説明

偽造防止媒体及びその真贋判定方法並びに偽造防止媒体の製造方法

【課題】本発明は、偏光潜像を利用した偽造防止媒体ではあるが、より偽造が困難で、且つ偽造された媒体であるか否かの判別が視覚的に容易な偽造防止媒体を提供する。
【解決手段】基材11上に、表面が凹凸構造を呈する形成層12、反射層13、液晶を配向させる配向制御層21、22、前記凹凸を埋設することで厚みが異なるとともに前記配向制御層21、22の効果で所定方向に配向した部位を有する液晶層14、保護層15をこの順で積層して偽造防止媒体10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルタを用いることによって隠し文字や隠しパターン等の潜像を顕在化させる偽造防止媒体の構成および偽造防止媒体の真贋を判定する真偽判定方法並びに偽造防止媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行券、商品券、パスポートなどの有価証券や認証媒体は、偽造防止対策として偽造の困難な何らかの媒体(以下、偽造防止媒体と記す)を貼付することでなされてきた。そこでは、偽造防止媒体の有無あるいは目視又は検証器を用いた偽造防止媒体自体の真贋判定により認証媒体の真贋判定を行っている。
【0003】
しかし、単なる目視により真贋判定が行える偽造防止媒体は偽造がされやすい。そこで、近年、より偽造が困難な、偏光光だけで見えるような潜像を予め媒体中に形成し、偏光板と組み合わせて該潜像を顕現する技術が偽造防止技術として開示されている。これは単純な平板偏光板を媒体に重ねることによりモノトーンの潜像を出現させるもので、潜像が見えるか見えないかで真贋判定を行っている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−183832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の偏光潜像を利用した偽造防止媒体は、モノトーンであるため検証時に視覚に訴える力が弱く、一瞥して偽造とは判別できないという問題がある。また、困難であるにせよ必ずしも模倣・偽造ができないというものではない。
【0006】
そこで本発明は、偏光潜像を利用した偽造防止媒体ではあるが、より偽造が困難で、且つ偽造された媒体であるか否かの判別が視覚的に容易な偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材上に、表面が凹凸構造を呈する形成層、反射層、液晶を配向させる配向制御部、前記凹凸を埋設することで厚みが異なるとともに前記配向制御部の効果で所定方向に配向した部位を有する液晶層、保護層がこの順で積層されていることを特徴とする偽造防止媒体である。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記配向制御部が、複数の配向方向を有することを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体である。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記配向制御部が、凹凸状態を呈する形成層の表面に形成した複数の溝であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偽造防止媒体である。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記配向制御部が、形成層の表面に該形成層とは異質の材料で形成した配向膜であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の偽造防止媒体である。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、前記基材の裏面に粘着層を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の偽造防止媒体である。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、前記形成層の凹凸状態と形成層表面の複数の溝を同時に形成して請求項3に記載の偽造防止媒体を製造することを特徴とする偽造防止媒体の製造方法である。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、偽造防止媒体に対し、偏光板を介して偽造防止媒体を観察し、その観察角度を変化させることで、所定の着色した潜像が顕現するか否かを目視または機械による読み取りによって前記偽造防止媒体の真贋を判定することを特徴とする偽造防止媒体の真贋判定方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明になる偽造防止媒体は、偏光板を重ねた場合に見える偏光潜像画像が多色に着色しており、観察角度を変化させると異なる着色画像が観察できるという特殊な視覚効果を有している。可視化された変化する着色画像は、モノカラー表示に比べ視覚に対する訴求力が強く、容易に判別可能なので高い偽造判別力を発揮するという効果がある。
【0015】
また、偏光潜像を着色させるためには、液晶を収容する狭い空間を複数確保して、壁面に配向性を付与するという高度な加工技術が必要であり、液晶を取り囲むこのような環境を模倣して、真正品と同じ視覚効果を発現させることはモノトーンタイプを模倣するのと比較すると極めて困難である。
【0016】
また、裏面に粘着層を備える構成の偽造防止媒体は、容易に紙等の被貼付媒体に装着できる。
【0017】
また、液晶の厚さを変える巨視的な凹凸と液晶の配向を制御する微細な溝を同時に形成すれば工程が合理化され、低コストで上記特徴を有する偽造防止媒体を製造できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の係る偽造防止媒体を概略的に示す平面視図である。
【図2】図1に示す偽造防止媒体のA−A線に沿った断面視図である。
【図3】図2に示す偽造防止媒体の配向制御層を概略的に示す模式図である。
【図4】図1に示す偽造防止媒体の形成層の作成方法を概略的に示す模式図である。
【図5】図4により得られた形成層を概略的に示す模式図である。
【図6A】図1の構成の偽造防止媒体を用いて偏光板を介して観察した一例を示す平面視図である。
【図6B】図6Aから偏光板を45°回転させて偽造防止媒体を観察した一例を示す平面視図である。
【図6C】図6Aから偽造防止媒体の観察方向をX方向に垂直な面内でZ方向から角度−θ分傾けたときに発現する偏光潜像の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、本発明による偽造防止媒体の第一の構成を概略的に示す平面視図である。図2は、図1に示す偽造防止媒体10のA−A線に沿った断面視図である。
【0021】
この偽造防止媒体10は、基材11と形成層12と反射層13と液晶層14と保護層15を含んでいる。偽造防止媒体10の前面は、基材11から見て保護層15側の面である。
【0022】
(基材)
基材11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)フィルムなどの樹脂からなるフィルム又はシートである。基材11は光透過性を有していてもよく、有していなくてもよい。また、基材11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。更に、基材11に対して、偏光潜像の画像認識に影響を及ぼさない程度で、全面もしくは部分的に帯電防止処理やマット加工、エンボス処理等の加工をしても良い。
【0023】
(形成層)
形成層12は、液晶層14の配向および膜厚を制御するための層であるが、図4は形成層12の作成方法を概略的に示す模式図である。エンボス原版41は1つの面内にそれぞれ深さが異なる膜厚制御領域2A、2B等を有している。
【0024】
形成層12は、例えば、熱可塑性樹脂層であって、複数の厚さを持つ凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、即ち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、形成層12は、例えば、紫外線硬化樹脂であり、これに原版を押し当てながら樹脂基材裏面側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0025】
(反射層)
反射層13は、形成層12の前面側の全体を被覆している。反射層13は、形成層12の前面の一部のみを被覆していてもよい。或いは、反射層13は、形成層12の背面を少なくとも部分的に被覆していてもよい。この場合、形成層12は、反射層13に対応した位置の少なくとも一部で光透過性とする。そして、この場合、典型的には、形成層12として、反射層13に対応した位置の少なくとも一部で透明なものを使用する。
【0026】
反射層13は、光散乱性を有していてもよく、光散乱性を有していなくてもよい。また、反射層13は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0027】
反射層13の設け方としては、光反射効果の有するインキ等を公知の印刷方法により設けてもよいし、金属を反射層13として蒸着もしくはスパッタリングのような方法で設けてもよい。反射層13に使用する金属は、例えばAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、インコネル、ステンレス、ジュラルミンなどの金属を挙げられる。また、印刷法により、光反射効果を有するインキ層を基材上に全面もしくはパターン状で設けた転写箔を作製するか、もしくは金属反射層を備えた転写箔を作製するなどして、本発明に使用する形成層12に転写を行うことで反射層13を設けてもよいし、金属箔や金属層を有するフィルムをラミネートして反射層を設けてもよい。
【0028】
金属反射層をパターン化する場合、基材全面に金属反射層を形成した後にエッチング加工、レーザー加工、水洗シーライト加工等の公知の方法でパターン化してもよいし、前記公知の方法にてパターン化した金属反射層を転写もしくはラミネートしてもよい。また、非周期的な金属反射層の代わりに回折構造を有する回折構造形成層設けてもよい。回折構造を形成することにより、装飾効果および偽造防止効果が向上する。
【0029】
(配向制御層)
図2に示す配向制御層21、22は液晶を配向させるために用いる。この配向制御層21、22を形成する方法としては、公知の技術を用いることができ、例えばラビングや真空斜方蒸着により配向処理を行う方法や、配向制御のための溝を形成する方法。直線偏光や斜め非偏光照射による光反応を用いる光配向膜を使って配向させる方法等を採用できる。
【0030】
図3は配向制御層21、22の配向方向を示しており、配向制御層21、22はそれぞれストライプの伸びる方向に液晶の配向を制御する効果を有している。図の左右で45度配向方向が異なっている。
【0031】
図4は形成層12の作成方法を概略的に示す模式図である。エンボス原版41は1つの面内に液晶の膜厚を制御する膜厚制御領域2A、2Bを有している。この膜厚制御領域2A、2Bは、深さが異なる段差(凹凸)を有している。図4の下段の図は、基材11の前面側に形成層12、反射層13が積層され、更に前記の配向制御層21、22がその上に形成されたものである。この積層物に対し、上記エンボス原版41を使用して、位置合わせの上、エンボス加工を施す。
【0032】
図5は膜厚制御のための膜厚制御領域2A、2B、および配向制御層21、22を有する形成層12を概略的に示す模式図である。上記の方法によれば、1つの面内に液晶の膜厚制御のための深さ、幅が異なる複数の領域を形成することができる。また、これらの方法によると、前記領域に、複雑・複数であっても所定の液晶配向性を付与することもできる。配向制御能を有さない配向制御層とすることもできる。この場合、液晶は当該部位で無配向の光学的等方層となる。
【0033】
(液晶層)
液晶層14は、液晶材料を固化してなる。典型的には、液晶層14は、流動性を有する重合性液晶材料を紫外線又は熱により硬化させてなる高分子複屈折性層である。
【0034】
図2に示すように、液晶層14は、配向状態が異なる複数の液晶部位141、142および膜厚が異なる複数の液晶部位14A、14Bを含んでいる。配向状態が異なる複数の液晶部位141、142は配向制御層21、22にそれぞれ対応する。また、膜厚が異なる複数の液晶部位14A、14B、14Cは膜厚制御領域2A、2Bにそれぞれ対応する。
【0035】
(保護層)
保護層15は、液晶層14の前面を被覆している。保護層15は、光透過性を有している光透過層であり、典型的には透明であるが、無色透明であってもよく、有色透明であってもよく、少なくとも、光学的に等方性である必要がある。
【0036】
保護層15は、液晶層14などの損傷や光劣化を生じ難くして、偽造防止媒体10が表示する像の劣化を抑制する保護層としての役割を果たす。保護層15は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0037】
保護層15は、例えば樹脂からなり、材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は紫外線若しくは電子線硬化樹脂を、単独で又は組み合わせて使用することができる。保護層15は、省略することができる。
【0038】
次に、本発明の偽造防止媒体10を用いて偏光潜像を観測する形態と、該偽造防止媒体10を備える物品が真正品であることを検証するための真贋判定方法を説明する。
【0039】
図1は偽造防止媒体10を概略的に示す平面視図である。偏光板50をかざさずに目視で観察したとき、点線で示される潜像表示領域は他の領域と区別することができず、どの領域も同じに見える。
【0040】
図6A、図6Bは本発明の偽造防止媒体10に偏光板50をかざして観察したときの偏光潜像を示す一例である。矢印は偏光板50の光軸方向を示している。
【0041】
図6Aでは表示部101、102は、偏光板50の光軸と液晶からなる位相差層の光軸の角度が平行なため、偏光板50を介した偏光は透過でき、それぞれの領域で異なる色の潜像が明るく表示される。また、表示部201、202については、偏光板50の光軸と液晶層14の光軸の角度が45°で交わるため、偏光板50を介した偏光が位相差層により90°回転されることにより遮光され、暗く表示される。また表示部301においては液晶部位が存在しないため変化が起こらない。
【0042】
図6Bは、図6Aの状態から偏光板を45°回転させたときの偽造防止媒体10の見え方を示す平面視図である。これらも前記と同様の原理で表示部101、102は暗く、表示部201、202はそれぞれの領域で異なる色の潜像が明るく表示される。
【0043】
このようにして、偏光板50を介して偽造防止媒体10を観測し、その偏光潜像が所定の着色状態を有する潜像パターンであることを確認することにより、偽造防止媒体10が正規のものであることが確認できる。同じ偏光潜像を示す偽造防止媒体であれば、その媒体を備える物品が真正品であることの真贋判定ができる。
【0044】
また、これらの真贋判定は機械を用いておこなってもよい。
【0045】
ここで、表示部101、表示部201、表示部102、表示部202を観察したときに、それぞれが異なる色に見える理由について、数式を参照しながら説明する。
【0046】
液晶層14のリターデイションReは、下記等式(1)に示すように、液晶層14の膜厚dとその複屈折性Δnとに依存する。
【0047】
Re=Δn×d ・・・・・・・・・・・・・(1)
ここで、Δn=ne−noであって、ne、noは、それぞれ異常光、常光に対する屈折率である。
【0048】
一対の直線偏光フィルムをそれらの透過軸が直交するように向かい合わせ、それらの間に液晶層14をその光学軸が直線偏光フィルムの一方の透過軸に対して角度θを為すように介在させる。一方の直線偏光フィルムをその法線方向から波長λの光で照明した場合、液晶層14に入射する光の強度をI0とし、他方の直線偏光フィルムを透過する光の強度をIとすると、強度Iは、下記等式(2)で表すことができる。
【0049】
I=I0×sin2(2θ)×sin2(Re×π/λ)・・・・(2)
等式(2)から明らかなように、透過光の強度Iが最大値を示す波長λは、リターデイションReに依存している。そして、等式(1)に示すように、リターデイションReは、液晶層14の膜厚dとその複屈折性Δnとに依存している。即ち、透過光の強度Iが最大値を示す波長λは、液晶層14の膜厚dに依存する。それゆえ、透過光のスペクトルは、入射光のスペクトルとは異なるプロファイルを有することとなる。
【0050】
このように、液晶層14を一対の直線偏光フィルムで挟むと、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる透過光を得ることができる。これと同様に、液晶層14を直線偏光フィルムと反射層13とで挟んだ場合にも、入射光とはスペクトルのプロファイルの異なる反射光を得ることができる。従って、表示部101、201、102および202を観察した場合に、厚みと配向方向が相違するので異なる色に見える。
【0051】
偽造防止媒体10を前記印刷物に適用する場合、スレッド(ストリップ、フィラメント、糸状物、安全帯片などとも称される)と呼ばれる形態により、前記偽造防止媒体10を紙にすき込んでもよい。
【0052】
前記偽造防止ラベル、あるいは印刷物において粘着剤を用いる場合、粘着剤の材料としては、一般的な材料を用いることができる。
【0053】
例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系などの粘着剤を単独で用いることができる。またはこれらの粘着剤にアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加したものを用いることができる。
【0054】
粘着層の形成方法には、公知のグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法やバーコート法、グラビア法、ロールコート法などの塗布方法を用いることができる。
【0055】
さらに、前記粘着剤を予めセパレーターに形成したものを準備しておき、偽造防止媒体へセパレーターを剥がして貼り合わせてもよい。
【0056】
また、粘着加工を施した偽造防止媒体の取り扱いを容易にするため、離型処理を行った離型紙や離型フィルムを粘着層の上に設置してもよい。
【0057】
本発明の偽造防止媒体10は、偽造や複製に対する手段としての媒体に使用されるだけでなく、例えば、光学および配向性機能を果たす電気光学的な液晶セルとして利用してもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の偽造防止媒体10の具体的な実施例について、図2から図5を用いて説明する。
【0059】
基材11として離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、ウレタン樹脂をマイクログラビアによって、塗布厚8μm、乾燥温度110℃で形成層12を形成した。
【0060】
次に、形成層12の上に、反射層13として真空蒸着法を用いて膜厚50nmのアルミニウム薄膜層を全面に設けた。
【0061】
次に、バーコーター法を用いて、全面に配向膜用インキの溶液を塗布した。塗布した配
向膜用インキの組成を以下に示す。
【0062】
ポリビニルアルコール樹脂(商品名:PVA−117 クラレ(株)製)10重量%
溶剤(水) 90重量%
この塗膜は、乾燥膜厚が2μmとなるように形成した。
【0063】
次いで、ラビング布(FINE PUFF YA−20−R 吉川化工(株)製)を用
いて、この塗膜を一方をカバーしつつ他方をラビングする処理を2回行った。これにより、図3に示すような異なる配向方向を有する二つの配向制御領域(配向制御層21、22)を得た。
【0064】
次に、図4の上段に模式的に示すような凹凸の深さが異なる膜厚制御領域2A、2Bを有するエンボス原版41を用意した。また、膜厚制御領域2A、2Bの深さはそれぞれ3μm、5μmとした。
【0065】
次に、上記エンボス原版41を用いて形成層に対して220℃、10kgf/cmの圧力で熱エンボスをおこない、形成層12に図5に示すような膜厚制御のための凹凸領域(膜厚制御領域2A、2B)を転写形成した。
【0066】
その後、大日本インキ化学工業製のUVキュアラブル液晶UCL−008を、マイクログラビアにて形成層の上に塗工した後、無偏光紫外線を照射することにより硬化させた。
【0067】
次に、保護層15としてアクリル樹脂をマイクログラビアによって、塗布厚1μm、乾燥温度100℃で形成した。
【0068】
次に、偏光板50を用いた偽造防止媒体10を観察して所望の画像が発現するか調べた。
【0069】
図6Aは作成した偽造防止媒体10を偏光板50を介して観察した一例を示す平面視図である。表示部101、102は、偏光板50の光軸と位相差層の光軸の角度が平行なため、偏光板50を介した偏光は透過でき、それぞれの領域で異なる色の潜像が明るく表示される。また、表示部201、202については、偏光板50の光軸と液晶層14の光軸の角度が45°で交わるため、偏光板50を介した偏光が位相差層により90°回転されることにより遮光され、暗く表示される。また表示部301においては液晶部位が存在しないため変化が起こらない。
【0070】
次に、図6Bは図6Aから偏光板50を45°回転させたときの偽造防止媒体10を観察した一例を示す平面視図である。これらも前記と同様の原理で表示部101、102は暗く、表示部201、202はそれぞれの領域で異なる色の潜像が明るく表示された。
【0071】
次に、図6Cは図6Aから観察方向をX方向に垂直な面内でZ方向から角度−θ分傾けたときに発現する偏光潜像の例を示す斜視図である。またこれらも前記と同様の原理で表示部101、102はそれぞれの領域で異なる色の潜像が表示され、潜像表示領域は明るく表示され、表示部201、202は暗く表示される。また、液晶層14を透過する距離が正面からのものと比べ変化するため、正面からとは別の色で観察され、想定した効果が得られた。
【0072】
このようにして偏光板50を介しながら、偏光板50の角度や観察角度を変えることで、偏光潜像の明暗が反転し、色が変化することで真贋判定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の偽造防止媒体および偽造防止ラベル、印刷物、転写箔は、銀行券、商品券、パスポートなどの有価証券や各種認証媒体において、偽造防止対策として前記の物品に用いることができる。また本発明の偽造防止媒体の真贋判定方法によって、前記のような物品の真贋判定が可能になる。
【符号の説明】
【0074】
10…偽造防止媒体、11…基材、12…形成層、13…反射層、14…液晶層、14A、14B…膜厚の異なる液晶部位、141、142…配向の異なる液晶部位、15…保護層、21、22…配向制御層、41…エンボス原版、50、偏光板、101、102、201、202、301…表示部、2A、2B…膜厚制御領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、表面が凹凸構造を呈する形成層、反射層、液晶を配向させる配向制御部、前記凹凸を埋設することで厚みが異なるとともに前記配向制御部の効果で所定方向に配向した部位を有する液晶層、保護層がこの順で積層されていることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記配向制御部が、複数の配向方向を有することを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記配向制御部が、凹凸状態を呈する形成層の表面に形成した複数の溝であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記配向制御部が、形成層の表面に該形成層とは異質の材料で形成した配向膜であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
前記基材の裏面に粘着層を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の偽造防止媒体。
【請求項6】
前記形成層の凹凸状態と形成層表面の複数の溝を同時に形成して請求項3に記載の偽造防止媒体を製造することを特徴とする偽造防止媒体の製造方法。
【請求項7】
偽造防止媒体に対し、偏光板を介して偽造防止媒体を観察し、その観察角度を変化させることで、所定の着色した潜像が顕現するか否かを目視または機械による読み取りによって前記偽造防止媒体の真贋を判定することを特徴とする偽造防止媒体の真贋判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2013−68701(P2013−68701A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205795(P2011−205795)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】