説明

偏光板の製造方法

【課題】偏光フィルムと保護層との接着強度が高く、耐擦傷性に優れた偏光板の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る偏光板の製造方法は、(a)偏光フィルムと前記偏光フィルムの第1の面の上に形成された第1の保護層との間、および前記偏光フィルムと前記偏光フィルムの第2の面の上に形成された第2の保護層との間に、放射線硬化型接着剤用組成物を供給する工程と、(b)前記偏光フィルムと、前記第1の保護層と、前記第2の保護層と、を前記放射線硬化型接着剤用組成物を介して貼合する工程と、(c)放射線を照射することにより前記放射線硬化型接着剤用組成物を硬化させて、放射線硬化型接着剤層を形成する工程と、を含み、少なくとも第1の保護層は、ケン化処理を行っていないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(以下、「LCD」という。)は、薄型、軽量、低消費電力という特徴から、パソコンのモニターを始めとしてテレビモニター、携帯電話などの表示デバイスとして使用されている。そして、LCDは近年、耐久性および耐熱性の要求される自動車用途、例えば、カーナビゲーション、自動車用インナーパネルといった用途に拡大されつつある。
【0003】
LCDは、一般に、電場の印加により液晶分子の配向方向を制御することで偏光の通過、遮断を切り替える機能を持つ液晶セルと、それを挟む状態で透過軸を直角に配置された二枚の偏光板から構成される。
【0004】
偏光板は、通常、透明性に優れた基板(光学フィルム)と、偏光子から形成される。また、偏光板は、光学フィルムを延伸し、透過光に位相差を与える機能を付与したフィルム(位相差フィルム)と、偏光子から形成されていてもよい。
【0005】
前記偏光子としては、一般にポリビニルアルコール(以下、「PVA」という。)にヨウ素や二色性染料を吸着、分散させた一軸配向フィルムが用いられている。このPVA系偏光子は、偏光機能に優れているが、耐熱性が低く、温度変化や水分量の変化によって寸法変化が起こり、偏光機能の低下をきたすことが知られている。それを防止するため、前記基板が、PVA系偏光子の両面に保護層として接着されている。保護層としては、従来からトリアセチルセルロース樹脂フィルムや環状オレフィン系樹脂フィルムが主に用いられ、接着剤としてPVAを含有する水系の接着剤が用いられている。トリアセチルセルロース樹脂フィルムを水系接着剤で接着する場合は、十分な接着強度を得るために、接着前にトリアセチルセルロース樹脂フィルムを高温のアルカリ水溶液に浸漬し、その表面のアセチル基をケン化して除去する必要がある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
一方、昨今の液晶ディスプレイの大型化に伴い、ディスプレイへの写り込みが問題となり、その対策としてディスプレイの表面に反射防止層を形成することが一般的に行われている。その手法の一つに、ディスプレイ表面に保護層より屈折率の低い低屈折率層を設ける手法があり、低屈折率層としてコロイダルシリカや中空シリカ粒子を含有する硬化膜を使用することが提案されている。
【0007】
しかしながら、シリカ粒子、特に中空シリカ粒子を含むフィルムをケン化処理すると、中空シリカ粒子は侵食されてしまい、反射防止層の耐擦傷性が低下する原因となっていた。ケン化処理の際に該反射防止層を保護するために、プロテクトフィルムを貼合する方法もあるが、その分コストが上昇してしまう。
【特許文献1】特開平9−258023号公報
【特許文献2】特開平10−268133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、偏光フィルムと保護層との接着強度が高く、耐擦傷性に優れた偏光板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る偏光板の製造方法は、(a)偏光フィルムと前記偏光フィルムの第1の面の上に形成された第1の保護層との間、および前記偏光フィルムと前記偏光フィルムの第2の面の上に形成された第2の保護層との間に、放射線硬化型接着剤用組成物を供給する工程と、(b)前記偏光フィルムと、前記第1の保護層と、前記第2の保護層と、を前記放射線硬化型接着剤用組成物を介して貼合する工程と、(c)放射線を照射することにより前記放射線硬化型接着剤用組成物を硬化させて、放射線硬化型接着剤層を形成する工程と、を含み、少なくとも第1の保護層は、ケン化処理を行っていないことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る偏光板の製造方法は、前記工程(a)の前に、さらに、前記第1の保護層または前記第2の保護層の前記偏光フィルムを貼合する面にコロナ放電処理を行う工程を含むことができる。
【0011】
本発明に係る偏光板の製造方法において、前記第1の保護層および前記第2の保護層の少なくとも一方は、紫外線吸収剤を含むことができる。
【0012】
本発明に係る偏光板の製造方法において、前記第1の保護層または前記第2の保護層のうち紫外線透過率の高い保護層側から放射線を照射することができる。
【0013】
本発明に係る偏光板の製造方法において、前記第2の保護層は、位相差フィルムの機能を兼ねることができる。
【0014】
本発明に係る偏光板の製造方法は、さらに、前記第1の保護層の上に、ハードコート層を形成する工程を含むことができる。
【0015】
本発明に係る偏光板の製造方法において、前記ハードコート層は、帯電防止機能を有することができる。
【0016】
本発明に係る偏光板の製造方法は、さらに、前記ハードコート層の上に、低屈折率層を形成する工程を含むことができる。
【0017】
本発明に係る偏光板の製造方法において、前記低屈折率層は、シリカ系中空粒子を含むことができる。
【0018】
本発明に係る偏光板の製造方法において、前記放射線硬化型接着剤層は、少なくとも下記成分(d)と、(e)と、(f)とを含む放射線硬化性液状樹脂組成物の硬化物であることができる。
(d)脂環式エポキシ化合物、
(e)水酸基を少なくとも1個含有し、数平均分子量が500以上である化合物、
(f)光酸発生剤。
【0019】
本発明に係る偏光板の製造方法において、さらに、前記放射線硬化性液状樹脂組成物は、下記式(1)で表される成分を含むことができる。
【化2】

(R、RおよびRは、それぞれ独立に一価の有機基であり、R〜Rのうち少なくとも2つが−ROCOCR=CHであり、Rは炭素数2〜8の2価の有機基であり、Rは水素原子またはメチル基である。)
【0020】
本発明に係る偏光板の製造方法において、さらに、前記放射線硬化性液状樹脂組成物は、脂肪族エポキシ化合物を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
上記偏光板の製造方法によれば、偏光フィルムと保護層とを放射線硬化型接着剤を介して貼合するため、従来の水系接着剤を用いる際に必要とされていたケン化処理工程を省くことができる。これにより、シリカ系中空粒子含有層の劣化を防止することができ、偏光板製造プロセスにおける耐擦傷性の低下を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
1.偏光板の構成
まず、本実施形態に係る偏光板の製造方法によって、製造される偏光板の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る偏光板100の断面を示す模式図である。偏光板100は、偏光フィルム10と、偏光フィルム10の第1の面の上に、第1の放射線硬化型接着剤層12を介して形成された第1の保護層14と、前記偏光フィルム10の第2の面の上に、第2の放射線硬化型接着剤層16を介して形成された第2の保護層18と、から構成されている。偏光板100には、第1の保護層14の面の上にハードコート層20が設けられている。さらに、偏光板100には、ハードコート層20の面の上に低屈折率層22が設けられている。偏光板100には、図1に示すように、第2の保護層18の面の上に粘着剤層80を介して、液晶パネル90を設置することができる。
【0024】
偏光フィルム10は、入射光を互いに直行する2つの偏光成分に分け、その一方のみを通過させ、他の成分を吸収または分散させる働きを有するものをいずれも用いることができ、特に限定されない。
【0025】
第1の保護層14および第2の保護層18の少なくとも一方は、紫外線吸収剤を含んでいるとよい。この紫外線吸収剤により、液晶デバイスを紫外線から保護することができる。ところが、放射線硬化型接着剤層12および16を硬化させるためには、少なくとも第1の保護層側または第2の保護層側から、紫外線を照射する必要がある。第1の保護層14または第2の保護層18に紫外線吸収剤が含まれていると、紫外線を照射しても放射線硬化型接着剤層12および16を十分に硬化することができない場合がある。そこで、第1の保護層14または第2の保護層18のうち、紫外線透過率の高い保護層側から放射線を照射するとよい。もちろん、両側から放射線を照射してもよい。
【0026】
紫外線吸収剤を含む保護層が偏光フィルム10の少なくとも一方の面にあれば、本来の目的とする液晶デバイスへの影響を抑制できるが、偏光フィルム10へ与える影響を考慮すると、紫外線吸収剤を第1の保護層へ添加することが好ましい。
【0027】
第2の保護層18は、偏光フィルム10を保護する機能のほか、液晶層の着色による補償や視野角による位相差変化の補償等の位相差フィルムとしての機能を兼ねることができる。例えば、第2の保護層18としてポリマーフィルムを延伸することにより得られた複屈折フィルムを用いると、液晶層の複屈折を補償し、着色を除去することができる。
【0028】
ハードコート層20は、液晶セル90への漏電を防止し、偏光板100の機械的強度を高めることができる。例えば、ハードコート層20に帯電防止剤を添加することにより、帯電防止機能を備えることができる。
【0029】
低屈折率層22を設けることにより低屈折率化することができる。これにより、偏光板100に反射防止機能を備えることができる。
【0030】
偏光板100は、良好な偏光機能を有し、高温および高湿度の雰囲気下においても、放射線硬化型接着剤層12および16を介することにより、偏光フィルム10と第1の保護層14、および偏光フィルム10と第2の保護層18との強固な接着が長時間維持される。また、偏光板100は、耐熱性、耐薬品性などの特性にも優れており、長期使用においても剥離、変形、位相差変化などが生じにくく、高い信頼性を有し、耐久性に優れ、LCDなどに好適に用いることができる。
【0031】
偏光フィルム、第1および第2の保護層、放射線硬化型接着剤層、ハードコート層、シリカ系中空粒子含有層の機能および材質等については、後で詳細に説明する。
【0032】
2.偏光板の製造方法
本実施形態に係る偏光板の製造方法は、下記の工程(a)〜(c)を含み、少なくとも第1の保護層は、ケン化処理を行っていないことを特徴とするものである。
(a)偏光フィルムと前記偏光フィルムの第1の面の上に形成された第1の保護層との間、および前記偏光フィルムと前記偏光フィルムの第2の面の上に形成された第2の保護層との間に、放射線硬化型接着剤用組成物を供給する工程、
(b)前記偏光フィルムと、前記第1の保護層と、前記第2の保護層と、を前記放射線硬化型接着剤用組成物を介して貼合する工程、
(c)放射線を照射することにより前記放射線硬化型接着剤用組成物を硬化させて、放射線硬化型接着剤層を形成する工程。
【0033】
以下、本実施の形態に係る偏光板100を製造するための方法について図面を用いて具体的に説明する。図2は、偏光板100の製造工程を説明するための模式図である。
【0034】
工程(a)では、偏光フィルム10と第1の保護層14との間に、第1の接着剤供給部60から、放射線硬化型接着剤用組成物を供給する。また、偏光フィルム10と第2の保護層18との間に、第2の接着剤供給部62から放射線硬化型接着剤用組成物を供給する。
【0035】
工程(b)では、偏光フィルム10と、第1の保護層14と、第2の保護層18と、を1対のロールからなる貼合ロール30,32により貼合し、圧着する。
【0036】
工程(c)では、第1の放射線照射部70および第2の放射線照射部72の少なくともいずれか一方から放射線を照射することにより、前記放射線硬化型接着剤用組成物を硬化させる。
【0037】
まず、工程(a)について詳細に説明する。
【0038】
第1の接着剤供給部60は、偏光フィルム10と第1の保護層14との間に、放射線硬化型接着剤用組成物を噴射することにより供給している。第2の接着剤供給部62は、偏光フィルム10と第2の保護層18との間に、放射線硬化型接着剤用組成物を噴射することにより供給している。
【0039】
放射線硬化型接着剤層の膜厚は、放射線硬化型接着剤用組成物の供給量により調整することができるが、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは1〜3μmである。また、接着剤供給部60,62は、放射線硬化型接着剤用組成物を噴射する装置に限定されず、放射線硬化型接着剤用組成物を塗布する装置に代えることもできる。
【0040】
第1の保護層14の偏光フィルム10と接着する面とは反対の面に、ハードコート層や低屈折率層をあらかじめ貼り合わせておいてもよい。例えば、第1の保護層14の上にハードコート層用組成物をワイヤーバーコータ等で均一の膜厚となるように塗工し、乾燥後、光を照射することにより、ハードコート層を形成することができる。さらに、ハードコート層の上に低屈折率層用組成物をワイヤーバーコータ等で均一の膜厚となるように塗工し、乾燥後、光を照射することにより、低屈折率層を形成することができる。
【0041】
なお、放射線硬化型接着剤用組成物を供給する前に、第1の保護層14および第2の保護層18の偏光フィルム10と貼合する面についてコロナ放電処理を行うとよい。これにより、偏光フィルム10とそれぞれの保護層との接着性を高めることができる。例えば、保護層として環状オレフィン系樹脂を用いた場合、環状オレフィン系樹脂は、その表面に極性基がないため接着性に優れないことがある。このような場合に、コロナ放電処理を行うと、高周波高電圧を利用して大気中にコロナ放電を発生させ、それにより生成される官能基とともに、その電子を樹脂表面に照射することにより、樹脂表面の改質を行うことができる。
【0042】
次に、工程(b)について説明する。
【0043】
偏光フィルム10と、第1の保護層14と、第2の保護層18と、を1対のロールからなる貼合ロール30,32により圧着し貼り合わせる。図2に示すロール貼合は、積層すべき全ての層を一度に圧着することができ、貼合の工程数を減らすことができるので、生産性に優れている。
【0044】
次に、工程(c)について説明する。
【0045】
第1の放射線照射部70および第2の放射線照射部72の少なくともいずれか一方から放射線を照射することにより、放射線硬化型接着剤層を硬化させる。放射線照射部に用いる光源としては、例えば、メタルハライドランプ、ハイパーメタルハライドランプ、LED光源等を使用することができる。放射線硬化型樹脂組成物中の光重合開始剤は、紫外線等の放射線により反応し、放射線硬化型接着剤層が瞬間的に硬化するため生産性に優れている。
【0046】
ここで、本実施形態に係る一具体例として、第1の保護層14は紫外線吸収剤を含み、第2の保護層18は紫外線吸収剤を含まない場合について説明する。この例では、第2の保護層18は、紫外線吸収剤を含まないため、放射線硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤として、紫外線領域に吸収波長をもつ化合物を選択することができる。光源として、例えばメタルハライドランプを用いて、ナトリウムのD線(波長365nm)を含む紫外線を照射することにより、放射線硬化型接着剤層を硬化させることができる。その結果、偏光フィルム10と第2の保護層14とを接着することができる。
【0047】
一方、第1の保護層14は、紫外線吸収剤を含んでいるため、第1の放射線照射部70から紫外線を照射しても第1の放射線硬化型接着剤層12を十分に硬化させることができない。そこで、放射線硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤として、400nm以上に吸収波長をもつ化合物を選択し、400nm以上の波長を含む放射線を第1の放射線照射部70から照射することにより、第1の放射線硬化型接着剤層12を硬化させることができる。光源として、例えば405nmの波長の照射強度が強いハイパーメタルハライドランプを用いることができる。その結果、偏光フィルム10と第1の保護層14とを接着することができる。
【0048】
上記工程(a)ないし(c)を経て圧着された偏光板100は、1対のロール40,42を介して偏光板巻取部50で巻き取られる。
【0049】
本実施形態に係る偏光板の製造方法は、偏光フィルム10と第1の保護層14,第2の保護層18を接着するためにPVA系接着剤等の水系接着剤を使用せず、放射線硬化型接着剤を使用する。これにより、例えば、従来から保護層として利用されているトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの表面に存在するアセチル基を除去するためのケン化処理を行う必要がない。本実施形態に係る偏光板の製造方法によれば、低屈折率層に添加された中空シリカ粒子は、ケン化処理により侵食されることなく、反射防止機能および耐擦傷性を損なうことがない。
【0050】
3.偏光フィルム
本実施形態に係る偏光板において、偏光フィルムとしては、偏光フィルムとしての機能、すなわち、入射光を互いに直行する2つの偏光成分に分け、その一方のみを通過させ、他の成分を吸収または分散させる働きを有するものをいずれも用いることができ、特に限定されない。本実施形態で用いられる偏光フィルムとしては、例えば、PVA・ヨウ素系偏光フィルム、PVA系フィルムに二色性染料を吸着配向させたPVA・染料系偏光フィルム、PVA系フィルムより脱水反応を誘起させたり、ポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸反応により、ポリエンを形成させたポリエン系偏光フィルム、分子内にカチオン基を含有する変性PVAからなるPVA系フィルムの表面および/または内部に二色性染料を有する偏光フィルムなどが挙げられる。これらのうち、最も好ましいものとしては、PVA・ヨウ素系偏光フィルムが挙げられる。
【0051】
本実施形態で用いられる偏光フィルムは、その製造方法も特に限定されない。例えば、PVA系フィルムに延伸後ヨウ素イオンを吸着させる方法、PVA系フィルムを二色性染料による染色後延伸する方法、PVA系フィルムを延伸後二色性染料で染色する方法、二色性染料をPVA系フィルムに印刷後延伸する方法、PVA系フィルムを延伸後、二色性染料を印刷する方法などの公知の方法が挙げられる。より具体的には、ヨウ素をヨウ化カリウム溶液に溶解して、高次のヨウ素イオンを作り、このイオンをPVA系フィルムに吸着させて延伸し、次いで1〜4%ホウ酸水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して偏光膜を製造する方法、あるいはPVAフィルムを同様にホウ酸処理して一軸方向に3〜7倍程度延伸し、0.05〜5%の二色性染料水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して染料を吸着し、80〜100℃で乾燥して熱固定して偏光フィルムを製造する方法などが挙げられる。
【0052】
本実施形態で用いられる偏光フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜50μm、より好ましくは15〜45μm程度である。
【0053】
これらの偏光フィルムは、そのまま本実施形態に係る偏光板の製造に用いてもよいが、隣接する接着剤層との接着強度を高める目的で表面処理を施すことができる。表面処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、アルカリ処理、コーティング処理などを挙げることができる。
【0054】
4.保護層
本実施形態に係る偏光板において、保護層としては、例えば、トリアセチルセルロースのようなアセテート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などの光学的に透明な樹脂からなるフィルムを挙げることができる。
【0055】
本願発明においては、第1または第2の保護層のうち、一方の保護層は紫外線防止性を有する保護層であり、他方の保護層は紫外線透過性を有する保護層であることが好ましい。
【0056】
上記紫外線防止性を有する保護層は、偏光板が液晶セルの両面に配置される場合に、外部の紫外線から液晶セルを保護する役割を果たすものである。紫外線防止性を有する保護層には、上述したように紫外線吸収剤を適宜配合することができる。本実施形態に係る偏光板では、紫外線吸収剤を配合した紫外線防止性を有する保護層の波長380nmにおける光の透過率が、例えば、10%以下のものを好ましく用いることができる。
【0057】
上記紫外線透過性を有する保護層は、当該保護層の側から放射線照射(光照射)を行うことにより、放射線硬化性組成物を硬化させるためのものである。紫外線透過性を有する保護層は、紫外線吸収剤を含まないか、または該保護層を介して光を照射することにより放射線硬化性組成物を硬化させることができる程度に紫外線吸収剤を含むことができる。本実施形態に係る偏光板では、紫外線透過性を有する保護層の波長380nmにおける光の透過率が、例えば、60%以上のものを好ましく用いることができる。
【0058】
また、保護層は、上述したように位相差フィルムとしての機能を兼ねることもできる。
【0059】
保護層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜200μmとなるように設定することができる。
【0060】
また、保護層は放射線硬化性組成物の塗布前に表面処理を行うこともできる。表面処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、アルカリ処理、コーティング処理などを挙げることができるが、これらのうち、コロナ放電処理を行うことが特に好ましい。
【0061】
例えば、保護層として環状オレフィン系樹脂を用いた場合、環状オレフィン系樹脂は、その表面に極性基がないため接着性に優れないことがある。このような場合に、コロナ放電処理を行うと、高周波高電圧を利用して大気中にコロナ放電を発生させ、それにより生成される官能基とともに、その電子を樹脂表面に照射することにより、樹脂表面の改質を行うことができる。
【0062】
5.放射線硬化型接着剤層
本実施形態において接着剤として使用される放射線硬化性組成物は、第1および第2の保護層と偏光フィルムとを接着させるためのものである。当該放射線硬化性組成物は、下記(d)ないし(f)、およびその他の任意成分を含有することができる。
(d):脂環式エポキシ化合物
(e):水酸基を少なくとも1個含有し、数平均分子量が500以上である化合物
(f):光酸発生剤
【0063】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0064】
5.1 成分(d)
放射線硬化性組成物を構成する成分(d)は、脂環式エポキシ化合物、好ましくは1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物である。1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物を成分(d)の全量中に50質量%以上含有すると、良好な硬化速度や機械的強度を保つことができる。
【0065】
成分(d)として用いられる脂環式エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロへキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0066】
これらの脂環式エポキシ化合物のうち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートがより好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートがさらに好ましい。
【0067】
これらの市販品としては、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0068】
放射線硬化性組成物中の(d)脂環式エポキシ化合物の含有率は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは12〜75質量%、特に好ましくは15〜70質量%である。該含有率が10質量%未満では、接着剤層の機械的強度及び耐熱性が不十分になる傾向がある。該含有率が80質量%を超えると、放射線硬化性組成物を硬化させてなる接着剤層の反り等の変形が大きくなる傾向がある。
【0069】
5.2 成分(e)
放射線硬化性接着剤用組成物を構成する成分(e)は、水酸基を1個以上含有し、数平均分子量が500以上である化合物である。
【0070】
成分(e)は、1分子中に水酸基を1個以上、好ましくは1〜4個有する。成分(e)の数平均分子量は、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上である。該平均分子量の上限値は、特に限定されないが、接着剤用組成物の粘度の過度の増大を防ぐ観点から、好ましくは20,000、より好ましくは10,000である。該平均分子量が500未満であると、偏光板の裁断時の耐裁断性に劣るため、好ましくない。なお、成分(e)の数平均分子量は、ASTM D2503に従い測定した値である。成分(e)を用いることにより、接着強度に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0071】
成分(e)として好適に用いられる化合物としては、ポリカプロラクトンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、その他のポリオールなどが挙げられる。
【0072】
ポリカプロラクトンジオールとしては、例えば、ε−カプロラクトンとジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。ここで用いられるジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。これらポリカプロラクトンジオールの市販品としては、プラクセル205、205H、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0073】
ポリエーテルジオールとしては、脂肪族ポリエーテルジオールが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールなどが挙げられる。これらのポリエーテルジオールの市販品としては、PEG#600、#1000、#1500、#1540、#4000(以上、ライオン社製)、エクセノール720、1020、2020、3020、510、プレミノールPPG4000(以上、旭硝子社製)等を挙げることができる。
【0074】
ポリエステルジオールとしては、脂肪族ジオール化合物と脂肪族ジカルボン酸化合物の共重合体が好ましい。脂肪族ジオール化合物としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。脂肪族ジオールは1種または2種以上を使用することができ、また、脂肪族ジカルボン酸も1種または2種以上を使用することができる。これらのポリエステルジオールの市販品としては、クラレポリオールN−2010、O−2010、P−510、P−1010、P−1050、P−2010、P−2050、P−3010、P−3050(以上、クラレ社製)等を挙げることができる。
【0075】
上記その他のポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、クオドロール等の3価以上の多価アルコールを、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物で変性することにより得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。このような化合物の具体例としては、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、テトラヒドロフラン変性トリメチロールプロパン、EO変性グリセリン、PO変性グリセリン、テトラヒドロフラン変性グリセリン、EO変性ペンタエリスリトール、PO変性ペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン変性ペンタエリスリトール、EO変性ソルビトール、PO変性ソルビトール、EO変性スクロース、PO変性スクロース、EO変性スクロース、EO変性クオドール等を例示することができ、これらのうち、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、PO変性グリセリン、PO変性ソルビトールが好ましい。
【0076】
上記その他のポリオールの市販品としては、サンニックスTP−700、サンニックスGP−1000、サンニックスSP−750、サンニックスGP−400、サンニックスGP−600(以上、三洋化成(株)製)等を挙げることができる。
【0077】
また、成分(e)として好適に用いられるポリオールとしては、水酸基含有不飽和化合物の重合体を挙げることができる。上記水酸基含有不飽和化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらにアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物が挙げられる。
【0078】
また、成分(e)は、下記式(2)で示されるポリカーボネートジオールであることも好ましい。
【化3】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数2〜12の2価の炭化水素基を表し、Rは、RとRのいずれかと同じ構造を表す。mは2〜150、nは0〜150であり、かつ、m+nは2〜200である。)
【0079】
上記式(2)で表されるポリカーボネートジオールの製造方法としては特に限定されるものではなく、ジオール化合物とカーボネート化合物のエステル交換反応、ジオール化合物とホスゲンの重縮合反応等、既知の方法が挙げられる。成分(B)の製造に使用されるジオール化合物としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。また、適度な接着強度を得るには、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の炭素数6の脂肪族炭化水素基を含有するポリカーボネートジオールがより好ましい。
【0080】
ポリカーボネートジオールとして好適に用いられる化合物の市販品としては、DN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン社製)、PC−8000(PPG社製)、PC−THF−CD(BASF社製)、クラレポリオールC−590、C−1090、C−2050、C−2090、C−3090、C−2065N、C−2015N(以上、(株)クラレ製)、プラクセルCD CD210PL、プラクセルCD CD220PL(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0081】
放射線硬化性接着剤用組成物中、成分(e)の含有率は、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは3〜45質量%、特に好ましくは3〜40質量%である。該含有率が2質量%未満であると、接着剤層の接着強度が劣るため好ましくない。一方、上記含有率が50質量%を超えると、放射線硬化性接着剤用組成物の粘度が高くなりすぎて塗工性が悪くなったり、接着剤層と被着体との接着強度が劣ることがあり、好ましくない。
【0082】
5.3 成分(f)
放射線硬化性組成物を構成する成分(f)は、光酸発生剤である。
【0083】
光酸発生剤は、光を受けることによりルイス酸を放出する光カチオン重合開始剤である。
【0084】
上記光酸発生剤の例として、例えば、下記一般式(3)で表される構造を有するオニウム塩が挙げられる。このオニウム塩は、400nm未満に実質的な光吸収波長を有する。
【化4】

(式中、カチオンはオニウムイオンであり、ZはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、ClまたはNを示し、R、R10、R11およびR12は、互いに同一または異なる有機基を示す。a、b、cおよびdは、それぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d−p)はZの価数に等しい。Mは、ハロゲン化物錯体[MXq+p]の中心原子を構成する金属またはメタロイドを示し、例えば、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは、例えば、F、Cl、Br等のハロゲン原子であり、pはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、qはMの原子価である。)
【0085】
上記一般式(3)において、オニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム等のジアリールヨードニウムや、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム等のトリアリールスルホニウムや、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィド、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル]スルフィド、η−2,4−(シクロペンタジエニル)[1,2,3,4,5,6−η]−(メチルエチル)−ベンゼン]−鉄(1+)等が挙げられる。
【0086】
前記一般式(3)において、アニオン[MXq+p]の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl)等が挙げられる。
【0087】
また、一般式[MX(OH)]で表されるアニオンを有するオニウム塩を使用することができる。さらに、過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CFSO)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオン等の他のアニオンを有するオニウム塩を使用することもできる。
【0088】
成分(f)として用いられるオニウム塩の例としては、例えば特開昭50−151996号公報、特開昭50−158680号公報等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、特開昭52−30899号公報、特開昭56−55420号公報、特開昭55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報等に記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、特開昭56−149402号公報、特開昭57−192429号公報等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号公報等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号明細書に記載のチオビリリウム塩等が挙げられる。また、鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤等も挙げることができる。成分(f)として好ましく用いられる光酸発生剤は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等の芳香族オニウム塩等であり、より好ましくはトリアリールスルホニウム塩である。
【0089】
(f)光酸発生剤の市販品の例としては、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−172(以上、旭電化工業(株)製)、Irgacure184、Irgacure261(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−103(以上、みどり化学(株)製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬(株)製)、CPI−110A、CPI−101A(以上、サンアプロ(株))等を挙げることができる。これらのうち、UVI−6970、UVI−6974、アデカオプトマーSP−170、SP−172、CD−1012、MPI−103、CPI−110A、CPI−101Aは、これらを含有してなる組成物に高い光硬化感度を発現させることができることから特に好ましい。上記の光酸発生剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0090】
なお、光酸発生剤による酸の発生を促進させるために、増感剤を併用してもよい。増感剤の例としては、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ヒドロキシアセトフェノン、ジヒドロキシジフェニルメタン等が挙げられる。
【0091】
放射線硬化性組成物中、(f)光酸発生剤の含有率は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、特に好ましくは0.3〜3質量%である。該含有率が0.1質量%未満であると、放射線硬化性組成物の放射線硬化性が低下し、十分な機械的強度を有する接着剤層を形成することができないため好ましくない。該含有率が10質量%を超えると、光酸発生剤が接着剤層の長期特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、好ましくない。
【0092】
5.4 その他の成分
本実施形態で接着剤として使用される放射線硬化性組成物は、さらに、下記成分(g)や(h)を添加することができる。
【0093】
5.4.1 成分(g)
上記放射線硬化性組成物は、さらに成分(g)として、下記式(1)で表される重合性不飽和基を有するイソシアヌル酸誘導体を添加することができる。
【化5】

(式(1)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、一価の有機基であって、R〜Rのうち少なくとも2つが、−ROCOCR=CHであり、Rは、炭素数2〜8の2価の有機基であり、Rは、水素原子またはメチル基である。)
【0094】
成分(g)は、放射線硬化性接着剤用組成物の硬化性(硬化速度)を向上させる機能を有する。成分(g)は分子中に重合性不飽和基を2個以上有することが好ましい。重合性不飽和基は、特に限定されないが、(メタ)アクリレート基であることが好ましい。重合性不飽和基を2個以上有することで架橋密度が高まり、これを添加することによる硬度の低下を少なくすることができる。
【0095】
本実施形態において用いることができる成分(g)の具体例としては、トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル](2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、及びこれらの出発アルコール類へのエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド、またはカプロラクタム付加物の(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのうち、トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。
【0096】
成分(g)として好適に使用できる市販品としては、アロニックス M−215、M−313、M−315、M−325、M−326、M−327(以上、東亜合成化学工業(株)製)、SR−368(サートマー社製)等を挙げることができる。上記の化合物は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0097】
放射線硬化性組成物中、成分(g)の含有量は、有機溶剤を除く組成物全量を100質量%として、好ましくは、3〜40質量%、より好ましくは、5〜35質量%、特に好ましくは、7〜30質量%である。3質量%未満であると、光照射直後の硬化性が不十分なことがあり、40質量%を超えると、PVA系成形体との接着強度が劣ることがある。
【0098】
5.4.2 成分(h)
上記放射線硬化性組成物は、さらに成分(h)として、脂肪族エポキシ化合物を添加することができる。成分(h)の脂肪族エポキシ化合物は、接着剤層の機械的強度等をコントロールするために添加される任意成分である。
【0099】
上記脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油;エポキシステアリン酸ブチル;エポキシステアリン酸オクチル;エポキシ化アマニ油;エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0100】
上記放射線硬化性組成物中、(h)脂肪族エポキシ化合物の含有率は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜45質量%、特に好ましくは0〜40質量%である。該含有率が50質量%を超えると、必須成分である(h)脂環式エポキシ化合物等の含有率が小さくなり、本発明の効果が得られ難くなるため好ましくない。
【0101】
また、本実施形態で用いられる放射線硬化性組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等のポリマーあるいはオリゴマー;フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料等を挙げることができる。
【0102】
上記放射線硬化性組成物は、上記成分(d)ないし(f)、および必要に応じて上記任意成分を均一に混合することによって調製することができる。このようにして得られる放射線硬化性組成物の粘度(25℃)は、通常2,000mPa・s以下、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下である。
【0103】
なお、放射線硬化性組成物には、必要に応じて有機溶媒等の溶剤を添加することができる。しかし、本願発明においては、無溶剤でも放射線硬化性組成物を調製することができる。本願発明においては、作業環境の維持、環境負荷等の面から、溶剤を含まないことが好ましい。また、放射線硬化性組成物はフィルター等でろ過したものを使用することも好ましい。
【0104】
放射線硬化性組成物は、放射線を照射することにより硬化させることができる。ここで、放射線としては、特に限定されないが、紫外線や電子線が多く用いられる。
【0105】
放射線は、空気などの酸素を含有する雰囲気下または窒素などの不活性ガスにより酸素を含有しない雰囲気下で、0.1〜3J/cmの照射量とすることが好ましく、0.5〜2J/cmの照射量とすることがさらに好ましい。
【0106】
放射線硬化型接着剤層の厚さの上限値は、特に限定するものではないが、好ましくは50μm以下である。放射線硬化型接着剤層の厚さの下限値は、特に限定するものではないが、好ましくは1μm以上である。放射線硬化型接着剤層の光透過率は、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0107】
6.ハードコート層
本実施形態に係る偏光板の製造方法において、必要に応じて第1の保護層の面の上にハードコート層を形成することができる。ハードコート層は、高い表面硬度を有する層である。したがって、偏光板にハードコート層を形成すると、偏光板の耐擦傷性および機械的強度を高めることができる。
【0108】
ハードコート層の形成材料としては、二酸化ケイ素等の無機活性エネルギー硬化性樹脂、またはエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂等の有機活性エネルギー硬化性樹脂を挙げることができる。また、ハードコート層には、必要に応じて帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、滑剤、界面活性剤などを添加することができる。
【0109】
具体的には、ハードコート層に帯電防止剤を添加して、帯電防止機能を付与する場合がある。例えば、第1の保護層が環状オレフィン系樹脂からなる場合には、含水率が極めて低いため静電気を帯びやすいという性質がある。LCDの組立時において、第1の保護層が静電気を帯びていると、液晶セルに帯電し故障の原因となることがある。
【0110】
また、ハードコート層を防眩処理することもできる。防眩処理とは、一般的にはハードコート層の表面に微細な凹凸を有する硬い透明樹脂層を形成することをいう。これにより、外光を拡散反射させて反射像をぼかすことができるため、窓や照明機器等の光による周辺環境の写り込みを防止し視認性を向上させることができる。
【0111】
ハードコート層の厚さは、好ましくは0.5〜50μmであって、より好ましくは1〜30μmである。ハードコート層の屈折率は、好ましくは1.45〜1.70であり、より好ましくは1.45〜1.60である。
【0112】
7.低屈折率層
本実施形態に係る偏光板の製造方法において、ハードコート層若しくは第1の保護層の面の上に、低屈折率層を形成することができる。低屈折率層を形成することにより、偏光板に光の反射防止機能を付与することができる。
【0113】
低屈折率層の形成材料としては、例えば、含フッ素重合体含有硬化性組成物、アクリルモノマー、含フッ素アクリルモノマー、エポキシ基含有化合物、含フッ素エポキシ基含有化合物等の硬化物を挙げることができる。さらに低屈折率層の屈折率を低下させるために、これにシリカ等の中空粒子を添加することもできる。シリカ系中空粒子の粒子径は、好ましくは5〜100nmであり、より好ましくは20〜80nmである。この範囲であると、優れた低屈折率を実現することができる。
【0114】
例えば、屈折率が1.45〜1.70のハードコート層の上に屈折率が1.30〜1.45の低屈折率層を形成することによって、偏光板は優れた反射防止機能を備えることができる。
【0115】
低屈折率層の厚さは、好ましくは0.05〜0.20μmであり、より好ましくは0.08〜0.12μmである。
【0116】
8.実施例
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0117】
8.1 シリカ系中空粒子含有コート材の作製
(a)水酸基含有含フッ素重合体の合成
内容積2.0リットルの電磁撹拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル400g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)53.2g、エチルビニルエーテル36.1g、ヒドロキシエチルビニルエーテル44.0g、過酸化ラウロイル1.0g、アゾ基含有ポリジメチルシロキサン(VPS1001(商品名)、和光純薬工業株式会社製)6.0gおよびノニオン性反応性乳化剤(NE−30(商品名)、旭電化工業株式会社製)20.0gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
【0118】
次いで、ヘキサフルオロプロピレン120.0gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は、5.3×10Paを示した。その後、70℃で20時間撹拌下に反応を継続し、圧力が1.7×10Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出してオートクレーブを開放し、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い220gの水酸基含有含フッ素重合体を得た。これを水酸基含有含フッ素重合体とする。使用した単量体と溶剤の仕込み量を表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
得られた水酸基含有フッ素重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量およびアリザリンコンプレクソン法によるフッ素含量をそれぞれ測定した。また、H−NMR、13C−NMRの両NMR分析結果、元素分析結果およびフッ素含量から、水酸基含有含フッ素重合体を構成する各単量体成分の割合を決定した。結果を表2に示す。
【0121】
【表2】

【0122】
なお、VPS1001は、数平均分子量が7〜9万、ポリシロキサン部分の分子量が約10,000のアゾ基含有ポリジメチルシロキサンである。NE−30は、ノニオン性反応性乳化剤である。
【0123】
(b)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体(メタアクリル変性フッ素重合体)の合成
電磁撹拌機、ガラス製冷却管および温度計を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、上記(a)で得られた水酸基含有含フッ素重合体を50.0g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.01gおよびメチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」ともいう。)370gを仕込み、20℃で水酸基含有含フッ素重合体がMIBKに溶解して、溶液が透明・均一になるまで撹拌を行った。次いで、この系に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート15.1gを添加し、溶液が均一になるまで撹拌した後、ジブチルチンジラウレート0.1gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間撹拌を継続することにより、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のMIBK溶液を得た。この溶液をアルミ皿に2g秤量後、150℃のホットプレート上で5分間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、15.0重量%であった。使用した化合物、溶剤および固形分含量を表3に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
(c)特定有機化合物の製造
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン23.0部、ジブチルスズジラウレート0.5部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート60.0部を撹拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間撹拌した。これに新中村化学株式会社製「NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)」202.0部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱撹拌することで特定有機化合物を得た。
【0126】
生成物の赤外吸収スペクトルは、原料中のメルカプト基に特徴的な2550cm−1の吸収ピークおよびイソシアネート基に特徴的な2260cm−1の吸収ピークが消失し、新たに[−O−C(=O)−NH−]基および[−S−C(=O)−NH−]基中のカルボニルに特徴的な1660cm−1のピークおよびアクリロイル基に特徴的な1720cm−1のピークが観察され、重合性不飽和基としてのアクリロイル基と[−S−C(=O)−NH−]基、[−O−C(=O)−NH−]基を共に有する特定有機化合物が生成していることを示した。
【0127】
(d)アクリル変性中空シリカ粒子の製造
上記(c)で合成した特定有機化合物3部、中空シリカ粒子C−1(触媒化成工業株式会社製、商品名「JX1009SIV」)137部(固形分30部)、イオン交換水0.1部、0.05mol/Lの希硫酸0.01部、オルトギ酸メチルエステル1.4部を用いてアクリル変性中空シリカ粒子C−2を得た。アクリル変性中空シリカ粒子の固形分含量を求めたところ、25質量%であった。
【0128】
(e)中空粒子含有コート剤組成1の作製
表4に示すように、上記(b)で得たエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のMIBK溶液を67g(固形分として10g)、ペンタエリスリトールヒドロキシトリアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PET−30」)を29g、上記(d)で得たアクリル変性中空シリカ粒子C−2分散液を228g(固形分として57g)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「Irgacure127」)を3g、アクリル変性ポリジメチルシロキサン(チッソ株式会社製、商品名「サイラプレーンFM−0725」)を1gおよびMIBK900g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1629gを、撹拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて1時間撹拌し均一な硬化性樹脂組成物を得た。また、上記(b)に記載した方法により固形分濃度を求めたところ3.5重量%であった。
【0129】
(f)中空粒子含有コート剤組成2の作製
表4に示すように、ペンタエリスリトールヒドロキシトリアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PET−30」)を39g、中空シリカ粒子C−1(触媒化成工業株式会社製、商品名「JX1009SIV」)を259g(固形分として57g)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「Irgacure127」)を3g、アクリル変性ポリジメチルシロキサン(チッソ株式会社製、商品名「サイラプレーンFM−0725」)を1gおよびMIBK926g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1629gを、撹拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて1時間撹拌し均一な硬化性樹脂組成物を得た。また、上記(b)に記載した方法により固形分濃度を求めたところ3.5重量%であった。
【0130】
【表4】

【0131】
8.2 ハードコート用組成物の調製
紫外線を遮断した容器中において、ペンタエリスリトールヒドロキシトリアクリレート95質量部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン5重量部、MIBK100重量部を50℃で2時間撹拌することで均一な溶液のハードコート層用組成物を得た。この組成物をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、50重量%であった。
【0132】
8.3 保護フィルム1の作製
本実施例において、保護フィルム1とは、第1の保護層、ハードコート層、および中空粒子含有コート層の3層を積層したフィルムのことをいう。保護フィルム1は、下記の工程(a)〜(c)により作製した。保護フィルム1−1ないし1−6の作製に用いた材料および表面処理方法について表5にまとめた。
【0133】
(a)ハードコート層の形成
第1の保護層に「8.2 ハードコート用組成物の調製」で調製したハードコート層用組成物をワイヤーバーコータで膜厚6μmとなるように塗工し、オーブン中、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、空気下、高圧水銀ランプを用いて、300mJ/cmの光照射条件で紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物塗工用基材を作製した。
【0134】
(b)中空粒子含有コート層の形成
上記の工程(a)で得られた硬化性樹脂組成物塗工用基材のハードコート層の上にワイヤーバーコータを用いて膜厚0.1μmとなるように中空粒子含有コート剤組成1または2を塗工し、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、窒素気流下、高圧水銀ランプを用いて、300mJ/cmの光照射条件で紫外線を照射し、反射防止膜を作製した。
【0135】
(c)フィルム表面処理
(c1)コロナ放電処理
コロナ表面処理装置(春日電機社製「AGF−012」)を用い、320W・分/mの放電量で、ハードコート層および中空粒子含有コート層を形成した側と反対側のフィルム表面にコロナ放電処理を行い、処理後1時間以内に貼合を行った。
【0136】
(c2)ケン化処理(アルカリ処理)
ハードコート層および中空粒子含有コート層を形成したTACフィルムを1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにしてフィルムの両表面をケン化処理した。
【0137】
【表5】

【0138】
8.4 保護フィルム2の作製
保護フィルム2とは、第2の保護層のことをいい、通常偏光フィルムと貼合する面とは反対の面に液晶パネルを設置する。保護フィルム2を下記の製法により作製した。
【0139】
三井化学株式会社製の「アペルAPL6013T」(商品名)をシクロペンタンに溶解させ、樹脂濃度30質量%の樹脂溶液とした。この樹脂溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーターで塗布し、1時間静置した後、80℃で12時間乾燥させて膜厚72μmのアペルフィルムを得た。
【0140】
ポリプラスチックス社製の「TOPAS5013」(商品名)を塩化メチレンに溶解させ、樹脂濃度30質量%の樹脂溶液とした。この樹脂溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーターで塗布し、1時間静置した後、80℃で12時間乾燥させて膜厚75μmのトパスフィルムを得た。
【0141】
セルロースアセテート(酢化度60.8%)100質量部、トリフェニルホスフェート12質量部、塩化メチレン300質量部、メタノール50質量部を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹拌しながら完全に溶解した。次にこの溶液をろ過し、冷却して30℃に保ち、ガラス基板に貼り付けたPETフィルム上に15ミルのアプリケーターで塗布した。この状態で5分間静置した後、さらに100℃のオーブンで1時間乾燥を終了させ、膜厚80μmのTACフィルム(紫外線吸収剤なし)を得た。
【0142】
さらに、保護フィルム2として、JSR株式会社製「アートンR5300」(商品名)、JSR株式会社製「アートンR5300U」(商品名)(紫外線吸収剤入りフィルム)、日本ゼオン株式会社製「ゼオノアZF14−100」(商品名)を用いた。これらの保護フィルムについては、特に加工することなくそのまま使用した。
【0143】
8.5 偏光フィルムの作製
ホウ酸20質量部、ヨウ素0.2質量部、ヨウ化カリウム0.5質量部を水480質量部に溶解させて染色液を調製した。この染色液にPVAフィルム(アイセロ社製、「ビニロンフィルム#40」)を30秒浸漬した後、フィルムを一方向に2倍延伸し、乾燥させて、膜厚30μmのPVAフィルムを作製した。
【0144】
8.6 接着剤の調製
(a)UV接着剤の調製
(a1)UV接着剤1の調製
東亜合成株式会社製「アロニクスM−315」12部、ダイセル化学工業株式会社製「セロキサイド2021P」32.5部、株式会社クラレ製「クラレポリオールC−2090」10部、サンアプロ株式会社製「CPI−110A」2.5部、阪本薬品工業株式会社製「SR−NPG」33部、三洋化成工業株式会社製「サンニックスGP−400」8部、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「Irgacure184」2部を混合し、UV接着剤1を調製した。
【0145】
(a2)UV接着剤2の調製
4−ヒドロキシブチルアクリレート58.8部、ビニルエステル樹脂(ビスフェノール系ビニルエステル)19.6部、ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン19.6部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド1.1部、日本化薬株式会社製「KAYAMER PM−2」0.1部、2−メルカプトベンゾチアゾール0.5部、住友化学株式会社製「Sumilizer GA80」0.3部を混合し、UV接着剤2を調製した。
【0146】
(b)水系接着剤の調製
ポリビニルアルコール系樹脂である和光純薬工業株式会社製「163−03045(分子量:22,000、ケン化度:88モル%)」に、水を加えて固形分濃度が7重量%の水溶液を調製した。一方、ポリウレタン系樹脂である大日本インキ化学工業株式会社製「WLS−201(固形分濃度35重量%)」100部に、ポリエポキシ系硬化剤である大日本インキ化学工業株式会社製「CR−5L(有効成分100%品)」5部を配合し、水で希釈して固形分濃度が20重量%の水溶液を調製した。得られたポリウレタン系樹脂水溶液とポリビニルアルコール系樹脂水溶液とを、重量比で1:1(固形分重量比で80:20)の割合で混合し、固形分濃度が15重量%の混合接着剤を調製した。
【0147】
8.7 貼合方法
(a)UV接着剤
UV接着剤1または2をワイヤーバーコータ#3を用いて、保護フィルム2上に塗工し、その上に「8.4 偏光フィルムの作製」で作製したPVAフィルムを気泡等の欠陥が入らないように貼合した。次に、保護フィルム1上にUV接着剤1または2をワイヤーバーコータ#3を用いて塗工し、上記貼合したフィルムのPVA上に、気泡等の欠陥が入らないように貼合した。ガラス板上に保護フィルム2が上になるように保護フィルム1の四方をテープで固定し、メタルハライドランプ(照度220mW/cm、照射光量1,000mJ/cm)で保護フィルム2の側から光照射し、23℃、50%RHで24時間静置した。
【0148】
(b)水系接着剤
水系接着剤をワイヤーバーコータ#3を用いて保護フィルム2上に塗工し、その上に「8.4 偏光フィルムの作製」で作製したPVAフィルムを気泡等の欠陥が入らないように貼合した。次に、保護フィルム1上に、水系接着剤をワイヤーバーコータ#3を用いて塗工し、上記貼合したフィルムのPVA上に、気泡等の欠陥が入らないように貼合した。フィルムが剥がれないように固定し、80℃で1時間加熱した後、23℃、50%RHで24時間静置した。
【0149】
8.8 評価方法
(a)耐擦傷性(スチールウール耐性テスト)
スチールウール(ボンスターNo.0000、日本スチールウール株式会社製)を学振型摩擦堅牢度試験機(AB−301、テスター産業(株)製)に取り付け、硬化膜の表面を荷重500gの条件で10回繰り返し擦過し、当該硬化膜の表面における傷の発生の有無を、以下の基準により目視で確認した。評価基準は以下のとおりである。結果を表6および表7に示す。
◎:硬化膜に傷が発生しない。
○:硬化膜の剥離や傷の発生がほとんど認められないか、あるいは硬化膜にわずかな細い傷が認められる。
×:硬化膜全面に筋状の傷、あるいは硬化膜の剥離が認められる。
【0150】
接着剤としてUV接着剤を用いた場合には、ケン化処理工程を省くことができる。そのため保護フィルム1は、その種類によらず優れた耐擦傷性を示した(実施例1〜11参照)。しかし、接着剤として水系接着剤を用いた場合には、接着強度を高めるためにケン化処理を行う必要がある。そうすると、上記試験により保護フィルム1の全面に筋上の傷、あるいは硬化膜の剥離が認められた(比較例1〜3)。
【0151】
(b)剥離強度
作製した貼合フィルムの剥離強度は、「JIS K 6854−4 接着剤−剥離接着強さ試験法 第4部:浮動ローラ法」に準じて測定した。作製した貼合フィルムを金属板(ステンレス製、寸法:長さ200mm、幅25mm、厚み1.5mm)上に両面粘着テープ(ST−416P、住友スリーエム社製)で固定した。カッターナイフを用い、貼合フィルムの長手方向の端を剥離した。JIS法に従い、浮動ローラにサンプルを取り付け、剥離したフィルムサンプルの端を引っ張り試験機のつかみ具に固定し、引っ張り試験機にて浮動ローラを300mm/分の速度で上昇させ、フィルムが剥離するときの平均剥離力(単位:N)を測定した。結果を表6および表7に示す。
【0152】
剥離強度の評価は、平均剥離力が1.5N以上、もしくは貼合フィルムが破壊あるいは貼合フィルムの端を剥離できない場合を剥離強度○、平均剥離力が0.6N以上1.5N未満の場合を剥離強度△、平均剥離力が0.6N未満の場合を剥離強度×とした。
【0153】
接着剤の種類、保護フィルムの種類、保護フィルムの貼合面処理方法によらず、優れた剥離強度が得られた。
【0154】
【表6】

【0155】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本実施形態に係る偏光板の断面を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る偏光板の製造方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0157】
10…偏光フィルム、12…第1の放射線硬化型接着剤層、14…第1の保護層、16…第2の放射線硬化型接着剤層、18…第2の保護層、20…ハードコート層、20…低屈折率層、30,32…貼合ロール、40,42…ロール、50…偏光板巻取部、60,62…接着剤供給部、70,72…放射線照射部、80…粘着剤層、90…液晶パネル、偏光板…100

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)偏光フィルムと前記偏光フィルムの第1の面の上に形成された第1の保護層との間、および前記偏光フィルムと前記偏光フィルムの第2の面の上に形成された第2の保護層との間に、放射線硬化型接着剤用組成物を供給する工程と、
(b)前記偏光フィルムと、前記第1の保護層と、前記第2の保護層と、を前記放射線硬化型接着剤用組成物を介して貼合する工程と、
(c)放射線を照射することにより前記放射線硬化型接着剤用組成物を硬化させて、放射線硬化型接着剤層を形成する工程と、
を含み、少なくとも第1の保護層は、ケン化処理を行っていない、偏光板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(a)の前に、さらに、前記第1の保護層または前記第2の保護層の前記偏光フィルムを貼合する面にコロナ放電処理を行う工程を含む、偏光板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の保護層および前記第2の保護層の少なくとも一方は、紫外線吸収剤を含む、偏光板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1の保護層または前記第2の保護層のうち紫外線透過率の高い保護層側から放射線を照射する、偏光板の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記第2の保護層は、位相差フィルムの機能を兼ねた、偏光板の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
さらに、前記第1の保護層の上に、ハードコート層を形成する工程を含む、偏光板の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記ハードコート層は、帯電防止機能を有する、偏光板の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7において、
さらに、前記ハードコート層の上に、低屈折率層を形成する工程を含む、偏光板の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記低屈折率層は、シリカ系中空粒子を含む、偏光板の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記放射線硬化型接着剤層は、少なくとも下記成分(d)と、(e)と、(f)とを含む放射線硬化性液状樹脂組成物の硬化物である、偏光板の製造方法。
(d)脂環式エポキシ化合物、
(e)水酸基を少なくとも1個含有し、数平均分子量が500以上である化合物、
(f)光酸発生剤。
【請求項11】
請求項10において、
さらに、前記放射線硬化性液状樹脂組成物は、下記式(1)で表される成分を含む、偏光板の製造方法。
【化1】

(R、RおよびRは、それぞれ独立に一価の有機基であり、R〜Rのうち少なくとも2つが−ROCOCR=CHであり、Rは炭素数2〜8の2価の有機基であり、Rは水素原子またはメチル基である。)
【請求項12】
請求項10または11において、
さらに、前記放射線硬化性液状樹脂組成物は、脂肪族エポキシ化合物を含む、偏光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−75192(P2009−75192A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241945(P2007−241945)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】