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偏光板及びそれを用いた積層光学部材
説明

偏光板及びそれを用いた積層光学部材

【課題】十分に低い粘度を示し、偏光子又は保護膜に室温で塗工でき、硬化後は十分な貯蔵弾性率を与え、激しい温度履歴を受けても有効な保護機能を発現する光硬化性接着剤を用いて、偏光子と保護膜を貼合し、接着力に優れる偏光板とする。
【解決手段】二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明樹脂からなる保護膜が貼合されており、該接着剤層は、(A)光カチオン硬化性成分100重量部に対し、(B)光カチオン重合開始剤を1〜10重量部含有し、該光カチオン硬化性成分(A)は、その全体量を基準に、(A1)脂環式ジエポキシ化合物を50〜85重量%、(A2)脂肪族エポキシ化合物を1〜40重量%、及び(A3)脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物を1〜30重量%含有する光硬化性接着剤から形成されている偏光板が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明樹脂からなる保護膜が貼合されている偏光板に関するものである。本発明はまた、その偏光板に位相差フィルムなどの他の光学層が積層されている積層光学部材にも関係している。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして有用である。偏光板は通常、偏光子の両面に保護膜が積層された構造を有し、液晶表示装置に組み込まれる。偏光子の片面にのみ保護膜を設けることも知られているが、多くの場合、もう一方の面には単なる保護膜としてではなく、別の光学機能を有する層が、保護膜の機能を兼ねて貼合される。
【0003】
偏光子の製造方法として、二色性色素により染色された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸処理し、水洗後、乾燥する方法が広く採用されている。こうして得られる偏光子は、物理的な強度が弱く、加工方向に裂けやすいなどの問題があるため、上述のとおり、その少なくとも片面、通常は両面に、接着剤層を介して保護膜が貼合される。このための接着剤として、伝統的にポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる水系の接着剤が使用されてきた。また、保護膜として伝統的には、厚さが30〜100μm のトリアセチルセルロースフィルムが使用されてきた。
【0004】
トリアセチルセルロースは、透明性に優れ、各種の表面処理層や光学機能層を形成しやすく、また透湿度が大きく、上記のような水系接着剤を用いて偏光子に貼合した後の乾燥がスムーズに行えるといった、保護膜として優れた利点を有するため、現在でも広く使用されている。一方で、透湿度が大きいことに起因して、トリアセチルセルロースフィルムを保護膜として貼合した偏光板は、湿熱下、例えば、温度70℃、相対湿度90%といった条件下では劣化を引き起こしやすいなどの問題があった。そこで、かかる問題が顕在化しやすい用途には、トリアセチルセルロースより透湿度の小さい、例えば、ノルボルネン系樹脂を代表例とする非晶性ポリオレフィン系樹脂を保護膜とすることも知られている。
【0005】
透湿度の小さい樹脂からなる保護膜をポリビニルアルコール系偏光子に貼合する場合、従来からポリビニルアルコール系偏光子とトリアセチルセルロースフィルムとの貼合に一般に用いられているポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を接着剤とすると、接着強度が十分でなかったり、得られる偏光板の外観が不良になったりする問題があった。これは、透湿度の小さい樹脂フィルムは一般的に疎水性であることや、透湿度が低いために溶媒である水を十分に乾燥できないことなどの理由による。一方で、偏光子の両面に異なる種類の保護膜を貼合することも知られている。例えば、偏光子の一方の面には非晶性ポリオレフィン系樹脂などの透湿度の小さい樹脂からなる保護膜を貼合し、偏光子の他方の面にはトリアセチルセルロースをはじめとするセルロース系樹脂などの透湿度の大きい樹脂からなる保護膜を貼合する提案もある。
【0006】
そこで、透湿度の小さい樹脂からなる保護膜とポリビニルアルコール系偏光子との間で高い接着力を与えるとともに、セルロース系樹脂などの透湿度の大きい樹脂とポリビニルアルコール系偏光子との間でも高い接着力を与える接着剤として、光硬化性接着剤を用いる試みがある。例えば、特開2004-245925 号公報(特許文献1)には、芳香環を含まないエポキシ化合物を主成分とする接着剤が開示されており、活性エネルギー線の照射、具体的には紫外線の照射によるカチオン重合でこの接着剤を硬化させ、偏光子と保護膜とを接着することが提案されている。また特開2008-257199 号公報(特許文献2)には、脂環式エポキシ化合物と脂環式エポキシ基を有さないエポキシ化合物とを組み合わせ、さらに光カチオン重合開始剤を配合した光硬化性接着剤を、偏光子と保護膜との接着に用いる技術が開示されている。
【0007】
一方、ビニルエーテル化合物を光カチオン硬化性成分とする接着剤も知られており、例えば、国際公開第 2010/047386号パンフレット(特許文献3)には、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる化合物を主成分(光カチオン硬化性成分)とし、これにチタネート系カップリング剤及び光カチオン重合開始剤をそれぞれ所定量配合して接着剤とすること、及びこの接着剤を用いて偏光子と保護膜を接着し、偏光板とすることが開示されている。この文献の実施例7には、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル〔ナガセケムテックス(株)の“デナコール EX-321L ”〕、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン 〔ダイセル化学工業(株)の“セロキサイド2000 ”〕、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔ダイセル化学工業(株)の“セロキサイド 2021P”〕、2−エチルヘキシルオキセタン〔東亞合成(株)の“アロンオキセタン OXT
-212”〕、及びシクロヘキシルビニルエーテル〔BASFジャパン(株)の“CHVE”〕の5種類を混合して光カチオン硬化性成分とし、これにチタネート系カップリング剤及び光カチオン重合開始剤を配合した接着剤が示されている。またこの文献には、ビニルエーテル化合物の具体例として、2官能化合物であるトリエチレングリコールジビニルエーテル〔BASFジャパン(株)の“DVE-3”〕も挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−245925号公報
【特許文献2】特開2008−257199号公報
【特許文献3】国際公開第2010/047386号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1や特許文献2に具体的に開示される組成の接着剤は、粘度が必ずしも十分に低くならず、偏光子又はそこに貼合される保護膜に塗工し、薄膜で均一な接着剤層を形成することが必ずしも容易ではなかった。また、これらの接着剤は、硬化後の接着剤層が必ずしも十分な貯蔵弾性率を示さず、結果として、得られる偏光板が激しい温度履歴を受けたとき、例えば、低温での保持と高温での保持を繰り返す冷熱衝撃試験を受けたときに、偏光子に割れを生じることがあった。
【0010】
さらに、これら公知の光硬化性接着剤は、偏光子と保護膜を適度の接着力で接着するものの、その接着力は必ずしも十分とはいえず、例えば、その光硬化性接着剤を用いて偏光子と保護膜とを貼合することにより得られる偏光板は、液晶表示装置に適用するため所定サイズに裁断した状態で、その端部を研磨すると、その端部で偏光子から保護膜がはく離することがあった。
【0011】
一方、特許文献3に具体的に開示されるビニルエーテル化合物を配合した接着剤は、その硬化物の接着強度が不足したり、貯蔵弾性率が不足したりして、偏光子と保護膜とがはく離しやすいという問題があった。
【0012】
そこで、本発明の課題は、十分に低い粘度を示し、偏光子又は保護膜に対して室温での塗工が可能であり、硬化後は十分な貯蔵弾性率を与え、激しい温度履歴を受けたときでも有効な保護機能を発現し、偏光子に割れを生じにくい光硬化性接着剤を用いて、偏光子と保護膜とを貼合し、両者の間の接着力に優れる偏光板を提供することにある。本発明のもう一つの課題は、この偏光板に位相差フィルムなどの他の光学層を積層し、液晶表示装置に好適に用いられる積層光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。具体的には、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明樹脂からなる保護膜が貼合されている偏光板において、その接着剤層を、光カチオン硬化性成分に光カチオン重合開始剤が所定量配合されており、その光カチオン硬化性成分として、脂環式ジエポキシ化合物を主体とし、そこに、脂肪族エポキシ化合物を配合するとともに、さらに脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物を配合した組成物(光硬化性接着剤)から形成するのが有効であることを見出した。すなわち、かかる特定組成の光硬化性接着剤は、室温において低い粘度を示して良好な塗工適性を与えるとともに、硬化後は高い貯蔵弾性率を発現し、偏光子と保護膜とを強固に接着することを見出した。
【0014】
すなわち、本発明によれば、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明樹脂からなる保護膜が貼合されており、その接着剤層は、(A)光カチオン硬化性成分100重量部に対し、(B)光カチオン重合開始剤を1〜10重量部含有し、その光カチオン硬化性成分(A)は、その全体量を基準に、(A1)脂環式ジエポキシ化合物を50〜85重量%、(A2)脂肪族エポキシ化合物を1〜40重量%、及び(A3)脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物を1〜30重量%含有する光硬化性接着剤から形成されている偏光板が提供される。
【0015】
この偏光板において、ジビニルエーテル化合物(A3)は、下式:
CH2=CH−O−Z−O−CH=CH2
で示される化合物であることができ、この式中、Zは、炭素数2〜9のアルキレン基、間にエーテル結合を有する総炭素数4〜9のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6〜18の2価の炭化水素基である。この化合物の具体的な好ましい例として、ジエチレングリコールジビニルエーテルを挙げることができる。
【0016】
これらの偏光板に用いる上記の光硬化性接着剤は、硬化前の25℃における粘度を70mPa・sec以下にすることができる。
【0017】
これらの偏光板において、偏光子の一方の面に貼合される保護膜は、紫外線吸収剤が配合されているアセチルセルロース系樹脂フィルムで構成することができ、この場合は、この保護膜を、上記の光硬化性接着剤を介して偏光子に貼合すればよい。例えば、偏光子の一方の面に、紫外線吸収剤が配合されているアセチルセルロース系樹脂フィルムからなる保護膜を貼合し、偏光子の他方の面には、紫外線吸収剤を含まないアセチルセルロース系樹脂フィルムを貼合する形態も有効である。この場合、紫外線吸収剤を含まないアセチルセルロース系樹脂フィルムは、位相差フィルムであることもできる。
【0018】
また、偏光子の一方の面に貼合される保護膜は、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び鎖状ポリオレフィン系樹脂のような、透湿度の小さい樹脂のフィルムで構成することもできる。この場合も、このような透湿度の小さい樹脂フィルムからなる保護膜を、上記の光硬化性接着剤を介して偏光子に貼合すればよい。これら透湿度の小さい樹脂フィルムは、所望により偏光子の両面に貼合することもできる。液晶表示装置に適用するときに液晶セル側となる保護膜をこのような透湿度の小さい樹脂フィルムで構成する場合、その液晶セル側となる透湿度の小さい樹脂フィルムは、位相差フィルムであることもできる。偏光子の一方の面に、上記の紫外線吸収剤が配合されているアセチルセルロース系樹脂フィルムからなる保護膜を貼合し、偏光子の他方の面には、ここに掲げた透湿度の小さい樹脂フィルムを貼合する形態も有効である。
【0019】
上記の光硬化性接着剤を用いることにより、本発明の偏光板は、偏光子と保護膜との間の180度はく離試験による接着強さが 0.2N/25mm以上となるようにすることができる。
【0020】
また本発明によれば、上記いずれかの偏光板と他の光学層との積層体からなる積層光学部材も提供される。この積層光学部材を構成する他の光学層は、位相差フィルムを含むことが有利である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の偏光板を構成する接着剤層は、脂環式ジエポキシ化合物(A1)、脂肪族エポキシ化合物(A2)、及び脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物(A3)がそれぞれ所定割合で配合された光カチオン硬化性成分(A)に、光カチオン重合開始剤(B)を配合した光硬化性接着剤から形成されている。この光硬化性接着剤は、粘度が低く、良好な塗工適性を示すので、偏光子又は保護膜の表面に薄くて均一な塗膜を形成することができ、偏光板作製時の作業性に優れている。また、この塗膜(接着剤)を介して偏光子と保護膜とを貼合し、その接着剤を硬化させて得られる偏光板は、偏光子と保護膜との間の接着力に優れるとともに、その接着剤の硬化物である接着剤層が高い貯蔵弾性率を与えるので、冷熱衝撃試験のような激しい温度履歴を受けても、偏光子に割れを生じにくく、耐熱衝撃性にも優れる。この偏光板に他の光学層を積層した積層光学部材も、偏光板の機能を十分に発現しながら、耐熱衝撃性に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。本発明では、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明樹脂からなる保護膜を貼合し、偏光板とする。この接着剤層は、光カチオン硬化性成分(A)及び光カチオン重合開始剤(B)を含有する光硬化性接着剤から形成する。具体的には、この光硬化性接着剤を紫外線照射により硬化させて、接着剤層を形成する。得られる偏光板には、他の光学層を積層して積層光学部材とすることができる。偏光板の製造に用いられる光硬化性接着剤、偏光子、及び保護膜、並びに、その偏光板に他の光学層を積層して製造される積層光学部材について、順を追って説明を進めていくこととする。
【0023】
[光硬化性接着剤]
光硬化性接着剤は、光カチオン硬化性成分(A)100重量部に対し、光カチオン重合開始剤(B)を1〜10重量部含有する。光カチオン硬化性成分(A)100重量部あたり、光カチオン重合開始剤(B)を1重量部以上配合することにより、光カチオン硬化性成分(A)を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械強度と接着強度を与える。一方、その量が多くなると、硬化物である接着剤層中にイオン性化合物が増加することで接着剤層の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性能を低下させる可能性がある。そこで、光カチオン重合開始剤(B)の量は、光カチオン硬化性成分(A)100重量部あたり10重量部以下とする。光カチオン重合開始剤(B)の配合量は、光カチオン硬化性成分(A)100重量部あたり2重量部以上とするのが好ましく、また6重量部以下とするのが好ましい。
【0024】
(光カチオン硬化性成分)
光硬化性接着剤の主成分であり、重合硬化により接着力を与える光カチオン硬化性成分(A)は、脂環式ジエポキシ化合物(A1)、脂肪族エポキシ化合物(A2)、及び脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物(A3)を含有する。
【0025】
脂環式ジエポキシ化合物(A1)は、脂環式環に直接結合するエポキシ基を分子内に2個有する化合物である。ここで、脂環式環に直接結合するエポキシ基とは、次式(I)に示すように、脂環式環を構成する2個の炭素原子(通常は隣り合う炭素原子)を橋かけでつなぐ酸素原子−O−を意味し、次式(I)中のmは2〜5の整数を表す。
【0026】
【化1】

【0027】
上記式(I)における (CH2)m 中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合しており、そのような脂環式環に直接結合するエポキシ基を分子内に2個有する化合物が、脂環式ジエポキシ化合物(A1)となりうる。また、脂環式環を形成する (CH2)m 中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。脂環式エポキシ化合物のなかでも、エポキシシクロペンタン環〔上記式(I)においてm=3のもの〕や、エポキシシクロヘキサン環〔上記式(I)においてm=4のもの)を有する脂環式ジエポキシ化合物は、優れた接着性を与えることから好ましく用いられる。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
【0028】
A:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、
K:ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
【0029】
【化2】

【0030】
脂肪族エポキシ化合物(A2)は、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環(3員の環状エーテル)を分子内に少なくとも1個有する化合物である。例えば、ブチルグリシジルエーテルや2−エチルヘキシルジルエーテルのような単官能のエポキシ化合物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルやペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルのような3官能以上のエポキシ化合物、また、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイドやリモネンジオキサイドのような、脂環式環に直接結合するエポキシ基を1個と、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有するエポキシ化合物もこれに該当するが、典型的には、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に2個有する脂肪族ジエポキシ化合物が好ましい。かかる好適な脂肪族ジエポキシ化合物は、例えば、次式(II)で表すことができる。
【0031】
【化3】

【0032】
式中のYは、炭素数2〜9のアルキレン基、間にエーテル結合を有する総炭素数4〜9のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6〜18の2価の炭化水素基である。
【0033】
上記式(II)で示される脂肪族ジエポキシ化合物は、具体的には、アルカンジオールのジグリシジルエーテル、繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、又は脂環式ジオールのジグリシジルエーテルである。
【0034】
式(II)で示される脂肪族ジエポキシ化合物となり得るジオール(グリコール)の具体例を、以下に掲げる。アルカンジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどがある。オリゴアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどがある。脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどがある。
【0035】
これら脂肪族ジエポキシ化合物(A2)の中でも、アルカンジオールのジグリシジルエーテルが好ましく、とりわけ、入手が容易などの理由から好ましいものを挙げると、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、すなわち、上記式(II)において、−Y−が−(CH2)4−(1,4−ブタンジイル)である化合物がある。
【0036】
脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物(A3)は、脂肪族又は脂環式ジオールのジビニルエーテルであって、具体的には、下式(III) で表すことができる。
CH2=CH−O−Z−O−CH=CH2 (III)
【0037】
式中、Zは脂肪族又は脂環式の2価の基を表すが、炭素数2〜9のアルキレン基、間にエーテル結合を有する総炭素数4〜9のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6〜18の2価の炭化水素基であるのが好ましい。
【0038】
上記式(III) においてZが炭素数2〜9のアルキレン基である場合は、アルカンジオールのジビニルエーテルとなり、Zが間にエーテル結合を有する総炭素数4〜9のアルキレン基である場合は、繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジビニルエーテルとなり、Zが脂環構造を有する炭素数6〜18の2価の炭化水素基である場合は、脂環式ジオールのジビニルエーテルとなる。
【0039】
上記式(III) で示されるジビニルエーテルの具体例を挙げると、エチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,5−ペンタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、水添ビスフェノールAジビニルエーテルなどがある。
【0040】
これら脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物(A3)の中でも、アルカンジオール又はオリゴアルキレングリコールのジビニルエーテルが好ましく、とりわけ、入手が容易などの理由から好ましいものを挙げると、ジエチレングリコールジビニルエーテル、すなわち、上記式(III)において、−Z−が−(CH2)2O(CH2)2−である化合物がある。
【0041】
光硬化性接着剤を構成する光カチオン硬化性成分(A)は、以上説明した脂環式ジエポキシ化合物(A1)、脂肪族エポキシ化合物(A2)、及び脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物(A3)という三種類の化合物を含有する。それぞれの量は、光カチオン硬化性成分(A)の全体量を基準に、脂環式ジエポキシ化合物(A1)を50〜85重量%、脂肪族エポキシ化合物(A2)を1〜40重量%、脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物(A3)を1〜30重量%とする。もちろん、これら(A1)、(A2)及び(A3)の合計が100重量%を超えることはない。
【0042】
光カチオン硬化性成分(A)全体のうち、脂環式ジエポキシ化合物(A1)の含有量を50重量以上とすることにより、それを含む光硬化性接着剤を硬化させた後の貯蔵弾性率を高くし、例えば80℃における貯蔵弾性率を900MPa 以上とすることができ、その接着剤を介して偏光子と保護膜を貼合した偏光板が激しい温度履歴にさらされても、偏光子の割れを防ぐことができる。一方で、その量が85重量%を上回ると、以下に述べる脂肪族エポキシ化合物(A2)及びジビニルエーテル化合物(A3)の量が相対的に少なくなって、本発明で企図する光硬化性接着剤の低粘度化及び偏光子/保護膜間の接着力向上の両立が難しくなる。脂環式ジエポキシ化合物(A1)は、光カチオン硬化性成分(A)の全体量を基準に、60重量%以上、とりわけ70重量%以上含有させることが、一層好ましい。光カチオン硬化性成分(A)のうち脂環式ジエポキシ化合物(A1)の量を60重量%以上とすれば、それを含む光硬化性接着剤を硬化させた後の80℃における貯蔵弾性率を、概ね1,000MPa以上とすることができる。
【0043】
また、光カチオン硬化性成分(A)全体のうち、脂肪族エポキシ化合物(A2)の量を1重量%以上とすることで、それを含む光硬化性接着剤を硬化させた後の貯蔵弾性率を高い値に保ちながら、偏光子と保護膜との間の密着力を高めることができる。一方で、その量が40重量%を上回ると、偏光子と保護膜との間の接着力が十分でなくなるとともに、光硬化性接着剤を硬化させた後の貯蔵弾性率も低くなる傾向にある。偏光子と保護膜との間の接着力や光硬化性接着剤の硬化後の貯蔵弾性率をより好ましい値とするうえでは、光カチオン硬化性成分(A)における脂肪族エポキシ化合物(A2)の量を5重量%以上、また25重量%以下とすることが、一層好ましい。
【0044】
さらに、光カチオン硬化性成分(A)全体のうち、ジビニルエーテル化合物(A3)の量を1重量%以上とすることで、光硬化性接着剤の粘度を低下させ、良好な塗工性を示すようになるとともに、偏光子と保護膜との間の接着力を高める効果が発現する。一方で、その量が30重量%を上回ると、光硬化性接着剤を硬化させた後の貯蔵弾性率が十分に高くならず、その接着剤を介して偏光子と保護膜を貼合した偏光板が激しい温度履歴にさらされたときに、偏光子が割れやすくなる。偏光子と保護膜との間の接着力や光硬化性接着剤の硬化後の貯蔵弾性率をより好ましい値とするうえでは、光カチオン硬化性成分(A)におけるジビニルエーテル化合物(A3)の量を5重量%以上、また25重量%以下とすることが、一層好ましい。
【0045】
以上の脂環式ジエポキシ化合物(A1)、脂肪族エポキシ化合物(A2)、及び脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物(A3)に加え、これら三成分の量的割合が上で説明した範囲内となり、かつこれら三成分の機能を阻害しない範囲で、他の光カチオン硬化性成分を配合してもよい。他の光カチオン硬化性成分として、上の(A1)及び(A2)に該当しないエポキシ化合物や、オキセタン化合物などを挙げることができる。(A1)及び(A2)に該当しないエポキシ化合物には、脂環式環に直接結合するエポキシ基を分子内に1個だけ有する化合物や、芳香族エポキシ化合物などが包含される。オキセタン化合物は、オキセタン環(4員環エーテル)を有する化合物である。
【0046】
(光カチオン重合開始剤)
本発明では、以上説明した光カチオン硬化性成分(A)を活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化させて接着剤層を形成することから、光硬化性接着剤には、光カチオン重合開始剤(B)を配合する。光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線の如き活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、光カチオン硬化性成分(A)の重合反応を開始するものである。光カチオン重合開始剤は光で触媒的に作用するため、光カチオン硬化性成分(A)に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、鉄−アレーン錯体などを挙げることができる。
【0047】
芳香族ヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウムカチオンを有する化合物であり、そのジアリールヨードニウムカチオンとして、典型的にはジフェニルヨードニウムカチオンを挙げることができる。芳香族スルホニウム塩は、トリアリールスルホニウムカチオンを有する化合物であり、そのトリアリールスルホニウムカチオンとして、典型的にはトリフェニルスルホニウムカチオンや4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドカチオンなどを挙げることができる。芳香族ジアゾニウム塩は、ジアゾニウムカチオンを有する化合物であり、そのジアゾニウムカチオンとして、典型的にはベンゼンジアゾニウムカチオンを挙げることができる。また、鉄−アレーン錯体は、典型的にはシクロペンタジエニル鉄(II)アレーンカチオン錯塩である。
【0048】
上に示したカチオンは、アニオン(陰イオン)と対になって光カチオン重合開始剤を構成する。光カチオン重合開始剤を構成するアニオンの例を挙げると、ヘキサフルオロホスフェートアニオンPF6、ヘキサフルオロアンチモネートアニオンSbF6、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネートアニオンSbF5(OH)、ヘキサフルオロアーセネートアニオンAsF6、テトラフルオロボレートアニオンBF4、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンB(C65)4などがある。
【0049】
これらの光カチオン重合開始剤の中でも、特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
【0050】
光カチオン重合開始剤は、各種のものが市販されている。市販品の例を挙げると、サンアプロ(株)から販売されている“CPI”シリーズ、米国ユニオンカーバイド社から販売されている“CYRACURE UVI”シリーズ、(株)ADEKAから販売されている“アデカオプトマーSP”シリーズ、ドイツBASF社から販売されている“IRGACURE”シリーズ(ただし、カチオン系光重合開始剤に分類されるもの)、三新化学工業(株)から販売されている“サンエイドSI”シリーズ、ダイセル・サイテック(株)から販売されている“UVACURE 1590”などがある。
【0051】
(光硬化性接着剤に配合しうるその他の成分)
光硬化性接着剤は、以上説明した光カチオン硬化性成分(A)及び光カチオン重合開始剤(B)に加え、他の成分を含んでいてもよい。配合しうる他の成分の例を挙げると、光増感剤、光増感助剤、熱カチオン重合開始剤、連鎖移動剤、熱可塑性樹脂、流動調整剤、消泡剤、レベリング剤、有機溶剤などがある。偏光子に貼合される保護膜の種類によっては、光増感剤、さらには光増感助剤を配合するのが好ましいことがある。
【0052】
光増感剤は、光カチオン重合開始剤(B)が示す極大吸収波長よりも長い波長に極大吸収を示し、光カチオン重合開始剤(B)による重合開始反応を促進させる化合物である。このような光増感剤としては、アントラセン系化合物が好ましく使用される。光増感剤となりうるアントラセン系化合物として、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジイソプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジペンチルオキシアントラセン、9,10−ジヘキシルオキシアントラセンなどが挙げられる。
【0053】
光増感助剤は、光増感剤の作用を一層促進させる化合物である。このような光増感助剤としては、ナフタレン系化合物が好ましく使用される。光増感助剤となりうるナフタレン系化合物として、1,4−ジメトキシナフタレン、1−エトキシ−4−メトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジプロポキシナフタレン、1,4−ジブトキシナフタレンなどが挙げられる。
【0054】
これら他の成分を配合する場合、その量は、光硬化性接着剤の主成分である光カチオン硬化性成分(A)100重量部に対して、例えば、それぞれ10重量部以下の範囲から、配合目的に合わせて適宜選択すればよい。
【0055】
(光硬化性接着剤の調製)
光硬化性接着剤は、これまでに説明した光カチオン硬化性成分(A)及び光カチオン重合開始剤(B)、また必要に応じてその他の成分を混合することにより、調製することができる。混合の際、必要に応じて30〜50℃程度で加温し、攪拌機にて均一になるまで攪拌を行う。攪拌時間は特に限定されないが、通常5〜20分程度である。
【0056】
調製後の光硬化性接着剤は、25℃における粘度が70mPa・sec以下と、低粘度にすることができる。このため、後述する偏光子又は保護膜に塗工するときに作業性に優れたものとなり、薄くて均一な塗膜を形成することができる。光硬化性接着剤の粘度は、より好ましくは60mPa・sec以下である。
【0057】
[偏光子]
偏光子は、自然光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムであり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたもので構成される。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体であってもよい。酢酸ビニルに共重合される他の単量体として、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。ポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000、好ましくは1,500〜5,000の範囲である。
【0058】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光子の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂の製膜は、公知の方法で行うことができる。ポリビニルアルコール系樹脂の原反フィルムは、その厚みを例えば、20〜100μm 程度である。
【0059】
上述の偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程を経て、製造される。
【0060】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸するには、周速度の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。さらに、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、水等の溶剤を用いてポリビニルアルコール系樹脂を膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
【0061】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性有機染料が用いられる。
【0062】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり0.01〜0.5重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり0.5〜10 重量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常30〜300秒程度である。
【0063】
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、通常水100重量部あたり、1×10−3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常30〜300秒程度である。
【0064】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100重量部あたり2〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり2〜20重量部程度であり、好ましくは5〜15重量部程度である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60〜1,200 秒程度であり、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
【0065】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。水洗後に行われる乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃程度である。乾燥処理の時間は、通常120〜600秒程度である。
【0066】
かくして得られるポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の厚さは、10〜40μm 程度とすることができる。
【0067】
[保護膜]
保護膜は、上で説明したポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子が、先述のとおり、物理的な強度に乏しいことから、それを補う目的で、偏光子の表面に設けられる。偏光子に、先に説明した光硬化性接着剤を介して保護膜を貼合し、光硬化性接着剤を硬化させて偏光板とする。保護膜は、従来から偏光板の保護膜として最も広く用いられているトリアセチルセルロースをはじめとするアセチルセルロース系樹脂フィルムや、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い樹脂フィルムで構成することができる。なお、トリアセチルセルロースの透湿度は、概ね400g/m2/24hr程度である。
【0068】
本発明の一つの好ましい形態では、偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護膜がアセチルセルロース系樹脂フィルムで構成される。アセチルセルロース系樹脂は、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されている樹脂であり、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。アセチルセルロース系樹脂として、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどを挙げることができる。
【0069】
アセチルセルロース系樹脂には、紫外線吸収剤が配合されていてもよい。偏光子の一方の面、具体的には、液晶セルに貼合される偏光板の液晶セルから遠い側となる面、すなわち視認側又はバックライト側となる面には、紫外線吸収剤が配合された樹脂フィルムを保護膜として貼合することが多い。紫外線吸収剤として、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニ
ッケル錯塩系化合物などが知られている。
【0070】
偏光子の一方の面に、紫外線吸収剤が配合されているアセチルセルロース系樹脂からなる保護膜を貼合し、偏光子の他方の面には、紫外線吸収剤が配合されていないアセチルセルロース系樹脂からなり、位相差が付与された位相差フィルムを貼合する形態も有効である。
【0071】
本発明のもう一つの好ましい形態では、偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護膜が、トリアセチルセルロースより透湿度の低い樹脂フィルムで構成される。このような樹脂フィルムとして、例えば、透湿度が300g/m2/24hr以下の樹脂フィルムを挙げることができる。具体的には、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂などが、これに該当する。
【0072】
非晶性ポリオレフィン系樹脂は、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名ジメタノオクタヒドロナフタレン)、あるいはそれらに置換基が結合した化合物の如き、環状オレフィンの重合単位を有する重合体であり、環状オレフィンに鎖状ポリオレフィン及び/又は芳香族ビニル化合物を共重合させた共重合体であってもよい。環状オレフィンの単独重合体あるいは2種以上の環状オレフィンの共重合体の場合は、開環重合によって二重結合が残るので、そこに水素添加されたものが、非晶性ポリオレフィン系樹脂として一般的に用いられる。なかでも、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が代表的である。
【0073】
ポリエステル系樹脂は、二塩基酸と二価アルコールとの縮合重合によって得られる重合体であり、ポリエチレンテレフタレートが代表的である。
【0074】
アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルを主な単量体とする重合体であり、メタクリル酸メチルの単独重合体のほか、メタクリル酸メチルと、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステルや芳香族ビニル化合物などとの共重合体であってもよい。
【0075】
ポリカーボネート系樹脂は、主鎖にカーボネート結合(−O−CO−O−)を持つ重合体であり、ビスフェノールAとホスゲンとの縮合重合によって得られるものが代表的である。
【0076】
鎖状ポリオレフィン系樹脂は、エチレンやプロピレンの如き鎖状ポリオレフィンを主な単量体とする重合体であり、単独重合体や共重合体であることができる。なかでも、プロピレンの単独重合体や、プロピレンに少量のエチレンが共重合されている共重合体が代表的である。
【0077】
さらにもう一つの好ましい形態では、偏光子の一方の面に前記接着剤層を介して、アセチルセルロース系樹脂からなる保護膜が貼合され、偏光子の他方の面に同じく前記接着剤層を介して、上記のような透湿度の低い透明樹脂からなる保護膜が貼合される。
【0078】
これらの保護膜は、偏光子に貼合される面とは反対側の面に、ハードコート処理、反射防止処理、防眩処理、帯電防止処理、又は防汚処理等の、各種の表面処理を施すことができる。
【0079】
[偏光板の製造方法]
偏光子と保護膜は、接着剤を介して接着される。偏光子と保護膜の接着にあたっては、上で説明した光硬化性接着剤の塗布層を、偏光子と保護膜の貼合面の一方又は両方に形成し、その塗布層を介して偏光子と保護膜を貼合する。接着剤の塗布層を形成する前に、偏光子と保護膜の貼合面の一方又は両方に対して、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理のような易接着処理を施してもよい。そして、未硬化の光硬化性接着剤の塗布層に活性エネルギー線を照射して硬化させ、保護膜を偏光子の上に固着させる。
【0080】
塗布層の形成には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子と保護膜を両者の貼合面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に接着剤を流延させる方式を採用することもできる。各塗工方式には、それぞれ最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて光硬化性接着剤の粘度調整を行うことも有用な技術である。このための溶剤には、偏光子の光学性能を低下させることなく、光硬化性接着剤を良好に溶解するものが用いられるが、その種類に特別な限定はない。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。接着剤層の厚さは、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm 以下である。接着剤層が厚くなると、接着剤の反応率が低下し、偏光板の耐湿熱性が悪化する傾向にある。
【0081】
光硬化性接着剤の塗布層を硬化させるために用いる活性エネルギー線光源は、紫外線、電子線、X線などを発生するものであればよい。特に波長400nm以下に発光分布を有する光源が好ましく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを挙げることができる。
【0082】
光硬化性接着剤への活性エネルギー線照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって特に限定されないが、光カチオン重合開始剤の活性化に有効な波長領域の光照射強度が0.1〜100mW/cm2となるようにすることが好ましい。光照射強度が小さすぎると、反応時間が長くなりすぎ、一方でその光照射強度が大きすぎると、ランプから輻射される熱及び光硬化性接着剤の重合時の発熱により、光硬化性接着剤の黄変や偏光子の劣化を生じる可能性がある。光硬化性接着剤への光照射時間も、硬化する組成物毎に制御されるものであって、やはり特に限定されないが、光照射強度と光照射時間の積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が小さすぎると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が大きすぎると、光照射時間が非常に長くなって生産性向上には不利になりやすい。
【0083】
偏光子の両面に保護膜を貼合する場合、活性エネルギー線の照射はどちらの保護膜側から行ってもよい。例えば、一方の保護膜が紫外線吸収剤を含有し、他方の保護膜が紫外線吸収剤を含有しない場合には、紫外線吸収剤を含有しない保護膜側から活性エネルギー線を照射することが好ましい。このように照射することで、照射される活性エネルギー線を有効に利用し、硬化速度を高めることができる。
【0084】
本発明では、上述したとおり光硬化性接着剤の硬化物である接着剤層の貯蔵弾性率を高め、偏光子と保護膜との間の接着性を高めることができる。そのため、偏光子と保護膜との間の180度はく離試験による接着強さが0.2N/25mm 以上となるようにすることができる。ここで、180度はく離試験は、後述する実施例にも示すとおり、JIS K 6854
-2:1999 「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じて行われる。
【0085】
[積層光学部材]
本発明の偏光板は、偏光板以外の光学機能を有する光学層を積層して、積層光学部材とすることができる。典型的には、偏光板の保護膜に、接着剤や粘着剤を介して光学層を積層貼着することにより、積層光学部材とされるが、その他、例えば、偏光子の一方の面に本発明に従って光硬化性接着剤を介して保護膜を貼合し、偏光子の他方の面に接着剤又は粘着剤を介して光学層を積層貼着することもできる。後者の場合、偏光子と光学層を貼着するための接着剤として、本発明で規定する光硬化性接着剤を用いれば、その光学層は、同時に本発明で規定する保護膜ともなりうる。
【0086】
偏光板に積層される光学層の例を挙げると、液晶セルの背面側に配置される偏光板に対しては、その偏光板の液晶セルに面する側とは反対側に積層される、集光板、輝度向上フィルム、反射層、半透過反射層、光拡散層などがある。また、液晶セルの前面側に配置される偏光板及び液晶セルの背面側に配置される偏光板のいずれに対しても、その偏光板の液晶セルに面する側に積層される位相差フィルムなどがある。
【0087】
集光板は、光路制御等を目的に用いられるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、あるいはドット付設シートなどであってもよい。
【0088】
輝度向上フィルムは、液晶表示装置における輝度の向上を目的に用いられる。具体的には、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持した円偏光分離シートなどが挙げられる。
【0089】
反射層、半透過反射層、又は光拡散層は、偏光板を反射型の光学部材、半透過型の光学部材、又は拡散型の光学部材とするためにそれぞれ設けられる。偏光板を含む反射型の光学部材は、視認側からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できるため、液晶表示装置を薄型化しやすい。偏光板を含む半透過型の光学部材は、明所では反射型として、暗所ではバックライトからの光で表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。また、偏光板を含む拡散型の光学部材は、光拡散性を付与してモアレ等の表示不良を抑制した液晶表示装置に用いられる。
【0090】
これらの反射層、半透過反射層及び光拡散層の形成方法について説明する。反射型の光学部材を構成する反射層は、例えば、偏光子上の保護膜の上に、アルミニウム等の金属からなる箔や蒸着膜を付設することにより形成することができる。半透過型の光学部材を構成する半透過反射層は、前記の反射層をハーフミラーとしたり、パール顔料などを含有して光透過性を示す反射板を偏光板に接着したりすることで形成できる。また、拡散型の光学部材を構成する光拡散層は、例えば、偏光板上の保護膜にマット処理を施す方法、微粒子含有の樹脂を塗布する方法、微粒子含有のフィルムを接着する方法などにより、微細凹凸構造を有する表面層として形成できる。微粒子を含有した樹脂層やフィルムは、入射光及びその反射光が微粒子含有層を透過する際に拡散され、明暗ムラを抑制しうるなどの利点を有する。表面微細凹凸構造を形成するために配合する微粒子は、例えば、平均粒径が0.1〜30μmであるシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンの如き無機系微粒子、架橋又は非架橋のポリマーの如き有機系微粒子などであることができる。
【0091】
積層光学部材は、反射拡散両用の偏光板であってもよい。反射拡散両用の偏光板は、例えば、偏光板を含む上記した拡散型光学部材の微細凹凸構造面に、その凹凸構造が反映された反射層を設けるなどの方法により作製できる。微細凹凸構造を有する反射層は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラツキを防止し、明暗のムラを抑制しうるなどの利点を有する。表面微細凹凸構造を反映させた反射層は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、又はスパッタリングの如き蒸着やメッキなどの方法により、金属を微細凹凸構造の表面に直接付設することで形成できる。
【0092】
光学層として作用する位相差フィルムは、液晶セルによる位相差の補償等を目的として使用される。位相差板の例としては、各種プラスチックの延伸フィルム等からなる複屈折性フィルム、ディスコティック液晶やネマチック液晶が配向固定されたフィルム、基材フィルム上に上記の液晶層が形成されたものなどが挙げられる。基材フィルム上に液晶層を形成する場合、基材フィルムとして、トリアセチルセルロースなどのセルロースアセテート系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0093】
複屈折性フィルムを形成するプラスチックとしては、例えば、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレンのような鎖状ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリアミドなどが挙げられる。延伸フィルムは、一軸や二軸等の適宜な方式で処理したものであることができる。なお、位相差フィルムは、広帯域化など光学特性の制御を目的として、2枚以上を組み合わせて使用してもよい。
【0094】
積層光学部材は、偏光板以外の光学層として位相差フィルムを液晶表示装置に適用したとき、有効に光学補償が行えることから、好ましい。位相差フィルムの位相差値(面内及び厚み方向)は、適用される液晶セルに応じて、最適なものを選べばよい。
【0095】
積層光学部材は、偏光板と、上述した各種の光学層から使用目的に応じて選択される1層又は2層以上とを組み合わせ、2層又は3層以上の積層体とすることができる。その場合、積層光学部材を形成する各種光学層は、接着剤や粘着剤を用いて偏光板と一体化されるが、そのために用いる接着剤や粘着剤は、接着剤層や粘着剤層が良好に形成されるものであれば特に限定はない。接着作業の簡便性や光学歪の発生防止などの観点から、粘着剤(感圧接着剤とも呼ばれる)を使用することが好ましい。積層光学部材の液晶セルに貼合される面にも、通常は粘着剤層が設けられる。
【0096】
上記の各種光学層と偏光板を一体化させる粘着剤には、アクリル系重合体や、シリコーン系重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするものを用いることができる。なかでも、アクリル系粘着剤のように、透明性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらに耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等のはく離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤においては、メチル基やエチル基やブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
【0097】
偏光板又は積層光学部材への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチルなどの有機溶媒に粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、これを目的のフィルム(偏光板又は積層光学部材)の対象面に直接塗工する方式や、予めプロテクトフィルム上に粘着剤層を形成しておき、それを目的のフィルム(偏光板又は積層光学部材)の対象面に移着する方式などにより、行うことができる。粘着剤層の厚さは、その接着力などに応じて決定されるが、1〜50μm 程度の範囲が適当である。
【0098】
また、粘着剤層には必要に応じて、ガラス繊維やガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉やその他の無機粉末などからなる充填剤、顔料や着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
【0099】
積層光学部材は、液晶セルの片側又は両側に、上記した粘着剤層を介して配置することができる。用いる液晶セルは任意であり、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、スーパーツイステッドネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなど、種々の液晶セルを使用して液晶表示装置を形成することができる。
【実施例】
【0100】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。また、以下の例で用いた光カチオン硬化性成分及び光カチオン重合開始剤は、それぞれ次のとおりであり、以下、それぞれの冒頭に付した記号で表示することがある。
【0101】
(A)光カチオン硬化性成分
(A1)脂環式ジエポキシ化合物
(a1)3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:ダイセル化学工業(株)から入手、商品名“セロキサイド 2021P”。
【0102】
(A2)脂肪族エポキシ化合物
(a2)1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル:ナガセケムケックス(株)から入手、商品名“デナコール EX-121”。
【0103】
(A3)ジビニルエーテル化合物
(a3)ジエチレングリコールジビニルエーテル:日本カーバイド工業(株)から入手。
【0104】
(AX)その他の光カチオン硬化性化合物
(ax)2−ヒドロキシエチルビニルエーテル:別名エチレングリコールモノビニルエーテル、日本カーバイド工業(株)から入手。
【0105】
ここに示した4種類の光カチオン硬化性成分は、それぞれ次式の構造を有する化合物である。
【0106】
【化4】

【0107】
(B)光カチオン重合開始剤
(b1)トリアリールスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤:50%プロピレンカーボネート溶液の形でサンアプロ(株)から入手、商品名“CPI-100P”。
【0108】
[実施例1及び2並びに比較例1〜6]
(1)光硬化性接着剤液の調製
光カチオン硬化性成分を表1に示す割合(合計100部)で配合し、さらに上に示した光カチオン重合開始剤(b1)を固形分として 2.25部混合した後、脱泡して、光硬化性接着剤液を調製した。
【0109】
(2)接着剤液の25℃における粘度測定
上記(1)で調製したそれぞれの接着剤液につき、 Anton Paar 社製の回転式粘弾性測定装置“Physica MCR 301” を用いて、温度25℃における粘度を測定した。この結果を表1に示した。
【0110】
(3)粘着剤硬化物の80℃における貯蔵弾性率の測定
東洋紡績(株)から入手したポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名“東洋紡エステルフィルム E7002”)の片面に、塗工機〔第一理化(株)製のバーコーター〕を用いて、上記(1)で調製したそれぞれの接着剤液を硬化後の膜厚が約30μm となるように塗工した。次に、フュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”により紫外線を積算光量が3,000mJ/cm2となるように照射して、接着剤を硬化させた。これを5mm×30mmの大きさに裁断し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がして接着剤の硬化フィルムを得た。この硬化フィルムをその長辺が引張り方向となるように、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置“DVA-220”を用いてつかみ具の間隔2cm で把持し、引張りと収縮の周波数を1Hz、昇温速度を3℃/分に設定して、温度80℃における貯蔵弾性率を求めた。この結果を表1に示した。
【0111】
(4)偏光板の作製
コニカミノルタオプト(株)から入手した紫外線吸収剤を含む厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルム(商品名“コニカタック KC8UX2MW ”)の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上で調製したそれぞれの接着剤液を硬化後の膜厚が約2μm となるように、バーコーターを用いて塗工した。その接着剤層に、厚さ28μm のポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光子を貼合した。また、コニカミノルタオプト(株)から入手したアセチルセルロース系樹脂からなる厚さ40μm の位相差フィルム〔商品名“N-TAC KC4FR-1 ”〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上と同じ接着剤液を硬化後の膜厚が約2μm となるように、バーコーターを用いて塗工した。その接着剤層に、上で作製したトリアセチルセルロースフィルムが片面に貼合された偏光子の偏光子側を貼合し、積層物を作製した。この積層物のアセチルセルロース系位相差フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”使用)を用いて積算光量が250mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。こうして、偏光子の両面に保護膜が貼合された偏光板を作製した。
【0112】
(5)180度はく離試験
上記(4)で作製した偏光板を200mm×25mmの大きさに裁断して、ポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光子と、アセチルセルロース系位相差フィルム“N-TAC KC4FR-1 ”との間、及び厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルム“コニカタック KC8UX2MW ”との間のはく離強さを求めた。アセチルセルロース系位相差フィルムと偏光子の間のはく離強さを測定するときは、アセチルセルロース系位相差フィルムの露出面にアクリル系の粘着剤層を設け、厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルムと偏光子の間のはく離強さを測定するときは、厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルムの露出面にアクリル系の粘着剤層を設け、それぞれの粘着剤層をガラス板に貼った。そして、偏光子と粘着剤側の保護フィルム(アセチルセルロース系位相差フィルム“N-TAC KC4FR-1 ”又は厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム“コニカタック KC8UX2MW”)の間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥がして、その剥がした部分を試験機のつかみ部でつかんだ。この状態の試験片を、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気中、JIS K 6854
-2:1999 「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、つかみ部の30mmを除く170mmの長さにわたる平均はく離力を求めた。この結果を表1に示した。表1の180度はく離強さの項中、「N−TAC/PVA」の列は、上記したアセチルセルロース系位相差フィルム“N-TAC KC4FR-1 ”とポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光子の間のはく離強さを意味し、「TAC/PVA」の列は、上記した厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルム“コニカタック KC8UX2MW ”とポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光子の間のはく離強さを意味する。
【0113】
【表1】

【0114】
表1の結果から、光カチオン硬化性成分(A)を脂環式ジエポキシ化合物(A1)と脂肪族エポキシ化合物(A2)の2元系とした比較例1では、接着剤硬化物の貯蔵弾性率及び偏光子と保護膜との間の接着力(はく離強さ)は良好であるものの、接着剤液の粘度が100mPa・secを超えており、塗工性が十分とはいえない。
【0115】
比較例2及び3は、脂環式ジエポキシ化合物(A1)に、接着剤液の粘度を下げる目的でジビニルエーテル化合物(a3)を配合したものであり、接着剤液の粘度低減効果は認められるものの、偏光子と保護膜との間の接着力(はく離強さ)が十分でなかった。比較例4及び5も、脂環式ジエポキシ化合物(A1)に、接着剤液の粘度を下げる目的でエチレングリコールモノビニルエーテル(ax)を配合したものであり、接着剤液の粘度低減効果は認められるものの、偏光子と保護膜との間の接着力(はく離強さ)が、比較例2及び3に比べても一層小さくなった。また、光カチオン硬化性成分(A)中のエチレングリコールモノビニルエーテル(ax)の割合を30%に高めた比較例5は、接着剤を硬化させたときの貯蔵弾性率が著しく低くなっている。これは、エチレングリコールモノビニルエーテル(ax)の水酸基に起因して、硬化物(重合物)の分子量が大きくならなかったためと考えられる。このように、硬化後の接着剤層の貯蔵弾性率が低いため、偏光板が例えば激しい温度履歴を受けたときに、偏光子の保護機能も不足する。
【0116】
比較例6は、カチオン硬化性成分(A)として、脂環式ジエポキシ化合物(A1)と脂肪族エポキシ化合物(A2)に加え、エチレングリコールモノビニルエーテル(ax)を配合して、やはり接着剤液の粘度低下を図ったものであり、接着剤液の粘度低減効果は認められるものの、この場合も、偏光子と保護膜との間の接着力(はく離強さ)が十分でなかった。
【0117】
これに対し、脂環式ジエポキシ化合物(A1)及び脂肪族エポキシ化合物(A2)に加え、ジビニルエーテル化合物(A3)を所定量配合した実施例1及び2は、接着剤液の粘度が低いため、塗工性に優れる一方で、接着剤硬化物が高い貯蔵弾性率を与えるため、偏光板が激しい温度履歴を受けたときでも偏光子の保護機能に優れ、偏光子が割れにくく、さらには偏光子と保護膜との間の接着力(はく離強さ)も高い値を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明樹脂からなる保護膜が貼合されてなり、
該接着剤層は、
(A)光カチオン硬化性成分100重量部に対し、
(B)光カチオン重合開始剤を1〜10重量部含有し、
該光カチオン硬化性成分(A)は、その全体量を基準に、
(A1)脂環式ジエポキシ化合物を50〜85重量%、
(A2)脂肪族エポキシ化合物を1〜40重量%、及び
(A3)脂肪族又は脂環式のジビニルエーテル化合物を1〜30重量%
含有する光硬化性接着剤から形成されていることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記ジビニルエーテル化合物(A3)は、下式(III)
CH2=CH−O−Z−O−CH=CH2 (III)
で示され、式中のZは、炭素数2〜9のアルキレン基、間にエーテル結合を有する総炭素数4〜9のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6〜18の2価の炭化水素基である請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記ジビニルエーテル化合物(A3)は、ジエチレングリコールジビニルエーテルである請求項2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記光硬化性接着剤は、硬化前の25℃における粘度が70mPa・sec以下である請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板。
【請求項5】
前記偏光子の一方の面に、前記接着剤層を介して、紫外線吸収剤が配合されているアセチルセルロース系樹脂フィルムからなる保護膜が貼合されている請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
【請求項6】
前記偏光子の一方の面に、前記接着剤層を介して、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及び鎖状ポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる樹脂のフィルムからなる保護膜が貼合されている請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板。
【請求項7】
前記偏光子と前記保護膜との間の180度はく離試験による接着強さが 0.2N/25mm以上である請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の偏光板と、他の光学層との積層体からなることを特徴とする積層光学部材。
【請求項9】
前記他の光学層は位相差フィルムを含む請求項8に記載の積層光学部材。

【公開番号】特開2013−92546(P2013−92546A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232625(P2011−232625)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】