説明

偏光子の製造方法

【課題】短軸を一定方向に配向させた扁平化金属粒子を分散して含有する偏光性材料及び偏光子の製造のための,生産性に優れた製造方法を提供することである。
【解決手段】分散され所定方向に配向された扁平化金属粒子を含有する偏光子の製造方法であって,(i) ハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有する透明無機固体基材を加熱軟化状態で押出成形に付して変形させ,(ii)押出成形体を,冷却固化後,プレート状に切断し,(iii)各プレートを還元処理に付すことを含んでなり,(i)において,押出方向(Dc方向)に対し垂直な面内における,押し出しに際し最も圧縮比が大となる方向をDa方向とし,Da方向とDc方向の双方に垂直な方向をDb方向とするとき,Db方向の圧縮比がDa方向の圧縮比より小さく,且つ, (ii)において,該切断がDa方向に平行な面で行われることを特徴とする,製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,偏光性材料,特に偏光子の製造方法に関し,より詳しくは,可視光領域での使用に特に適した偏光子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクター,液晶リアプロジェクションディスプレイ等では,主に有機系吸収型偏光子が用いられている。有機系吸収型偏光子には,熱や光(特にエネルギーの高い青色光)により経時劣化が起こってしまうという欠点がある。そのため,耐熱性・耐光性に優れた無機系偏光子が求められている。
【0003】
無機系吸収型の偏光子としては,形状異方性の金属銀粒子を分散して含んだ偏光子の基本的な製造方法が特許文献1に示されている。それらの方法は,Ag及びハロゲン(Cl,Br又はI)を成分として含むガラスを熱処理してハロゲン化銀粒子を析出させた後,そのガラスを延伸して紡錘形(prolate)の形状異方性ハロゲン化銀粒子を,その長軸を特定方向に配向させた形で分散して含んだガラスとし,次いでこれを還元処理することにより,紡錘形の金属銀粒子を,その長軸を特定方向に配向させた形で分散して含んだ偏光子とするものである。偏光子として機能するためには,紡錘形の金属銀粒子の長軸の配向する方向と偏光子の光入射面(光を入射させる面)とが平行であることが必要である。
【0004】
偏光子に用いることのできるガラス組成は特許文献2〜5などにも示されている。
【0005】
短時間の還元で高消光比を得る方法として,加圧雰囲気下にて還元処理を行う方法が特許文献6,7に示されている。
【0006】
可視光域のうち緑色領域で高透過率且つ高消光比を示す偏光子の製法として,ハロゲン化銀粒子のサイズを小さくする方法が特許文献8に示されている。
【0007】
しかしながら,特許文献1〜8のように,紡錘形金属銀粒子を用いてこれまでに得られている偏光子には,可視光域特に青色〜緑色領域において,高透過率と高消光比を両立させることが困難であるという欠点があった。
【0008】
更に特許文献9には,金属銀粒子及び/又はハロゲン化銀粒子を含有するガラスを,ガラスの流動方向に粒子が引き延ばされて整列するような方法で押出し成形することによって,フォトクロミック又は非フォトクロミックの,偏光性を有するガラスを製造する方法が開示されている。同文献には,押出成形で得られた粒子が紡錘形の場合,二色比は平均で1.8〜3.0となること,及び,粒子が紡錘形よりも偏球形(oblate)の場合に二色比がより大きく(最大5.0まで)なることが述べられている。しかしながら,この程度のレベルの二色比の値が示す偏光性は,偏光子に求められる偏光性(消光比)のレベルよりはるかに低い。しかも,同文献には,押出し成形の具体的方法に関しては,直径1インチのガラスディスクを直径0.25インチ(=6.35mm)の棒へと,すなわち断面積が1/16に縮小するように押出し成形したことが記載されているのみである(従って,中心軸方向の寸法は16倍に延ばされたと推定される)。この方法では元のガラスディスクが,周囲から一様に中心方向へと圧縮されつつ厚さ(長さ)方向に延びるため,含まれていた粒子は紡錘形(すなわち,押出方向に対し垂直な断面が円形)へと変形される筈であり,偏球形にはなり得ない。すなわち同文献には,偏球形の粒子を形成させる方法についての記載はない。
【0009】
特許文献10には,特許文献9と同様に押出により紡錘形(prolate)の形状異方性ハロゲン化銀粒子を,その長軸を特定方向に配向させた形で分散して含んだガラスとするが,フォトクロミックによって金属銀粒子とするのではなく,還元処理することにより,紡錘形の金属銀粒子を,その長軸を特定方向に配向させた形で分散して含んだ偏光子とするものが記載されている。しかし特許文献10には,偏球形の粒子についての記載はない。
【0010】
特許文献11には,偏光性の金属塩を含有するガラスを押出し,押出されたガラスの先端をつかみ,延伸して,元のガラスの幅と実質的に同じ幅を有するリボンにする工程,前記リボンを還元雰囲気内で処理する工程,前記リボンを研磨する工程,及び前記リボンを所望の寸法に切断し偏光子を形成する工程を含んでなることを特徴とする幅の広いシートまたはストリップ状の偏光子の製造方法が記載されている。この方法においては,押出におけるガラスの変形の仕方が特定されておらず,含まれる粒子の形状は不明ではあるが,ガラスをリボンという薄い形状へと押出すと共に延伸もしていることから,ガラスが最も圧縮されている方向は,リボンの主表面(広がった表裏の面)に垂直な方向であり,押出方向(延伸方向と同じ)には粒子は伸ばされている。このためガラス中の金属塩粒子は(従って,還元後の金属粒子も),少なくとも,リボンの主表面に垂直な方向に短軸方向が揃った状態で,リボンの主表面に沿って押出方向に伸びている筈である。そして,このようにして製造される偏光ガラスは,その平たい形状から明らかなように,入射光を主表面で受けるような向きで使用されるものである。
【0011】
特許文献12には,偏光ガラスの押出成形方法において,偏光粒子を含んで押出口から押出された加熱成形物が通過する領域に気体流を形成させ,該気体流を制御して前記加熱成形物が通過する領域に該加熱成形物を冷却固化するための温度勾配を形成させることを特徴とした偏光ガラスの押出成形方法が記載されている。そして具体的には,同文献の実施例1には直径50mm,長さ25mmのガラスを直径5.5mmの押出口から押出すことが記載されている。この場合,もとの円柱形のガラスをこれより細いがやはり円柱形のガラスとして押出していることから,これに含まれている偏光粒子は紡錘形へと引き伸ばされるはずである。なぜなら,ダイスから押出される瞬間までのガラスの流動により,偏光粒子は,押出方向に引き延ばされる一方,粒子の横断面においては,中心に向かう何れの方向の収縮も,実質的に同等だからである。
また,同文献の実施例2には2.5mm×12.5mmの長方形をなす押出口から押出す方法が記載されている。この場合の粒子形状は不明であるが,少なくとも,最も圧縮された方向(2.5mm幅を横断する方向)に粒子の短軸が揃った状態で,主表面に沿って押出方向に伸びている筈である。また,この方法で得られる偏光ガラスは,その平たい形状から明らかなように,入射光を主表面で受けるような向きで使用されるものである。
【0012】
特許文献13には,押出し口内の平均の温度勾配が,軟化した偏光ガラス用原料の押出し方向について−50℃/cm〜−180℃/cmの範囲内となるように該押出し口内を冷却することを特徴とする偏光ガラスの押出し成形方法が記載されている。具体例として,直径50mm、高さ50mmのガラスを直径5mmのノズルから押出すことが記載されている。この場合,もとの円形断面のガラスをこれより細いがやはり円形断面のガラスとして押出していることから,ガラスに含まれている金属粒子は,特許文献12について上に述べたと同様,紡錘形へと引き伸ばされている筈である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許4479819号公報
【特許文献2】米国特許5252524号公報
【特許文献3】米国特許6606885号公報
【特許文献4】米国特許6777359号公報
【特許文献5】特開2010−150122号公報
【特許文献6】米国特許6221480号公報
【特許文献7】米国特許6761045号公報
【特許文献8】特開2008−162810号公報
【特許文献9】米国特許4282022号公報
【特許文献10】米国特許4304584号公報
【特許文献11】米国公開2007−0153383号公報
【特許文献12】特開平07−010568号公報
【特許文献13】特開平08−040734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の背景において本願の出願人は,本願に先立ち,紡錘形金属粒子ではなく,透明無機固体基材中に扁平化金属粒子を分散して含有し,該扁平化金属粒子の短軸が一定方向に配向しているものである偏光性材料の製造方法を発明し,その特許出願を行った(本願出願時点で未公開の特願2010−198286号)。当該製造方法によれば,可視光領域特に青色領域で高性能を示す偏光子を作製することができる。しかしながら,当該出願に記載された特定の方式の圧縮を用いる製造方法では,加熱軟化下に圧縮されるプリフォームにおいて,開放された端部方向への流動量が,中央部では小さく,開放された端部へ近づくにつれて大きくなるため,得られる圧縮性形体は,中央部と端部とで異なった応力分布および応力履歴を有するものとなる。このため,圧縮成形体の全体から均質な偏光子を得るには不都合であり,生産性に乏しいという問題があった。
【0015】
本発明の目的は,この問題を解決し,透明無機固体基材中に扁平化金属粒子(又は扁平化ハロゲン化金属粒子)を分散して含有し,それらの粒子の短軸が一定方向に配向しているものである偏光性材料(又はその中間材料)の製造のための,生産性に優れた製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は,そのような偏光性材料のための生産性の優れた製造方法の開発にあたり,押出法の可能性を追求し,押出法を特定の仕方で用いることにより,生産性の優れた製造方法を提供できることを見出した。すなわち本発明は,以下を提供するものである。
【0017】
(1)分散され所定方向に配向された扁平化金属粒子を含有する偏光子の製造方法であって,
(i) ハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有する透明無機固体基材を加熱軟化状態で押出成形に付して変形させるステップと,
(ii) 得られた押出成形体を,冷却固化後,プレート状に切断するステップと,そして
(iii) 切断により得られた各プレートを還元処理に付すステップと
を含んでなり,ステップ(i)において,押出方向(Dc方向)に対し垂直な面内における,押出に際し最も圧縮比が大となる方向をDa方向とし,Da方向とDc方向の双方に垂直な方向をDb方向とするとき,Db方向の圧縮比がDa方向の圧縮比より小さく,且つ,ステップ(ii)において,該切断がDa方向に平行な面で行われることを特徴とするものである,製造方法。
(2)「Da方向における圧縮比/Db方向における圧縮比」が1.5以上である,上記1の製造方法。
(3)ステップ(ii)において,切断が,Dc方向に垂直な面で行われるものである,上記1又は2の製造方法。
(4)ステップ(i)において,押出用金型の出口開口部の断面が少なくとも5mm×5mmの領域を有するものである,上記1ないし3の何れかの製造方法。
(5)「Da方向における圧縮比×Db方向における圧縮比」が1.0以上である,上記1ないし4の何れかの製造方法。
(6)Da方向における圧縮比が1.5以上である,上記1ないし5の何れかの製造方法。
(7)該透明無機固体基材がガラスである,上記1ないし6の何れかの製造方法。
(8)該金属が銀又は銀合金である,上記1ないし6の何れかの製造方法。
(9)該扁平化金属粒子のDa方向の軸長(a)に対する該粒子のDb方向の幅(b)の比の平均値が少なくとも1.2であることを特徴とする,上記1ないし8の何れかの製造方法。
(10)ステップ(i)において,押出成形のために該透明無機固体基材に加えられる圧力が100kgf/cm以上である,上記1ないし9の何れかの製造方法。
(11)Da方向の圧縮比及びDb方向の圧縮比が,押出用金型の出口開口のDa方向幅及びDb方向幅に対する,該透明無機固体基材が装填されるコンテナ部の内腔の,それぞれDa方向幅及びDb方向幅の比であり,且つ該コンテナ部の内面と出口開口の内面とが段差なく繋がっているものである,上記1ないし10の何れかの製造方法。
(12)所定方向に配向した扁平化ハロゲン化金属粒子を分散して含有する透明無機固体基材の製造方法であって,
ハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有する透明無機固体基材を加熱軟化状態で押出成形に付すことにより変形させて押出成形体を得るステップを含み,
押出方向(Dc方向)に対し垂直な面内における,押出に際し最も圧縮比が大となる方向をDa方向とし,Da方向とDc方向の双方に垂直な方向をDb方向とするとき,Db方向の圧縮比がDa方向の圧縮比より小さいものであることを特徴とする,製造方法。
(13)Da方向の圧縮比及びDb方向の圧縮比が,押出用金型の出口開口のDa方向幅及びDb方向幅に対する,該透明無機固体基材が装填されるコンテナ部の内腔の,それぞれDa方向幅及びDb方向幅の比であり,且つ該コンテナ部の内面と出口開口の内面とが段差なく繋がっているものである,上記12の製造方法。
(14)「Da方向における圧縮比/Db方向における圧縮比」が1.5以上である,上記12又は13の製造方法。
(15)「Da方向における圧縮比×Db方向における圧縮比」が1.0以上である,上記12ないし14の何れかの製造方法。
(16)Da方向における圧縮比が1.5以上である,上記12ないし15の何れかの製造方法。
(17)該透明無機固体基材がガラスである,上記12ないし16の何れかの製造方法。
(18)該扁平化ハロゲン化金属粒子のDa方向の軸長(a)に対する該粒子のDb方向の幅(b)の比の平均値が少なくとも1.2であることを特徴とする,上記12ないし17の何れかの製造方法。
(19)偏光性材料の製造方法であって,上記12ないし18の何れかの製造方法により,該押出成形体を製造し,これを還元処理に付すステップを含んでなる,製造方法。
(20)偏光子の製造方法であって,上記19の製造方法により偏光性材料を製造し,これをDa方向に平行な面で切断することを含んでなる,製造方法。
(21)切断を,Dc方向に垂直な面で行うものである,上記20の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
上記構成になる本発明によれば,扁平化金属粒子利用したタイプの偏光子を得ることができる。更に,本発明によれば,変形を受けるプリフォームにおける応力分布および応力履歴がプリフォームのほぼ全体にわたって均一となる。このため,得られた成形体中のハロゲン化金属粒子が還元されたときに生じる偏光性能も,成形体のほぼ全体にわたって均一となり,そこから,扁平化金属粒子利用したタイプの,偏光性能の揃った多数の偏光子を切り出すことができ,そのようなタイプの偏光子の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は,プリフォームをDa方向とDb方向の両方向に圧縮するための押出用金型の内面の形状の一例を示す概要図である。
【図2】図2は,プリフォームをDa方向にのみ圧縮するための押出用金型の内面の形状の一例を示す概要図である。
【図3】図3は,プリフォームをDa方向には圧縮しDb方向には拡張させるための押出用金型の内面の形状の一例を示す概要図である。
【図4】図4は,実施例の熱処理済母材ガラスの透過率曲線を示すグラフである。
【図5】図5は,実施例で用いた押出用金型の形状を示す概要図である。
【図6】図6は,実施例で用いた押出用金型及び得られた押出成形体の外観を示す図面代用写真である。
【図7】図7は,作成したプレートの,直線偏光に対する透過率曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の偏光性材料及び偏光子の製造は,例えば,従来周知の方法で製造した,ハロゲン化銀等のハロゲン化金属粒子(球状)を分散して含有する透明無機固体基材(ガラス等)よりなるプリフォームと,押出方向(Dc方向)に対し垂直な面内において直交する2方向により圧縮比が異なるように対向する内壁の間隔を調整した押出用金型とを準備し,当該プリフォームを加熱軟化状態において当該金型から押出し,それにより粒子も同時に,押出方向に対し垂直な少なくとも一つの方向に圧縮することで扁平化させ,冷却固化後,得られた押出成形体を,圧縮比が最も大である方向(これに粒子の短軸の方向が一致する)に平行な面でプレート状に切り出し,含まれている扁平化ハロゲン化金属粒子を金属粒子へと還元することにより,行うことができる。また,プレート状に切り出すより前に,押出成形体を還元処理に付し,含まれている扁平化ハロゲン化金属粒子を金属粒子に変換して偏光性材料とし,その後にそこから偏光子をプレート状に切り出してもよい。
【0021】
本発明において,球に関して「扁平化」した形状とは,直角座標(デカルト座標)の原点に球の中心を置き,(i) 球の寸法を例えばx軸方向に縮小して得られる形状(偏球形:oblate)のほか,(ii) x軸方向のそのような縮小と同時に例えばz軸方向に寸法を拡大することにより得られる形状も包含する。現実の球状粒子は体積が実質上一定であることから,x軸方向への圧縮はこれと直交する放射方向に径の拡張をもたらすが,得られる形状は,上記(i)で得られる何れかの偏球と実質上相似である。また,現実の球状粒子をx軸方向に圧縮するのと同時にy軸方向へそれが拡張するのを阻止又は抑制することにより,z軸方向への拡張が余分に起こるが,これにより得られる形状は,上記(ii)で得られる形状に概略相似である。
【0022】
なお,上記(ii)のタイプの形状も,y軸方向の拡張の抑制の程度が小さいほど上記(i)のタイプの形状に近づき,抑制の程度がゼロであれば上記(i)のタイプの形状に完全に一致するから,上記(i)の形状は上記(ii)の形状の特別の場合として,後者に包含される。また,本発明の偏光性材料中の扁平化金属粒子(及び還元前の扁平化したハロゲン化金属粒子)は,数学的な厳密さを以て上記(i)又は(ii)の形状に一致することまでが求められるものでなく,実質上それら(i)又は(ii)のタイプの形状として観念することができるものであれば足りる。すなわち,(i)のタイプの粒子では,1本の短軸を有し,該短軸に垂直な断面において実質的に円形であればよく,(ii)のタイプの粒子では,一本の短軸を有し,該短軸に垂直な断面において実質的に楕円形であればよい。
【0023】
本発明において,扁平化金属粒子について「短軸」とは,該粒子の3軸中,最も短い長さ(a)のものをいう。上記(i)のタイプの偏球形の扁平化金属粒子の場合,2本の長軸の方向は不定であるが,それらの長さ(b,c)は定まり,それらは互いに等しい(すなわち,a<b=c)。また,異なる長さの3軸を有する上記(ii)のタイプの扁平化金属粒子の場合,短軸(長さa)以外の2本の軸を長軸とし,それらのうち短い方の長さをb,長い方の長さをcで表す(すなわち,a<b<c)。
【0024】
従来の紡錘形金属粒子に基づく偏光子においては,粒子の長軸を偏光子の表面(光入射面)に平行に配向させることで偏光特性を得ているが,本発明により得られる偏光子では,粒子の短軸が偏光子の表面に平行になる。特に,上記(i)のタイプの扁平化金属粒子では,そもそも長軸の方向は不定である。また長さの異なる3本の軸を有する上記(ii)のタイプの扁平化金属粒子を用いる偏光子では,偏光子の表面に粒子の短軸が平行である一方,粒子は,表面に垂直な深さ方向に,短軸より長い軸を持っており,これは従来のように粒子の長軸を表面に平行に配向させて用いる偏光子には無い,重要な特徴の一つである。本発明により得られる偏光子において,この表面に垂直な,深さ方向の軸は,2本の長軸の何れであることもできる。また,長い方の長軸を偏光子の表面に対して垂直に,すなわち深さ方向に配向させた場合,青色〜緑色領域に優れた偏光子を製造する上で,とりわけ有利である。
【0025】
本発明において,透明無機固体基材中に懸濁して含有される粒子のある軸について「配向」しているとは,含有されるそれらの粒子の当該軸の方向の分布に,全体として特定の方向の偏りがある(すなわち,等方性でない)ことをいう。この特定方向の偏りは,必ずしも当該軸の全てが実質上正確に当該特定の方向を向いていることまでは要しない。何故なら,偏光特性は,基材中に分散して含まれるそれらの無数の粒子があくまでも集団として入射光と相互作用する結果として観察される特性であるため,粒子の集団が全体として(すなわち,粒子の軸方向の分布の平均値として),特定方向に軸を向けていれば,偏光特性は得られるからである。
【0026】
本発明において透明無機固体基材は,偏光子として利用しようとする波長帯域において,利用しようとする厚みの場合に80%以上の内部透過率(表面及び裏面での反射損失を除いた,物体の内部を光が横切る際の透過率)を示す無機材料であることが好ましい。また,吸収極大を短波長へシフトさせる上で,透明無機固体基材の屈折率は,1.60以下であることが有利であり,1.55以下であることが更に有利である。
【0027】
本発明において,扁平化金属粒子について「短軸の長さに対する該粒子の幅の比の平均値」とは,上記(i)のタイプの扁平化金属粒子の場合,についていうときは,偏光性材料中に観察される個々の粒子について「幅(すなわち長軸の長さ)/短軸の長さ」により求められる比の個数平均を意味する。また上記(ii)のタイプの扁平化金属粒子についていうときは,同様に,個々の粒子について「長軸の長さ/短軸の長さ」により求められる比の個数平均を意味し,2本の長軸に関してそれぞれ算出される。
【0028】
本発明において偏光性材料中の扁平化金属粒子の短軸の長さ(a)に対する該粒子の幅(又は,長軸の長さ(b=c))の比の平均値は,1.2以上であることが好ましく,1.4以上であることがより好ましい。この比に特段の上限はないが,通常は100以下でよく,より好ましくは70以下,更に好ましくは40以下,なおも好ましくは15以下,特に好ましくは10以下とすればよい。
【0029】
また,異なる長さの3軸(a,b,c)(それぞれの長さ,a<b<c)を有する上記(ii)のタイプの粒子の場合も,同様に,aに対する,bの比の平均値は,少なくとも1.2であることが好ましく,1.4以上であることがより好ましい。また,bに対するcの比の平均値は,1を超える任意の値に設定することができるが,少なくとも1.2とすることがこのタイプの粒子の更なる利点を生かす上で好ましく,1.4以上とすることがより好ましく,3以上とすることが更に好ましく,5以上とすることが特に好ましい。bに対するcの比に特段の上限はないが,通常は10以下で十分であり,8以下としてもよい。また,aに対するcの比の平均値は,上記のa及びbの比の平均値と,b及びcの比の平均値とに従って定まり,それ以外に特段の制限はない。
【0030】
扁平化金属粒子は,その粒子径(短軸の長さ)の平均値が小さいほど短波長域でも高透過率となりやすく,その粒子径は1000nm以下であることが好ましく,500nm以下であることがより好ましく,100nm以下であることが更に好ましい。
【0031】
上記のような形状の粒子を得るために,本発明において用いる金型は,主たる圧縮方向(Da方向)の圧縮比(ガラスの圧縮前の寸法/圧縮後の寸法)が1.5以上となるものであることが好ましく,2.0以上となるものであることがより好ましく,2.5以上となるものであることが更に好ましい。
【0032】
生成させようとする粒子の具体的形状に応じて,Db方向(Da方向に垂直)については,プリフォームは,圧縮してもよく,無圧縮でもよく,また,拡張を起こさせてもよい。
【0033】
図1は,プリフォームをDa方向のみならずDb方向にも圧縮させるための押出用金型の内面の形状の一例を示す概要図である。図1において,金型の出口開口1は,Da方向幅のみならずDb方向幅もコンテナ部2の内腔の幅より縮小させてあり,コンテナ部2の内面と出口開口1の内面とは,傾斜面3,4で段差なく滑らかに繋がっている。
図2は,プリフォームをDa方向にのみ圧縮しDb方向には圧縮しないでおくための押出用金型の内面の形状の一例を示す概要図である。図において,出口開口1のDa方向幅は,コンテナ部2の内腔のDa方向幅に比して縮小させてあるが,Db方向に関しては,コンテナ部2の内腔の幅と出口開口1の幅とは同一である。
図3は,プリフォームをDa方向に圧縮しDb方向には拡張させるための押出用金型の内面の形状の一例を示す概要図である。図において,出口開口1のDb方向幅は,コンテナ部2の内腔のDb方向幅より拡張させてある。
【0034】
上記において,粒子の軸長aに対するbの比に大きな影響を与える「Da方向の圧縮比/Db方向の圧縮比」は,1.5以上とするのが好ましく,2.0以上にするのがより好ましく,2.5以上とするのが特に好ましい。
【0035】
また,粒子の軸長aに対する軸長cの比に大きな影響を与える,「Da方向の圧縮比×Db方向の圧縮比」は,1.0以上となるようにすることが好ましく,1.5以上とすることがより好ましく,2.0以上とすることが更に好ましい。
【0036】
また,偏光子としての利用面積を広くするために,押出用金型の出口開口の断面は,少なくとも5mm×5mmの領域を有することが好ましく,7mm×7mm以上の領域を有することがより好ましく,10mm×10mm以上の領域を有することが更に好ましい。
【0037】
本発明の偏光性材料は,透明無機固体基材中に,従来周知の紡錘形の金属粒子ではなく,上述の扁平化金属粒子を所定の配向で含有させることにより得られる。すなわち,本発明は,透明無機固体基材中に含有させた金属粒子の形状に特徴があり,それが優れた偏光性をもたらす。従って,透明無機固体基材としては,従来紡錘形の金属粒子を用いた偏光子において基材として用いることができることの知られている種々の材料(例えば様々な組成のガラス)を適宜用いることができ,またそれ以外の透明無機固体材料であっても,扁平化金属粒子を所定の配向で分散して含有させることのできるものであれば,適宜使用することができる。
【0038】
本発明において,扁平化金属粒子を構成する金属として特に好ましいのは,銀又は銀合金である。他の金属例えば,従来の紡錘形の金属粒子に基づく偏光子に用いられていた銅やカドミウム,それらよりなる合金も適宜使用することができる。「銀合金」としては,銀と銅,カドミウム,インジウムとの合金が挙げられるが,それ以外の金属と銀との合金であってもよい。銅,カドミウム,インジウム以外の金属と銀と合金の場合,合金中の銀の含有量は,50重量%以上であることが好ましい。
【0039】
扁平化金属粒子を構成する金属として銅,カドミウム,インジウム及び/又はそれらの合金,又は銅,カドミウム,インジウムと銀との合金の何れを用いる場合も,銀のみを用いる場合も,同様に,ハロゲン化金属の形で,例えばガラス基材中に配合し,加熱して球状のハロゲン化金属粒子として分散して析出させ,ガラスを押出成形してハロゲン化金属粒子を扁平化し,ガラスの冷却固化後に,大気圧下の水素ガス中での加熱等の適宜な方法で還元することにより,本発明の偏光性材料を与え,そこから偏光子を作製することができる。
【0040】
ハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有するガラスは,組成としてハロゲン及び当該金属を含有する適宜の組成になるガラスを製造し,これを熱処理することにより得ることができる。
【0041】
本発明において,透明無機固体基材中のハロゲン化金属の球状粒子を扁平化し,その短軸を(及び該当する場合は他の軸も)配向させるステップでは,ガラスを軟化する温度まで加熱し,ガラスに一方向から圧力を加えてダイスから押出すことで,ガラスおよびその内部に分散した粒子を変形させ,出口開口においては,除荷によって粒子が元の球状に戻ってしまう事態が起こらない温度(通常,ガラス転移温度より50度低い温度まで冷却すればよい)まで速やかに冷却させる。軟化させる程度は,押出金型の形状,加える圧力の大きさ,及び加圧時間によって異なるが,概ねη=10〜1014dPa・sの範囲である。
【0042】
ガラスにかける押出圧力の大きさは適宜であるが,ハロゲン化金属粒子を充分に変形させるために,通常は少なくとも100kgf/cmとすることが好ましく,300kgf/cm以上とすることがより好ましく,500kgf/cm以上とすることが更に好ましい。但し,緩やかに押出が行われる限り,加熱下におけるガラスの粘度に応じて圧力は適宜設定すればよい。押出にかける時間も適宜であってよいが,通常,例えば数分〜数時間とすることができる。
【0043】
本発明において,透明無機固体基材としてガラスを用いる場合,種々の組成のガラスを適宜用いてよい。例えば,SiO,B,Al,アルカリ金属酸化物(RO)などを主成分とするガラスにAg,ハロゲンを添加したものを用いることができる。また例えば,ハロゲン化金属の粒子を分散して含有させたことが知られている,米国特許4479819号公報(特許文献1),米国特許5252524号公報(特許文献2),米国特許6606885号公報(特許文献3),米国特許6777359号公報(特許文献4),特開2010−150122号公報(特許文献5),米国特許4304584号公報(特許文献10)に記載の組成のガラスを用いてよい。
【0044】
例えば組成として,
SiO:20〜67重量%
:14〜35重量%
Al:0〜25重量%
:0〜25重量%
LiO+NaO+KO+CsO:4〜20重量%
を主成分とするガラスを好適に使用することができる。
【0045】
これらのガラスに含有させる銀及びハロゲンとしては,例えば,
Ag:0.05〜1.5重量%,
Cl+Br:Agの化学当量以上,
等とすることができるが,この範囲に限定されない。
【0046】
他に,任意成分として,MgO,CaO,SrO,BaO,ZnO,PbO,TiO,ZrO,Nb,La,CuO,CeO,Sb,F等を適宜含有してもよい。
【0047】
扁平化金属粒子として銀を採用する場合,もとのガラス基材に含有させる銀の量は,0.05重量%以上とすることが好ましく,0.10重量%以上とすることがより好ましく,0.15重量%以上とすることが更に好ましい。
【実施例】
【0048】
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0049】
〔実施例1〕
<母材ガラスの製造>
重量%でSiO:49.8,B:21.3,Al:6.9,ZrO:8.5,LiO:5.0,NaO:5.0,KO:4.2,Ag:0.43,Cl:0.39の組成からなる母材ガラスを作製した。すなわち,それぞれの組成を与えるように混合した原料を500ccの白金坩堝にて1450℃で溶解した後,鋳型に流し込み,ガラス転移点以下まで一旦冷却し,母材ガラスブロックを得た。作製したガラスのガラス転移点は503℃,降伏点は557℃(TMAで測定),屈折率ndは1.527であった。
【0050】
上記母材ガラスブロックを,640℃に保持した電気炉中で4時間熱処理し,熱処理済母材ガラスブロックを作製した。この熱処理済母材ガラスブロックは,ハロゲン化銀結晶の析出によって白色に濁っていた。熱処理済母材ガラスブロックを1mm厚に研磨し,分光光度計を用いて透過率を測定した。透過率曲線を図4に示す。
【0051】
また,熱処理済母材ガラスについて,析出したハロゲン化銀結晶の粒径の計測を行った。計測の手順は次のとおりである。すなわち,熱処理済母材ガラスを破断して平滑面を得た。得られた平滑面を1重量%HF水溶液で20秒間エッチングした。析出粒子部分が選択的に溶解してできる球形の孔を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して行った。このときの平均粒子径(個数平均粒子径)は60nmであった。
【0052】
<押出成形>
熱処理済母材ガラスを30mm×15mm×40mmの角柱状に加工し,プリフォームを得た。図5に概略を示した30mm×15mmの入口側(コンテナ部側)の開口寸法と,10mm×15mmの出口側開口寸法とを有する押出用金型を作製した。この金型では,Da方向の圧縮比は30mm/10mm=3.0である。またDb方向の寸法は変化せず同方向の圧縮比は1.0である。プリフォームを金型に挿入し,620℃まで加熱し,3000kgfの圧縮荷重を2時間に亘ってかけた。これによりプリフォームに加えた圧力は約670kgf/cmであった。
こうして得られた押出成形体7は,図6に示す形状をしており,10mm×15mmの断面を有し,長さは60mmであった。
押出成形体中のハロゲン化銀が扁平形に変化していることを走査型電子顕微鏡像で確認した。押出後のガラス中のハロゲン化銀が三軸異方性粒子に変化していることを走査型電子顕微鏡像で確認した。ガラスを,押出方向であるDc方向,圧縮方向であるDa方向,非変形方向であるDb方向の各軸方向にそれぞれ垂直な3面に沿って破断し,各破断面に対し1重量%HF水溶液で20秒間のエッチングを行い,ハロゲン化銀粒子の除去された穴の形状を観察した。
これらの穴のアスペクト比の平均値はそれぞれ,b/a=1.20,c/b=1.55,c/a=1.98であった。
【0053】
<還元処理>
押出成形体をDc方向に対し垂直に切断してプレート状のガラスを得,これを0.4mm厚に精密研磨した後,水素還元処理した。還元処理条件は,大気圧下で100%水素ガスを流量10ml/分でフローしながら480℃で4時間とした。
【0054】
また,ガラス中の銀粒子が三軸異方性粒子であれば,吸収極大波長が三方向のそれぞれで相互に異なる筈である。これを確認するため,上記で押出したガラスをDa方向とDc方向の双方に平行(従ってDb方向に垂直)な面で切断して得たプレート状のガラスについても,同様の還元処理を行った。
【0055】
<評価>
こうして得られた偏光子について,グラントムソンプリズムを設置した分光光度計を用いて透過率を評価した。図7に透過率曲線を示す。図において,E//aは,Dc方向に垂直に切断して得たプレートの,電場面がDa方向に平行な直線偏光に対する透過率曲線を示し,E//bは,同じプレートの,電場面がDb方向に平行な直線偏光に対する透過率曲線を示す。またE//cは,Db方向に垂直に切断して得たプレートの,電場面がDc方向に平行な直線偏光に対する透過率曲線を示す。
Da,Db,Dcそれぞれの吸収波長が異なっており,扁平化金属粒子が配向されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は,扁平化金属粒子を用いた偏光性材料及び該偏光性材料からなる偏光子のより生産性の高い製造方法を与える。
【符号の説明】
【0057】
1=出口開口
2=コンテナ部
3=傾斜面
4=傾斜面
5=ピストン
6=ダイス
7=押出成形体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散され所定方向に配向された扁平化金属粒子を含有する偏光子の製造方法であって,
(i) ハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有する透明無機固体基材を加熱軟化状態で押出成形に付して変形させるステップと,
(ii) 得られた押出成形体を,冷却固化後,プレート状に切断するステップと,そして
(iii) 切断により得られた各プレートを還元処理に付すステップと
を含んでなり,ステップ(i)において,押出方向(Dc方向)に対し垂直な面内における,押し出しに際し最も圧縮比が大となる方向をDa方向とし,Da方向とDc方向の双方に垂直な方向をDb方向とするとき,Db方向の圧縮比がDa方向の圧縮比より小さく,且つ,ステップ(ii)において,該切断がDa方向に平行な面で行われることを特徴とするものである,製造方法。
【請求項2】
「Da方向における圧縮比/Db方向における圧縮比」が1.5以上である,上記1の製造方法。
【請求項3】
ステップ(ii)において,切断が,Dc方向に垂直な面で行われるものである,上記1又は2の製造方法。
【請求項4】
ステップ(i)において,押出用金型の出口開口部の断面が少なくとも5mm×5mmの領域を有するものである,上記1ないし3の何れかの製造方法。
【請求項5】
「Da方向における圧縮比×Db方向における圧縮比」が1.0以上である,上記1ないし4の何れかの製造方法。
【請求項6】
Da方向における圧縮比が1.5以上である,上記1ないし5の何れかの製造方法。
【請求項7】
該透明無機固体基材がガラスである,上記1ないし6の何れかの製造方法。
【請求項8】
該金属が銀又は銀合金である,上記1ないし6の何れかの製造方法。
【請求項9】
該扁平化金属粒子のDa方向の軸長(a)に対する該粒子のDb方向の幅(b)の比の平均値が少なくとも1.2であることを特徴とする,上記1ないし8の何れかの製造方法。
【請求項10】
ステップ(i)において,押出成形のために該透明無機固体基材に加えられる圧力が100kgf/cm以上である,上記1ないし9の何れかの製造方法。
【請求項11】
Da方向の圧縮比及びDb方向の圧縮比が,押出用金型の出口開口のDa方向幅及びDb方向幅に対する,該透明無機固体基材が装填されるコンテナ部の内腔の,それぞれDa方向幅及びDb方向幅の比であり,且つ該コンテナ部の内面と出口開口の内面とが段差なく繋がっているものである,上記1ないし10の何れかの製造方法。
【請求項12】
所定方向に配向した扁平化ハロゲン化金属粒子を分散して含有する透明無機固体基材の製造方法であって,
ハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有する透明無機固体基材を加熱軟化状態で押出成形に付すことにより変形させて押出成形体を得るステップを含み,
押出方向(Dc方向)に対し垂直な面内における,押し出しに際し最も圧縮比が大となる方向をDa方向とし,Da方向とDc方向の双方に垂直な方向をDb方向とするとき,Db方向の圧縮比がDa方向の圧縮比より小さいものであることを特徴とする,製造方法。
【請求項13】
Da方向の圧縮比及びDb方向の圧縮比が,押出用金型の出口開口のDa方向幅及びDb方向幅に対する,該透明無機固体基材が装填されるコンテナ部の内腔の,それぞれDa方向幅及びDb方向幅の比であり,且つ該コンテナ部の内面と出口開口の内面とが段差なく繋がっているものである,上記12の製造方法。
【請求項14】
「Da方向における圧縮比/Db方向における圧縮比」が1.5以上である,上記12又は13の製造方法。
【請求項15】
「Da方向における圧縮比×Db方向における圧縮比」が1.0以上である,上記12ないし14の何れかの製造方法。
【請求項16】
Da方向における圧縮比が1.5以上である,上記12ないし15の何れかの製造方法。
【請求項17】
該透明無機固体基材がガラスである,上記12ないし16の何れかの製造方法。
【請求項18】
該扁平化ハロゲン化金属粒子のDa方向の軸長(a)に対する該粒子のDb方向の幅(b)の比の平均値が少なくとも1.2であることを特徴とする,上記12ないし17の何れかの製造方法。
【請求項19】
偏光性材料の製造方法であって,上記12ないし18の何れかの製造方法により,該押出成形体を製造し,これを還元処理に付すステップを含んでなる,製造方法。
【請求項20】
偏光子の製造方法であって,上記19の製造方法により偏光性材料を製造し,これをDa方向に平行な面で切断することを含んでなる,製造方法。
【請求項21】
切断を,Dc方向に垂直な面で行うものである,請求項20の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−128041(P2012−128041A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277533(P2010−277533)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】