説明

偏光フィルム用粘着剤組成物及び粘着型偏光フィルム

【課題】偏光フィルムを液晶パネルのガラス基板に貼着するために用いられる粘着剤であって、リワーク性と耐久性の両者に優れたものを提供すること、さらには当該粘着剤による粘着層が積層されている液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型偏光フィルムを提供すること。
【解決手段】アクリル系ポリマーおよび多官能性化合物を含有してなる偏光フィルム用粘着剤組成物において、前記アクリル系ポリマーが、多官能性化合物の官能基と反応性を有する官能基を有するモノマーユニット(a)を含有しており、かつ、当該アクリル系ポリマーのポリスチレン換算分子量分布における最大度数分子量よりも大きい分子量を持つ成分(X)と、最大度数分子量よりも小さい分子量を持つ成分(Y)のそれぞれの成分が含有する前記モノマーユニット(a)とアクリル系ポリマーを構成するモノマーユニット(A)(但し、前記モノマーユニット(a)を除く)の重量比(a/A)を、成分(X)/成分(Y)の比で表した値が1. 1以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムを液晶パネルのガラス基板に貼着するために用いられる偏光フィルム用粘着剤組成物及び当該粘着剤組成物による粘着層が積層されている液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型偏光フィルムに関する。さらには前記粘着型偏光フィルムを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、その画像形成方式から液晶パネルの最表面を形成するガラス基板の両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光フィルムが液晶パネルの最表面に貼着されている。また液晶パネルの最表面には偏光フィルムの他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。例えば、着色防止としての相差フィルム、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられる。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0003】
前記光学フィルムを液晶パネルの最表面に貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムを液晶パネルの最表面に瞬時に固定できること、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、光学フィルムの片面に予め粘着剤層として設けられている。すなわち、液晶パネルの最表面への光学フィルムの貼着には粘着型光学フィルムが一般的に用いられる。前記粘着剤としては、たとえば、ベースポリマーとして極性基を有するアクリル系ポリマーと多官能性化合物を含有する粘着剤組成物が用いられている。
【0004】
前記粘着剤に要求される必要特性としては、(1)貼合せ(リワーク)が可能であること、(2)応力緩和性を有すること等が挙げられる。(1)関しては光学フィルムを液晶パネルの最表面に貼り合わせる際、貼り合わせ位置を誤ったり、貼合せ面に異物が噛み込むことが多く、このような場合にも光学フィルムを液晶パネル最表面から剥離し、再度貼り合わせを可能とするため要求される特性である。なお、この場合液晶パネルは高価であるため再利用するが、比較的安価である光学フィルムは廃棄される。(2)関しては、光学フィルムの寸法変化により生じる光学むらを防止するために要求される特性である。
【0005】
前記(1)リワーク性については、液晶パネルの最表面のガラス基板に対する接着力がより低いことが必要である。しかし、液晶パネルメーカーにおけるモジュール組み立て工程(液晶パネルヘのIC等の組み込み工程)においては、50℃〜80℃の高温雰囲気下に数時間さらされた後に光学フィルムをリワークする場合も多く、この際に従来の粘着剤ではガラス基板に対する接着力が経時的に大きく上昇する傾向がみられ、リワーク性が著しく低下する。一方、前記リワーク性を向上させるため粘着剤(アクリル系ポリマー)中の極性成分(または反応性成分)を低減させてガラス基板に対する低接着力化を行うことが考えられるが、このような低接着力化した粘着剤を用いた場合には、(3)の環境促進試験の加湿耐久性が十分でなく、粘着型光学フィルムに積層されている粘着層に発泡、剥がれ等の不具合が発生する。このように光学フィルムに用いる粘着剤では経時的高温下でのリワーク性と加湿耐久性を両立させることが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、偏光フィルムを液晶パネルのガラス基板に貼着するために用いられる粘着剤であって、経時的高温下でのリワーク性と耐久性(特に加湿耐久性)の両者に優れたものを提供すること、さらには当該粘着剤による粘着層が積層されている液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型偏光フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意研究したところ、下記に示す粘着剤により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、偏光フィルムを液晶パネルのガラス基板に貼着するために用いられる、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーおよび多官能性化合物を含有してなる偏光フィルム用粘着剤組成物において、前記アクリル系ポリマーが、多官能性化合物の官能基と反応性を有する官能基を有するモノマーユニット(a)を含有しており、かつ、当該アクリル系ポリマーのポリスチレン換算分子量分布における最大度数分子量よりも大きい分子量を持つ成分(X)と、最大度数分子量よりも小さい分子量を持つ成分(Y)のそれぞれの成分が含有する前記モノマーユニット(a)とアクリル系ポリマーを構成するモノマーユニット(A)(但し、前記モノマーユニット(a)を除く)の重量比(a/A)を、成分(X)/成分(Y)の比で表した値が1. 1以下であることを特徴とする偏光フィルム用粘着剤組成物、に関する。
【0009】
上記本発明の粘着剤組成物は、反応性を有するモノマーユニット(a)を有するアクリル系ポリマーをベースポリマーとし、これと多官能性化合物が反応する架橋型の粘着剤組成物であり、しかもアクリル系ポリマーが含有する反応性を有するモノマーユニット(a)の割合(前記重量比(a/A))は、ポリスチレン換算分子量分布における最大度数分子量よりも小さい分子量を持つ領域(成分(Y))が、最大度数分子量よりも大きい分子量を持つ領域(成分(X))より大きくなるような比、すなわち前記重量比(a/A)に係わる、成分(X)/成分(Y)の比が1. 1以下となるように導入されている。このようにアクリル系ポリマーの比較的低分子量領域(成分(Y))におけるモノマーユニット(a)の割合を高くすることにより、粘着層での架橋度を向上させ、これにより高温下で接着力が上昇する原因となる低分子ゾルを減少させて高温条件下においても、接着力を低下させ、経時による接着力上昇性を抑えることでリワーク性を確保している。
【0010】
前記重量比(a/A)に係わる、成分(X)/成分(Y)の比は、0.8以下、さらには、0.5以下となるようなものがリワーク性の点で好ましい。なお、成分(X)/成分(Y)の比は、耐久性試験による発泡等の不具合を防止するという点から、0.1以上とするのが好ましい。
【0011】
このようなアクリル系ポリマーは、極性成分である官能基を有するモノマーユニット(a)割合を低減させなくてもリワーク性を確保できるため、耐久性、特に加湿耐久性で剥がれ等の不具合の発生も抑えられる。こうしてアクリル系ポリマーの組成設計の自由度が高くなり、リワーク性(低接着力)及び高耐久性を両立した、粘着剤組成物を提供したものである。
【0012】
なお、アクリル系ポリマーのポリスチレン換算分子量とは、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー法により求めた値を、単分散ポリスチレンを標準として換算した値をいう。また、最大度数分子量とはポリスチレン換算分子量分布において最も存在割合の高い分子量をいう。
【0013】
また、本発明は、前記アクリル系ポリマーからなる偏光フィルム用粘着主剤に関する。
【0014】
また、本発明は、偏光フィルムの一方の面に、前記偏光フィルム用粘着剤組成物による粘着層が積層されている、液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型偏光フィルム、に関する。さらに本発明は前記粘着型偏光フィルムを用いた液晶表示装置、に関する。
【0015】
本発明の粘着型偏光フィルムは、液晶パネル最表面のガラス基板に貼り合わせた後、剥離する際に、比較的小さい力で剥離することができリワーク性がよく、さらに50〜80℃雰囲気下に数十時間さらされても剥離力の上昇は低く抑えられる。また、低接着力でありながら、50〜100℃、30℃/85%RH〜70℃/95%RHの耐久性試験において発泡、剥がれ等の粘着剤に起因する不具合が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の粘着型光学フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーおよび多官能性化合物を含有してなる。
【0018】
アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とし、これに多官能性化合物の官能基と反応性を有する官能基を有するモノマーユニット(a)を含む。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0019】
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は1〜12程度のものであり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を例示でき、これらは単独または組合せて使用できる。
【0020】
官能基を有するモノマーユニット(a)は、多官能性化合物の官能基に応じた官能基を有するモノマーが用いられる。たとえば、多官能性化合物の官能基がイソシアネート基の場合には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の活性水素基を有するモノマーが用いられる。具体的には、水酸基を含有するモノマーとして、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等があげられ、カルボキシル基を含有するモノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸等があげられる。また、官能基を有するモノマーとしては、エポキシ基を有するモノマーとして、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート等があげられる。かかる官能基を有するモノマーは、多官能性化合物がアミノ基等の官能基を有する場合に用いられる。
【0021】
その他、アクリル系ポリマーには、極性を付与するために各種モノマーを使用することができ、粘着剤の性能に影響を及ぼさない範囲で、共重合可能なモノマーとして、酢酸ビニル、スチレン等を用いることもできる。
【0022】
アクリル系ポリマー中の前記モノマーユニット(a)の割合は特に制限されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマーユニット(A)(但し、前記モノマーユニット(a)を除く)との重量比(a/A)で、0.001〜0.1程度となるように調整するのが、耐久性の点で好ましい。特に0.005〜0.05とするのが好ましい。
【0023】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万〜250万程度であるのが好ましい。
【0024】
前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の方法により製造でき、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用でき、反応温度は通常50〜85℃程度、反応時間は1〜8時間程度とされる。また、前記製造法のなかでも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等の極性溶剤が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度とされる。
【0025】
本発明のアクリル系ポリマーは、前記成分(X)と、成分(Y)のそれぞれが含有する前記モノマーユニットの重量比(a/A)について、成分(X)/成分(Y)の比が1.1以下となるように調整されたものである。このようなアクリル系ポリマーは、たとえば、前記重合法において、前記各種モノマーの混合物を共重合する際に、まずモノマーユニット(A)となるモノマーを仕込み、一方、モノマーユニット(a)となる官能基を有するモノマーは、重合当初に仕込まず、または一部仕込んでおき、これらを重合または共重合し、重合または共重合の進行に伴い官能基を有するモノマーを逐次に分割し、滴下して重合する方法により得ることができる。分割の回数、滴下間隔は特に制限されないが、2〜10回程度、滴下間隔も5分〜3時間程度とするのが好ましい。重合開始から1時間程度が特に速く反応するのでこの間の滴下間隔を短くするのがより好ましい。その他の方法として、紫外線等により前記モノマーユニット(A)となるモノマー等を部分的に重合しておき、これにモノマーユニット(a)となる官能基を有するモノマーを加えて前記溶液重合法に供する方法等があげられる。
【0026】
また、多官能性化合物は、モノマーユニット(a)となる官能基と反応性を有するものである。多官能性化合物としては、ポリイソシアネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。
【0027】
アクリル系ポリマーと多官能性化合物の配合割合は特に制限されないが、通常、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、多官能性化合物(固形分)0.01〜10重量部程度、好ましくは0.05〜3重量部程度である。
【0028】
さらには、前記粘着剤組成物には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。
【0029】
本発明の粘着型光学フィルムは、図1に示すように、光学フィルム1に前記粘着剤組成物による粘着層2が設けられている。また、粘着層2には離型シート3を設けることができる。
【0030】
光学フィルム1としては液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。たとえば、光学フィルムとしては偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルムまたは防眩シート等があげられる。
【0031】
偏光フィルムを構成する偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン系配向フィルム等があげられる。偏光子の厚さも特に制限されないが、5〜80μm程度が一般的である。
【0032】
前記偏光子の片面または両面には、透明保護層を耐水性等の目的で、ポリマーによる塗布層として、またはフィルムのラミネート層等として設ることができる。透明保護層を形成する、透明ポリマーまたはフィルム材料としては、適宜な透明材料を用いうるが、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮断性などに優れるものが好ましく用いられる。透明保護層の厚さは特に制限されないが、10〜300μm程度が一般的である。
【0033】
前記透明保護層を形成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、二酢酸セルロースや三酢酸セルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、あるいは前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護層を形成するポリマーの例としてあげられる。
【0034】
位相差フィルムとしては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーフィルムなどがあげられる。位相差フィルムの厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。位相差板は、二層以上の延伸フィルムの重畳体などとして形成して位相差等の光学特性を制御したものとして形成することもでき、着色防止や視角範囲の拡大等を目的に液晶セルの位相差を補償するためなどに偏光フィルムと積層してなる楕円偏光フィルムとして用いることもできる。
【0035】
高分子素材としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これら高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0036】
液晶性ポリマーとしては、たとえば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶性ポリマーは、たとえば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0037】
前記偏光フィルム、位相差フィルムは積層して用いることもでき反射型偏光フィルム、半透過層型偏光フィルム、偏光分離偏光フィルム等とすることができる。また、前記例示の光学フィルムは、光学補償フィルム、その他の各種視野角拡大フィルムとして使用することもでき、さらには光学フィルムとしては、輝度向上フィルム等があげられる。また偏光フィルムは、表面上に微細凹凸構造の反射層を設けて防眩シートとすることもできる。
【0038】
粘着層2の形成は、液晶パネルのガラス基板に貼着する光学フィルム1の片面に行う。形成方法としては、特に制限されず、光学フィルム1に粘着剤組成物(溶液)を塗布し乾燥する方法、粘着層2を設けた離型シート3により転写する方法等があげられる。粘着層2(乾燥膜厚)は厚さ、特に限定されないが、10〜40μm程度とするのが好ましい。
【0039】
なお、離型シート3の構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等があげられる。離型シート3の表面には、粘着剤層2からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理な剥離処理が施されていても良い。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中、部は重量部である。
【0041】
実施例1(アクリル系ポリマーの調製)ブチルアクリレート80部、エチルアクリレート20部およびチバスペシャルティーケミカルズ社製イルガキュア184(ベンゾフェノン系光重合開始剤)5部の混合物を高圧水銀灯下で重合率が20%のポリマーとなるよう紫外線照射した。このポリマーに、2―ヒドロキシエチルアクリレート2部、アゾビスイソブチロニトリル0.4部および酢酸エチル220部を攪拌しながら加え、60℃近傍で6時間反応を行い、重量平均分子量155万のアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0042】
(アクリル系ポリマーの(a/A)に係わる成分(X)/成分(Y)の比)得られたアクリル系ポリマーを、東ソー製GPC(ゲルーパーミション・クロマトグラフ)HLC−8120を用い (溶剤:テトラヒドロフラン)、ポリスチレンを標準として換算した分子量分布を測定しその最大度数分子量を算出した。最大度数分子量は131万であった。また同装置を用い、同社製shodexH2004分取用カラムにて最大度数分子量よりも大きい成分 (成分(X))及び小さい成分(成分(Y))に分離した。それぞれの成分について、日本電子製 1H−NMR LA−400にて、ポリマー中の2ーヒドロキシエチルアクリレートの組成比を算出したところ成分(X)はブチルアクリレート及びエチルアクリレート100に対して重量比で0.8、成分(Y)は3.2であった。成分(X)/成分(Y)は0.25であった。
【0043】
(粘着剤組成物の調製)上記アクリル系ポリマー溶液にコロネートL(イソシアネート系架橋剤,日本ポリウレタン社製)をポリマー固形分100部に対して0.5部加え、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
【0044】
(粘着型光学フィルムの作製)厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で5倍に延伸したのち乾燥させ,両側にトリアセチルセルロースフィルムを接着剤を介して接着し、偏光フィルムを得た。上記により作製された粘着剤組成物(溶液)を、35μmの厚みを有する離型紙上に乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布し、これを上記により作製された偏光フィルムにラミネートし粘着型偏光フィルムを得た。
【0045】
実施例2(アクリル系ポリマーの調製)ブチルアクリレート80部、エチルアクリレート20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2部、アゾビスイソブチロニトリル0.4部および酢酸エチル220部を攪拌しながら60℃近傍で6時間反応を行い、重量平均分子量125万のアクリル系ポリマー溶液を得た。この際、2−ヒドロキシエチルアクリレートは反応開始から2時間後、4時間後にそれぞれ等量に分割して配合した。
【0046】
以下実施例1と同様にして算出した最大度数分子量は114万であった。また、2−ヒドロキシエチルアクリレートの組成比を算出したところ、成分(X)はブチルアクリレート及びエチルアクリレート100に対して重量比で1.4、成分(Y)は2.5であった。成分(X)/成分(Y)は0.56であった。また、実施例1と同様にして粘着剤組成物 (溶液)を調製し、粘着型偏光フィルムを得た。
【0047】
比較例1(アクリル系ポリマーの調製)ブチルアクリレート80部、エチルアクリレート20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2部、アゾビスイソブチロニトリル0.4部および酢酸エチル220部を攪拌しながら60℃近傍で6時間反応を行い、重量平均分子量105万のアクリル系ポリマー溶液を得た。この際、2−ヒドロキシエチルアクリレートは反応前にすべて配合した。
【0048】
以下実施例1と同様にして算出した最大度数分子量は97万であった。また、2−ヒドロキシエチルアクリレートの組成比を算出したところ、成分(X)はブチルアクリレート及びエチルアクリレート100に対して重量比で2.2、成分(Y)は1.8であった。成分(X)/成分(Y)は1.22であった。また、実施例1と同様にして粘着剤組成物 (溶液)を調製し、粘着型偏光フィルムを得た。
【0049】
上記実施例および比較例で得られた粘着型偏光フィルムについて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0050】
(粘着型偏光フィルムのガラスヘの接着力測定)粘着型偏光フィルムを25mm×150mmの大きさにカットした後、剥離紙を剥離してから、コーニング製無アルカリガラス板#1737上に貼り合わせ、50℃×0.5Mpaの雰囲気下に15分放置した。このサンプルを23℃/65%R.H.の雰囲気下に1時間放置(初期)した場合(1)と、60℃/65%R.H.の雰囲気下に40時間放置した場合(2)の接着力(N/25mm)を測定した。接着力は、サンプルを引張試験機にて90°の剥離角度、300m/分の剥離速度で引張ったときの引張り強度である。
【0051】
(加湿試験)粘着型偏光フィルムを200mm×150mmの大きさにカットした後、剥離紙を剥離してから、コーニング製無アルカリガラス板#1737上に貼り合わせ、50℃×0.5Mpaの雰囲気下に15分放置した。このサンプルを60℃/90%R.H.の雰囲気下に5時間放置したときの、発泡、剥がれ等の不具合が発生していないかどうかを目視により確認した。不具合が発生している場合を○、発生していない場合を×とした。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示す通り、実施例1では高温放置後にも接着力の上昇は少なくリワーク性が良好であると認められる。また、加湿試験も良好である。なお、表1中のモノマーユニット(a)の重量比は、重量比(a/A)の代わりに、アクリル系ポリマーを構成するモノマーユニット(A)(但し、モノマーユニット(a)を除く)100に対するモノマーユニット(a)の重量比を記載したものであり、X成分/Y成分の比は、前記重量比に係わる比である。
【符号の説明】
【0054】
1:光学フィルム
2:粘着層
3:離型シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムを液晶パネルのガラス基板に貼着するために用いられる、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーおよび多官能性化合物を含有してなる偏光フィルム用粘着剤組成物において、前記アクリル系ポリマーが、多官能性化合物の官能基と反応性を有する官能基を有するモノマーユニット(a)を含有しており、かつ、当該アクリル系ポリマーのポリスチレン換算分子量分布における最大度数分子量よりも大きい分子量を持つ成分(X)と、最大度数分子量よりも小さい分子量を持つ成分(Y)のそれぞれの成分が含有する前記モノマーユニット(a)とアクリル系ポリマーを構成するモノマーユニット(A)(但し、前記モノマーユニット(a)を除く)の重量比(a/A)を、成分(X)/成分(Y)の比で表した値が1.1以下であることを特徴とする偏光フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
請求項1記載のアクリル系ポリマーからなる偏光フィルム用粘着主剤。
【請求項3】
偏光フィルムの一方の面に、請求項1記載の偏光フィルム用粘着剤組成物による粘着層が積層されている、液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型偏光フィルム。
【請求項4】
請求項3記載の粘着型偏光フィルムを用いた液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−18064(P2011−18064A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188786(P2010−188786)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【分割の表示】特願2000−366489(P2000−366489)の分割
【原出願日】平成12年12月1日(2000.12.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】