説明

偏光板保護フィルムおよび偏光板

【課題】紫外線吸収性、耐熱性、および色味に優れるとともに、薄型で、かつ比較的簡便に製造できる偏光板保護フィルムを提供すること。
【解決手段】中間層と、中間層の両側にそれぞれ設けられる表面層とを有する積層体を備える偏光板保護フィルムであって、前記中間層は、脂環式オレフィン樹脂および紫外線吸収剤を含む樹脂組成物により構成されるとともに、前記樹脂組成物における前記紫外線吸収剤の含有量が3〜6%であり、前記紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤を含む2種類以上の紫外線吸収剤を含有し、前記表面層は、紫外線吸収剤を含まない脂環式オレフィン樹脂によりそれぞれ構成され、当該偏光板保護フィルムは、その光線透過率が、波長200nm〜370nmの範囲において1%以下あり、かつ、波長380nmにおいて3%以下であり、その厚みが20〜40μmである偏光板保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板保護フィルムおよび偏光板に関し、特に、紫外線吸収性、耐熱性、および色味に優れるとともに、薄型で、かつ比較的簡便に製造できる偏光板保護フィルムと、この偏光板保護フィルムを備える偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置等に用いられる偏光板は、ポリビニルアルコール等からなる偏光子と、この偏光子の両面にそれぞれ設けられる偏光板保護フィルムとを備えて構成される。偏光板保護フィルムとしては、一般的には、トリアセチルセルロース(TAC)や、脂環式オレフィン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂が用いられる。これらの樹脂は、各種の観点から使い分けがなされるが、耐湿熱性の観点から、脂環式オレフィン樹脂が用いられる場合がある。他方、各偏光板を構成する偏光板保護フィルムにおいて、特に、液晶表示装置の最前面となる偏光板保護フィルムや、バックライト光源側となる偏光板保護フィルムでは、紫外線により偏光子や液晶セルが劣化するのを防止するために、紫外線吸収性能が求められる場合がある。さらに、液晶表示装置の薄型化に伴って、偏光板および偏光板保護フィルムの更なる薄膜化も求められている。
【0003】
偏光板保護フィルムに紫外線吸収性能を持たせる手法としては、所定の紫外線吸収剤を含む樹脂組成物を用いて形成された偏光板保護フィルムを用いることが考えられる。例えば、特許文献1には、脂環式オレフィン樹脂からなる3層の偏光板保護フィルムであって、その中間層に特定の紫外線吸収剤を0.5〜2.5重量%添加したことが開示されている。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、およびアクリロニトリル系のものを用いることができる旨が開示されている。また、特許文献2には、アクリル樹脂からなる3層の偏光板保護フィルムであって、その中間層に特定の紫外線吸収剤を添加したことが開示されている。紫外線吸収剤としては、トリアジン系や、トリアゾール系のものを用いることができる旨が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−181615号公報
【特許文献2】特開2007−17555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された紫外線吸収剤を用いた場合には、得られるフィルムの膜厚を40μm以下の薄膜化する際には、多量の紫外線吸収剤を添加しなければならず、紫外線吸収剤が適度に分散した樹脂組成物自体を作製することが困難であり、製膜作業が煩雑であった。さらに、多量の紫外線吸収剤を添加すると、紫外線吸収剤自体の色が当該保護フィルムに反映されフィルムに着色を帯びるという不具合や、樹脂組成物の耐熱性が必要以上に低下するという課題もある。また、紫外線吸収剤の添加割合を減らして適度に分散した樹脂組成物を用いた場合には、特に、波長200〜370nmの範囲の紫外線吸収性能が不十分な場合があり、より一層高い紫外線吸収性能が求められている。
【0006】
他方、特許文献2に示す偏光板保護フィルムは、アクリル樹脂により構成されているが、アクリル樹脂は脂環式オレフィン樹脂に比べて耐熱性の点で劣っており、また、アクリル樹脂に紫外線吸収剤を添加して樹脂組成物を作製する場合には、紫外線吸収剤を均一に分散させることが困難であり、製膜が困難であるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、紫外線吸収性、耐熱性、および色味に優れるとともに、薄型で、かつ比較的簡便に製造できる偏光板保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、所定の紫外線吸収剤を所定量含む紫外線吸収剤を用いることにより達成できることを見出し、この知見に基づいて以下の(1)〜(5)の発明を完成するに至った。
【0009】
(1)中間層と、中間層の両側にそれぞれ設けられる表面層とを有する積層体を備える偏光板保護フィルムであって、前記中間層は、脂環式オレフィン樹脂および紫外線吸収剤を含む樹脂組成物により構成されるとともに、前記樹脂組成物における前記紫外線吸収剤の含有量が3〜6重量%であり、前記紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤を含む2種類以上の紫外線吸収剤を含有し、前記表面層は、紫外線吸収剤を含まない脂環式オレフィン樹脂によりそれぞれ構成され、当該偏光板保護フィルムは、その光線透過率が、波長200nm〜370nmの範囲において1%以下あり、かつ、波長380nmにおいて3%以下であり、その厚みが20〜40μmである偏光板保護フィルム。
(2)前記紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する前記偏光板保護フィルム。
(3)前記樹脂組成物のガラス転移温度TgAは、前記脂環式オレフィン樹脂のガラス転移温度TgBよりも低く、かつ、その差であるTgB−TgAが15℃未満である前記偏光板保護フィルム。
(4)前記積層体は、共押出し法により製造されてなる前記偏光板保護フィルム。
(5)偏光子と、この偏光子の少なくとも一方の側に設けられる前記偏光板保護フィルムと、を備える偏光板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トリアジン系紫外線吸収剤を含む2種類以上の紫外線吸収剤と脂環式オレフィン樹脂とを含む樹脂組成物であって、その全体量に対して3〜6%含有する樹脂組成物を用いて構成することにより、厚み20〜40μmの範囲においても紫外線吸収剤を均一に混合することができるとともに、着色を抑えることができるという効果がある。また、波長200nm〜370nmの範囲において光線透過率が1%以下あり、かつ、波長380nmにおいて光線透過率が3%以下であることにより、十分な紫外線吸収性能を奏することから、偏光子に貼付して偏光板として用いた場合に、偏光板の着色や偏光度の低下を抑えることができるという効果がある。さらに、紫外線吸収剤の添加割合を所定量としたことに加えて、比較的耐熱性の高い脂環式オレフィン樹脂を用いることにより、十分な耐熱性も確保できる。以上より、本発明によれば、紫外線吸収性、耐熱性、および色味に優れる薄型の偏光板保護フィルムを比較的簡便に製造できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の偏光板保護フィルムは、中間層と、この中間層の両側にそれぞれ設けられる表面層とを有する積層体を備えて構成されている。表面層は、脂環式オレフィン樹脂により構成されており、紫外線吸収剤は添加されていない。中間層は、脂環式オレフィン樹脂と紫外線吸収剤とを含む樹脂組成物により構成されている。ここで、表面層に用いられる脂環式オレフィン樹脂と、中間層に用いられる脂環式オレフィン樹脂は、当該脂環式オレフィン樹脂の範囲において同一種類のものを用いてもよいし、異なる種類のものを用いてもよい。また、両側の表面層において、一方の表面層と他方の表面層とは、当該脂環式オレフィン樹脂の範囲において同一種類のものを用いてもよいし、異なる種類のものを用いてもよいが、製膜が容易である点で同一種類であることが好ましい。
【0012】
前記中間層および前記表面層に用いられる脂環式オレフィン樹脂としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体およびその水素化物等を挙げることができるが、この中でも、透明性や成形性等の観点から、ノルボルネン系重合体が好ましい。
【0013】
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などを挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体水素化物は、本発明の偏光板保護フィルムの透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性を向上させることができるため、特に好適に用いることができる。
【0014】
ノルボルネン系重合体の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0] オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位の含有量が、ノルボルネン系重合体の繰り返し単位全体に対して90 重量% 以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる偏光板保護フィルムを得ることができる。
【0015】
ポリマーとしてXの構造を繰り返し単位として有するモノマーとしては、ノルボルネン環に五員環が結合した構造を有するノルボルネン系単量体を挙げることができ、より具体的には、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン( 慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、及びその誘導体を挙げることができる。また、ポリマーとしてYの構造を繰り返し単位として有するモノマーとしては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3,7−ジエン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)を挙げることができる。
【0016】
このようなノルボルネン系重合体を得る手段としては、具体的にはa)ポリマーとして前記Xの構造を繰り返し単位として有することができるモノマーと、ポリマーとして前記Yの構造を繰り返し単位として有することができるモノマーとの共重合比でコントロールして重合し、必要に応じてポリマー中の不飽和結合を水素化する方法や、b) 前記Xの構造を繰り返し単位として有するポリマーと、前記Yの構造を繰り返し単位として有するポリマーとのブレンド比でコントロールする方法を挙げることができる。
【0017】
本発明において、使用する脂環式オレフィン樹脂の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常5,000〜100,000、好ましくは8,000〜80,000、より好ましくは10,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、偏光板保護フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。
【0018】
脂環式オレフィン樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1.0〜10.0、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
【0019】
脂環式オレフィン樹脂は、その分子量が2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が5重量% 以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。オリゴマー成分の量が多いと偏光板保護フィルムを製造する際に、中間層と表面層それぞれに微細な凹凸が発生したり、各層において厚さむらが生じたりして面精度が悪くなる可能性がある。
【0020】
オリゴマー成分の量を低減するためには、重合触媒や水素化触媒の選択; 重合反応や水素化反応などの反応条件;樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件; などを最適化すればよい。オリゴマーの成分量は、シクロヘキサン( 重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0021】
脂環式オレフィン樹脂および前記樹脂組成物は、TgB− TgA < 15℃の関係を満たすことが好ましい。なお、TgAとは、前記樹脂組成物のガラス転移温度(℃)であり、TgBは、前記脂環式オレフィン樹脂のガラス転移温度(℃)である。脂環式オレフィン樹脂のガラス転移温度TgBは150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、通常、180℃以下である。
【0022】
脂環式オレフィン樹脂は、紫外線吸収剤以外の他の配合剤を含有することができる。他の配合剤としては、特に限定されないが、無機微粒子; 酸化防止剤、熱安定剤、近赤外線吸収剤等の安定剤; 滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤; 染料や顔料等の着色剤; 帯電防止剤等が挙げることができる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択できる。
【0023】
前記紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤を含む2種類以上の紫外線吸収剤を含有するものを用いる。本発明において、トリアジン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等公知のものを用いることができ、その中でも、380nm付近における紫外線吸収性能が優れているという点でベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。本発明において、前記紫外線吸収剤の分子量は400以上であるものが好ましい。
【0024】
ここで、「トリアジン系紫外線吸収剤を含む2種類以上の紫外線吸収剤」には、トリアジン系紫外線吸収剤の他に、前述した紫外線吸収剤(例えばベンゾフェノン系紫外線吸収剤等)を含有する態様に加えて、2種類以上のトリアジン系紫外線吸収剤を含有する態様も含まれる。
【0025】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物を好ましく用いることができる。具体的には、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が好適に用いられる。トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン1577」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0026】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。トリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「アデカスタブLA−31」(旭電化工業社製)等を挙げることができる。
【0027】
前記樹脂組成物における前記紫外線吸収剤の含有量は3〜6%であり、好ましくは4〜5%である。ここで、紫外線吸収剤の含有量とは、複数種類の紫外線吸収剤の全体量のことを示す。従って、例えば、前記樹脂組成物として、脂環式オレフィン樹脂96重量部と、トリアジン系紫外線吸収剤2重量部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤2重量部とを含む樹脂組成物を用いる場合には、紫外線吸収剤の含有量は全体で4重量部であることから、この場合、樹脂組成物における紫外線吸収剤の含有量は4%となる。
【0028】
紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限未満であると、波長200nm〜370nmにおける光線透過率が大きくなり、偏光板の偏光度が低下する可能性がある。他方、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限を超えると、短波長側の光線透過率が小さくなり、偏光板保護フィルムの黄色味が強くなりすぎる可能性がある。したがって、紫外線吸収剤の含有量を上記範囲とすることにより、十分な紫外線吸収性能を有し、かつ色味の劣化を抑えることができるという利点がある。さらに、紫外線吸収剤の含有量を前記範囲とすることにより、多量の紫外線吸収剤を含有しないことから、樹脂組成物の耐熱性が低下するのを抑えることができる。
【0029】
ここで、前記樹脂組成物を製造する方法としては、前記紫外線吸収剤を予め脂環式オレフィン樹脂中に配合する方法; 紫外線吸収剤を高濃度に含有するマスターバッチを用いる方法; 溶融押出成形時に直接供給する方法などを挙げることができる。このような樹脂組成物を製造するにあたり、本発明では、紫外線吸収剤の含有量を前記範囲とすることにより、紫外線吸収剤の分散性を十分に高める、すなわち、中間層における紫外線吸収剤の含有量(濃度)のばらつきを全面で±0.1重量%以内とすることができる。
【0030】
紫外線吸収剤含有量のばらつきが上記範囲であることにより、初期フィルムの色調ムラがなく、また、長期使用後の紫外線による劣化も均一に起こることから、液晶表示装置に実装したときの色調ムラが起こりにくいという利点がある。なお、紫外線吸収剤含有量のばらつきが全面で±0.1重量%を超えると色調のムラがはっきりと視認でき色調不良となり得る。また、長期使用後には紫外線による劣化が不均一となり、色調不良がさらにひどくなり得る。
【0031】
次に、紫外線吸収剤の含有量のばらつきの測定手順を説明する。
まず、分光光度計により偏光板保護フィルムを構成する積層体の紫外線透過率を測定する。次に、接触式厚み計により積層体の厚みを測定する。次いで、測定部の断面を光学顕微鏡により観察し、表面層と中間層の厚さの比を求めて中間層の厚みを求める。そして、測定した紫外線透過率と厚みの結果を用いて、紫外線吸収剤の濃度を下記式[1]から算出する。
式[1]:C=−log(0.01T)/K/L
式[1]において、Cは紫外線吸収剤の濃度(重量%)、Tは光線透過率(%)、K は吸光係数(−)、Lは積層体の厚さ(μm)である。以上の操作を偏光板保護フィルムの縦方向及び横方向で一定間隔毎に行い、これらの測定値の算術平均値をとりこれを平均濃度Caveとする。測定した濃度Cの内最大値をCmax、最小値をCminとして以下の式から算出する。
濃度のばらつき(%)=(Cmin−Cave)/Cave×100、または(Cmax−Cave)/Cave×100
ここで、Cmin − Cave 、Cmax−Caveの絶対値が異なる場合は、絶対値の大きい方を採用する。
【0032】
紫外線吸収剤含有量のばらつきを全面で±0.1重量%とするためには、(1)乾燥させたノルボルネン系樹脂と紫外線吸収剤とを混合させる。次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出する;(2)乾燥機付きホッパーにノルボルネン系樹脂を投入する。また別の投入口から紫外線吸収剤を投入する。前記ノルボルネン系樹脂及び紫外線吸収剤をそれぞれフィーダーで計量しながら二軸押出機へ供給して溶融押出する方法;等を挙げることができる。
【0033】
中間層の厚みは10〜30μmが好ましく、換言すれば、表面層の厚みは合計で10〜30μmであることが好ましい。中間層の厚みを上記範囲とすることにより、偏光板保護フィルムの薄膜化が可能になるという利点がある。
【0034】
中間層の厚みのばらつきは全面で±1μm以内とすることが好ましい。厚みのばらつきをこの範囲に収めるためには、(1)押出機内に目開きが20μm以下のポリマーフィルターを設ける;(2)ギヤポンプを5rpm以上で回転させる;(3)ダイス周りに囲い手段を配置する;(4)エアギャップを200mm 以下とする;(5)フィルムを冷却ロール上にキャストする際にエッジピニングを行う;(6)押出機として二軸押出機又はスクリュー形式がダブルフライト型の単軸押出機を用いる;等の手段を行うことにより達成でき、これらの(1)〜(6)すべてを行うことが好ましい。
【0035】
本発明に用いられる積層体の厚みは、20μm 〜40μmである。ここで、中間層の厚みと表面層の厚み(2層の合計値)の比は、生産安定性の観点から、中間層/表面層が1〜3であることが好ましい。
【0036】
本発明に用いられる積層体は、前記樹脂組成物と前記脂環式オレフィン樹脂とを共押出法により得ることが好ましい。共押出法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに、共押出Tダイ法には、フィードブロック方式、およびマルチマニホールド方式を挙げることができるが、中間層の厚みのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
【0037】
積層体を得る方法として、共押出Tダイ法を採用する場合には、Tダイを有する押出機における脂環式オレフィン樹脂の溶融温度は、脂環式オレフィン樹脂のガラス転移温度よりも80〜180 ℃ 高い温度にすることが好ましく、前記ガラス転移温度よりも100〜150℃ 高い温度にすることがより好ましい。押出機での溶融温度が過度に低いとノルボルネン系樹脂の流動性が不足するおそれがあり、逆に溶融温度が過度に高いと樹脂が劣化する可能性がある。
【0038】
押出し温度は、使用する脂環式オレフィン樹脂および樹脂組成物に応じて適宜選択すればよい。押出し機内の温度で、樹脂投入口は、Tg〜(Tg+100)℃ 、押出し機出口は(Tg+50)〜(Tg+170)℃ 、ダイス温度は(Tg+50)℃ 〜(Tg+170)℃ とするのが好ましい。ここで、Tgは押出す樹脂のガラス転移温度であり、本発明ではTgBを基準とする。
【0039】
本発明の偏光板保護フィルムは、波長380nm における光線透過率が5%以下で、かつ波長200 〜370nmにおける光線透過率が1.5%以下であり、好ましくは波長380nmにおける光線透過率が3%以下で、かつ波長200 〜370nmにおける光線透過率が1%以下である。本発明において、波長380nmにおける光線透過率が5%を超えると、紫外線により偏光子が変化し偏光度が低下する。上記光線透過率は、JISK0115に準拠して、分光光度計を用いて測定することができる。本発明の偏光板保護フィルムは、波長200〜370nmおよび380nmにおける光線透過率が上記範囲であることにより、偏光子に貼付して用いた場合に、偏光子の着色や偏光度の低下を抑えることができる。
【0040】
本発明の偏光板保護フィルムは、前記積層体のみにより構成される場合に加えて、積層体を構成する表面層の上に他の層を積層することができる。他の層としては、反射防止層、ハードコート層、 粘着剤層、拡散層、および防汚層等を挙げることができる。
【0041】
本発明は、偏光子と、この偏光子の少なくとも一方の側に設けられる、本発明に係る前記偏光板保護フィルムとを備えて構成される。偏光子と偏光板保護フィルムは接着層を介して積層されるのが一般的である。偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素などをドープした後、延伸加工することにより得ることができる。接着層としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルや合成ゴムなどの適当なポリマーをベースポリマーとする粘着剤等を用いることができる。
【0042】
また、本発明に係る偏光板保護フィルムは、偏光板の一部材として用いられる。また、この偏光板は、液晶表示装置の一部材として用いることができる。液晶表示装置は、バックライト光源装置と、液晶パネルとを備えて構成される。液晶パネルは、液晶セルと、この液晶セルの両側に配置される一対の偏光板とを備えている。一対の偏光板は、バックライト光源装置側の偏光板(光源側偏光板とする)と、使用者から視認される側の偏光板(視認側偏光板)により構成されている。したがって、各偏光板が2枚の偏光板保護フィルムを備えていることから、液晶パネル全体としては、4枚の偏光板保護フィルムを有することとなる。本発明の偏光板保護フィルムは、これらの4枚の偏光板保護フィルムのすべてで用いられてもよいが、バックライト光源装置や外光由来の紫外線の影響を受けやすい位置であることを考慮して、光源側偏光板におけるバックライト光源装置側の偏光板保護フィルムとして、また、視認側偏光板における視認側の偏光板保護フィルムとして用いられることが好ましい。
【実施例】
【0043】
次に、本発明について、実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。
【0044】
<光線透過率>
波長380nm及び波長370〜200nmにおける光線透過率は、JIS K0115(吸光光度分析通則)に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定した。
【0045】
<樹脂(組成物)のガラス転移温度>
ガラス転移温度は、10℃/分の条件で昇温させたときの示差走査熱量分析(DSC)によって求めた。
【0046】
<UVAコンパウンディング性>
UVAコンパウンディング時の成形安定性で評価した。
○:可塑化不良、樹脂の焼け、目やにの発生、紫外線吸収剤の含有量ムラ等の不具合がなく、安定した生産が可能。
△:可塑化不良、樹脂の焼け、目やにの発生、紫外線吸収剤の含有量ムラ等の不具合
が多少発生するが、成形条件の変更で改善が可能。
×:可塑化不良、樹脂の焼け、目やにの発生、紫外線吸収剤の含有量ムラ等の不具合が生じ、成形条件を変更しても改善ができず生産性が著しく悪い。
【0047】
<耐久性試験>
得られた積層体に対して、紫外線を1000時間照射し、照射後の積層体に着色が見られるか否か目視により観察した。着色が観察されない場合は○とし、着色が観察される場合は×とした。
【0048】
<製造例1:樹脂組成物J1>
乾燥させたノルボルネン系重合体(「ゼオノア1600」、ガラス転移温度163℃、日本ゼオン社製)95重量部と、トリアジン系紫外線吸収剤A(「TINUVIN1577」、チバ・ジャパン社製)2重量部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤B(「LA−31」、ADEKA社製)3重量部とを、二軸押出機により混合し、次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出して樹脂組成物J1を得た。樹脂組成物J1における紫外線吸収剤の含有量は5重量%である。得られた樹脂組成物J1のガラス転移温度TgAは151℃であった。このため、ガラス転移温度の差であるTgA−TgB=12℃であり、15℃未満であった。
【0049】
<製造例2:樹脂組成物J2>
乾燥させたノルボルネン系重合体(「ゼオノア1600」、日本ゼオン社製)97重量部と、トリアジン系紫外線吸収剤A(「TINUVIN1577」、チバ・ジャパン社製)2重量部と、前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤Bとは異なる分子構造を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤C(「TINUVIN326」、チバ・ジャパン社製)1重量部とを二軸押出機により混合し、次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出して樹脂組成物J2を得た。樹脂組成物J2における紫外線吸収剤の含有量は4重量%である。得られた樹脂組成物J2のガラス転移温度TgAは156℃であった。このため、ガラス転移温度の差であるTgA−TgB=7℃であり、15℃未満であった。
【0050】
<製造例3:樹脂組成物H1>
乾燥させたノルボルネン系重合体(「ゼオノア1600」、日本ゼオン社製)92重量部と、トリアジン系紫外線吸収剤A(「TINUVIN1577」、チバ・ジャパン社製)4重量部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤B(「LA−31」、ADEKA社製)4重量部とを二軸押出機により混合し、次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出して樹脂組成物H1を得た。樹脂組成物H1における紫外線吸収剤の含有量は8重量%である。得られた樹脂組成物H1のガラス転移温度TgAは146℃であった。このため、ガラス転移温度の差であるTgA−TgB=17℃であり、15℃未満ではなかった。
【0051】
<製造例4:樹脂組成物H2>
乾燥させたノルボルネン系重合体(「ゼオノア1600」、日本ゼオン社製)94重量部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤B(「LA−31」、ADEKA社製)6重量部とを二軸押出機により混合し、次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出して樹脂組成物H2を得た。樹脂組成物H2における紫外線吸収剤の含有量は6重量%である。得られた樹脂組成物H2のガラス転移温度TgAは155℃であった。このため、ガラス転移温度の差であるTgA−TgB=8℃であり、15℃未満であった。
【0052】
<製造例5:樹脂組成物H3>
乾燥させたノルボルネン系重合体(「ゼオノア1600」、日本ゼオン社製)94重量部と、トリアジン系紫外線吸収剤A(「TINUVIN1577」、チバ・ジャパン社製)6重量部とを二軸押出機により混合し、次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出して樹脂組成物H3を得た。樹脂組成物H3における紫外線吸収剤の含有量は6重量%である。得られた樹脂組成物H3のガラス転移温度TgAは145℃であった。このため、ガラス転移温度の差であるTgA−TgB=18℃であり、15℃未満ではなかった。
【0053】
<製造例6:樹脂組成物H4>
乾燥させたノルボルネン系重合体(「ゼオノア1600」、日本ゼオン社製)97重量部と、トリアジン系紫外線吸収剤A(「TINUVIN1577」、チバ・ジャパン社製)1重量部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤B(「LA−31」、ADEKA社製)2重量部とを二軸押出機により混合し、次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出して樹脂組成物H4を得た。樹脂組成物H4における紫外線吸収剤の含有量は3重量%である。得られた樹脂組成物H4のガラス転移温度TgAは158℃であった。このため、ガラス転移温度の差であるTgA−TgB=5℃であり、15℃未満であった。
【0054】
<製造例7:樹脂組成物H5>
乾燥させたアクリル樹脂(「デルペット980N」、旭化成ケミカルズ社製)95重量部と、トリアジン系紫外線吸収剤A(「TINUVIN1577」、チバ・ジャパン社製)2重量部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤B(「LA−31」、ADEKA社製)3重量部とを二軸押出機により混合し、次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出して樹脂組成物H5を得た。樹脂組成物H5における紫外線吸収剤の含有量は5重量%である。得られた樹脂組成物H5のガラス転移温度TgAは112℃であった。このため、ガラス転移温度の差であるTgA−TgB=13℃であり、15℃未満であった。
【0055】
<実施例1>
製造例1で得られた樹脂組成物J1を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型50mm単軸押出機(スクリュー有効長さLとスクリュー径Dとの比L/D=32)に装填されたホッパーへ投入し、押出機出口温度280℃ 、押出機のギヤポンプの回転数10rpmで溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイに供給した。他方、樹脂組成物J1で用いたものと同じノルボルネン系重合体を目開き10μm のリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置した50mmの単軸押出機(L/D=32)に装填されたホッパーへ投入し、押出機出口温度285℃、押出機のギヤポンプの回転数4rpmで溶融樹脂をマルチマニホールドダイに供給した。次いで、溶融状態のノルボルネン系重合体、溶融状態の樹脂組成物、および溶融状態のノルボルネン系重合体をそれぞれマルチマニホールドダイから280℃ で吐出させ、150℃ に温度調整された冷却ロールにキャストし、ノルボルネン系重合体からなる表面層(5μm)−樹脂組成物J1からなる中間層(25μm)−ノルボルネン系重合体からなる表面層(5μm)の2種3層からなる幅600mm 、厚さ35μmの積層体1を共押出成形により得た。また、エアギャップ量を50mmとし、溶融状態のフィルムを冷却ロールにキャストする方法としてエッジピニングを採用した。この積層体の両端100mmずつをトリミングして幅400mmとした。
【0056】
得られた積層体1について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に示すように、得られた積層体1の光線透過率を測定したところ、波長380nmにおける光線透過率が2.5%であり、波長200〜370nmの範囲における光線透過率の最大値が0.5%であった。このため、波長380nm における光線透過率が3%以下で、かつ波長200 〜370nmにおける光線透過率が1%以下の要件を満たしていた。また、樹脂組成物の作製にあたって、紫外線吸収剤を問題なく分散させることができ、紫外線吸収剤の含有量のばらつきが±0.1%未満であった。また、このような積層体を上述の通りの手法で耐久性試験を実施したところ、着色が生じなかった。
【0057】
<実施例2>
使用した樹脂組成物J1を、製造例2で得られた樹脂組成物J2に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体2を得た。
【0058】
得られた積層体2について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に示すように、得られた積層体2の光線透過率を測定したところ、波長380nmにおける光線透過率が1.5%であり、波長200〜370nmの範囲における光線透過率の最大値が0.5%であった。このため、波長380nm における光線透過率が3%以下で、かつ波長200 〜370nmにおける光線透過率が1%以下の要件を満たしていた。また、樹脂組成物の作製にあたって、紫外線吸収剤を問題なく分散させることができ、紫外線吸収剤の含有量のばらつきが±0.1未満%であった。また、このような積層体を上述の通りの手法で耐久性試験を実施したところ、着色が生じなかった。
【0059】
<比較例1>
使用した樹脂組成物J1を、製造例3で得られた樹脂組成物H1に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体3を得た。得られた積層体3について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
得られた積層体3について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に示すように、得られた積層体3の光線透過率を測定したところ、波長380nmにおける光線透過率が1.5%であり、波長200〜370nmの範囲における光線透過率の最大値が0.3%であった。このため、波長380nm における光線透過率が3%以下で、かつ波長200 〜370nmにおける光線透過率が1%以下の要件を満たしていた。また、樹脂組成物の作製にあたって、紫外線吸収剤の含有量のばらつきを±0.1%未満にできたものの、紫外線吸収剤を分散させ難かった。また、このような積層体を上述の通りの手法で耐久性試験を実施したところ、着色が生じなかった。
【0061】
<比較例2>
使用した樹脂組成物J1を、製造例4で得られた樹脂組成物H2に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体4を得た。得られた積層体4について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0062】
得られた積層体4について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に示すように、得られた積層体4の光線透過率を測定したところ、波長380nmにおける光線透過率が0.5%であり、波長200〜370nmの範囲における光線透過率の最大値が5.5%であった。このため、波長380nm における光線透過率が3%以下であるが、波長200 〜370nmにおける光線透過率が1%以下の要件を満たしていなかった。また、樹脂組成物の作製にあたって、紫外線吸収剤を問題なく分散させることができ、紫外線吸収剤の含有量のばらつきが±0.1%未満であった。また、このような積層体を上述の通りの手法で耐久性試験を実施したところ、着色が生じた。
【0063】
<比較例3>
使用した樹脂組成物J1を、製造例5で得られた樹脂組成物H3に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体5を得た。得られた積層体5について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0064】
得られた積層体5について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に示すように、得られた積層体5の光線透過率を測定したところ、波長380nmにおける光線透過率が60%であり、波長200〜370nmの範囲における光線透過率の最大値が0.1%であった。このため、波長380nm における光線透過率が3%以下ではないが、波長200 〜370nmにおける光線透過率が1%以下の要件を満たしていた。また、樹脂組成物の作製にあたって、紫外線吸収剤の含有量のばらつきを±0.1%未満にできたものの、紫外線吸収剤を分散させ難かった。また、このような積層体を上述の通りの手法で耐久性試験を実施したところ、着色が生じなかった。
【0065】
<比較例4>
使用した樹脂組成物J1を、製造例6で得られた樹脂組成物H4に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体6を得た。得られた積層体6について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0066】
得られた積層体6について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に示すように、得られた積層体6の光線透過率を測定したところ、波長380nmにおける光線透過率が10%であり、波長200〜370nmの範囲における光線透過率の最大値が3.5%であった。このため、波長380nm における光線透過率が3%以下の要件を満たさず、波長200 〜370nmにおける光線透過率が1%以下の要件を満たしていなかった。また、樹脂組成物の作製にあたって、紫外線吸収剤を問題なく分散させることができ、紫外線吸収剤の含有量のばらつきが±0.1%未満であった。また、このような積層体を上述の通りの手法で耐久性試験を実施したところ、着色が生じた。
【0067】
<比較例5>
使用した樹脂組成物J1を、製造例7で得られた樹脂組成物H5に変更した以外は、実施例1と同様にして積層体7を得た。得られた積層体7について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0068】
得られた積層体7について種々の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に示すように、得られた積層体7の光線透過率を測定したところ、波長380nmにおける光線透過率が9%であり、波長200〜370nmの範囲における光線透過率の最大値が0.1%であった。このため、波長380nm における光線透過率が3%以下ではないが、波長200 〜370nmにおける光線透過率が1%以下の要件を満たしていた。また、樹脂組成物の作製にあたって、紫外線吸収剤を分散させることが非常に困難であり、紫外線吸収剤の含有量のばらつきが0.1%以上であった。また、このような積層体を上述の通りの手法で耐久性試験を実施したところ、着色が生じなかった。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例1,2に示すように、トリアジン系紫外線吸収剤を含む2種類以上の紫外線吸収剤と脂環式オレフィン樹脂とを含む樹脂組成物であって、その全体量に対して3〜6%含有する樹脂組成物を用いて構成することにより、厚み35μmであっても紫外線吸収剤を均一に混合することができるとともに着色を抑えることができた。また、波長200nm〜370nmの範囲において光線透過率を1%以下、かつ、波長380nmにおいて光線透過率を3%以下とすることができ、十分な紫外線吸収性能を奏することができた。また、紫外線吸収剤の添加割合を所定量としたことに加えて、比較的耐熱性の高い脂環式オレフィン樹脂を用いることにより、十分な耐熱性も確保できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層と、中間層の両側にそれぞれ設けられる表面層とを有する積層体を備える偏光板保護フィルムであって、
前記中間層は、脂環式オレフィン樹脂および紫外線吸収剤を含む樹脂組成物により構成されるとともに、前記樹脂組成物における前記紫外線吸収剤の含有量が3〜6重量%であり、前記紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤を含む2種類以上の紫外線吸収剤を含有し、
前記表面層は、紫外線吸収剤を含まない脂環式オレフィン樹脂によりそれぞれ構成され、
当該偏光板保護フィルムは、その光線透過率が、波長200nm〜370nmの範囲において1%以下あり、かつ、波長380nmにおいて3%以下であり、その厚みが20〜40μmである偏光板保護フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光板保護フィルムにおいて、
前記紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する偏光板保護フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の偏光板保護フィルムにおいて、
前記樹脂組成物のガラス転移温度TgAは、前記脂環式オレフィン樹脂のガラス転移温度TgBよりも低く、かつ、その差であるTgB−TgAが15℃未満である偏光板保護フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板保護フィルムにおいて、
前記積層体は、共押出し法により製造されてなる偏光板保護フィルム。
【請求項5】
偏光子と、この偏光子の少なくとも一方の側に設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板保護フィルムと、を備える偏光板。

【公開番号】特開2011−203400(P2011−203400A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69221(P2010−69221)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】