説明

健康状態測定装置および測定方法

【課題】便を採取することなく、二酸化炭素ガスセンサを使用することによって非接触で簡単に排便時の便のpH値を計測することができ、しかもガスセンサ周辺の風量に変動があっても安定したpH値を得ることができる健康状態測定装置を提供する。
【解決手段】健康状態測定装置は、排便時に併発するガス中の二酸化炭素ガス濃度の最大値を測定するための脱臭ファン用排気通路路内に設置したガスセンサ7と、前記最大値を脱臭ファン用排気通路内の風量の変化に応じて補正するための換算係数または換算表、併発ガス中の二酸化炭素ガス濃度−便の酢酸濃度の換算係数または換算表、便の酢酸濃度−便のpH値の換算係数または換算表とを保管する記憶部9および上記二酸化炭素ガス濃度データと各換算係数または換算表とからpH値を推算するための制御装置8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康状態を判断するための有力な指標の一つである排泄物中のpH値を非接触で推定することのできる健康状態測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の健康状態を知るための指標の一つとして腸内のpH値を計測することが行われている。具体的には、排泄された便を採取し、水等で希釈あるいはそのままの状態でpH電極を接触させて計測を行い、この便のpH値から腸内のpH値を推測していた。
【0003】
しかし、排便時のサンプリングは採取が面倒であり、またpH電極を計測のたびに洗浄しなくてはならない。さらに、採取してから計測までの間、便を安定して保存しておく必要があり、そうでないと、便に含まれている腸内細菌の代謝によりpH値が排便直後の便の値からずれて正確に計測できなくなる等の不具合もあった。
【0004】
非接触で排泄物中のpH値を測定あるいは推定する技術は知られていないが、非接触でpH値を測定する技術としては、たとえば特許文献1および特許文献2がある。
【0005】
特許文献1は、試料表面へpH指示薬を含む粒子を吐出し、この粒子の変色状態に基づいて試料表面のpHを測定する方法に関するものである。また、特許文献2は、測定対象物に色変化型のpH指示色素を均一に混合して撮影し、得られたカラー画像を信号化し、該測定対象物についてあらかじめ作成した検量線と対比することによりpH値を推定してディスプレーに表示する方法である。
【0006】
一方、排泄物とともに排出されるガス成分を利用して、腸内状態を知る技術としては特許文献3〜6がある。特許文献3は、腸内状態報知装置およびその方法に関する本出願人の発明である。この装置では、排泄物から出る排泄ガス中の水素ガスをガスセンサで測定し、ガスセンサから出力された信号値に対応した腸内状態情報を腸内健康度判定用付属情報から抽出してユーザに報知するものである。腸内状態情報としては、腸内に存在する種々の菌の総数、ビフィズス菌の数、悪玉菌の数、腸内菌の総数のうちのビフィズス菌数の割合、又は、腸内菌の総数のうちの悪玉菌数の割合等を採用している。
【0007】
また、特許文献4の排泄ガス測定装置及び方法も本出願人の発明であり、排泄ガス中の水素ガスあるいはメタンガスをガスセンサで検出し、ビフィズス菌数を推定して腸内健康度を判定するものである。また、特許文献5の健康測定装置は、排泄時に発生した臭気を酸化触媒で脱臭し、そのときに要した酸化電流から臭気成分濃度を検出するものである。さらに、特許文献6の生体モニタ装置は、布製のT字帯にガスセンサを装着し、肛門から放出されたガスをガスセンサで検知してデータ化し、メモリに蓄えられたデータと過去のデータとを比較し、差が大きい場合など異常が認められる場合に表示装置に警告を表示するものである。
【0008】
また、最近では排便時の快適性をより高めるため、脱臭排気量を自動的あるいは手動で変動させて強制脱臭(パワー脱臭)することができる脱臭装置が提案されている。
【0009】
たとえば特許文献7には、脱臭装置に設けた吸引用ファンの回転数を、運転初期の臭気濃度の値が大きいほど高くするとともに、臭気濃度が所定レベル以下の場合、脱臭装置の運転を停止するようにしたトイレ脱臭装置が記載されている。また、特許文献8には、使用者の離座検知後、臭い検知手段の検知レベルに応じて脱臭装置の作動を制御する制御手段を有するトイレ装置が記載され、特許文献9には、臭気センサで検知された臭気濃度によってファンを作動および停止させる制御装置を備えた便所装置が記載され、さらに特許文献10には、温風暖房装置が動作中は、消臭装置の空気吸引力を定常運転時よりも大きくする系を備えた室内暖房及び消臭機能付き便座装置が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平1−96535号公報。
【特許文献2】特開2001−343328号公報。
【特許文献3】特開2005−315836号公報。
【特許文献4】特開2005−292049号公報。
【特許文献5】特開平8−211048号公報。
【特許文献6】特開平9−43182号公報。
【特許文献7】特開2001−227029号公報。
【特許文献8】特開2002−275989号公報。
【特許文献9】特開平1−295932号公報。
【特許文献10】実用新案登録第2577119号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、便を採取することなく、二酸化炭素ガスセンサを使用することによって非接触で簡単に排便時の便のpH値を計測することができる健康状態測定装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明に係る健康状態測定装置は、排便時に非接触で便のpH値を計測するためのものであって、以下の(1)〜(3)を備えた構成とした。
(1)排便時に併発するガス中の二酸化炭素ガス濃度を測定するための脱臭ファン用排気通路路内に設置したガスセンサ
(2)前記ガス濃度を脱臭ファン用排気通路内の風量の変化に応じて補正するための換算係数または換算表、併発ガス中の二酸化炭素ガス濃度−便の酢酸濃度の換算係数または換算表、および便の酢酸濃度−便のpH値の換算係数または換算表とを保管する記憶部
(3)前記二酸化炭素ガス濃度データと各換算係数または換算表とからpH値を推算するための制御装置
【0013】
また、本発明に係る健康状態測定方法は、排便時に非接触で便のpH値を計測することができるものであって、排便時に併発するガス中の二酸化炭素ガス濃度のデータを排便開始から排便終了まで記録し、このデータの中から二酸化炭素ガス濃度の最大値を検索し、さらに、この最大値データが脱臭ファン用排気通路内の風量変化時に得られたものか定常排気時に得られたものかを判断し、風量変化時のデータであれば前もって作成しておいた換算係数または換算表を使用して補正最大値を推算し、この最大値または補正最大値を使用して、前記二酸化炭素ガス濃度−便の酢酸濃度の換算係数または換算表および便の酢酸濃度−便のpH値の換算係数または換算表を使用して腸内pH値を推定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の健康状態測定装置および健康状態測定方法によれば、排泄物に直接触れることなく簡便に便のpH値、すなわち腸内のpH値を測定することができる。そのため、従来困難であった毎日の生活の中での体調の定常的チェックを可能とすることができる。また、定常脱臭モードと強制脱臭モードの切り替えがあっても、正確な腸内pH値を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、便のpH値を健康状態の判断に使用することには次の理由がある。すなわち、排便時の便のpH値は腸内環境を示す指標であり、腸内環境を支配する腸内細菌のバランスが良いときは善玉菌であるビフィズス菌が優勢で、腸内のpHは弱酸性に保たれる。また腸内のpHは摂取する食品にも影響を受け、肉類等を偏って摂取するとアルカリ側に傾きpH7以上となると大腸ガン等のリスクが高まり、一方、オリゴ糖や野菜類をバランスよく摂取すると弱酸性を保つことができる。
【0016】
このように、腸内のpH値を弱酸性に保つことは健康を維持する上で大切であるが、pH値を毎日の生活の中で定常的にチェックをすることは大変に困難である。したがって、日常的に行われる排便行為時に、何の負荷もなく簡便にpH値を知ることのできる本発明の健康状態測定装置および健康状態測定方法は有益である。
【0017】
以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。図1は、本発明の健康状態測定装置を搭載した、洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の一例を示す(部分透視)外観図である。便器1の、便座2と便鉢3周縁の頂部との間に設けたスペースを利用して脱臭ファン用排気通路4が設置されている。脱臭ファン用排気通路4内には、脱臭ファン5、脱臭カートリッジ6、および二酸化炭素ガスセンサ7が取り付けられている。二酸化炭素ガスセンサ7以外にカートリッジの脱臭性能を確認するための臭気センサを別途取り付けても良い。
【0018】
尚、脱臭ファン用排気通路内には、脱臭ファンによって一定量の風が流れるのであるが、排便時の快適性を向上させるため最近ではパワー脱臭を行うようにしている。このパワー脱臭の際には風量が大幅に変化するが、ガスセンサの応答が風量の影響を受けるため、測定値が脱臭モードによって変化する。
【0019】
また、制御装置8および記憶部9は一体化して便座2の後部内に組み込まれ、さらに、演算結果であるpHデータの表示部10は、人体洗浄装置の操作パネル11に組み込まれている。なお、二酸化炭素ガスセンサ7と制御装置8とのデータ交換は結線により、また制御装置8と表示部10とのデータ交換は赤外線により行っている。
【0020】
図2は、本発明の健康状態測定装置に係る操作パネルの一例を示す正面図である。操作パネル11は、表示部10とともに、停止ボタン12、おしり洗浄ボタン13、ビデボタン14を備え、さらに、強制脱臭(パワー脱臭)を手動で行うための脱臭ボタン15も備えている。
【0021】
図3は、本発明の健康状態測定装置に係る脱臭ファン用排気通路内の構成の一例を示す配置図である。脱臭ファン用排気通路4は、矢印で示した通気方向の上流側から順に脱臭ファン5、脱臭カートリッジ6、および二酸化炭素ガスセンサ7が取り付けられていて、脱臭カートリッジ6と二酸化炭素ガスセンサ7との間には、二酸化炭素ガスセンサ7への風の直撃を避けるための邪魔板16が置かれている。二酸化炭素ガスセンサ7の例として固体電解質センサおよび光学式ガスセンサを挙げることができる。光学式ガスセンサを採用した場合には風の影響を受けないため邪魔板16は不要である。
【0022】
本発明の健康状態測定装置においては、脱臭ファン5の回転数等からパワー脱臭のオン・オフを検知して定常排気運転中であるか、または強制排気運転中であるかを検知し、また、二酸化炭素ガスセンサ7から二酸化炭素ガス濃度を検知して、それぞれのデータを制御装置8に送る。制御装置8で処理されたpH値等のデータは記憶部9に送られて保管され、また表示部10にも表示される。
【0023】
図4は、本発明に係る二酸化炭素ガス濃度から腸内pH値を推定する手順の一例を示す流れおよび換算グラフである。図4(a)に示したように、排便時に併発するガス中の二酸化炭素ガス濃度を利用して便の酢酸濃度を推定することができ、さらに酢酸濃度から便のpH値、すなわち腸内のpH値を推定することができる。
【0024】
図4(b)は排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度(電圧による。容量%で表示)の最大値と、そのときに採取した便の酢酸濃度(μmol/g)との相関を示す実測データである。このように二酸化炭素ガス濃度と酢酸濃度との間に相関性があることの理由は明確ではないが、便のpH値は含まれるカルボン酸の濃度によって左右され、このカルボン酸の一定割合が腸内で水と二酸化炭素に分解されているためと推測される。
【0025】
したがって、カルボン酸のうちの大部分を占める酢酸の濃度も上記二酸化炭素ガス濃度と相関があることになる。また、図4(c)は便の酢酸濃度と便のpH値との相関を示す実測データであり、他に含まれる酸や塩基の影響を受けてデータは多少乱れるものの、ほぼ、直線的な関係を示している。
【0026】
図5は、固体電解質センサを使って二酸化炭素ガス濃度を測定した場合の、pH値への換算手順を示すグラフである。図5(a)は排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度(電圧による)を固体電解質センサで測定した例を示すグラフである。横軸の時間(秒)は排便所要時間を表し、t1は排便開始時、t2は排便終了時である。最高濃度は排便量が最も多い時点で出現するため、このときのガス濃度(最大値Vp)を利用すれば、より正確なpH値を推定することができる。
【0027】
ところで、固体電解質センサを使用した場合、その特性上二酸化炭素ガス濃度の最大値Vpは応答曲線のピーク値よりもその傾きから推定した方がより精度が高い。図6は、固体電解質センサの特性を説明するためのグラフである。この内、図6(a)は特定濃度(3000ppm)の二酸化炭素ガスを使用し、ガス発生時間を5秒間から2分間までの6種類変化させてグラフ化したものである。固体電解質センサは応答時間が遅いため、このグラフから分かるように、ガスの発生時間が短いと正しい濃度である3000ppmを知ることができない。その一方で、このグラフは、ガス発生時間の長短に関連なく、ガス濃度が一定であれば立上時の傾斜dが同じであることも示している。また図6(b)に示したように、二酸化炭素ガス濃度が高くなるほど傾斜dが大きくなること、すなわち、ガス濃度と傾斜dには相関があることも判っている。そして、図6(c)に示すように、二酸化炭素ガス濃度と傾きdとの相関は直線的である。以上から、手順としては、二酸化炭素ガスセンサの出力を記憶し、ここから応答曲線の傾きdを計算し、図6(c)の換算表からガス濃度の最大値Vpを推測することとなる。
【0028】
図5に戻って説明を続けると、図5(b)が上記図6(c)と同じ換算表であり、ここから二酸化炭素ガス濃度の最大値Vpを推測する。次に、図5(c)の二酸化炭素ガス濃度と便の酢酸濃度との相関を示す(図4(b)と同じ)グラフから酢酸濃度Cacを推定し、さらに図5(d)の便の酢酸濃度と便のpH値との相関を示す(図4(c)と同じ)グラフからpH値を推定することができる。
【0029】
図7は、光学式ガスセンサを使って二酸化炭素ガス濃度を測定した場合の、pH値への換算手順を示すグラフである。図7(a)は排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度(電圧による)を光学式ガスセンサで測定した例を示すグラフである。横軸の時間(秒)は排便所要時間を表し、t1は排便開始時、t2は排便終了時である。最高ガス濃度Vpを利用すれば正確なpH値を推定することができるのは固体電解質センサの場合と同じである。光学式ガスセンサの場合は固体電解質センサと異なって、測定時間が短くてもガス濃度を正確に捉えることができるため、得られたVp値をそのまま使って図7(b)の二酸化炭素ガス濃度と便の酢酸濃度との換算表((図4(b)、図5(c)と同じ)と、図7(c)の酢酸濃度と便のpH値との換算表(図4(c)、図5(d)と同じ)を使ってpH値を推定することができる。
【0030】

本発明の健康状態測定装置は、上記によって得られた二酸化炭素ガス濃度のVp値を検索し、さらに、このVp値が脱臭ファン用排気通路4内のパワー脱臭時等の風量変化時に得られたものか、あるいは定常排気時に得られたものかを判断する手段を備えていることに特徴がある。具体的には脱臭ファン5の回転数からパワー脱臭のオン・オフを検知して制御装置8に知らせるが、脱臭ファン用排気通路4内に風量検知器を設置しておいて、そのデータを制御装置8にしらせる等、他の手段を使用してもよく、検知手段に制限はない。そして、Vp値が風量変化時のデータであると判断された場合には、記憶部9に保管された換算係数または換算表を使用して補正Vp値を推算し、この補正Vp値を使って腸内pH値を推定することとなる。
【0031】

図8は、本発明の健康状態測定装置(洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に搭載)を使用した健康状態測定方法の手順を示す一例である。使用者(以後、「ユーザ」と呼ぶ。)の動作を左側に、便座装置が行う処理(健康状態測定装置の処理を含む)を右側に別けて表示した。
【0032】
本図の流れの通り、ユーザはトイレ内に入室し排便をして退室するのであるが、このトイレには本発明の健康状態測定装置が取り付けてあるため、退室する前には自分の腸内のpH推定値を表示されることで、その日の体調を知り、あるいは継続的に測定していた場合は経時的な体調の変化を知ることができる。
【0033】
まずユーザが入室すると人体検知センサによって入室が検知される。すると二酸化炭素ガスセンサ7が起動される。人体検知センサを使わない場合には、ユーザが健康状態測定装置の電源を手動で入れてもよい。
【0034】
ユーザが着座すると着座センサが着座を検知し、脱臭ファン5の起動後に二酸化炭素ガスセンサ7が記録および記憶を開始する。着座センサを使わずにユーザが各センサの始動スイッチを押してもよい。ここで稼動開始時のセンサの時刻をt1とし、その時刻に対応する二酸化炭素ガスセンサ7の電圧値(Vol%濃度)をV1と呼ぶ。
【0035】
ユーザが排便を開始し終了するまで、二酸化炭素ガスセンサ7は一定時間txごとにデータVxを検出し、それらを記憶部9に書き込む。
【0036】
排便終了後、ユーザが人体洗浄を開始する。このとき、洗浄ボタン13と連動させて二酸化炭素ガスセンサ7の記録を終了させる。排便終了時の時間t2と二酸化炭素ガスセンサ7のそのときの検知データV2が記憶される。なお、排便前または排便中に洗浄ボタン13が使われるケースもあることを考慮する場合は、洗浄ボタン13と連動させずにユーザが手動で記憶終了させる形式としてもよい。
【0037】
制御装置8ではt1〜t2の範囲で二酸化炭素ガス濃度の最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxの値そのもの、またはVmaxから、二酸化炭素ガス濃度の最小値Vb1を引いた値を測定値(最大値Vp)として記憶部9に記録する。なお、二酸化炭素ガスセンサ7として固体電解質センサを使用した場合は、図5で説明した二酸化炭素ガス濃度の傾きdを利用してVp値を得ることは既述の通りである。
【0038】
次に、脱臭モード(パワー脱臭)の切り替えの有無を判定する。脱臭モードの切り替えの形式については、手動による脱臭ボタン15のオン・オフ、あるいは悪臭センサを別途取り付ける等特に制限はない。
【0039】
いずれにしても定常モードから脱臭モードに切り替ったことが感知された場合には、それがVp値を記録した前か後かを判断し、脱臭モードに切り替わった後にVp値が記録されていた場合には、前もって作成しておいた換算係数で補正するか、または脱臭モード用の別の換算表を使用する。そしてVp値から酢酸濃度Cac値を推定し、続いて酢酸濃度Cac値からpH値を推定する。同定したpH値は記憶部9に書き込み、さらに同定結果をユーザに表示部10等により報知する。
【0040】
ユーザが離座すると、それを着座センサが感知し脱臭ファン5が停止する。そしてユーザが退室すると人体検知センサによって退室が検知され二酸化炭素ガスセンサ7の電源が切られる。
【0041】
本実施例では、二酸化炭素ガス濃度の最大値を利用したが、ガス濃度の積分値を利用してもよい。また本実施例ではパワー脱臭を利用したが、脱臭風量の違いによりそれぞれ換算係数、換算表があってもよい。
【0042】
以上の各実施例によれば、排便時の快適性を向上させるために脱臭の際の風量を変化させた場合にも、前もって作成しておいた換算係数または換算表を使用して補正最大値を推算することで、腸内pH値を精度よく推定することができる。

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の健康状態測定装置を搭載した洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置の一例を示す(部分透視)外観図
【図2】本発明の健康状態測定装置に係る操作パネルの一例を示す正面図
【図3】本発明の健康状態測定装置に係る脱臭ファン用排気通路内の構成の一例を示す配置図
【図4】本発明に係る二酸化炭素ガス濃度から腸内pH値を推定する手順の一例を示す流れおよび換算グラフ
【図5】固体電解質センサを使って二酸化炭素ガス濃度を測定した場合の、pH値への換算手順を示すグラフ
【図6】固体電解質センサの特性を説明するためのグラフ
【図7】光学式ガスセンサを使って二酸化炭素ガス濃度を測定した場合の、pH値への換算手順を示すグラフ
【図8】本発明の健康状態測定装置(人体洗浄装置組込タイプ洋式便器に搭載)を使用した健康状態測定方法の手順の一例を示す図
【符号の説明】
【0044】
1…便器、2…便座、3…便鉢、4…脱臭ファン用排気通路、5…脱臭ファン、6…脱臭カートリッジ、7…二酸化炭素ガスセンサ、8…制御装置、9…記憶部、10…表示部、11…操作パネル、12…停止ボタン、13…おしり洗浄ボタン、14…ビデボタン、15…脱臭ボタン、16…邪魔板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排便時に非接触で便のpH値を計測するための健康状態測定装置であって、この装置は、排便時に併発するガス中の二酸化炭素ガス濃度を測定するための脱臭ファン用排気通路路内に設置したガスセンサと、前記二酸化炭素ガス濃度を脱臭ファン用排気通路内の風量に応じて補正するための換算係数または換算表、併発ガス中の二酸化炭素ガス濃度−便の酢酸濃度の換算係数または換算表、および便の酢酸濃度−便のpH値の換算係数または換算表を保管する記憶部と、前記二酸化炭素ガス濃度データと各換算係数または換算表とからpH値を推算するための制御装置とを備えていることを特徴とする健康状態測定装置。
【請求項2】
排便時に非接触で便のpH値を計測することのできる健康状態測定方法であって、この方法は、排便時に併発するガス中の二酸化炭素ガス濃度のデータを排便開始から排便終了まで記録し、このデータの中から二酸化炭素ガス濃度の最大値を検索し、さらに、この最大値データが脱臭ファン用排気通路内の風量変化時に得られたものか定常排気時に得られたものかを判断し、風量変化時のデータであれば前もって作成しておいた換算係数または換算表を使用して補正最大値を推算し、この最大値または補正最大値を使用して、前記二酸化炭素ガス濃度−便の酢酸濃度の換算係数または換算表及び便の酢酸濃度−便のpH値の換算係数または換算表を使用して腸内pH値を推定することを特徴とする健康状態測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−145284(P2009−145284A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325354(P2007−325354)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】