説明

偏光蛍光計

本発明は、偏光を用いる蛍光計及びこの蛍光計の較正方法に関する。蛍光計は、励起用偏光子(3H、3V)を備えた励起経路を用いて、偏光された光を第1面に生じさせるか、第2面に生じさせて、励起光としてサンプルに導き、また発光経路を用いて、サンプルから発光を導き、この発光経路に発光用偏光フィルタ(5H)を備え、また励起検出器(8)に対し、励起用偏光子によって偏光された光を励起経路から導く。さらに、基準検出器(10)を備え、励起用偏光子によって偏光された光が、励起経路からサンプル又は励起検出器に導かれる前に、基準検出器(10)に導くようにする。この基準検出器は、励起検出器により較正でき、サンプル測定中にリアルタイムで補正の測定を可能にする。この蛍光計は、特に蛍光のスペクトルの測定に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光を用いる蛍光計(polarisation fluorometer:偏光蛍光光度計)と、蛍光計の較正に関する。本発明は、偏光される蛍光測定法によって、サンプルの化学的特性を調べる分析器に適用できる。このような研究は、特にバイオテクノロジー(生命工学)や臨床化学試験で行われている。
【背景技術】
【0002】
蛍光測定法では、所定の波長の励起光(excitation light)をサンプルに指向させる。そして、照射が、サンプル内に存在する蛍光体に蛍光を生じさせて、長い波長の発光(emission light)を発生させる。
【0003】
励起光が偏光される場合には、これは、励起光の偏光に対し正しく位置付けられた蛍光分子に励起光が作用して、発光も偏光される。この発光の偏向角度は、蛍光体に対して特定のもので、波長に基づいている。
【0004】
様々な理由によって、発光が偏光されない場合がある。この非偏光は、励起と発光との間で分子状態がシフトすることによって生じている。典型的な時間差は、約10ナノ秒である。非偏光は、様々な方法、例えば、化学反応をモニタするために用いられることがある。非偏光となる主たる理由は、分子の円振動である。この円振動の大きさは、他のもののうち、例えば、分子の形状と大きさ、及び、媒体の粘性に基づいている。従って、非偏光は、励起と発光との間の時間差中で、物質の分子の平均的な円運動によって影響を受ける。蛍光を生じさせる分子が他の分子と関連する場合には、蛍光体の円運動が遅れる結果、発光の偏光が増大することがある。
【0005】
特に生命工学の応用において、蛍光体の蛍光は、特に分子を識別できる分子の粘着性と関係している。分子の大きさが増大すると、分子の円運動が遅れて、蛍光体はより元の偏光のレベルを保持しようとする。このため、偏光の測定は直接的となり、このような特別な反応の測定が速くなる。スペクトルの偏光測定は、サンプルに関する重要な情報を与えており、この中には、異なる励起と発光の波長でのサンプルの偏光の計測を含んでいる。
【0006】
偏光を生じさせる蛍光は、この早い方法と信頼性のある測定方法のため、特に大きなサンプルの量を解析するのに適している。
偏光は、励起と発光の経路の双方に偏光フィルタを備える蛍光計を用いて測定される。
【0007】
偏光を算出するため、二つの測定が必要とされる。即ち、
1.励起用の偏光フィルタと発光用の偏光フィルタとが整合しているか
2.励起用の偏光フィルタと発光用の偏光フィルタとが互いに90度の角度にあるかを測定する。
【0008】
偏光Pは、次の数式1から得ることができる。
数式1:P=(III−IT)/(III+IT
上記数式において、
II:平行なフィルタでの発光強さ
T:交差したフィルタでの発光強さ
である。
【0009】
また、偏光量は、次のように、非等方性rの用語を用いて示すことができる。
数式2:r=(III−IT)/(III+2IT
従って、P及びrは、互いに算出することができる。
数式1a:P(r)=3r/(2+r)
【0010】
偏光蛍光計は、通常、所謂L字形状の構成を用いており、この構成では、励起光に対して90度の角度で発光を測定する。この場合、発光検出器に対して励起光が達することを効率的に減少させる。通常の構成では、励起経路には固定式の偏光フィルタを用い、発光フィルタには交換可能な偏光フィルタを用いるが、この構成を逆にすることは可能である。
【0011】
ここで、励起経路に固定式の偏光フィルタを用い、この偏光面はXであると仮定する。サンプルの発光は、この偏光を用いて測定され、IXXが得られるとする。第二番目の測定は、90度で曲げられた(平面Y)発光用の偏光を用いて行われ、IXYが得られるとする。従って、理想的な場合、これら発光測定結果IXX及びIXYから、直接的に、偏光を算出することができる。
数式3:P=(IXX−IXY)/(IXX+IXY
【0012】
しかしながら、発光経路からの信号の伝達レベルと発光用の偏光フィルタの透過率は、異なる偏光面上で強さが変化することがある。このため、異なる偏光の測定感度間の差を補正するため、較正要素が必要とされている。この較正要素は、G要素と呼ばれている。従って、次の数式で示すように、偏光を補正する。
数式4:P=(IXX−GIXY)/(IXX+GIXY
【0013】
異なる偏光面上での発光測定の感度をSY及びSXとすると、次のように、G要素はこれらの相互関係として示される。
数式5:G=SX/SY
【0014】
励起側で交換可能な偏光フィルタが利用可能となる場合でも、G要素を決定することができる。この場合、2つの励起の偏光を用いてサンプルの偏光を測定することで、G要素を算出する。しかし、この測定方法には複数の問題がある。
1.構成が複雑である。即ち、2つの偏光フィルタを用いる際、これらフィルタを正確に90度の角度で配置する必要がある。
2.4つの測定を用いるため、測定が遅くなる。G要素は、高い信号レベルで、適切に示されたサンプル上で、前もって測定することができる。しかし、偏光が不明なサンプル上で測定する場合には、不便である。また、偏光フィルタの取替えは、実際の測定期間を考慮すると、操作を比較的に遅らせることになる。
3.ノイズがある。即ち、Pのノイズは、4つの偏光測定部品の全てから構成される。このため、この測定では、ノイズ要素を最小にするため、適切な偏光を用いてサンプルを測定する必要がある。
【0015】
上述した問題のため、実際には、ほとんどの場合で、偏光Pがわかっている基準サンプルを用いて、G要素を測定している。そして、P(数式4)を用いて、Gを得ている。例えば、このような基準用の物質は、フルオレセインである。しかし、この方法は、また次の問題を有している。
1.副次的な測定用に、ソリューションを保っている。例えば、フルオレセインは、蛍光体としてフルオレセインを用いる分野にのみ適当である。
2.励起波長と発光波長の関数(P(λ))として、スペクトルの偏光の測定を行うことが困難である。また、基準物質のP(λ励起)とP(λ発光)のスペクトルの双方を正確に知る必要がある。
【0016】
特許文献1は、蛍光の偏光が補正された源を測定するための光学器械と方法について開示している。この構成では、光源の強さをモニタし、また、測定された蛍光の強さを補正するための基準光検出器としては、蛍光計に依存している。励起経路には、調整可能な偏光子が設けられ、発光経路は、固定式のものを用いている。補正には2つの測定だけが必要とされ、つまり、励起用偏光子の各位置に1つが用いられている。そして、キュベットが空で、つまりキュベットを用いることなく、補正の測定を行うことができる。
【特許文献1】国際特許公開第WO 91/07652号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決するように、独立した請求項1に記載の偏光を用いる蛍光計と、請求項7に記載の偏光を用いる蛍光計の較正(キャリブレーション)方法と、請求項10に記載のサンプルの偏光の蛍光スペクトルを測定するための方法を提供するものである。本発明に関するさらなる他の実施形態については、他の従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、発光経路に固定式の偏光フィルタを用い、励起経路に交換可能な偏光フィルタを用いる。装置の較正には、単に、2つの偏光面上の励起の強さの測定を必要とする。このためには、サンプルを全く必要とせず、励起光の経路上で直接的に測定することができる。従って、L字形状の構成を有する装置は、励起の強さを測定するのに特に適する、特別な励起検出器(特に、偏光からフリーまたは独立する)を用いることができる。また、基準検出器を用いて、これに対して、偏光された光が、サンプルまたは励起検出器に対して導かれる前に、特にビームスプリッターを介して、励起経路から導くようにする。この基準検出器は、励起検出器に基づいて較正できるので、偏光面上の蛍光計の測定感度は、励起検出器に光を導かずに算出することができる。従って、例えば、蛍光のスペクトルを正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明では、発光経路に固定式の偏光フィルタを用い、励起経路に交換可能なフィルタを用いる。ここで、発光経路の偏光面をXで示し、これに対して垂直な偏光面をYで示すとすると、偏光Pは、次の数式から得ることができる。
数式6:P=(IXX−GIYX)/(IXX+GIYX
数式7:G=EX/EY
上記数式において、
XX=平面Xでの発光の強さ
YX=平面Yでの発光の強さ
X=平面X上の励起の強さ
Y=平面Y上の励起の強さ
である。
【0020】
上記数式6と数式7を組み合わせることで、次の数式が得られる。
数式8:P=(IXX/EX−IYX/EY)/(IXX/EX+IYX/EY
従って、G要素の決定には、2つの測定だけを必要とする。この場合、G要素の構成部は、サンプルの前に形成され、G要素を決定するための測定では、励起ビームの経路上に置かれた励起検出器を用いて、サンプルがなくとも行うことができ、換言すると、発光経路を通って光を導かなくともよい。
【0021】
この方法での励起G要素の測定は、他の多くのもののうち、次に示す大きな長所を有する。
1.測定は、サンプルから完全に独立する。望ましくは、この測定は、サンプルを何ら必要とせず、また、サンプルの容器を何ら必要とせず、行われる。
2.実際の決定には2つの測定だけを必要とすることを考慮すると、測定は速い。つまり、較正された基準経路のため、決定には2つの測定だけを必要とする。
3.装置内に光度計の測定が既に備えられている場合には、さらなる構成部を必要としない、即ち、同時に光度計の測定を可能にする。
4.2つの低レベルの測定結果部だけから結果が構成されるので、低めのサンプルの集中とともに、偏光のノイズPが低い。偏光のG要素を算出するのに必要とする2つの他の要素は、高い信号レベルのため、実際にはノイズがない。
【0022】
分離した励起用の偏光フィルタを用いるが、フィルタは線形移動により取り替えることができるので、簡単で、高精度に配置される。但し、他の実施形態では、単一のフィルタを用いて、測定毎に向きを変えるようにしてもよい。
【0023】
光源は、例えば、白熱灯(ハロゲンランプ等)を用いて構成されて、広く均一なスペクトルを発生させて、多用途に測定するのに適するようにしてもよい。また、特に、紫外線領域で強い照射効果が必要とされる場合には、ジューテリウムランプを用いてもよい。また、キセノンフラッシュライトも特に適する光源である。この光源は、非常に大きな励起波長範囲をカバーできる。フラッシュライト源を用いる場合、非常に高強度の短い光のパルスを発生させる。フラッシュライトのランプを用いる場合、測定が単独のとき、操作できるので効率的である。
【0024】
G要素を決定するため、特に偏光から独立し、望ましくは励起の強さを正確に測定するのに最適な、励起検出器を用いてもよい。この検出器は、例えば、サンプル領域の後方に配置されて、サンプルの配置と干渉することなく、検出器を固定位置に置けるようにしてもよい。この励起検出器は、例えば、シリコン光検出器や、光電子増倍管(PMT:photo multiplier tube)でもよい。測定される励起光に対して垂直に配置されたシリコン光検出器は、特に適切な検出器である。例えば、レンズやミラー光学(光学機器)を検出器の前方に設けて、検出器の作用領域を広げるようにしてもよい。また、G要素を測定する励起検出器は、サンプル容器の前方に設けられてもよい。
【0025】
本発明では、基準検出器と呼ばれる第二の検出器を用いており、この検出器を、上記励起検出器の前方と、サンプルの前方に設けている。この基準検出器は、蛍光計内に設けられたサンプルが、励起検出器の使用を防ぐときにも用いることができる。偏光された光の一部は、望ましくは、適切な手段を介して、基準検出器まで導光される。このような手段は、透過光のビームと反射光のビームの双方で、偏光を生じさせる。これらの現象は、波長に基づく。このため、区別して較正されない限り、このような手段を用いて行われる測定は、不正確になる。この較正は、励起検出器を用いて、蛍光計内にサンプルを配置する前に行うことができる。基準検出器が較正されると、サンプル測定中に、また、励起検出器の光の経路上にサンプルがあるときに、リアルタイムでG要素を測定するのに用いることができる。従って、計算時に、電気及び光学機器部のドリフトを大変に信頼性があるように考慮することができる。これは、蛍光のスペクタクルを測定するとき、特に顕著な長所となる。このような測定は、典型的に、各偏光面で、約10分で行われる。
【0026】
光の一部を導光する手段には、例えば、グラスプレート、半透過性のミラー、励起経路の領域よりも小さなミラー、又は光学ファイバーを用いることができる。
【0027】
励起検出器は、励起経路の偏光特性を正確に測定するように、基準検出器の較正を行う。基準検出器は、特に、光の一部を導光する手段の偏光的な振る舞いのため、励起経路の偏光特性の正確な測定を与えない。しかしながら、このような手段は、安定した偏光的な振る舞いをするので、光度計検出器と基準検出器を用いた測定の後、励起経路の偏光の測定を行うため、基準検出器を較正することができる。これは、測定前に、G要素の較正を必要としないため、測定プロセスを一層速める。但し、高精度のG要素が求められる場合には、周期的に較正を行うことを必要とする。
【0028】
励起検出器が垂直と水平な平面で信号FVとFHを与えて、基準検出器が同時に信号RVとRHを与え、そして、サンプル測定中に基準検出器によって得られる実際の信号がRVaとRHaの場合には、修正されたG要素、Gcorrは、次のようになる。
数式A:Gcorr=k*G=k*RX/RY
数式B:k=(FXC/FYC)*(RYC/RXC
数式C:P=(IXX−GcorrYX)/(IXX+GcorrYX
上記数式において、
XC=平面X上の較正段階の基準経路の強さ
YC=平面Y上の較正段階の基準経路の強さ
XC=平面X上の較正段階の光検出器の強さ
YC=平面Y上の較正段階の光検出器の強さ
X=平面X上の測定段階の基準経路の強さ
Y=平面Y上の測定段階の基準経路の強さ
XX=励起面Xでの発光の強さ
YX=励起面Yでの発光の強さ
である。
【0029】
上記数式A、B及びCを組み合わせることにより、次の数式が得られる。
数式D:P=(IXX/EX−kIYX/EY)/(IXX/EX+kIYX/EY
数式E:k=(FXC/FYC)*(RYC/RXC
ここで、数式Eは較正段階からのみの情報を含み、数式Dは測定段階からのみの情報を含む。
【0030】
様々な測定段階にわたって、光源の強さが十分に一定で保たれない限り、サンプルの前で光源の強さを測定する必要がある。実際には、強さの測定は必要である。このことは、特に、キセノンフラッシュライトの照射が用いられる場合に顕著である。キセノンフラッシュライトは、0.5から1%のオーダーで不安定である。実際には、各測定段階で、基準用の測定が必要とされる。
【0031】
本発明では、蛍光計は、G要素の測定のために既に用いられた基準検出器を用いて、基準の強さの測定を行うことができる。光源の変動のレベルは、基準検出器からの信号を用いて考慮される。Pの式では、各発光の強さ(IXX、IYX)の値は、対応する励起の値(EX、EY)を用いて測定され、フラッシュの変動は、自動的にキャンセルされる。また、さらなる信号処理は必要とされない。
【0032】
発光を正確に測定するため、励起と発光の波長の双方を注意してフィルタする必要がある。発光の波長の選択では、励起光が、発光測定用の検出器に対してまっすぐに進むことを防ぐようにする。
【0033】
モノクロメータを用いて、励起と発光の経路で波長を選択する。モノクロメータは、干渉に基づいていてもよく、特に、薄い膜や、物質の自然な透過性に基づいていてもよい。また、モノクロメータは、例えば、格子状モノクロメータや、色の付いたフィルタでもよい。モノクロメータの構成は、フィルタ効果を向上させるため、複数の段階を有していてもよい。従って、モノクロメータの用語は、1からnの同一又は異なるモノクロメータエレメントを有する器具として用いられてもよい。
【0034】
導光するため、レンズやミラー光学を用いてもよい。
通常、発光測定用の検出器として光電子増倍管が用いられるが、これは、測定される光学信号が非常に小さいので、高い測定感度を必要とするためである。シリコン光検出器も使われている。このような検出器は、安定性に大変優れている。
【0035】
発光経路の偏光フィルタは、用いられる波長範囲ごとに、取り替えることが可能である。通常、1つの偏光フィルタは、紫外線(UV)の範囲、他の可視光の範囲、及び、第三の近赤外線(IR)の範囲をカバーする。
【0036】
多くの場合、蛍光計の測定と、サンプルの透過の測定は、同一領域内のサンプルの測定に関係している。2つの別体の装置を用いることより、組合わされたものを用いる方がより経済的であるため、光学濃度の光度計の測定と、蛍光計の測定の双方を行う共通の装置を用いることが、ユーザーにとって有利となる。また、混雑した実験室では、組合わされた装置を用いることが望ましい。
【0037】
サンプルは、通常、平面上で処理されており、この際、サンプルの容器、例えば、ウエル(well)を二次元状のマトリックス内に設けている。通常、6から1536のウエルが用いられており、プレート領域はかなり一定である。ほとんどの場合、プレート上に96または384のウエルを用いている。但し、ウエルの外部寸法と数は、特定の実施形態に合せて変化されてもよい。
【0038】
ウエルがプレート上に非常に狭いマトリックスを形成する場合、L字状の測定構造は適切ではない。ウエルの上方側又は下方側のいずれからも自由な測定方向が可能になる。バックグラウンドの蛍光の問題のため、望ましくは、蛍光計では底部の窓を通って測定することを避ける。さらに、プレートで最も頻繁に使用されている材料の、ポリスチレンは、偏光面と不規則的に干渉するため、底部を通って偏光の測定を行うのに不適当である。
【0039】
励起ビームは、ウエル内で円錐状にテーパ付けられて、励起ビームの大きさがウエルの直径よりも小さくなるようにしてもよい。これは、ウエルの間で良好な経路の分離を達成し、ウエルの配置の公差が測定結果を損わしめることを出来るだけ小さくする。
【0040】
この結果、交換可能な励起用偏光フィルタが用いられる。ユーザーは、VまたはHフィルタのいずれも使うことができ、または、フィルタは偏光の強さの測定から除くことができる。偏光フィルタは、波長に従って適するように変えられてもよい。また、偏光フィルタは、回転型のものでもよい。回転型のフィルタを用いる場合、決定される物質の偏光が回転の特徴的な角度を有し、このため分子の振動が干渉するとき、偏光の最大の角度の値を正確に測定することができる。回転型のフィルタは、粘性のサンプルを測定するのに特に適することができる。
【0041】
従って、望ましい測定方向は、ウエルの上側からである。つまり、励起の照射と発光の測定の双方とも、ウエルの上方から行われる。励起と発光の双方とも同一の経路を有するので、これらはビームスプリッターを用いて互いに区別される。このような手段の一例は、国際特許公開第WO 97/11354号に開示されており、この開示例では、偏光の光学機器は、レンズの光学機器(レンズ光学)を用いている。励起と発光の経路に偏光フィルタを用いることで、上述したG要素の測定は、ウエルの下方に備えた光検出器を用いて行うことができる。同時に、これは、光度計の測定の選択を与える。
【0042】
ビームスプリッターは、特に半透過性のミラーでもよく、例えば、セクターごとにミラー面を分けるようにする。低めの回析効果のため、このような窓は励起用測定ビームの特性と干渉しない。また、ミラーは、例えば、同心状の円や、さらには楕円に分けられていてもよい。励起光が直線状に進む場合には、ミラーの中央に孔を設けて、この縁側の領域が反射できるようにする。この場合、励起光は、発光経路と比べて、狭く、固定した角度を有する。これは、光度測定では、狭いウエルを通る光の透過は困難であることを考慮すると、光度測定では長所になる。光度測定の励起光は、シャープに、凹状のリキッド面を透過しなければならず(通常、凹状を最大にするように表面を安定させるために界面活性剤が用いられている)、このために励起光は非常に狭く固定した角度を有する必要があり、また、正しい高さで正確に焦点を定められる必要がある。また、ミラーは、二色性でもよい。このようなミラーは、異なる波長を異なるように反射させる。励起波長は発光波長よりも小さいので、ミラーの波長の特性を光学的な全体の効率に合うように適合させることができる。二色性のミラーは、励起−発光の波長の一対のみ実行可能であるという問題を有している。
【0043】
また、励起と発光を区別するビームスプリッターは、励起光を基準検出器に対して分けるビームスプリッターとしても用いることができるので、構造をより簡単にすることができる。
【0044】
また、プレートの測定は、ミラーの光学機器(ミラー光学)を用いて行うことができる。特に望ましくは、連続して接続された2つの球状のミラーを用いる。しかしながら、球状のミラーは、強い非点収差を生じさせるので、狭いウエル内の測定では像の特性を低下させる。しかし、連続して接続されたミラーが、90度の角度で曲げられた面を有する場合、非点収差を補正することができる。換言すると、誤差を2つ作るが、第二のミラーの非点収差の誤差が、第一のミラーの非点収差の誤差を補正するようにして、像の結果が蛍光測定及び光度測定にとって良好となるようにする。この基本については、国際特許公開第WO 03/016979号に詳細に開示されている。このミラーは、球状かつ凹状である。このようなミラーは、非球面状のミラーと比較して、正確でかつ低コストで製造することができる。また、実質的により高価な非球面状のミラーを用いてミラー光学を構成してもよく、例えば、単一のミラーにより、円錐状で正確な励起光のビームを生じさせてもよい。
【0045】
ミラー光学では、ビームスプリッターは、上述のようにレンズ光学を用いる任意のものでもよい。
ミラー光学は、波長からフリーまたは独立するという長所を有する。
ミラー光学が、励起用モノクロメータのように、格子状のモノクロメータを用いるとき、ウエルに対する格子の出力スリットが像をなす。望ましくは、励起用の偏光フィルタをスリットの近くに置く。励起用の偏光フィルタは、モノクロメータの後方に置かれるが、これは、モノクロメータは偏光を解消するためである(つまり、偏光を生じさせない)。望ましくは、発光の偏光フィルタを発光用モノクロメータの入力スリットの近くに置く。励起と発光の光のビームは、小さな(例えば、円形または楕円形の)面状のミラーを用いて、これらの共通の光学的な測定軸に沿って互いに区別することができる。発光は、ウエルから光学機器まで戻り、このミラーによって通過する。さらに、ウエルの丁度上方に、基準経路用にビームスプリッターを備えてもよい。このビームスプリッターは、例えばグラスプレートであり、特にシリカプレート(合成の石英)である。シリカプレートは、通常、最大で約10%反射させるので、比較的に信号のロスが小さい。グラスプレートは、同時にウエルからの蒸気から、光学機器を保護する。
【0046】
励起検出器は、ウエルの他の側に置かれる。また、レンズ系を検出器の前方に置き(例えば、2つの平凸レンズ)、ウエル内でリキッド面によって拡大された励起光が、光検出器の表面上で良好に焦点を合せられるようにしてもよい。レンズ光学は、例えば、励起用の光学機器と同様に、2つの凹状ミラーを用いて、ミラー光学と置換できる。
【0047】
励起光源とモノクロメータ、および発光用モノクロメータと検出器は、比較的に大きなスペースを要することがある。このため、分析用の大きさが小さなときは、ファイバーの光学機器を用いることが便利だが、この場合には信号のロスが生じることがある。分析者は、例えば、3つのモジュール、つまり、励起用モジュールと、測定用の光学機器のモジュールと、発光用モジュールを用いて、これらの間で導光するため、ファイバーの光学機器を用いてもよい。
【0048】
具体例
以下、本発明を実施する上で、様々な具体例を示す。これら具体例では、発光経路に水平な偏光面を用いている。しかしながら、例えば、垂直な発光用の偏光を用いて、同様の構成を得ることは可能である。この場合、励起経路と発光経路の偏光フィルタの相対的な位置は同様である。
【0049】
図1に示した蛍光計の測定では、光源1から送られる励起光は、励起用モノクロメータ2に導光され、さらに励起用偏光フィルタ3Hまたは3Vを通って、サンプル容器4に向う。サンプル容器内で生じる発光は、励起光に対して垂直に、発光用偏光フィルタ5Hと発光用モノクロメータ6を通って導光される。そして、発光は、検出器7に導かれる。この構成では、発光用の偏光フィルタは固定される一方、励起用フィルタは取替え自在となる。
【0050】
G要素を決定するため、励起光の経路上に、サンプル容器4の後方で、光に対して垂直となるように、検出器8が置かれる。これは、特に、シリコン光検出器でもよい。
【0051】
簡単にG要素を決定するため、サンプル容器は除かれて、2つの励起用フィルタ3Hと3V内で励起の強さが測定される。そして、上述した数式7により、G要素が得られる。
【0052】
分離した励起用フィルタ3Hと3Vを用いる場合、フィルタを線形移動によって置き換えて、正確な配向を簡単に行う。あるいは、測定毎に向きを変えるように、単一のフィルタを用いることは可能である。
【0053】
また、励起経路は、偏光フィルタ3H(または3V)の後方に、ビームスプリッター9を設けて、これを介して基準検出器10まで導光させる。この基準検出器によって、サンプルが置かれているときでも、リアルタイムでG要素を決定することが可能になる。そして、上述した数式9により、G要素が得られる。
また、基準検出器からの信号は、光源の変動レベルを考慮に入れる。
【0054】
励起経路の偏光フィルタ3Hと3Vを除くとき、検出器8を用いて、光度計の測定を行うことができる。これは、さらなる追加の部品を用いることなく、組合わされた装置として器具を用いることを可能にする。
【0055】
図2を参照すると、偏光蛍光計は光源1を有し、ここからレンズ系11を用いて励起光を励起用の孔12に集光している。さらに励起用の孔からの励起光は、レンズ系13を用いて視準され、この視準された光はモノクロメータ2(波長フィルタ)と、水平または垂直な偏光フィルタ3Hまたは3Vを介して、半透過性のミラー9.1に導かれている。
【0056】
ミラー9.1を通り抜けた光は、焦点用のレンズ系14を用いて収束されて、下方に配置されたサンプルウエル4.1に送られる。このため、ウエル内のサンプル内で、定められた空間領域内に光のスポットが得られる。
【0057】
ミラー9.1から反射された励起光の一部は、基準検出器10に導かれる。ミラーから、励起光の対応するサンプルが得られる。この光の半分を励起用に用いて、残りの半分を励起の大きさを決定するために用いてもよい。平行な光のビームを大きな領域を有する検出器に送ってもよく、または、収束用のレンズを用いて、より小さな検出器に送ってもよい。
【0058】
ウエル4.1内でサンプル上の光のスポットから測定用に送られる発光は、焦点用のレンズ系14を通って、ミラー9.1の下方の表面に向う。また、ここから反射された一部は、収束用のレンズ系15を用いて、発光用の孔16内に、スポットの像を作るために用いられる。さらに、この孔から、発光が、視準用のレンズ系17、発光用偏光フィルタ5H、モノクロメータ6(波長フィルタ)および集光用レンズ系18を通って、検出器7(光電子増倍管)まで導かれる。
【0059】
一貫した測定のため、一貫した測定を行うレンズ系19(例えば、2つの平凸レンズ)と検出器8(例えば、シリコン光検出器)をウエル4.1の下方に設ける。これは、上述した本発明(ウエルを除く)の較正、または、例えば、光度計の測定を行う。
【0060】
ウエル4.1内の円錐状にテーパ付けられた形状のレンズ光学を用いて、励起ビームを形成するが、これは、ウエルの間で良好な経路の分離を行って、測定結果上にウエルの配置の公差の望ましくない影響を避けるようにする。
【0061】
励起用フィルタは、交換可能である。つまり、垂直のフィルタ3Vまたは水平のフィルタ3Hのいずれも選択可能であり、また、蛍光の強さを測定するため、フィルタはともに除くことができる。
【0062】
半透過性ミラー9.1は、セクターごとにミラー面で区別された窓でもよい。このような窓は、この低めの回析効果のため、励起用の測定ビームの特性と干渉しない。
【0063】
図3に示した蛍光計では、光源1からの励起光は、モノクロメータ2(格子状のモノクロメータ)と励起用の偏光フィルタ3Hと3Vを通って、ドット状の目標であるケーシングの壁の励起用開口部12.1に対し垂直に導光される。さらに励起用開口部12.1からの光のビームは、小さな大きさの平面ミラー20によって反射されて、第一の凹状ミラー21に向って、平行な光のビームを第二の同一の凹状ミラー22まで発光させるが、この傾斜面は、第一のミラーの傾斜面に対して90度の角度である。この構成では、非点収差は補正されて、第二の凹状ミラーは、下方に置かれた測定用のウエル4.1内に、ケーシングの底部に備えられたグラス窓9.2を通って、ドット状の像を形成する。このグラス窓9.2は、光の経路に対してわずかに傾斜している。このため、励起光の一部は、窓の表面から反射されて、基準検出器10に送られる。この基準検出器は、測定用ウエルのように、光学機器によって形成される像の面上に置かれる。この基準検出器は、光のビームの強さの変化をモニタして、強さの計算の際に、この変化を考慮に入れる。また、光のビームは、ウエル4.1に向って収束しており、基準検出器上の光のビームの入射もこれに従って収束する。窓の反射が約10%だとすると、全体の信号のロスは約20%である。これは、実質的に、装置の感度を減少させない。また、バックグラウンドの蛍光を避けるため、窓の厚さを最小にしてもよい。また、窓に測定用の光学機器用の保護を備えて、サンプルのウエルを密閉された空間内に置き、湿気や、他の有害なガスや蒸気が光学機器の内側に至らないようにする。窓の材料は、望ましくは、シリカである。この窓は、望ましくは、測定用のウエルよりも十分に上方の高さに置かれて、線量装置(dosing devices)からのスプラッシュが窓の表面に達することを防ぐようにする。
【0064】
測定用のウエル4.1内に生じる発光は、第2のミラー22を通って第1のミラー21まで進み、そして、ここから、平面ミラー20に向う。この外側でミラーを通る発光の一部は、ケーシングの表面上で発光用の孔16.1に対して垂直に非点収差を修正させながら、ドット状の像を形成する。即ち、平面ミラー20は、励起光を発光から区別する機能を有する。効果を最大にするため、望ましくは、この区別の比を約50%対50%にする。
【0065】
発光用の孔16.1から、発光は、発光用偏光フィルタ5Hと発光用モノクロメータ6(格子状モノクロメータ)を通って、検出器7に送られる。
【0066】
一貫して測定するため、一貫した測定用のレンズ系19(例えば、2つの平凸状のレンズ)と検出器8(例えば、シリコン光検出器)をウエル4.1の下方に備える。これは、本発明(ウエルを除いて)の較正や、または、例えば、光度計の測定を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】L字状の構成を有する偏光蛍光計を用いた測定の仕方を示す図である。
【図2】レンズ光学を用い、マトリックスプレート上のウエルを測定するのに用いられる蛍光計を示す図である。
【図3】ミラー光学を用い、マトリックスプレート上のウエルを測定するのに用いられる蛍光計を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
H、3V 励起用偏光子(偏光フィルタ)
4;4.1 サンプル
H 発光用偏光フィルタ
8 励起検出器
10 基準検出器
19 光学機器系


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光した励起光がサンプル(4;4.1)に導かれる経路内に励起偏光子(3H、3V)を有する励起経路と、前記サンプルからの発光を導くための経路内に発光用偏光フィルタ(5H)を有する発光経路と、前記励起偏光子によって偏光された光が前記励起経路から導かれるように配置された励起検出器(8)と、を有する偏光を用いる蛍光計であって、
前記励起偏光子(3H、3V)は、第1平面において偏光した光を発生させ、または第2平面において偏光した励起光を発生させて、励起光として前記サンプルに向けて導き、前記第2平面を前記第1平面に対して望ましくは90度の角度で配置させており、
さらに、前記励起偏光子によって偏光された光が、前記サンプルまたは前記励起検出器に導かれる前に、前記励起経路から導くことができる基準検出器(10)を有することを特徴とする蛍光計。
【請求項2】
前記励起検出器(8)は、偏光からフリーな検出器であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光計。
【請求項3】
前記励起検出器(8)の前に、光学機器系(19)、例えば、レンズまたはミラーの系を備えて、この作用領域を増大させたことを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光計。
【請求項4】
前記励起経路内には、前記偏光された光の一部を、前記励起経路から、前記基準検出器(10)まで導光させ、さらに、この光の一部を前記励起検出器(8)または前記サンプルまで導くための手段(9;9.1;9.2)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光計。
【請求項5】
前記手段(9;9.1;9.2)は、グラスプレート、半透過性のミラー、前記励起経路の領域よりも小さなミラー、または光学ファイバーであることを特徴とする請求項4に記載の蛍光計。
【請求項6】
前記励起偏光子は、第一偏光フィルタ(3H)と第二偏光フィルタ(3V)を有し、これらのうちの一方は、光源から向けられた光の経路上で、望ましくは線形移動によって、順に配置でき、あるいは、前記励起偏光子は、回転型の偏光子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光計。
【請求項7】
偏光された励起光をサンプル(4;4.1)まで導く励起経路と、前記サンプルから発光を導く発光経路とを有し、この発光経路内に偏光フィルタ(5H)を備える、偏光を用いる蛍光計の較正方法であって、
前記励起経路内に第一偏光フィルタ(3H)を配置し、前記励起経路を通って光を導き、励起検出器(8)を用いて透過光の強さを測定し、
次に、前記第一偏光フィルタを除いて、前記第一偏光フィルタの偏光面に対して、偏光面が逆、望ましくは90度の、第二偏光フィルタ(3V)に置き換え、前記励起経路を通って光を導き、前記励起検出器を用いて透過光の強さを測定し、
さらに、前記蛍光計は基準検出器(10)を備えて、前記励起経路の偏光された光の一部を前記基準検出器まで導き、かつ、一部を前記励起検出器(8)まで導き、
これら2つの光の強さの測定に基づいて、前記偏光面上で前記蛍光計の感度を正確に測定するために、前記基準検出器を較正する、各ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
サンプルを用いることなく、前記強さを測定することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記蛍光計内に備えることのできるサンプル容器を用いることなく、前記光の強さを測定することを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光計、または請求項7〜9のいずれかに記載のように較正された蛍光計を用いて、サンプルの偏光の蛍光スペクトルを測定するための方法であって、異なる波長で前記サンプルの偏光を測定することを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−505307(P2007−505307A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525847(P2006−525847)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000524
【国際公開番号】WO2005/024402
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501286093)サーモ エレクトロン オイ (13)
【Fターム(参考)】