニットと、
前記駆動ユニットにより回転駆動される左右の車輪と、
前記本体に取り付けられ前記ユーザがつかまるためのハンドルと、
前記倒立二輪車の姿勢情報を含む動作状態を検出する動作状態検出手段と、
前記検出した姿勢情報と入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの駆動速度指令を生成する前記姿勢制御手段と、を有する倒立二輪車の姿勢制御をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記ユーザが前記ステップに搭乗した際に、前記ユーザと前記ハンドルとの間の距離が最適になるように設定した場合の本体ピッチ角度の水平方向からのずれ度を調整角度として検出した姿勢角度を調整する調整工程と、
前記調整された姿勢角度を前記姿勢情報指令として姿勢制御を実行する姿勢制御工程とを有する、
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−207277(P2011−207277A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75100(P2010−75100)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】