偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法、偏光板及び偏光板の製造方法、並びに乗り物用映り込み防止フィルム
【課題】優れた耐久性、配向性を有し、収縮応力が小さく、かつ、大面積で偏光板を製造することができる偏光フィルム、偏光フィルムの製造方法、偏光板、及び偏光板の製造方法、並びにこれらを用いた関連技術の提供。
【解決手段】少なくとも二色性異方性金属ナノ粒子と熱可塑性樹脂を含み、厚みが12.5μm以下である偏光フィルムとする。該二色性異方性金属ナノ粒子の配向度が、0.85よりも大きい態様、該二色性異方性金属ナノ粒子の球相当半径が、15nm以下であり、かつアスペクト比が1.1〜10である態様などが好ましい。
【解決手段】少なくとも二色性異方性金属ナノ粒子と熱可塑性樹脂を含み、厚みが12.5μm以下である偏光フィルムとする。該二色性異方性金属ナノ粒子の配向度が、0.85よりも大きい態様、該二色性異方性金属ナノ粒子の球相当半径が、15nm以下であり、かつアスペクト比が1.1〜10である態様などが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法、偏光板及び偏光板の製造方法、並びに乗り物用映り込み防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板の製造方法として、ヨウ素、有機染料系の材料を用いた偏光板の製造方法が知られている。該偏光板の製造方法としては、ビニロンフィルム(約75μm)を水中でロール一軸延伸しながら、ヨウ素あるいは有機染料で染色し、更にPVA(ポリビニルアルコール)をホウ酸等で硬膜し、偏光フィルムを製造した後、一般的には、更にPVA糊を用いてTAC(トリアセチルセルロース)ベースで挟み込んだ形態にする。
しかしながら、製造される偏光フィルムの厚みが厚いため収縮応力が大きく、偏光フィルムにカールが発生しやすいという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するため、熱可塑性樹脂支持体上にPVA層を形成し、一軸あるいは遂次二軸延伸した後、ヨウ素あるいは有機染料で染色し、接着剤を介してTACベース等に積層するヨウ素、有機染料系の材料を用いた薄膜偏光板の製造方法が提案されている(特許文献1〜5参照)。
例えば、特許文献1には、延伸前の偏光フィルムの膜厚をd(μm)として、延伸倍率eを掛けた、延伸後の偏光フィルムの厚みを30(μm)よりも小さくすることが記載されている。
また、特許文献2には、熱可塑性支持体にPVA層(6.4〜76.2μm)を塗布、延伸し、染色可能な配向場を作製することが記載されている。
また、特許文献3には、PVA層が10μm以下になるように横一軸延伸(4〜8倍)後、染色し、更に直交方向に2%以上収縮(2回目の延伸は、横一軸延伸後でも延伸中でもよい)させることが記載されている。
また、特許文献4には、少なくとも片面に保護フィルム(TACフィルム、環状ポリオレフィンフィルム)を有し、PVAが主成分である厚み10μm以下である偏光フィルムが記載されている。
また、特許文献5には、PVA層(6〜30μm:6μm以下だと延伸困難)を、1枚の熱可塑性樹脂に貼り付けた状態、あるいは2枚の熱可塑性樹脂で挟んだ状態で一軸延伸し、接着層を介して別基材に積層、剥離後、染色した厚み2〜15μmの偏光フィルムと、ハードコート層、アンチグレア、反射防止層等を適宜付与した偏光板が記載されている。
これらの偏光板の製造方法によると、偏光フィルムが薄層であるため、カールを小さく抑えることができ、また、折り曲げに対しても強い。
なお、このほかに、アモルファスポリオレフィン系樹脂フィルム(特にノルボルネン系)の表面に厚みが20〜1,500nmの偏光層(平板状色素:フタロシアニン等、オプティバインク等を含む)を付与した偏光板も知られている(特許文献6参照)。
【0004】
前記偏光板の製造方法に用いられるヨウ素、有機染料は、耐熱性が低いため、二色性を示す金属ナノロッド(銀、金)をPVAに分散し、キャスト膜を作製後、単膜で延伸配向させることにより偏光フィルムを製造する、金属ナノロッドを用いた偏光フィルムの製造方法が提案されている(非特許文献1、2参照)。
しかしながら、該偏光フィルムの製造方法では、高い耐久性を得られると考えられるが、偏光フィルムにおける金属ナノロッドの配向性が低い(〜0.8)という問題点がある。また、偏光フィルムの厚みが大きいため、収縮応力も大きいと推定される。
【0005】
このような問題を解消するため、金属ナノロッドを用いた薄膜偏光フィルムの製造方法も提案されている(特許文献7、8参照)。これらの偏光フィルムの製造方法は、マトリクスポリマーが150℃以上の耐熱性を有する金属ナノロッド型偏光子を製造可能とするうものであり、アミック酸と硝酸銀を製膜後、加熱延伸することによりポリイミド化と金属ナノロッド形成を同時に行い、厚みが薄く、配向度の高い(〜0.9)偏光フィルムを得ることができる。
しかしながら、この偏光フィルムの製造方法によると、高い耐久性を得ることができるが、重合かつ延伸時に高い温度で加熱するため、偏光フィルムを用いた偏光板の大面積化が難しく、また、原理上、光学濃度や色味調整ができないという問題点があった。
したがって、優れた耐久性、配向性を有し、収縮応力が小さく、かつ、大面積で偏光板を製造することができる偏光フィルムとしては、未だ満足できるものが存在しないというのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2001−343522号公報
【特許文献2】特公平08−12296号公報
【特許文献3】特開2003−43257号公報
【特許文献4】特開2001−343521号公報
【特許文献5】特開2000−338329号公報
【特許文献6】特開2002−228837号公報
【特許文献7】特開2006−184624号公報
【特許文献8】特開2006−312681号公報
【非特許文献1】Adv.Mater.2002,14(13),1000-1004
【非特許文献2】Adv.Func.Mater.2005,75,1065-1071
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた耐久性、配向性を有し、収縮応力が小さく、かつ、大面積で偏光板を製造することができる偏光フィルム、偏光フィルムの製造方法、偏光板、及び偏光板の製造方法、並びにこれらを用いた関連技術を提供することを目的とする。また、本発明は、光学濃度や色味調整が容易で、フレキシブルかつ様々な支持体に積層可能な偏光フィルム、偏光フィルムの製造方法、偏光板、及び偏光板の製造方法、並びにこれらを用いた関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の(1)、(2)に示す知見を得た。
(1)組成物層の厚みを小さくすることによる二色性金属ナノ粒子(金属ナノロッド)の配向性向上
分子やサブミクロンオーダーの棒状粒子やウィスカーについては、さかんに研究が進められ、分子秩序性や配向制御に関する知見が得られている。分子の配向制御に関しては、例えば、ヨウ素、有機染料の延伸配向のほか、液晶材料や界面活性剤、金属錯体やJ会合体などの分子秩序性に関する研究が進められている。またサブミクロンオーダーの棒状粒子やウィスカーについては、例えば流動配向や圧延、エレクトロスピニングや磁場、電場配向に関する研究が進められている。
しかし、メゾスケールの金属ナノ粒子やナノロッドの配向制御に関する知見は少なく、単にナノロッドを含有するPVA膜等を延伸して配向した報告に留まっていた。
そこで、鋭意検討した結果、マトリクスポリマー膜厚の薄膜化に伴い、二色性金属ナノ粒子(金属ナノロッド)の配向性が向上することがわかり、より少ない延伸倍率で二色性金属ナノ粒子(金属ナノロッド)の配向度を上げることができることを知見した。
【0009】
(2)偏光フィルムの寸法変化
偏光フィルムは、延伸したフィルムであるため、収縮応力が大きく、加熱されると延伸方向に収縮してしまい、寸法変化が大きいという問題点があった。また収縮応力が大きいため、偏光膜をTAC等の保護フィルムに貼合して使用しても、カールが発生するという問題点があった。
特に、加熱時の寸法変化の問題は大きく、例えば、ビニロンフィルム(75μm、VF−P#7500、クラレ社製)を用いて作製した4倍縦一軸延伸フィルムを用いて、合わせガラスを作製すると、130℃まで加熱することにより延伸フィルムが収縮し、出来上がった合わせガラスを観察すると、延伸フィルムが延伸方向に約20%縮んでしまうという現象が見られた。
そこで、鋭意検討した結果、偏光膜の膜厚を薄膜化することにより、合わせガラス化工程を経ても、寸法変化を小さくすることができることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも二色性異方性金属ナノ粒子と熱可塑性樹脂を含み、厚みが12.5μm以下であることを特徴とする偏光フィルムである。
<2> 二色性異方性金属ナノ粒子の配向度が、0.85よりも大きい前記<1>に記載の偏光フィルムである。
<3> 二色性異方性金属ナノ粒子の球相当半径が、15nm以下であり、かつアスペクト比が1.1〜10である前記<1>から<2>のいずれかに記載の偏光フィルムである。
<4> 二色性異方性金属ナノ粒子の金属が、銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、ニッケルの少なくとも1種類を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の偏光フィルムである。
<5> 二色性異方性金属ナノ粒子が、コア金属をシェル金属で被覆してなるコアシェル構造を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の偏光フィルムである。
<6> コア金属が金であり、シェル金属が銀である前記<5>に記載の偏光フィルムである。
<7> 熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコールである前記<1>から<6>のいずれかに記載の偏光フィルムである。
<8> 少なくとも、二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂とを含む組成物層を延伸性支持体上に形成する組成物層形成工程と、前記組成物層を延伸性支持体とともに延伸し、該延伸性支持体上に偏光フィルムを形成する延伸工程とを含み、前記組成物層の厚みが25μm以下であり、かつ、前記偏光フィルムの延伸後の厚みが12.5μm以下であることを特徴とする偏光フィルムの製造方法である。
<9> 組成物層の厚みが、10μm以下である前記<8>に記載の偏光フィルムの製造方法である。
<10> 延伸性支持体が、未延伸ポリエチレンテレフタレートである前記<8>から<9>のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
<11> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の偏光フィルムを有することを特徴とする偏光板である。
<12> 偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を有する前記<11>に記載の偏光板である。
<13> 偏光フィルムにおける、少なくとも一の面上の基材が、トリアセチルセルロースフィルムである前記<12>に記載の偏光板である。
<14> 偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、第1の基材と、第2の基材とをこの順で有する前記<11>に記載の偏光板である。
<15> 第1の基材が、ポリビニルブチラール及びポリエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む中間層であり、第2の基材が、ガラス基板である前記<13>に記載の偏光板である。
<16> 前記<8>から<10>のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法により製造された偏光フィルムにおける、延伸性支持体が形成された一の面と反対側の面に、基材を積層させた後、前記延伸性支持体を前記偏光フィルムの一の面から剥離させる偏光フィルム積層工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法である。
<17> 偏光フィルムにおける基材が配された一の面と反対側の面に、更に基材を配し、前記偏光フィルムにおける一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を配した積層体を形成する積層体形成工程を含む前記<16>に記載の偏光板の製造方法である。
<18> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の偏光フィルムを有することを特徴とする乗り物用映り込み防止フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた耐久性、配向性を有し、収縮応力が小さく、かつ、大面積で偏光板を製造することができる偏光フィルム、偏光フィルムの製造方法、偏光板、及び偏光板の製造方法、並びにこれらを用いた関連技術を提供することができる。また、本発明によると、光学濃度や色味調整が容易で、フレキシブルかつ様々な支持体に積層可能な偏光フィルム、偏光フィルムの製造方法、偏光板、及び偏光板の製造方法、並びにこれらを用いた関連技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(偏光フィルム)
本発明の偏光フィルムは、少なくとも二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂を含み、厚みが12.5μm以下としてなる。
【0013】
前記偏光フィルムの厚みの上限値としては、12.5μm以下であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二色性金属ナノ粒子の配向性向上の観点から、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。
前記厚みの下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、偏光フィルムの強度の観点から、0.5μm以上であることが好ましい。
【0014】
また、前記偏光フィルムの配向度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.85よりも大きいことが好ましく、0.9よりも大きいことがより好ましく、1が特に好ましい。
前記配向度が、0.85よりも大きいと、偏光性能向上の観点から好ましい。
【0015】
−二色性異方性金属ナノ粒子−
前記二色性異方性金属ナノ粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属ナノロッドと呼ばれる金属ナノ粒子が挙げられる。
前記金属ナノロッドは、短軸よりも長軸が長い棒状粒子であり、“Adv.Mater.2002,14(13),1000-1004”、“Adv.Func.Mater.2005,75,1065-1071”、及び特開2006−184624号公報に開示されているように、銀や金、銅、アルミニウムなどの金属ナノロッドは短径と長径で異なる表面プラズモン共鳴を示すため、紫外光域〜近赤外域にかけて二色性を示し、これらの金属ナノロッドの長径が一方向に配向させた材料は、偏光性を示す。
前記金属ナノロッドとしての二色性材料としては、無機物であるため、熱や光に強く、またこれを用いた偏光板は、従来のヨウ素や有機染料を用いた偏光板に対して耐久性が高く、例えば、銀ナノロッドがガラスマトリクス中で配向したガラス偏光子;ポーラコア(コーニング社製)は、高耐久性が要求される光通信の分野で利用されている。
前記金属ナノロッドの金属としては、銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、ニッケルが好ましい。
【0016】
また、前記金属ナノロッドとしては、コアナノロッドをシェルで被覆してなるコアシェル構造としてなる複合金属ナノロッドであるのが好ましい。
【0017】
前記複合金属ナノロッドとしては、図1に示すように、コアナノロッド1をシェル2で被覆してなるコアシェル構造からなる。図1の複合金属ナノロッドのアスペクト比は、長軸長さ(以下、「長径」と称することもある)Aを、短軸長さ(以下、「短径」と称することもある)Bで割った値(A/B)から求められる。
前記複合金属ナノロッドにおけるアスペクト比とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子のアスペクト比の平均値を意味する。
前記複合金属ナノロッドのアスペクト比としては、可視光領域に吸収を付与する観点から1.1〜10が好ましく、1.1〜5がより好ましい。
前記アスペクト比が、1.1に満たないと、十分な二色性が得られないことがあり、10を超えると、所望の可視域から近赤外域の吸収が得られないことがある。
【0018】
前記複合金属ナノロッドの球相当半径(R)としては、散乱の観点から、15nm以下が好ましく、13nm以下がより好ましい。
前記球相当半径(R)が15nmを超えると、複合金属ナノロッド由来の散乱が強くなり、複合金属ナノロッド分散物や複合金属ナノロッド含有組成物の透過性が下がってしまうことがある。
ここで、前記球相当半径(R)とは、複合金属ナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、複合金属ナノロッドの形状に応じて以下の式で表される。
【数1】
ただし、Aは複合金属ナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、その複合金属ナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測する。Bは複合金属ナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、その複合金属ナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測する。
【数2】
ただし、A及びBは、上記と同じ意味を表す。
【0019】
ここで、複合金属ナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、透過型電子顕微鏡(TEM)で複合金属ナノロッドを観察した際の形状から判別することができる。複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.2Bである場合(例えば、球面状(図12のC及びE)、楕円面状(図12のD)、楕円体状(図12のF)など)には略円柱形状とする。
一方、複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、0.2B<L≦0.9Bである場合(例えば多面体状(図12のA及びBなど))には略直方体状とする。
なお、前記複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lは、後述する複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと同義である。
【0020】
前記複合金属ナノロッドの両端面は、図1に示すように、角のない曲面状であることが短軸由来の吸収ピークの線幅が細くなり、二色性が向上する点で好ましい。
前記角のない曲面状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば球面、楕円面、楕円体、多面体面などが挙げられ、具体的には、図11に示すように、複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.9Bを満たすものが好ましく、L≦0.8Bを満たすものがより好ましい。
前記Lが0.9Bを超えると、短軸の吸収がブロードになってしまうことがある。
【0021】
前記複合金属ナノロッドとしては、特に制限はないが、少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッドを構成するコア金属と、シェルを構成するシェル金属とが異なる金属であることが好ましい。なお、コアナノロッド又はシェルが複数種の金属を含有していても構わない。
前記コア金属に対してシェル金属の方が卑であることが好ましい。このことは、前記シェル金属の還元電位が前記コア金属の還元電位よりも高いことを意味する。前記金属の還元電位は、「化学便覧改訂3版 基礎編II」に記載されている。
コア金属に対してシェル金属の方が卑であることが好ましい理由としては、シェル金属よりコア金属の方が卑である場合、シェル金属を析出させる際にコア金属が溶出してしまうことがあるためである。
前記コア金属としては、例えば金、白金、パラジウム、などが挙げられる。これらの中でも、金が特に好ましい。
前記シェル金属としては、例えば銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。これらの中でも、銀が特に好ましい。
したがって、前記複合金属ナノロッドとしては、コア金属が金、シェル金属が銀からなる金コア銀シェルナノロッドが特に好適である。
【0022】
前記コアナノロッドと前記シェルの体積比(シェル/コアナノロッド)は、0.1〜130が好ましく、耐酸化性の観点からは1〜40がより好ましい。前記体積比が、0.5未満であると、シェル金属によるコアナノロッドの被覆が不十分となり、シェル金属の光学特性が十分に発現されなくなることがあり、130を超えると、酸化されてしまうことがある。
ここで、前記コアナノロッドの体積Vコアと前記シェルの体積Vシェルとの体積比(シェル/コアナノロッド)は、複合金属ナノロッド及びコアナノロッドの形状に応じて以下の式で表される。
略直方体状の場合には、Vシェル=(A×B×B)−Vコア
Vコア=(a×b×b)
略円柱形状の場合には、Vシェル=(π×A×B×B/4)−Vコア
Vコア=(π×a×b×b/4)
ただし、A及びBは上記と同じ意味を表す。aはコアナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測する。bはコアナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測する。
なお、複合金属ナノロッド又はコアナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、上記球相当半径の場合と同様にして判別することができる。
【0023】
ここで、図2は、コアナノロッドを示し、そのアスペクト比は、コアナノロッドの長軸長さaを、コアナノロッドの短軸長さbで割った値(a/b)から求められる。
前記コアナノロッドのアスペクト比とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子のアスペクト比の平均値を意味する。
前記コアナノロッドのアスペクト比は、1.5〜24が好ましく、可視光領域に吸収を付与する観点から1.5〜10がより好ましい。前記アスペクト比が、1.5未満であると、複合金属ナノロッド吸収特性の可視光域での調整範囲が狭くなることがあり、24を超えると、可視光域に吸収を付与するためにシェル金属厚みが厚くなり、その結果、粒子体積が大きくなってしまい透過性が低下することがある。
前記コアナノロッドの球相当半径(r)は10nm以下が好ましく、複合金属ナノロッドの散乱を小さくし、かつ吸収特性を制御するためには8nm以下がより好ましい。前記コアナノロッドの球相当半径(r)が10nmを超えると、複合金属ナノロッド由来の散乱が強くなり、複合金属ナノロッド分散物や複合金属ナノロッド含有組成物などの透過性が低くなることがある。
前記コアナノロッドの球相当半径(r)とは、コアナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、上記複合金属ナノロッドの球相当半径と同様にして求めることができる。
【0024】
前記金属ナノロッドの合成法としては、特に制限されないが、化学還元法、電気化学還元法、光化学還元法、メゾポーラスアルミナ電鋳法、熱還元法、超音波還元法などが挙げられるが、生産性の観点から、化学還元法が特に好ましい。
化学還元法による金属ナノロッド合成法としては、例えば、金ナノロッド;Langmuir 1999,15,701−709、Chem. Commun.,2001,617−618、銀ナノロッド;Chem.Comm.,7(2001)617−618、金コア銀シェルナノロッド;J.Phys.Chem.B,108(2004)5882−5888などの文献に記載された手法により合成することができる。
また、前記複合金属ナノロッドの合成方法としては、後述する、種晶形成工程、コアナノロッド形成工程、及びシェル形成工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる好ましい。
【0025】
−種晶形成工程−
前記種晶形成工程は、第1の金属化合物を含む溶媒中で還元反応させて種晶を形成する工程である。
【0026】
−コアナノロッド形成工程−
前記コアナノロッド形成工程は、溶媒中に前記種晶、界面活性剤、及び第1の金属化合物を添加し、還元反応させて、コアナノロッドを形成する工程である。
【0027】
前記第1の金属化合物としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物などが挙げられる。
前記第1の金属化合物における金属としては、例えば金、白金、パラジウム、などが挙げられ、これらの中でも、金が特に好ましい。
前記金属塩を形成する酸としては、無機酸及び有機酸のいずれであってもよい。
前記無機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば硝酸;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸などが挙げられる。
前記有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばカルボン酸、スルホン酸などが挙げられる。
前記カルボン酸としては、例えば酢酸、酪酸、シュウ酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸、安息香酸、などが挙げられる。
前記スルホン酸としては、例えばメチルスルホン酸などが挙げられる。
前記金属塩としては、例えば硝酸銀、塩化金酸、塩化白金酸などが挙げられる。
【0028】
前記金属錯体を形成するキレート剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアセチルアセトナート、EDTAなどが挙げられる。また、上記の金属塩と配位子とで錯体を形成してもよく、該配位子としては、例えばイミダゾール、ピリジン、フェニルメチルスルフィドなどが挙げられる。
なお、前記金属化合物には、金属イオンのハロゲン化錯体の酸(例えば塩化金酸、塩化白金酸など)、アルカリ金属塩(例えば塩化金酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウムなど)も含まれる。
【0029】
−シェル形成工程−
前記シェル形成工程は、溶媒中に前記コアナノロッド、第2の金属化合物、界面活性剤、及びビニルピロリドン化合物を添加し、還元反応によりコアナノロッドの表面にシェルを形成する工程である。
【0030】
前記第2の金属化合物としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物などが挙げられる。
前記第2の金属化合物における金属としては、例えば銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられ、これらの中でも、銀が特に好ましい。
前記金属塩、金属錯体、及び有機金属化合物としては、前記第1の金属化合物と同様である。
【0031】
前記還元は、溶媒を加熱、光還元、還元剤添加、化学還元法などが挙げられるが、還元剤添加が特に好ましい。
前記還元剤としては、例えば水素ガス、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、ヒドラジン、アスコルビン酸、アミン類、チオール類などが挙げられる。なお、化学還元法としては、電気分解法を用いて行うこともできる。
【0032】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記ビニルピロリドン化合物としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられ、ポリビニルピロリドン(PVP)が特に好ましい。
前記ポリビニルピロリドン(PVP)は、ピロリドンユニットの繰り返し単位数が85以上であることが好ましく、300〜12,000がより好ましい。前記繰り返し単位数が85未満であると、PVPが金属粒子の特定の結晶面に吸着できずに、球状粒子となってしまうとなることがある。
【0034】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(CTAH)に代表されるセチルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、オクチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
前記セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)に代表される4級アンモニウム塩のようなカチオン性界面活性剤は殺菌性を示し、水性生物への毒性など環境への影響が懸念される。そのため、工程中でCTABを粉体の形で回収することにより、環境影響を減少させることが必要である。例えば、金ナノロッド水溶液を5℃で12時間静置することにより析出したCTABの結晶を濾布(#200)で濾別する操作を行うことにより、約75%のCTABを固体状態で回収することが可能である。途中工程でCTABを回収することにより、CTABを再利用することができるため、また限外濾過膜による精製時間の短縮されるため、コストダウンや環境影響の減少につながる。
【0035】
前記複合金属ナノロッドは、分散剤、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン等の高分子からなる誘電体で被覆されていてもよい。
これらの誘電体で被覆されることにより、吸収特性の調整、熱安定性、耐酸化性等の機能を付与することが可能になる。
【0036】
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子表面に吸着し、電荷による反発や立体障害による凝集防止を付与したり、更には水溶性や油溶性を付与できる物質であればよい。
【0037】
電荷による反発を付与する物質としては、特に制限はなく、例えば、4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系、リン酸塩系、カルボン酸塩系などの低分子系、及び高分子系イオン性物質が挙げられ、分散したい粒子の表面電位や酸、塩基性により選択することができる。
【0038】
また、立体障害を付与する物質としては、少なくとも、粒子表面に対して吸着基と立体障害とを付与する部位を有しているものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記吸着基としては、特に制限はないが、例えば、チオール、ジスルフィド、スルフォキシド等のS元素含有官能基、リン酸やホスフィンなどのP元素含有官能基、カルボニル、カルボキシル、エーテル、ヒドロキシルなどのO元素含有官能基、アミン、アミノ、アンモニウム塩、ニトロ、ヒドロキシアミン、アゾ、イミンなどのN元素を含む官能基が好ましい。
これらの官能基を有する化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン系のルパゾール、スルホン酸系のタモール(BASF社製)、末端チオールポリエチレングリコールや末端チオールポリスチレンなどの末端チオール系ポリマー(Polymer Source Inc.社製)などが挙げられる。また、その他好適に用いられる分散剤としては、DISPERBIK-180、DISPERBIK-184、DISPERBIK-190、DISPERBIK-192、DISPERBIK-2000、DISPERBIK-2001(ビックケミー社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記複合金属ナノロッドとしては、複合金属ナノロッド含有組成物として、バインダー、更に必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
【0040】
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記その他の成分としては、例えば溶媒、分散剤、酸化防止剤などが挙げられる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、クエン酸、ポリビニルアルコール樹脂、トリアゾール化合物などが挙げられる。
【0042】
なお、膜質を改良するために、架橋剤や可塑剤を含んでもよい。例えば、膜質を強くするためにはホウ酸等の架橋剤を添加し、逆にしなやかにするためにはグリセリン等の可塑剤を添加する。前記架橋剤及び可塑剤は、塗布膜作製時に添加してもよいし、塗布膜乾燥後や塗布膜延伸後にウエットコーティングにより付与してもよい。
なお、複合金属ナノロッド表面に吸着した分散剤は、溶媒やバインダーへの相溶性を考慮し、適宜置換してもよい。
前記複合金属ナノロッド以外の粒子を混合し、紫外線吸収や熱線吸収等の機能を付与したり、ガラスとの屈折率を合わせてもよい。例えば、金属酸化物半導体粒子を添加することにより、紫外線吸収や熱線吸収の機能を付与することが可能である。
【0043】
−熱可塑性樹脂−
前記熱可塑性樹脂としては、前記金属ナノロッドを分散でき、透明性が高く、延伸可能なポリマーであれば、特に制限はないが、延伸性や金属ナノロッドの配向性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、粉末やペレットの形態で市販されており、例えばクラレポバール(クラレ社製)105、117、124、135、205、217、224、235などを用いることができる。
【0044】
前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度としては、80モル%〜100モル%が好ましく、配向性や光学特性の観点からは85モル%〜100モル%がより好ましい。
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、変性されていてもよく、例えば、ポリビニルブチラールやアルデヒド類で変性されたポリビニルホマール、ポリビニルアセタールなどが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重合度としては、300〜10,000が好ましいが、塗布適性や延伸性の観点から、500〜4,000がより好ましい。
【0045】
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、適当な溶媒に溶解させ、ポリビニルアルコール系樹脂溶液として用いることができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、グリコール類などが挙げられるが、溶解性や塗布後の乾燥性から水が好ましい。
水を用いる場合には、適宜有機溶媒を混合して用いてもよく、混合する溶媒としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールやメタノールなどのアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのアルコール系溶媒、アセトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒やアセトニトリルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記ポリビニルアルコール系樹脂溶液中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度としては、0.1質量%〜20質量%が好ましいが、塗布適性や薄膜を形成する観点からは0.5質量%〜10質量%がより好ましい。
また、ポリビニルアルコール系樹脂溶液には、二色性材料である金属ナノロッドの他、界面活性剤、硬膜剤、可塑剤、分散剤、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、熱線遮蔽剤、耐湿性向上剤、熱安定化剤、染料、顔料、金属酸化物、金属窒化物、導電性粒子などを含有してもよい。
【0047】
前記界面活性剤は、塗布適性を改良するために添加するが、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性界面活性剤などが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオ岸エチレンアルキルフェノールエーテル系、アルキルグルコシド系、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系、ショ糖脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩系、ジアルキルジメチルアンモニウム塩系、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩系、アミン塩系などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えばセッケン(脂肪酸ナトリウム、カリウム塩)、アルキルベンゼンスルホン酸塩系、高級アルコール硫酸エステル塩系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系、α−スルホ脂肪酸エステル系、α−オレフィンスルホン酸塩系、モノアルキルリン酸エステル塩系、アルカンスルホン酸塩系などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えばアルキルアミノ脂肪酸塩系、アルキルベタイン系、アルキルアミンオキシド系などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記硬膜剤としては、膜質を強くするために添加されるが、その材料としては、特に制限はなく、ホウ酸やジフェニルホウ酸などが挙げられる。
前記可塑剤としては、膜質を柔軟にするために添加されるが、その材料としては、特に制限はなく、各種低分子及び高分子グリコール類などが挙げられる。
これらの硬膜剤や可塑剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂溶液中に含ませることとしてよいが、熱可塑性支持体上に塗布層を形成後、後からウェットコーティングなどにより付与することとしてもよい。
【0049】
前記酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、クエン酸、トリアゾール化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、熱可塑性樹脂支持体上に形成する塗布層としては、金属ナノロッド含有ポリビニルアルコール樹脂層1層のみでもよいし、更に金属ナノロッドや紫外線吸収剤、熱線遮蔽剤、耐湿性向上剤、熱安定化剤、顔料、金属酸化物、金属窒化物、導電性粒子を含む機能性膜を積層してもよい。
これらの層は、熱可塑性樹脂支持体にPVA層を塗布する前に形成してもよいし、また、PVA層の上に更に積層してもよいし、更には延伸工程後に形成してもよい。
【0050】
(偏光フィルムの製造方法)
本発明の偏光フィルムの製造方法は、少なくとも、組成物層形成工程と、延伸工程とを含んでなる。
【0051】
−組成物層形成工程−
前記組成物層工程は、少なくとも、二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂とを含む組成物層を延伸性支持体上に形成する工程である。
【0052】
前記組成物層の形成方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、延伸性支持体上に少なくとも、二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂とを含む組成物液を塗布し、乾燥させる方法、などにより形成することが好ましい。
【0053】
前記塗布方法では、まず、少なくとも、前記二色性異方性金属ナノ粒子と、前記熱可塑性樹脂とを溶媒に溶解乃至分散させてなる組成物液を調製する。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
次いで、前記延伸性支持体上に前記組成物液を塗布する。
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、一般的な手法により行うことができ、例えば、ウェットコート法、バーコート法、ワイヤーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、ダイコート法、ディップコート法、スピンコート法などが挙げられる。
【0055】
前記組成物液を塗布した後の乾燥としては、延伸性支持体が変形しない温度であれば、特に制限はなく、100℃以下で行うのが好ましい。
前記乾燥としては、前記組成物液を塗布した延伸性支持体をステンレス製の板に貼り付けた状態でクリーンオーブンに入れ、60℃で15分間加熱することにより行った。
【0056】
また、乾燥後、前記組成物層が形成された延伸性支持体を巻き取る際にブロッキングを防ぐためのカバーフィルムを共巻きしてもよい。
前記カバーフィルムとしては、特に制限はなく、延伸性支持体と同じフィルムでもよいが、ポリオレフィン系樹脂フィルムやポリエステル系樹脂フィルムなどが挙げられる。ブロッキング防止の観点や共巻きのし易さの観点から、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムが好ましい。
また、前記カバーフィルムの厚みとしては、ブロッキング防止の観点や共巻きのし易さの観点から、1μm〜1,000μmが好ましく、3μm〜50μmがより好ましい。
【0057】
乾燥後の前記組成物層の厚みの上限としては、25μm以下であれば、特に制限はないが15μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。
また、乾燥後の前記組成物層の厚みの下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.16μm以上であることが好ましい。
前記厚みが0.16μmより薄いと、塗布層中の二色性異方性金属ナノ粒子同士が近接し過ぎてしまい二色性異方性金属ナノ粒子の吸収特性が変化してしまったり、延伸時に組成物層がちぎれてしまうことがあり、また、25μmより厚いと二色性異方性金属ナノ粒子の配向性が低くなることがある。
【0058】
−−延伸性支持体−−
前記延伸性支持体としては、延伸できるものであれば特に制限はないが、前記熱可塑性樹脂や二色性異方性金属ナノ粒子が劣化しない150℃以下で延伸できるものが特に好ましい。
【0059】
前記延伸性支持体としては、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエステル系樹脂フィルムとしては、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが、またポリオレフィン系樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられるが、延伸性の観点から、特に未延伸のフィルムが好ましく、150℃以下で6倍以上延伸できるという観点から、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
前記未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、PETMAX(膜厚300μm、片面帯電防止コート付、東洋紡社製)などが挙げられる。
【0060】
また、前記延伸性支持体のガラス転移温度としては、特に制限はないが、150℃以下のものが好ましい。
また、前記延伸性支持体の厚みとしては、塗布や延伸などのハンドリングの観点から、10μm〜1,000μmが好ましく、100〜700μmがより好ましい。
また、前記延伸性支持体は、偏光フィルムを形成する金属ナノロッド分散層を形成可能な接触角を有すること、延伸工程で組成物層が延伸性支持体から剥離しないこと、また、延伸後に形成した偏光フィルムを別基材へ積層する際に剥離できる性質を兼ね備えている必要がある。
【0061】
また、前記延伸性支持体は、目的に応じて、前記組成物液の塗布適性を改良するための表面処理や、偏光層剥離時の剥離帯電を軽減するための帯電防止処理をされたものを用いることができる。
前記塗布適性を改良するための表面処理としては、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、下塗り処理などが挙げられる。
前記下塗り処理としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などのプライマー樹脂を使用することができる。
また、前記帯電防止処理としては、特に制限はなく、例えば、ITOやATOなどの金属酸化物粒子や蒸着膜、金属ナノ粒子やナノワイヤーなどの導電性材料、4級アンモニウム塩などの帯電防止剤、などを付与することが挙げられる。
また、これらの表面処理は目的に応じて支持体片面あるいは両面に施してもよく、更には支持体内部に添加することにより目的の性能を付与してもよい。
【0062】
−延伸工程−
前記延伸工程は、前記組成物層を延伸性支持体とともに延伸し、該延伸性支持体上に偏光フィルムを形成する工程である。
【0063】
前記組成物層における、二色性異方性金属ナノ粒子の配向度が0.85以上の偏光フィルムにおいて、偏光フィルムの厚みをtとし、組成物層の厚みをdとしたとき、tとdとの関係は、下記式(1)で表される。
なお、下記式(1)において、TMDは一軸縦延伸方向に対する延伸倍率を示し、TTDは延伸方向に対して直交方向の収縮倍率を示す。
t = d × (TMD)−1× (TTD)−1 式(1)
上記式(1)より、例えばTTD=0.5倍、TMD=4倍の時は、組成物層の厚みdが1μm〜25μmであるときの延伸後の偏光フィルムの厚みtは、0.5μm〜12.5μmとなる。
【0064】
次に、偏光性を発現するために、前記組成物層が塗布された延伸性支持体(積層フィルムと略す)を延伸するようにする。
延伸方法は、積層フィルムを延伸することができるものであれば、特に制限はなく、例えば、ロール一軸縦延伸やテンター延伸などが挙げられる。
前記ロール一軸縦延伸としては、特に制限はなく、例えば、周速の異なるロール間で一軸縦延伸を行う方法や、ヒートロールを用いて一軸延伸や圧延を行う方法が挙げられるが、大面積の偏光膜を作製するには、テンター延伸が好ましい。
前記テンター延伸では、通常、積層フィルム搬送方向に対して直交方向に横一軸延伸を実施できるが、横一軸延伸の前後、あるいは同時に緩和過程を設けることにより、積層フィルムを積層フィルム搬送方向に平行に緩和(収縮)させることにより、配向性を向上させることが可能である。
緩和過程とは、積層フィルムを収縮させる過程であり、例えば積層フィルムにかけるテンションを緩めたり、緩和過程ゾーンの温度を上げたりする過程である。
また、延伸工程の前後に適宜予熱、緩和、熱固定や冷却工程を入れてもよい。
【0065】
延伸倍率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一軸縦延伸の場合は、1.5倍〜8倍が好ましく、一軸横延伸の場合は、1.5倍〜8倍が好ましい。
これらの延伸倍率の範囲で延伸することにより、偏光フィルムのチギレなどもなく、良好な偏光性を示す偏光フィルムを形成できる。
【0066】
延伸温度としては、特に制限はないが、延伸性支持体と、組成物層におけるPVAのガラス転移温度程度が好ましい。
具体的には60℃〜150℃が好ましく、80℃〜120℃がより好ましい。このような延伸温度であると、延伸性がよく、かつ延伸性支持体と組成物層(PVA)の劣化を防止することができる。
また、組成物層(PVA)の酸化劣化を防ぐために、延伸工程を窒素雰囲気下で行ってもよい。
【0067】
(偏光板)
本発明の偏光板は、前記偏光フィルムを有してなる。
前記偏光板の形態としては、前記偏光フィルムを有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を有する形態が好ましい。
前記偏光フィルムは、前記延伸性支持体とともに、積層体フィルムとして用いてもよいが、延伸された熱可塑性樹脂支持体のカールが強いこと、また複屈折が大きいことから、基材へ積層して用いることが好ましい。
前記積層としては、ガラスなどを接合することができるポリビニルブチラールフィルム(PVB)、トリアセチルセルロースフィルム(TAC)のような保護フィルム、及び、透明基材であるガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂の基板ないし成型体などに積層することとして行うことができる。
また、このような形態としては、特に制限はなく、以下に述べる第1の形態と、第2の形態とを挙げることができる。
【0068】
−第1の形態−
前記第1の形態は、前記偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、第1の基材と、第2の基材とをこの順で有する構成からなる。
前記第1の基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルブチラール樹脂フィルム(PVB)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂フィルム(EVA)を挙げることができる。
これらは、いずれも市販されており、ポリビニルブチラール樹脂フィルムとしては、S−LEC(積水化学社製)、Saflex AR−11、RB−41(ソルーシアジャパン社製)などを用いることができ、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂フィルムとしては、S−LEC EN(積水化学社製)、Saflex(ソルーシアジャパン社製)などを用いることができる。
また、第2の基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂の基板ないし成型体が挙げられる。
【0069】
前記第1の基材の厚みとしては、特に制限はないが、100μm〜1,000μmが好ましい。
また、前記第1の基材としては、目的に応じて適宜可塑剤や紫外線吸収剤、熱線遮蔽剤、顔料などを含むこととしてもよい。
なお、第1の基材については、後述する乗り物用映り込み防止窓に用いられる中間層と同様の構成とすることもできる。
また、第2の基材については、後述する乗り物用映り込み防止窓に用いられる基材ガラスと同様の構成とすることもできる。
【0070】
このような第1の形態からなる偏光板の構成例を図6F(図7D)に示す。該構成例においては、偏光フィルム13(23)の一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、第1の基材14a、14b(28a、28b)と、第2の基材15a、15b(25a、25b)とをこの順で有するように構成されている。
【0071】
−第2の形態−
前記第2の形態は、前記偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を有し、前記基材が保護フィルム及び透明基材のいずれかとしてなる構成からなる。
【0072】
前記保護フィルムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースなどのセルロースアセテート樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリノルボルネン系樹脂フィルムのような環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルムなどが挙げられる。
これらの中でも、光学特性の観点から、トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製)やZEONORやZEONEX(日本ゼオン社製)やアートン(JSR社製)などの環状ポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましい。
前記保護フィルムの厚みは、30〜300μmが好ましいが、50〜200μmのものがより好ましい。
また、前記透明基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、フロートガラスや青板ガラス、白板ガラス、グリーンガラス、BK−7などの光学用ガラスなどのガラスやポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂の板ないし成型体が挙げられる。
またこれらの基材は、平坦なものでも、湾曲したものでもよい。
【0073】
このような第2の形態からなる偏光板の構成例を図6E(図7C)に示す。該構成例においては、偏光フィルム13(23)の一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材14a、14b(28a、28b)を有するように構成されている。
【0074】
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法としては、少なくとも、偏光フィルム積層工程と、積層体形成工程とを含み、更に目的に応じて、他の工程を含んでなる。
【0075】
<偏光フィルム積層工程>
偏光フィルム積層工程は、本発明の前記偏光フィルムの製造方法により製造された偏光フィルムにおける、延伸性支持体が形成された一の面と反対側の面に、基材を積層させた後、前記延伸性支持体を前記偏光フィルムの一の面から剥離させる工程である。
【0076】
前記延伸性支持体としては、本発明の前記偏光フィルムの製造方法に用いる延伸性支持体を適用することができる。
即ち、前記偏光フィルムと前記基材との積層・貼合を行う方法として、前記偏光フィルムと前記基材との密着性が良好な場合には、ラミネート機やカレンダー処理などによる圧着や熱ラミネート機による熱ラミネートなどにより接着される。また、密着性に不足がある場合には、接着剤や粘着剤、粘着シートを介して前記偏光フィルムと前記基材との積層・貼合を行ってもよい。前記接着剤や前記粘着シートを用いる場合は、光学的等方性で可視光域で透明な接着剤が用いられる。
このような接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤やアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤の他、パナクリーンPD−S1(パナック社製)などの粘着シートなどが用いられる。
また、前記基材としては、本発明の前記偏光板における、第1の基材と、第2の基材と同様の基材を用いることができる。
【0077】
前記偏光フィルムから前記延伸性支持体を剥離させる方法としては、特に制限はなく、
巻き取り機などを用いて行うことができる。この時、帯電する場合は、イオン風発生機などを用いて徐電を行ってもよい。
【0078】
<積層体形成工程>
前記積層体形成工程は、偏光フィルムにおける基材が配された一の面と反対側の面に、更に基材を配し、前記偏光フィルムにおける一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を配した積層体を形成する工程である。
前記積層体形成工程において、前記偏光フィルムの面上に基材を配設する方法としては、前記偏光フィルム積層工程と同様の方法により行うことができる。
【0079】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、合わせ化工程などが挙げられる。
【0080】
−合わせ化工程−
前記合わせ化工程は、前記積層体を、該積層体における一つの面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面側から、更に他の基材で合わせ込む工程である。
前記他の基材としては、特に制限はないが、ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂の基板ないし成型体が好ましく、ガラスがより好ましい。
前記ガラスとしては、後述する乗り物用映り込み防止窓に用いられる基材ガラスと同様の構成とすることもできる。
前記基材を合わせ込む方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の合わせガラスの製造方法が挙げられる。
【0081】
前記合わせ化工程は、本発明の前記偏光板における、2つの第1の基材で、偏光フィルムを挟持させた、積層体を第2の基材で合わせ込む形態の偏光板の製造工程として行うことができる。
前記第1の基材上に偏光フィルムを配設する方法としては、特に制限はなく、例えば、熱ラミネート法、カレンダー法、前記接着剤や前記粘着シートを使用する貼合せ方法などが挙げられる。
前記熱ラミネート法としては、例えば、ヒートローラーを具備した熱ラミネート機により貼合することができる。
また、前記接着剤としては、基材、及び偏光フィルムの双方となじみのよいバインダーを含む溶液を接着剤として用いて貼合してもよい。
例えば、基材がポリビニルブチラールフィルム(PVBフィルム)である場合には、ポリビニルブチラールを含むイソプロパノール溶液をPVBフィルムに塗布し、偏光フィルムを貼合せ、乾燥後、延伸性支持体を剥離すればよい。
この時、接着剤として使用するポリビニルブチラール溶液には、目的に応じて可塑剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、赤外線遮蔽剤等を含んでもよい。
また、接着剤として使用するポリビニルブチラール溶液に含まれる溶媒としては、PVBフィルムを溶解させるものでもよいが、偏光フィルムを溶解させないものが好ましい。
このような溶媒としては、例えば、イソプロパノールやトルエン、アセトン、メチルエチルケトン等の溶媒を挙げらることができ、これらは1種類で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記基材には、更に反射防止膜、ハードコート層、アンチグレア層、アンチグレアハードコート層などの光学機能性層や親水性処理や撥水処理などの表面処理層などを付与していてもよい。
なお、これらの機能性層の基材への付与は、偏光フィルムを貼合する前でも貼合した後でもよい。
【0083】
前記偏光板の製造工程を図面を用いて具体的に説明する。ここでは、例示として、以下に述べる製造工程からなる偏光板の製造方法を説明するが、本発明は、これら製造工程に限定されない。
【0084】
−第1の形態−
先ず、前記偏光フィルムの製造方法により、前記偏光フィルムを製造する。
前記偏光フィルムとしては、延伸性支持体12上に、二色性異方性金属ナノ粒子10を含む組成物を塗布、乾燥させ、組成物層11を形成し(図6A参照)、組成物層11が形成された延伸性支持体12を、組成物層11とともに延伸することで、延伸性支持体12上に偏光フィルム13を得るようにする(図6B参照)。
次に、この延伸性支持体12上に偏光フィルム13が形成された積層体フィルム17において、延伸性支持体12が形成されていない面を、接着剤層(粘着シート層)16を介して第1の基材14aに貼合わせる(図6C参照)。
貼合せ後、延伸性支持体12を剥離し、更に、第1の基材14aを偏光フィルム13にラミネートさせる(図6D参照)。
同様に、第1の基材14bを、偏光フィルム13における延伸性支持体12が剥離された面にラミネートさせ、第1の基材14a、14bを偏光フィルム13のそれぞれの面に定着させる(図6E)。
なお、定着は、遂次でも同時でもよい。また、第1の基材同士が接着しないように、第1の基材14a、14bの間に、セパレーターフィルム(ポリプロピレンフィルム等)を挟んでもよい。
このようにして、第1の基材14a、14bで偏光フィルム13をサンドイッチ状に挟持させた積層体からなる偏光板100を得ることができる。
【0085】
また、第1の基材14a、14bを中間膜として、第2の基材15a、15bで合わせ込んだ偏光板(例えば、合わせガラス)を製造する場合には、公知の合わせガラスの製造方法により製造することができる(図6F参照)。
このような方法としては、例えば、偏光板100を両側から基材15a、15b(ガラス板)で合わせ込み、熱ラミネート等により予備圧着した後、150℃の温度条件で30分間オートクレーブ中で加熱することにより、基材15a、15b(ガラス板)で合わせ込み合わせ込んだ態様の偏光板(合わせガラス)150を製造することができる(図6F参照)。
【0086】
−第2の形態−
第2の形態では、第1の形態と異なり、接着剤層(粘着シート層)を用いないで偏光板を製造する。
先ず、第1の形態における、積層体フィルム17の作製(図6A、図6B参照)と同様にして、延伸性支持体22上に偏光フィルム23を形成した積層体フィルム27を作製する。
次に、この積層体フィルム27において、延伸性支持体22が形成されていない面を直接、第1の基材28aに貼合わせる(図7A参照)。
貼合せ後、延伸性支持体22を剥離し、更に、第1の基材28aを偏光フィルム23にラミネートさせる(図7B参照)。
同様に、第1の基材28bを、偏光フィルム23における延伸性支持体22が剥離された面にラミネートさせ、第1の基材28a、28bを偏光フィルム23のそれぞれの面に定着させる(図7C)。
なお、定着は、遂次でも同時でもよい。
このようにして、第1の基材28a、28bで偏光フィルム23をサンドイッチ状に挟持させた積層体からなる偏光板200を得ることができる。
【0087】
なお、接着剤層(粘着シート層)を用いない第2の形態においても、接着剤層(粘着シート層)を用いる第1の形態と同様にして、基材28a、28bを中間膜として、別の基材25a、25bで合わせ込んだ偏光板(例えば、合わせガラス)250として製造することができる(図7D参照)。
【0088】
また、図7Dに示す偏光板(合わせガラス)250の製造方法の他の態様として、第2の基材25a(ガラス板)上に、第1の基材28a(中間膜)と、積層体フィルム27とを順に貼合させた後、積層体フィルム27から延伸性支持体22を剥離し、この延伸性支持体22を剥離した面に、更に第1の基材28b(中間膜)と、第2の基材25b(ガラス等の基板)を順に載置させ、合わせ化することにより偏光板(合わせガラス)250を製造してもよい。
【0089】
また、図7Dに示す偏光板(合わせガラス)250の製造方法の他の態様として、両面に第1の基材28a、28bが配された偏光フィルム13からなる積層体(100)を、第2の基材25a、25bで挟み込んだ状態で、熱ラミネートさせ、合わせ化することにより偏光板(合わせガラス)250を製造してもよい。
【0090】
−第3、4の形態−
前記第1の形態、第2の形態における製造工程について、第2の基板による合わせ化の工程は、必ずしも必要でなく、第1の基材が、例えば、TACフィルム等の前記保護フィルム、ガラス板等の透明基板としてなる場合には、前記第1の形態における、図6Eに示す偏光板100(第3の形態)、又は、前記第2の形態における、図7Cに示す偏光板200(第4の形態)として、製造することができる。
【0091】
−その他の形態−
また、偏光板の層構成としては、前記第1〜4の形態における偏光フィルムのそれぞれの面対してに、同種の基材を配する必要はなく、目的に応じて適宜選択して、配することができる。
また、偏光板には、更に、反射防止層等の前記表面処理層を、配して構成することができる。
具体的には、以下のように構成することができる。
【0092】
図8は、反射防止層39/ガラス基板35/粘着シート36/偏光フィルム33/粘着シート36/TACフィルム38の順で配した層構成からなる偏光板300を示す。
この偏光板300は、ガラス基板35に、反射防止層39上、及び前記第1〜4の形態と同様の工程により、粘着シート36、偏光フィルム33、粘着シート36、TACフィルム38を順に配設することにより、製造することができ、反射防止層39付ガラス基盤35との貼り合わせは、ラミネーターを通すことで行うことができる。
【0093】
また、反射防止層は、TACフィルム等の保護フィルム上に配設することもでき、このような構成を図9に示す。図9に示す偏光板350は、ガラス基板35/粘着シート36/偏光フィルム33/粘着シート36/TACフィルム38/反射防止層39の順で配した層構成を有する。
【0094】
(乗り物用映り込み防止窓)
本発明の乗り物用映り込み防止窓は、基材と、前記本発明の偏光フィルムとを有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。前記その他の層として、反射防止膜を有することが好ましい。
前記偏光フィルムとしては、本発明の前記偏光フィルムが用いられる。
前記偏光フィルム、基材の乗り物内側の面(外光が入射しない側の面)に有することが好ましい。
【0095】
前記乗り物用映り込み防止窓では、基材面と水平基準面とのなす角が20〜50度であり、乗り物内の運転者から見て、前記偏光フィルム中における異方性吸収子の平均吸収軸方向が基材面と水平基準面とが交わる線に対し±30度未満の角度で配向していることが好ましい。
ここで、前記乗り物用映り込み防止窓は、図10に示すように、前記フロントガラスを構成する基材の光入射側でない面(うら面)に形成することが好ましい。また、フロントガラスが2枚の板ガラスの間に中間層を有する合わせガラスの場合には、図11に示すように前記偏光フィルムを含む積層体からなる中間層6とするか、又は図12に示すように合わせガラスの光入射側でない面(うら面)に形成することが好ましい。
【0096】
本発明の乗り物用映り込み防止窓は、図10に示すように、空力抵抗を小さくするため、乗り物のフロントガラスとダッシュボード5表面(水平基準面)とのなす角は20〜50度が好ましく、25〜40度がより好ましい。
前記乗り物としては、乗り物のフロントガラスと水平基準面とのなす角が20〜50度であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船、などが挙げられ、これらの中でも、自動車が特に好ましい。
【0097】
次に、図10に基づき、本発明の乗り物用映り込み防止窓を用いた映り込み防止の原理について説明する。上述したように、フロントガラス55は、通常、水平基準面から約30度の角度を付けて設けられている。この際、運転時に運転者の目に入ってくる車内のダッシュボード5の影はフロントガラス内面に約60度の入射角で反射する光である。
ここで、異方性吸収子Pがガラスの水平面に対し略水平に配向している偏光フィルム53の透過率を75%とすると、太陽光I0は水平偏光成分Te0とそれに垂直な偏光成分Tm0に分離して考えることができる。フロントガラス1を通過したTe0及びTm0は異方性吸収子Pを通ることでTe0は強度半分に減衰してTe1になり、Tm0は殆どそのまま通ってTm1になる。ダッシュボード5で散乱した光I2をTe0及びTm0で表すと、以下の通りである。
I2=Te2+iTm2
=aTe1+aiTm1(ただし、aはダッシュボードの反射率である)
≒(a/2)Te+aiTm0
光I2の垂直成分aiTm0は、フロントガラスへの入射角がほぼブリュスター角であることから、そのままI3及びI7の経路を通って外へ放射されてしまう。
ここで、前記ブリュスター角は、屈折率の異なる物質の界面で反射される光が完全に偏光となる入射角度である。
2つの屈折率の異なる材質の界面にある角度をもって光が入射する時、入射角に平行偏光成分(P偏光)と、垂直な偏光成分(S偏光)とでは反射率が異なり、図13に示すように、P偏光はブリュスター角で0まで減少し、その後増加する。S偏光は単調に増加する。このように屈折率が1.46のガラスに屈折率1の空気中から入射する可視光のブリュスター角は約56度である。
【0098】
次に、光I2の水平成分(a/2)Teは、フロントガラスのうら面の最表面の反射防止膜で約3%程度反射された成分が光I6となって運転者の目に入ってくる。また、(a/2)Teはフロントガラス内部へ残りの97%が入射し、その半分が外部へ放射され、半分が内部へ反射してI4となり、それが異方性吸収子Pによって、更に半分吸収されて光I5となって運転者の目に入ってくる。
I6=3/100・(a/2)Te
=(3a/200)Te
I5=1/2・1/2・0.97・(a/2)Te
=(0.97/8)・aTe
よって、運転者の目に入ってくるダッシュボードの影を光強度Ihで表すと、下記式で示すとおりである。
Ih=I5+I6
=0.97/8・aTe+(3a/200)Te
また、ダッシュボードの反射率aを約10%とおくと、下記式の通りである。
Ih=(0.0121+0.0015)Te
=0.0136Te
その結果、ダッシュボードの影の光強度Ihは1.36%となり、素ガラスの場合の32%に比べて、約1桁以上低減される。
【0099】
<基材>
本発明の乗り物用映り込み防止窓に用いられる基材としてはガラスが最も適している。これは、ガラスは風雨に晒される環境において乗り物の概略寿命である12年の耐久性を持ち、偏光を乱さない、と言う点において最も実績があるからである。しかし、最近ではポリマーの板状成形物においてもノルボルネン系高分子等のように高耐久性であって等方性が高く偏光を乱しにくいプラスチックが提供されており、基材としてガラス以外を用いることも可能である。
【0100】
−基材ガラス−
基材ガラスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、単層ガラス、合わせガラス、強化合わせガラス、複層ガラス、強化複層ガラス、合わせ複層ガラスなどが挙げられる。
このようなガラスを構成する板ガラスの種類としては、例えば透明板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、強化板ガラス、熱線反射板ガラス、熱線吸収板ガラス、Low−E板ガラス、その他各種板ガラスなどが挙げられる。
なお、前記基材ガラスは、透明ガラスであれば無色透明ガラス及び有色透明ガラスのどちらであってもよい。
前記基材ガラスの厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2〜20mmが好ましく、4〜10mmがより好ましい。
【0101】
−合わせガラス−
合わせガラスは、2枚の板ガラスの間に中間層を介在させて一体化したものである。このような合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することがなく安全であるため、自動車等の乗り物のフロントガラス、建築物等の窓ガラスとして広く用いられている。自動車用合わせガラスの場合には、最近では軽量化を図るため相当薄いものが用いられており、1枚のガラスは厚みが1〜3mmであり、該ガラス2枚を厚みが0.3〜1mmの粘着層で貼り合わせて、合計厚み約3〜6mmの合わせガラスとしている。
【0102】
前記2枚の板ガラスとしては、上述した各種板ガラスを目的に応じて適宜使用することができる。
前記中間層に用いられる基材としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力等の諸性能のバランスに優れた中間層が得られることから、ポリビニルアセタール系樹脂が特に好ましい。
【0103】
前記ポリビニルアセタール系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール樹脂、PVAとn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。
前記ポリビニルアセタール系樹脂の合成に用いられるPVAとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均重合度が200〜5,000のものが好ましく、500〜3,000のものがより好ましい。前記平均重合度が200未満であると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を用いた中間層の強度が弱くなりすぎることがあり、5,000を超えると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を成形する際に不具合が生じることがある。
前記ポリビニルアセタール系樹脂は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アセタール化度が40〜85モル%であるものが好ましく、50〜75モル%のものがより好ましい。前記アセタール化度が40モル%未満又は85モル%を超えるポリビニルアセタール系樹脂は反応機構上、合成が困難となることがある。前記アセタール化度は、JIS K6728に準拠して測定することができる。
【0104】
前記中間層には、前記熱可塑性樹脂以外にも、必要に応じて例えば可塑剤、顔料、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外吸収剤などを添加することができる。
前記中間層の成形方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂及びその他の成分を含有する組成物を均一に混練りした後、押出し法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等の従来公知の方法によりシート状に作製する方法などが挙げられる。
前記中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3〜1.6mmが好ましい。
前記窓用映り込み防止窓においては、前記中間層が、本発明の前記偏光フィルムであることが生産性、耐久性などの点から好ましい。前記中間層が前記偏光フィルムを含む積層体からなる場合には、該中間層は異方性吸収子を含有し、該異方性吸収子を略水平方向に配向させること以外は同様である。なお、前記偏光フィルムは合わせガラスの片方の面に設けることもできる。
【0105】
前記合わせガラスの作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2枚の透明なガラス板の間に中間膜を挟み、この合わせガラス構成体を例えばゴムバッグのような真空バッグの中に入れ、この真空バッグを排気系に接続して、真空バッグ内の圧力が約−65〜−100kPaの減圧度となるように減圧吸引(脱気)しながら温度が約70〜110℃の予備接着を行った後、この予備接着された合わせガラス構成体をオートクレーブの中に入れ、温度120〜150℃、圧力0.98〜1.47MPaの条件で加熱加圧して本接着を行うことにより、所望の合わせガラスを得ることができる。
【0106】
<反射防止膜>
前記反射防止膜は、前記基材の少なくとも片方の最表面に反射防止膜を有することが好ましく、基材の光入射側でない面(乗り物内側の面)に偏光フィルムと、該偏光フィルム上に反射防止膜とを有することがより好ましい。
【0107】
前記反射防止膜は、実使用上充分な耐久性、耐熱性を有し、例えば60度入射での反射率を5%以下に抑えることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)微細な表面凹凸を形成した膜、(2)高屈折率膜と低屈折率膜を組み合わせた2層膜の構成、(3)中屈折率膜、高屈折率膜、及び低屈折率膜を順次積層した3層膜構成などが挙げられる。これらの中でも、(2)及び(3)が特に好ましい。
これら反射防止膜は、基材ガラス表面に直接ゾルゲル法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法などで形成してもよい。また、透明支持体上にディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法による塗布により反射防止膜を形成し、基材ガラス表面に反射防止膜を粘着又は接着してもよい。
【0108】
前記反射防止膜は、上述したとおり、透明支持体上に低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(高屈折率層)、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。
低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層を二層とする場合には、透明基材に中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。このような構成の反射防止膜は、「高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率」の関係を満足する屈折率を有するように設計される。なお、各屈折率層の屈折率は相対的なものである。
【0109】
−透明基材−
前記透明基材としてプラスチックフィルムを用いることが好ましい。このプラスチックフィルムの材料の例としては、セルロースアシレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトンなどが挙げられる。
【0110】
−高屈折率層及び中屈折率層−
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを含有する硬化性膜からなることが好ましい。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
特に好ましくは、Co、Zr、ALから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以下、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられ、特に好ましい元素はCoである。
Tiに対する、Co、Al、Zrの総含有量は、Tiに対して0.05〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜7質量%が更に好ましく、0.3〜5質量%が特に好ましく、0.5〜3質量%が最も好ましい。
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部や表面に存在する。Co、Al、Zrが二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在してもよい。
また、他の好ましい無機粒子として、チタン元素と酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称することもある)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物は、Coイオン、Zrイオン、及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。
ここで、該酸化物の屈折率が1.95以上となる金属酸化物の金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、Biなど挙げられ、これらの中でも、Ta、Zr、Sn、Biが特に好ましい。
複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を超えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましく、0.3〜3質量%が最も好ましい。
ドープした金属イオンは、金属イオン、金属原子のいずれの状態で存在してもよく、複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することが好ましい。表面と内部との両方に存在することがより好ましい。
【0111】
上記のような超微粒子とするには、粒子表面を表面処理剤で処理する方法、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法、及び、特定の分散剤を併用する方法等が挙げられる。
粒子表面を表面処理剤で処理する方法に挙げられる表面処理剤としては、例えば、特開平11−295503号公報、特開平11−153703号公報、及び特開2000−9908号公報に記載されたシランカップリング剤等、特開2001−310432号公報等に記載されたアニオン性化合物又は有機金属カップリング剤が開示されている。
また、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法としては、特開2001−166104号公報、及び米国特許公開2003/0202137号公報等に記載の技術を用いることができる。
更に、特定の分散剤を併用する方法は、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858明細書、及び特開2002−2776069号公報等に記載の技術が挙げられる。
【0112】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性、及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、特開2001−315242号公報、特開2001−31871号公報、特開2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキシドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されているものが挙げられる。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚みは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。中屈折率層の厚みは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
【0113】
−低屈折率層−
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなることが好ましい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50がより好ましい。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等からなる薄膜層の手段を適用できる。
【0114】
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50が好ましく、1.36〜1.47がより好ましい。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性、若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、特開平11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、及び特開2004−45462号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としては、ポリシロキサン構造を有する化合物が好適であり、これらの中でも、高分子鎖中に硬化性官能基又は重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが特に好ましい。例えば、反応性シリコーン〔例えばサイラプレーン(チッソ株式会社製)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)〕などが挙げられる。
【0115】
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時又は塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。前記重合開始剤、及び前記増感剤としては、従来公知のものを用いることができる。
【0116】
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、特開昭58−147483号公報、特開昭58−147484号公報、特開平9−157582号公報、特開平11−106704号公報等に記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、特開2001−48590号公報、特開2002−53804号公報に記載の化合物等)等が挙げられる。
前記低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物を含有することが好ましい。
特に、前記低屈折率層はその屈折率上昇をより一層少なくするために、中空の無機微粒子を用いることが好ましい。前記中空の無機微粒子は屈折率が1.17〜1.40が好ましく、1.17〜1.37がより好ましく、1.17〜1.35が更に好ましい。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空の無機微粒子を形成している外殻のみの屈折率を表すものではない。
前記低屈折率層中の中空の無機微粒子の平均粒径は、該低屈折率層の厚みの30〜100%が好ましく、35〜80%がより好ましく、40〜60%が更に好ましい。
即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、無機微粒子の粒径は30nm以上100nm以下が好ましく、35nm以上80nm以下がより好ましく、40nm以上60nm以下が更に好ましい。
ここで、前記中空の無機微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定することができる。
【0117】
その他の添加剤としては、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
【0118】
前記低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよいが、安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
前記低屈折率層の厚みは、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることが更に好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
【0119】
前記乗り物用映り込み防止窓におけるその他の層としては、必要に応じて例えば、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層、保護層等を設けてもよい。
【0120】
−乗り物用映り込み防止窓の用途等−
本発明の乗り物用映り込み防止窓は、以上説明したように、異方性吸収子の長軸が前記基材面に対し略水平に配向している偏光フィルムを有し、優れた光学的異方性(異方性吸収、異方散乱性、偏光、複屈折性等)を備えているので、自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用窓ガラスとして好適に用いられるが、乗り物用窓以外にも、例えば一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。
【0121】
本発明の乗り物用映り込み防止窓は、以上説明したように、自動車等の乗り物のフロントガラスに用いた場合には、車内のダッシュボード等の構造物の反射像や外灯等の映り込みを防止することができ、運転者の前方の安全視界が確保される。また、本発明の乗り物用前窓を使用することにより、従来は用いることのできなかった明るい色や絵柄の付いた意匠性の高いダッシュボードを採用することが可能になる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0123】
(実施例1)
<二色性異方性金属ナノ粒子の合成(粒子形成工程)>
以下の種晶形成工程、コアナノロッド形成工程、及びシェル形成工程により、二色性異方性金属ナノ粒子の合成を行った。
【0124】
−種晶(ナノ粒子)形成工程−
100mMのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド、和光純薬株式会社製)水溶液100mLに、10mMの塩化金酸水溶液(関東化学株式会社製)5mLを添加し、更に直前に溶解した10mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液10mLを添加し、強攪拌することにより、金ナノ粒子(種晶)を形成した。
【0125】
−コアナノロッド形成工程−
100mMのCTAB水溶液1,000mLに、10mMの硝酸銀水溶液100mL、10mMの塩化金酸水溶液200mL、及び100mMのアスコルビン酸水溶液50mLを添加し、攪拌することにより、無色透明の液を得た。
更に、前記金ナノ粒子(種晶)水溶液100mLを添加し、2時間攪拌することにより、金ナノロッド水溶液を得た。
金ナノロッド水溶液を5℃で12時間静置することにより析出したCTABの結晶をナイロン製の濾布(#200)で濾別し、CTABを粗除去した金ナノロッド分散液を得た。この時のCTABの回収率は、約75%であった。
【0126】
−−評価−−
得られた金ナノロッドの吸収スペクトルを紫外可視赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、金ナノロッドの短軸の吸収に帰属する510nmと、長軸に帰属する800nmのピークを示した。
得られた金ナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、図14のTEM写真に示すように、短径が6nm、長径が21nm、アスペクト比が3.5、球相当半径が5.7nmのロッド状粒子であった。
【0127】
−シェル形成工程−
1質量%のPVP(ポリビニルピロリドンK30、和光純薬株式会社製)水溶液8kgに、前記金ナノロッド分散液を2kg、10mMの硝酸銀水溶液100ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液100mlを添加し、攪拌した。更に0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液280mlを5分間かけて添加し、溶液のpHを7〜8に調整することにより、銀を金ナノロッド表面に析出させて、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、ACP0013)を用いて限外濾過処理することにより、10倍に濃縮し、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。この時の分散液の電気伝導度は280mS/mであった。
次に、得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、以下のようにして、光学特性、粒子サイズ、コアナノロッドとシェルの体積比を測定した。
【0128】
<光学特性>
得られた金コア銀シェルナノロッドについて、紫外可視近赤外分光度計(日本分光株式会社製、V−670)で吸収スペクトルを測定したところ、図15に示すように、短軸の吸収に帰属する410nmと、長軸に帰属する650nmのピークを示した。
【0129】
<粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比の評価>
得られた金コア銀シェルナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、図16のTEM写真に示すように、短径が12nm、長径が24nm、アスペクト比が2.0、球相当半径9.4nmのロッド状粒子であることが確認できた。
また、コアナノロッドとシェルの体積比(シェル/コアナノロッド)をTEM観察により算出したところ、3.6であった。
【0130】
(2)延伸性支持体への金属ナノロッド含有PVA膜の形成(組成物層形成工程)
次に、10質量%のPVA124水溶液(株式会社クラレ製)80.0g、純水80.0g、及び得られた前記金コア銀シェルナノロッド分散液50.0gを混合した組成物を、約A4サイズの清浄な未延伸ポリエチレンテレフタレートベース(延伸性支持体、PETMAX; A565GE2R/片面帯電防止コート付/300μm厚み/東洋紡績株式会社製)に、ワイヤーバー(#30)を用いてバーコート塗布し、60℃で20分間乾燥させ、延伸性支持体上に金属ナノロッド含有PVA層を形成した。
【0131】
<分光スペクトルの測定>
得られた金属ナノロッド含有PVA層を形成した延伸性支持体フィルムの吸収スペクトルを紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、含有される金銀複合ナノロッドに由来する吸収を示した。
【0132】
<組成物層膜厚の測定>
金属ナノロッド含有PVA層の膜厚は、該PVA層を延伸性支持体から剥離し、膜厚測定装置(レーザー顕微鏡VK−8700、キーエンス社製)を用いて測定することとし、サンプル数(n=10)の平均値で評価した。組成物形成工程(2)で形成した組成物層の乾燥膜厚は、3.1μmであった。
【0133】
(3)組成物層と延伸性支持体の延伸(延伸工程)
前記組成物形成工程で延伸性支持体上に形成した金属ナノロッド含有PVA塗布層を、延伸性支持体とともに100℃にて一軸4倍縦延伸を行い、幅約20cmの延伸性支持体上に実施例1の偏光フィルムを得た。
【0134】
<偏光フィルムの厚みの評価>
得られた金属ナノロッド含有PVA偏光フィルムの膜厚は、形成した偏光フィルム層を延伸したポリエチレンテレフタレート支持体から剥離し、膜厚測定装置(レーザー顕微鏡VK−8700、キーエンス社製)を用いて測定することとし、サンプル数(n=10)の平均値で評価した。延伸工程(3)で形成した偏光フィルムの乾燥膜厚は、1.6μmであった。
【0135】
<透過率及び配向度の評価>
実施例1の偏光フィルムの偏光性(吸収スペクトルの偏光依存性、光透過率、配向度)を評価した。
吸収スペクトルの偏光依存性としては、紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)の試料側の光路に偏光子を1枚設置し、偏光子と偏光板試料の延伸軸のなす角度を0°、45°、90°に変えて、偏光吸収スペクトルを測定することにより行った。結果を図17に示す。
光透過率は、45°で測定した吸収スペクトルからJIS(R3106-1998)記載の視感度係数補正をした値として評価を行った。実施例1の偏光フィルムの光透過率は、73%であった。
また配向度は、0°と90°のスペクトルから金銀複合ナノロッドの長軸由来の極大吸収波長の吸光度の比率を配向度Sとして、以下のように評価した。
配向度Sが1.00≧S>0.90を○、0.90≧S>0.85を△、0.85≧Sを×とした。
なお、配向度Sは、下記数式1で表される。実施例1の偏光フィルムの配向度は、0.98であり、○であった。
<数式1>
S=(A0deg.−A90deg.)/(A0deg.+2A90deg.)
【0136】
−合わせガラス偏光板の製造−
(4)PVB(ポリビニルブチラール)フィルムへの積層(偏光フィルム積層工程)
10cm×10cmに切り出したPVB中間膜(基材、厚み0.38mm、ソルーシア社製)の片面に、平均重合度700のポリビニルブチラール(和光純薬工業株式会社製)10質量%のイソプロパノール溶液をバーコーター(塗布バー#30)で塗布し、その塗布面上に、偏光フィルムのうち延伸性支持体が形成されていない面を重ね、0.5kgの重しを載せた状態で50℃2時間放置した。
その後、延伸性支持体のみを剥離し、偏光フィルムの片面にPVB中間膜を配した状態とした。
更に、前記PVB中間膜と同様のPVB中間膜を用意し、その片面に平均重合度700のポリビニルブチラール(和光純薬工業株式会社製)10質量%のイソプロパノール溶液をバーコーター(塗布バー#30)で塗布したPVB中間膜(厚み0.38mm、ソルーシア社製)を、前記偏光フィルムにおける延伸性支持体を剥離した面に重ね、0.5kgの重しを載せた状態で50℃で4時間放置し、偏光フィルムの両面をPVB中間膜でサンドイッチ状に挟み込んだ積層体を得た。
【0137】
(5)合わせガラス化工程
前記積層体を5cm×5cmの厚み2mmのクリアガラス2枚で挟みこみ、重ね合わせた状態でガラス接合真空バッグに入れ、2kPaの真空度で30分間脱気し、脱気状態のまま100℃のオーブンに入れ、30分間加熱し、ガラスと中間膜を仮接着した。
仮接着した積層体をオートクレーブに入れ、135℃、12kg/cm2の圧力の条件下で、1時間加熱し、実施例1における偏光フィルムを挟み込んだ合わせガラスからなる偏光板を作製した。
【0138】
<合わせガラス化時の収縮量の評価>
合わせガラス化時の収縮量は、合わせガラス化前の5cm×5cmの中央線(偏光フィルムの延伸方向に直交する中央線)の位置に対応する偏光フィルムの位置を基準線とし、合わせガラス化処理後における基準線に対応する位置と、もとの基準線との変化を、基準線とフィルムの端部で囲まれるフィルムサイズの変化としてみたときの比率を収縮率Rとし、該収縮率Rを測定することにより、以下のように評価した。収縮率Rが1.00≧R>0.95を○、0.95≧R>0.90を△、0.90≧Rを×とした。
実施例1における、合わせガラス偏光板の収縮率Rを測定した結果は、0.98であり、○であった。
【0139】
(6)耐久性評価
<耐久性評価>
合わせガラス偏光板の耐久性は、試験片をサーモボックスに入れ、110℃で、1,000h連続加熱した時の吸収極大波長における配向度Sの変化を測定し、以下のように評価した。
加熱前の配向度Sに対する加熱後の配向度Sの比率が0.7以下になった時間を耐久性保持時間Tとし、耐久性保持時間Tが1,000時間≧Tを○、1,000時間>T>500時間を△、500時間≧Tを×とした。
実施例1における、合わせガラス偏光板の耐久性保持時間Tを評価した結果は1,000時間以上であり、○であった。
【0140】
−保護フィルム挟み込み偏光板の製造−
前記(1)粒子形成工程、(2)組成物層形成工程、及び(3)延伸工程により、形成された偏光フィルムを用いて、以下のように、2つの保護フィルムで偏光フィルムを挟み込んだ積層体からなる偏光板を製造した。
【0141】
(7)TACフィルムへの積層
A4サイズ大にカットしたTACフィルム(トリアセチルセルロース樹脂フィルム、フジタック;厚み80μm;富士フイルム株式会社製)の片面に粘着シート(PD−S1;パナック社製)を貼合した保護フィルムを2枚作製し、まず1枚目の保護フィルムの粘着面に、偏光フィルムにおける延伸性支持体が形成されていない面を重ね、ラミネーターを通すことにより貼合した。
延伸性支持体を剥離した後、残り1枚の保護フィルムの粘着面を、偏光フィルムにおける延伸性支持体を剥離した面に重ね合わせてラミネーターを通し、2つのTACフィルムでサンドイッチ状に偏光フィルムを挟み込んだ積層体を形成し、実施例1における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
【0142】
<カール量評価>
保護フィルム挟み込み偏光板のカール量は、80℃のサーモボックスで2時間加熱した後、実験台水平面に積層体を置いたときの実験台水平面からの積層体端部のカール量を図18に示すように測定し、以下のように評価した。カール量Cが5mm>Cを○、10mm>C≧5mmを△、C≧10mmを×とした。
実施例1における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量Cは、2mmであり、○であった。
【0143】
<耐久性評価>
保護フィルム挟み込み偏光板の耐久性は、試験片をサーモボックスに入れ、80℃で1,000時間連続加熱した時の吸収極大波長における配向度Sの変化を測定し、以下のように評価した。
加熱前の配向度Sに対する加熱後の配向度Sの比率が0.7以下になった時間を耐久性保持時間T’とし、耐久性保持時間T’が1,000時間≧Tを○、1,000時間>T>750時間を△、750時間≧Tを×とした。
実施例1における、保護フィルム挟み込み偏光板の耐久性保持時間T’を評価した結果は1,000時間以上であり、○であった。
【0144】
(実施例2)
実施例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を50.0gから25.0gに変え、また使用するワイヤーバーの番手を#30から#50に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の偏光フィルムを製造した。
実施例2における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、6.5μmであった。また、実施例2の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率71%、配向度S=0.98(○)であった。
【0145】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例2の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における合わせガラス偏光板を製造した。
実施例2における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、それぞれR=0.96(○)、T≧1,000時間(○)であった。
【0146】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例2の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
実施例2における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=2mm(○)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0147】
(実施例3)
実施例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を50.0gから12.5gに変え、また使用するワイヤーバーの番手を#30から#0(ワイヤーなし)に代え、500μmの厚みのアプリケーターを使用して塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の偏光フィルムを製造した。
実施例3における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、12.3μmであった。また、実施例3の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率74%、配向度S=0.97(○)であった。
【0148】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例3の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における合わせガラス偏光板を製造した。
実施例3における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.95(△)、T≧1,000時間(○)であった。
【0149】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例3の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
実施例3における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=3mm(○)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0150】
(実施例4)
実施例3における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を12.5gから10.0gに変え、500μmの厚みのアプリケーターに代えて1,000μmの厚みのアプリケーターを使用して塗布したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4の偏光フィルムを製造した。
実施例4における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、16.8μmであった。また、実施例4の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率72%、配向度S=0.95(○)であった。
【0151】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例4の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における合わせガラス偏光板を製造した。
実施例4における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.94(△)、T≧1,000時間(○)であった。
【0152】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例4の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
実施例4における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=4mm(○)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0153】
(実施例5)
実施例4における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を12.5gから7.0gに変えたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5の偏光フィルムを製造した。
実施例5における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、23.1μmであった。また、実施例5の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率71%、配向度S=0.92(△)であった。
【0154】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例5の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における合わせガラス偏光板を製造した。
実施例5における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.93(△)、T≧1,000時間(○)であった。
【0155】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例5の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
実施例5における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=5mm(△)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0156】
(比較例1)
実施例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を50.0gから6.0gに変え、また使用するワイヤーバーの番手を#30から#0(ワイヤーなし)に代え、1,500μmの厚みのアプリケーターを使用して塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の偏光フィルムを製造した。
比較例1における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、28.1μmであった。また、比較例1の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率73%、配向度S=0.89(×)であった。
【0157】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例1の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例1における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.91(△)、T≧1,000時間(○)であった。
【0158】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例1の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例1における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=5mm(△)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0159】
(比較例2)
比較例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を6.0gから4.0gに変えたこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2の偏光フィルムを製造した。
比較例2における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、38.5μmであった。また、比較例2の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率73%、配向度S=0.87(×)であった。
【0160】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例2の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例2における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.89(×)、T≧1,000時間(○)であった。
【0161】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例2の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例2における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=6mm(△)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0162】
(比較例3)
比較例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を6.0gから3.0gに変え、500μmの厚みのアプリケーターに代えて2,000μmの厚みのアプリケーターを使用して塗布したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例3の偏光フィルムを製造した。
比較例3における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、50.7μmであった。また、比較例3の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率70%、配向度S=0.84(×)であった。
【0163】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例3の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例3における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.85(×)、T≧1,000時間(○)であった。
【0164】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例3の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例3における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=8mm(△)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0165】
(比較例4)
ポリビニロンフィルム(VF−P#7500、株式会社クラレ製)を、室温の水に60秒間浸した後に、40℃のヨウ素(和光純薬工業株式会社製、0.033質量%)、及びヨウ化カリウム(和光純薬工業株式会社製、0.33質量%)水溶液に10秒間浸した。
次いで、60℃のホウ酸(和光純薬工業株式会社製、4.0質量%)、及びヨウ化カリウム(和光純薬工業株式会社製、4.0質量%)水溶液に60秒間浸し、5倍に延伸して、乾燥させて、膜厚46.9μm、配向度0.99の偏光フィルムを作製した。
【0166】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例4の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例4における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.86(×)、T<500時間(×)であった。
【0167】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例4の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例4における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=10mm(×)、T’<750時間(×)であった。
【0168】
(比較例5)
特開2001−343522号公報(特許文献1)の記載を追試することにより、膜厚3.2μm、配向度0.93のヨウ素−PVA偏光フィルムを作製した。
【0169】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例5の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例5における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.96(○)、T<500時間(×)であった。
【0170】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例5の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例5における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=2mm(○)、T’<750時間(×)であった。
【0171】
(比較例6)
10質量%のPVA124水溶液(株式会社クラレ製)80.0g、及び実施例1で得られた金コア銀シェルナノロッド分散液50.0gを混合した組成物を、A4サイズの清浄な未延伸ポリエチレンテレフタレートベース(延伸性支持体、PETMAX;A565GE2R/片面帯電防止コート付/300μm厚み/東洋紡績株式会社製)に、1mm厚みのアプリケーターを用いワイヤーバー(#0)を用いてバーコート塗布し、25℃で12時間乾燥させた後、支持体から剥離することで金コア銀シェルナノロッドを含むPVA膜を形成した。作製した膜の厚みは、63.1μmであった。
作製した金コア銀シェルナノロッドを含むPVA膜を一軸4倍延伸することにより、膜厚39.4μm、配向度0.82の偏光フィルムを作製した。
【0172】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例6の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例6における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.85(×)、T≧1,000時間(○)であった。
【0173】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例6の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例4における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=10mm(×)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0174】
以上の実施例1〜5、及び比較例1〜6において得られた結果を下記表1にまとめて示す。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の偏光フィルムは、優れた耐久性、配向性を有し、収縮応力が小さく、かつ、大面積で偏光板を製造することができるため、例えば、プロジェクター、液晶モニター、液晶テレビ等に応用できるが、更に、光アイソレータ、光ファイバ、自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。これらの中でも、特開2007−334150号公報に開示されているような自動車の前窓等の乗り物用ガラスが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、二色性異方性金属ナノ粒子の構造の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、二色性異方性金属ナノ粒子におけるコアナノロッドの一例を示す模式図である。
【図3】図3は、二色性異方性金属ナノ粒子における両端面が角のない曲面状であるものの具体例を示した図である。
【図4】図4は、二色性異方性金属ナノ粒子における端面が角のない曲面状であるが否かの判定方法を説明するための図である。
【図5】図5は、端面形状を有する二色性異方性金属ナノ粒子の具体例を示す図である。
【図6A】図6Aは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6B】図6Bは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6C】図6Cは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6D】図6Dは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6E】図6Eは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6F】図6Fは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図7A】図7Aは、偏光板の製造工程の他の例を示す概略図である。
【図7B】図7Bは、偏光板の製造工程の他の例を示す概略図である。
【図7C】図7Cは、偏光板の製造工程の他の例を示す概略図である。
【図7D】図7Dは、偏光板の製造工程の他の例を示す概略図である。
【図8】図8は、偏光板の構成の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、偏光板の構成の他の例を示す概略図である。
【図10】図10は、乗り物用映り込み防止窓を自動車に適用した際の映り込み防止の原理を説明するための図である。
【図11】図11は、合わせガラスの中間層として偏光板を設けた一例を示す図である。
【図12】図12は、合わせガラスの片面側に偏光フィルムを設けた一例を示す図である。
【図13】図13は、屈折率1の媒質から屈折率1.46の媒質に入射した場合の反射率の挙動を示すグラフである。
【図14】図14は、実施例1で合成した金ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図15】図15は、実施例1で合成した二色性異方性金属ナノ粒子の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図16】図16は、実施例1で合成した二色性異方性金属ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図17】図17は、実施例1の偏光板の偏光性を示すグラフである。
【図18】図18は、カール量の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0177】
1 コアナノロッド
2 シェル
5 ダッシュボード
6 中間層
10、20、50 二色性異方性金属ナノ粒子
11 組成物層
12、22 延伸性支持体
13、23、33、53 偏光フィルム
14a、14b、28a、28b 第1の基材
15a、15b、25a、25b 第2の基材
16 接着剤層(粘着シート層)
17、27 積層体フィルム
35 ガラス板
36 粘着シート
38 TACフィルム
39 反射防止層
100、150、200、250、300、350 偏光板
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法、偏光板及び偏光板の製造方法、並びに乗り物用映り込み防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板の製造方法として、ヨウ素、有機染料系の材料を用いた偏光板の製造方法が知られている。該偏光板の製造方法としては、ビニロンフィルム(約75μm)を水中でロール一軸延伸しながら、ヨウ素あるいは有機染料で染色し、更にPVA(ポリビニルアルコール)をホウ酸等で硬膜し、偏光フィルムを製造した後、一般的には、更にPVA糊を用いてTAC(トリアセチルセルロース)ベースで挟み込んだ形態にする。
しかしながら、製造される偏光フィルムの厚みが厚いため収縮応力が大きく、偏光フィルムにカールが発生しやすいという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するため、熱可塑性樹脂支持体上にPVA層を形成し、一軸あるいは遂次二軸延伸した後、ヨウ素あるいは有機染料で染色し、接着剤を介してTACベース等に積層するヨウ素、有機染料系の材料を用いた薄膜偏光板の製造方法が提案されている(特許文献1〜5参照)。
例えば、特許文献1には、延伸前の偏光フィルムの膜厚をd(μm)として、延伸倍率eを掛けた、延伸後の偏光フィルムの厚みを30(μm)よりも小さくすることが記載されている。
また、特許文献2には、熱可塑性支持体にPVA層(6.4〜76.2μm)を塗布、延伸し、染色可能な配向場を作製することが記載されている。
また、特許文献3には、PVA層が10μm以下になるように横一軸延伸(4〜8倍)後、染色し、更に直交方向に2%以上収縮(2回目の延伸は、横一軸延伸後でも延伸中でもよい)させることが記載されている。
また、特許文献4には、少なくとも片面に保護フィルム(TACフィルム、環状ポリオレフィンフィルム)を有し、PVAが主成分である厚み10μm以下である偏光フィルムが記載されている。
また、特許文献5には、PVA層(6〜30μm:6μm以下だと延伸困難)を、1枚の熱可塑性樹脂に貼り付けた状態、あるいは2枚の熱可塑性樹脂で挟んだ状態で一軸延伸し、接着層を介して別基材に積層、剥離後、染色した厚み2〜15μmの偏光フィルムと、ハードコート層、アンチグレア、反射防止層等を適宜付与した偏光板が記載されている。
これらの偏光板の製造方法によると、偏光フィルムが薄層であるため、カールを小さく抑えることができ、また、折り曲げに対しても強い。
なお、このほかに、アモルファスポリオレフィン系樹脂フィルム(特にノルボルネン系)の表面に厚みが20〜1,500nmの偏光層(平板状色素:フタロシアニン等、オプティバインク等を含む)を付与した偏光板も知られている(特許文献6参照)。
【0004】
前記偏光板の製造方法に用いられるヨウ素、有機染料は、耐熱性が低いため、二色性を示す金属ナノロッド(銀、金)をPVAに分散し、キャスト膜を作製後、単膜で延伸配向させることにより偏光フィルムを製造する、金属ナノロッドを用いた偏光フィルムの製造方法が提案されている(非特許文献1、2参照)。
しかしながら、該偏光フィルムの製造方法では、高い耐久性を得られると考えられるが、偏光フィルムにおける金属ナノロッドの配向性が低い(〜0.8)という問題点がある。また、偏光フィルムの厚みが大きいため、収縮応力も大きいと推定される。
【0005】
このような問題を解消するため、金属ナノロッドを用いた薄膜偏光フィルムの製造方法も提案されている(特許文献7、8参照)。これらの偏光フィルムの製造方法は、マトリクスポリマーが150℃以上の耐熱性を有する金属ナノロッド型偏光子を製造可能とするうものであり、アミック酸と硝酸銀を製膜後、加熱延伸することによりポリイミド化と金属ナノロッド形成を同時に行い、厚みが薄く、配向度の高い(〜0.9)偏光フィルムを得ることができる。
しかしながら、この偏光フィルムの製造方法によると、高い耐久性を得ることができるが、重合かつ延伸時に高い温度で加熱するため、偏光フィルムを用いた偏光板の大面積化が難しく、また、原理上、光学濃度や色味調整ができないという問題点があった。
したがって、優れた耐久性、配向性を有し、収縮応力が小さく、かつ、大面積で偏光板を製造することができる偏光フィルムとしては、未だ満足できるものが存在しないというのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2001−343522号公報
【特許文献2】特公平08−12296号公報
【特許文献3】特開2003−43257号公報
【特許文献4】特開2001−343521号公報
【特許文献5】特開2000−338329号公報
【特許文献6】特開2002−228837号公報
【特許文献7】特開2006−184624号公報
【特許文献8】特開2006−312681号公報
【非特許文献1】Adv.Mater.2002,14(13),1000-1004
【非特許文献2】Adv.Func.Mater.2005,75,1065-1071
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた耐久性、配向性を有し、収縮応力が小さく、かつ、大面積で偏光板を製造することができる偏光フィルム、偏光フィルムの製造方法、偏光板、及び偏光板の製造方法、並びにこれらを用いた関連技術を提供することを目的とする。また、本発明は、光学濃度や色味調整が容易で、フレキシブルかつ様々な支持体に積層可能な偏光フィルム、偏光フィルムの製造方法、偏光板、及び偏光板の製造方法、並びにこれらを用いた関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の(1)、(2)に示す知見を得た。
(1)組成物層の厚みを小さくすることによる二色性金属ナノ粒子(金属ナノロッド)の配向性向上
分子やサブミクロンオーダーの棒状粒子やウィスカーについては、さかんに研究が進められ、分子秩序性や配向制御に関する知見が得られている。分子の配向制御に関しては、例えば、ヨウ素、有機染料の延伸配向のほか、液晶材料や界面活性剤、金属錯体やJ会合体などの分子秩序性に関する研究が進められている。またサブミクロンオーダーの棒状粒子やウィスカーについては、例えば流動配向や圧延、エレクトロスピニングや磁場、電場配向に関する研究が進められている。
しかし、メゾスケールの金属ナノ粒子やナノロッドの配向制御に関する知見は少なく、単にナノロッドを含有するPVA膜等を延伸して配向した報告に留まっていた。
そこで、鋭意検討した結果、マトリクスポリマー膜厚の薄膜化に伴い、二色性金属ナノ粒子(金属ナノロッド)の配向性が向上することがわかり、より少ない延伸倍率で二色性金属ナノ粒子(金属ナノロッド)の配向度を上げることができることを知見した。
【0009】
(2)偏光フィルムの寸法変化
偏光フィルムは、延伸したフィルムであるため、収縮応力が大きく、加熱されると延伸方向に収縮してしまい、寸法変化が大きいという問題点があった。また収縮応力が大きいため、偏光膜をTAC等の保護フィルムに貼合して使用しても、カールが発生するという問題点があった。
特に、加熱時の寸法変化の問題は大きく、例えば、ビニロンフィルム(75μm、VF−P#7500、クラレ社製)を用いて作製した4倍縦一軸延伸フィルムを用いて、合わせガラスを作製すると、130℃まで加熱することにより延伸フィルムが収縮し、出来上がった合わせガラスを観察すると、延伸フィルムが延伸方向に約20%縮んでしまうという現象が見られた。
そこで、鋭意検討した結果、偏光膜の膜厚を薄膜化することにより、合わせガラス化工程を経ても、寸法変化を小さくすることができることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも二色性異方性金属ナノ粒子と熱可塑性樹脂を含み、厚みが12.5μm以下であることを特徴とする偏光フィルムである。
<2> 二色性異方性金属ナノ粒子の配向度が、0.85よりも大きい前記<1>に記載の偏光フィルムである。
<3> 二色性異方性金属ナノ粒子の球相当半径が、15nm以下であり、かつアスペクト比が1.1〜10である前記<1>から<2>のいずれかに記載の偏光フィルムである。
<4> 二色性異方性金属ナノ粒子の金属が、銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、ニッケルの少なくとも1種類を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の偏光フィルムである。
<5> 二色性異方性金属ナノ粒子が、コア金属をシェル金属で被覆してなるコアシェル構造を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の偏光フィルムである。
<6> コア金属が金であり、シェル金属が銀である前記<5>に記載の偏光フィルムである。
<7> 熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコールである前記<1>から<6>のいずれかに記載の偏光フィルムである。
<8> 少なくとも、二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂とを含む組成物層を延伸性支持体上に形成する組成物層形成工程と、前記組成物層を延伸性支持体とともに延伸し、該延伸性支持体上に偏光フィルムを形成する延伸工程とを含み、前記組成物層の厚みが25μm以下であり、かつ、前記偏光フィルムの延伸後の厚みが12.5μm以下であることを特徴とする偏光フィルムの製造方法である。
<9> 組成物層の厚みが、10μm以下である前記<8>に記載の偏光フィルムの製造方法である。
<10> 延伸性支持体が、未延伸ポリエチレンテレフタレートである前記<8>から<9>のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
<11> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の偏光フィルムを有することを特徴とする偏光板である。
<12> 偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を有する前記<11>に記載の偏光板である。
<13> 偏光フィルムにおける、少なくとも一の面上の基材が、トリアセチルセルロースフィルムである前記<12>に記載の偏光板である。
<14> 偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、第1の基材と、第2の基材とをこの順で有する前記<11>に記載の偏光板である。
<15> 第1の基材が、ポリビニルブチラール及びポリエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む中間層であり、第2の基材が、ガラス基板である前記<13>に記載の偏光板である。
<16> 前記<8>から<10>のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法により製造された偏光フィルムにおける、延伸性支持体が形成された一の面と反対側の面に、基材を積層させた後、前記延伸性支持体を前記偏光フィルムの一の面から剥離させる偏光フィルム積層工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法である。
<17> 偏光フィルムにおける基材が配された一の面と反対側の面に、更に基材を配し、前記偏光フィルムにおける一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を配した積層体を形成する積層体形成工程を含む前記<16>に記載の偏光板の製造方法である。
<18> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の偏光フィルムを有することを特徴とする乗り物用映り込み防止フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた耐久性、配向性を有し、収縮応力が小さく、かつ、大面積で偏光板を製造することができる偏光フィルム、偏光フィルムの製造方法、偏光板、及び偏光板の製造方法、並びにこれらを用いた関連技術を提供することができる。また、本発明によると、光学濃度や色味調整が容易で、フレキシブルかつ様々な支持体に積層可能な偏光フィルム、偏光フィルムの製造方法、偏光板、及び偏光板の製造方法、並びにこれらを用いた関連技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(偏光フィルム)
本発明の偏光フィルムは、少なくとも二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂を含み、厚みが12.5μm以下としてなる。
【0013】
前記偏光フィルムの厚みの上限値としては、12.5μm以下であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二色性金属ナノ粒子の配向性向上の観点から、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。
前記厚みの下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、偏光フィルムの強度の観点から、0.5μm以上であることが好ましい。
【0014】
また、前記偏光フィルムの配向度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.85よりも大きいことが好ましく、0.9よりも大きいことがより好ましく、1が特に好ましい。
前記配向度が、0.85よりも大きいと、偏光性能向上の観点から好ましい。
【0015】
−二色性異方性金属ナノ粒子−
前記二色性異方性金属ナノ粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属ナノロッドと呼ばれる金属ナノ粒子が挙げられる。
前記金属ナノロッドは、短軸よりも長軸が長い棒状粒子であり、“Adv.Mater.2002,14(13),1000-1004”、“Adv.Func.Mater.2005,75,1065-1071”、及び特開2006−184624号公報に開示されているように、銀や金、銅、アルミニウムなどの金属ナノロッドは短径と長径で異なる表面プラズモン共鳴を示すため、紫外光域〜近赤外域にかけて二色性を示し、これらの金属ナノロッドの長径が一方向に配向させた材料は、偏光性を示す。
前記金属ナノロッドとしての二色性材料としては、無機物であるため、熱や光に強く、またこれを用いた偏光板は、従来のヨウ素や有機染料を用いた偏光板に対して耐久性が高く、例えば、銀ナノロッドがガラスマトリクス中で配向したガラス偏光子;ポーラコア(コーニング社製)は、高耐久性が要求される光通信の分野で利用されている。
前記金属ナノロッドの金属としては、銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、ニッケルが好ましい。
【0016】
また、前記金属ナノロッドとしては、コアナノロッドをシェルで被覆してなるコアシェル構造としてなる複合金属ナノロッドであるのが好ましい。
【0017】
前記複合金属ナノロッドとしては、図1に示すように、コアナノロッド1をシェル2で被覆してなるコアシェル構造からなる。図1の複合金属ナノロッドのアスペクト比は、長軸長さ(以下、「長径」と称することもある)Aを、短軸長さ(以下、「短径」と称することもある)Bで割った値(A/B)から求められる。
前記複合金属ナノロッドにおけるアスペクト比とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子のアスペクト比の平均値を意味する。
前記複合金属ナノロッドのアスペクト比としては、可視光領域に吸収を付与する観点から1.1〜10が好ましく、1.1〜5がより好ましい。
前記アスペクト比が、1.1に満たないと、十分な二色性が得られないことがあり、10を超えると、所望の可視域から近赤外域の吸収が得られないことがある。
【0018】
前記複合金属ナノロッドの球相当半径(R)としては、散乱の観点から、15nm以下が好ましく、13nm以下がより好ましい。
前記球相当半径(R)が15nmを超えると、複合金属ナノロッド由来の散乱が強くなり、複合金属ナノロッド分散物や複合金属ナノロッド含有組成物の透過性が下がってしまうことがある。
ここで、前記球相当半径(R)とは、複合金属ナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、複合金属ナノロッドの形状に応じて以下の式で表される。
【数1】
ただし、Aは複合金属ナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、その複合金属ナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測する。Bは複合金属ナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、その複合金属ナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測する。
【数2】
ただし、A及びBは、上記と同じ意味を表す。
【0019】
ここで、複合金属ナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、透過型電子顕微鏡(TEM)で複合金属ナノロッドを観察した際の形状から判別することができる。複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.2Bである場合(例えば、球面状(図12のC及びE)、楕円面状(図12のD)、楕円体状(図12のF)など)には略円柱形状とする。
一方、複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、0.2B<L≦0.9Bである場合(例えば多面体状(図12のA及びBなど))には略直方体状とする。
なお、前記複合金属ナノロッドの端面(キャップ)の平らな部分Lは、後述する複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと同義である。
【0020】
前記複合金属ナノロッドの両端面は、図1に示すように、角のない曲面状であることが短軸由来の吸収ピークの線幅が細くなり、二色性が向上する点で好ましい。
前記角のない曲面状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば球面、楕円面、楕円体、多面体面などが挙げられ、具体的には、図11に示すように、複合金属ナノロッドの長軸に対する垂線と複合金属ナノロッドの端面とが接する部分の長さLと、複合金属ナノロッドの短軸長さBとが、次式、L≦0.9Bを満たすものが好ましく、L≦0.8Bを満たすものがより好ましい。
前記Lが0.9Bを超えると、短軸の吸収がブロードになってしまうことがある。
【0021】
前記複合金属ナノロッドとしては、特に制限はないが、少なくとも2種の金属を含有し、コアナノロッドを構成するコア金属と、シェルを構成するシェル金属とが異なる金属であることが好ましい。なお、コアナノロッド又はシェルが複数種の金属を含有していても構わない。
前記コア金属に対してシェル金属の方が卑であることが好ましい。このことは、前記シェル金属の還元電位が前記コア金属の還元電位よりも高いことを意味する。前記金属の還元電位は、「化学便覧改訂3版 基礎編II」に記載されている。
コア金属に対してシェル金属の方が卑であることが好ましい理由としては、シェル金属よりコア金属の方が卑である場合、シェル金属を析出させる際にコア金属が溶出してしまうことがあるためである。
前記コア金属としては、例えば金、白金、パラジウム、などが挙げられる。これらの中でも、金が特に好ましい。
前記シェル金属としては、例えば銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。これらの中でも、銀が特に好ましい。
したがって、前記複合金属ナノロッドとしては、コア金属が金、シェル金属が銀からなる金コア銀シェルナノロッドが特に好適である。
【0022】
前記コアナノロッドと前記シェルの体積比(シェル/コアナノロッド)は、0.1〜130が好ましく、耐酸化性の観点からは1〜40がより好ましい。前記体積比が、0.5未満であると、シェル金属によるコアナノロッドの被覆が不十分となり、シェル金属の光学特性が十分に発現されなくなることがあり、130を超えると、酸化されてしまうことがある。
ここで、前記コアナノロッドの体積Vコアと前記シェルの体積Vシェルとの体積比(シェル/コアナノロッド)は、複合金属ナノロッド及びコアナノロッドの形状に応じて以下の式で表される。
略直方体状の場合には、Vシェル=(A×B×B)−Vコア
Vコア=(a×b×b)
略円柱形状の場合には、Vシェル=(π×A×B×B/4)−Vコア
Vコア=(π×a×b×b/4)
ただし、A及びBは上記と同じ意味を表す。aはコアナノロッドの長軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの両端を直線で結んだときに最も長い部分の長さを計測する。bはコアナノロッドの短軸長さを表し、測定した部分は、そのコアナノロッドの中で最も太い部分の長さを計測する。
なお、複合金属ナノロッド又はコアナノロッドの形状が、略円柱形状及び略直方体状のいずれであるかは、上記球相当半径の場合と同様にして判別することができる。
【0023】
ここで、図2は、コアナノロッドを示し、そのアスペクト比は、コアナノロッドの長軸長さaを、コアナノロッドの短軸長さbで割った値(a/b)から求められる。
前記コアナノロッドのアスペクト比とは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された粒子から任意に抽出した200個の粒子のアスペクト比の平均値を意味する。
前記コアナノロッドのアスペクト比は、1.5〜24が好ましく、可視光領域に吸収を付与する観点から1.5〜10がより好ましい。前記アスペクト比が、1.5未満であると、複合金属ナノロッド吸収特性の可視光域での調整範囲が狭くなることがあり、24を超えると、可視光域に吸収を付与するためにシェル金属厚みが厚くなり、その結果、粒子体積が大きくなってしまい透過性が低下することがある。
前記コアナノロッドの球相当半径(r)は10nm以下が好ましく、複合金属ナノロッドの散乱を小さくし、かつ吸収特性を制御するためには8nm以下がより好ましい。前記コアナノロッドの球相当半径(r)が10nmを超えると、複合金属ナノロッド由来の散乱が強くなり、複合金属ナノロッド分散物や複合金属ナノロッド含有組成物などの透過性が低くなることがある。
前記コアナノロッドの球相当半径(r)とは、コアナノロッドを同体積の球とみなした時の半径を意味し、上記複合金属ナノロッドの球相当半径と同様にして求めることができる。
【0024】
前記金属ナノロッドの合成法としては、特に制限されないが、化学還元法、電気化学還元法、光化学還元法、メゾポーラスアルミナ電鋳法、熱還元法、超音波還元法などが挙げられるが、生産性の観点から、化学還元法が特に好ましい。
化学還元法による金属ナノロッド合成法としては、例えば、金ナノロッド;Langmuir 1999,15,701−709、Chem. Commun.,2001,617−618、銀ナノロッド;Chem.Comm.,7(2001)617−618、金コア銀シェルナノロッド;J.Phys.Chem.B,108(2004)5882−5888などの文献に記載された手法により合成することができる。
また、前記複合金属ナノロッドの合成方法としては、後述する、種晶形成工程、コアナノロッド形成工程、及びシェル形成工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる好ましい。
【0025】
−種晶形成工程−
前記種晶形成工程は、第1の金属化合物を含む溶媒中で還元反応させて種晶を形成する工程である。
【0026】
−コアナノロッド形成工程−
前記コアナノロッド形成工程は、溶媒中に前記種晶、界面活性剤、及び第1の金属化合物を添加し、還元反応させて、コアナノロッドを形成する工程である。
【0027】
前記第1の金属化合物としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物などが挙げられる。
前記第1の金属化合物における金属としては、例えば金、白金、パラジウム、などが挙げられ、これらの中でも、金が特に好ましい。
前記金属塩を形成する酸としては、無機酸及び有機酸のいずれであってもよい。
前記無機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば硝酸;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸などが挙げられる。
前記有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばカルボン酸、スルホン酸などが挙げられる。
前記カルボン酸としては、例えば酢酸、酪酸、シュウ酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸、安息香酸、などが挙げられる。
前記スルホン酸としては、例えばメチルスルホン酸などが挙げられる。
前記金属塩としては、例えば硝酸銀、塩化金酸、塩化白金酸などが挙げられる。
【0028】
前記金属錯体を形成するキレート剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアセチルアセトナート、EDTAなどが挙げられる。また、上記の金属塩と配位子とで錯体を形成してもよく、該配位子としては、例えばイミダゾール、ピリジン、フェニルメチルスルフィドなどが挙げられる。
なお、前記金属化合物には、金属イオンのハロゲン化錯体の酸(例えば塩化金酸、塩化白金酸など)、アルカリ金属塩(例えば塩化金酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウムなど)も含まれる。
【0029】
−シェル形成工程−
前記シェル形成工程は、溶媒中に前記コアナノロッド、第2の金属化合物、界面活性剤、及びビニルピロリドン化合物を添加し、還元反応によりコアナノロッドの表面にシェルを形成する工程である。
【0030】
前記第2の金属化合物としては、例えば、金属塩、金属錯体、有機金属化合物などが挙げられる。
前記第2の金属化合物における金属としては、例えば銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられ、これらの中でも、銀が特に好ましい。
前記金属塩、金属錯体、及び有機金属化合物としては、前記第1の金属化合物と同様である。
【0031】
前記還元は、溶媒を加熱、光還元、還元剤添加、化学還元法などが挙げられるが、還元剤添加が特に好ましい。
前記還元剤としては、例えば水素ガス、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、ヒドラジン、アスコルビン酸、アミン類、チオール類などが挙げられる。なお、化学還元法としては、電気分解法を用いて行うこともできる。
【0032】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記ビニルピロリドン化合物としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられ、ポリビニルピロリドン(PVP)が特に好ましい。
前記ポリビニルピロリドン(PVP)は、ピロリドンユニットの繰り返し単位数が85以上であることが好ましく、300〜12,000がより好ましい。前記繰り返し単位数が85未満であると、PVPが金属粒子の特定の結晶面に吸着できずに、球状粒子となってしまうとなることがある。
【0034】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(CTAH)に代表されるセチルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、オクチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
前記セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)に代表される4級アンモニウム塩のようなカチオン性界面活性剤は殺菌性を示し、水性生物への毒性など環境への影響が懸念される。そのため、工程中でCTABを粉体の形で回収することにより、環境影響を減少させることが必要である。例えば、金ナノロッド水溶液を5℃で12時間静置することにより析出したCTABの結晶を濾布(#200)で濾別する操作を行うことにより、約75%のCTABを固体状態で回収することが可能である。途中工程でCTABを回収することにより、CTABを再利用することができるため、また限外濾過膜による精製時間の短縮されるため、コストダウンや環境影響の減少につながる。
【0035】
前記複合金属ナノロッドは、分散剤、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン等の高分子からなる誘電体で被覆されていてもよい。
これらの誘電体で被覆されることにより、吸収特性の調整、熱安定性、耐酸化性等の機能を付与することが可能になる。
【0036】
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子表面に吸着し、電荷による反発や立体障害による凝集防止を付与したり、更には水溶性や油溶性を付与できる物質であればよい。
【0037】
電荷による反発を付与する物質としては、特に制限はなく、例えば、4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系、リン酸塩系、カルボン酸塩系などの低分子系、及び高分子系イオン性物質が挙げられ、分散したい粒子の表面電位や酸、塩基性により選択することができる。
【0038】
また、立体障害を付与する物質としては、少なくとも、粒子表面に対して吸着基と立体障害とを付与する部位を有しているものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記吸着基としては、特に制限はないが、例えば、チオール、ジスルフィド、スルフォキシド等のS元素含有官能基、リン酸やホスフィンなどのP元素含有官能基、カルボニル、カルボキシル、エーテル、ヒドロキシルなどのO元素含有官能基、アミン、アミノ、アンモニウム塩、ニトロ、ヒドロキシアミン、アゾ、イミンなどのN元素を含む官能基が好ましい。
これらの官能基を有する化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン系のルパゾール、スルホン酸系のタモール(BASF社製)、末端チオールポリエチレングリコールや末端チオールポリスチレンなどの末端チオール系ポリマー(Polymer Source Inc.社製)などが挙げられる。また、その他好適に用いられる分散剤としては、DISPERBIK-180、DISPERBIK-184、DISPERBIK-190、DISPERBIK-192、DISPERBIK-2000、DISPERBIK-2001(ビックケミー社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記複合金属ナノロッドとしては、複合金属ナノロッド含有組成物として、バインダー、更に必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
【0040】
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記その他の成分としては、例えば溶媒、分散剤、酸化防止剤などが挙げられる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、クエン酸、ポリビニルアルコール樹脂、トリアゾール化合物などが挙げられる。
【0042】
なお、膜質を改良するために、架橋剤や可塑剤を含んでもよい。例えば、膜質を強くするためにはホウ酸等の架橋剤を添加し、逆にしなやかにするためにはグリセリン等の可塑剤を添加する。前記架橋剤及び可塑剤は、塗布膜作製時に添加してもよいし、塗布膜乾燥後や塗布膜延伸後にウエットコーティングにより付与してもよい。
なお、複合金属ナノロッド表面に吸着した分散剤は、溶媒やバインダーへの相溶性を考慮し、適宜置換してもよい。
前記複合金属ナノロッド以外の粒子を混合し、紫外線吸収や熱線吸収等の機能を付与したり、ガラスとの屈折率を合わせてもよい。例えば、金属酸化物半導体粒子を添加することにより、紫外線吸収や熱線吸収の機能を付与することが可能である。
【0043】
−熱可塑性樹脂−
前記熱可塑性樹脂としては、前記金属ナノロッドを分散でき、透明性が高く、延伸可能なポリマーであれば、特に制限はないが、延伸性や金属ナノロッドの配向性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、粉末やペレットの形態で市販されており、例えばクラレポバール(クラレ社製)105、117、124、135、205、217、224、235などを用いることができる。
【0044】
前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度としては、80モル%〜100モル%が好ましく、配向性や光学特性の観点からは85モル%〜100モル%がより好ましい。
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、変性されていてもよく、例えば、ポリビニルブチラールやアルデヒド類で変性されたポリビニルホマール、ポリビニルアセタールなどが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重合度としては、300〜10,000が好ましいが、塗布適性や延伸性の観点から、500〜4,000がより好ましい。
【0045】
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、適当な溶媒に溶解させ、ポリビニルアルコール系樹脂溶液として用いることができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、グリコール類などが挙げられるが、溶解性や塗布後の乾燥性から水が好ましい。
水を用いる場合には、適宜有機溶媒を混合して用いてもよく、混合する溶媒としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールやメタノールなどのアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのアルコール系溶媒、アセトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒やアセトニトリルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記ポリビニルアルコール系樹脂溶液中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度としては、0.1質量%〜20質量%が好ましいが、塗布適性や薄膜を形成する観点からは0.5質量%〜10質量%がより好ましい。
また、ポリビニルアルコール系樹脂溶液には、二色性材料である金属ナノロッドの他、界面活性剤、硬膜剤、可塑剤、分散剤、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、熱線遮蔽剤、耐湿性向上剤、熱安定化剤、染料、顔料、金属酸化物、金属窒化物、導電性粒子などを含有してもよい。
【0047】
前記界面活性剤は、塗布適性を改良するために添加するが、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性界面活性剤などが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオ岸エチレンアルキルフェノールエーテル系、アルキルグルコシド系、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系、ショ糖脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩系、ジアルキルジメチルアンモニウム塩系、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩系、アミン塩系などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えばセッケン(脂肪酸ナトリウム、カリウム塩)、アルキルベンゼンスルホン酸塩系、高級アルコール硫酸エステル塩系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系、α−スルホ脂肪酸エステル系、α−オレフィンスルホン酸塩系、モノアルキルリン酸エステル塩系、アルカンスルホン酸塩系などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えばアルキルアミノ脂肪酸塩系、アルキルベタイン系、アルキルアミンオキシド系などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記硬膜剤としては、膜質を強くするために添加されるが、その材料としては、特に制限はなく、ホウ酸やジフェニルホウ酸などが挙げられる。
前記可塑剤としては、膜質を柔軟にするために添加されるが、その材料としては、特に制限はなく、各種低分子及び高分子グリコール類などが挙げられる。
これらの硬膜剤や可塑剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂溶液中に含ませることとしてよいが、熱可塑性支持体上に塗布層を形成後、後からウェットコーティングなどにより付与することとしてもよい。
【0049】
前記酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、クエン酸、トリアゾール化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、熱可塑性樹脂支持体上に形成する塗布層としては、金属ナノロッド含有ポリビニルアルコール樹脂層1層のみでもよいし、更に金属ナノロッドや紫外線吸収剤、熱線遮蔽剤、耐湿性向上剤、熱安定化剤、顔料、金属酸化物、金属窒化物、導電性粒子を含む機能性膜を積層してもよい。
これらの層は、熱可塑性樹脂支持体にPVA層を塗布する前に形成してもよいし、また、PVA層の上に更に積層してもよいし、更には延伸工程後に形成してもよい。
【0050】
(偏光フィルムの製造方法)
本発明の偏光フィルムの製造方法は、少なくとも、組成物層形成工程と、延伸工程とを含んでなる。
【0051】
−組成物層形成工程−
前記組成物層工程は、少なくとも、二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂とを含む組成物層を延伸性支持体上に形成する工程である。
【0052】
前記組成物層の形成方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、延伸性支持体上に少なくとも、二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂とを含む組成物液を塗布し、乾燥させる方法、などにより形成することが好ましい。
【0053】
前記塗布方法では、まず、少なくとも、前記二色性異方性金属ナノ粒子と、前記熱可塑性樹脂とを溶媒に溶解乃至分散させてなる組成物液を調製する。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
次いで、前記延伸性支持体上に前記組成物液を塗布する。
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、一般的な手法により行うことができ、例えば、ウェットコート法、バーコート法、ワイヤーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、ダイコート法、ディップコート法、スピンコート法などが挙げられる。
【0055】
前記組成物液を塗布した後の乾燥としては、延伸性支持体が変形しない温度であれば、特に制限はなく、100℃以下で行うのが好ましい。
前記乾燥としては、前記組成物液を塗布した延伸性支持体をステンレス製の板に貼り付けた状態でクリーンオーブンに入れ、60℃で15分間加熱することにより行った。
【0056】
また、乾燥後、前記組成物層が形成された延伸性支持体を巻き取る際にブロッキングを防ぐためのカバーフィルムを共巻きしてもよい。
前記カバーフィルムとしては、特に制限はなく、延伸性支持体と同じフィルムでもよいが、ポリオレフィン系樹脂フィルムやポリエステル系樹脂フィルムなどが挙げられる。ブロッキング防止の観点や共巻きのし易さの観点から、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムが好ましい。
また、前記カバーフィルムの厚みとしては、ブロッキング防止の観点や共巻きのし易さの観点から、1μm〜1,000μmが好ましく、3μm〜50μmがより好ましい。
【0057】
乾燥後の前記組成物層の厚みの上限としては、25μm以下であれば、特に制限はないが15μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。
また、乾燥後の前記組成物層の厚みの下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.16μm以上であることが好ましい。
前記厚みが0.16μmより薄いと、塗布層中の二色性異方性金属ナノ粒子同士が近接し過ぎてしまい二色性異方性金属ナノ粒子の吸収特性が変化してしまったり、延伸時に組成物層がちぎれてしまうことがあり、また、25μmより厚いと二色性異方性金属ナノ粒子の配向性が低くなることがある。
【0058】
−−延伸性支持体−−
前記延伸性支持体としては、延伸できるものであれば特に制限はないが、前記熱可塑性樹脂や二色性異方性金属ナノ粒子が劣化しない150℃以下で延伸できるものが特に好ましい。
【0059】
前記延伸性支持体としては、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエステル系樹脂フィルムとしては、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが、またポリオレフィン系樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられるが、延伸性の観点から、特に未延伸のフィルムが好ましく、150℃以下で6倍以上延伸できるという観点から、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
前記未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、PETMAX(膜厚300μm、片面帯電防止コート付、東洋紡社製)などが挙げられる。
【0060】
また、前記延伸性支持体のガラス転移温度としては、特に制限はないが、150℃以下のものが好ましい。
また、前記延伸性支持体の厚みとしては、塗布や延伸などのハンドリングの観点から、10μm〜1,000μmが好ましく、100〜700μmがより好ましい。
また、前記延伸性支持体は、偏光フィルムを形成する金属ナノロッド分散層を形成可能な接触角を有すること、延伸工程で組成物層が延伸性支持体から剥離しないこと、また、延伸後に形成した偏光フィルムを別基材へ積層する際に剥離できる性質を兼ね備えている必要がある。
【0061】
また、前記延伸性支持体は、目的に応じて、前記組成物液の塗布適性を改良するための表面処理や、偏光層剥離時の剥離帯電を軽減するための帯電防止処理をされたものを用いることができる。
前記塗布適性を改良するための表面処理としては、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、下塗り処理などが挙げられる。
前記下塗り処理としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などのプライマー樹脂を使用することができる。
また、前記帯電防止処理としては、特に制限はなく、例えば、ITOやATOなどの金属酸化物粒子や蒸着膜、金属ナノ粒子やナノワイヤーなどの導電性材料、4級アンモニウム塩などの帯電防止剤、などを付与することが挙げられる。
また、これらの表面処理は目的に応じて支持体片面あるいは両面に施してもよく、更には支持体内部に添加することにより目的の性能を付与してもよい。
【0062】
−延伸工程−
前記延伸工程は、前記組成物層を延伸性支持体とともに延伸し、該延伸性支持体上に偏光フィルムを形成する工程である。
【0063】
前記組成物層における、二色性異方性金属ナノ粒子の配向度が0.85以上の偏光フィルムにおいて、偏光フィルムの厚みをtとし、組成物層の厚みをdとしたとき、tとdとの関係は、下記式(1)で表される。
なお、下記式(1)において、TMDは一軸縦延伸方向に対する延伸倍率を示し、TTDは延伸方向に対して直交方向の収縮倍率を示す。
t = d × (TMD)−1× (TTD)−1 式(1)
上記式(1)より、例えばTTD=0.5倍、TMD=4倍の時は、組成物層の厚みdが1μm〜25μmであるときの延伸後の偏光フィルムの厚みtは、0.5μm〜12.5μmとなる。
【0064】
次に、偏光性を発現するために、前記組成物層が塗布された延伸性支持体(積層フィルムと略す)を延伸するようにする。
延伸方法は、積層フィルムを延伸することができるものであれば、特に制限はなく、例えば、ロール一軸縦延伸やテンター延伸などが挙げられる。
前記ロール一軸縦延伸としては、特に制限はなく、例えば、周速の異なるロール間で一軸縦延伸を行う方法や、ヒートロールを用いて一軸延伸や圧延を行う方法が挙げられるが、大面積の偏光膜を作製するには、テンター延伸が好ましい。
前記テンター延伸では、通常、積層フィルム搬送方向に対して直交方向に横一軸延伸を実施できるが、横一軸延伸の前後、あるいは同時に緩和過程を設けることにより、積層フィルムを積層フィルム搬送方向に平行に緩和(収縮)させることにより、配向性を向上させることが可能である。
緩和過程とは、積層フィルムを収縮させる過程であり、例えば積層フィルムにかけるテンションを緩めたり、緩和過程ゾーンの温度を上げたりする過程である。
また、延伸工程の前後に適宜予熱、緩和、熱固定や冷却工程を入れてもよい。
【0065】
延伸倍率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一軸縦延伸の場合は、1.5倍〜8倍が好ましく、一軸横延伸の場合は、1.5倍〜8倍が好ましい。
これらの延伸倍率の範囲で延伸することにより、偏光フィルムのチギレなどもなく、良好な偏光性を示す偏光フィルムを形成できる。
【0066】
延伸温度としては、特に制限はないが、延伸性支持体と、組成物層におけるPVAのガラス転移温度程度が好ましい。
具体的には60℃〜150℃が好ましく、80℃〜120℃がより好ましい。このような延伸温度であると、延伸性がよく、かつ延伸性支持体と組成物層(PVA)の劣化を防止することができる。
また、組成物層(PVA)の酸化劣化を防ぐために、延伸工程を窒素雰囲気下で行ってもよい。
【0067】
(偏光板)
本発明の偏光板は、前記偏光フィルムを有してなる。
前記偏光板の形態としては、前記偏光フィルムを有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を有する形態が好ましい。
前記偏光フィルムは、前記延伸性支持体とともに、積層体フィルムとして用いてもよいが、延伸された熱可塑性樹脂支持体のカールが強いこと、また複屈折が大きいことから、基材へ積層して用いることが好ましい。
前記積層としては、ガラスなどを接合することができるポリビニルブチラールフィルム(PVB)、トリアセチルセルロースフィルム(TAC)のような保護フィルム、及び、透明基材であるガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂の基板ないし成型体などに積層することとして行うことができる。
また、このような形態としては、特に制限はなく、以下に述べる第1の形態と、第2の形態とを挙げることができる。
【0068】
−第1の形態−
前記第1の形態は、前記偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、第1の基材と、第2の基材とをこの順で有する構成からなる。
前記第1の基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルブチラール樹脂フィルム(PVB)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂フィルム(EVA)を挙げることができる。
これらは、いずれも市販されており、ポリビニルブチラール樹脂フィルムとしては、S−LEC(積水化学社製)、Saflex AR−11、RB−41(ソルーシアジャパン社製)などを用いることができ、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂フィルムとしては、S−LEC EN(積水化学社製)、Saflex(ソルーシアジャパン社製)などを用いることができる。
また、第2の基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂の基板ないし成型体が挙げられる。
【0069】
前記第1の基材の厚みとしては、特に制限はないが、100μm〜1,000μmが好ましい。
また、前記第1の基材としては、目的に応じて適宜可塑剤や紫外線吸収剤、熱線遮蔽剤、顔料などを含むこととしてもよい。
なお、第1の基材については、後述する乗り物用映り込み防止窓に用いられる中間層と同様の構成とすることもできる。
また、第2の基材については、後述する乗り物用映り込み防止窓に用いられる基材ガラスと同様の構成とすることもできる。
【0070】
このような第1の形態からなる偏光板の構成例を図6F(図7D)に示す。該構成例においては、偏光フィルム13(23)の一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、第1の基材14a、14b(28a、28b)と、第2の基材15a、15b(25a、25b)とをこの順で有するように構成されている。
【0071】
−第2の形態−
前記第2の形態は、前記偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を有し、前記基材が保護フィルム及び透明基材のいずれかとしてなる構成からなる。
【0072】
前記保護フィルムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースなどのセルロースアセテート樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリノルボルネン系樹脂フィルムのような環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルムなどが挙げられる。
これらの中でも、光学特性の観点から、トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製)やZEONORやZEONEX(日本ゼオン社製)やアートン(JSR社製)などの環状ポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましい。
前記保護フィルムの厚みは、30〜300μmが好ましいが、50〜200μmのものがより好ましい。
また、前記透明基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、フロートガラスや青板ガラス、白板ガラス、グリーンガラス、BK−7などの光学用ガラスなどのガラスやポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂の板ないし成型体が挙げられる。
またこれらの基材は、平坦なものでも、湾曲したものでもよい。
【0073】
このような第2の形態からなる偏光板の構成例を図6E(図7C)に示す。該構成例においては、偏光フィルム13(23)の一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材14a、14b(28a、28b)を有するように構成されている。
【0074】
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法としては、少なくとも、偏光フィルム積層工程と、積層体形成工程とを含み、更に目的に応じて、他の工程を含んでなる。
【0075】
<偏光フィルム積層工程>
偏光フィルム積層工程は、本発明の前記偏光フィルムの製造方法により製造された偏光フィルムにおける、延伸性支持体が形成された一の面と反対側の面に、基材を積層させた後、前記延伸性支持体を前記偏光フィルムの一の面から剥離させる工程である。
【0076】
前記延伸性支持体としては、本発明の前記偏光フィルムの製造方法に用いる延伸性支持体を適用することができる。
即ち、前記偏光フィルムと前記基材との積層・貼合を行う方法として、前記偏光フィルムと前記基材との密着性が良好な場合には、ラミネート機やカレンダー処理などによる圧着や熱ラミネート機による熱ラミネートなどにより接着される。また、密着性に不足がある場合には、接着剤や粘着剤、粘着シートを介して前記偏光フィルムと前記基材との積層・貼合を行ってもよい。前記接着剤や前記粘着シートを用いる場合は、光学的等方性で可視光域で透明な接着剤が用いられる。
このような接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤やアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤の他、パナクリーンPD−S1(パナック社製)などの粘着シートなどが用いられる。
また、前記基材としては、本発明の前記偏光板における、第1の基材と、第2の基材と同様の基材を用いることができる。
【0077】
前記偏光フィルムから前記延伸性支持体を剥離させる方法としては、特に制限はなく、
巻き取り機などを用いて行うことができる。この時、帯電する場合は、イオン風発生機などを用いて徐電を行ってもよい。
【0078】
<積層体形成工程>
前記積層体形成工程は、偏光フィルムにおける基材が配された一の面と反対側の面に、更に基材を配し、前記偏光フィルムにおける一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を配した積層体を形成する工程である。
前記積層体形成工程において、前記偏光フィルムの面上に基材を配設する方法としては、前記偏光フィルム積層工程と同様の方法により行うことができる。
【0079】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、合わせ化工程などが挙げられる。
【0080】
−合わせ化工程−
前記合わせ化工程は、前記積層体を、該積層体における一つの面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面側から、更に他の基材で合わせ込む工程である。
前記他の基材としては、特に制限はないが、ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂の基板ないし成型体が好ましく、ガラスがより好ましい。
前記ガラスとしては、後述する乗り物用映り込み防止窓に用いられる基材ガラスと同様の構成とすることもできる。
前記基材を合わせ込む方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の合わせガラスの製造方法が挙げられる。
【0081】
前記合わせ化工程は、本発明の前記偏光板における、2つの第1の基材で、偏光フィルムを挟持させた、積層体を第2の基材で合わせ込む形態の偏光板の製造工程として行うことができる。
前記第1の基材上に偏光フィルムを配設する方法としては、特に制限はなく、例えば、熱ラミネート法、カレンダー法、前記接着剤や前記粘着シートを使用する貼合せ方法などが挙げられる。
前記熱ラミネート法としては、例えば、ヒートローラーを具備した熱ラミネート機により貼合することができる。
また、前記接着剤としては、基材、及び偏光フィルムの双方となじみのよいバインダーを含む溶液を接着剤として用いて貼合してもよい。
例えば、基材がポリビニルブチラールフィルム(PVBフィルム)である場合には、ポリビニルブチラールを含むイソプロパノール溶液をPVBフィルムに塗布し、偏光フィルムを貼合せ、乾燥後、延伸性支持体を剥離すればよい。
この時、接着剤として使用するポリビニルブチラール溶液には、目的に応じて可塑剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、赤外線遮蔽剤等を含んでもよい。
また、接着剤として使用するポリビニルブチラール溶液に含まれる溶媒としては、PVBフィルムを溶解させるものでもよいが、偏光フィルムを溶解させないものが好ましい。
このような溶媒としては、例えば、イソプロパノールやトルエン、アセトン、メチルエチルケトン等の溶媒を挙げらることができ、これらは1種類で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記基材には、更に反射防止膜、ハードコート層、アンチグレア層、アンチグレアハードコート層などの光学機能性層や親水性処理や撥水処理などの表面処理層などを付与していてもよい。
なお、これらの機能性層の基材への付与は、偏光フィルムを貼合する前でも貼合した後でもよい。
【0083】
前記偏光板の製造工程を図面を用いて具体的に説明する。ここでは、例示として、以下に述べる製造工程からなる偏光板の製造方法を説明するが、本発明は、これら製造工程に限定されない。
【0084】
−第1の形態−
先ず、前記偏光フィルムの製造方法により、前記偏光フィルムを製造する。
前記偏光フィルムとしては、延伸性支持体12上に、二色性異方性金属ナノ粒子10を含む組成物を塗布、乾燥させ、組成物層11を形成し(図6A参照)、組成物層11が形成された延伸性支持体12を、組成物層11とともに延伸することで、延伸性支持体12上に偏光フィルム13を得るようにする(図6B参照)。
次に、この延伸性支持体12上に偏光フィルム13が形成された積層体フィルム17において、延伸性支持体12が形成されていない面を、接着剤層(粘着シート層)16を介して第1の基材14aに貼合わせる(図6C参照)。
貼合せ後、延伸性支持体12を剥離し、更に、第1の基材14aを偏光フィルム13にラミネートさせる(図6D参照)。
同様に、第1の基材14bを、偏光フィルム13における延伸性支持体12が剥離された面にラミネートさせ、第1の基材14a、14bを偏光フィルム13のそれぞれの面に定着させる(図6E)。
なお、定着は、遂次でも同時でもよい。また、第1の基材同士が接着しないように、第1の基材14a、14bの間に、セパレーターフィルム(ポリプロピレンフィルム等)を挟んでもよい。
このようにして、第1の基材14a、14bで偏光フィルム13をサンドイッチ状に挟持させた積層体からなる偏光板100を得ることができる。
【0085】
また、第1の基材14a、14bを中間膜として、第2の基材15a、15bで合わせ込んだ偏光板(例えば、合わせガラス)を製造する場合には、公知の合わせガラスの製造方法により製造することができる(図6F参照)。
このような方法としては、例えば、偏光板100を両側から基材15a、15b(ガラス板)で合わせ込み、熱ラミネート等により予備圧着した後、150℃の温度条件で30分間オートクレーブ中で加熱することにより、基材15a、15b(ガラス板)で合わせ込み合わせ込んだ態様の偏光板(合わせガラス)150を製造することができる(図6F参照)。
【0086】
−第2の形態−
第2の形態では、第1の形態と異なり、接着剤層(粘着シート層)を用いないで偏光板を製造する。
先ず、第1の形態における、積層体フィルム17の作製(図6A、図6B参照)と同様にして、延伸性支持体22上に偏光フィルム23を形成した積層体フィルム27を作製する。
次に、この積層体フィルム27において、延伸性支持体22が形成されていない面を直接、第1の基材28aに貼合わせる(図7A参照)。
貼合せ後、延伸性支持体22を剥離し、更に、第1の基材28aを偏光フィルム23にラミネートさせる(図7B参照)。
同様に、第1の基材28bを、偏光フィルム23における延伸性支持体22が剥離された面にラミネートさせ、第1の基材28a、28bを偏光フィルム23のそれぞれの面に定着させる(図7C)。
なお、定着は、遂次でも同時でもよい。
このようにして、第1の基材28a、28bで偏光フィルム23をサンドイッチ状に挟持させた積層体からなる偏光板200を得ることができる。
【0087】
なお、接着剤層(粘着シート層)を用いない第2の形態においても、接着剤層(粘着シート層)を用いる第1の形態と同様にして、基材28a、28bを中間膜として、別の基材25a、25bで合わせ込んだ偏光板(例えば、合わせガラス)250として製造することができる(図7D参照)。
【0088】
また、図7Dに示す偏光板(合わせガラス)250の製造方法の他の態様として、第2の基材25a(ガラス板)上に、第1の基材28a(中間膜)と、積層体フィルム27とを順に貼合させた後、積層体フィルム27から延伸性支持体22を剥離し、この延伸性支持体22を剥離した面に、更に第1の基材28b(中間膜)と、第2の基材25b(ガラス等の基板)を順に載置させ、合わせ化することにより偏光板(合わせガラス)250を製造してもよい。
【0089】
また、図7Dに示す偏光板(合わせガラス)250の製造方法の他の態様として、両面に第1の基材28a、28bが配された偏光フィルム13からなる積層体(100)を、第2の基材25a、25bで挟み込んだ状態で、熱ラミネートさせ、合わせ化することにより偏光板(合わせガラス)250を製造してもよい。
【0090】
−第3、4の形態−
前記第1の形態、第2の形態における製造工程について、第2の基板による合わせ化の工程は、必ずしも必要でなく、第1の基材が、例えば、TACフィルム等の前記保護フィルム、ガラス板等の透明基板としてなる場合には、前記第1の形態における、図6Eに示す偏光板100(第3の形態)、又は、前記第2の形態における、図7Cに示す偏光板200(第4の形態)として、製造することができる。
【0091】
−その他の形態−
また、偏光板の層構成としては、前記第1〜4の形態における偏光フィルムのそれぞれの面対してに、同種の基材を配する必要はなく、目的に応じて適宜選択して、配することができる。
また、偏光板には、更に、反射防止層等の前記表面処理層を、配して構成することができる。
具体的には、以下のように構成することができる。
【0092】
図8は、反射防止層39/ガラス基板35/粘着シート36/偏光フィルム33/粘着シート36/TACフィルム38の順で配した層構成からなる偏光板300を示す。
この偏光板300は、ガラス基板35に、反射防止層39上、及び前記第1〜4の形態と同様の工程により、粘着シート36、偏光フィルム33、粘着シート36、TACフィルム38を順に配設することにより、製造することができ、反射防止層39付ガラス基盤35との貼り合わせは、ラミネーターを通すことで行うことができる。
【0093】
また、反射防止層は、TACフィルム等の保護フィルム上に配設することもでき、このような構成を図9に示す。図9に示す偏光板350は、ガラス基板35/粘着シート36/偏光フィルム33/粘着シート36/TACフィルム38/反射防止層39の順で配した層構成を有する。
【0094】
(乗り物用映り込み防止窓)
本発明の乗り物用映り込み防止窓は、基材と、前記本発明の偏光フィルムとを有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。前記その他の層として、反射防止膜を有することが好ましい。
前記偏光フィルムとしては、本発明の前記偏光フィルムが用いられる。
前記偏光フィルム、基材の乗り物内側の面(外光が入射しない側の面)に有することが好ましい。
【0095】
前記乗り物用映り込み防止窓では、基材面と水平基準面とのなす角が20〜50度であり、乗り物内の運転者から見て、前記偏光フィルム中における異方性吸収子の平均吸収軸方向が基材面と水平基準面とが交わる線に対し±30度未満の角度で配向していることが好ましい。
ここで、前記乗り物用映り込み防止窓は、図10に示すように、前記フロントガラスを構成する基材の光入射側でない面(うら面)に形成することが好ましい。また、フロントガラスが2枚の板ガラスの間に中間層を有する合わせガラスの場合には、図11に示すように前記偏光フィルムを含む積層体からなる中間層6とするか、又は図12に示すように合わせガラスの光入射側でない面(うら面)に形成することが好ましい。
【0096】
本発明の乗り物用映り込み防止窓は、図10に示すように、空力抵抗を小さくするため、乗り物のフロントガラスとダッシュボード5表面(水平基準面)とのなす角は20〜50度が好ましく、25〜40度がより好ましい。
前記乗り物としては、乗り物のフロントガラスと水平基準面とのなす角が20〜50度であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船、などが挙げられ、これらの中でも、自動車が特に好ましい。
【0097】
次に、図10に基づき、本発明の乗り物用映り込み防止窓を用いた映り込み防止の原理について説明する。上述したように、フロントガラス55は、通常、水平基準面から約30度の角度を付けて設けられている。この際、運転時に運転者の目に入ってくる車内のダッシュボード5の影はフロントガラス内面に約60度の入射角で反射する光である。
ここで、異方性吸収子Pがガラスの水平面に対し略水平に配向している偏光フィルム53の透過率を75%とすると、太陽光I0は水平偏光成分Te0とそれに垂直な偏光成分Tm0に分離して考えることができる。フロントガラス1を通過したTe0及びTm0は異方性吸収子Pを通ることでTe0は強度半分に減衰してTe1になり、Tm0は殆どそのまま通ってTm1になる。ダッシュボード5で散乱した光I2をTe0及びTm0で表すと、以下の通りである。
I2=Te2+iTm2
=aTe1+aiTm1(ただし、aはダッシュボードの反射率である)
≒(a/2)Te+aiTm0
光I2の垂直成分aiTm0は、フロントガラスへの入射角がほぼブリュスター角であることから、そのままI3及びI7の経路を通って外へ放射されてしまう。
ここで、前記ブリュスター角は、屈折率の異なる物質の界面で反射される光が完全に偏光となる入射角度である。
2つの屈折率の異なる材質の界面にある角度をもって光が入射する時、入射角に平行偏光成分(P偏光)と、垂直な偏光成分(S偏光)とでは反射率が異なり、図13に示すように、P偏光はブリュスター角で0まで減少し、その後増加する。S偏光は単調に増加する。このように屈折率が1.46のガラスに屈折率1の空気中から入射する可視光のブリュスター角は約56度である。
【0098】
次に、光I2の水平成分(a/2)Teは、フロントガラスのうら面の最表面の反射防止膜で約3%程度反射された成分が光I6となって運転者の目に入ってくる。また、(a/2)Teはフロントガラス内部へ残りの97%が入射し、その半分が外部へ放射され、半分が内部へ反射してI4となり、それが異方性吸収子Pによって、更に半分吸収されて光I5となって運転者の目に入ってくる。
I6=3/100・(a/2)Te
=(3a/200)Te
I5=1/2・1/2・0.97・(a/2)Te
=(0.97/8)・aTe
よって、運転者の目に入ってくるダッシュボードの影を光強度Ihで表すと、下記式で示すとおりである。
Ih=I5+I6
=0.97/8・aTe+(3a/200)Te
また、ダッシュボードの反射率aを約10%とおくと、下記式の通りである。
Ih=(0.0121+0.0015)Te
=0.0136Te
その結果、ダッシュボードの影の光強度Ihは1.36%となり、素ガラスの場合の32%に比べて、約1桁以上低減される。
【0099】
<基材>
本発明の乗り物用映り込み防止窓に用いられる基材としてはガラスが最も適している。これは、ガラスは風雨に晒される環境において乗り物の概略寿命である12年の耐久性を持ち、偏光を乱さない、と言う点において最も実績があるからである。しかし、最近ではポリマーの板状成形物においてもノルボルネン系高分子等のように高耐久性であって等方性が高く偏光を乱しにくいプラスチックが提供されており、基材としてガラス以外を用いることも可能である。
【0100】
−基材ガラス−
基材ガラスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、単層ガラス、合わせガラス、強化合わせガラス、複層ガラス、強化複層ガラス、合わせ複層ガラスなどが挙げられる。
このようなガラスを構成する板ガラスの種類としては、例えば透明板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、強化板ガラス、熱線反射板ガラス、熱線吸収板ガラス、Low−E板ガラス、その他各種板ガラスなどが挙げられる。
なお、前記基材ガラスは、透明ガラスであれば無色透明ガラス及び有色透明ガラスのどちらであってもよい。
前記基材ガラスの厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2〜20mmが好ましく、4〜10mmがより好ましい。
【0101】
−合わせガラス−
合わせガラスは、2枚の板ガラスの間に中間層を介在させて一体化したものである。このような合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することがなく安全であるため、自動車等の乗り物のフロントガラス、建築物等の窓ガラスとして広く用いられている。自動車用合わせガラスの場合には、最近では軽量化を図るため相当薄いものが用いられており、1枚のガラスは厚みが1〜3mmであり、該ガラス2枚を厚みが0.3〜1mmの粘着層で貼り合わせて、合計厚み約3〜6mmの合わせガラスとしている。
【0102】
前記2枚の板ガラスとしては、上述した各種板ガラスを目的に応じて適宜使用することができる。
前記中間層に用いられる基材としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力等の諸性能のバランスに優れた中間層が得られることから、ポリビニルアセタール系樹脂が特に好ましい。
【0103】
前記ポリビニルアセタール系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール樹脂、PVAとn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。
前記ポリビニルアセタール系樹脂の合成に用いられるPVAとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均重合度が200〜5,000のものが好ましく、500〜3,000のものがより好ましい。前記平均重合度が200未満であると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を用いた中間層の強度が弱くなりすぎることがあり、5,000を超えると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を成形する際に不具合が生じることがある。
前記ポリビニルアセタール系樹脂は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アセタール化度が40〜85モル%であるものが好ましく、50〜75モル%のものがより好ましい。前記アセタール化度が40モル%未満又は85モル%を超えるポリビニルアセタール系樹脂は反応機構上、合成が困難となることがある。前記アセタール化度は、JIS K6728に準拠して測定することができる。
【0104】
前記中間層には、前記熱可塑性樹脂以外にも、必要に応じて例えば可塑剤、顔料、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外吸収剤などを添加することができる。
前記中間層の成形方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂及びその他の成分を含有する組成物を均一に混練りした後、押出し法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等の従来公知の方法によりシート状に作製する方法などが挙げられる。
前記中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3〜1.6mmが好ましい。
前記窓用映り込み防止窓においては、前記中間層が、本発明の前記偏光フィルムであることが生産性、耐久性などの点から好ましい。前記中間層が前記偏光フィルムを含む積層体からなる場合には、該中間層は異方性吸収子を含有し、該異方性吸収子を略水平方向に配向させること以外は同様である。なお、前記偏光フィルムは合わせガラスの片方の面に設けることもできる。
【0105】
前記合わせガラスの作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2枚の透明なガラス板の間に中間膜を挟み、この合わせガラス構成体を例えばゴムバッグのような真空バッグの中に入れ、この真空バッグを排気系に接続して、真空バッグ内の圧力が約−65〜−100kPaの減圧度となるように減圧吸引(脱気)しながら温度が約70〜110℃の予備接着を行った後、この予備接着された合わせガラス構成体をオートクレーブの中に入れ、温度120〜150℃、圧力0.98〜1.47MPaの条件で加熱加圧して本接着を行うことにより、所望の合わせガラスを得ることができる。
【0106】
<反射防止膜>
前記反射防止膜は、前記基材の少なくとも片方の最表面に反射防止膜を有することが好ましく、基材の光入射側でない面(乗り物内側の面)に偏光フィルムと、該偏光フィルム上に反射防止膜とを有することがより好ましい。
【0107】
前記反射防止膜は、実使用上充分な耐久性、耐熱性を有し、例えば60度入射での反射率を5%以下に抑えることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)微細な表面凹凸を形成した膜、(2)高屈折率膜と低屈折率膜を組み合わせた2層膜の構成、(3)中屈折率膜、高屈折率膜、及び低屈折率膜を順次積層した3層膜構成などが挙げられる。これらの中でも、(2)及び(3)が特に好ましい。
これら反射防止膜は、基材ガラス表面に直接ゾルゲル法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法などで形成してもよい。また、透明支持体上にディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法による塗布により反射防止膜を形成し、基材ガラス表面に反射防止膜を粘着又は接着してもよい。
【0108】
前記反射防止膜は、上述したとおり、透明支持体上に低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(高屈折率層)、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。
低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層を二層とする場合には、透明基材に中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。このような構成の反射防止膜は、「高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率」の関係を満足する屈折率を有するように設計される。なお、各屈折率層の屈折率は相対的なものである。
【0109】
−透明基材−
前記透明基材としてプラスチックフィルムを用いることが好ましい。このプラスチックフィルムの材料の例としては、セルロースアシレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトンなどが挙げられる。
【0110】
−高屈折率層及び中屈折率層−
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを含有する硬化性膜からなることが好ましい。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
特に好ましくは、Co、Zr、ALから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以下、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられ、特に好ましい元素はCoである。
Tiに対する、Co、Al、Zrの総含有量は、Tiに対して0.05〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜7質量%が更に好ましく、0.3〜5質量%が特に好ましく、0.5〜3質量%が最も好ましい。
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部や表面に存在する。Co、Al、Zrが二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在してもよい。
また、他の好ましい無機粒子として、チタン元素と酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称することもある)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物は、Coイオン、Zrイオン、及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。
ここで、該酸化物の屈折率が1.95以上となる金属酸化物の金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、Biなど挙げられ、これらの中でも、Ta、Zr、Sn、Biが特に好ましい。
複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を超えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましく、0.3〜3質量%が最も好ましい。
ドープした金属イオンは、金属イオン、金属原子のいずれの状態で存在してもよく、複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することが好ましい。表面と内部との両方に存在することがより好ましい。
【0111】
上記のような超微粒子とするには、粒子表面を表面処理剤で処理する方法、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法、及び、特定の分散剤を併用する方法等が挙げられる。
粒子表面を表面処理剤で処理する方法に挙げられる表面処理剤としては、例えば、特開平11−295503号公報、特開平11−153703号公報、及び特開2000−9908号公報に記載されたシランカップリング剤等、特開2001−310432号公報等に記載されたアニオン性化合物又は有機金属カップリング剤が開示されている。
また、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法としては、特開2001−166104号公報、及び米国特許公開2003/0202137号公報等に記載の技術を用いることができる。
更に、特定の分散剤を併用する方法は、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858明細書、及び特開2002−2776069号公報等に記載の技術が挙げられる。
【0112】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性、及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、特開2001−315242号公報、特開2001−31871号公報、特開2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキシドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されているものが挙げられる。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚みは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。中屈折率層の厚みは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
【0113】
−低屈折率層−
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなることが好ましい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50がより好ましい。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等からなる薄膜層の手段を適用できる。
【0114】
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50が好ましく、1.36〜1.47がより好ましい。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性、若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、特開平11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、及び特開2004−45462号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としては、ポリシロキサン構造を有する化合物が好適であり、これらの中でも、高分子鎖中に硬化性官能基又は重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが特に好ましい。例えば、反応性シリコーン〔例えばサイラプレーン(チッソ株式会社製)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)〕などが挙げられる。
【0115】
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時又は塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。前記重合開始剤、及び前記増感剤としては、従来公知のものを用いることができる。
【0116】
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、特開昭58−147483号公報、特開昭58−147484号公報、特開平9−157582号公報、特開平11−106704号公報等に記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、特開2001−48590号公報、特開2002−53804号公報に記載の化合物等)等が挙げられる。
前記低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物を含有することが好ましい。
特に、前記低屈折率層はその屈折率上昇をより一層少なくするために、中空の無機微粒子を用いることが好ましい。前記中空の無機微粒子は屈折率が1.17〜1.40が好ましく、1.17〜1.37がより好ましく、1.17〜1.35が更に好ましい。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空の無機微粒子を形成している外殻のみの屈折率を表すものではない。
前記低屈折率層中の中空の無機微粒子の平均粒径は、該低屈折率層の厚みの30〜100%が好ましく、35〜80%がより好ましく、40〜60%が更に好ましい。
即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、無機微粒子の粒径は30nm以上100nm以下が好ましく、35nm以上80nm以下がより好ましく、40nm以上60nm以下が更に好ましい。
ここで、前記中空の無機微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定することができる。
【0117】
その他の添加剤としては、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
【0118】
前記低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよいが、安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
前記低屈折率層の厚みは、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることが更に好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
【0119】
前記乗り物用映り込み防止窓におけるその他の層としては、必要に応じて例えば、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層、保護層等を設けてもよい。
【0120】
−乗り物用映り込み防止窓の用途等−
本発明の乗り物用映り込み防止窓は、以上説明したように、異方性吸収子の長軸が前記基材面に対し略水平に配向している偏光フィルムを有し、優れた光学的異方性(異方性吸収、異方散乱性、偏光、複屈折性等)を備えているので、自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用窓ガラスとして好適に用いられるが、乗り物用窓以外にも、例えば一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。
【0121】
本発明の乗り物用映り込み防止窓は、以上説明したように、自動車等の乗り物のフロントガラスに用いた場合には、車内のダッシュボード等の構造物の反射像や外灯等の映り込みを防止することができ、運転者の前方の安全視界が確保される。また、本発明の乗り物用前窓を使用することにより、従来は用いることのできなかった明るい色や絵柄の付いた意匠性の高いダッシュボードを採用することが可能になる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0123】
(実施例1)
<二色性異方性金属ナノ粒子の合成(粒子形成工程)>
以下の種晶形成工程、コアナノロッド形成工程、及びシェル形成工程により、二色性異方性金属ナノ粒子の合成を行った。
【0124】
−種晶(ナノ粒子)形成工程−
100mMのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド、和光純薬株式会社製)水溶液100mLに、10mMの塩化金酸水溶液(関東化学株式会社製)5mLを添加し、更に直前に溶解した10mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液10mLを添加し、強攪拌することにより、金ナノ粒子(種晶)を形成した。
【0125】
−コアナノロッド形成工程−
100mMのCTAB水溶液1,000mLに、10mMの硝酸銀水溶液100mL、10mMの塩化金酸水溶液200mL、及び100mMのアスコルビン酸水溶液50mLを添加し、攪拌することにより、無色透明の液を得た。
更に、前記金ナノ粒子(種晶)水溶液100mLを添加し、2時間攪拌することにより、金ナノロッド水溶液を得た。
金ナノロッド水溶液を5℃で12時間静置することにより析出したCTABの結晶をナイロン製の濾布(#200)で濾別し、CTABを粗除去した金ナノロッド分散液を得た。この時のCTABの回収率は、約75%であった。
【0126】
−−評価−−
得られた金ナノロッドの吸収スペクトルを紫外可視赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、金ナノロッドの短軸の吸収に帰属する510nmと、長軸に帰属する800nmのピークを示した。
得られた金ナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、図14のTEM写真に示すように、短径が6nm、長径が21nm、アスペクト比が3.5、球相当半径が5.7nmのロッド状粒子であった。
【0127】
−シェル形成工程−
1質量%のPVP(ポリビニルピロリドンK30、和光純薬株式会社製)水溶液8kgに、前記金ナノロッド分散液を2kg、10mMの硝酸銀水溶液100ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液100mlを添加し、攪拌した。更に0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液280mlを5分間かけて添加し、溶液のpHを7〜8に調整することにより、銀を金ナノロッド表面に析出させて、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、ACP0013)を用いて限外濾過処理することにより、10倍に濃縮し、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。この時の分散液の電気伝導度は280mS/mであった。
次に、得られた金コア銀シェルナノロッド分散液について、以下のようにして、光学特性、粒子サイズ、コアナノロッドとシェルの体積比を測定した。
【0128】
<光学特性>
得られた金コア銀シェルナノロッドについて、紫外可視近赤外分光度計(日本分光株式会社製、V−670)で吸収スペクトルを測定したところ、図15に示すように、短軸の吸収に帰属する410nmと、長軸に帰属する650nmのピークを示した。
【0129】
<粒子サイズ、球相当半径、コアナノロッドとシェルの体積比の評価>
得られた金コア銀シェルナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、図16のTEM写真に示すように、短径が12nm、長径が24nm、アスペクト比が2.0、球相当半径9.4nmのロッド状粒子であることが確認できた。
また、コアナノロッドとシェルの体積比(シェル/コアナノロッド)をTEM観察により算出したところ、3.6であった。
【0130】
(2)延伸性支持体への金属ナノロッド含有PVA膜の形成(組成物層形成工程)
次に、10質量%のPVA124水溶液(株式会社クラレ製)80.0g、純水80.0g、及び得られた前記金コア銀シェルナノロッド分散液50.0gを混合した組成物を、約A4サイズの清浄な未延伸ポリエチレンテレフタレートベース(延伸性支持体、PETMAX; A565GE2R/片面帯電防止コート付/300μm厚み/東洋紡績株式会社製)に、ワイヤーバー(#30)を用いてバーコート塗布し、60℃で20分間乾燥させ、延伸性支持体上に金属ナノロッド含有PVA層を形成した。
【0131】
<分光スペクトルの測定>
得られた金属ナノロッド含有PVA層を形成した延伸性支持体フィルムの吸収スペクトルを紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、含有される金銀複合ナノロッドに由来する吸収を示した。
【0132】
<組成物層膜厚の測定>
金属ナノロッド含有PVA層の膜厚は、該PVA層を延伸性支持体から剥離し、膜厚測定装置(レーザー顕微鏡VK−8700、キーエンス社製)を用いて測定することとし、サンプル数(n=10)の平均値で評価した。組成物形成工程(2)で形成した組成物層の乾燥膜厚は、3.1μmであった。
【0133】
(3)組成物層と延伸性支持体の延伸(延伸工程)
前記組成物形成工程で延伸性支持体上に形成した金属ナノロッド含有PVA塗布層を、延伸性支持体とともに100℃にて一軸4倍縦延伸を行い、幅約20cmの延伸性支持体上に実施例1の偏光フィルムを得た。
【0134】
<偏光フィルムの厚みの評価>
得られた金属ナノロッド含有PVA偏光フィルムの膜厚は、形成した偏光フィルム層を延伸したポリエチレンテレフタレート支持体から剥離し、膜厚測定装置(レーザー顕微鏡VK−8700、キーエンス社製)を用いて測定することとし、サンプル数(n=10)の平均値で評価した。延伸工程(3)で形成した偏光フィルムの乾燥膜厚は、1.6μmであった。
【0135】
<透過率及び配向度の評価>
実施例1の偏光フィルムの偏光性(吸収スペクトルの偏光依存性、光透過率、配向度)を評価した。
吸収スペクトルの偏光依存性としては、紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)の試料側の光路に偏光子を1枚設置し、偏光子と偏光板試料の延伸軸のなす角度を0°、45°、90°に変えて、偏光吸収スペクトルを測定することにより行った。結果を図17に示す。
光透過率は、45°で測定した吸収スペクトルからJIS(R3106-1998)記載の視感度係数補正をした値として評価を行った。実施例1の偏光フィルムの光透過率は、73%であった。
また配向度は、0°と90°のスペクトルから金銀複合ナノロッドの長軸由来の極大吸収波長の吸光度の比率を配向度Sとして、以下のように評価した。
配向度Sが1.00≧S>0.90を○、0.90≧S>0.85を△、0.85≧Sを×とした。
なお、配向度Sは、下記数式1で表される。実施例1の偏光フィルムの配向度は、0.98であり、○であった。
<数式1>
S=(A0deg.−A90deg.)/(A0deg.+2A90deg.)
【0136】
−合わせガラス偏光板の製造−
(4)PVB(ポリビニルブチラール)フィルムへの積層(偏光フィルム積層工程)
10cm×10cmに切り出したPVB中間膜(基材、厚み0.38mm、ソルーシア社製)の片面に、平均重合度700のポリビニルブチラール(和光純薬工業株式会社製)10質量%のイソプロパノール溶液をバーコーター(塗布バー#30)で塗布し、その塗布面上に、偏光フィルムのうち延伸性支持体が形成されていない面を重ね、0.5kgの重しを載せた状態で50℃2時間放置した。
その後、延伸性支持体のみを剥離し、偏光フィルムの片面にPVB中間膜を配した状態とした。
更に、前記PVB中間膜と同様のPVB中間膜を用意し、その片面に平均重合度700のポリビニルブチラール(和光純薬工業株式会社製)10質量%のイソプロパノール溶液をバーコーター(塗布バー#30)で塗布したPVB中間膜(厚み0.38mm、ソルーシア社製)を、前記偏光フィルムにおける延伸性支持体を剥離した面に重ね、0.5kgの重しを載せた状態で50℃で4時間放置し、偏光フィルムの両面をPVB中間膜でサンドイッチ状に挟み込んだ積層体を得た。
【0137】
(5)合わせガラス化工程
前記積層体を5cm×5cmの厚み2mmのクリアガラス2枚で挟みこみ、重ね合わせた状態でガラス接合真空バッグに入れ、2kPaの真空度で30分間脱気し、脱気状態のまま100℃のオーブンに入れ、30分間加熱し、ガラスと中間膜を仮接着した。
仮接着した積層体をオートクレーブに入れ、135℃、12kg/cm2の圧力の条件下で、1時間加熱し、実施例1における偏光フィルムを挟み込んだ合わせガラスからなる偏光板を作製した。
【0138】
<合わせガラス化時の収縮量の評価>
合わせガラス化時の収縮量は、合わせガラス化前の5cm×5cmの中央線(偏光フィルムの延伸方向に直交する中央線)の位置に対応する偏光フィルムの位置を基準線とし、合わせガラス化処理後における基準線に対応する位置と、もとの基準線との変化を、基準線とフィルムの端部で囲まれるフィルムサイズの変化としてみたときの比率を収縮率Rとし、該収縮率Rを測定することにより、以下のように評価した。収縮率Rが1.00≧R>0.95を○、0.95≧R>0.90を△、0.90≧Rを×とした。
実施例1における、合わせガラス偏光板の収縮率Rを測定した結果は、0.98であり、○であった。
【0139】
(6)耐久性評価
<耐久性評価>
合わせガラス偏光板の耐久性は、試験片をサーモボックスに入れ、110℃で、1,000h連続加熱した時の吸収極大波長における配向度Sの変化を測定し、以下のように評価した。
加熱前の配向度Sに対する加熱後の配向度Sの比率が0.7以下になった時間を耐久性保持時間Tとし、耐久性保持時間Tが1,000時間≧Tを○、1,000時間>T>500時間を△、500時間≧Tを×とした。
実施例1における、合わせガラス偏光板の耐久性保持時間Tを評価した結果は1,000時間以上であり、○であった。
【0140】
−保護フィルム挟み込み偏光板の製造−
前記(1)粒子形成工程、(2)組成物層形成工程、及び(3)延伸工程により、形成された偏光フィルムを用いて、以下のように、2つの保護フィルムで偏光フィルムを挟み込んだ積層体からなる偏光板を製造した。
【0141】
(7)TACフィルムへの積層
A4サイズ大にカットしたTACフィルム(トリアセチルセルロース樹脂フィルム、フジタック;厚み80μm;富士フイルム株式会社製)の片面に粘着シート(PD−S1;パナック社製)を貼合した保護フィルムを2枚作製し、まず1枚目の保護フィルムの粘着面に、偏光フィルムにおける延伸性支持体が形成されていない面を重ね、ラミネーターを通すことにより貼合した。
延伸性支持体を剥離した後、残り1枚の保護フィルムの粘着面を、偏光フィルムにおける延伸性支持体を剥離した面に重ね合わせてラミネーターを通し、2つのTACフィルムでサンドイッチ状に偏光フィルムを挟み込んだ積層体を形成し、実施例1における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
【0142】
<カール量評価>
保護フィルム挟み込み偏光板のカール量は、80℃のサーモボックスで2時間加熱した後、実験台水平面に積層体を置いたときの実験台水平面からの積層体端部のカール量を図18に示すように測定し、以下のように評価した。カール量Cが5mm>Cを○、10mm>C≧5mmを△、C≧10mmを×とした。
実施例1における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量Cは、2mmであり、○であった。
【0143】
<耐久性評価>
保護フィルム挟み込み偏光板の耐久性は、試験片をサーモボックスに入れ、80℃で1,000時間連続加熱した時の吸収極大波長における配向度Sの変化を測定し、以下のように評価した。
加熱前の配向度Sに対する加熱後の配向度Sの比率が0.7以下になった時間を耐久性保持時間T’とし、耐久性保持時間T’が1,000時間≧Tを○、1,000時間>T>750時間を△、750時間≧Tを×とした。
実施例1における、保護フィルム挟み込み偏光板の耐久性保持時間T’を評価した結果は1,000時間以上であり、○であった。
【0144】
(実施例2)
実施例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を50.0gから25.0gに変え、また使用するワイヤーバーの番手を#30から#50に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の偏光フィルムを製造した。
実施例2における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、6.5μmであった。また、実施例2の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率71%、配向度S=0.98(○)であった。
【0145】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例2の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における合わせガラス偏光板を製造した。
実施例2における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、それぞれR=0.96(○)、T≧1,000時間(○)であった。
【0146】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例2の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
実施例2における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=2mm(○)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0147】
(実施例3)
実施例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を50.0gから12.5gに変え、また使用するワイヤーバーの番手を#30から#0(ワイヤーなし)に代え、500μmの厚みのアプリケーターを使用して塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の偏光フィルムを製造した。
実施例3における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、12.3μmであった。また、実施例3の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率74%、配向度S=0.97(○)であった。
【0148】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例3の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における合わせガラス偏光板を製造した。
実施例3における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.95(△)、T≧1,000時間(○)であった。
【0149】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例3の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
実施例3における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=3mm(○)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0150】
(実施例4)
実施例3における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を12.5gから10.0gに変え、500μmの厚みのアプリケーターに代えて1,000μmの厚みのアプリケーターを使用して塗布したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4の偏光フィルムを製造した。
実施例4における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、16.8μmであった。また、実施例4の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率72%、配向度S=0.95(○)であった。
【0151】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例4の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における合わせガラス偏光板を製造した。
実施例4における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.94(△)、T≧1,000時間(○)であった。
【0152】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例4の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
実施例4における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=4mm(○)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0153】
(実施例5)
実施例4における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を12.5gから7.0gに変えたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5の偏光フィルムを製造した。
実施例5における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、23.1μmであった。また、実施例5の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率71%、配向度S=0.92(△)であった。
【0154】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例5の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における合わせガラス偏光板を製造した。
実施例5における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.93(△)、T≧1,000時間(○)であった。
【0155】
実施例1の偏光フィルムに代えて、実施例5の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
実施例5における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=5mm(△)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0156】
(比較例1)
実施例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を50.0gから6.0gに変え、また使用するワイヤーバーの番手を#30から#0(ワイヤーなし)に代え、1,500μmの厚みのアプリケーターを使用して塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の偏光フィルムを製造した。
比較例1における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、28.1μmであった。また、比較例1の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率73%、配向度S=0.89(×)であった。
【0157】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例1の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例1における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.91(△)、T≧1,000時間(○)であった。
【0158】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例1の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例1における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=5mm(△)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0159】
(比較例2)
比較例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を6.0gから4.0gに変えたこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2の偏光フィルムを製造した。
比較例2における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、38.5μmであった。また、比較例2の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率73%、配向度S=0.87(×)であった。
【0160】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例2の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例2における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.89(×)、T≧1,000時間(○)であった。
【0161】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例2の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例2における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=6mm(△)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0162】
(比較例3)
比較例1における、(2)組成物層形成工程において用いる、金コア銀シェルナノロッド分散液の量を6.0gから3.0gに変え、500μmの厚みのアプリケーターに代えて2,000μmの厚みのアプリケーターを使用して塗布したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例3の偏光フィルムを製造した。
比較例3における、(3)延伸工程を行う前の組成物層の厚みは、50.7μmであった。また、比較例3の偏光フィルムの光透過率、配向度Sを測定、評価した結果は、それぞれ光透過率70%、配向度S=0.84(×)であった。
【0163】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例3の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例3における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.85(×)、T≧1,000時間(○)であった。
【0164】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例3の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例3における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=8mm(△)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0165】
(比較例4)
ポリビニロンフィルム(VF−P#7500、株式会社クラレ製)を、室温の水に60秒間浸した後に、40℃のヨウ素(和光純薬工業株式会社製、0.033質量%)、及びヨウ化カリウム(和光純薬工業株式会社製、0.33質量%)水溶液に10秒間浸した。
次いで、60℃のホウ酸(和光純薬工業株式会社製、4.0質量%)、及びヨウ化カリウム(和光純薬工業株式会社製、4.0質量%)水溶液に60秒間浸し、5倍に延伸して、乾燥させて、膜厚46.9μm、配向度0.99の偏光フィルムを作製した。
【0166】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例4の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例4における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.86(×)、T<500時間(×)であった。
【0167】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例4の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例4における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=10mm(×)、T’<750時間(×)であった。
【0168】
(比較例5)
特開2001−343522号公報(特許文献1)の記載を追試することにより、膜厚3.2μm、配向度0.93のヨウ素−PVA偏光フィルムを作製した。
【0169】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例5の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例5における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.96(○)、T<500時間(×)であった。
【0170】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例5の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例5における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=2mm(○)、T’<750時間(×)であった。
【0171】
(比較例6)
10質量%のPVA124水溶液(株式会社クラレ製)80.0g、及び実施例1で得られた金コア銀シェルナノロッド分散液50.0gを混合した組成物を、A4サイズの清浄な未延伸ポリエチレンテレフタレートベース(延伸性支持体、PETMAX;A565GE2R/片面帯電防止コート付/300μm厚み/東洋紡績株式会社製)に、1mm厚みのアプリケーターを用いワイヤーバー(#0)を用いてバーコート塗布し、25℃で12時間乾燥させた後、支持体から剥離することで金コア銀シェルナノロッドを含むPVA膜を形成した。作製した膜の厚みは、63.1μmであった。
作製した金コア銀シェルナノロッドを含むPVA膜を一軸4倍延伸することにより、膜厚39.4μm、配向度0.82の偏光フィルムを作製した。
【0172】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例6の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6における合わせガラス偏光板を製造した。
比較例6における、合わせガラス偏光板の合わせガラス化時収縮率R、耐久性保持時間Tを測定、評価した結果は、R=0.85(×)、T≧1,000時間(○)であった。
【0173】
実施例1の偏光フィルムに代えて、比較例6の偏光フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6における保護フィルム挟み込み偏光板を製造した。
比較例4における、保護フィルム挟み込み偏光板のカール量C、耐久性保持時間T’を測定、評価した結果は、それぞれC=10mm(×)、T’≧1,000時間(○)であった。
【0174】
以上の実施例1〜5、及び比較例1〜6において得られた結果を下記表1にまとめて示す。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の偏光フィルムは、優れた耐久性、配向性を有し、収縮応力が小さく、かつ、大面積で偏光板を製造することができるため、例えば、プロジェクター、液晶モニター、液晶テレビ等に応用できるが、更に、光アイソレータ、光ファイバ、自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。これらの中でも、特開2007−334150号公報に開示されているような自動車の前窓等の乗り物用ガラスが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、二色性異方性金属ナノ粒子の構造の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、二色性異方性金属ナノ粒子におけるコアナノロッドの一例を示す模式図である。
【図3】図3は、二色性異方性金属ナノ粒子における両端面が角のない曲面状であるものの具体例を示した図である。
【図4】図4は、二色性異方性金属ナノ粒子における端面が角のない曲面状であるが否かの判定方法を説明するための図である。
【図5】図5は、端面形状を有する二色性異方性金属ナノ粒子の具体例を示す図である。
【図6A】図6Aは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6B】図6Bは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6C】図6Cは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6D】図6Dは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6E】図6Eは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図6F】図6Fは、偏光板の製造工程の一例を示す概略図である。
【図7A】図7Aは、偏光板の製造工程の他の例を示す概略図である。
【図7B】図7Bは、偏光板の製造工程の他の例を示す概略図である。
【図7C】図7Cは、偏光板の製造工程の他の例を示す概略図である。
【図7D】図7Dは、偏光板の製造工程の他の例を示す概略図である。
【図8】図8は、偏光板の構成の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、偏光板の構成の他の例を示す概略図である。
【図10】図10は、乗り物用映り込み防止窓を自動車に適用した際の映り込み防止の原理を説明するための図である。
【図11】図11は、合わせガラスの中間層として偏光板を設けた一例を示す図である。
【図12】図12は、合わせガラスの片面側に偏光フィルムを設けた一例を示す図である。
【図13】図13は、屈折率1の媒質から屈折率1.46の媒質に入射した場合の反射率の挙動を示すグラフである。
【図14】図14は、実施例1で合成した金ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図15】図15は、実施例1で合成した二色性異方性金属ナノ粒子の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図16】図16は、実施例1で合成した二色性異方性金属ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図17】図17は、実施例1の偏光板の偏光性を示すグラフである。
【図18】図18は、カール量の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0177】
1 コアナノロッド
2 シェル
5 ダッシュボード
6 中間層
10、20、50 二色性異方性金属ナノ粒子
11 組成物層
12、22 延伸性支持体
13、23、33、53 偏光フィルム
14a、14b、28a、28b 第1の基材
15a、15b、25a、25b 第2の基材
16 接着剤層(粘着シート層)
17、27 積層体フィルム
35 ガラス板
36 粘着シート
38 TACフィルム
39 反射防止層
100、150、200、250、300、350 偏光板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二色性異方性金属ナノ粒子と熱可塑性樹脂を含み、厚みが12.5μm以下であることを特徴とする偏光フィルム。
【請求項2】
二色性異方性金属ナノ粒子の配向度が、0.85よりも大きい請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項3】
二色性異方性金属ナノ粒子の球相当半径が、15nm以下であり、かつアスペクト比が1.1〜10である請求項1から2のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項4】
二色性異方性金属ナノ粒子の金属が、銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、ニッケルの少なくとも1種類を含む請求項1から3のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項5】
二色性異方性金属ナノ粒子が、コア金属をシェル金属で被覆してなるコアシェル構造を有する請求項1から4のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項6】
コア金属が金であり、シェル金属が銀である請求項5に記載の偏光フィルム。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコールである請求項1から6のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項8】
少なくとも、二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂とを含む組成物層を延伸性支持体上に形成する組成物層形成工程と、
前記組成物層を延伸性支持体とともに延伸し、該延伸性支持体上に偏光フィルムを形成する延伸工程とを含み、
前記組成物層の厚みが25μm以下であり、かつ、前記偏光フィルムの延伸後の厚みが12.5μm以下であることを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
【請求項9】
組成物層の厚みが、10μm以下である請求項8に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項10】
延伸性支持体が、未延伸ポリエチレンテレフタレートである請求項8から9のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれかに記載の偏光フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【請求項12】
偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を有する請求項11に記載の偏光板。
【請求項13】
偏光フィルムにおける、少なくとも一の面上の基材が、トリアセチルセルロースフィルムである請求項12に記載の偏光板。
【請求項14】
偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、第1の基材と、第2の基材とをこの順で有する請求項11に記載の偏光板。
【請求項15】
第1の基材が、ポリビニルブチラール及びポリエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む中間層であり、第2の基材が、ガラス基板である請求項14に記載の偏光板。
【請求項16】
請求項8から10のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法により製造された偏光フィルムにおける、延伸性支持体が形成された一の面と反対側の面に、基材を積層させた後、前記延伸性支持体を前記偏光フィルムの一の面から剥離させる偏光フィルム積層工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項17】
偏光フィルムにおける基材が配された一の面と反対側の面に、更に基材を配し、前記偏光フィルムにおける一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を配した積層体を形成する積層体形成工程を含む請求項16に記載の偏光板の製造方法。
【請求項18】
請求項1から7のいずれかに記載の偏光フィルムを有することを特徴とする乗り物用映り込み防止フィルム。
【請求項1】
少なくとも二色性異方性金属ナノ粒子と熱可塑性樹脂を含み、厚みが12.5μm以下であることを特徴とする偏光フィルム。
【請求項2】
二色性異方性金属ナノ粒子の配向度が、0.85よりも大きい請求項1に記載の偏光フィルム。
【請求項3】
二色性異方性金属ナノ粒子の球相当半径が、15nm以下であり、かつアスペクト比が1.1〜10である請求項1から2のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項4】
二色性異方性金属ナノ粒子の金属が、銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、ニッケルの少なくとも1種類を含む請求項1から3のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項5】
二色性異方性金属ナノ粒子が、コア金属をシェル金属で被覆してなるコアシェル構造を有する請求項1から4のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項6】
コア金属が金であり、シェル金属が銀である請求項5に記載の偏光フィルム。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコールである請求項1から6のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項8】
少なくとも、二色性異方性金属ナノ粒子と、熱可塑性樹脂とを含む組成物層を延伸性支持体上に形成する組成物層形成工程と、
前記組成物層を延伸性支持体とともに延伸し、該延伸性支持体上に偏光フィルムを形成する延伸工程とを含み、
前記組成物層の厚みが25μm以下であり、かつ、前記偏光フィルムの延伸後の厚みが12.5μm以下であることを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
【請求項9】
組成物層の厚みが、10μm以下である請求項8に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項10】
延伸性支持体が、未延伸ポリエチレンテレフタレートである請求項8から9のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれかに記載の偏光フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【請求項12】
偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を有する請求項11に記載の偏光板。
【請求項13】
偏光フィルムにおける、少なくとも一の面上の基材が、トリアセチルセルロースフィルムである請求項12に記載の偏光板。
【請求項14】
偏光フィルムの一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、第1の基材と、第2の基材とをこの順で有する請求項11に記載の偏光板。
【請求項15】
第1の基材が、ポリビニルブチラール及びポリエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む中間層であり、第2の基材が、ガラス基板である請求項14に記載の偏光板。
【請求項16】
請求項8から10のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法により製造された偏光フィルムにおける、延伸性支持体が形成された一の面と反対側の面に、基材を積層させた後、前記延伸性支持体を前記偏光フィルムの一の面から剥離させる偏光フィルム積層工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項17】
偏光フィルムにおける基材が配された一の面と反対側の面に、更に基材を配し、前記偏光フィルムにおける一の面と、該一の面と反対側の面のそれぞれの面上に、基材を配した積層体を形成する積層体形成工程を含む請求項16に記載の偏光板の製造方法。
【請求項18】
請求項1から7のいずれかに記載の偏光フィルムを有することを特徴とする乗り物用映り込み防止フィルム。
【図5】
【図13】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図13】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【公開番号】特開2010−145866(P2010−145866A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324769(P2008−324769)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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