説明

側溝構造体

【課題】側溝2と樹脂製の貯水槽3とを備えた側溝構造体1において、側溝2に大きな上載荷重が掛かった場合でも、その荷重が貯水槽3に作用する割合を小さくして、貯水槽3に変形や部分的な破損を生じるのを回避する。
【解決手段】側溝構造体1において、貯水槽3を側溝2の側方に位置させる。側溝2の下方には自立可能な材料からなる軽量盛土層7を形成する。そして、貯水槽3は前記軽量盛土層7に側面を接するようにして配置する。側溝2と貯水槽3とは送水管8によって接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道や駐車場、グランドなどに設置される側溝構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車道や駐車場、グランドなどに溜まる雨水を処理するために、U字側溝や浸透側溝のような側溝を設置することが行われる。側溝に流入した雨水等を河川などに運ぶだけでなく、側溝の下に樹脂材料からなる貯水槽を設置して、雨水を一時的に貯留できるようにした構造の側溝構造体も知られている(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
また、地中に比較的に中小規模の貯水槽を構築する場合や、貯水槽を造る場所の地盤が軟弱地盤の場合に、樹脂材料からなる貯水空間形成部材を多段に積み上げ、その周囲を遮水または透水シートで覆って貯水槽とすることも知られている(例えば、特許文献3,4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−163637号公報
【特許文献2】特開2007−16582号公報
【特許文献3】特開2008−8075号公報
【特許文献4】特開2009−24447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載される、側溝の下に樹脂材料からなる貯水槽を配置する構造の側溝構造体は、側溝を流れる雨水の一部を貯水槽内に貯留することができるので、中小河川の排水能力を上回る規模の降雨が短期間に集中して生じたときなどに有効に機能する。しかし、従来の、貯水槽を備えた側溝構造体では、側溝の真下に貯水槽を設置するようにしており、側溝に大型車のタイヤが載ったようなときに、輪荷重が分散されることなく側溝から直接に貯水槽へ伝わり、貯水槽に変形や部分的な破損を生じさせる恐れがある。特に、貯水槽が樹脂製品の場合には、上載荷重に対する耐性が十分でなく、破損等が生じる可能性が高い。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、側溝と樹脂製の貯水槽とを備えた側溝構造体において、側溝に大きな上載荷重が掛かった場合でも、その荷重が貯水槽に作用する割合を小さくして、樹脂製品である貯水槽に変形や部分的な破損を生じるのを回避できるようにした側溝構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による側溝構造体は、側溝と樹脂製の貯水空間形成部材を多段に積み上げて形成した貯水槽とを備えた側溝構造体であって、前記貯水槽は前記側溝の側方に位置しており、前記側溝の下方には自立可能な材料からなる軽量盛土層が形成されており、前記貯水槽は前記軽量盛土層に側面を接するようにして配置されており、かつ前記側溝と前記貯水槽とは送水管によって接続されていることを特徴とする。
【0008】
本発明による側溝構造体では、貯水槽は側溝の直下ではなく側方に位置している。そのために、側溝に作用する輪荷重等が貯水槽の上部に作用することはない。しかし、側溝の下が土砂の場合、側溝底部から作用する輪荷重等による側圧(水平荷重)(水平土圧ともいう)が貯水槽の側面に作用するのは避けられない。貯水槽と側溝との水平方向の距離を大きく取ることにより前記した側圧を軽減することができる。しかし、水平方向の距離を大きく取ることは、道路などでの施工エリアが広くなることを意味しており、効果的な解決策とはならない。
【0009】
前記した水平荷重を軽減するために、本発明による側溝構造体では、側溝の下方に自立可能な材料からなる軽量盛土層を形成し、貯水槽はその側面を前記軽量盛土層に接するようにして配置している。一般に、自立可能な材料からなる軽量盛土層では、上載荷重に対する側圧(水平荷重)の比は、0.0から多くても0.2程度であり、軽量盛土層を介して貯水槽の側面に掛かる側圧(水平荷重)は大きく低減する。ちなみに、道路土工、カルバート工指針(平成11年3月:日本道路協会)によれば、土砂の場合の上載荷重に対する側圧(水平荷重)(水平土圧ともいう)の比は、0.5程度である。
【0010】
すなわち、本発明による側溝構造体では、貯水槽に掛かる上載荷重および側圧の双方を軽減することが可能となる。それにより、同じ容積の貯水槽を設置する場合に、貯水槽を側溝の直下に設置する場合と比較して、また、貯水槽を単に側溝の側方に設置する場合と比較しても、貯水槽を構成する樹脂製の貯水空間形成部材の強度を小さなものとすることができ、材料コストの低減がもたらされる。また、前記貯水槽は前記軽量盛土層に側面を接するようにして配置されており、施工に当たって、少ない作業エリアで施工を完了することができる。
【0011】
本発明による側溝構造体において、前記軽量盛土層を構成する材料は、自立性を備えることを条件に任意の材料を用いることができる。例として、軽量モルタル、樹脂発泡体、中空コンクリートブロックなどが挙げられる。そのなかでも、施工性、軽量性、取り扱い性などの観点から樹脂発泡体ブロックが好ましく、より好ましくは、ポリスチレン系樹脂の押出し発泡体である。所定の大きさの樹脂発泡体ブロックを多段に積み重ねて軽量盛土層とすることは、施工の容易性の観点から特に好ましい。
【0012】
本発明による側溝構造体において、好ましくは、前記送水管の前記側溝側での開口部は当該側溝の底部から高い位置に設けられる。この態様では、側溝における前記開口部よりも下方の領域に沈砂桝としての機能を持たせることができるので、送水管を通って貯水槽に流入する雨水は、砂やゴミ等を側溝底部に落とした後の上水となり、樹脂製の貯水空間形成部材を多段に積み上げて形成した貯水槽の中に、砂やゴミ等の固形物が流入するのを効果的に回避することができる。
【0013】
本発明による側溝構造体において、好ましくは、前記送水管の前記側溝側での開口部には、フィルターが取り付けられる。開口部に雨水に混入している砂やゴミ等の固形物が通過しないメッシュのフィルターを取り付けることにより、貯水槽の中に、砂やゴミ等の固形物が流入するのを一層確実に阻止することができる。
【0014】
本発明による側溝構造体の他の態様において、前記貯水槽と前記軽量盛土層の上にはコンクリート床版が形成され、前記側溝は前記コンクリート床版上に載るようにして設置される。この態様では、重量車両の通過などによって地表面あるいは側溝上に生じる大きな集中荷重をコンクリート床版によって分散させることができ、軽量盛土層および貯水槽に掛かる負荷の低減が可能となる。それにより、側溝構造体の安定化が図られる。
【0015】
なお、本発明による側溝構造体において、側溝は、コンクリート製のU字側溝でもよく、従来知られた浸透側溝でもよい。また、貯水槽は、貯留槽であってもよく浸透槽であってもよい。浸透槽の場合には、樹脂製の貯水空間形成部材を多段に積み上げて形成した貯水槽は不織布等の透水性シートで覆われる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、側溝と樹脂製の貯水空間形成部材を多段に積み上げて形成した貯水槽とを備えた側溝構造体において、樹脂製品である貯水槽に作用する上載荷重および側圧(水平荷重)の双方を軽減することが可能となる。それにより、側溝構造体の安全性が確保されると共に、樹脂製品である貯水槽に掛かる製造コストも低減することができる。また、側溝に接近して貯水槽を設置することができるので、施工時の作業エリアも狭くすることができる。それらのことから、全体として、施工コストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による側溝構造体の第1の実施の形態を示す概略図。
【図2】本発明による側溝構造体の第2の実施の形態を示す概略図。
【図3】本発明による側溝構造体の第3の実施の形態を示す概略図。
【図4】本発明による側溝構造体の第4の実施の形態を示す概略図。
【図5】貯水槽を形成する樹脂製の貯水空間形成部材の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明による側溝構造体を実施の形態に基づき説明する。
【0019】
図1に示す第1の形態において、側溝構造体1は、従来公知の側溝2と貯水槽3を備える。側溝2は、図では断面ほぼU字状のコンクリート側溝として示されるが、浸透側溝であってもよい。貯水槽3は、樹脂製の貯水空間形成部材を多段に積み上げて形成されており、それ自体は公知のものであってよい。
【0020】
図5は、貯水槽3を構成する樹脂製の貯水空間形成部材の一例を示している。この貯水空間形成部材31は、前記した特許文献4に記載されるものであり、下端が開放された箱状部32の複数個が間隔を空けながらX方向に配列した箱列32が、X方向に直交するY方向に間隔を空けながら必要列数だけ配列した構成を基本的に備える。図5に示すように、必要な場合には、異なった大きさの複数個の貯水空間形成部材31を箱列33の方向が同じ方向となるように寄せ集めて貯水空間形成部材31としてもよい。そして、貯水空間形成部材31の多数枚を、前記箱列33の方向が互いに直角に交差させながら上下方向に積み上げることにより、貯水槽3とされる。
【0021】
施工に当たり、側溝2の横幅aと貯水槽3の横幅bを合わせた横幅の凹溝を所定深さに地表面Lから掘削する。そして、掘削面に不織布のような透水性シート4を配置し、透水性シート4を配置した支持地盤の上に砕石のような基礎材5を敷き詰めて、均平化する。均平化した基礎材5の上であって、施工後に前記側溝2が位置することとなる場所に、例えばポリスチレン系樹脂の押出し発泡体である樹脂発泡体ブロック6を多段に積み重ねて軽量盛土層7を形成する。この樹脂発泡体ブロックは自立性を有しており、所定高さに段積みする作業は容易である。
【0022】
その作業と平行して、あるいはその作業の後に、前記基礎材5の上に、前記軽量盛土層7に一側面が接するようにして前記した貯水空間形成部材31を多段に配置し、貯水槽3を形成する。形成した貯水槽3の周囲を前記した透水性シート4で覆う。なお、軽量盛土層7と貯水槽3の高さは等しいことが望ましいが、多少異なっていてもよい。また、貯水槽3を形成した後に、軽量盛土層7を形成してもよい。
【0023】
次に、前記軽量盛土層7の上に、側溝2を配置する。そして、側溝2と貯水槽3とを送水管8で接続する。好ましくは、側溝2の側壁21における側溝2の底部よりも高い位置に取り付け孔23を設け、そこに前記送水管8の側溝2側での開口部9を接続する。送水管8の他端側の開口は貯水槽3の適所に接続する。また、好ましくは、前記開口部9に、雨水に含まれる砂等の固形物を除去するためのフィルター10を取り付ける。この状態で、埋め戻しを行うことにより、本発明による側溝構造体1が完成する。
【0024】
この側溝構造体1では、雨水の量が少ない場合には、側溝2内を雨水は流下していく。雨水の量が多くなり、水位が前記送水管8の開口部9を超えると、超えた分の雨水(側溝2の底部に砂等の固形部を落とした後の上水)は、送水管8を通って貯水槽3に貯留される。貯留水は、時間と共に透水性シート4を通って、ゆっくりと地中に浸透していく。
【0025】
側溝2に大型車のタイヤが載ったようなときに、上載荷重(輪荷重)は側溝2から軽量盛土層7に伝わり、貯水槽3には直接は伝わらない。また、軽量盛土層7は自立可能な材料、この例ではポリスチレン系樹脂の押出し発泡体である樹脂発泡体ブロック6で作られており、輪荷重による側圧(水平荷重)が貯水槽3の側面に作用する割合は、ほとんど0であるか、作用するとしても、土砂の場合と比較して極めて少ない。多くても上載荷重の0.2程度以下である。それにより、側溝2に係る輪荷重によって貯水槽3が変形するのを阻止することができ、側溝構造体の安全性が確保される。
【0026】
また、樹脂製品である貯水空間形成部材31として、強度の比較的弱いもの(厚さの薄いもの)を用いることができ、貯水槽3に掛かる製造コストを低減することもできる。さらに、前記のように、側溝2の接近した位置に貯水槽3を設置することができるので、施工時の作業エリアも狭くすることができる。それらのことから、全体として、施工コストが低減する。
【0027】
図2は、本発明による側溝構造体1の第2の実施の形態を示す。この形態では、前記送水管8が、側溝の側壁21ではなく、底面に形成した取り付け孔23を通過するようにして取り付けてある点で、相違する。他の構成は、図1に示したものと同じであり、対応する部品には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0028】
図3に示す本発明による側溝構造体の第3の実施の形態は、前記貯水槽3と前記軽量盛土層7の上にコンクリート床版11が設置されており、側溝2は前記コンクリート床版11の上に載っている点で、図1に示したものと相違する。他の構成は、図1に示したものと同じであり、対応する部品には同じ符号を付し、説明は省略する。この形態では、重量車両の通過などによって地表面あるいは側溝2上に大きな集中荷重が生じたときに、その荷重をコンクリート床版11によって分散させることができる。そのために、軽量盛土層7および貯水槽3に掛かる負荷を低減することができ、側溝構造体1の一層の安定化が図られる。
【0029】
なお、コンクリート床版11は、透水性コンクリート床版であってもよく、穴あきコンクリート床版であってもよい。また、コンクリート床版11を施工するには、貯水槽3および軽量盛土層7の上に透水性シートを張り、必要な場合には配筋を行い、また周囲の型枠を設置した後、コンクリートを流し込むようする。
【0030】
図4に示す本発明による側溝構造体の第4の実施の形態は、前記第2の実施の形態の場合と同様に、前記送水管8が、側溝の側壁21ではなく、底面に形成した取り付け孔23を通過するようにして取り付けてある点で、相違する。他の構成は、図3に示したものと同じであり、対応する部品には同じ符号を付し、説明は省略する。
【符号の説明】
【0031】
1…側溝構造体、
2…側溝、
21…側溝の側壁
22…側溝の底部
23…取り付け孔、
3…貯水槽、
31…貯水空間形成部材、
32…箱状部、
33…箱列、
4…透水性シート、
5…基礎材、
6…例えばポリスチレン系樹脂の押出し発泡体である樹脂発泡体ブロック、
7…軽量盛土層、
8…送水管、
9…送水管の側溝側での開口部、
10…フィルター、
11…コンクリート床版。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝と樹脂製の貯水空間形成部材を多段に積み上げて形成した貯水槽とを備えた側溝構造体であって、
前記貯水槽は前記側溝の側方に位置しており、前記側溝の下方には自立可能な材料からなる軽量盛土層が形成されており、前記貯水槽は前記軽量盛土層に側面を接するようにして配置されており、かつ前記側溝と前記貯水槽とは送水管によって接続されていることを特徴とする側溝構造体。
【請求項2】
前記軽量盛土層が樹脂発泡体ブロックを多段に積み重ねて形成した軽量盛土層であることを特徴とする請求項1に記載の側溝構造体。
【請求項3】
前記樹脂発泡体ブロックがポリスチレン系樹脂の押出し発泡体であることを特徴とする請求項2に記載の側溝構造体。
【請求項4】
前記送水管の前記側溝側での開口部は当該側溝の底部から高い位置に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の側溝構造体。
【請求項5】
前記送水管の前記側溝側での開口部には、フィルターが取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の側溝構造体。
【請求項6】
前記貯水槽と前記軽量盛土層の上にはコンクリート床版が設置されており、前記側溝は前記コンクリート床版上に載っていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の側溝構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−203210(P2010−203210A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53165(P2009−53165)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】