説明

側面外観検査トレー、及び外観検査トレー連結体

【課題】外観検査装置のXYステージ上に水平にセットした外観検査トレーの上面に設けた各収容凹所内に収容された検査対象物の側面の外観状況を、上方に配置された撮像装置等によって精度よく撮像、観察して検査精度を高めることができるようにした。
【解決手段】少なくとも対向する上面及び下面と、該上面及び下面の各外周縁間を結ぶ側面と、を有した検査対象物50を収容する第1の収容凹所3を観察面に備えた側面外観検査トレー1であって、第1の収容凹所の内壁には、検査対象物を水平横臥姿勢に対して30〜90度の範囲で傾斜、或いは起立させた姿勢にて保持する姿勢制御部10が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電デバイス、半導体パッケージ、光学部品等々の各種検査対象物の外観検査を行う際に使用する外観検査トレーの改良に関し、特に外観検査トレー上に検査対象物を水平に保持した状態では十分に検査することができなかった側面の外観を高精度に検査することを可能とした側面外観検査トレー、及び外観検査トレー連結体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報機器の小型化に対応して、情報機器に組み込まれて使用される表面実装用の圧電デバイス、半導体パッケージ、光学部品等々の各種部品も小型化しており、それらの外面に形成された傷、付着したゴミ等の外観検査が困難化している。検査対象物の種類、形状の違いに応じて検査項目にも種々の相違があるが、外観検査においては検査対象物の外面全体、即ち上下面、及び側面を、肉眼、顕微鏡、撮像装置等により外観検査するのが一般である。
【0003】
例えば、表面実装型圧電振動子は、底面に実装端子を備えたセラミックパッケージ内に圧電振動素子を気密封止した構成を備えているが、加工工程中に加わる熱衝撃によりパッケージ側面にクラックや傷が形成されることがあり、このようなクラックや傷は当該圧電振動子が不良品化する原因となる。バッチ処理により圧電振動子を量産する工程においては、運搬及び外観検査用を兼ねたトレーの上面に設けた多数の収容凹所内に圧電振動子を水平姿勢にて収容した状態で、次工程への搬送、及び外観検査に供する。しかし、収容凹所内に水平に収容された圧電振動子の側面は、そのままの状態では外観検査することができないため、トレー上の全ての圧電振動子をマグネットシート上にばらばらに放出して側面を検査したり、必要に応じてピンセットにより個々の部品を立設させた上で側面の状態を検査していた。しかし、このような検査方法は極めて効率が悪く、部品が小型化すればするほど実施することが困難であった。特に、検査終了後に個々の部品をピンセットで摘んでトレー上の収容空所内に所定の姿勢となるように戻す作業は多大な労力を要する作業であった。
【0004】
このようなところから、トレーに収容された多数の部品をばらすことなくそのまま効率よく検査する装置、方法が種々提案されている。
例えば特許文献1、2には、検査対象物を水平な姿勢で収容した複数の収容凹所を上面に備えた外観検査トレーをXYステージ上に支持して高精度に位置決め制御すると共に、撮像装置を外観検査トレーの上面と対向した所定位置に静止させた状態で照明装置により照明された検査対象物を上方から撮像して検査対象物の上面全体を観察するようにした外観検査装置が開示されている。
図9(a)及び(b)は従来の外観検査トレーの平面図、及び収容凹所の縦断面図であり、この外観検査トレー100の上面(観察面)には縦横配列で複数の収容凹所101が形成されている。収容凹所101は、検査対象物110としての表面実装型水晶振動子をリッド111側を上向きにした水平な姿勢で支持する構成を備えており、この外観検査トレーを外観検査装置の検査ステージ上にセットした状態では上方に位置する撮像装置は検査対象物110の上面しか検査することができない。検査対象物110の底面側を検査する場合には検査対象物110の底面側を上向きにして収容凹所101内に収容し直した上で底面を撮像装置によって検査することとなる。
【0005】
しかし、検査対象物の上面、及び底面を検査する際には、検査対象物の側面は収容凹所101の内壁に近接しているために撮像装置によって必要十分な画像情報を収集することが困難である。
特許文献1には、収容凹所内に水平にセットされた検査対象物を四側方から照明しつつ側面の状況を撮像する構成が開示されてはいるが、撮像装置はあくまで検査対象物の上面と対向配置されているため、上方からの撮像角度では検査対象物側面の詳細な状況を撮像することは不可能である。
【0006】
なお、外観検査トレーは、検査対象物を次工程へ移送したり、運搬、保管するためにも使用されるため、収容凹所内で検査対象物が遊動して位置ずれや姿勢ずれを起こしたり、内壁に衝突することは好ましくない。このため、収容凹所の平面形状を検査対象物のサイズを大幅に超えて広くすることはできない。また、外観検査トレー上に収容可能な検査対象物の個数をできるだけ多くして作業効率、収納効率を高めるためにも収容凹所内に過大な余剰スペースを設けて大型化することは好ましくない。従って、検査対象物の側面と収容凹所内壁との間のスペースは必然的に狭くならざるを得ない傾向があり、上方からの撮像、観察によって検査対象物側面の状況を精度よく検査することには限界がある。
【特許文献1】特開2003−232750公報
【特許文献2】特開2003−322625公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように従来の検査方法においては、外観検査トレー上面の収容凹所内に検査対象物をその上面、又は底面を上向きにして水平に支持した状態でセットすると共に、撮像装置、顕微鏡、肉眼等によって上方から検査対象物の外観情報を収集していたに過ぎないため、収容凹所の内側壁に近接配置された側面に対する外観検査は困難、或いは不十分にならざるを得なかった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、外観検査装置のXYステージ上に水平にセットした外観検査トレーの上面に設けた各収容凹所内に収容された検査対象物の側面の外観状況を、上方に配置された撮像装置等によって精度よく撮像、観察して検査精度を高めることができるようにした側面外観検査トレー、及び外観検査トレー連結体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る側面外観検査トレーは、少なくとも対向する上面及び下面と、該上面及び下面の各外周縁間を結ぶ側面と、を有した検査対象物を収容する第1の収容凹所を備えた側面外観検査トレーであって、前記第1の収容凹所の内壁には、前記検査対象物を水平横臥姿勢に対して30〜90度の範囲で傾斜、或いは起立させた姿勢にて保持する姿勢制御部が配置されていることを特徴とする。
検査対象物が姿勢制御部内に着座した際の傾斜角度を30〜50度の範囲とすれば、上方からの側面検査が可能となる。傾斜角度を50度以上〜90度の範囲とすれば、更に上方からの側面検査を効果的に実施することができる。
【0009】
第2の発明に係る側面外観検査トレーでは、前記姿勢制御部は、縦断面形状が略L字状、或いは略V字状となるように連結した少なくとも2つの支持面から構成されており、前記姿勢制御部を構成する一方の支持面は、前記検査対象物の上面、又は下面を支持し、他方の支持面は該検査対象物の側面を支持し、一方の支持面の水平面に対する角度範囲が30〜90度となるように設定したことを特徴とする。
一方の支持面により検査対象物の上面、又は下面(被支持面)を支持することによって検査対象物の傾斜角度がほぼ確定し、他方の支持面により検査対象物の下側の側面を支持することにより、上側に位置する被検査側面の高さ位置が決まる。更に一方の支持面の角度範囲を30〜90度の範囲内に設定することによって、検査対象物の被検査側面を上方(側面外観検査トレーの観察面と対向した位置)に位置する撮像装置等との位置関係を最適の範囲内に納めることができる。
【0010】
第3の発明に係る側面外観検査トレーは、前記一方の支持面の上下幅l1を、前記検査対象物の被支持面の全長L1よりも短く、しかも(L1/2)<l1 の関係を維持するように設定したことを特徴とする。
検査対象物の上下方向長さの中点よりも上方を一方の支持面によって支持することにより、着座時の安定性と、着座後の安定性を確保することができる。
【0011】
第4の発明に係る側面外観検査トレーは、前記一方の支持面の水平面に対する角度範囲を50〜90度とし、前記一方の支持面と対向する第1の収容凹所内壁を円弧状のガイド面としたことを特徴とする。
検査対象物の姿勢を、垂直、或いは垂直に近い急角度まで起き上がらせることにより上側に位置する被検査側面の検査が容易且つ正確となる。
【0012】
第5の発明に係る側面外観検査トレーは、前記一方の支持面の上部に突起を設けたことを特徴とする。
支点となる突起を設けて、一方の収容凹所内から他方の収容凹所内に検査対象物が落下する際に、必ず突起に引っ掛かって一定方向へほぼ一定の軌跡で回転するように構成しているので、挙動が安定し、安定した着座姿勢を確保できる。また、この突起を設けることにより、収容空所内において検査対象物が落下する距離をできるだけ短くして早い時点で回転させることが可能となる。
【0013】
第6の発明に係る外観検査トレー連結体は、上記の側面外観検査トレーと、前記検査対象物を略水平姿勢に保持する第2の収容凹所を有した上下面外観検査トレーとを、夫々の観察面同士を対向させて結合することにより各収容凹所同士が連通した方向転換用の収容空所を形成する外観検査トレー連結体であって、前記上下面外観検査トレーを下側位置にして略水平に支持した状態から、前記側面外観検査トレーが下側位置で略水平姿勢となるように回転させた際に、前記第2の収容凹所内に収容されていた前記検査対象物が回転しつつ前記第1の収容凹所内に移動して前記各支持面上に着座するように構成されていることを特徴とする。
上下面外観検査トレー側に検査対象物を収容した状態で、側面外観検査トレーを被せて連結し、上下反転させることにより、全ての第2の収容凹所内の検査対象物を一括して第1の収容凹所内に移載することができる。第1の収容凹所に移載された検査対象物は傾斜、或いは起立した状態で保持されるので、上方からの側面検査を確実に行うことができる。
【0014】
第7の発明に係る外観検査トレー連結体は、前記両外観検査トレーの間に位置決め手段を兼ねたスペーサを配置することにより前記方向転換用の収容空所の高さ寸法を調整可能に構成したことを特徴とする。
両外観検査トレーを連結した状態で仮固定する手段としてスペーサを用いると共に、このスペーサによって収容空所の高さ寸法も調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る側面外観検査トレーの平面図、第1の収容凹所の拡大平面図、及び第1の収容凹所のA−A縦断面図であり、図2(a)及び(b)は上下両面用外観検査トレーの平面図、及び第2の収容凹所の縦断面図である。図3(a)及び(b)は側面外観検査トレーを上下面外観検査トレーの観察面上に組み付けた外観検査トレー連結体の断面図、及び上下反転させた状態を示す断面図であり、図3(c)はスペーサの他の構成例を示す断面図である。
【0016】
側面外観検査トレー1は、検査対象物50を収容する第1の収容凹所3を観察面2上に複数備えており、各第1の収容凹所3の内壁には、検査対象物50を水平横臥姿勢に対して許容角度θ(30〜90度)の範囲内で傾斜、或いは起立させた姿勢にて保持する姿勢制御部10が配置されている。この許容角度範囲は、側面外観検査トレー1の上方に配置した図示しない撮像装置によって検査対象物50の側面(外周面)を観察するのに適した角度範囲となっている。即ち、検査対象物の側面のうち検査対象となる側面はできるだけ水平に近い姿勢とすることが、トレー上方に下向きに配置した撮像装置による検査において理想的であるが、被検査側面を水平にした場合は検査対象物が直立状態となるため、後述するように上下面外観検査トレー側に戻すことが少しく困難となる。そこで、検査対象物の姿勢を90度よりも小さい傾斜姿勢に保持して側面を検査する方が戻す作業においては便利である。撮像装置による側面画像の収集精度、及び上下面外観検査トレーへの戻しのための操作性を考慮すると、理想的な角度範囲は30〜50度である。なお、傾斜姿勢が30度よりも小さい場合には上方からの検査が困難となるため、30度以上であることが好ましい。
【0017】
なお、側面を外観検査した後で、第1の収容凹所3内の検査対象物をバラバラにして直接パーツフィーダに投入する場合のように上下面外観検査トレーに戻す必要がない場合には、検査対象物を第1の収容凹所内で90度の起立姿勢に保持して検査することが可能である。
なお、ここでは検査対象物50の一例として表面実装型の水晶振動子を用いて説明する。水晶振動子50は、底面に実装端子52を備えた箱形のセラミックパッケージ51内に図示しない水晶振動素子を収容した状態でパッケージ51の上面開口をリッド53により封止した構成を備えている。
【0018】
本発明によって側面の外観検査が可能な検査対象物は、電子部品、光学部品等々、部品の種類を問わず、少なくとも対向する上面及び下面と、該上面及び下面の各外周縁間を結ぶ側面と、を有した部品であれば、どのような構成であってもよい。検査対象物の形状に応じて姿勢制御部10の形状、構造を変化させる必要があることは勿論である。
第1の収容凹所3内に設けた姿勢制御部10は、縦断面形状が略V字状、或いはL字状となるように連結した少なくとも2つの支持面(平坦面)11、20を備えている。一方の支持面(第1の支持面)11は、検査対象物50の上面50a、又は下面50bを支持し、他方の支持面(第2の支持面)20は検査対象物の側面50cを支持することにより、上記許容角度θの範囲内で検査対象物を着座させることができる。
第1の支持面11により検査対象物50の上面、又は下面(被支持面)を支持することによって検査対象物の傾斜角度がほぼ確定し、第2の支持面20により検査対象物の下側の側面を支持することにより、上側に位置する被検査側面の高さ位置が決まる。
【0019】
図1(c)に示した第1の収容凹所に設けた姿勢制御部10を構成する第1の支持面11の上下幅l1は、検査対象物50の被支持面(上面50a)の全長L1よりも短く、しかも(L1/2)<l1 の関係を維持するように設定されている。つまり、第1の支持面11の上端部11aの高さ位置は、第1の支持面11上に着座した検査対象物の被支持面50aの中間高さ位置よりも上方に位置しているため、検査対象物50を破線で示すように姿勢制御部10上に支持した際の着座安定性を確保することができる。
この実施形態に係る第1の支持面11のように上部に所定幅に亘って切欠き部12を設けたのは、後述するように上下面外観検査トレー31上に側面外観検査トレー1を重ねて連結した状態で上下反転させた時に形成される方向転換用の収容空所S内において、検査対象物をスムーズ且つ一定の安定した挙動にて回転させるためのスペースを確保するためである。また、支持面11の上端部(角部)11aは、検査対象物が回転する際の回転方向、及び最終的な着座姿勢を一義的に規定するための支点として機能することとなる。なお、上端部11aを曲面状にすることにより、これと接しつつ回転する検査対象物の移動を更にスムーズ化することができる。
【0020】
他方の支持面(第1の支持面)20については、検査対象物50の被検査側面と対向する反対側の側面を安定して支持し得るように第1の支持面11との間に形成する角度を設定する。この例では、検査対象物の上下面と側面との間のなす角度が90度であるため、支持面11、20間の角度は90度、或いは90度よりも若干広い鈍角(略L字状)とする。なお、この角度は検査対象物の形状によっては、V字状(鋭角)状であってもよい。
【0021】
次に、図3(a)及び(b)に基づいて外観検査トレー連結体と、これを上下反転させる操作について説明する。
まず、外観検査トレー連結体30は、図1(a)に示した側面外観検査トレー1と、検査対象物50を略水平姿勢に保持する第2の収容凹所33を観察面32に有した上下面外観検査トレー31(図1(c))とを、夫々の観察面2、32同士を対向させて結合させた構成を備えている。そして、各収容凹所3、33同士が連通することによって形成された方向転換用の収容空所Sを備えている。
なお、両外観検査トレー1、31を結合させる際に両観察面2、32間に所要のギャップGを形成して収容空所Sの高さ寸法Hを最適な状態に設定するように位置決め手段を兼ねたスペーサ(位置決めピン)40を介在させることが好ましい。また、スペーサ40は両観察面2、32間を連結することにより両トレーを仮固定する仮固定手段としても機能する。
【0022】
図3(a)(b)中に示したスペーサ40は例えば金属材料、樹脂材料等から構成し、各観察面に設けた嵌合穴2a、32a内に嵌合して仮固定手段として機能する上下の嵌合突起40aと、トレー間のギャップの値を決めるスペーサとして機能するフランジ40bと、を備える。嵌合穴2a、32aの設置箇所は任意であるが、例えば図1(a)に示すように各トレーの四隅に設けてもよいし、対角線に沿った2箇所に設けても良い。両外観検査トレー1、31をスペーサ40を用いて連結させるに際しては何れか一方の外観検査トレーの嵌合穴にスペーサ40を差し込んでおいた状態で他方の外観検査トレーを被せつつ他方の外観検査トレーに設けた嵌合穴にスペーサ40の他方の嵌合突起を嵌合させる。これにより両外観検査トレーを仮固定することができる。
なお、各外観検査トレー1、31の四隅に夫々設けた嵌合穴2a、32aのうちの対角線に沿った2箇所を図3(a)(b)に示したスペーサ40により仮固定した場合、残りの2隅は図3(c)に示したようなスペーサとしてのみ機能するスペーサ41によって支持することにより適正なギャップGを確保することができる。
【0023】
検査対象物50の上下面を検査する場合には、第2の収容凹所33内に検査対象物50を上向きの水平姿勢でセットした状態で上下面外観検査トレー31を図示しない外観検査装置のXYステージ上にセットして、外観検査トレーの上方に配置された撮像装置(或いは、顕微鏡)によって検査対象物の上面を検査する。裏面についての検査に際しては、この外観検査トレーの観察面上に同様の構成を有した他の上下面外観検査トレーを重ねてから上下反転させることにより、検査対象物の上下を逆にした状態で他の外観検査トレー側に移載し、その後同様の手順によって検査対象物の底面側を検査する。
【0024】
次に、検査対象物50の側面を撮像装置により検査する場合には、外観検査トレー連結体30を一旦構築する必要がある。即ち、外観検査トレー連結体30の構築に際しては、図3(a)に示すように上下面外観検査トレー31の観察面32上に、側面外観検査トレー1をその観察面2を下向きにして位置決めした上で、スペーサ40、41を用いてギャップGを確保しつつ仮固定する。この状態では、各収容凹所3、33同士が対向することにより収容空所Sを形成しており、検査対象物50の厚さ、サイズを考慮して所定のギャップGを設けることによって検査対象物が収容空所S内で姿勢を変更しつつ第1の収容凹所3側へ移動し易くなるように配慮する。
【0025】
次に、図3(a)の状態にある外観検査トレー連結体30を矢印Bで示す方向へ回転させると、それに伴って、第2の収容凹所33内で水平姿勢に保持されていた検査対象物50は収容空所S内で矢印b方向へ回転し、(b)のように第1の外観検査トレー1が下側位置にまで反転した時点で支持面11及び20上に安定して着座した状態となっている。この際、全ての検査対象物50が支持面11、20上に同様の姿勢で着座した状態となるように、外観検査トレー連結体30を振動、或いは揺動させるのが好ましい。
この結果、全ての第1の収容凹所3内における検査対象物50が一方の側面を斜め上向きにした状態で静止するので、上側に位置する上下面外観検査トレー31を取り外して、側面外観検査トレー1の観察面2を露出させると、外観検査装置による側面の検査が可能な状態となっている。従って、側面外観検査トレー1を図示しない外観検査装置のXYステージ上にセットし、上方に配置された撮像装置等によって上向きにセットされた側面を容易に検査することができる。
【0026】
なお、図3(a)に示した実施形態における第1の収容凹所3の幅W1と、第2の収容凹所33の幅W2との関係を、例えばW1=1.05・W2〜1.15・W2となるように、幅W1の方を少し大きく設定する。このように設定することにより、図3(a)(b)に示したように収容空所S内における検査対象物の回転と移動がスムーズに行われることとなる。
また、検査対象物50の対角線長L2と収容空所Sの高さ寸法Hとの関係をH<L2とすることにより、図3(b)のように支持面11、20上に一旦接触した検査対象物が外観検査トレー連結体30の回転停止時の反動によって更に時計回り方向へ回動しようとしたときに第2の収容凹所33の天井面が検査対象物の角部に当接するため、同方向への回動を阻止することができる。
【0027】
なお、図3の実施形態では、支持面11、20上に着座した状態にある検査対象物50の上端角部が収容空所Sの天井面(第2の収容凹所33の天井面)と干渉していないが、図3(b)の時点で鎖線で示すように両者が干渉していても、上下面外観検査トレー31を取り外した際に検査対象物が自重によって両支持面11、20上に着座するため問題はない。或いは、上下面外観検査トレー31を取り外す前に外観検査トレー連結体30を振動させることによって正しい着座姿勢に移行させることができる。
なお、図4の他の実施形態に示すように、両外観検査トレー間のギャップGの値さえ適正に設定されていれば、検査対象物50は図3(a)の状態から図3(b)の状態にスムーズに移行することができるので、第1の支持面11の上部に設けた切欠き部12は必ずしも必要ではない。
【0028】
また、図5(a)(b)は図4の変形例であり、図5(a)の実施形態に係る姿勢制御部10は、第1の支持面11の上端縁から横方向へ延びる面上に突起15を設けることにより、上側に位置する第2の収容凹所33内の検査対象物50が落下しながら回転する際の回転支点となるようにしている。即ち、図3(a)の状態にあった外観検査トレー連結体30を回転させて図3(b)の状態に移行させる際に、検査対象物50はいち早く突起15と当接することにより回転軌跡を一義的に規制され、理想的な軌跡を経て回転しながら第1の収容凹所3側へ移動し図3(b)の着座状態にて静止することができる。特に、突起15の突出長、形成位置としては、上側に位置する第2の収容凹所33内の検査対象物50が落下する距離をできるだけ短くして早い時点で突起15を支点とした回転を開始し得るように設定するのが作業効率を高める上で好ましい。また、突起15は第1の収容凹所の奥行き方向全長に亘って延在する突条としてもよいし、幅の短い突起を奥行き方向に所定のピッチで複数個配置した構成としてもよい。
また、支点15の上端面を曲面状とすることにより、検査対象物の回転をスムーズ化することができる。
なお、図5(b)のように突起15は第1の支持面11の上部に設けた切欠き部12の上面に設けても良い。
【0029】
次に、図3に示した外観検査トレー連結体30を用いて検査対象物50の方向を転換する方法は、次の如きステップにて実施される。
まず、観察面32を上向きにした状態で各第2の収容凹所33内に検査対象物50を略水平に支持した上下面外観検査トレー31の観察面32上に、観察面2が対向するように側面外観検査トレー1を結合することにより外観検査トレー連結体30を形成するステップを実施する。このステップでは、スペーサ40、41を用いて両トレー1、31を仮固定する。
次いで、外観検査トレー連結体30を所定の方向Bに回転させることにより上下反転させて側面外観検査トレー1を下側にして、検査対象物を第1の収容凹所3内に移動させるステップを実施する。この過程で、検査対象物は収容空所S内において第1の支持面11の上部や突起15等によって回転方向、回転姿勢を規制されつつb方向へ回転しながら移動し、図3(b)のように両支持面11、20上に着座する。
【0030】
前記ステップの終了時において収容空所S内の検査対象物の着座姿勢にバラツキがある可能性があるため、人手等によって外観検査トレー連結体30を揺動、振動させることにより検査対象物を第1の収容凹所内に同一姿勢にて着座させるステップを実施する。
次いで、上下面外観検査トレー31を取り外して側面外観検査トレー1を図示しない外観検査装置のXYステージ上にセットし、撮像装置、或いは顕微鏡を用いて第1の収容凹所3内に斜め上向きにセットされた検査対象物の側面を検査する。
検査終了後には再び上下面外観検査トレー31を側面外観検査トレー1上に被せて仮固定し、上下反転させる。この上下反転操作により収容空所S内の検査対象物は図3(b)の状態から図3(a)の状態に移行する。
【0031】
検査対象物50の他の側面についても順次外観を検査する必要がある場合には、検査対象物50の平面形状が正方形、或いは円形である場合に限って、同じ側面外観検査トレー1及び上下面外観検査トレー31を用いて異なった側面を順次斜め上向きにした状態で検査対象物を側面外観検査トレー1の第1の収容凹所内に支持することができる。即ち、図3(a)の初期状態において、上下面外観検査トレー31に対する側面外観検査トレー1の位置関係を90度ずつずらして取り付けた上で上記の上下反転操作を実施することにより、残りの側面を斜め上向きに支持した状態での外観検査が可能となる。
検査対象物50の平面形状が長方形であり、対向する2つの側面(クラック等が発生し易い2側面)だけを検査すればよい場合には、上下面外観検査トレー31に対する側面外観検査トレー1の取付け姿勢を180度回転させることにより、同一の側面外観検査トレー1を使用して2側面を検査することが可能となる。
なお、検査対象物50の平面形状が長方形、その他の多角形、楕円形、或いは異形である場合には、側面外観検査トレー1として異なった側面を支持するのに適した形状の姿勢制御部10を備えた専用トレーを用意すればよい。
【0032】
次に、図6(a)及び(b)は収容空所内において検査対象物を90度の姿勢で起立させる場合の第1の収容凹所の構成例を示す平面図、及び収容空所の縦断面図である。
この実施形態に係る側面外観検査トレー1の第1の収容凹所3内に設けた姿勢制御部10は、垂直に延びる第1の支持面11と、第1の支持面11の下端部から水平に延びる第2の支持面20と、を備え、更に第1の支持面20の端部から円弧状に上向きに延びるガイド面25と、を備えている。第1の支持面11は垂直面として設定されている。
収容空所Sの高さ寸法Hは、検査対象物50の対角線長L2よりも大きく設定されているので、外観検査トレー連結体30の上下反転時に、検査対象物50は収容空所内を落下しながら90度回転することができる。
【0033】
この実施形態では、第1の支持面11の上部に切欠き部12を設けることにより、外観検査トレー連結体30を上下反転させる際に、第1の支持面11の上端部11aを支点として検査対象物50が一定の軌跡を経て回転し、最終的に90度の起立状態で着座するように構成しているが、図5に示した如き突起15を設けたり、スペーサ40によりギャップGを調整することにより上下反転中における収容空所S内での検査対象物の挙動を安定させるようにしてもよい。
なお、検査対象物50を姿勢制御部10内で90度未満、50度以上の角度範囲内の姿勢に支持する場合には、第1の支持面11の角度をその角度範囲内に設定すればよい。この場合も円弧状のガイド面25を設けることが好ましい。
【0034】
図7(a)乃至(d)は図6に示した外観検査トレー連結体30を用いて、第2の収容凹所33内に水平姿勢で支持されていた検査対象物を回転させて第1の収容凹所3内に起立状態で着座させる手順を示している。
まず、図7(a)に示したように第2の収容凹所33内に検査対象物50を水平に支持した状態にある上下面外観検査トレー31を下側に配置した状態で、外観検査トレー連結体30を(b)(c)に示すように順次矢印方向へ回転させることにより、側面外観検査トレー1を下側に配置した状態とする。図7(a)の初期状態から(b)の90度回転した状態へ移行する過程で検査対象物50は一旦切欠き部12の上面12aに落下してから(b)の状態に移行する。この際、円弧状のガイド面25が検査対象物50の端部をスムーズにガイドしながら回転させる。180度回転した(c)の状態では検査対象物50は両支持面11、20によって起立状態に支持されている。更に(d)に示すように上側に位置する上下面外観検査トレー31を取り外した際には、検査対象物50の検査対象となる側面が上向きの状態となっている。この状態で側面外観検査トレー1を外観検査装置にセットして撮像装置、顕微鏡等によって検査することにより、検査対象物の側面を精度よく検査することができ、クラック等の欠陥の見落としをなくすることができる。
検査終了後に検査対象物を上下面外観検査トレー31側へ移載する場合には、図8(a)に示すように側面外観検査トレー1に対して上下面外観検査トレー31を組付けて外観検査トレー連結体30を再び構築した状態で回転させて、順次図8(b)(c)(d)のように上下反転させればよい。
【0035】
以上のように本発明の側面外観検査トレーによれば、外観検査トレーに設けた収容凹所内に、検査対象物をその側面外観を検査するのに適した姿勢にて保持する姿勢制御部を設けたので、外観検査装置のXYステージ上に水平にセットした外観検査トレーの上面に設けた各収容凹所内に収容された検査対象物の側面の外観状況を、上方に配置された撮像装置等によって精度よく撮像、観察して検査精度を高めることができる。従って、クラック、傷等の存在を見落とす確率を大幅に低減することができる。
また、本発明の外観検査トレー連結体、或いは検査対象物の方向転換方法によれば、個々の検査対象物を収容凹所内にピンセット等を用いて移載する必要がなく、一括した上下反転操作を行うだけで移載が完了するので、作業効率を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る側面外観検査トレーの平面図、第1の収容凹所の拡大平面図、及び第1の収容凹所のA−A縦断面図である。
【図2】(a)及び(b)は上下両面用外観検査トレーの平面図、及び第2の収容凹所の縦断面図である。
【図3】(a)及び(b)は側面外観検査トレーを上下面外観検査トレーの観察面上に組み付けた外観検査トレー連結体の断面図、及び上下反転させた状態を示す断面図、(c)はスペーサの他の構成例を示す断面図である。
【図4】他の実施形態に係る収容空所の構成説明図である。
【図5】(a)及び(b)は図4の変形実施形態の説明図である。
【図6】(a)及び(b)は収容空所内において検査対象物を90度の姿勢で起立させる場合の第1の収容凹所の構成例を示す平面図、及び収容空所の縦断面図である。
【図7】(a)乃至(d)は外観検査トレー連結体を用いて検査対象物を回転、移動させて第1の収容凹所内に起立状態で着座させる手順を示した図である。
【図8】(a)乃至(e)は第1の収容凹所内に起立状態で着座した検査対象物を上下面外観検査トレー側へ戻す手順を示す図である。
【図9】(a)及び(b)は従来の外観検査トレーの平面図、及び収容凹所の縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…側面外観検査トレー、2…観察面、2a…嵌合穴、3…収容凹所、10…姿勢制御部、11…第1の支持面、11a…上端部、12a…上面、15…突起(支点)、20…第2の支持面、25…ガイド面、30…外観検査トレー連結体、31…上下面外観検査トレー、32…観察面、33…収容凹所、40…スペーサ、40a…嵌合突起、40b…フランジ、41…スペーサ、50…検査対象物、50a…上面(被支持面)、50b…下面、50c…側面、51…セラミックパッケージ、52…実装端子、53…リッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも対向する上面及び下面と、該上面及び下面の各外周縁間を結ぶ側面と、を有した検査対象物を収容する第1の収容凹所を備えた側面外観検査トレーであって、
前記第1の収容凹所の内壁には、前記検査対象物を水平横臥姿勢に対して30〜90度の範囲で傾斜、或いは起立させた姿勢にて保持する姿勢制御部が配置されていることを特徴とする側面外観検査トレー。
【請求項2】
前記姿勢制御部は、縦断面形状が略L字状、或いは略V字状となるように連結した少なくとも2つの支持面から構成されており、
前記姿勢制御部を構成する一方の支持面は、前記検査対象物の上面、又は下面を支持し、他方の支持面は該検査対象物の側面を支持し、
前記一方の支持面の水平面に対する角度範囲が30〜90度となるように設定したことを特徴とする請求項1に記載の側面外観検査トレー。
【請求項3】
前記一方の支持面の上下幅l1を、前記検査対象物の被支持面の全長L1よりも短く、しかも(L1/2)<l1の関係を維持するように設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の側面外観検査トレー。
【請求項4】
前記一方の支持面の水平面に対する角度範囲を50〜90度とし、前記一方の支持面と対向する第1の収容凹所内壁を円弧状のガイド面としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の側面外観検査トレー。
【請求項5】
前記一方の支持面の上部に突起を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の側面外観検査トレー。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の側面外観検査トレーと、前記検査対象物を略水平姿勢に保持する第2の収容凹所を有した上下面外観検査トレーとを、夫々の観察面同士を対向させて結合することにより各収容凹所同士が連通した方向転換用の収容空所を形成する外観検査トレー連結体であって、
前記上下面外観検査トレーを下側位置にして略水平に支持した状態から、前記側面外観検査トレーが下側位置で略水平姿勢となるように回転させた際に、前記第2の収容凹所内に収容されていた前記検査対象物が回転しつつ前記第1の収容凹所内に移動して前記各支持面上に着座するように構成されていることを特徴とする外観検査トレー連結体。
【請求項7】
前記両外観検査トレーの間に位置決め手段を兼ねたスペーサを配置することにより前記方向転換用の収容空所の高さ寸法を調整可能に構成したことを特徴とする請求項6に記載の外観検査トレー連結体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−82776(P2008−82776A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261112(P2006−261112)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】