説明

倒立振子型一輪車

【課題】訓練、慣れを要することなく簡単な操作によって乗員の思い通りに旋回する倒立振子型一輪車を提供する。
【解決手段】倒立振子型一輪車の搭乗者フレーム12に設けられた左右の足載せペダル26を操作することにより、車輪支持フレーム34ならびに車輪ユニット42を搭乗者フレーム12に対して前後方向軸線X周りに傾動させ、傾動方向にステア作用を生じさせる事で、旋回したい方向への体重移動を要することなく倒立振子型一輪車を旋回させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立振子型一輪車に関し、特に、前後方向の倒立振子制御を行われる倒立振子型一輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物として、車輪が原動機によって回転駆動される動力付き一輪車や、前後方向の倒立振子制御を行われる倒立振子型一輪車が知られている(例えば、特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−156352号公報
【特許文献2】特表2003−502002号公報
【特許文献3】特開2005−335678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動力付き一輪車や倒立振子型一輪車は静止時に左右方向のバランスを取って自立することが難しい。また、その車輌の旋回は、ペダル漕ぎ式の一輪車と同様に、サドルに腰掛けたり、ボード上に起立したりしている乗員が曲がりたい側に体重移動を行い、車輪を接地面に対して傾けることにより行われる。しかし、体重移動によってバランスを崩すことなく思い通りの旋回を行うには、訓練、慣れが必要であり、このことが動力付き一輪車や倒立振子型一輪車の操作を難しくしている。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、訓練、慣れを要することなく簡単な操作によって乗員の思い通りに倒立振子型一輪車が静止時の左右方向のバランスを取りやすくすると共に、旋回できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による倒立振子型一輪は、前後方向の倒立振子制御を行われる倒立振子型一輪車であって、運転者が搭乗する搭乗者フレーム(12、102)と、前記搭乗者フレーム(12、102)に前後方向に延在する軸線周りに回動可能に取り付けられた車輪支持フレーム(34、124)と、前記車輪支持フレーム(34、124)に横方向に延在する軸線周りに回転可能に取り付けられた車輪(46、134)と、前記車輪(46、134)を前後方向の倒立振子制御と前後進走行のために回転駆動する駆動部(48、136)と、前記搭乗者フレーム(12、102)に設けられ、運転者によって操作される操舵部材(26、114)と、前記操舵部材(26、114)の操作によって前記車輪支持フレーム(34、124)を前記搭乗者フレーム(12、102)とに対して前後方向軸線周りに傾動させる傾動駆動部(50、52、54、58、138、140)とを有する。
【0007】
この構成によれば、搭乗者が操舵部材(26、114)を操作することにより、車輪支持フレーム(34、124)が前後方向軸線周りに傾動し、左右方向に車輪(46、134)の接地点を移動させることができるため、静止時の左右方向のバランスを取りやすくすると共に、傾動方向にステア作用が生じるから、旋回したい方向への体重移動を要することなく旋回する。
【0008】
本発明による倒立振子型一輪は、好ましい一つの実施形態として、前記操舵部材は前記搭乗者フレームに各々個別に取り付けられた左右のペダル(26)であり、前記傾動駆動部(50、52、54、58)は前記左右のペダル(26)の変位を前記搭乗者フレーム(12)に対する前記車輪支持フレーム(34)の前後方向軸線周りの回動に変換する。
【0009】
この構成によれば、左右のペダル(26)の踏み込みと云う簡単な操作で倒立振子型一輪(10)が旋回する。
【0010】
本発明による倒立振子型一輪は、好ましい他の一つの実施形態として、前記操舵部材は前記搭乗者フレーム(102)に回動可能に取り付けられたハンドル(114)であり、前記傾動駆動部(138、140)は前記ハンドル(114)の回動を前記搭乗者フレーム(102)に対する前記車輪支持フレーム(124)の前後方向軸線周りの回動に変換する。
【0011】
この構成によれば、自転車のハンドル操作と同等のハンドル(114)の操作によって倒立振子型一輪(100)が旋回する。
【0012】
本発明による倒立振子型一輪は、好ましくは、更に、前記車輪が接地面に対して直立する中立位置に前記搭乗者フレームに対して前記車輪支持フレームを付勢する付勢部材を有する。
【0013】
この構成によれば、旋回操作を行っていない時には、車輪(46、134)が接地面に対して直立する中立位置で安定するので、直進走行が容易になる。
【0014】
本発明による倒立振子型一輪は、好ましい一つの実施形態として、前記車輪(46、134)の接地面が樽形に湾曲している。
【0015】
この構成によれば、車輪(46、134)の傾動が滑らかに行われ、良好な旋回性が得られる。
【0016】
本発明による倒立振子型一輪は、好ましい他の一つの実施形態として、前記車輪(142)の接地面が、扁平面(142A)と前記扁平面(124A)の横方向両側に各々連続する湾曲面(142B)とにより構成されている。
【0017】
この構成によれば、車輪(142)の直立性が高まる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による倒立振子型一輪車によれば、搭乗者が操舵部材を操作することにより、車輪支持フレームが前後方向軸線周りに傾動し、静止時においては左右方向に車輪の接地点を移動させることができるため、左右方向のバランスを取りやすくする。また走行時においては車輪の傾動方向にステア作用が生じるから、旋回したい方向への体重移動を要することなく旋回する。これにより、訓練、慣れを要することなく、搭乗者(乗員)の思い通りに倒立振子型一輪車を静止時に左右方向のバランスを取りやすくすると共に、旋回させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による倒立振子型一輪車の一つの実施形態を示す全体斜視図。
【図2】本実施形態による倒立振子型一輪車の分解斜視図。
【図3】本実施形態による倒立振子型一輪車の正面図。
【図4】本実施形態による倒立振子型一輪車の側面図。
【図5】本実施形態による倒立振子型一輪車の拡大平面図。
【図6】本実施形態による倒立振子型一輪車の要部の拡大側面図。
【図7】本実施形態による倒立振子型一輪車の要部の直進時の拡大正面図。
【図8】本実施形態による倒立振子型一輪車の要部の左旋回時の拡大正面図。
【図9】本発明による倒立振子型一輪車の他の実施形態を示す全体斜視図。
【図10】他の実施形態による倒立振子型一輪車の要部の分解斜視図。
【図11】他の実施形態による倒立振子型一輪車の側面図。
【図12】他の実施形態による倒立振子型一輪車の正面図。
【図13】本発明による倒立振子型一輪車に用いられる車輪の他の実施形態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明による倒立振子型一輪車の一つの実施形態を、図1〜図8を参照して説明する。なお、以下の説明において、左側、右側は、搭乗者自身の左右方向であり、左手側が左側、右手側が右側であり、時計廻り方向、反時計廻り方向は車体後方より見た回動方向である。
【0021】
本実施形態による倒立振子型一輪車10は搭乗者フレーム(車体)12を有する。搭乗者フレーム12は、平面視で四角枠状をなす鋼管製の下部フレーム14と、下部フレーム14に固定されて垂直方向に延在する一本のポール16と、ポール16の上端に固定されて水平方向に延在するハンドルバー18とを有する。ハンドルバー18の左右両端には搭乗者が手で握るグリップ20が取り付けられている。
【0022】
下部フレーム14の左側部分と右側部分には各々ペダル支持プレート22が固定されている。左右のペダル支持プレート22にはそれぞれ水平方向に突出したペダル支持軸24が固定されている。左右のペダル支持軸24はそれぞれ板状のペダル部材26がペダル支持軸24の中心軸線周りに回動可能に取り付けられている。ペダル部材26は、左右個別のものであり、ペダル支持軸24による下部フレーム14よりの支持位置がペダル部材26の前後方向の1/2位置より車体後方側にあることにより、ペダル支持軸24による回動支持位置により車体前方側に長い踏み込み部分26Aを有している。
【0023】
ペダル部材26と下部フレーム14との間には引張コイルばね28が取り付けられている。引張コイルばね28は、ペダル部材26をペダル支持軸24の中心軸線周りに図4で見て反時計廻り方向に付勢している。これにより、ペダル部材26は、図4に示されているように、踏み込み部分26Aが踏み込まれていない状態では、下底面がペダル支持プレート22の上縁面に当接することによって略水平な状態を維持する。
【0024】
下部フレーム14の前部分と後部分には前部軸支凹部30と後部軸支凹部32とが前後方向に水平に延在する一つの軸線X上に形成されている。
【0025】
倒立振子型一輪車10は、搭乗者フレーム12とは別に、車輪支持フレーム34を有する。車輪支持フレーム34は、平面視で下部フレーム14より一回り小さい四角枠状をしており、前部分と後部分とに形成された前部軸支凸部36と後部軸支凸部38とが前部軸支凹部30と後部軸支凹部32とに回動可能に嵌合していることにより、水平軸線X周りに回動可能に搭乗者フレーム12に連結されている。
【0026】
車輪支持フレーム34の左側部分と右側部分には各々車輪支持プレート40が固定されている。左右の車輪支持プレート40は一つの車輪ユニット42を両持ち支持している。車輪ユニット42は、ホイール44と、ホイール44の外周に取り付けられたゴムタイヤ46と、ホイール44内に配置され固定側を車輪支持プレート40に固定連結され、回転出力側をホイール44に固定連結されたホイールモータと呼ばれる電動モータ48とを含んでいる。電動モータ48は、回転中心軸線が横方向(左右方向)に延在する配置になっており、ホイール44とゴムタイヤ46とを横方向(左右方向)に延在する軸線Y周りに正逆回転駆動する。ゴムタイヤ46の外周面は接地面であり、車体前後方向の正面から見て幅方向中央が盛り上がった樽形に湾曲している。
【0027】
車輪支持フレーム34は、前部の横幅方向(軸線Y方向)の中央位置(1/2の位置)に上下方向に長いキー形状の突部50が形成されている。突部50には左右方向(軸線Y方向)に延在する横リンク部材52の中央位置(1/2の位置)に形成されている上下方向に長い長孔54にスライド可能に嵌合している。横リンク部材52の左右両端部には、各々ピン56によって縦リンク部材58の上端部が回動可能に連結されている。左右の縦リンク部材58の下端部はピン60によって左右のペダル部材26の前端部に回動可能に連結されている。
【0028】
左右何れのペダル部材26も踏み込まれていない状態では、左右の引張コイルばね28のばね力が上述のリンク機構によって横リンク部材52に均等に作用することにより、突部50と長孔54との嵌合のもとに、図7に示されているように、ゴムタイヤ46が接地面に対して直立する中立位置に、車輪支持フレーム34が搭乗者フレーム12に対して付勢され、この状態が維持される。
【0029】
図6に示されているように、左側のペダル部材26の前側が引張コイルばね28のばね力に抗して踏み込まれると、その踏込量に応じて左側の縦リンク部材58が引き下げられ、車体後方から見て横リンク部材52が長孔54と突部50との嵌合部を回動中心として反時計廻り方向に回動する。この横リンク部材52の回動により、図8に示されているように、車輪支持フレーム34ならびにゴムタイヤ46が搭乗者フレーム12に対してX軸周りに車体後方から見て反時計廻り方向に回動し、左側のペダル部材26の踏み込み量に応じて左側に傾く。
【0030】
これとは反対に、右側のペダル部材26の前側が引張コイルばね28のばね力に抗して踏み込まれると、その踏込量に応じて右側の縦リンク部材58が引き下げられ、車体後方から見て横リンク部材52が長孔54と突部50との嵌合部を回動中心として時計廻り方向に回動する。この横リンク部材52の回動により、車輪支持フレーム34がX軸周りに搭乗者フレーム12に対して車体後方から見て時計廻り方向に回動し、右側のペダル部材26の踏込量に応じて右側に傾く。
【0031】
このようにして、左右のペダル部材26が操舵部材をなし、長孔54をもって車輪支持フレーム34の突部50に係合している横リンク部材52と左右の縦リンク部材58が左右のペダル部材26の踏込量(変位)を、搭乗者フレーム12に対する車輪支持フレーム34の前後方向軸線(軸線X)周りの回動に変換する傾動駆動部をなす。
【0032】
搭乗者フレーム12のポール16には、電動モータ48の電源ユニット62と制御装置64とが取り付けられている。電源ユニット62は、再充電可能な二次電池を含んでおり、制御装置64にも電力供給を行う。制御装置64は、ジャイロセンサ、傾斜角センサ、加速度センサ等を含み、前後方向の倒立振子制御と、搭乗者の前後方向の重心移動検知に基づく前後進走行のための電動モータ48の回転駆動を制御する。
【0033】
この倒立振子型一輪車10は、前後方向の倒立振子制御によってポール16が前後方向に傾動しない前後方向姿勢を維持する。この倒立振子制御下で、搭乗者は、左右の手で左右のグリップ20を握り、左右の足を左右のペダル部材26上に載せることにより、倒立振子型一輪車10に直立搭乗した状態になる。
【0034】
この搭乗状態で、搭乗者が前側に体重移動(重心移動)を行うと、倒立振子制御下のもとに、倒立振子型一輪車10は、前側への体重移動の大きさに比例した速度で前進走行する。これに対し、搭乗者が後側に体重移動を行うと、倒立振子制御下のもとに、倒立振子型一輪車10は、後側への体重移動の大きさに比例した速度で後進走行する。
【0035】
直進走行したい場合には、左右のペダル部材26の双方に、ペダル支持軸24の真上あるいはこれより後方に体重をかける。この場合には、図7に示されているように、横リンク部材52が略水平姿勢を保ち、車輪支持フレーム34が搭乗者フレーム12に対して左右何れにも傾斜せず、ゴムタイヤ46が幅方向中央部で接地点Aをもって接地して接地面に対し直立する。この状態では、倒立振子型一輪車10は、左右何れの方向にもステア作用を及ぼされずに直進する。
【0036】
左側に旋回走行したい場合には、図6に示されているように、左側のペダル部材26の踏み込み部分26Aを引張コイルばね28のばね力に抗して下方へ踏み込む。この左側のペダル部材26の踏み込みにより、踏込量に応じて左側の縦リンク部材58が引き下げられ、車体後方から見て横リンク部材52が長孔54と突部50との嵌合部を回動中心として車体後方から見て反時計廻り方向に回動する。この横リンク部材52の回動により、図8に示されているように、車輪支持フレーム34が搭乗者フレーム12に対し左側のペダル部材26の踏み込み量に応じて左側に傾き、ゴムタイヤ46は接地面に対し左側に傾き、左側の肩部寄りに移動した接地点Bで接地するようになる。この状態では、倒立振子型一輪車10は、左側のペダル部材26の踏込量に応じた左方向のステア作用を及ぼされることになり、踏込量が大きいほど、小さい旋回半径で左旋回する。
【0037】
右側に旋回走行したい場合には、右側のペダル部材26の踏み込み部分26Aを引張コイルばね28のばね力に抗して下方へ踏み込む。この右側のペダル部材26の踏み込みにより、踏込量に応じて右側の縦リンク部材58が引き下げられ、車体後方から見て横リンク部材52が長孔54と突部50との嵌合部を回動中心として車体後方から見て時計廻り方向に回動する。この横リンク部材52の回動により、車輪支持フレーム34が搭乗者フレーム12に対し右側のペダル部材26の踏み込み量に応じて右側に傾き、ゴムタイヤ46は接地面に対し右側に傾き、右側の肩部寄りに移動した接地点で接地するようになる。この状態では、倒立振子型一輪車10は、右側のペダル部材26の踏込量に応じた左方向のステア作用を及ぼされることになり、踏込量が大きいほど、小さい旋回半径で右旋回する。
【0038】
これにより、搭乗者は、直立した姿勢のまま、左右のペダル部材26の踏み込みだけで、旋回したい方向への体重移動を要することなく旋回することができる。これにより、訓練、慣れを要することなく、左右のペダル部材26の踏み込みと云う簡単な操作によって搭乗者(乗員)の思い通りに倒立振子型一輪車10を旋回させることができる。
【0039】
また、静止時に右側に重心が移動した場合には、右側のペダル部材26を踏み込むことでゴムタイヤ46を右側に傾動させ、ゴムタイヤ46の接地点を右側へ移動させることができる。これにより、移動した重心位置の鉛直下方向に接地点を位置させることができるため、バランスを容易に取ることが可能となる。
【0040】
以下に、本発明による倒立振子型一輪車のもう一つの実施形態を、図9〜図11を参照して説明する。
【0041】
本実施形態による倒立振子型一輪車100は搭乗者フレーム(車体)102を有する。搭乗者フレーム102は、前後方向にヨーク形状(ステープル形状)をなす基部104と、基部104上に立設されたサドル支持パイプ106に固定されたサドル108と、基部104に固定された軸受スリーブ110を回転可能に貫通して基部104より回動可能に支持されたハンドルコラム112と、ハンドルコラム112の上端に固定されて水平方向に延在する操舵部材であるハンドルバー114と、基部104の左右両側に固定されたステップ支持アーム116と、ステップ支持アーム116の先端に取り付けられたステッププレート118とを有する。ハンドルバー114の左右両端には搭乗者が手で握るグリップ120が取り付けられている。
【0042】
基部104は、前後方向に水平に延在する支持軸122を両持ち支持している。支持軸122は車輪支持フレーム124の上部スリーブ126を自身の中心軸線周り(軸線X周り)に回転可能に支持している。上部スリーブ126の左右両側には車輪支持アーム128が固定されている。左右の車輪支持アーム128は、上部スリーブ126と協働して二股形状をなし、一つの車輪ユニット130を両持ち支持している。
【0043】
車輪ユニット130は、ホイール132と、ホイール132の外周に取り付けられたゴムタイヤ134と、ホイール132内に配置され固定側を車輪支持アーム128の先端に固定連結され、回転出力側をホイール132に固定連結されたホイールモータと呼ばれる電動モータ136とを含んでいる。電動モータ136は、回転中心軸線が横方向(左右方向)に延在する配置になっており、ホイール132とゴムタイヤ134とを横方向(左右方向)に延在する軸線Y周りに正逆回転駆動する。ゴムタイヤ134の外周面は接地面であり、幅方向中央が盛り上がった樽形に湾曲している。
【0044】
ハンドルコラム112の下端部は軸受スリーブ110を貫通して基部104の下方にあり、この下端部にベベル歯車138が固定されている。上部スリーブ126の外周部にはベベル歯車138と噛合するベベル歯車140が固定されている。ベベル歯車138と140とは、ハンドルバー114の回動を搭乗者フレーム102に対する車輪支持フレーム124の前後方向軸線(軸線X)周りの回動に変換する傾動駆動部をなす。
【0045】
これにより、ハンドルコラム112を回動中心としてハンドルバー114を左側に廻すと、ベベル歯車138と140との噛み合いによって上部スリーブ126が軸線X周りに車体後方より見て反時計廻り方向に回動する。この回動により、車輪支持フレーム124が搭乗者フレーム102に対しハンドルバー114の操作量に応じて左側に傾く。
【0046】
これとは反対に、ハンドルコラム112を回動中心としてハンドルバー114を右側に廻すと、ベベル歯車138と140との噛み合いによって上部スリーブ126が軸線X周りに車体後方より見て時計廻り方向に回動する。この回動により、車輪支持フレーム124が搭乗者フレーム102に対しハンドルバー114の操作量に応じて右側に傾く。
【0047】
搭乗者フレーム102のサドル支持パイプ106には、電動モータ136の電源ユニット142と制御装置144とが取り付けられている。電源ユニット142は、再充電可能な二次電池を含んでおり、制御装置144にも電力供給を行う。制御装置144は、ジャイロセンサ、傾斜角センサ、加速度センサ等を含み、前後方向の倒立振子制御と、搭乗者の前後方向の重心移動検知に基づく前後進走行のための電動モータ136の回転駆動を制御する。
【0048】
この倒立振子型一輪車100は、前後方向の倒立振子制御によってハンドルコラム112およびサドル支持パイプ106が前後方向に傾動しない前後方向姿勢を維持する。この倒立振子制御下で、搭乗者は、左右の手で左右のグリップ120を握り、サドル108に腰掛け、左右の足を左右のステッププレート118上に載せることにより、倒立振子型一輪車100に着座搭乗した状態になる。
【0049】
この搭乗状態で、搭乗者が前側に体重移動(重心移動)を行うと、倒立振子制御下のもとに、倒立振子型一輪車100は、前側への体重移動の大きさに比例した速度で前進走行する。これに対し、搭乗者が後側に体重移動を行うと、倒立振子制御下のもとに、倒立振子型一輪車100は、後側への体重移動の大きさに比例した速度で後進走行する。
【0050】
直進走行したい場合には、ハンドルバー114の延在方向が軸線Yと平行になる中立位置に位置させる。この場合には、車輪支持フレーム124が搭乗者フレーム102に対して左右何れにも傾斜せず、ゴムタイヤ134が幅方向中央部で接地して接地面に対し直立する。この状態では、倒立振子型一輪車100は、左右何れの方向にもステア作用を及ぼされずに直進する。
【0051】
左側に旋回走行したい場合には、ハンドルバー114を左側に回動させる。この回動によってハンドルコラム112、ベベル歯車138、140が回動し、車輪支持フレーム124が搭乗者フレーム102に対しハンドルバー114の操作量に応じて左側に傾き、ゴムタイヤ134は接地面に対し左側に傾き、左側の肩部で接地するようになる。この状態では、倒立振子型一輪車100は、ハンドルバー114の左側への操作量に応じた左方向のステア作用を及ぼされることになり、操作量が大きいほど、小さい旋回半径で左旋回する。
【0052】
右側に旋回走行したい場合には、ハンドルバー114を右側に回動させる。この回動によってハンドル112、ベベル歯車138、140が回動し、車輪支持フレーム124が搭乗者フレーム102に対しハンドルバー114の操作量に応じて右側に傾き、ゴムタイヤ134は接地面に対し右側に傾き、右側の肩部で接地するようになる。この状態では、倒立振子型一輪車100は、ハンドルバー114の右側への操作量に応じた左方向のステア作用を及ぼさることになり、操作量が大きいほど、小さい旋回半径で右旋回する。
【0053】
これにより、搭乗者は、着座した姿勢のまま、自転車のハンドル操作と同等のハンドルバー114の操作だけで、旋回したい方向への体重移動を要することなく旋回することができる。これにより、訓練、慣れを要することなく、ハンドル操作と云う簡単な操作によって搭乗者(乗員)の思い通りに倒立振子型一輪車100を旋回させることができる。
【0054】
上述の何れの実施形態でも、ゴムタイヤ46、134は、接地面が車体前後方向の正面から見て樽形に湾曲しているものが用いられているから、傾動が滑らかに行われ、良好な旋回性が得られるが、ゴムタイヤ46、134は、図13に示されているように、扁平面142Aと扁平面142Aの横方向両側に各々連続するR状の湾曲面142Bを有するゴムタイヤ142が用いられてもよい。このゴムタイヤ142による場合には、扁平面142Aの存在により、樽形のものより、ゴムタイヤ142の直立性が高まる。
【符号の説明】
【0055】
10 倒立振子型一輪車
12 搭乗者フレーム
26 ペダル部材
28 引張コイルばね
34 車輪支持フレーム
42 車輪ユニット
46 ゴムタイヤ
48 電動モータ
50 突部
52 横リンク部材
54 長孔
58 縦リンク部材
100 倒立振子型一輪車
102 搭乗者フレーム
108 サドル
112 ハンドルコラム
114 ハンドルバー
118 ステッププレート
122 支持軸
124 車輪支持フレーム
130 車輪ユニット
134 ゴムタイヤ
136 電動モータ
138、140 べベル歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向の倒立振子制御を行われる倒立振子型一輪車であって、
運転者が搭乗する搭乗者フレームと、
前記搭乗者フレームに前後方向に延在する軸線周りに回動可能に取り付けられた車輪支持フレームと、
前記車輪支持フレームに横方向に延在する軸線周りに回転可能に取り付けられた車輪と、
前記車輪を前後方向の倒立振子制御と前後進走行のために回転駆動する駆動部と、
前記搭乗者フレームに設けられ、運転者によって操作される操舵部材と、
前記操舵部材の操作によって前記車輪支持フレームを前記搭乗者フレームに対して前後方向軸線周りに傾動させる傾動駆動部と、
を有する倒立振子型一輪車。
【請求項2】
前記操舵部材は前記搭乗者フレームに各々個別に取り付けられた左右のペダルであり、 前記傾動駆動部は前記左右のペダルの変位を前記搭乗者フレームに対する前記車輪支持フレームの前後方向軸線周りの回動に変換する請求項1に記載の倒立振子型一輪車。
【請求項3】
前記操舵部材は前記搭乗者フレームに回動可能に取り付けられたハンドルであり、
前記傾動駆動部は前記ハンドルの回動を前記搭乗者フレームに対する前記車輪支持フレームの前後方向軸線周りの回動に変換する請求項1に記載の倒立振子型一輪車。
【請求項4】
前記車輪が接地面に対して直立する中立位置に戻るように、前記搭乗者フレームに対して前記車輪支持フレームを付勢する付勢部材を有する請求項1から3の何れか一項に記載の倒立振子型一輪車。
【請求項5】
前記車輪の接地面が樽形に湾曲している請求項1から4の何れか一項に記載の倒立振子型一輪車。
【請求項6】
前記車輪の接地面が、扁平面と扁平面の横方向両側に各々連続する湾曲面とにより構成されている請求項1から4の何れか一項に記載の倒立振子型一輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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