偏波モード分散ストレス発生方法および装置
【課題】複雑な制御が不要で低コストに任意のPMDを発生させる。
【解決手段】光入射部21に入射された光信号を偏波分離手段23により二つの直交偏波成分に分離し、その一方を第1遅延手段25に与え、他方を第2遅延手段26に与え、両遅延手段25、26によって遅延された直交偏波成分を偏波合波手段28によって合波し、光出射部29から出射させる。少なくとも一方の遅延手段(第2遅延手段26)は、偏波分離された光をその幅方向に分けてそれぞれ受けて折り返す複数の直交ミラー50が一体化されたミラーアレー51を回動装置52により回動させ、各直交ミラー50によりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させつつ伝搬させて、偏波合波手段28で合波された光の偏波成分の群遅延時間差を変化させる。
【解決手段】光入射部21に入射された光信号を偏波分離手段23により二つの直交偏波成分に分離し、その一方を第1遅延手段25に与え、他方を第2遅延手段26に与え、両遅延手段25、26によって遅延された直交偏波成分を偏波合波手段28によって合波し、光出射部29から出射させる。少なくとも一方の遅延手段(第2遅延手段26)は、偏波分離された光をその幅方向に分けてそれぞれ受けて折り返す複数の直交ミラー50が一体化されたミラーアレー51を回動装置52により回動させ、各直交ミラー50によりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させつつ伝搬させて、偏波合波手段28で合波された光の偏波成分の群遅延時間差を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速光通信において問題となる光の偏波モード分散(PMD:Polarization Mode
Dispersion)に対する光伝送システム、光部品などの耐力測定に必要な偏波モード分散ストレス発生装置に関し、特に、低コストに任意のPMDが設定できるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムに対するPMD耐力試験に用いる装置として従来からPMDエミュレータが用いられており、このPMDエミュレータで試験対象に入射する光にPMDストレスを加え、試験対象から出射される光信号についてのビット誤り率(BER)の測定を行い、加えるPMDストレスの大きさとBERとの関連付けにより耐力評価を行っている。
【0003】
なお、PMDは光信号が光コンポーネントを通過する際の直交する2つの偏波間における伝達速度の差と定義され、PMDについて議論するとき、実際に信号劣化に影響を及ぼすのは特定波長におけるある時間での二つの偏波間の群遅延時間差DGD(Differential Group Delay )であり、PMDは波長と時間に対するDGDの平均値となる。
【0004】
PMDは、光の直交偏波成分間の速度差であり、これを発生させる方式としてこれまでに以下に示す3つの方式が提案されている。
【0005】
第1方式は、特許文献1に開示されているように、光路に対して直列に並んだ複数の複屈折素子の間に偏波コントローラを配置し、それらの偏波コントローラにより通過する光の偏波をランダムに変化させて、直交する偏波成分にDGDを与えて、PMDを発生させる方式である。この方式は、複屈折素子の数を増やしていくことで、DGDの分布を理想とされるマクスウェル分布に近づけることができ、また高次PMDの発生も可能である。
【0006】
しかし、この第1方式では、DGDの量が複屈折素子で与えられる位相差によって決まるため、任意のDGDを与えることが難しい。また、瞬時変化するDGDを発生させることが難しく、さらに、複数の複屈折素子と偏波コントローラが必要となることから、小型化および低コスト化が困難である。
【0007】
また、第2方式としては、特許文献2(特に図10)に開示されているように、光路に対して直列に並んだ複数の複屈折素子を機械的に回転させて、各複屈折素子によって位相差を変化させることで、PMDを発生させるものであり、この方式も高次PMDの発生が可能である。
【0008】
しかし、第1方式同様に、任意のPMD量を与えることが難しく、複数の複屈折素子およびこれらを回転させる機構が必要となり、小型化および低コスト化が困難であった。
【0009】
また、第3方式としては、特許文献3に開示されているように、光を直交偏波成分に分離してその一方の光を可変遅延器で遅延させて、他方の光と合波することで、PMD(DGD)を発生させるものであり、この方式は、可変遅延器の遅延量に対応した任意で且つ正確なDGDを発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4098630号公報
【特許文献2】特開2006−086955号公報
【特許文献3】特開2003−143088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記第3方式は、原理的に高次PMDを発生させることができない。また、第3方式の構成で、DGDを経時変化させる場合、可変遅延器の遅延量を周期関数(例えば一定振幅の正弦関数)で変化させることが想定されるが、その場合のDGD発生分布は、図11のように両端の発生確率が高く、中央部が低い凹型分布となり、凸型のマクスウェル分布に程遠くなってしまう。つまり、可変遅延器を用いてマクスウェル分布に近い発生確率でDGDを発生させるためには、可変遅延器に対して極めて複雑な遅延量可変制御が必要となり、実現が困難である。
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みて、複雑な制御が不要で低コストに任意のPMDを発生させることができる偏波モード分散ストレス発生方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の偏波モード分散ストレス発生方法は、
偏波モード分散の付与対象となる光信号を二つの直交偏波成分に分離し、
前記分離された一方の直交偏波成分を第1の光路を伝搬させ、他方の直交偏波成分を第2の光路を伝搬させるととともに、前記第1の光路と第2の光路のうち少なくとも一方の光路に、偏波分離された光をその幅方向に分けて複数の直交ミラー(50)でそれぞれ受けて折り返す折り返し光路を形成して幅方向で異なる遅延を与え、前記複数の直交ミラーを該直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させることで、各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させて伝搬させ、
前記第1の光路と第2の光路を伝搬した直交偏波成分を合波して、互いに直交する偏波成分の群遅延時間差が、前記複数の直交ミラーの回動角に応じて変化する光を生成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2の偏波モード分散ストレス発生装置は、
偏波モード分散の付与対象となる光信号を入射させるための光入射部(21)と、
前記光入射部に入射された光信号を二つの直交偏波成分に分離する偏波分離手段(22、23)と、
前記二つの直交偏波成分の一方を受けて第1の光路を経由させ、該第1の光路の長さ相当の遅延を与えて出射する第1遅延手段(25)と、
前記二つの直交偏波成分の他方を受けて第2の光路を経由させ、該第2の光路の長さ相当の遅延を与えて出射する第2遅延手段(26)と、
前記第1遅延手段によって遅延された一方の直交偏波成分と、前記第2遅延手段によって遅延された他方の直交偏波成分を合波する偏波合波手段(22、28)と、
前記偏波合波手段で合波された光を外部へ出射するための光出射部(29)と備え、
前記第1遅延手段と第2遅延手段の少なくとも一方は、
偏波分離された光をその幅方向に分けてそれぞれ受けて折り返す複数の直交ミラー(50)と、該複数の直交ミラーを該直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させる回動装置(52)とを含み、前記各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させつつ伝搬させて、前記偏波合波手段で合波された光の偏波成分の群遅延時間差を、前記複数の直交ミラーの回動角に応じて変化させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
単一の偏光ビームスプリッタ(22)が、前記偏波分離手段と前記偏波合波手段とを兼ね、
前記偏光ビームスプリッタと前記第1遅延手段との間および前記偏光ビームスプリッタと前記第2遅延手段との間に、それぞれ1/4波長板(31、32)が挿入されており、
前記第1遅延手段と第2遅延手段は、前記偏光ビームスプリッタで分離された直交偏波成分を前記各1/4波長板を介して受けてこれを同一光軸で逆向きに折り返して再度前記1/4波長板に入射させて、分離時と偏光方向がそれぞれ90度異なる直交偏波成分に変えて分離時と同一光軸で前記偏光ビームスプリッタに戻し、それらを直交成分とする光を、前記偏光ビームスプリッタに対する前記光信号の入射光軸と直交する光軸に沿って出射させることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記偏波分離手段と前記偏波合波手段は、それぞれ個別の偏光ビームスプリッタ(23、28)によって構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2〜4のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記複数の直交ミラーに入射される光のビーム幅を広げるビームエキスパンダ(53)を、前記偏波分離手段と前記複数の直交ミラーの間に配置したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項6の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2〜5のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記光入射部には、入射光のビーム幅を広げて平行光にするコリメータ(21b)が設けられ、前記光出射部には、合波光を集光するための集光レンズ(29a)が設けられており、
前記光入射部のコリメータと前記光出射部の集光レンズが、ビーム幅拡張方向が互いに直交する二組のシリンドリカルレンズによってそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項7の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2〜5のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記光入射部には、入射光の偏波状態をランダム化する偏波スクランブラ(21c)が設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項8の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2〜6のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記偏波合波手段によって合波されて前記光出射部に出射される光の一部を分岐する分岐器(56)と、
前記分岐器によって分岐された光から両偏波成分を取り出すように、両偏光方向に対して偏光軸を45度傾けた検光子(57)と、
前記検光子によって検出された両偏波成分を受光する受光器(58)と、
前記第1遅延手段と第2遅延手段の少なくとも一方に含まれる光反射手段(25a)を、その入射光軸と平行な方向にスライド移動させて該光反射手段によって折り返される光路長を均一に変化させるスライド駆動手段(25b)とを含み、
前記光入射部から広帯域光源を入射させて、前記複数のミラーの角度を所定角度に固定した状態で、前記スライド駆動手段を制御したときの前記受光器の出力に基づいて、前記第1遅延手段と第2遅延手段の光路長合わせを行い、該光路長が合った状態から前記複数のミラーを前記所定角度から回動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明は、偏波モード分散の付与対象となる光信号を二つの直交偏波成分に分離し、その一方の直交偏波成分を第1の光路を伝搬させ、他方の直交偏波成分を第2の光路を伝搬させるととともに、両光路のうち少なくとも一方に、偏波分離された光をその幅方向に分けて複数の直交ミラー(50)でそれぞれ受けて折り返す折り返し光路を形成し、その複数の直交ミラーを直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させることで、各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させて伝搬させ、第1の光路と第2の光路を伝搬した直交偏波成分を合波して、互いに直交する偏波成分の群遅延時間差が、複数の直交ミラーの回動角に応じて変化する光を生成している。
【0022】
このため、複数の直交ミラーの回動角に基づいて任意のDGDを与えることができ、また、シングルモード光ファイバによって光を入射した場合、光ファイバから出射される光強度がガウス分布であるため、ガウス分布をもったDGDを発生させることができる。
【0023】
さらに、装置として機械的に駆動される部分は、複数の直交ミラーを一体的に回動させる機構だけなので、小型化および低コストが可能である。
【0024】
また、複数の直交ミラーに入射される光のビーム幅を広げるビームエキスパンダ(53)を、偏波分離手段と複数の直交ミラーの間に配置した場合、小型の光学系で、より大きな遅延時間差を付与することができる。
【0025】
また、光入射部のコリメータと光出射部の集光レンズが、ビーム幅拡張方向が互いに直交する二組のシリンドリカルレンズによってそれぞれ形成されている場合も、より大きな遅延時間差を付与することができる。
【0026】
また、光入射部に偏波スクランブラを設けたものでは、入射光の偏波依存性を排除できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の基本構成図
【図2】偏波成分に幅方向に異なる遅延時間差を付与するための説明図
【図3】本発明の第1実施形態の構成図
【図4】ビームエキスパンダを用いた第2実施形態の構成図
【図5】ビームエキスパンダの構成例を示す図
【図6】シリンドリカルレンズを用いた第3実施形態の構成図
【図7】第1遅延手段25にスライド駆動装置25bを設けた第4実施形態の構成図
【図8】偏波分離手段と偏波合波手段を独立したPBSで構成した第5実施形態の構成図
【図9】光入射部に偏波スクランブラを設けた第6実施形態の構成例を示す図
【図10】両方の遅延手段にミラーアレーによる折り返し光路を設けた第7実施形態の構成例を示す図
【図11】DGD発生分布の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の偏波モード分散ストレス発生装置20の基本構成図である。
【0029】
図1において、光入射部21は、偏波モード分散の付与対象となる光信号Pin(ここでは直線偏光とする)を入射させるためのものであり、一般的に光ファイバにより入射させる場合には、その光ファイバ接続用のコネクタやコネクタから入射された光を平行光にするコリメータレンズ等が含まれる。
【0030】
光入射部21に入射された光信号Pinは、偏波分離手段23に入射され、二つの直交偏波成分(P波、S波)Pp、Psに分離される。この偏波分離手段23としては主に偏光ビームスプリッタが用いられる。
【0031】
分離された直交偏波成分の一方Ppは第1遅延手段25に入射され、他方Psは第2遅延手段26に入射される。第1遅延手段25と第2遅延手段26は、入射光を受けてそれぞれ第1の光路、第2の光路を経由させ、その光路長相当の遅延を与えて出射するものである。
【0032】
ただし、第1遅延手段25と第2遅延手段26の少なくとも一方(この図では第2遅延手段26)は、光路内に遅延時間差を与え、且つその遅延時間差が変動するように制御している。
【0033】
それを実現するために、第2遅延手段26には、ミラーアレー51とそれを回動する回動装置52を含んでいる。
【0034】
図2に示すように、ミラーアレー51は、互いに直交する一対の反射面50a、50bをもち、その一方の反射面に入射された光を他方の反射面を介して入射光軸と平行な光軸で折り返して出射する直交ミラーユニット50が、偏波分離手段23からの光Psの幅の寸法内に複数段連続的に平行に並ぶ状態で一体的に形成されたものであり、回動装置52は、各直交ミラーユニット50を形成する一対の反射面が交わる境界線に平行な軸A(紙面に直交する軸)を中心にミラーアレー51全体を回動させて、ミラーアレー51に対する光の入射角を変動させる。
【0035】
第2遅延手段26には、このミラーアレー51による折り返し光路が含まれており、偏波分離手段23からの光をその幅方向に分けてミラーアレー51の複数の直交ミラーユニット50でそれぞれ受けて折り返すことになる。
【0036】
ここで、図2に示すように、ミラーアレー51に対する光の入射角度をθ、隣あう直交ミラーユニット間の光路差をdとすると、n個離れた直交ミラーユニット間に生じる光路差は、nd=2×W×sin θとなり、この光路差を回動装置52により変動させることで、折り返された光Ps′の幅方向の各成分に変動する遅延時間差が付与され、後述する偏波合波手段28で合波された光の偏波成分の群遅延時間差を変化させることができる。
【0037】
第1遅延手段25によって遅延された一方の直交偏波成分Pp′と、第2遅延手段26によって遅延された他方の直交偏波成分Ps′は、偏波合波手段28によって一つの光の直交成分として合波される。この偏波合波手段28は、偏波分離手段23と同様に偏光ビームスプリッタで構成される。
【0038】
偏波合波手段28で合波された光Poutは、光出射部29を介して出射される。この光出射部29としては、出射用のコネクタや偏波合波手段28から平行光で出射された光をコネクタの入射部に収束する集光レンズ等が含まれる。
【0039】
制御部30は、第1遅延手段25と第2遅延手段26のうち、前記したようにミラーアレー51と回動装置52を含む遅延手段の回動装置52の制御を行い、所定の初期角度、回動振幅でミラーアレー51を回動させて、偏波合波手段28で合波された光Poutの偏波成分の群遅延時間差を変化させる。
【0040】
このような基本構成を有する偏波モード分散ストレス発生装置20では、偏波分離された二つの直交偏波成分Pp、Psを、それぞれの遅延手段25、26に入射させてその少なくとも一方の遅延手段に入射された光の幅方向成分にミラーアレー51の回動による遅延時間差を付与して、他方と合波して出射する構造であるので、そのミラーアレー51の回動量に応じた任意のDGD(即ち、その平均値としての任意のPMD)を与えることができる。
【0041】
また、少なくとも一方の偏波成分の光を幅方向に分けてそれぞれ異なる遅延時間差を付与する方式であるから、一方の偏波成分全体の遅延時間を一律に且つ正弦的に変動させる方式に比べて、より複雑な遅延時間変動を実現することができ、ミラーアレー51に入射される光の強度分布に応じて所望分布(例えばマックスウェル分布やガウス分布のような)のDGDを発生させることができる。
【0042】
さらに、機械的に駆動される部分は遅延手段25、26の少なくとも一方だけで、しかも基本的にミラーアレー51を回動させるだけなので、小型化および低コスト化が可能である。
【0043】
(第1実施形態)
次に、より具体的な構成の第1実施形態を、図3を用いて説明する。
図3の偏波モード分散ストレス発生装置20は、光入射部21が、光信号Pinを入射させるためのコネクタ21aと、入射した光を平行光にするコリメートレンズ21bにより構成され、その光入射部21から出射された光をPBS(偏光ビームスプリッタ)22で受ける。
【0044】
この偏波モード分散ストレス発生装置20は、一つのPBS22が前記した偏波分離手段23と偏波合波手段28とを兼ねた所謂マイケルソン型干渉計の構造を有しており、入射した光信号Pinを二つの直交偏波成分Pp、Psに分け、その一方Ppを第1遅延手段25に入射し、他方Psを第2遅延手段26に入射し、それらの出射光Pp′、Ps′をPBS22に戻して合波する構成となっている。
【0045】
ここで、第1遅延手段25は、入射光をその入射光軸と一致する出射光軸に沿って折り返すための直交ミラー25aによって構成されている。ただし、直交ミラー25aで折り返された光は入射時と同一偏波状態であるから、折り返された光をそのままPBS22に戻すと、PBS22の可逆性により入射光Pin側に戻ってしまい、入射光との分離が困難になる。
【0046】
そこで、PBS22と第1遅延手段25の間に、1/4波長板31を設けている。この1/4波長板31をその光軸が入射する光の偏波方向に対して45度となるように配置する。
【0047】
これにより、PBS22から出射された偏波成分Ppは、1/4波長板31により円偏光となり、直交ミラー25aで折り返されて再び1/4波長板31に反対向きに入射されるので、1/4波長板31からPBS22に対しては、元の偏波成分Ppに対して90度偏波方向が回転した偏波成分Pp′が出射されることになる。そして、この偏波成分Pp′がPBS22に再入射するが、分離時の偏波方向と90度異なるから光信号Pinの入射方向には戻らず、それに直交する方向(図で下方)に出射される。
【0048】
また、第2遅延手段26は、前記したように複数の直交ミラーユニット50の反射面がが一面側に連続的に形成されて一体化されているミラーアレー51とそれを回動する回動装置52を含んでいて、PBSから出射された他方の偏波成分Psに幅方向に異なり且つ変動する遅延時間差を付与して折り返す構造を有している。
【0049】
ただしこの場合も、ミラーユニット51で折り返される光の偏波状態は変わらないので、折り返された光をそのままPBSに戻すと、入射光Pin側に戻ってしまい、一方の偏波成分Ps′との合波が行えない。
【0050】
したがって、図のようにPBS22と第2遅延手段26の間にも1/4波長板32を配置する。この場合も前記同様に1/4波長板32の光軸が、入射光の偏波方向に対して45度となるように配置する。
【0051】
これによって、PBS22から出射された偏波成分Ppは、1/4波長板32により円偏光となり、ミラーアレー51で折り返されて再び1/4波長板32に反対向きに入射されるので、1/4波長板32からPBS22に対しては、元の偏波成分Psに対して90度偏波方向が回転した偏波成分Ps′が出射されることになる。そして、この偏波成分Ps′がPBS22に再入射するが、分離時の偏波方向と90度異なるから光信号Pinの入射方向には戻らず、それに直交する方向(図で下方)に出射される。
【0052】
これらの遅延手段から折り返された光Pp′、Ps′は、それぞれ分離時と90度異なる偏光面で再びPBS22に互いに直交する向きで同一位置に入射されるので、PBS22の特性により、光信号Pinの入射光軸と直交する共通の光軸(図で下方に向かう光軸)上でそれらを直交成分とする光Poutに合波されて、光出射部29を介して外部に出射される。
【0053】
なお、光出射部29はPBS22で合波された光を、集光レンズ29aによって出射用のコネクタ29bに収束させ、そのコネクタ29bから外部へ出射させる。
【0054】
制御部30は、二つの遅延手段25、26の一方(この場合は第2遅延手段26)の回動装置52を制御して、ミラーアレー51を予め設定された初期角度、回動振幅で回動させ、出射光Poutの直交偏波成分間の群遅延時間差DGDを変動させ、所望の発生確率分布を与える。
【0055】
なお、上記実施形態の第1遅延手段25は、直交ミラー25aで入射光を折り返していたが、平面ミラーで折り返してもよい。これは後述の実施形態においても同様である。
【0056】
(第2実施形態)
また、図4に示すように、第2遅延手段26の入射部にビームエキスパンダ53を設け、ミラーアレー51に入射する光の幅を拡大してもよい。このようにすることで、小型の光学系で、より大きな遅延時間差を付与することができる。このビームエキスパンダ53は、偏波分離手段としてのPBS22からミラーアレー51の間の任意の位置に配置できる。
【0057】
なお、ビームエキスパンダ53としては、図5の(a)のように、凹レンズ53aと凸レンズ53bを組合せたものや、図5の(b)のように、三角柱プリズム53c、53dを組合せたものが使用できる。
【0058】
(第3実施形態)
また、図6のように光入射部21のコリメータ21bおよび光出射部29の集光レンズ29aを、それぞれビーム幅を広げる方向が互いに直交する二組のシリンドリカルレンズ21b′、21b″、29a′、29″をそれぞれ用いて、その間を伝搬する光のビーム幅を2次元方向に広げて、より大きな遅延時間差を付与することもできる。
【0059】
(第4実施形態)
また、干渉計の両アームの光路長が一致する位置を基準として一方のアーム側の遅延時間を変動させるために、図7に示すように、光出射部29の前段に設けた分岐器56で出射光を分岐して両偏光方向に対して偏光軸を45度に傾けた検光子57に与え、その検光子57から出射される光(両偏波を含む光)を受光器58に入射してその強度を検出して制御部30に与える。また、第1遅延手段25の直交ミラー25aの位置をスライド駆動装置25bによりスライドさせて、PBS22からの距離を可変できる構造にし、制御部30は、第2遅延手段26のミラーアレー51の角度を所定角度に固定した状態で、光入射部21から広帯域光源を入射させ、第1遅延手段25の直交ミラー25aを移動させて、受光器58に入射される光の強度が最大となる位置(干渉計の両アームの光路長が一致する位置)を決定し、この位置を基準にし、ミラーアレー51を所定角度から回動駆動する。
【0060】
なお、この例では第1遅延手段25の光反射手段としての直交ミラー25aをスライド駆動装置25bによってスライドさせ、第1遅延手段25の光路長を均一に変化させているが、第2遅延手段26のミラーアレー51を回動だけでなくスライド駆動させても同様の作用が得られる。
【0061】
(第5実施形態)
前記第1の実施形態では、単一のPBS22が偏波分離手段23と偏波合波手段28を兼ねた構成(マイケルソン型干渉計)を示したが、図8のように、それらを互いに独立したPBSで構成した、所謂マッハツェンダー型干渉計の構成を採用することもできる。
【0062】
即ち、光入射部21から入射された光を、偏波分離手段としてのPBS23により、二つの直交偏波成分Pp、Psに分け、第1遅延手段25と第2遅延手段26にそれぞれ出射する。
【0063】
第1遅延手段25は、入射する偏波成分PpをPBS61で受けて90度方向を変えて出射する光を1/4波長板31を通過させ、直交ミラー25aで折り返し、1/4波長板31およびPBS61を介して、偏波合波手段としてのPBS28に入射する。
【0064】
また、第2遅延手段26は、PBS23からの偏波成分PsをPBS62で受けて、これを通過させ、1/4波長板32を介してミラーアレー51に入射し、その折り返し光を、1/4波長板32およびPBS62を介してPBS28に入射する。
【0065】
なおここで、4つのPBS23、61、62、28は、長方形をなすように直交配置される。また、1/4波長板31、32の作用は、前記同様で偏波方向を変換するためのものである。
【0066】
これによって、第2遅延手段26に入射された偏波成分Psには、前記同様に、ミラーアレー51によって折り返される光路において、幅方向に異なり且つ変動する遅延時間差が付与され、他方の偏波成分Pp′とともにPBS28に出射され、前記同様に光Poutに合波されて、光出射部29を介して外部に出射される。
【0067】
(第6実施形態)
上記各実施形態では、入射する光信号Pinを直線偏波とし、偏波分離手段22を構成するPBS22、23で分離される二つの直交偏波成分の大きさがほぼ等しくなるような偏光面で入力させて両偏波成分の遅延量に有効な変動を与えるようにしているが、各実施形態において、図9のように、光入射部21に偏波スクランブラ21cを設け、これを制御部30によって制御し、入射する光信号Pinの偏波をランダムに変化させることで、光信号Pinの偏波方向を意識しないでも出射光Poutの偏波成分間の遅延量に有効な変動を与えることができる。
【0068】
(第7実施形態)
また、前記各実施形態では、第1遅延手段25と第2遅延手段26のうちの一方に(ここでは第2遅延手段26)に、ミラーアレー51による折り返し光路を設けていたが、図10のように、両方の遅延手段にミラーアレー51と回動装置52を設けて、両者を同時に駆動する(ただし回動の周期、振幅、位相の少なくとも一つは異なるようにする)ことで、両偏波成分にの間により複雑な変動を与えることも可能である。この場合、前記した図3のマイケルソン型で第1遅延手段25を第2遅延手段26と同等の構成としたり、前記した図8のマッハツェンダー型のいずれにも適用できる。
【符号の説明】
【0069】
20……偏波モード分散ストレス発生装置、21……光入射部、22……偏光ビームスプリッタ(PBS)、23……偏波分離手段(PBS)、25……第1遅延手段、25a……直交ミラー、25b……スライド駆動装置、26……第2遅延手段、28……偏波合波手段(PBS)、29……光出射部、30……制御部、31、32……1/4波長板、50……直交ミラーユニット、51……ミラーアレー、52……回動装置、53……ビームエキスパンダ、56……分岐器、57……検光子、58……受光器、61、62……PBS
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速光通信において問題となる光の偏波モード分散(PMD:Polarization Mode
Dispersion)に対する光伝送システム、光部品などの耐力測定に必要な偏波モード分散ストレス発生装置に関し、特に、低コストに任意のPMDが設定できるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムに対するPMD耐力試験に用いる装置として従来からPMDエミュレータが用いられており、このPMDエミュレータで試験対象に入射する光にPMDストレスを加え、試験対象から出射される光信号についてのビット誤り率(BER)の測定を行い、加えるPMDストレスの大きさとBERとの関連付けにより耐力評価を行っている。
【0003】
なお、PMDは光信号が光コンポーネントを通過する際の直交する2つの偏波間における伝達速度の差と定義され、PMDについて議論するとき、実際に信号劣化に影響を及ぼすのは特定波長におけるある時間での二つの偏波間の群遅延時間差DGD(Differential Group Delay )であり、PMDは波長と時間に対するDGDの平均値となる。
【0004】
PMDは、光の直交偏波成分間の速度差であり、これを発生させる方式としてこれまでに以下に示す3つの方式が提案されている。
【0005】
第1方式は、特許文献1に開示されているように、光路に対して直列に並んだ複数の複屈折素子の間に偏波コントローラを配置し、それらの偏波コントローラにより通過する光の偏波をランダムに変化させて、直交する偏波成分にDGDを与えて、PMDを発生させる方式である。この方式は、複屈折素子の数を増やしていくことで、DGDの分布を理想とされるマクスウェル分布に近づけることができ、また高次PMDの発生も可能である。
【0006】
しかし、この第1方式では、DGDの量が複屈折素子で与えられる位相差によって決まるため、任意のDGDを与えることが難しい。また、瞬時変化するDGDを発生させることが難しく、さらに、複数の複屈折素子と偏波コントローラが必要となることから、小型化および低コスト化が困難である。
【0007】
また、第2方式としては、特許文献2(特に図10)に開示されているように、光路に対して直列に並んだ複数の複屈折素子を機械的に回転させて、各複屈折素子によって位相差を変化させることで、PMDを発生させるものであり、この方式も高次PMDの発生が可能である。
【0008】
しかし、第1方式同様に、任意のPMD量を与えることが難しく、複数の複屈折素子およびこれらを回転させる機構が必要となり、小型化および低コスト化が困難であった。
【0009】
また、第3方式としては、特許文献3に開示されているように、光を直交偏波成分に分離してその一方の光を可変遅延器で遅延させて、他方の光と合波することで、PMD(DGD)を発生させるものであり、この方式は、可変遅延器の遅延量に対応した任意で且つ正確なDGDを発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4098630号公報
【特許文献2】特開2006−086955号公報
【特許文献3】特開2003−143088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記第3方式は、原理的に高次PMDを発生させることができない。また、第3方式の構成で、DGDを経時変化させる場合、可変遅延器の遅延量を周期関数(例えば一定振幅の正弦関数)で変化させることが想定されるが、その場合のDGD発生分布は、図11のように両端の発生確率が高く、中央部が低い凹型分布となり、凸型のマクスウェル分布に程遠くなってしまう。つまり、可変遅延器を用いてマクスウェル分布に近い発生確率でDGDを発生させるためには、可変遅延器に対して極めて複雑な遅延量可変制御が必要となり、実現が困難である。
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みて、複雑な制御が不要で低コストに任意のPMDを発生させることができる偏波モード分散ストレス発生方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の偏波モード分散ストレス発生方法は、
偏波モード分散の付与対象となる光信号を二つの直交偏波成分に分離し、
前記分離された一方の直交偏波成分を第1の光路を伝搬させ、他方の直交偏波成分を第2の光路を伝搬させるととともに、前記第1の光路と第2の光路のうち少なくとも一方の光路に、偏波分離された光をその幅方向に分けて複数の直交ミラー(50)でそれぞれ受けて折り返す折り返し光路を形成して幅方向で異なる遅延を与え、前記複数の直交ミラーを該直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させることで、各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させて伝搬させ、
前記第1の光路と第2の光路を伝搬した直交偏波成分を合波して、互いに直交する偏波成分の群遅延時間差が、前記複数の直交ミラーの回動角に応じて変化する光を生成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2の偏波モード分散ストレス発生装置は、
偏波モード分散の付与対象となる光信号を入射させるための光入射部(21)と、
前記光入射部に入射された光信号を二つの直交偏波成分に分離する偏波分離手段(22、23)と、
前記二つの直交偏波成分の一方を受けて第1の光路を経由させ、該第1の光路の長さ相当の遅延を与えて出射する第1遅延手段(25)と、
前記二つの直交偏波成分の他方を受けて第2の光路を経由させ、該第2の光路の長さ相当の遅延を与えて出射する第2遅延手段(26)と、
前記第1遅延手段によって遅延された一方の直交偏波成分と、前記第2遅延手段によって遅延された他方の直交偏波成分を合波する偏波合波手段(22、28)と、
前記偏波合波手段で合波された光を外部へ出射するための光出射部(29)と備え、
前記第1遅延手段と第2遅延手段の少なくとも一方は、
偏波分離された光をその幅方向に分けてそれぞれ受けて折り返す複数の直交ミラー(50)と、該複数の直交ミラーを該直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させる回動装置(52)とを含み、前記各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させつつ伝搬させて、前記偏波合波手段で合波された光の偏波成分の群遅延時間差を、前記複数の直交ミラーの回動角に応じて変化させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
単一の偏光ビームスプリッタ(22)が、前記偏波分離手段と前記偏波合波手段とを兼ね、
前記偏光ビームスプリッタと前記第1遅延手段との間および前記偏光ビームスプリッタと前記第2遅延手段との間に、それぞれ1/4波長板(31、32)が挿入されており、
前記第1遅延手段と第2遅延手段は、前記偏光ビームスプリッタで分離された直交偏波成分を前記各1/4波長板を介して受けてこれを同一光軸で逆向きに折り返して再度前記1/4波長板に入射させて、分離時と偏光方向がそれぞれ90度異なる直交偏波成分に変えて分離時と同一光軸で前記偏光ビームスプリッタに戻し、それらを直交成分とする光を、前記偏光ビームスプリッタに対する前記光信号の入射光軸と直交する光軸に沿って出射させることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記偏波分離手段と前記偏波合波手段は、それぞれ個別の偏光ビームスプリッタ(23、28)によって構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2〜4のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記複数の直交ミラーに入射される光のビーム幅を広げるビームエキスパンダ(53)を、前記偏波分離手段と前記複数の直交ミラーの間に配置したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項6の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2〜5のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記光入射部には、入射光のビーム幅を広げて平行光にするコリメータ(21b)が設けられ、前記光出射部には、合波光を集光するための集光レンズ(29a)が設けられており、
前記光入射部のコリメータと前記光出射部の集光レンズが、ビーム幅拡張方向が互いに直交する二組のシリンドリカルレンズによってそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項7の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2〜5のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記光入射部には、入射光の偏波状態をランダム化する偏波スクランブラ(21c)が設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項8の偏波モード分散ストレス発生装置は、請求項2〜6のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置において、
前記偏波合波手段によって合波されて前記光出射部に出射される光の一部を分岐する分岐器(56)と、
前記分岐器によって分岐された光から両偏波成分を取り出すように、両偏光方向に対して偏光軸を45度傾けた検光子(57)と、
前記検光子によって検出された両偏波成分を受光する受光器(58)と、
前記第1遅延手段と第2遅延手段の少なくとも一方に含まれる光反射手段(25a)を、その入射光軸と平行な方向にスライド移動させて該光反射手段によって折り返される光路長を均一に変化させるスライド駆動手段(25b)とを含み、
前記光入射部から広帯域光源を入射させて、前記複数のミラーの角度を所定角度に固定した状態で、前記スライド駆動手段を制御したときの前記受光器の出力に基づいて、前記第1遅延手段と第2遅延手段の光路長合わせを行い、該光路長が合った状態から前記複数のミラーを前記所定角度から回動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明は、偏波モード分散の付与対象となる光信号を二つの直交偏波成分に分離し、その一方の直交偏波成分を第1の光路を伝搬させ、他方の直交偏波成分を第2の光路を伝搬させるととともに、両光路のうち少なくとも一方に、偏波分離された光をその幅方向に分けて複数の直交ミラー(50)でそれぞれ受けて折り返す折り返し光路を形成し、その複数の直交ミラーを直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させることで、各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させて伝搬させ、第1の光路と第2の光路を伝搬した直交偏波成分を合波して、互いに直交する偏波成分の群遅延時間差が、複数の直交ミラーの回動角に応じて変化する光を生成している。
【0022】
このため、複数の直交ミラーの回動角に基づいて任意のDGDを与えることができ、また、シングルモード光ファイバによって光を入射した場合、光ファイバから出射される光強度がガウス分布であるため、ガウス分布をもったDGDを発生させることができる。
【0023】
さらに、装置として機械的に駆動される部分は、複数の直交ミラーを一体的に回動させる機構だけなので、小型化および低コストが可能である。
【0024】
また、複数の直交ミラーに入射される光のビーム幅を広げるビームエキスパンダ(53)を、偏波分離手段と複数の直交ミラーの間に配置した場合、小型の光学系で、より大きな遅延時間差を付与することができる。
【0025】
また、光入射部のコリメータと光出射部の集光レンズが、ビーム幅拡張方向が互いに直交する二組のシリンドリカルレンズによってそれぞれ形成されている場合も、より大きな遅延時間差を付与することができる。
【0026】
また、光入射部に偏波スクランブラを設けたものでは、入射光の偏波依存性を排除できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の基本構成図
【図2】偏波成分に幅方向に異なる遅延時間差を付与するための説明図
【図3】本発明の第1実施形態の構成図
【図4】ビームエキスパンダを用いた第2実施形態の構成図
【図5】ビームエキスパンダの構成例を示す図
【図6】シリンドリカルレンズを用いた第3実施形態の構成図
【図7】第1遅延手段25にスライド駆動装置25bを設けた第4実施形態の構成図
【図8】偏波分離手段と偏波合波手段を独立したPBSで構成した第5実施形態の構成図
【図9】光入射部に偏波スクランブラを設けた第6実施形態の構成例を示す図
【図10】両方の遅延手段にミラーアレーによる折り返し光路を設けた第7実施形態の構成例を示す図
【図11】DGD発生分布の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の偏波モード分散ストレス発生装置20の基本構成図である。
【0029】
図1において、光入射部21は、偏波モード分散の付与対象となる光信号Pin(ここでは直線偏光とする)を入射させるためのものであり、一般的に光ファイバにより入射させる場合には、その光ファイバ接続用のコネクタやコネクタから入射された光を平行光にするコリメータレンズ等が含まれる。
【0030】
光入射部21に入射された光信号Pinは、偏波分離手段23に入射され、二つの直交偏波成分(P波、S波)Pp、Psに分離される。この偏波分離手段23としては主に偏光ビームスプリッタが用いられる。
【0031】
分離された直交偏波成分の一方Ppは第1遅延手段25に入射され、他方Psは第2遅延手段26に入射される。第1遅延手段25と第2遅延手段26は、入射光を受けてそれぞれ第1の光路、第2の光路を経由させ、その光路長相当の遅延を与えて出射するものである。
【0032】
ただし、第1遅延手段25と第2遅延手段26の少なくとも一方(この図では第2遅延手段26)は、光路内に遅延時間差を与え、且つその遅延時間差が変動するように制御している。
【0033】
それを実現するために、第2遅延手段26には、ミラーアレー51とそれを回動する回動装置52を含んでいる。
【0034】
図2に示すように、ミラーアレー51は、互いに直交する一対の反射面50a、50bをもち、その一方の反射面に入射された光を他方の反射面を介して入射光軸と平行な光軸で折り返して出射する直交ミラーユニット50が、偏波分離手段23からの光Psの幅の寸法内に複数段連続的に平行に並ぶ状態で一体的に形成されたものであり、回動装置52は、各直交ミラーユニット50を形成する一対の反射面が交わる境界線に平行な軸A(紙面に直交する軸)を中心にミラーアレー51全体を回動させて、ミラーアレー51に対する光の入射角を変動させる。
【0035】
第2遅延手段26には、このミラーアレー51による折り返し光路が含まれており、偏波分離手段23からの光をその幅方向に分けてミラーアレー51の複数の直交ミラーユニット50でそれぞれ受けて折り返すことになる。
【0036】
ここで、図2に示すように、ミラーアレー51に対する光の入射角度をθ、隣あう直交ミラーユニット間の光路差をdとすると、n個離れた直交ミラーユニット間に生じる光路差は、nd=2×W×sin θとなり、この光路差を回動装置52により変動させることで、折り返された光Ps′の幅方向の各成分に変動する遅延時間差が付与され、後述する偏波合波手段28で合波された光の偏波成分の群遅延時間差を変化させることができる。
【0037】
第1遅延手段25によって遅延された一方の直交偏波成分Pp′と、第2遅延手段26によって遅延された他方の直交偏波成分Ps′は、偏波合波手段28によって一つの光の直交成分として合波される。この偏波合波手段28は、偏波分離手段23と同様に偏光ビームスプリッタで構成される。
【0038】
偏波合波手段28で合波された光Poutは、光出射部29を介して出射される。この光出射部29としては、出射用のコネクタや偏波合波手段28から平行光で出射された光をコネクタの入射部に収束する集光レンズ等が含まれる。
【0039】
制御部30は、第1遅延手段25と第2遅延手段26のうち、前記したようにミラーアレー51と回動装置52を含む遅延手段の回動装置52の制御を行い、所定の初期角度、回動振幅でミラーアレー51を回動させて、偏波合波手段28で合波された光Poutの偏波成分の群遅延時間差を変化させる。
【0040】
このような基本構成を有する偏波モード分散ストレス発生装置20では、偏波分離された二つの直交偏波成分Pp、Psを、それぞれの遅延手段25、26に入射させてその少なくとも一方の遅延手段に入射された光の幅方向成分にミラーアレー51の回動による遅延時間差を付与して、他方と合波して出射する構造であるので、そのミラーアレー51の回動量に応じた任意のDGD(即ち、その平均値としての任意のPMD)を与えることができる。
【0041】
また、少なくとも一方の偏波成分の光を幅方向に分けてそれぞれ異なる遅延時間差を付与する方式であるから、一方の偏波成分全体の遅延時間を一律に且つ正弦的に変動させる方式に比べて、より複雑な遅延時間変動を実現することができ、ミラーアレー51に入射される光の強度分布に応じて所望分布(例えばマックスウェル分布やガウス分布のような)のDGDを発生させることができる。
【0042】
さらに、機械的に駆動される部分は遅延手段25、26の少なくとも一方だけで、しかも基本的にミラーアレー51を回動させるだけなので、小型化および低コスト化が可能である。
【0043】
(第1実施形態)
次に、より具体的な構成の第1実施形態を、図3を用いて説明する。
図3の偏波モード分散ストレス発生装置20は、光入射部21が、光信号Pinを入射させるためのコネクタ21aと、入射した光を平行光にするコリメートレンズ21bにより構成され、その光入射部21から出射された光をPBS(偏光ビームスプリッタ)22で受ける。
【0044】
この偏波モード分散ストレス発生装置20は、一つのPBS22が前記した偏波分離手段23と偏波合波手段28とを兼ねた所謂マイケルソン型干渉計の構造を有しており、入射した光信号Pinを二つの直交偏波成分Pp、Psに分け、その一方Ppを第1遅延手段25に入射し、他方Psを第2遅延手段26に入射し、それらの出射光Pp′、Ps′をPBS22に戻して合波する構成となっている。
【0045】
ここで、第1遅延手段25は、入射光をその入射光軸と一致する出射光軸に沿って折り返すための直交ミラー25aによって構成されている。ただし、直交ミラー25aで折り返された光は入射時と同一偏波状態であるから、折り返された光をそのままPBS22に戻すと、PBS22の可逆性により入射光Pin側に戻ってしまい、入射光との分離が困難になる。
【0046】
そこで、PBS22と第1遅延手段25の間に、1/4波長板31を設けている。この1/4波長板31をその光軸が入射する光の偏波方向に対して45度となるように配置する。
【0047】
これにより、PBS22から出射された偏波成分Ppは、1/4波長板31により円偏光となり、直交ミラー25aで折り返されて再び1/4波長板31に反対向きに入射されるので、1/4波長板31からPBS22に対しては、元の偏波成分Ppに対して90度偏波方向が回転した偏波成分Pp′が出射されることになる。そして、この偏波成分Pp′がPBS22に再入射するが、分離時の偏波方向と90度異なるから光信号Pinの入射方向には戻らず、それに直交する方向(図で下方)に出射される。
【0048】
また、第2遅延手段26は、前記したように複数の直交ミラーユニット50の反射面がが一面側に連続的に形成されて一体化されているミラーアレー51とそれを回動する回動装置52を含んでいて、PBSから出射された他方の偏波成分Psに幅方向に異なり且つ変動する遅延時間差を付与して折り返す構造を有している。
【0049】
ただしこの場合も、ミラーユニット51で折り返される光の偏波状態は変わらないので、折り返された光をそのままPBSに戻すと、入射光Pin側に戻ってしまい、一方の偏波成分Ps′との合波が行えない。
【0050】
したがって、図のようにPBS22と第2遅延手段26の間にも1/4波長板32を配置する。この場合も前記同様に1/4波長板32の光軸が、入射光の偏波方向に対して45度となるように配置する。
【0051】
これによって、PBS22から出射された偏波成分Ppは、1/4波長板32により円偏光となり、ミラーアレー51で折り返されて再び1/4波長板32に反対向きに入射されるので、1/4波長板32からPBS22に対しては、元の偏波成分Psに対して90度偏波方向が回転した偏波成分Ps′が出射されることになる。そして、この偏波成分Ps′がPBS22に再入射するが、分離時の偏波方向と90度異なるから光信号Pinの入射方向には戻らず、それに直交する方向(図で下方)に出射される。
【0052】
これらの遅延手段から折り返された光Pp′、Ps′は、それぞれ分離時と90度異なる偏光面で再びPBS22に互いに直交する向きで同一位置に入射されるので、PBS22の特性により、光信号Pinの入射光軸と直交する共通の光軸(図で下方に向かう光軸)上でそれらを直交成分とする光Poutに合波されて、光出射部29を介して外部に出射される。
【0053】
なお、光出射部29はPBS22で合波された光を、集光レンズ29aによって出射用のコネクタ29bに収束させ、そのコネクタ29bから外部へ出射させる。
【0054】
制御部30は、二つの遅延手段25、26の一方(この場合は第2遅延手段26)の回動装置52を制御して、ミラーアレー51を予め設定された初期角度、回動振幅で回動させ、出射光Poutの直交偏波成分間の群遅延時間差DGDを変動させ、所望の発生確率分布を与える。
【0055】
なお、上記実施形態の第1遅延手段25は、直交ミラー25aで入射光を折り返していたが、平面ミラーで折り返してもよい。これは後述の実施形態においても同様である。
【0056】
(第2実施形態)
また、図4に示すように、第2遅延手段26の入射部にビームエキスパンダ53を設け、ミラーアレー51に入射する光の幅を拡大してもよい。このようにすることで、小型の光学系で、より大きな遅延時間差を付与することができる。このビームエキスパンダ53は、偏波分離手段としてのPBS22からミラーアレー51の間の任意の位置に配置できる。
【0057】
なお、ビームエキスパンダ53としては、図5の(a)のように、凹レンズ53aと凸レンズ53bを組合せたものや、図5の(b)のように、三角柱プリズム53c、53dを組合せたものが使用できる。
【0058】
(第3実施形態)
また、図6のように光入射部21のコリメータ21bおよび光出射部29の集光レンズ29aを、それぞれビーム幅を広げる方向が互いに直交する二組のシリンドリカルレンズ21b′、21b″、29a′、29″をそれぞれ用いて、その間を伝搬する光のビーム幅を2次元方向に広げて、より大きな遅延時間差を付与することもできる。
【0059】
(第4実施形態)
また、干渉計の両アームの光路長が一致する位置を基準として一方のアーム側の遅延時間を変動させるために、図7に示すように、光出射部29の前段に設けた分岐器56で出射光を分岐して両偏光方向に対して偏光軸を45度に傾けた検光子57に与え、その検光子57から出射される光(両偏波を含む光)を受光器58に入射してその強度を検出して制御部30に与える。また、第1遅延手段25の直交ミラー25aの位置をスライド駆動装置25bによりスライドさせて、PBS22からの距離を可変できる構造にし、制御部30は、第2遅延手段26のミラーアレー51の角度を所定角度に固定した状態で、光入射部21から広帯域光源を入射させ、第1遅延手段25の直交ミラー25aを移動させて、受光器58に入射される光の強度が最大となる位置(干渉計の両アームの光路長が一致する位置)を決定し、この位置を基準にし、ミラーアレー51を所定角度から回動駆動する。
【0060】
なお、この例では第1遅延手段25の光反射手段としての直交ミラー25aをスライド駆動装置25bによってスライドさせ、第1遅延手段25の光路長を均一に変化させているが、第2遅延手段26のミラーアレー51を回動だけでなくスライド駆動させても同様の作用が得られる。
【0061】
(第5実施形態)
前記第1の実施形態では、単一のPBS22が偏波分離手段23と偏波合波手段28を兼ねた構成(マイケルソン型干渉計)を示したが、図8のように、それらを互いに独立したPBSで構成した、所謂マッハツェンダー型干渉計の構成を採用することもできる。
【0062】
即ち、光入射部21から入射された光を、偏波分離手段としてのPBS23により、二つの直交偏波成分Pp、Psに分け、第1遅延手段25と第2遅延手段26にそれぞれ出射する。
【0063】
第1遅延手段25は、入射する偏波成分PpをPBS61で受けて90度方向を変えて出射する光を1/4波長板31を通過させ、直交ミラー25aで折り返し、1/4波長板31およびPBS61を介して、偏波合波手段としてのPBS28に入射する。
【0064】
また、第2遅延手段26は、PBS23からの偏波成分PsをPBS62で受けて、これを通過させ、1/4波長板32を介してミラーアレー51に入射し、その折り返し光を、1/4波長板32およびPBS62を介してPBS28に入射する。
【0065】
なおここで、4つのPBS23、61、62、28は、長方形をなすように直交配置される。また、1/4波長板31、32の作用は、前記同様で偏波方向を変換するためのものである。
【0066】
これによって、第2遅延手段26に入射された偏波成分Psには、前記同様に、ミラーアレー51によって折り返される光路において、幅方向に異なり且つ変動する遅延時間差が付与され、他方の偏波成分Pp′とともにPBS28に出射され、前記同様に光Poutに合波されて、光出射部29を介して外部に出射される。
【0067】
(第6実施形態)
上記各実施形態では、入射する光信号Pinを直線偏波とし、偏波分離手段22を構成するPBS22、23で分離される二つの直交偏波成分の大きさがほぼ等しくなるような偏光面で入力させて両偏波成分の遅延量に有効な変動を与えるようにしているが、各実施形態において、図9のように、光入射部21に偏波スクランブラ21cを設け、これを制御部30によって制御し、入射する光信号Pinの偏波をランダムに変化させることで、光信号Pinの偏波方向を意識しないでも出射光Poutの偏波成分間の遅延量に有効な変動を与えることができる。
【0068】
(第7実施形態)
また、前記各実施形態では、第1遅延手段25と第2遅延手段26のうちの一方に(ここでは第2遅延手段26)に、ミラーアレー51による折り返し光路を設けていたが、図10のように、両方の遅延手段にミラーアレー51と回動装置52を設けて、両者を同時に駆動する(ただし回動の周期、振幅、位相の少なくとも一つは異なるようにする)ことで、両偏波成分にの間により複雑な変動を与えることも可能である。この場合、前記した図3のマイケルソン型で第1遅延手段25を第2遅延手段26と同等の構成としたり、前記した図8のマッハツェンダー型のいずれにも適用できる。
【符号の説明】
【0069】
20……偏波モード分散ストレス発生装置、21……光入射部、22……偏光ビームスプリッタ(PBS)、23……偏波分離手段(PBS)、25……第1遅延手段、25a……直交ミラー、25b……スライド駆動装置、26……第2遅延手段、28……偏波合波手段(PBS)、29……光出射部、30……制御部、31、32……1/4波長板、50……直交ミラーユニット、51……ミラーアレー、52……回動装置、53……ビームエキスパンダ、56……分岐器、57……検光子、58……受光器、61、62……PBS
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波モード分散の付与対象となる光信号を二つの直交偏波成分に分離し、
前記分離された一方の直交偏波成分を第1の光路を伝搬させ、他方の直交偏波成分を第2の光路を伝搬させるととともに、前記第1の光路と第2の光路のうち少なくとも一方の光路に、偏波分離された光をその幅方向に分けて複数の直交ミラー(50)でそれぞれ受けて折り返す折り返し光路を形成して幅方向で異なる遅延を与え、前記複数の直交ミラーを該直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させることで、各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させて伝搬させ、
前記第1の光路と第2の光路を伝搬した直交偏波成分を合波して、互いに直交する偏波成分の群遅延時間差が、前記複数の直交ミラーの回動角に応じて変化する光を生成することを特徴とする偏波モード分散ストレス発生方法。
【請求項2】
偏波モード分散の付与対象となる光信号を入射させるための光入射部(21)と、
前記光入射部に入射された光信号を二つの直交偏波成分に分離する偏波分離手段(22、23)と、
前記二つの直交偏波成分の一方を受けて第1の光路を経由させ、該第1の光路の長さ相当の遅延を与えて出射する第1遅延手段(25)と、
前記二つの直交偏波成分の他方を受けて第2の光路を経由させ、該第2の光路の長さ相当の遅延を与えて出射する第2遅延手段(26)と、
前記第1遅延手段によって遅延された一方の直交偏波成分と、前記第2遅延手段によって遅延された他方の直交偏波成分を合波する偏波合波手段(22、28)と、
前記偏波合波手段で合波された光を外部へ出射するための光出射部(29)と備え、
前記第1遅延手段と第2遅延手段の少なくとも一方は、
偏波分離された光をその幅方向に分けてそれぞれ受けて折り返す複数の直交ミラー(50)と、該複数の直交ミラーを該直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させる回動装置(52)とを含み、前記各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させつつ伝搬させて、前記偏波合波手段で合波された光の偏波成分の群遅延時間差を、前記複数の直交ミラーの回動角に応じて変化させることを特徴とする偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項3】
単一の偏光ビームスプリッタ(22)が、前記偏波分離手段と前記偏波合波手段とを兼ね、
前記偏光ビームスプリッタと前記第1遅延手段との間および前記偏光ビームスプリッタと前記第2遅延手段との間に、それぞれ1/4波長板(31、32)が挿入されており、
前記第1遅延手段と第2遅延手段は、前記偏光ビームスプリッタで分離された直交偏波成分を前記各1/4波長板を介して受けてこれを同一光軸で逆向きに折り返して再度前記1/4波長板に入射させて、分離時と偏光方向がそれぞれ90度異なる直交偏波成分に変えて分離時と同一光軸で前記偏光ビームスプリッタに戻し、それらを直交成分とする光を、前記偏光ビームスプリッタに対する前記光信号の入射光軸と直交する光軸に沿って出射させることを特徴とする請求項2記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項4】
前記偏波分離手段と前記偏波合波手段は、それぞれ個別の偏光ビームスプリッタ(23、28)によって構成されていることを特徴とする請求項2記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項5】
前記複数の直交ミラーに入射される光のビーム幅を広げるビームエキスパンダ(53)を、前記偏波分離手段と前記複数の直交ミラーの間に配置したことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項6】
前記光入射部には、入射光のビーム幅を広げて平行光にするコリメータ(21b)が設けられ、前記光出射部には、合波光を集光するための集光レンズ(29a)が設けられており、
前記光入射部のコリメータと前記光出射部の集光レンズが、ビーム幅拡張方向が互いに直交する二組のシリンドリカルレンズによってそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項7】
前記光入射部には、入射光の偏波状態をランダム化する偏波スクランブラ(21c)が設けられていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項8】
前記偏波合波手段によって合波されて前記光出射部に出射される光の一部を分岐する分岐器(56)と、
前記分岐器によって分岐された光から両偏波成分を取り出すように、両偏光方向に対して偏光軸を45度傾けた検光子(57)と、
前記検光子によって検出された両偏波成分を受光する受光器(58)と、
前記第1遅延手段と第2遅延手段の少なくとも一方に含まれる光反射手段(25a)を、その入射光軸と平行な方向にスライド移動させて該光反射手段によって折り返される光路長を均一に変化させるスライド駆動手段(25b)とを含み、
前記光入射部から広帯域光源を入射させて、前記複数のミラーの角度を所定角度に固定した状態で、前記スライド駆動手段を制御したときの前記受光器の出力に基づいて、前記第1遅延手段と第2遅延手段の光路長合わせを行い、該光路長が合った状態から前記複数のミラーを前記所定角度から回動させることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項1】
偏波モード分散の付与対象となる光信号を二つの直交偏波成分に分離し、
前記分離された一方の直交偏波成分を第1の光路を伝搬させ、他方の直交偏波成分を第2の光路を伝搬させるととともに、前記第1の光路と第2の光路のうち少なくとも一方の光路に、偏波分離された光をその幅方向に分けて複数の直交ミラー(50)でそれぞれ受けて折り返す折り返し光路を形成して幅方向で異なる遅延を与え、前記複数の直交ミラーを該直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させることで、各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させて伝搬させ、
前記第1の光路と第2の光路を伝搬した直交偏波成分を合波して、互いに直交する偏波成分の群遅延時間差が、前記複数の直交ミラーの回動角に応じて変化する光を生成することを特徴とする偏波モード分散ストレス発生方法。
【請求項2】
偏波モード分散の付与対象となる光信号を入射させるための光入射部(21)と、
前記光入射部に入射された光信号を二つの直交偏波成分に分離する偏波分離手段(22、23)と、
前記二つの直交偏波成分の一方を受けて第1の光路を経由させ、該第1の光路の長さ相当の遅延を与えて出射する第1遅延手段(25)と、
前記二つの直交偏波成分の他方を受けて第2の光路を経由させ、該第2の光路の長さ相当の遅延を与えて出射する第2遅延手段(26)と、
前記第1遅延手段によって遅延された一方の直交偏波成分と、前記第2遅延手段によって遅延された他方の直交偏波成分を合波する偏波合波手段(22、28)と、
前記偏波合波手段で合波された光を外部へ出射するための光出射部(29)と備え、
前記第1遅延手段と第2遅延手段の少なくとも一方は、
偏波分離された光をその幅方向に分けてそれぞれ受けて折り返す複数の直交ミラー(50)と、該複数の直交ミラーを該直交ミラーを形成する一対の直交反射面が交わる境界線に平行な軸で一体的に回動させる回動装置(52)とを含み、前記各直交ミラーによりそれぞれ折り返された光成分に付与される遅延時間差を変動させつつ伝搬させて、前記偏波合波手段で合波された光の偏波成分の群遅延時間差を、前記複数の直交ミラーの回動角に応じて変化させることを特徴とする偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項3】
単一の偏光ビームスプリッタ(22)が、前記偏波分離手段と前記偏波合波手段とを兼ね、
前記偏光ビームスプリッタと前記第1遅延手段との間および前記偏光ビームスプリッタと前記第2遅延手段との間に、それぞれ1/4波長板(31、32)が挿入されており、
前記第1遅延手段と第2遅延手段は、前記偏光ビームスプリッタで分離された直交偏波成分を前記各1/4波長板を介して受けてこれを同一光軸で逆向きに折り返して再度前記1/4波長板に入射させて、分離時と偏光方向がそれぞれ90度異なる直交偏波成分に変えて分離時と同一光軸で前記偏光ビームスプリッタに戻し、それらを直交成分とする光を、前記偏光ビームスプリッタに対する前記光信号の入射光軸と直交する光軸に沿って出射させることを特徴とする請求項2記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項4】
前記偏波分離手段と前記偏波合波手段は、それぞれ個別の偏光ビームスプリッタ(23、28)によって構成されていることを特徴とする請求項2記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項5】
前記複数の直交ミラーに入射される光のビーム幅を広げるビームエキスパンダ(53)を、前記偏波分離手段と前記複数の直交ミラーの間に配置したことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項6】
前記光入射部には、入射光のビーム幅を広げて平行光にするコリメータ(21b)が設けられ、前記光出射部には、合波光を集光するための集光レンズ(29a)が設けられており、
前記光入射部のコリメータと前記光出射部の集光レンズが、ビーム幅拡張方向が互いに直交する二組のシリンドリカルレンズによってそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項7】
前記光入射部には、入射光の偏波状態をランダム化する偏波スクランブラ(21c)が設けられていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【請求項8】
前記偏波合波手段によって合波されて前記光出射部に出射される光の一部を分岐する分岐器(56)と、
前記分岐器によって分岐された光から両偏波成分を取り出すように、両偏光方向に対して偏光軸を45度傾けた検光子(57)と、
前記検光子によって検出された両偏波成分を受光する受光器(58)と、
前記第1遅延手段と第2遅延手段の少なくとも一方に含まれる光反射手段(25a)を、その入射光軸と平行な方向にスライド移動させて該光反射手段によって折り返される光路長を均一に変化させるスライド駆動手段(25b)とを含み、
前記光入射部から広帯域光源を入射させて、前記複数のミラーの角度を所定角度に固定した状態で、前記スライド駆動手段を制御したときの前記受光器の出力に基づいて、前記第1遅延手段と第2遅延手段の光路長合わせを行い、該光路長が合った状態から前記複数のミラーを前記所定角度から回動させることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の偏波モード分散ストレス発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−54673(P2012−54673A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194007(P2010−194007)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]